説明

フコキサンチノールの製造方法

【課題】フコキサンチノールを短時間で且つ低コストで然も高収率で製造する、フコキサンチノールの製造方法を提供すること。
【解決手段】フコキサンチンと界面活性剤とを第一の有機溶媒に溶解させ、前記有機溶媒を蒸発させて前記フコキサンチンと前記界面活性剤を乾燥させた後、得られた乾燥物をpH緩衝溶液に溶解させ、リパーゼを前記乾燥物を溶解させた前記pH緩衝溶液に加え、所定の温度で所定の時間だけインキュベートして、未精製のフコキサンチノールを製造し、得られた未精製のフコキサンチノールを第二の有機溶媒に溶解し、クロマトグラフィにより展開することで精製したフコキサンチノールを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、フコキサンチノールの製造方法に関するものである。更に、詳述すれば、本願発明は、酵素反応によってフコキサンチンからフコキサンチノールを短時間で且つ安価に然も高収率で得るためのフコキサンチノールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フコキサンチン及びフコキサンチノールはβカロテン等と同じ基本骨格(図6参照)、即ち、共役二重結合鎖を持つカロテノイド(carotenoids)の一種で、様々な生理的機能を有することが報告されている。例えば、フコキサンチンの場合、抗肥満効果(非特許文献1)やガン細胞への高いアポトーシス誘導能(非特許文献2)を有することが見出されている。このようにフコキサンチンは高い生理的活性を持つが、フコキサンチンのアセチル基が水酸基に置き換わった化学構造を持つフコキサンチノールには、フコキサンチンよりも更に高い生理活性があることを、最近発明者等は見出した。
【0003】
現在のところ学術論文において、次の3種類のフコキサンチノールの製造方法が報告されている。即ち、(1)フコキサンチンを餌とする海洋生物(例えば、ホヤなど)から有機溶媒を用いて抽出する方法(非特許文献3〜5)、(2)フコキサンチンをアルカリ加水分解することによって得られた反応物から単離・精製する方法(非特許文献3、6)、(3)加水分解酵素によるフコキサンチンの加水分解によって得られた反応物から単離・精製する方法(非特許文献7〜10)である。
【0004】
上記(1)の製造方法では、フコキサンチノールの大量生産という観点から、「フコキサンチノールを抽出する材料(海洋生物)の確保」と「同時に抽出される数種類のカロテノイドからの単離・精製の困難さ」の理由により、非効率的であると言える。例えば、非特許文献4によると、ホヤ科の中で最もフコキサンチノールを多く含有しているシロウスボヤ(学名:Didemnum moseleyi)の場合、7種類のカロテノイドが存在し、フコキサンチノールは100g当り12.4mg存在している。つまり、1g単位でフコキサンチノールを調製するには、抽出材料となるシロウスボヤを約8kg必要とし、抽出材料の安定的確保・保存・調達資金に難点がある。
【0005】
次に上記(2)の製造方法の場合、フコキサンチノールを得るための操作は、上記(1)、(3)の製造方法と比較して非常に簡便であるが、収率が非常に悪い点に問題がある。例えば、非特許文献6によると、フコキサンチンを0.01%水酸化カリウムのメタノール溶液に添加(水酸化カリウムとフコキサンチンのモル比=2.2)すると、40分後の各カロテノイドの成分比は、フコキサンチン(33%)、フコキサンチノール(8%)、フコキサンチンヘミケタール(11%)、フコキサンチノールヘミケタール(3%)、イソフコキサンチン(17%)、イソフコキサンチノール(14%)になると記載されている。これによれば、フコキサンチノールの収率は僅か8%である。
【0006】
また、0.1%水酸化カリウムのメタノール溶液に添加(水酸化カリウムとフコキサンチンのモル比=24)すると、35分後の各カロテノイドの成分比は、フコキサンチン(20%)、フコキサンチノール(6%)、フコキサンチンヘミケタール(10%)、フコキサンチノールヘミケタール(3%)、イソフコキサンチン(4%)、イソフコキサンチノール(7%)になると記載されている。即ち、フコキサンチノールの収率は僅か6%である。
【0007】
非特許文献3に於いても、200mgのフコキサンチンから8mgのフコキサンチノールしか得られていない。つまり、フコキサンチンのアルカリ加水分解では、原料となるフコキサンチンに対しての収率が10%以下と非常に低収率である。従って、後述のフコキサンチノールの製造方法(3)と比較して、この製造方法(2)はフコキサンチノールの収率が10%以下であるため、大量の製造方法には適していないと言える。
