説明

フッ素系共重合体、重合性組成物、硬化性樹脂組成物、反射防止フィルム、偏光板および画像表示装置

【課題】低反射率特性に優れた塗膜を形成することができる反射防止フィルム形成に優れた共重合体等を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造単位および下記一般式(2)で表される構造単位を含む、共重合体。
一般式(1)
【化1】


(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
一般式(2)
【化2】


(一般式(2)中、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低反射率特性に優れた塗膜を形成することができる反射防止フィルム形成に優れた共重合体(フッ素系共重合体)、および、これを用いた光学材料等(特に、重合性組成物、硬化性樹脂組成物、反射防止フィルム、偏光板および画像表示装置等)に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するため、ディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止フィルムは、一般的には、支持体上に適切な膜厚であって、該支持体より低屈折率の低屈折率層を形成することにより作製できる。低い反射率を実現するために低屈折率層にはできるだけ屈折率の低い材料が望まれる。また、反射防止フィルムはディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。例えば、厚さ100nm前後の薄膜において、高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、および下層への密着性が必要である。
【0004】
材料の屈折率を下げるには、(1)フッ素原子を導入する、(2)密度を下げる(空隙を導入する)という手段が知られているが、いずれの手段も皮膜強度や界面の密着性が低下し、耐擦傷性が低下する傾向にあり、低い屈折率と高い耐傷性の両立はなされていなかった。
【0005】
皮膜強度を高める方法として、特許文献1、2に記載されているようにフッ素含有ゾルゲル膜を用いる方法があるが、この方法では、(1)硬化に長時間加熱を要し、製造の負荷が大きい、(2)鹸化液(アルカリ処理液)耐性が無く、プラスチックフィルム面を鹸化処理する場合に、反射防止フィルム製膜後にできない、などの大きな制約がある。
【0006】
一方、特許文献3〜5には、含フッ素共重合体中にポリシロキサン構造を導入して皮膜表面の摩擦係数を下げることにより、耐傷性を改良する手段が記載されている。この手段は耐傷性改良に対しては、ある程度有効であるものの、本質的な皮膜強度および界面密着性が不足している皮膜に対しては、十分な耐傷性が得られない。
また、特許文献6には、含フッ素共重合体と無機微粒子を併用することにより、皮膜強度および界面密着性を改良し、耐傷性を向上させる手段が記載されている。しかし、この手段では、無機微粒子が含フッ素共重合体のマトリックスに十分に分散されず、皮膜中で無機微粒子の粗密が発生しヘイズの上昇が起こる場合があることがわかった。この問題は、防眩性を有しない表面の平滑な低反射フィルムで特に問題となる。
【0007】
【特許文献1】特開2002−265866号公報
【特許文献2】特開2002−317152号公報
【特許文献3】特開平11−189621号公報
【特許文献4】特開平11−228631号公報
【特許文献5】特開2000−313709号公報
【特許文献6】国際公開WO−2004−017105A1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、低反射率特性に優れた塗膜を形成することができる反射防止フィルム形成に優れた共重合体を提供することにあり、かつ十分な反射防止性を維持したまま耐傷性の向上した反射防止フィルムを提供することにある。さらには、そのような反射防止フィルムを用いた偏光板やディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、ある特定の構造を有する共重合体が低反射率特性と皮膜強度の向上を両立することを見出すことにより、本課題を解決するに至った。前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
(1)下記一般式(1)で表される構造単位および下記一般式(2)で表される構造単位を含む、共重合体。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
(2)下記一般式(1)で表される構造単位、下記一般式(2)で表される構造単位および下記一般式(3)で表される構造単位を含む共重合体。
一般式(1)
【化3】

(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
一般式(2)
【化4】

(一般式(2)中、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(3)
【化5】

(一般式(3)中、R5は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基(アニリノ基を含む)を表し、R6はアルキル基を表す。)
(3)前記一般式(1)で表される構造単位を20モル%以上、前記一般式(2)で表される構造単位を0.05モル%以上、前記一般式(3)で表される構造単位を20%モル以上含む(2)に記載の共重合体。
(4)前記一般式(1)中のR1およびR2の少なくとも一方が、フッ素原子を含む炭素数2〜6のアルキル基、またはフッ素原子を含むアリール基である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の共重合体。
(5)前記一般式(3)中のR5およびR6が共にメチル基である、(2)〜(4)のいずれか1項に記載の共重合体。
(6)重量平均分子量が2,000〜1,000,000である(1)〜(5)のいずれか1項に記載の共重合体。
(7)下記一般式(4)で表される化合物とポリシロキサン含有化合物とを含む重合性組成物。
一般式(4)
【化6】

(一般式(4)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
(8)下記一般式(4)で表される化合物と、下記一般式(5)で表される化合物と、ポリシロキサン含有化合物とを含む重合性組成物。
一般式(4)
【化7】

