説明

フッ素樹脂積層シートの製造方法

【課題】本発明は、含浸・焼成工程を繰り返さずに一連の連続した工程によって、所望の厚さを有し、さらに耐屈曲性、耐引裂性等の構造材料部材として必要な特性を有するフッ素樹脂積層シートの製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明のフッ素樹脂積層シートの製造方法は、フッ素樹脂微粒子を計量ロールでシート状網状物の空隙及び表面に所定量を付着させ、カレンダーロールでプレスし、その後焼成してフッ素樹脂積層シートとすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂シートの製造方法の改良に係り、耐薬品性、電気絶縁性、耐熱性、耐候性、防汚性、離型性、耐屈曲性、耐引裂性、および均一性等に優れるフッ素樹脂積層シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂、とりわけ四フッ化エチレン樹脂(以下、PTFE樹脂と略記する)は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、電気絶縁性、防汚性、非接着性等に優れるため、種々の工業分野に広く使用されており、例えば、耐腐蝕ガスケット・パッキング部材、耐腐蝕輸送部材(例えば、パイプ、チューブ、バルブ部品、コック部品、流量計部品、ベローズ等)、耐腐蝕ろ過材(例えば、ろ過板、隔膜、ろ布等)、非接着性搬送部材(例えば食品・薬品工業でのベルト、コンベア等)、非接着性表面部材(例えば、ロール表面、タンク表面、パイプ内壁など)、機械工作物(例えば、ベアリング、軸受け等)、構造材料部材、内装材、建築土木資材(例えば防水シート等)、電気絶縁材料等が挙げられる。
【0003】
しかしながら、その反面、フッ素樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレンのような低融点の熱溶融性樹脂とは異なり、融点が高いために溶融状態でも溶融粘度が高く通常の押出成形や射出成形が困難であり、その成型には特殊な方法とっている。また、溶剤にも溶解しない。そのため、一般の熱可塑性プラスチックのフィルム成膜やシート成型で用いられる溶融押出法、溶液流延法(キャスティング)等の方法が適用できず、フィルム化やシート化が非常にし難い材料である。さらに、フッ素樹脂は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、電気絶縁性、防汚性、離型性、非接着性等には優れているものの、耐屈曲性、耐引裂性、引張強度等の物理強度特性が劣り、物理強度が要求される部材、例えば構造材料部材等には単独では使用に耐えないことが多い。
【0004】
ところで、従来のフッ素樹脂フィルムの製造方法は、フッ素樹脂粉末を円筒状に成形して焼成し、これをいわゆるかつらむきに切削して0.03〜2.0mm程度のフィルムあるいはシートとするスカイビング製法が、一般的に行われている。また、シート状予備成形品または丸棒をカレンダー成形でフィルムとすることも行われている。さらに、フッ素樹脂ディスパージョンを基板上にキャストし、焼成後基板から剥離する方法も行われ、例えば基板上に有機溶剤可溶性のフッ素樹脂薄膜を形成し、この表面に有機溶剤不溶性のフッ素樹脂水性ディスパージョンを塗布乾燥して焼成後、有機溶剤中に浸漬して有機溶剤不溶性のフッ素樹脂フィルムを分離する製造方法も提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、物理強度特性を向上させるために、ガラスクロスやアラミド織布などのクロス基材にPTFE樹脂ディスパージョンを含浸(ディッピング)法、塗布法などでコーテイングして370℃程度の温度で焼成するという工程を複数回繰り返して、所望の厚みの被膜を形成させる方法が一般に採用されている。これは、PTFE樹脂に代表されるフッ素樹脂が無極性であるために接着性に乏しく、例えばPTFE樹脂フィルムをガラスクロスに熱接着するというような通常の手段では、基材に強く固着した被膜を形成できないためである。
【0006】
【特許文献1】特開平9−278927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したようなフッ素樹脂単独のフィルムやシートの製造方法においては、物理強度は考慮されていないため、例えば構造材料部材としての強度に劣り使用に耐えないものである。一方、クロス基材にフッ素樹脂ディスパージョンを含浸・塗布する方法では工程数が多く、生産性が劣り高価であるため使用できる分野が限られている。さらに、水系溶媒によって繰り返し湿潤・加熱されるため、アラミド織布のような親水性を有する有機繊維で構成されたクロス基材の場合はいわゆる湿熱劣化を起こし、物理強度が低下するという問題がある。
【0008】
