説明

フドステインと抗コリン薬を含有する医薬組成物

【課題】杯細胞過形成抑制作用を増強するためのフドステインと抗コリン薬とを含有する医薬組成物を提供すること。
【解決手段】フドステインとベラドンナ総アルカロイド、イソプロパミド、アトロピン、スコポラミン、ロートエキス、イソプロパミド、プロパンテリン、ピペリドレートなどの抗コリン薬を含有する医薬組成物であって、気道の杯細胞形成の抑制と、鎮咳及び/又は去痰とを同時に行うため、感冒剤、急性又は慢性気管支炎の予防又は治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気道の杯細胞過形成を抑制するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な気道の表面の多くは線毛上皮細胞で被われており、その中に気道粘液を産生する杯細胞が散在し、気道分泌液と線毛との協調作用により異物を排除している。しかし、気道分泌が亢進すると、気道内に気道分泌液又は気道分泌液及び異物の混合物が貯留して、細菌増殖の温床となるため、気道感染を反復したり気道閉塞をきたしたりすることが知られている。また、喫煙、種々の大気汚染物質又はアレルゲンの吸入、気道感染等で、気道分泌亢進のみならず杯細胞の過形成等が惹起され、これが長引くと急性呼吸器疾患から慢性難治性呼吸器疾患へ移行してしまう恐れがある(以上、例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このような悪循環を防ぐためには、急性期における通常の去痰剤による治療のみならず杯細胞過形成を抑制するための対処も必要である。杯細胞過形成抑制作用を有する薬剤としてフドステインが知られている。フドステインは2001年に本邦で開発された薬剤であり、慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息、肺結核、塵肺症、肺気腫、びまん性汎気管支炎等の慢性気道疾患における去痰の適応症を有する薬剤である(以上、例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
これまでに、フドステイン含有医薬組成物として以下のものが報告されている。
1)解熱鎮痛作用を有する薬剤との配合(特許文献1参照)。
2)鎮咳作用を有する薬剤との配合(特許文献2参照)。
【0005】
現在のところ、フドステインと抗コリン薬との併用について記載又は示唆した文献は見当たらず、その併用効果については不明であった。
【0006】
一方、抗コリン薬は、副交感神経を遮断することにより過剰な気道分泌を抑制することが知られており(例えば、非特許文献3参照)、総合感冒薬や鼻炎用薬に配合される例がある。
【0007】
なお、これまでの薬理学的知見からでは、抗コリン薬が杯細胞過形成抑制作用を有することは予想し難く、また、そのような効果を示唆した文献も存在しない。
【特許文献1】国際公開第2002/096406号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2002/096405号パンフレット
【非特許文献1】医薬ジャーナル、2002年、第38巻、第12号、p121−126
【非特許文献2】呼吸、2004年、第23巻、第2号、p143−148
【非特許文献3】薬理学、理工学社、1988年、p158−165
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、杯細胞過形成抑制作用を有する医薬組成物について鋭意研究を行った結果、意外にも、フドステインに抗コリン薬を併用することにより、フドステインの杯細胞過形成抑制作用が高まるという驚くべき結果を見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(1)フドステインと抗コリン薬を含有する医薬組成物であり、好適には、
(2)気道の杯細胞過形成を抑制するための(1)に記載の医薬組成物、
(3)鎮咳及び/又は去痰のための(1)に記載の医薬組成物、
(4)気道の杯細胞過形成の抑制と、鎮咳及び/又は去痰とを同時に行うための(1)に記載の医薬組成物、
(5)抗コリン薬が、ベラドンナ総アルカロイド、ベラドンナエキス、アトロピン、スコポラミン、ロートエキス、イソプロパミド、ダツラエキス、ベナクチジウム、プロパンテリン、ピペリドレート並びにそれらの薬理上許容される塩及びそれらの薬理上許容される誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上である(1)乃至(4)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(6)抗コリン薬が、ベラドンナ総アルカロイド及びベラドンナエキスから選ばれる1種又は2種である(1)乃至(4)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(7)感冒剤として用いるための(1)乃至(6)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(8)急性又は慢性気管支炎の治療に用いるための(1)乃至(6)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(9)慢性気道疾患における急性呼吸器感染時の症状の治療に用いるための(1)乃至(6)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(10)フドステインと抗コリン薬とを含有する配合剤である(1)乃至(9)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物及び