(一般式(4)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
一般式(5)
【化8】

(一般式(5)中、R5は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基(アニリノ基を含む)を表し、R6はアルキル基を表す。)
(9)前記一般式(4)中のR1およびR2の少なくとも一方が、フッ素原子を含む炭素数2〜6のアルキル基、またはフッ素原子を含むアリール基である、(7)または(8)に記載の重合性組成物。
(10)前記一般式(5)のR5およびR6が共にメチル基である、(8)または(9)に記載の重合性組成物。
(11)(1)〜(6)のいずれか1項に記載の共重合体、および溶剤を含有する、硬化性樹脂組成物。
(12)(11)に記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる硬化膜。
(13)(11)に記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる硬化膜からなる低屈折率層を有する、反射防止フィルム。
(14)偏光子と該偏光子の少なくとも片側に設けられた保護フィルムとを有し、前記保護フィルムが(13)に記載の反射防止フィルムである、偏光板。
(15)(13)に記載の反射防止フィルムを有する画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の共重合体および該共重合体を含む硬化性樹脂組成物は、低反射率特性に優れた良好な硬化膜を形成し、該硬化膜は、屈折率が低く耐擦傷性に優れる。従って、本発明の共重合体および該共重合体を含む硬化性樹脂組成物は、特に、反射防止フィルム、光ファイバークラッド材等の光学材料の形成に有利に用いることができ、また、フッ素含量が高いことを利用して、耐候性が要求される基材に対する塗料用材料、耐候フィルム用材料、コーティング用材料等として好適に使用することができる。しかも、前記硬化膜は、屈折率が低く耐擦傷性に優れることに加え、基材に対する密着性に優れ、良好な反射防止効果を付与することから、反射防止フィルムとして特に有用であり、各種の表示装置に適用することにより、その視認性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0012】
A:共重合体
本発明で用いられる共重合体は、少なくとも、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)で表される繰り返し単位を含む共重合体である。
【0013】
一般式(1)
【化9】

(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
【0014】
一般式(1)中、R1およびR2がアルキル基の場合、該アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。また、アルキル基は、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、シクロヘキシル基などが好ましい例として挙げられる。
一般式(1)中、R1およびR2がアリール基の場合、炭素数6〜8であることが好ましい。具体的にはフェニル基、p−トリル基などが好ましい例として挙げられる。
さらに、R1およびR2の少なくとも一方はフッ素原子を1つ以上含む。該フッ素原子を含むR1および/またはR2は、フッ素原子を含む炭素数2〜6のアルキル基(例えば、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル基(ヘキサフルオロイソプロピル基)などが挙げられる。)、またはフッ素原子を含むアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であることが好ましい。
【0015】
一般式(2)
【化10】

(一般式(2)中、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
【0016】
一般式(2)中、R3およびR4がアルキル基の場合、該アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。また、アルキル基は、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、シクロヘキシル基などが好ましい例として挙げられ、メチル基が特に好ましい。R3およびR4は後述するとおり、置換基で置換されていてもよいが、アルキル基が有する置換基としては、ハロゲン原子が特に好ましい。
一般式(2)中、R3およびR4がアリール基の場合、炭素数6〜8であることが好ましい。具体的にはフェニル基、p−トリル基などが好ましい例として挙げられる。
【0017】
本発明の共重合体は、上記一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)で表される構造単位に加え、下記一般式(3)で表される構成単位を含むことが好ましい。
一般式(3)
【化11】

(一般式(3)中、R5は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基(アニリノ基を含む)を表し、R6はアルキル基を表す。)
【0018】
一般式(3)中のR5がアルキル基である場合、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐であることが好ましい。アルキル基の炭素数は1〜6であることが好ましい。好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が挙げられる。
一般式(3)中のR5がアリール基である場合、炭素数6〜9であることが好ましく、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基などが好ましい例として挙げられる。
一般式(3)中のR5がアルコキシ基である場合、炭素数1〜7であることが好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェニルオキシ基などが挙げられる。
一般式(3)中のR5がアミノ基である場合は炭素数1〜7であることが好ましく、具体的にはN,N−ジメチルアミノ基、ピペリジノ基、アニリノ基などが挙げられる。
5として好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基またはトリフルオロメチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0019】
6であるアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐であることが好ましい。また、後述するとおり、置換基を有していてもよいが、特にハロゲン原子(さらに好ましくは、フッ素原子)を置換基として有することが好ましい。アルキル基の炭素数は1〜6であることが好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが挙げられ、メチル基が特に好ましい。
特に、一般式(3)中のR5およびR6が共に炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、ともにメチル基であることが最も好ましい。
【0020】
1〜R6は、さらに置換可能な基で置換されていてもよい。その時の置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)の他、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
【0021】
次に本発明の共重合体の原料となるモノマーについて説明する。
本発明の重合体は、例えば、下記一般式(4)で表される化合物とシロキサンユニット源を含む重合性組成物から合成することができる。一般式(4)で表される化合物は2種以上用いてもよい。
一般式(4)
【化12】

(一般式(4)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
一般式(4)中のR1およびR2は、それぞれ、一般式(1)におけるR1またはR2と同義であり、好ましい範囲も同義である。
この不飽和化合物にはトランス体(フマル酸ジエステル)と、シス体(マレイン酸ジエステル)があるが、どちららでもよく、好ましくはトランス体である。
【0022】
一般式(4)で表される化合物は、下記反応式Aに示すように、R1とR2が同じである場合(R1=R2=R)には、市販の塩化フマロイルとアルコールより単工程で合成することができる。R1とR2が異なる場合には、例えば、特開平8−160365号公報に記載の方法などを用いて無水マレイン酸を出発原料として、対応するアルコール2種と逐次反応させることにより得ることができる。
反応式A
【化13】

【0023】
以下に本発明で用いられる一般式(4)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0024】
【化14】

【0025】
【化15】

【0026】
本発明の共重合体は、一般式(4)で表される化合物、シロキサンユニット源に加え、下記一般式(5)で表される化合物を含む重合性組成物から合成したものがより好ましい。一般式(5)で表される化合物は2種以上用いてもよい。
【0027】
一般式(5)
【化16】

(一般式(5)中、R5は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基(アニリノ基を含む)を表し、R6はアルキル基を表す。)
一般式(5)中、R5およびR6は、それぞれ、一般式(3)におけるR5またはR6と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0028】
以下に本発明で用いられる一般式(5)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0029】
【化17】