したがって、本発明は、含浸・焼成工程を繰り返さずに一連の連続した工程によって、所望の厚さを有し、かつ耐屈曲性、耐引裂性等の物理強度特性に優れ、例えば構造材料部材としても適した特性を有するフッ素樹脂積層シートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフッ素樹脂積層シートの製造方法は、シート状網状物を基材として利用したフッ素樹脂/シート状網状物積層シートの製造方法である。そしてその概要は、フッ素樹脂微粒子を計量ロールで計量すると同時に金網や繊維クロス・メッシュなどのシート状網状物の空隙と表面に所定量を付着させ、次にカレンダーロールでプレスし、その後焼成し、シート状網状物の上にフッ素樹脂層を有するフッ素樹脂積層シートとすることを特徴としている。
具体的には以下に記載のとおりである。
本発明のフッ素樹脂積層シートの製造方法は、フッ素樹脂微粒子を計量ロールでシート状網状物に所定量を付着させ、カレンダーロールでプレスし、その後焼成して積層シートとすることを特徴とする(請求項1)。本発明は、フッ素樹脂微粒子の付着、プレス、焼成が一連の工程であることが好ましい(請求項2)。 前記計量ロールが少なくとも1対の2本のロールからなり、少なくともロールギャップを調整することにより計量を行うことが好ましい(請求項3)。フッ素樹脂微粒子を計量ロールで前記シート状網状物の空隙に充填しかつ両面を包被するように付着させ、カレンダーロールでプレスし、続いて焼成することが好ましい(請求項4)。前記フッ素樹脂微粒子は、乳化重合法によって製造されたものであることが好ましい(請求項5)。フッ素樹脂微粒子が、四フッ化エチレン樹脂微粒子であることが好ましい(請求項6)。前記シート状網状物が、金属のシート状網状物であることが好ましい(請求項7)。
【0010】
本発明のフッ素樹脂積層シートの製造方法は、所定量のフッ素樹脂微粒子を計量と同時にシート状網状物の空隙及び表面に付着させ、カレンダーロールでプレスし、焼成するという工程を連続させることができるので、クロス基材をフッ素樹脂ディスパージョンに複数回含浸し、焼成する従来の方法のように同じ工程を繰り返す必要がなく、所望の厚さを有し、かつ物理強度特性を有するフッ素樹脂積層シートを生産性の優れた一連の連続した工程で製造することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明のフッ素樹脂積層シートの製造方法によれば、クロス基材をフッ素樹脂ディスパージョンに含浸させ、焼成する工程を繰り返すことなく一連の連続した工程において、シート状網状物の選択や、フッ素樹脂微粒子の付着量、カレンダーロールのプレス圧等を適宜調整することにより、所望の厚さを有し、耐屈曲性、耐引裂性等の構造材料部材として必要な物理強度特性を有するフッ素樹脂積層シートを製造することができる。しかも、数10μm程度の薄いフィルム状のものから、2〜3mm程度の厚さの板状のものまで自在に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のフッ素樹脂積層シートの製造方法の一例の概略説明図であり、図2は、本発明によるフッ素樹脂積層シートの一例の断面図である。
先ず、シート状網状物1を垂直に降下させ、下方に設けられている1対の計量ロール6の間を通過させる。その際、該計量ロールのロールギャップ(間隙)を調整することにより、所定量のフッ素樹脂微粒子5が計量され、同時に、シート状網状物1の空隙及び表面に所定量のフッ素樹脂微粒子5が付着して、フッ素樹脂微粒子が付着したシート状網状物2となって下方に進行して行く。次に該フッ素樹脂微粒子が付着したシート状網状物2はカレンダーロール7でプレスされて所望の厚さに仮成形され、フッ素樹脂微粒子がプレスされたシート状網状物3となる。続いて焼成機8に導入されて焼成され、フッ素樹脂が充填されたシート状網状物層11の両面にフッ素樹脂層12が積層されたフッ素樹脂積層シート4が得られる。
なお、本発明は、上記のようにフッ素樹脂微粒子の付着、プレス、焼結が連続して行われることでその効果を最大に発揮するものであるが、必要に応じて別々の工程としてもよい。
【0013】
上記図1では、シート状網状物1は垂直に降下しているが、それに限定されることなく例えば斜めに降下していてもよい。
フッ素樹脂微粉末の付着量は、計量ロールのロールギャップ以外に、ロール圧力、ロール周速、ロールの表面粗さ、ロールの材質、ロールの硬度、及びホッパーでのフッ素樹脂微粉末の溜りの深さ等によっても調整可能である。本発明は少なくとも計量ロールのロールギャップを調整することが好ましい。
なお、計量ロールの径が大きく、フッ素樹脂微粉末の溜りの深さが確保される場合は、ホッパーは無くてもよい。
計量ロールは少なくとも1対を有すればよいが、フッ素樹脂微粒子を多量に付着させたい場合などは、複数対を有してもよい。
【0014】
計量ロールのロールギャップはフッ素樹脂積層シートにおいて必要なフッ素樹脂の量に応じて決められる。すなわち、ロールギャップでフッ素樹脂の付着量が決まる。本発明においては、ロールギャップは0.5〜1.5mm程度が好ましい。例えば約0.2mm厚さのシート状網状体を使用して、ロールギャップを1.2mm程度にすると、付着量は約1000g/mとなる。
計量ロールの周速は、シート状網状体の走行速度に対して通常同一であればよいが、必要に応じて差を付けてもよい。
【0015】
計量ロールの材質は、金属、樹脂、ゴムなど必要に応じて適宜選択できるが、所定量のフッ素樹脂微粒子を均一に付着させるには硬い材質のものが好ましく、特に金属が好ましい。
