説明

フラッシュ充電回路及びフラッシュ充電制御方法

【課題】 必要最小限の構成により充電の高効率化及び電池の長寿命化を実現することができるフラッシュ充電回路を提供する。
【解決手段】 電源の電圧を昇圧する昇圧トランス11と、昇圧トランス11の二次コイル111から供給される電流によりフラッシュ発光用の電気エネルギを蓄積するコンデンサ16と、コンデンサ16への充電動作前に電源10の電圧を検出する電圧検出器13と、周囲の温度を検出する温度検出器14と、電圧検出器13により検出された電圧及び温度検出器14により検出された温度に基づいて昇圧トランス11の一次コイル110へ供給する電流の上限値を演算する演算部13と、演算部13により演算された上限値に基づいて一次コイル110への電流の供給を制御する制御部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の撮像装置に用いられるフラッシュ充電回路及びフラッシュ充電制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮像装置に用いられるフラッシュ充電回路としてフライバック式の昇圧回路が知られている。フライバック式の昇圧回路においては、昇圧トランスの一次側コイルに流れる一次側電流をオフすることにより二次側コイルに生じるフライバックパルスを整流しコンデンサに蓄えることにより昇圧が行われる。コンデンサの充電には大きな電流が必要であるため、高い充電効率が求められている。
【0003】
フライバック式の昇圧回路においては、カメラ内の温度や電源の出力電圧により充電効率が低下し、電池の寿命が短くなることがある。また、カメラ内の温度変化に伴うコンデンサの静電容量の変化、電源となる電池の消耗による出力電圧の低下等により、充電効率は低下する。
【0004】
そこで、昇圧を行う前に電池情報を検出し、電池情報に応じた充電制御を行うことにより充電の高効率化を図った充電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、昇圧を行う前に温度を検出し、温度に応じた充電制御を行うフラッシュ充電回路として、一次側電流をオン/オフするスイッチング素子(トランジスタ)に供給する制御信号のオン/オフ時間のデューティを予め設定し、設定されたデューティに応じて制御信号のオン/オフ時間を制御することにより充電の高効率化を図った装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−151290号公報
【特許文献2】特開2006−25597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、デジタルカメラの小型化が進んでおり、回路基板の実装スペース等の制約によりフラッシュ充電回路においても小型化、及び使用部品の削減が求められている。その結果、スイッチング素子を内蔵した充電制御手段として、例えば充電用の制御IC(Integrated Circuit)の使用が増大している。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の充電装置においては、フラッシュ充電回路の使用部品としてスイッチング素子、電流検出抵抗、比較回路が必要であり、制約のある実装スペースを考慮した回路構成になっていない。また、コンデンサの充電効率を高めるための具体的な制御方法が示されていない。
【0007】
また、特許文献2記載の充電装置においては、一次側電流のオン/オフのタイミングを制御することが提案されているが、この場合、一次側電流のオン/オフのタイミングが予め決められている充電用の制御ICを使用することができない。
【0008】
本発明の課題は、必要最小限の構成により充電の高効率化及び電池の長寿命化を実現することができるフラッシュ充電回路およびフラッシュ充電制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフラッシュ充電回路は、電源の電圧を昇圧する昇圧トランスと、前記昇圧トランスの二次コイルから供給される電流によりフラッシュ発光用の電気エネルギを蓄積するコンデンサと、前記コンデンサへの充電動作前に前記電源の電圧を検出する電圧検出器と、周囲の温度を検出する温度検出器と、前記電圧検出器により検出された前記電圧及び前記温度検出器により検出された前記温度に基づいて前記昇圧トランスの一次コイルへ供給する電流の上限値を演算する演算部と、前記演算部により演算された前記上限値に基づいて前記一次コイルへの電流の供給を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のフラッシュ充電制御方法は、電源の