【0030】
本発明の共重合体に含まれる一般式(2)で表される構造単位(シロキサンユニット)の導入部位や導入法は特に限定されないが、以下の3通りが代表的かつ好ましい手法である。
(1)シロキサンユニットを持つフマレートをモノマーの一つとして側鎖に導入する方法
(2)シロキサンユニットを持つビニルモノマーを用いて側鎖に導入する方法
(3)シロキサンユニットを有する開始剤を用いて主鎖に導入する方法
【0031】
(1)シロキサンユニットを持つフマレートをモノマーの一つとして側鎖に導入する方法
下記一般式(6)で表される化合物(フマル酸エステルまたはマレイン酸エステル)を原料の一つとして用いることが好ましい。
【0032】
一般式(6)
【化18】

(一般式(6)中、R7およびR8のうち少なくとも一方は、下記SU−1
【化19】

(上記式中、R9〜R13は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基を表し、L1は炭素数1〜20の連結基を表し、nは0または1の整数を表し、pは10〜1000の整数を表す。)
で表される置換基である。R7およびR8のうち一方のみがSU−1である場合、他方はアルキル基またはアリール基を表す。)
【0033】
7およびR8が、アルキル基の場合、該アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。また、アルキル基は、炭素数10以下のものが好ましく、炭素数5以下のものがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−トリフルオロエチル基、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル基などを挙げることができる。
7およびR8が、アリール基の場合、該アリール基は、炭素数6〜8のものが好ましく、フェニル基、メチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基などを好ましい例として挙げることができる。
【0034】
9〜R13がアルキル基の場合、該アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。また、アルキル基は、炭素数10以下のものが好ましく、炭素数5以下のものがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−トリフルオロエチル基、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル基などを挙げることができる。
9〜R13がアリール基の場合、該アリール基は、炭素数6〜8であることが好ましく、フェニル基、メチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基などを挙げることができる。
9〜R13としては、アルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
1は好ましくは炭素数5以下のアルキレン基である。
pは好ましくは30〜500の整数である。
【0035】
7〜R13は、置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)のほか、上記R1〜R6の置換基として例示した置換基が好ましい例として挙げられる。
【0036】
以下に一般式(6)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【化20】

【0037】
(2)シロキサンユニットを持つビニルモノマーを用いて側鎖に導入する方法
一般式(4)で表される化合物および一般式(5)で表される化合物と共重合しうる任意の含シロキサンビニルモノマーを原料とすることが可能であり、例えば、下記一般式(7)で表される化合物、下記一般式(8)で表される化合物および一般式(9)で表される化合物で表される化合物の少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0038】
【化21】

【0039】
一般式(7)〜(9)中、R14は水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、水素原子またはメチル基が好ましい。
また、SU−1中のR9〜R13、L1、p、nの定義および好ましい例については上記一般式(6)中で述べた定義と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0040】
下記に一般式(7)〜(9)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0041】
【化22】

【0042】
【化23】

【0043】
(3)シロキサンユニットを有する開始剤を用いて主鎖に導入する方法
分子内にシロキサンユニットを有する開始剤を用いることにより、主鎖にシロキサンユニットを導入することが可能である。シロキサンユニットを有する開始剤の種類は特に限定されないが、例として、下記一般式(10)で表される構造単位を有するシロキサンユニット含有アゾ開始剤が挙げられる。
【0044】
一般式(10)
【化24】

(一般式(10)中、R15〜R18は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、Xは10〜1000の整数を表す。)
【0045】
一般式(10)中のR15〜R18がアルキル基の場合、該アルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましい。アルキル基は、炭素数10以下のものが好ましく、炭素数5以下のものがより好ましい。アルキル基は、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−トリフルオロエチル基、1H,1H−ペンタフルオロプロピル基などを挙げることができる。
一般式(10)中のR15〜R18がアリール基の場合、該アリール基は、炭素数6〜8のものが好ましく、フェニル基、メチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基などを挙げることができる。
また、Xは、好ましくは30〜500の整数である。
【0046】
下記に一般式(10)で表されるシロキサンユニット含有アゾ開始剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0047】
【化25】

【0048】
この中でも和光純薬(株)製のポリシロキサン含有アゾ開始剤である「VPS1001」(10−1)もしくは「VPS0501」(10−2)が特に好ましい例として挙げられる。
また、これらシロキサンユニット含有アゾ開始剤を用いて重合する場合、他の一般的なラジカル重合開始剤を併用してもよい。
【0049】
本発明の共重合体の原料モノマー(例えば、一般式(4)で表される化合物、一般式(5)で表される化合物および一般式(6)で表される化合物等)のほか、該原料モノマーと共重合しうる任意のビニルモノマー(モノマーC)を用いてもよい。モノマーCは密着性や溶剤溶解性の付与、架橋性基あるいは架橋性基を連結させるための置換基などの機能を有することも可能である。
【0050】
下記にラジカル共重合可能なモノマーCの具体例を挙げるが、本発明で用いることができる化合物はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0051】
【化26】