【0008】
上記(3)の製造方法の場合、(1)と(2)の製造方法と比較して、高い収率でフコキサンチノールを合成できるが、コストや収率に於いて、従来報告されている製造方法では問題が残されている。
【0009】
例えば、非特許文献7によると、微生物(学名:Pseudomonas fluorescens)由来のコレステロールエステラーゼ酵素を用いてフコキサンチンのアセチル基を加水分解してフコキサンチノールを合成している。
【0010】
反応は次の3つの溶液A、B、Cを混合することによって行われる。溶液Aは、フコキサンチン溶液であって、濃度が0.33μg/μLになるように調製されたフコキサンチンのアセトン溶液10μLである。溶液Bは、コレステロールエステラーゼ酵素溶液であって、37℃、pH=7.0において活性度が2300ユニット/gである微生物由来コレステロールエステラーゼ酵素から次のようにして作成したストック溶液である。101mgのコレステロールエステラーゼ酵素をpH=7.0に調製されたトリス塩酸緩衝液に溶解する。ここで、要するトリス塩酸緩衝液は10mLである。このようにして調製された45.8μLのストック溶液がBである。溶液Cは、緩衝液であって、944.2μLのpH=7.0、0.05M(モル/L)に調製されたトリス塩酸緩衝液である。これらA、B、Cの3つの溶液を混合させ、30分間反応させる。一般的に、精製されたコレステロールエステラーゼ酵素は高価であり、この酵素を用いたフコキサンチンの脱アセチル化反応は反応速度が遅く、収率は5%以下であると非特許文献7には報告されている。
【0011】
非特許文献8によると、豚肝臓由来のエステラーゼ(PLE)を用いてフコキサンチンのアセチル基を加水分解してフコキサンチノールを合成している。反応は、次の溶液C、Dをフコキサンチンに加えて行う。溶液Cは、メタノールとトリス塩酸緩衝液(pH=7.3、50mM)の混合溶液であって、比率はメタノール:トリス塩酸緩衝液=2:3である。溶液Dは、豚肝臓由来エステラーゼ(PLE)酵素溶液であって、まず、PLE(活性度が355ユニット/mg)を用意する。このPLE19mgを100μLの硫酸アンモニウム溶液に溶解させる。ここで使用する硫酸アンモニウム溶液は、3.2Mになるように溶液Dを用いて調製したものである。このように調製された溶液C、Dを用いて以下の条件で反応させる。1mgのフコキサンチンを6.5mLの溶液Cに溶解させた後、100μLの溶液Dを加える。この混合溶液を窒素雰囲気下で、25〜28℃において攪拌機で24時間作用させることにより、加水分解反応を行っている。
【0012】
この反応条件ではフコキサンチノールが0.33mg(収率45%)得られているが、依然収率は改善される余地がある。さらに反応終了まで24時間掛かっていることから、短時間で反応を完結させる必要も残されている。
【0013】
非特許文献9によると、微生物(学名:Candida cylindracea)由来のリパーゼを用いてフコキサンチンのアセチル基を加水分解してフコキサンチノールを合成している。反応条件は、26pmolのフコキサンチンを溶解させたフコキサンチンのアセトン溶液10μLに、5mgのリパーゼを含む1mLのBritton-Robinson緩衝液を加え、37℃、6時間インキュベートすることにより加水分解反応を行っている。この文献中にはフコキサンチンからフコキサンチノールへの収率は記載されていないが、HPLCの分析結果の図から、60%程度の収率であるものと予測される。この方法は実験室レベルであり、且つ非常に少量で行っており、然も高価なリパーゼを使用しているため、大量生産可能な技術であるかどうかは疑問である。
【0014】
非特許文献10によると、豚膵臓由来のコレステロールエステラーゼを用いてフコキサンチンのアセチル基を加水分解してフコキサンチノールを合成している。反応条件は、5μmolフコキサンチンと100mgのタウロコール酸を少量のジクロロメタン/メタノール(2:1)に溶解しアルゴンガスで溶媒を気化させた後、10unitのコレステロールエステラーゼを含む10mLのカリウムリン酸緩衝液中に溶解させ、37℃で2時間インキュベートすることによりフコキサンチンを加水分解している。収率に関しては全く記載されていないが、高価なコレステロールエステラーゼを使用していることから大量生産に不向きである。
【0015】
【非特許文献1】H. Maeda et al., Biochemical and Biophysical Research Comunications, 332 (2005) 392-397.