ホッパーでのフッ素樹脂微粒子の溜りの深さは一定であることが好ましく、フッ素樹脂微粒子5はサプライ容器10からホッパー9に図示しない計量手段によって必要量を連続的に供給されることが好ましい。また、必要量を越える量を供給し、余分な量をオバーさせ溜りの深さを一定とする方法でもよい。
網状物のそれぞれの面の付着量に差を付けたい場合は、2本の計量ロールの周速に差をつけることや、フッ素樹脂微粒子の溜りの深さに差をつけること等により可能である。
また網状体の片面にのみフッ素樹脂微粒子を供給すれば、他の一面にはフッ素樹脂層を有さないフッ素樹脂積層シートを作製することもできる。
【0016】
カレンダーロールでプレスする目的は、フッ素樹脂微粒子同士、及びフッ素樹脂微粒子とシート状網状体とを密着させて、焼成後のフッ素樹脂積層シートの表面を平滑にすること、及び内部にボイドを発生させないことにある。
カレンダーロールは少なくとも1対を有すればよいが、必要に応じて複数対を有してもよいし、3本以上のロールを有する多段式であってもよい。
カレンダーロールは、金属ロール、弾性ロールを適宜使用することができる。弾性ロールとしては、必要に応じてアスベストロール、ミルコンロール、コットンロール、樹脂ロールなどから選択することができる。カレンダーロールの材質は、カレンダー後の厚さを均一とするためには硬い材質のものが好ましく、特に金属であることが好ましい。
カレンダーロールの圧力はフッ素樹脂微粒子同士、およびフッ素樹脂微粒子とシート状網状体が密着するのに必要な線圧であればよい。また、厚いフッ素樹脂積層シートを作製する場合は、ロールギャップを設けてもよい。
カレンダーロールの温度は、30〜100℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。温度が100℃を越えるとフッ素樹脂が軟化して厚さが不均一になり、30℃未満ではフッ素樹脂微粒子が密着しないため焼成後において表面に凹凸が生じ内部にボイドが発生しやすくなる。なお、カレンダーロールが加熱できない場合は、例えば、プレス前のフッ素樹脂微粒子が付着したシート状網状物2を加熱しておけばよい。
【0017】
焼成機の熱源としては、ガス、電気、赤外線、加熱気体等から適宜選択すればよい。
焼成温度は、焼成温度は焼成時間を配慮して適切な焼結がなされるよう選択されるが、一般的にフッ素樹脂の融点以上かつ融点+90℃以下であることが好ましく、融点+20℃以上かつ+70℃以下が好ましい。融点未満であると均一なフッ素樹脂層が形成されずボイドが残るなどの問題を生じる。融点+90℃を越えるとフッ素樹脂の溶融粘度が低くなり過ぎてフッ素樹脂積層シートの厚さが不均一になる。
焼成時間はラインスピードと焼成機の焼成炉長により決まる。
【0018】
本発明に使用するシート状網状物の材質としては、ステンレス、鉄、銅、真鍮等の金属、ガラス、セラミックス、炭素、及びアラミドやポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)に代表される耐熱性有機樹脂が挙げられる。形状としては、金網のようないわゆる網のみならず、メッシュ、クロス(織布)、不織布、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の多孔性のものを挙げることができる。これらの材質及び形状は限定されることなくフッ素樹脂積層シートの用途に応じた必要な強度、厚さ等や、プレス、焼成等の製造条件に応じて適宜選択することが可能である。
本発明においては、材質は特に構造材料部材等の物理強度特性が要求される用途に使用する場合においては金属が好ましく、その場合、形状は金網のようないわゆる網が好ましい。
【0019】
シート状網状物の厚さは、焼成後のフッ素樹脂積層シートの厚さ、及び使用目的に応じて選択すればよい。シート状網状物の空隙率も使用目的や必要とするフッ素樹脂微粒子付着量等により適宜選択する。
【0020】
本発明において用いるフッ素樹脂微粒子としては目的に応じて種々のフッ素樹脂を用いることが可能であり、四フッ化エチレン樹脂(PTFE、融点327℃)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP、融点275℃)、テトラエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA、融点310℃)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、融点220℃)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、融点156〜178℃)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE,融点270℃)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(融点220〜245℃)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE、融点295℃)等が挙げられる。フッ素樹脂の選択は用途に応じて耐熱性や耐薬品性に応じてすればよく、複数種類を混合してもよい。本発明は、耐熱性及び耐薬品性に優れる樹脂であるが故に、製造コスト面を含めて他に有効なシート成形法がないフッ素樹脂の成形に適し、とりわけ四フッ化エチレン樹脂のシート成形に好適である。