【0052】
【化27】

【0053】
【化28】

【0054】
【化29】

【0055】
本発明の共重合体は、一般式(1)で表される構造単位を20モル%以上、一般式(2)で表される構造単位を0.05〜20モル%含むことが好ましい。
さらに、一般式(3)で表される構造単位を含む場合、一般式(1)で表される構造単位を20モル%以上、一般式(2)で表される構造単位を0.05〜20モル%、一般式(3)で表される構造単位を20%モル以上含むことが好ましい。本発明の共重合体は、これらの構造単位の合計が100モル%となってもよいが、これら以外の構造単位を含んでいてもよい。
一般式(2)で表される構造単位を20モル%以下とすることにより、相分離を起こして樹脂の透明性が下がるのをより効果的に抑止でき、0.05モル%以上とすることにより、反射防止フィルムとしたときに、より十分な耐傷性および防汚性が得られる。
また、一般式(1)で表される構造単位を30モル%以上含むことがより好ましい。
さらに、一般式(2)で表される構造単位を0.5〜15モル%含むことがより好ましい。
加えて、一般式(3)で表される構造単位を30モル%以上含むことがより好ましい。
【0056】
本発明の共重合体は、少なくとも、一般式(1)で表される構造単位と、一般式(2)で表される構造単位を含むが、これらは、それぞれ、1種類のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。さらに、一般式(3)で表される構造単位も含む場合、該一般式(3)で表される繰り返し単位も、1種類のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
【0057】
本発明の共重合体は、透明(紫外〜近赤外領域)で、非晶質な共重合体で、一般的な溶媒(特にテトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、アセトン)に可溶である。本発明の共重合体の分子量は、数平均分子量で、1,000〜1,000,000(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定したスチレン換算での数平均分子量)であることが好ましく、より好ましくは2,000〜900,000、さらに好ましくは5,000〜500,000である。一方、重量平均分子量では、好ましくは2,000〜1,000,000であり、より好ましくは10,000〜600,000である。
また、本発明の共重合体の屈折率は1.50以下であることが好ましく、より好ましくは1.45以下である。
さらに、本発明の共重合体のガラス転移温度温度(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、80〜160℃であることがより好ましい。
【0058】
以下に本発明で用いることのできる共重合体の例を挙げるが、これらの具体例に限定されるものではない。また、架橋剤または架橋性モノマーによって鎖どうしが連結されていてもよい。それぞれの構造単位の比率は任意に選択することができ、好ましい比率はすでに述べたとおりである。また、(SU−0501)、(SU−1001)は、それぞれ前述の開始剤VPS−0501、VPS−1001に由来するシロキサンユニットを示す。
【0059】
【化30】