(11)フドステインを含有する医薬組成物と抗コリン薬を含有する医薬組成物とからなるキットである(1)乃至(9)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物である。
【0010】
更に本発明は、
(12)フドステインと抗コリン薬とを含有する配合剤である(1)乃至(9)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法、
(13)感冒剤を製造するための、(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用、
(14)フドステインと抗コリン薬とを同時に、順次又は別個に投与する方法及び
(15)哺乳動物に(1)乃至(9)から選択されるいずれか1項に記載された医薬組成物の有効量を投与する、感冒の予防方法又は治療方法を提供する。
【0011】
本発明の「フドステイン」とは、慢性気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息、肺結核、塵肺症、肺気腫、びまん性汎気管支炎等の慢性気道疾患における去痰の適応症を有する薬剤の有効成分である化合物、(−)−(R)−2−アミノ−3−(3−ヒドロキシプロピルチオ)プロピオン酸であり、その薬理上許容される塩をも含むが、好適には、(−)−(R)−2−アミノ−3−(3−ヒドロキシプロピルチオ)プロピオン酸である。
【0012】
本発明の「抗コリン薬」とは、副交感神経遮断薬とも呼ばれ、一般に医薬の分野でアセチルコリン受容体拮抗薬として作用するものであれば特に限定されないが、例えば、ベラドンナ総アルカロイド、ベラドンナエキス、アトロピン、ホマトロピン、スコポラミン、ロートエキス、イソプロパミド、ダツラエキス、ベナクチジウム、プロパンテリン、トロピカミド及びピペリドレート並びにそれらの薬理上許容される塩及びそれらの薬理上許容される誘導体等であり、好適には、ベラドンナ総アルカロイド、ベラドンナエキス、硫酸アトロピン、臭化水素酸ホマトロピン、臭化水素酸スコポラミン、臭化ブチルスコポラミン、ロートエキス、ヨウ化イソプロパミド、ダツラエキス、臭化メチルベナクチジウム、臭化プロパンテリン、トロピカミド、塩酸ピペリドレートであり、更に好適には、ベラドンナ総アルカロイド、ベラドンナエキス、ロートエキス、ヨウ化イソプロパミド、ダツラエキスであり、特に更に好適には、ベラドンナ総アルカロイドである。
【0013】
本発明における「薬理上許容される塩」とは、本発明の「フドステイン」又は「抗コリン薬」が、酸性基または塩基性基を有する場合に、塩基又は酸と反応させることにより、塩基性塩又は酸性塩にすることができるので、その塩を示す。
【0014】
「塩基性塩」としては、好適には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;N−メチルモルホリン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチルピペリジン塩、ピリジン塩、4−ピロリジノピリジン塩、ピコリン塩のような有機塩基塩類又はグリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩であり、好適には、アルカリ金属塩である。
【0015】
「酸性塩」としては、好適には、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリ−ルスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマ−ル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及び、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩であり、更に好適には、塩酸塩、臭化水素酸塩又は硫酸塩である。
【0016】
本発明における「薬理上許容される誘導体」としては、例えば、アミノ基が炭素数1乃至6のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシル基)で置換された誘導体である。
【0017】
本発明の「慢性気道疾患」とは、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、気管支喘息、肺結核、塵肺症、肺気腫、びまん性汎気管支炎等が挙げられる。
【0018】
本発明の「配合剤」とは、複数の成分が混合された単一の組成物をいう。
【0019】
本発明の「キット」とは、複数の別個の組成物を一式にして用いるものをいう。
【0020】
本発明の有効成分である「フドステイン」及び「抗コリン薬」は、大気中に放置したり又は再結晶をすることにより、水分を吸収し、吸着水が付いたり、水和物となったりする場合があるが、そのような水和物も本発明に使用される。
【0021】
本発明において、フドステインと抗コリン薬とは、同時に、順次又は別個に投与することができるが、一般に、臨床上は同時に投与するのが便利であり、それゆえ、フドステインと抗コリン薬とは、配合剤として投与することが好ましい。また、製剤技術上、当該両化合物を物理的に混合することが好ましくない場合は、それぞれの単剤を同時に、順次又は別個に投与することもできる。
【0022】
本発明における、「同時に」投与するとは、全く同時に投与することの他、薬理学上許される程度に相前後した時間に投与することも含むものである。その投与形態は、ほぼ同じ時間に投与できる投与形態であれば特に限定はないが、単一の組成物であることが好ましい。
【0023】
本発明における、「順次又は別個に」投与するとは、異なった時間に別々に投与できる投与形態であれば特に限定はないが、例えば、1の成分を投与し、次いで、決められた時間後に、他の成分を投与する方法がある。