【非特許文献2】細川、BIO INDUSTRY, 21 (2004) 52-57.
【非特許文献3】H. Nitsche, Biochemica et Biophysica Acta 338 (1974) 572-576.
【非特許文献4】M. Ookubo and T. Matsuno, Comp. Biochem. Physiol., 81B (1985) 137-141.
【非特許文献5】I. Konishi et al., Comparative Biochemistry and Physiology. Part C, Pharmacology, toxicology & endocrinology, In press.
【非特許文献6】J. A. Haugan et al., Acta Chemica Scandinavica 46 (1992) 614-624.
【非特許文献7】P. B. Jacobs et al., Comp. Biochem. Physiol., 72B (1982) 157-160.
【非特許文献8】T. Aakermann et al., Biocatalysis and Biotransformation, 13 (1996) 157-163.
【非特許文献9】T. Sugawara et al., J. Nutri. 132 (2002) 946-951.
【非特許文献10】A. Asai et al., Drug Metabolism and Disposition, 32 (2004) 205-211.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本願発明は、従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、フコキサンチノールを短時間で且つ低コストで然も高収率で製造することが可能な、フコキサンチノールの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は上記課題について鋭意検討を行った結果、動物内臓由来リパーゼをフコキサンチンに適温、適濃度、適時間で作用させたところ、80%以上もの効率でフコキサンチノールが得られることを見出した。
【0018】
即ち、本願発明のフコキサンチノールの製造方法は、フコキサンチンと界面活性剤とを第一の有機溶媒に溶解させ、前記有機溶媒を蒸発させて前記フコキサンチンと前記界面活性剤を乾燥させた後、得られた乾燥物をpH緩衝溶液に溶解させ、リパーゼを前記乾燥物を溶解させた前記pH緩衝溶液に加え、所定の温度で所定の時間だけ保ち、未精製のフコキサンチノールを製造することを特徴とする。
【0019】
本願発明と従来法との決定的な違いは、フコキサンチンの加水分解酵素としてリパーゼ、特に動物由来のリパーゼを使用している点にある。動物由来のリパーゼであれば、未精製のリパーゼであっても十分に高収率でフコキサンチンの加水分解によりフコキサンチノールを得ることが可能である。
【0020】
また、本願発明のフコキサンチノールの製造方法は、請求項1に記載のフコキサンチノールの製造方法により得られた未精製のフコキサンチノールを、第二の有機溶媒に溶解し、クロマトグラフィにより精製することを特徴とする。
【0021】
前記フコキサンチンは、有機合成物、若しくは動物又は植物又は藻類から抽出し単離・精製されたもの、若しくは細菌から抽出し精製されたものである。また、前記第一の有機溶媒は、アルコール類、エーテル類、ケト類、脂肪族炭化水素のハロゲン化合物、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素の中から選ばれた一種又は二種以上であってもよい。
【0022】
前記界面活性剤は、タウロコール酸、デキシコール酸、グリコール酸及びこれらのアルカリ塩又はレシチン類、脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸プロピレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ショ糖エステル、オレイン酸アルカリ塩、脂肪酸モルホリン塩、ステアリル乳酸カルシウム、タンパク質の中から選ばれた一種又は二種以上であってもよい。
【0023】
前記pH緩衝溶液のpHは、5以上9以下であり、前記リパーゼは、動物内臓由来のリパーゼである。前記インキュベートの所定の温度は、10℃以上50℃以下、前記インキュベートの所定の時間は、30分以上48時間以下であってもよい。
【0024】
前記第二の有機溶媒及び前記クロマトグラフィの展開溶媒は、アルコール類、エーテル類、ケト類、脂肪族炭化水素のハロゲン化合物、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素の中から選ばれた一種又は二種以上であることを特徴とする。また、前記クロマトグラフィの充填剤は、順相系のシリカゲル、セライト、アルミナ、水酸化カルシウム、若しくは逆相系の直鎖アルキル基、芳香族官能基、親水性官能基又は極性内包型官能基がシルカゲルに化学結合したものの中から選ばれた一種又は二種以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