【0060】
【化31】

【0061】
【化32】

【0062】
【化33】

【0063】
【化34】

【0064】
【化35】

【0065】
【化36】

【0066】
【化37】

【0067】
【化38】

【0068】
上記共重合体を製造する方法としては公知の重合方法を用いて製造することができる。例えば、塊状重合、溶液重合、水中またはエマルション中での乳化重合、懸濁重合方法などである。本発明の用途や要求性能等によって、重合方法を適宜選択することができる。
【0069】
本発明の共重合体の重合条件は特に限定されず、使用するモノマーや目的とする共重合体の分子量に応じて適宜選択される。
【0070】
重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができるが、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル4,4,ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物、または2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'―アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2'−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3'−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジーtert−ブチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
水性媒体中で行うプロセスの場合には、さらに無機のフリーラジカル発生剤、例えば過硫酸塩または「レドックス」化合物を用いることができる。
【0071】
また、分子量調節のために、適宜連鎖移動剤を用いてもよい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。前記連鎖移動剤については、重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、共重合体ハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0072】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いるのが好ましく、中でも、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
一般に、重合温度は選択した重合開始剤系の分解速度に依存し、好ましくは0〜200℃、より好ましくは40〜120℃である。
【0074】
本発明の共重合体を得るための重合反応は、その重合反応で得られた反応溶液をそのまま硬化性樹脂組成物として使用できるものが好ましく、有機溶剤を用いた溶液重合系で行うことが好ましい。ここに、好ましい重合溶媒としては、例えば、(1)酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類;(2)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;(3)テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;(4)N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;(5)トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;その他を挙げることができる。これらの中でも、エステル類、ケトン類およびエーテル類が好ましい。特に好ましくは、沸点があまり高くなく乾燥に負荷のかからない酢酸エチルやアセトン、メチルエチルケトンである。さらに必要に応じて、アルコール類、脂肪族炭化水素類等を混合使用することもできる。
【0075】
本発明の共重合体は、重合反応で得られた反応溶液に対し、適宜、後処理を行ってもよい。この後処理としては、一般的な再沈殿処理(例えば、重合反応溶液を、アルコール等よりなる共重合体の不溶化溶剤に滴加して共重合体を不溶化沈殿させる精製方法等)を行うことができ、次いで、得られる固形の共重合体を溶剤に溶解させることにより、特定の共重合体の溶液を調製することができる。また、重合反応溶液から残留モノマーを除去したものを、そのまま特定の共重合体の溶液として使用することもできる。
【0076】
B:共重合体を含む硬化性樹脂組成物
本発明の硬化性樹脂組成物は、実際上、硬化性を有することが好ましく、共重合体それ自体が十分な硬化性を有しない場合には、さらに各種架橋性化合物、添加剤および重合開始剤などを加え三次元架橋構造やIPN(Inter Penetrating Network)構造を取らせることにより、必要な硬化性を付与したり、硬化特性を改善したりしてもよい。そして、架橋性化合物が用いられる場合に、当該架橋性化合物と共重合体との混合物を硬化性樹脂組成物として用いること、または特定の共重合体と架橋性化合物の全部を反応させた反応生成物またはそれらの一部のみを反応させた状態のものを硬化性樹脂組成物として用いることもできる。
【0077】
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物は、好ましくは液の形態をとり、本発明の共重合体およびそれを溶解する溶剤を必須の構成成分とし、必要に応じて各種架橋剤、添加剤および重合開始剤を溶解して作製される。この際、固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは0.01〜60質量%であり、より好ましくは0.5〜50質量%、さらに好ましくは、1〜20質量%である。
【0078】
硬化性樹脂組成物に含まれる溶剤としては、本発明の共重合体を含む組成物が沈殿を生じることなく、均一に溶解または分散されるものであれば特に制限はなく、2種類以上の溶剤を併用してもよい。好ましい溶剤としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)等を挙げることができる。先に述べたように、重合反応で得られた反応溶液をそのまま硬化性樹脂組成物として使用できるのが好ましいので、重合溶媒が硬化性樹脂組成物に含まれる溶剤を兼ねるのが好ましい。さらに、該重合反応で得られた反応溶液を、重合溶媒と同種の溶剤でさらに適当量希釈して用いるのがより好ましい。
【0079】
その他、硬化性樹脂組成物にはシリカなどの微粒子、各種シランカップリング剤またはその加水分解部分縮合物、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜添加してもよい。
【0080】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる共重合体の硬化様式としては、例えば、以下の3つの方法が挙げられる。
一つ目は、共重合体の側鎖に水酸基、アミノ基などの官能基を付与し、多官能イソシアネートなどの多官能架橋剤と反応させることで3次元架橋構造を取らせる様式、二つ目は共重合体の側鎖に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を付与し、重合開始剤と反応させて3次元架橋構造を取らせる様式、そして3つ目は単官能、多官能の重合性基を有する化合物を共重合体中に添加し混合状態で重合させ、それらの間に直接の結合は無いが、各重合体同士の絡み合いを生じさせる様式で硬化特性を改善するものである。
以下にこれらの硬化様式について具体的に説明する。
【0081】
(1)一つ目は多官能架橋剤とそれと反応する官能基を有する共重合体の組み合わせからなる硬化性樹脂組成物であるが、本発明の共重合体が側鎖に水酸基を有する場合、側鎖の水酸基と(多官能)架橋剤とを反応させることによって硬化させる。本発明の共重合体中への水酸基の導入方法としては上述したように側鎖に水酸基または水酸基を保護した共重合体を共重合成分の一つとして導入し、必要に応じて脱保護する方法が好ましい。
一方、用いる(多官能)架橋剤は低分子でも、オリゴマーでも、高分子であってもよい。用いる(多官能)架橋剤の種類により(I)アミノ樹脂を用いる硬化、(II)多官能イソシアネートを用いる硬化、(III)カチオン重合性架橋剤を用いる硬化に分けることができる。(I)のアミノ樹脂による硬化を行う場合、用いるアミノ樹脂としては尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂などが挙げられるが、硬化膜の性能やコストの面からメラミン樹脂が特に好ましい。また、(II)の多官能イソシアネートを用いた硬化を行う場合、用いる多官能イソシアネート化合物としては、トリフェニルメタントリイソシアナート、トルイレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートなどが挙げられるが、反応性の面から、トルイレンジイソシアナートが特に好ましい。(III)カチオン重合性架橋剤による硬化を行う場合、用いる架橋剤はカチオン重合性基としてエポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基などの開環重合性基を持つもの好ましく、特にエポキシ基を持つものが好ましい。これら(I)、(II)、(III)の架橋方式は単独で使用してもよく、また、複数を組み合わせてもよい。(I)、(II)、(III)で用いられる架橋性化合物としてはここに示されている化合物に限らず、例えば、文献「架橋剤ハンドブック」(大成社)に示されている架橋剤を使用してもよい。
【0082】
(2)二つ目は本発明の共重合体の側鎖に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を付与し、重合開始剤と反応させて3次元架橋構造を取らせる様式であり、共重合体の構造が側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入した含フッ素共重合体の場合は導入された(メタ)アクリロイル基のラジカル重合により硬化を行う。該共重合体中への(メタ)アクリロイル基の導入方法としては下記(a)〜(f)の手法が好ましい。すなわち、(a)水酸基、アミノ基などの求核基を有する共重合体を合成した後に、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸とメタンスルホン酸の混合酸無水物を作用させる方法、(b)上記求核基を有する共重合体に、硫酸などの触媒存在下、(メタ)アクリル酸を作用させる方法、(c)上記求核基を有する共重合体にメタクリロイルオキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、(d)エポキシ基を有する共重合体を合成した後に(メタ)アクリル酸を作用させる方法、(e)カルボキシル基を有する共重合体にグリシジルメタクリレート等のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、(f)3−クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で脱塩化水素を行う方法である。これらの中でも、特に水酸基を有する共重合体に対しては(a)または(b)が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、熱の作用によりラジカルを発生するもの(熱重合開始剤)、または、光の作用によりラジカルを発生するものの(光重合開始剤)いずれのも利用可能である。
【0083】
(3)3つ目は単官能/多官能の重合性基を有する化合物を添加し共重合体中で重合させ、それらの間に直接の結合は無いが、重合体同士の絡み合いを生じさせる様式である。本発明の共重合体自自身は上記(1)または(2)のような官能基の導入は不要である。該共重合体にエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を加え、光重合開始剤存在下で活性エネルギー照射または熱重合開始剤存在下で加熱することにより硬化させる。用いる重合性化合物としてはエチレン性不飽和基を好ましくは1分子中に2個以上、さらに好ましくは5個以上有するものが用いられる。2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0084】