【0024】
本発明における、「治療する」とは、病気又は症状を治癒させること又は改善させること或いは症状を抑制させることを意味する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のフドステインと抗コリン薬を含有する医薬組成物は、気道の杯細胞過形成を顕著に抑制し、ひいては優れた鎮咳及び/又は去痰作用を有することから有用である。
【0026】
本発明のフドステインと抗コリン薬を含有する医薬組成物は、一般に考えられる感冒等の症状の治療又は予防に有用であるが、好適には、急性又は慢性気管支炎等の症状の治療又は予防に有用であり、更に好適には、急性呼吸器感染症患者における急性気管支炎等の症状又はCOPD、気管支拡張症、気管支喘息、肺結核、塵肺症、肺気腫、びまん性汎気管支炎等の慢性気道疾患を有する患者における急性気管支炎等の症状の治療又は予防にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に用いられるフドステイン及び抗コリン薬は、公知の方法によって容易に合成可能であり、また市販品を購入することによっても入手可能である。以下に、フドステイン及び代表的な去痰剤について説明する。
【0028】
ベラドンナエキス、ロートエキス、硫酸アトロピン、臭化ブチルスコポラミン、臭化メチルベナクチジウム、臭化プロパンテリンは日本薬局方XIVに収載されている。
【0029】
また、塩酸ピペリドレートは日本薬局方外医薬品規格2002に収載されている。
【0030】
フドステイン、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド及びダツラエキスも既に医薬品として販売されている。
【0031】
フドステインの1回投与量は、適応症、年齢及び体重等により異なるが、通常、成人に用いる場合には、1mg/Kg乃至100mg/Kgであり、好適には、5mg/Kg乃至20mg/Kgであり、これを1日に、1乃至3回投与する。
【0032】
固形製剤の場合において、1日投与量中のフドステインの含有量は、通常、60mg乃至2400mgであり、好適には、120mg乃至1200mgであり、
ベラドンナ総アルカロイド及びダツラエキスの含有量は、通常、0.05mg乃至8mgであり、好適には、0.1mg乃至4mgであり、
ヨウ化イソプロパミド及び硫酸アトロピンの含有量は、通常、0.3mg乃至60mgであり、好適には、1mg乃至30mgであり、
ベラドンナエキス、ロートエキス、臭化ブチルスコポラミン、臭化メチルベナクチジウム、臭化プロパンテリンの含有量は、通常、5mg乃至800mgであり、好適には、10mg乃至400mgであり、
塩酸ピペリドレートの含有量は、通常、50mg乃至8000mgであり、好適には、100mg乃至4000mgである。
【0033】
液剤の場合において含有されるフドステインの含有量は通常、1mg/mL乃至1200mg/mLであり、好適には、5mg/mL乃至800mg/mLであり、
ベラドンナ総アルカロイド及びダツラエキスの含有量は、通常、0.005mg/mL乃至0.8mg/mLであり、好適には、0.01mg/mL乃至0.4mg/mLであり、
ヨウ化イソプロパミド及び硫酸アトロピンの含有量は、通常、0.03mg/mL乃至6mg/mLであり、好適には、0.1mg/mL乃至3mg/mLであり、
ベラドンナエキス、ロートエキス、臭化ブチルスコポラミン、臭化メチルベナクチジウム、臭化プロパンテリンの含有量は、通常、0.5mg/mL乃至80mg/mLであり、好適には、1mg/mL乃至40mg/mLであり、
塩酸ピペリドレートの含有量は、通常、5mg/mL乃至800mg/mLであり、好適には、10mg/mL乃至400mg/mLである。
【0034】
本発明においては、上記有効成分の他、必要に応じて解熱鎮痛消炎薬、鎮咳薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、交感神経興奮薬、中枢神経興奮薬、フドステイン以外の去痰薬、消炎酵素類、ビタミン類、生薬類等を本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0035】
これらの具体的な剤形としては、例えば、錠剤、細粒剤(顆粒剤、散剤を含む)、カプセル、液剤(シロップ剤を含む)等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基材を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
【0036】
上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。例えば、賦形剤、安定化剤、コーティング剤、滑沢剤、吸着剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、着色剤、pH調節剤及び香料等を添加することができる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)錠剤
(1)成分
(表1)
1乃至2錠中(mg) (1a) (1b) (1c) (1d)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フドステイン 400 400 400 400
ベラドンナ総アルカロイド、又は、 0.2 − − −
ダツラエキス
ヨウ化イソプロパミド、又は、 − 2 − −
硫酸アトロピン
ベラドンナエキス、ロートエキス、 − − 20 −
臭化ブチルスコポラミン、
臭化プロパンテリン、又は、
臭化メチルベナクチジウム
塩酸ピペリドレート − − − 200