電圧を昇圧する昇圧トランスの二次コイルから供給される電流によりフラッシュ発光用の電気エネルギを蓄積するコンデンサへの充電動作前に前記電源の電圧を検出する電圧検出ステップと、周囲の温度を検出する温度検出ステップと、前記電圧検出ステップにより検出された前記電圧及び前記温度検出ステップにより検出された前記温度に基づいて前記昇圧トランスの一次コイルへ供給する電流の上限値を演算する演算ステップと、前記演算ステップにより演算された前記上限値に基づいて前記一次コイルへの電流の供給を制御する制御ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフラッシュ充電回路によれば、電圧検出器により検出された電圧及び温度検出器により検出された温度に基づいて昇圧トランスの一次コイルへ供給する電流の上限値を演算し、演算された上限値に基づいて一次コイルへの電流の供給を制御する。したがって、複雑な構成を用いることなく、周囲の温度及び出力電圧による充電効率の低下を防止することができ、必要最小限の構成により充電の高効率化及び電池の長寿命化を実現することができる。
【0012】
また、本発明のフラッシュ充電制御方法によれば、電圧検出ステップにより検出された電圧及び温度検出ステップにより検出された温度に基づいて昇圧トランスの一次コイルへ供給する電流の上限値を演算し、演算された上限値に基づいて一次コイルへの電流の供給を制御する。したがって、周囲の温度及び出力電圧による充電効率の低下を防止することができるため、充電の高効率化及び電池の長寿命化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係るフラッシュ充電回路について説明する。図1は、この実施の形態に係るフラッシュ充電回路の構成を示すブロック図である。この実施の形態に係るフラッシュ充電回路は、フラッシュを内蔵するカメラ等の撮像装置、またはカメラ等の撮像装置に用いられる着脱可能なフラッシュ装置に適用される。
【0014】
図1に示すフラッシュ充電回路は、フライバック式の昇圧回路であって、電源10、昇圧トランス11、制御IC12、MPU(Micro Processing Unit)13、温度センサ(温度検出部)14、整流ダイオード15、メインコンデンサ16、発光回路17を備えて構成されている。
【0015】
電源10からの電圧を昇圧する昇圧トランス11は、少なくとも2つのコイルを備えて構成されており、この実施の形態においては一次コイル110及び二次コイル111を備えている。電源10のプラス端子には昇圧トランス11の一次コイル110の一端が接続されており、一次コイル110の他端には制御IC12が接続されている。なお、電源10のマイナス端子はグラウンド18に接続されている。
【0016】
制御IC12は、昇圧トランス11の一次コイル110に供給する一次側電流を周期的に高速でオン/オフするスイッチング素子(図示せず)を内蔵している。この実施の形態に係るスイッチング素子は、高速でオン/オフのスイッチングが可能なMOS型FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のトランジスタである。なお、スイッチング素子としては、複合型FETまたはシリコントランジスタ等を用いてもよい。
【0017】
また、制御IC12は、メインコンデンサ16への充電の開始と終了を制御するラッチ部(図示せず)、昇圧トランス11の一次側電流や整流された二次側電流をモニタするモニタ部(図示せず)を備えている。ラッチ部は、メインコンデンサ16への充電の開始を示すH(High:オン状態)と、メインコンデンサ16への充電の終了を示すL(Low:オフ状態)との2つの動作態様を有している。モニタ部は、一次コイル110に流れる一次側電流及び二次コイル111に流れる二次側電流をモニタする。なお、この実施の形態においては、モニタ部は、制御IC12に接続されている一次コイル110の端部の電流値や電圧値から一次コイル110に流れる一次側電流及び二次コイル111に流れる二次側電流をモニタしているが、二次コイル111の一端を制御IC12に接続して一次コイル110及び二次コイル111に流れる電流をモニタするようにしてもよい。また、一次コイル110及び二次コイル111の一端を制御IC12に接続して一次コイル110及び二次コイル111に流れる電流をモニタするようにしてもよい。
【0018】
整流ダイオード15は、一次コイル110に流れる一次側電流がオフされた瞬間に昇圧トランス11の二次コイル111から発生するフライバックパルスを整流する。メインコンデンサ16は、整流ダイオード15により整流された二次側電流を電気エネルギとして蓄積することにより昇圧を行う。メインコンデンサ16にはフラッシュ発光のための発光回路17が接続されており、メインコンデンサ16に蓄積された電気エネルギはフラッシュ発光に用いられる。