上記(2)または(3)において、熱の作用によりラジカル重合を開始する化合物を使用する場合は加熱によって膜の硬化が行われる。このような熱重合開始剤としては、有機若しくは無機過酸化物、有機アゾ若しくはジアゾ化合物などを用いることができる。具体的には、有機化酸化物として過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル4,4,ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)、アゾ化合物として、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2'−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3'−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジーtert−ブチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)などが挙げられる。なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0085】
熱によって硬化を行う場合、30〜200℃で硬化することが好ましく、より好ましくは80〜180℃であり、特に好ましくは100〜150℃である。加熱時間は、1秒〜100時間が好ましく、より好ましくは5秒〜20時間であり、特に好ましくは10秒〜1時間である。
【0086】
光の作用によりラジカル重合を開始する化合物を使用する場合は、活性エネルギー線の照射によって膜の硬化が行われる。このような光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、および、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンソイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、および、ベンゾインプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノ、4,4−ジクロロベンゾフェノン、および、p−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
また、最新UV硬化技術(P−359,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
【0087】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0088】
光による硬化を行う場合、照射する活性エネルギー線の照射は高圧水銀ランプもしくは365mmLEDを用いて行うことが好ましい。この際、酸素濃度0.5%以下の条件で紫外線照射を行うことが好ましく、より好ましくは酸素濃度0.3%以下の条件であり、特に好ましくは0.2%以下の条件である。照射エネルギーは300mJ/cm2〜1500mJ/cm2の範囲であることが好ましく、より好ましくは400mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲であり、特に好ましくは500mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲である。
【0089】
熱または光の作用によってラジカル重合を開始する化合物の添加量としては、炭素−炭素二重結合の重合を開始できる量であればよいが、一般的には硬化性樹脂組成物中の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%であり、特に好ましくは2〜5質量%である。
【0090】
本発明の共重合体を有する硬化性樹脂組成物からなる硬化膜は低屈折率層を形成すると共に耐擦傷性も両立するので種々の光学材料用途に展開可能である。例えば、反射防止フィルム、光ファイバークラッド材等の光学材料の形成に有利に用いることができ、また、フッ素含量が高いことを利用して、耐候性が要求される基材に対する塗料用材料、耐候フィルム用材料、コーティング用材料、その他としても好適に使用することができる。その中でも反射防止フィルムとしての用途が特に有用であり、各種の表示装置に適用することにより、その視認性を向上させることができる。
次に本発明の共重合体を有する硬化性樹脂組成物からなる低屈折率層を有する反射防止フィルム(低反射積層体とも称することがある)への適用について詳述する。
【0091】
反射防止フィルムの層構成
本発明の反射防止フィルムは、種々の層構成を取り得るが、透明な基材上に、必要に応じて後述のハードコート層を有し、その上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層された層構成になっている。低反射積層体の最も単純な構成は、基材上に低屈折率層のみを塗設した構成である。さらに反射率を低下させるには、反射防止層を、基材よりも屈折率の高い高屈折率層と、基材よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成することが好ましい。
本発明の反射防止フィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。下記構成において基材フィルムは、支持体として機能している。
・基材フィルム/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/帯電防止層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。
また、帯電防止層は導電性共重合体粒子または金属酸化物微粒子(例えば、ATO、ITO)を含む層であることが好ましく、塗布または大気圧プラズマ処理等によって設けることができる。
上記の例は、いわゆる防眩性の無い反射防止フィルムの構成例を示したが、防眩性の反射防止フィルムにも好ましく適用することができる。この場合、上記のどの層にも、防眩性を付与することは可能である。
【0092】
[高・中屈折率層]
本発明の反射防止フィルムの高・中屈折率層・ハードコート層を形成する素材について以下に説明する。
本発明の反射防止フィルムの高・中屈折率層の屈折率は、1.50〜2.40であることが好ましく、さらに好ましくは1.50〜1.80である。
本発明の高・中屈折率層には、皮膜形成バインダーを少なくとも含み、さらに層の屈折率を高めるため、および硬化収縮を低減するために無機フィラーを含有することができる。
【0093】
本発明の高・中屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
[皮膜形成バインダー]
本発明において、高・中屈折率層等の各層を形成するための皮膜形成組成物の主たる皮膜形成バインダー成分として、エチレン性不飽和基を有する化合物を用いることが、膜強度、塗布液の安定性、膜の生産性などの点で好ましい。主たる皮膜形成バインダーとは、例えば、無機微粒子を除く皮膜形成成分のうち10質量%以上を占めるものをいう。好ましくは、20質量%〜100質量%、さらに好ましくは30質量%〜95質量%である。
飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有する共重合体であることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有する共重合体であることがさらに好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダー共重合体としては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体または共重合体が好ましい。
高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、および窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0094】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。尚、本明細書においては、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートまたはメタクリレート」を表す。
【0095】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0096】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
光、熱ラジカル重合開始剤としては、前述のものが使用できる。
【0097】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いて共重合体中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダー共重合体に導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダー共重合体は塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。また、本発明においてはポリエーテルを主鎖として有する共重合体を使用することもできる。多官能エポキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポキシ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。共重合体の架橋反応性部位がカチオン重合可能な基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等)を有する場合、光で酸触媒を発生する重合開始剤を添加することが好ましい。
【0098】
光の作用により酸を発生する化合物としては、例えば、有機エレクトロニクス材料研究会(ぶんしん出版)編「イメージング用有機材料」p187〜198、特開平10−282644号公報等に種々の例が記載されておりこれら公知の化合物を使用することができる。具体的には、RSO3−(Rはアルキル基、アリール基を表す)、AsF6−、SbF6−、PF6−、BF4−等をカウンターイオンとするジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等の各種オニウム塩、トリハロメチル基が置換したオキサジアゾール誘導体やS−トリアジン誘導体等の有機ハロゲン化物、有機酸のo−ニトロベンジルエステル、ベンゾインエステル、イミノエステル、ジスルホン化合物等が挙げられ、好ましくは、オニウム塩類、特に好ましくはスルホニウム塩、ヨードニウム塩類である。
【0099】
[高・中屈折率層用無機フィラー]
高屈折率層には、層の屈折率を高めるため、および硬化収縮を低減するために、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒子サイズが、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下、さらに好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
高屈折率層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2の組み合わせ等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理またはチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、高屈折率層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、さらに好ましくは30〜70%である。