乳糖 70 70 80 80
ステアリン酸マグネシウム 8 8 8 9
ヒドロキシプロピルセルロース 25 25 30 40
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。
【0039】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。
【0040】
(実施例2)顆粒剤
(1)成分
(表2)
1包中(mg) (2a) (2b) (2c) (2d)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フドステイン 400 400 400 400
ベラドンナ総アルカロイド、又は、 0.2 − − −
ダツラエキス
ヨウ化イソプロパミド、又は、 − 2 − −
硫酸アトロピン
ベラドンナエキス、ロートエキス、 − − 20 −
臭化ブチルスコポラミン、
臭化プロパンテリン、又は、
臭化メチルベナクチジウム
塩酸ピペリドレート − − − 200
乳糖 900 900 800 600
ポリビニルピロリドン 25 25 30 35
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。
【0041】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造する。
【0042】
(実施例3)カプセル剤
(1)成分
(表3)
1乃至2カプセル中(mg) (3a) (3b) (3c) (3d)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フドステイン 400 400 400 400
ベラドンナ総アルカロイド、又は、 0.2 − − −
ダツラエキス
ヨウ化イソプロパミド、又は、 − 2 − −
硫酸アトロピン
ベラドンナエキス、ロートエキス、 − − 20 −
臭化ブチルスコポラミン、
臭化プロパンテリン、又は、
臭化メチルベナクチジウム
塩酸ピペリドレート − − − 200
乳糖 200 200 160 100
ポリビニルピロリドン 25 25 30 35
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。
【0043】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造した後、カプセルに充てんして硬カプセル剤を製造する。
【0044】
(実施例4)シロップ剤
(1)成分
(表4)
10mL中(mg) (4a) (4b) (4c) (4d)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フドステイン 400 400 400 400
ベラドンナ総アルカロイド、又は、 0.2 − − −
ダツラエキス
ヨウ化イソプロパミド、又は、 − 2 − −
硫酸アトロピン
ベラドンナエキス、ロートエキス、 − − 20 −
臭化ブチルスコポラミン、
臭化プロパンテリン、又は、
臭化メチルベナクチジウム
塩酸ピペリドレート − − − 200
安息香酸ナトリウム 70 70 70 70
グリセリン 100 100 150 200
ポリビニルアルコール 80 80 80 80
白糖 1200 1200 1500 1500
精製水 残部 残部 残部 残部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。
【0045】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「シロップ剤」の項に準じてシロップ剤を製造した後、褐色ガラス瓶に充てんしてシロップ剤を製造する。
【0046】
(試験例)杯細胞形成抑制効果試験
(1)被験物質
ベラドンナ総アルカロイドはアルプス薬品工業(株)のものを使用した。また、フドステインは三菱ウエルファーマ(株)のクリアナール錠(商品名)を乳鉢内で粉砕して使用した。
【0047】
各被験物質は投与液量が5mL/Kgになるように、試験当日に0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)液を加えて調製した。
【0048】
(2)動物
F344/DuCrj雄性ラットの10週齢を日本チャールズリバー(株)から購入し、温度20〜26℃、湿度30〜70%、照明時間7時〜19時に制御されたラット飼育室内でラット用ブラケットテーパーケージに5匹ずつ入れ、飼料(マウス・ラット飼育用F−2、船橋農場製)および水フィルターを通した水道水を自由に摂取させて約1週間予備飼育した。試験開始日に肉眼で動物の健康状態を観察し良好なことを確認して体重を測定し無作為に1群7匹に群分けして用いた。
【0049】
(3)気道粘膜障害モデルの作製方法
ラットにペントバルビタール50mg/Kgを腹腔内投与して麻酔させ、仰臥位に固定し、頚部喉頭側皮膚を正中に切開して、筋肉を鈍性に分離し気管を露出させた。口腔からラット用の液体気管内投与器具を用いて、気管露出部から確認しながら気管内に挿入し、1%リポポリサッカライド(LPS)溶液を100μL投与した。直ちに、気管周囲筋肉を縫合して切開部皮膚をアロンアルファで接着させて気道粘膜障害動物を作成した。
【0050】
(4)試験
試験開始日の午前中に被験物質(対象群にはCMC液)を経口投与した後に、上述の方法でLPS溶液を気管内投与し、その日の夕刻に再度被験物質(対象群にはCMC液)を経口投与した。2日目と3日目は1日2回(午前と夕刻)被験薬(対象群にはCMC液)を経口投与した。
【0051】
4日目に体重を測定した後、ペントバルビタール麻酔下で頚動脈を切断して放血安楽死させてから、喉頭蓋部より肺までの気管を採取し、生理食塩水で洗浄後、10%中性緩衝ホルマリン液に親せき浸漬し充分に固定した。