フコキサンチンと界面活性剤とを第一の有機溶媒に溶解させ、前記有機溶媒を蒸発させて前記フコキサンチンと前記界面活性剤を乾燥させた後、得られた乾燥物をpH緩衝溶液に溶解させ、リパーゼを前記乾燥物を溶解させた前記pH緩衝溶液に加え、所定の温度で所定の時間だけインキュベートして、未精製のフコキサンチノールを製造し、この得られた未精製のフコキサンチノールを、第二の有機溶媒に溶解し、クロマトグラフィにより精製することを特徴とするので、フコキサンチノールを短時間で且つ低コストで然も高収率で製造することが可能となる。
【0026】
また、このフコキサンチノールを食品素材に添加することで、種々の機能を有する機能性食品素材とすることが可能で、機能性食品素材の市場を拡大することに大きく寄与することが予想される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本願発明の実施の形態について具体的に説明するが、本願発明がこの実施の形態のみに限定されるものではない。図1は、本願発明のフコキサンチノールの製造方法のフローチャートである。ワカメから抽出し、単離・精製したフコキサンチンから豚膵臓由来リパーゼを用いてフコキサンチノールを合成する一連の操作について示した。
【0028】
原料となるフコキサンチンは、ここでは海藻から抽出したフコキサンチンを用いたが、有機合成によって得られたフコキサンチンであっても、フコキサンチンを含有する動物から抽出されたフコキサンチンであっても、大腸菌や酵母に生合成させたフコキサンチンであっても、これらの方法を組み合わせて合成したフコキサンチンであっても構わない。言い換えると、如何なる手段で得られたフコキサンチンであっても最終生成物であるフコキサンチノールを短時間に安価で高収率に合成することが可能である。
【0029】
このフコキサンチン0.5gをメタノール300mLに溶解し、続いて界面活性剤であるタウロコール酸ナトリウム2.5gをこの溶液に加え、完全に溶解させる。ここでタウロコール酸ナトリウムが溶解しにくい場合には、ソニケータを用いることも可能である。得られたフコキサンチンとタウロコール酸ナトリウムのメタノール溶液をエバポレータで乾固させる。さらに乾燥窒素ガスを乾固物に吹き付けて、メタノールを完全に取り除いた。
【0030】
得られた乾固物を0.1M、pH=7.0のリン酸カリウム緩衝液500mLに溶解し、続いて豚膵臓由来リパーゼ10gを加えた。ここで用いる豚肝臓由来リパーゼは高価な精製された物である必要は無く、実際に本実施例では粗リパーゼを用いているが、反応効率や反応時間において何ら問題は無かった。従って、安価にフコキサンチノールを製造するには粗精製リパーゼで十分である。
【0031】
リパーゼが溶解した後、37℃で2時間インキュベートした。酵素反応後の溶液にメタノール300mLを加えて攪拌後、10分間静置した。この溶液にジエチルエーテル500mLを加えて分液操作を行った。ジエチルエーテル相は回収し、水相はカロテノイドの色が無くなるまで分液操作を繰り返した。回収したジエチルエーテル相をエバポレータで乾固することで、未精製フコキサンチノールを得た。
【0032】
得られた未精製フコキサンチノールをカラムクロマトグラフィ(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:50%アセトン/ヘキサン)に供した。図2にカラムクロマトグラフィの展開状況を示した。まず、タウロコール酸ナトリウムが溶出し、続いて未反応のフコキサンチン、フコキサンチノールの順番で溶出する。図2に示した反応条件(リパーゼ量が原料フコキサンチンの10倍量)の場合には、未反応のフコキサンチンが現れてきているが、図1のフローチャートの反応条件(リパーゼ量が原料フコキサンチンの20倍量)では目視に於いて、カラムクロマトグラムでフコキサンチンのバンドは確認されなかった。
【0033】
図2に示した反応条件と図1のフローチャートの反応条件において、それぞれ2回づつ実験を行った。図2に示した反応条件では原料518.9g(1回目)、620.1mg(2回目)からそれぞれフコキサンチノール272.8g(1回目:収率56.1%)、360.6mg(2回目:収率62.2%)、未反応フコキサンチン223.5mg(1回目)、168.9mg(2回目)が得られた。一方、図1のフローチャートの反応条件では原料496.7mg(1回目)、531.7mg(2回目)からそれぞれフコキサンチノール434.4mg(1回目:収率93.4%)、412.2mg(2回目:収率82.8%)が得られた。従って、フコキサンチンとリパーゼの量を適切な比に設定することで、フコキサンチノールの収率を高めることが可能となる。
【0034】