なお、このようなフィラーは、粒子サイズが光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダー共重合体に該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0100】
本発明の高屈折率層のバインダーおよび無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダーおよび無機フィラーの種類および量の割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験を行うことにより容易に知ることができる。
【0101】
本発明の反射防止フィルムは高屈折率層よりも屈折率が低く、支持体より屈折率が高い、中屈折率層を設けることも好ましく、中屈折率層は高屈折率層に用いられる高屈折率フィラーや高屈折率モノマーの使用量を調節することにより、高屈折率層と同様に形成することができる。
【0102】
[その他の層]
反射防止フィルムには、さらに、ハードコート層、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層を設けてもよい。ハードコート層は、透明支持体に耐傷性を付与するために設ける。ハードコート層は、支持体とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系共重合体、ウレタン系共重合体、エポキシ系共重合体、シリコン系共重合体、シリカ系化合物等を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してよい。アクリル系共重合体は、多官能アクリレートモノマー(例えば、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系共重合体の例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコン系共重合体としては、シラン化合物(例えば、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例えば、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。2種類以上の共重合体を組み合わせて用いてもよい。シリカ系化合物としては、コロイダルシリカが好ましく用いられる。ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上である好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。支持体の上には、ハードコート層に加えて、接着層、シールド層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0103】
このようにして形成された本発明の反射防止フィルムは、ヘイズ値が好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下で、さらに好ましくは3%以下であり、450nm〜650nmの平均反射率が、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.5%以下である。
本発明の反射防止フィルムが上記範囲のヘイズ値および平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴わずに、反射防止性が得られる。
【0104】
[支持体]
本発明の反射防止フィルムの支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成する共重合体としては、セルロースエステル(例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム株式会社製TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。また、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルムおよびその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されており、ここに記載されたセルロースアシレートも本発明に好ましく用いることができる。
【0105】
また、本発明の反射防止フィルムは、偏光板の保護膜として好ましく用いることができる。
【実施例】
【0106】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0107】
[共重合体の物性測定方法]
平均分子量
共重合体の平均分子量は、得られた共重合体の一部をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。本発明における共重合体の数平均分子量(Mn)は、ポリスチレンを標準物質とした値である。
なお、装置は、HLC−8220(東ソー製)、カラムはTSKgel SuperHZM-H ( 4.6 mmI.D.×15 cm )、TSKgel SuperHZ4000 ( 4.6 mmI.D.×15 cm )、 TSKgel SuperHZ2000 ( 4.6 mmI.D.×15 cm ) の3本を連結して使用した。
試料濃度は2質量%、インジェクト量は10μl、流速0.35 ml/minで、RI検出器を用いて行った。
【0108】
ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(品番:DSC6200、セイコー電子社製)を用いて10℃/分で昇温して測定した。
【0109】
屈折率
屈折率計(DR−M2、ATAGO社製)を用い、観測波長589nm、測定温度25℃にて屈折率測定を行った。
【0110】
[硬化膜の評価方法]
平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。後に示す表1では、450〜650nmの鏡面平均反射率で表した。
【0111】
鉛筆硬度評価
反射防止フィルムを温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS K 5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。
【0112】
耐傷性試験
膜表面をスチールウール#0000を用いて、200gの荷重下で10回擦った後に、傷のつくレベルを確認した。判定は次の基準に従った。
全く傷がつかない :◎
わずかに傷がつく :○
細かい傷が目立つ :△
傷が著しい :×
【0113】
指紋およびマジック付着性評価
表面の耐汚染性の指標として、光学材料を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、サンプル表面に指紋を付着させてから、それをクリーニングクロスで拭き取ったときの状態を観察して、以下のように指紋およびマジック付着性を評価した。
指紋が完全に拭き取れる :◎
指紋がやや見える :○
指紋がほとんど拭き取れない :×
【0114】
白モヤの評価
低屈折層の無機微粒子の粗密のムラを評価する指標として、サンプルを黒紙の上に置き、サンプル直上50cmから拡散白色光をあてて、そのサンプルの散乱のムラの状態を観察して、以下のように評価した。
ムラが無く一様に観察される :○
白色の散乱ムラがサンプルの一部に観察される:△
白色の散乱ムラがサンプルの一面に観察される:×
【0115】
[共重合体合成例1]水酸基を側鎖に有する含フッ素共重合体P−22の合成
容量300mlのフラスコに(3−2)41.6g(100mmol)、(5−1)9.0g(90mmol)、(C−3)0.88g(10mmol)、アゾ基含有ポリジメチルシロキサン重合開始剤VPS1001(和光純薬製)2.0g、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)「V601」(和光純薬製)0.092g(0.4mmol))を入れ、これに50gのメチルエチルケトンを加え、アルゴンで置換後、65℃で24時間溶液重合を行った。得られた共重合体溶液をそのままヘキサン中に注ぎ、再沈精製を2回行い、含フッ素共重合体39.1gを得た。得られた共重合体はTg=102℃、重量平均分子量(Mw)=58,000、屈折率1.385であった。
【0116】
[共重合体合成例2]水酸基を側鎖に有する含フッ素共重合体P−24の合成
(3−2)を等モルの(3−1)に変更し、共重合体合成例1と同様にして共重合体を30.2g白色粉体として得た。得られた共重合体はTg=94℃、重量平均分子量(Mw)=66,000、屈折率1.416であった。
【0117】
[実施例1]
共重合体合成例1で得られた(P−22)の10質量%MEK溶液100gに対して、硬化剤としてメトキシ化メチルメラミン「サイメル303」(三井サイテック株式会社製)を1.5g添加し、70℃で5時間加熱反応処理をした。次いでこれに硬化触媒であるp−トルエンスルホン酸0.1gを添加して低屈折率層形成組成物を調整した。
この低屈折率層形成組成物を固形分6質量%まで希釈し、支持体(TAC、富士写真フイルム株式会社製)上に膜厚5μmのハードコート層(屈折率1.53)を設けた基材に、ワイヤーバーコーター(#3)を用いて塗布し、120℃で60分加熱して100nmの硬化膜を形成した。評価結果を表1に示した。
【0118】
[実施例2]
(P−22)を共重合体合成例2で得られた同重量の(P−24)に変えて、他は実施例1と同様にして硬化膜を形成した。評価結果を表1に示した。
【0119】
[比較例1]
特開平11−228631号公報に記載の実施例1の低屈折率層形成組成物を調整し、以下実施例1と同様にして硬化膜を形成した。評価結果を表1に示した。
【0120】
[共重合体合成例3]
メタクリロイル基を側鎖に有する含フッ素共重合体
共重合体合成例1で得られた共重合体(P−22)20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下メタクリロイルクロライド(和光純薬製)5.0gを滴下した後、室温で10時間撹拌した。酢酸エチルで抽出し、有機相を水洗、濃縮し、ヘキサンに加えて再沈した。さらにTHFに溶解してヘキサンで再沈殿させることにより含フッ素共重合体を白色粉体として13g得た。重量平均分子量(Mw)=64000、屈折率1.392であった。
【0121】
[共重合体合成例4]
(P−22)を共重合体合成例2で得られた同重量の(P−24)に変えて、共重合体合成例3同様に含フッ素共重合体を合成した。得られた共重合体(白色粉体)は13g、重量平均分子量(Mw)=61000、屈折率1.421であった。
【0122】
[実施例3]
上記共重合体合成例3で得られた共重合体10質量%MEK溶液100gに対して光重合開始剤としてイルガキュア907(チガバイギー社製)0.5g添加し、低屈折率層形成組成物とした。
この低屈折率層形成組成物を固形分6質量%に希釈し、TAC上に膜厚5μmのハードコート層(屈折率1.53)を設けた基材にワイヤーバーコーター(#3)を用いて塗布し、80℃で1分間乾燥した。次いで窒素雰囲気下で紫外線を照射し、硬化膜を形成した。評価結果を表1に示す。
【0123】
[実施例4]
用いる共重合体を、上記共重合体合成例4で得られたものに変えて、実施例3と同様にして硬化膜を形成した。評価結果を表1に示す。
【0124】
[比較例2]
特許登録第3498381号公報に記載の参考例11の低屈折率層形成組成物を調整し、以下実施例3と同様にして硬化膜を形成した。評価結果を表1に示す。
【0125】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位および下記一般式(2)で表される構造単位を含む、共重合体。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
【請求項2】
下記一般式(1)で表される構造単位、下記一般式(2)で表される構造単位および下記一般式(3)で表される構造単位を含む共重合体。
一般式(1)
【化3】