【0052】
充分に固定後、気管を左右主気管支分岐部より上部約10mmで横断し、さらに上方に6mm以上の長さで横断し、管状の気管を切り出し観察材料とした。
【0053】
常法により、管状の気管を縦断して短冊状の薄切気管標本を作製し、これをアルシアン青・PAS染色で染色後、6mm長の範囲内の杯細胞数を顕微鏡下で計測した。なお、1例について2本の短冊状気管組織標本の杯細胞合計数を計測数とした。
【0054】
杯細胞形成抑制率(%)を次式より求めた。
【0055】
(式1)
杯細胞形成抑制率(%)=[1−B/A]×100
A:CMC投与群の杯細胞数の平均値
B:被験物質投与群の杯細胞数の平均値
(5)試験結果
得られた杯細胞形成抑制率の結果を表5に示す。なお、各値とも1群7匹の平均値である。
【0056】
(表5)
被験物質(投与量:mg/Kg/回) 杯細胞形成抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フドステイン(100) 4.0
ベラドンナ総アルカロイド(0.05) 5.1
フドステイン(100)
+ベラドンナ総アルカロイド(0.05) 29.9
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。
【0057】
表5より、フドステインにベラドンナ総アルカロイドを併用した場合には、フドステインの杯細胞形成抑制効果が増強されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の、フドステインと抗コリン薬を含有する医薬組成物は、杯細胞の過形成を顕著に抑制し、ひいては優れた鎮咳及び/又は去痰作用を有することから有用である。
【0059】
本発明のフドステインと抗コリン薬を含有する医薬組成物は、一般に考えられる感冒等の症状の治療又は予防に有用であるが、好適には、急性又は慢性気管支炎等の症状の治療又は予防に有用であり、更に好適には、急性呼吸器感染症患者における急性気管支炎等の症状又はCOPD、気管支拡張症、気管支喘息、肺結核、塵肺症、肺気腫、びまん性汎気管支炎等の慢性気道疾患を有する患者における急性気管支炎等の症状の治療又は予防にも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フドステインと抗コリン薬を含有する医薬組成物。
【請求項2】
気道の杯細胞過形成を抑制するための請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
鎮咳及び/又は去痰のための請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
気道の杯細胞過形成の抑制と、鎮咳及び/又は去痰とを同時に行うための請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗コリン薬が、ベラドンナ総アルカロイド、ベラドンナエキス、アトロピン、スコポラミン、ロートエキス、イソプロパミド、ダツラエキス、ベナクチジウム、プロパンテリン、ピペリドレート並びにそれらの薬理上許容される塩及びそれらの薬理上許容される誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1乃至請求項4から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
抗コリン薬が、ベラドンナ総アルカロイド及びベラドンナエキスから選ばれる1種又は2種である請求項1乃至請求項4から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
感冒剤として用いるための請求項1乃至請求項6から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
急性又は慢性気管支炎の治療に用いるための請求項1乃至請求項6から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
慢性気道疾患における急性呼吸器感染時の症状の治療に用いるための請求項1乃至請求項6から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
フドステインと抗コリン薬とを含有する配合剤である請求項1乃至請求項9から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
フドステインを含有する医薬組成物と抗コリン薬を含有する医薬組成物とからなるキットである請求項1乃至請求項9から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
フドステインと抗コリン薬とを含有する配合剤である請求項1乃至請求項9から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項13】
感冒剤を製造するための、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項14】
フドステインと抗コリン薬とを同時に、順次又は別個に投与する方法。
【請求項15】
哺乳動物に請求項1乃至請求項9から選択されるいずれか1項に記載された医薬組成物の有効量を投与する、感冒の予防方法又は治療方法。

【公開番号】特開2007−197423(P2007−197423A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342021(P2006−342021)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】