【0021】
本発明に用いるフッ素樹脂微粒子の平均粒子径は0.1〜1000μm、特に0.2〜600μm程度のものが、圧着により均一なフッ素樹脂微粒子層を形成できることから好ましい。また、粒子径が大きいとロールギャップが狭い場合にシート状網状体に均一に付着しないし、粒子径が小さいとロールギャップ広い場合にギャプから落下するおそれがあるので、ロールギャップに対して適正な粒子径を選択することが必要な場合もある。さらに、粒子径が小さいと流動性が低下するので、計量ロールによる付着量が不均一になりやすい。フッ素樹脂微粒子の付着量が不均一であると、焼成後のフッ素樹脂積層シートの表面に凹凸ができるとか、内部にボイドが発生する等の不具合が生じる。
フッ素樹脂微粒子の形状は、球状、繊維状、フレーク状、フィブリッド状、不定形など種々あり、目的に応じて選択できるが、計量ロールでの計量がスムースに行われ、粒子同士が密着しやすく均一でボイドの無いフッ素樹脂層を形成するには球状であることが好ましい。
【0022】
本発明に用いるフッ素樹脂微粒子の製法は、懸濁重合法、乳化重合法、粉砕法等が挙げられ、粒子径20〜600μmのモールディングパウダーや一次粒子径0.2〜0.4μmのファインパウダーとして市販されている。本発明においては、乳化重合法によって製造されたフッ素樹脂微粒子であることが好ましい。乳化重合法によるフッ素樹脂微粒子は比較的可塑性に優れておりカレンダーロールでのプレス成形によってフッ素樹脂微粒子相互が容易に接着され、欠点(例えばボイド)の少ない緻密なフッ素樹脂シートを製造することができる。
【0023】
以上のように、本発明のフッ素樹脂積層シートの製造方法によれば、所定量のフッ素樹脂微粒子を計量ロールで計量し、同時にシート状網状体に付着させ、カレンダーロールでプレスし、その後焼成するので、基材クロスをフッ素樹脂ディスパージョンに複数回含浸し焼成することを繰り返す従来の方法のように同じ工程を繰り返すことなく、所望の厚さを有するフッ素樹脂積層シートを一連の連続した工程で製造することを可能とし、従来にない極めて生産性に優れた技術である。またシート状網状体に金網のような強度の強いものを使用することにより、今まで使用が制限されていた構造材料部材等のような優れた物理強度特性が要求される分野にも広汎に使用することが可能である。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の実施例を詳細に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
使用した網状物及びフッ素樹脂微粒子は下記のとおりである。
<網状物>
・シート状網状物A:ステンレス金網(真鍋工業株式会社製、線径0.19mm、30メッシュ)
・シート状網状物B:ガラスクロス(ユニチカグラスファイバー株式会社製、商品名:L90F100S、厚さ0.18mm)
・シート状網状物C:炭素繊維クロス(厚さ0.18mm)
・シート状網状物D:ステンレスパンチングメタル(奥谷金網製作所製、孔径3mm、ピッチ4mm)
・シート状網状物E:ステンレス繊維クロス(厚さ0.18mm)
・シート状網状物F:ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO,ザイロン)繊維クロス(厚さ0.18mm)
<フッ素樹脂微粒子>
・フッ素樹脂微粒子A:PTFE微粒子(ダイキン工業社製、商品名:ポリフロンPTFEモールディングパウダー M391S、球状、乳化重合法)
・フッ素樹脂微粒子B:PTFE微粒子(ダイキン工業社製、商品名:ポリフロンPTFEファインパウダーF104、球状、乳化重合法)
・フッ素樹脂微粒子C:PTFE微粒子(ダイキン工業社製、商品名:ポリフロンPTFEモールディングパウダーM393、球状、乳化重合法)
・フッ素樹脂微粒子D:PCTFE微粒子(ダイキン工業社製、商品名:ネオフロンPCTFEモールディングパウダーM−300P、球状、乳化重合法)
【0025】
[実施例1]
図1において、シート状網状物Aとフッ素樹脂微粒子Aを使用し、計量ロール(材質:ステンレス、直径25mm)にて、ロールギャップ1.2mmの条件で、シート状網状物Aにフッ素樹脂微粒子Aを1000g/cm付着させた。シート状網状物Aの走行速度は0.4m/分、計量ロールの周速は0.4m/分、フッ素樹脂微粒子Aの溜りの深さは1cmであった。次にカレンダーロール(材質:鉄)に通し、温度50℃の条件でプレスし、続いて電気炉を有する焼成機(焼成炉長4m)に導入して、380℃で10分間焼成してシート状網状物Aの埋め込まれた厚さ500μmのフッ素樹脂積層シートを製造した。
【0026】
[実施例2〜8]
図1において、計量ロール、カレンダーロール、シート状網状物の走行速度、計量ロールの周速、フッ素樹脂微粒子の溜りの深さ、焼成時間を実施例1と同様にし、表1に示すシート状網状物及びフッ素樹脂微粒子の組み合わせで実施例2〜8を実施した。表1には計量ロールギャップ、フッ素樹脂微粒子付着量、カレンダーロール温度、焼成温度、フッ素樹脂積層シート厚さを記載した。