(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
一般式(2)
【化4】

(一般式(2)中、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(3)
【化5】

(一般式(3)中、R5は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基(アニリノ基を含む)を表し、R6はアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)で表される構造単位を20モル%以上、前記一般式(2)で表される構造単位を0.05モル%以上、前記一般式(3)で表される構造単位を20%モル以上含む請求項2に記載の共重合体。
【請求項4】
前記一般式(1)中のR1およびR2の少なくとも一方が、フッ素原子を含む炭素数2〜6のアルキル基、またはフッ素原子を含むアリール基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項5】
前記一般式(3)中のR5およびR6が共にメチル基である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項6】
重量平均分子量が2,000〜1,000,000である請求項1〜5のいずれか1項に記載の共重合体。
【請求項7】
下記一般式(4)で表される化合物とポリシロキサン含有化合物とを含む重合性組成物。
一般式(4)
【化6】

(一般式(4)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
【請求項8】
下記一般式(4)で表される化合物と、下記一般式(5)で表される化合物と、ポリシロキサン含有化合物とを含む重合性組成物。
一般式(4)
【化7】

(一般式(4)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表し、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
一般式(5)
【化8】

(一般式(5)中、R5は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基(アニリノ基を含む)を表し、R6はアルキル基を表す。)
【請求項9】
前記一般式(4)中のR1およびR2の少なくとも一方が、フッ素原子を含む炭素数2〜6のアルキル基、またはフッ素原子を含むアリール基である、請求項7または8に記載の重合性組成物。
【請求項10】
前記一般式(5)のR5およびR6が共にメチル基である、請求項8または9に記載の重合性組成物。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の共重合体、および溶剤を含有する、硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる硬化膜。
【請求項13】
請求項11に記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる硬化膜からなる低屈折率層を有する、反射防止フィルム。
【請求項14】
偏光子と該偏光子の少なくとも片側に設けられた保護フィルムとを有し、前記保護フィルムが請求項13に記載の反射防止フィルムである、偏光板。
【請求項15】
請求項13に記載の反射防止フィルムを有する画像表示装置。

【公開番号】特開2007−16085(P2007−16085A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196880(P2005−196880)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】