得られたカラムクロマトグラフィ精製フコキサンチノールの高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析を行ったところ、図3に示したように、約80%以上の全トランス体フコキサンチノールが得られた。HPLCで全トランス体のみを単離・精製し、NMR分析を行った。図4はHPLC精製後の全トランスフコキサンチノールの1次元プロトンNMRであり、図5はHPLC精製後の全トランスフコキサンチノールの1次元カーボンNMRである。これにより、得られたフコキサンチンの加水分解物がフコキサンチノールであることを確認した。従って、本願発明のフコキサンチノールの製造方法によって、高純度のフコキサンチノールを大量、安価且つ短期間に製造することが可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本願発明は、酵素反応によってフコキサンチンからフコキサンチノールを短時間で且つ安価に然も高収率で得るためのフコキサンチノールの製造方法に関するものであり、製造したフコキサンチノールを食品素材等に添加することで、機能性食品素材として用いることができる。従って、産業上は食品の分野で活用することが可能である。その他にも医学、農業の分野で応用することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本願発明のフコキサンチノールの製造方法のフローチャートである。
【図2】カラムクロマトグラフィの展開状況を示す写真である。
【図3】カラム後の各成分のHPLC分析チャートである。
【図4】HPLC精製後の全トランスフコキサンチノールの1次元プロトンNMRである。
【図5】HPLC精製後の全トランスフコキサンチノールの1次元カーボンNMRである。
【図6】フコキサンチノールとフコキサンチンの化学構造式である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコキサンチンと界面活性剤とを第一の有機溶媒に溶解させ、前記有機溶媒を蒸発させて前記フコキサンチンと前記界面活性剤を乾燥させた後、得られた乾燥物をpH緩衝溶液に溶解させ、リパーゼを前記乾燥物を溶解させた前記pH緩衝溶液に加え、所定の温度で所定の時間だけ保ち、未精製のフコキサンチノールを製造することを特徴とするフコキサンチノールの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフコキサンチノールの製造方法により得られた未精製のフコキサンチノールを、第二の有機溶媒に溶解し、クロマトグラフィにより精製することを特徴とする、フコキサンチノールの製造方法。
【請求項3】
前記フコキサンチンは、有機合成物、若しくは動物又は植物又は藻類から抽出し単離・精製されたもの、若しくは細菌から抽出し精製されたものであることを特徴とする請求項1に記載のフコキサンチノールの製造方法。
【請求項4】
前記第一の有機溶媒は、アルコール類、エーテル類、ケト類、脂肪族炭化水素のハロゲン化合物、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素の中から選ばれた一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1に記載のフコキサンチノールの製造方法。
【請求項5】
前記界面活性剤は、タウロコール酸、デキシコール酸、グリコール酸及びこれらのアルカリ塩又はレシチン類、脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸プロピレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ショ糖エステル、オレイン酸アルカリ塩、脂肪酸モルホリン塩、ステアリル乳酸カルシウム、タンパク質の中から選ばれた一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1に記載のフコキサンチノールの製造方法。
【請求項6】
前記pH緩衝溶液のpHは、5以上9以下であることを特徴とする請求項1に記載のフコキサンチノールの製造方法。
【請求項7】
前記リパーゼは、動物内臓由来のリパーゼであることを特徴とする請求項1に記載のフコキサンチノールの製造方法。
【請求項8】
前記インキュベートの所定の温度は、10℃以上50℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のフコキサンチノールの製造方法。
【請求項9】
前記インキュベートの所定の時間は、30分以上48時間以下であることを特徴とする請求項1に記載のフコキサンチノールの製造方法。
【請求項10】
前記第二の有機溶媒及び前記クロマトグラフィの展開溶媒は、アルコール類、エーテル類、ケト類、脂肪族炭化水素のハロゲン化合物、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素の中から選ばれた一種又は二種以上であることを特徴とする請求項2に記載のフコキサンチノールの製造方法。
【請求項11】
前記クロマトグラフィの充填剤は、順相系のシリカゲル、セライト、アルミナ、水酸化カルシウム、若しくは逆相系の直鎖アルキル基、芳香族官能基、親水性官能基又は極性内包型官能基がシルカゲルに化学結合したものの中から選ばれた一種又は二種以上であることを特徴とする請求項2に記載のフコキサンチノールの製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−33970(P2009−33970A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340997(P2005−340997)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(505152756)協同組合マリンテック釜石 (7)
【Fターム(参考)】