【0027】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように、本発明のフッ素樹脂積層シートの製造方法によれば、クロス基材をフッ素樹脂ディスパージョンに含浸させ、焼成する工程を複数回繰り返すような従来の製造に比べ、一連の連続工程で所望の厚さを有し、かつ耐屈曲性、耐引裂性等の構造材料部材として良好な物理強度特性を有するフッ素樹脂積層シートを極めて容易に製造することができ、工業的生産に広く活用できる。また、本発明によって得られるフッ素樹脂積層シートはシート状網状物として強度の強い物を使用することにより、構造材料部材として今まで使用できなかった分野での使用も可能となる。また、シート状網状体として、フッ素繊維からなるクロスや不織布を用いれば、フッ素樹脂単独のシートとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のフッ素樹脂積層シートの製造方法の一例の概略説明図である。
【図2】本発明により製造されたフッ素樹脂積層シートの一例の端部を含む断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 シート状網状物
2 フッ素樹脂微粒子が付着したシート状網状物
3 フッ素樹脂微粒子がプレスされたシート状網状物
4 本発明によるフッ素樹脂積層シート
5 フッ素樹脂微粒子
6 計量ロール
7 カレンダーロール
8 焼成機
9 ホッパー
10 サプライ容器
11 フッ素樹脂が充填されたシート状網状体層
12 フッ素樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂微粒子を計量ロールでシート状網状物の空隙及び表面に所定量を付着させ、カレンダーロールでプレスし、その後焼成して積層シートとすることを特徴とするフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項2】
フッ素樹脂微粒子の付着、プレス、焼成が一連の工程であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項3】
前記計量ロールが少なくとも1対の2本のロールからなり、少なくともそのロールギャップを調整することにより計量を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項4】
フッ素樹脂微粒子を計量ロールで前記シート状網状物の空隙に充填しかつ両面を包被するように付着させ、カレンダーロールでプレスし、続いて焼成することを特徴とする請求項1乃至3に記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項5】
前記フッ素樹脂微粒子は、乳化重合法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項6】
フッ素樹脂微粒子が、四フッ化エチレン樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項7】
前記シート状網状物が、金属のシート状網状物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂微粒子を計量ロールでシート状網状物の空隙及び表面に所定量を付着させ、カレンダーロールでプレスし、その後焼成して積層シートとすることを特徴とするフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項2】
フッ素樹脂微粒子の付着、プレス、焼成が一連の工程であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項3】
前記計量ロールが少なくとも1対の2本のロールからなり、少なくともそのロールギャップを調整することにより計量を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項4】
フッ素樹脂微粒子を計量ロールで前記シート状網状物の空隙に充填しかつ両面を包被するように付着させ、カレンダーロールでプレスし、続いて焼成することを特徴とする請求項1乃至3に記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項5】
前記フッ素樹脂微粒子は、乳化重合法によって製造されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項6】
フッ素樹脂微粒子が、四フッ化エチレン樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。
【請求項7】
前記シート状網状物が、金属のシート状網状物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のフッ素樹脂積層シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−181824(P2006−181824A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376809(P2004−376809)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】