【0019】
発光回路17は、メインコンデンサ16に充電された電気エネルギを光エネルギに変換する回路である。発光回路17には例えばキセノン管が備えられており、このキセノン管の放電によりフラッシュ発光を行う。
【0020】
MPU13には電圧検出器として機能するA/Dコンバータ20が内蔵されている。MPU13は、A/Dコンバータ20に入力された電源10の電圧S4をデジタル値に変換することにより電源10の電圧値を検出する。また、MPU13には温度センサ(温度検出器)14が接続されており、MPU13は、温度センサ14から出力される信号S6を受信する。MPU(演算部)13は、メインコンデンサ16への充電動作前に、電源10の電圧値を検出し、また温度センサ14から出力される信号S6を受信することによりカメラ内部の温度(周囲の温度)を検出し、検出した電圧値及び温度に基づいて昇圧トランス11の一次コイル110へ供給する一次側電流の上限値を演算する。
【0021】
また、MPU13は、メインコンデンサ16への充電開始を示す信号S1または充電停止を示す信号S2を制御IC12に対して送信する。また、MPU(制御部)13は、後述する一次側電流の上限値を示す信号S3を制御IC12に対して送信し、一次コイル110への電流の供給を制御する。これらの信号S1、S2及びS3は、MPU13のI/O出力ポート(図示せず)から出力される。なお、一次側電流の上限値を示す信号S3は、制御IC12に応じてD/A出力ポートからの出力信号、シリアル出カポートからのシリアル信号であってもよい。
【0022】
メインコンデンサ16の昇圧が行なわれ、メインコンデンサ16の電圧が満充電電圧に達したとき、制御IC12は、信号S5をMPU13に対して出力する。MPU13は、信号S5を受信することにより、メインコンデンサ16が満充電に達したと判断する。
【0023】
次に、MPU13による一次側電流の上限値の演算方法について説明する。まず、メインコンデンサ16の充電に必要なエネルギJは、メインコンデンサ16の静電容量をC,メインコンデンサ16の充電終了電圧をVoutとしたとき、(1)式で表すことができる。
J=1/2(C×Vout) [joule] (1)
【0024】
次に、充電効率kは、電源10の電圧値をVin、充電時の一次側電流をIin、充電時間をTとしたとき、(2)式で表すことができる。
k=(J/(Vin×Iin×T))×100 [%] (2)
【0025】
(1)式を(2)式に代入し、整理すると、(3)式になる。
k=(C×Vout)/(Vin×Iin×T)×50 [%] (3)
【0026】
(3)式の充電効率kが最大となるような一次側電流Iinの値を算出し、算出された値が一次側電流Iinの上限値となる。
【0027】
そこで、まず、(3)式のメインコンデンサ16の静電容量Cを求める。メインコンデンサ16の静電容量Cは、温度によって変化する。図2は、温度(横軸)とメインコンデンサ16の静電容量(縦軸)との関係を示すグラフである。図2に示すように、ある温度でのメインコンデンサ16の静電容量をCtmp、メインコンデンサ16の静電容量の温度による変化率をα、メインコンデンサ16の静電容量をCとしたとき、ある温度でのメインコンデンサ16の静電容量Ctmpは、(4)式で表すことができる。
Ctmp=α×C (4)
【0028】
MPU13は、温度センサ14からの出力信号S6を受信し、カメラ内部の温度を検出する。そして、検出された温度及び図2に示す温度によるメインコンデンサ16の静電容量の変化率αから、メインコンデンサ16の静電容量Ctmpを算出し、(3)式のCにCtmpを代入する。
【0029】
次に、(3)式のメインコンデンサ16の充電終了電圧Voutを求める。Voutは、制御IC12が充電終了電圧を検出した時点のメインコンデンサ16の電圧である。Voutは、本実施の形態におけるメインコンデンサ16の定格電圧が350Vであることから、一般的に300V〜320Vとなるように昇圧トランス11の一次コイル110と二次コイル111の巻き線比を調整して決定される。
【0030】
次に、(3)式の電源10の電圧値Vinを求める。MPU13は、信号S4がA/Dコンバータ20に入力され、デジタル値に変換されることにより電源10の電圧値Vinを検出する。
【0031】
次に、(3)式の充電時の一次側電流Iin及び充電時間(メインコンデンサ16が充電を終了するまでの所要時間)Tについて説明する。一次側電流Iinを増加させると充電時間Tは反比例し減少する。一次側電流Iinの上限値は制御IC12や昇圧トランス11の仕様により決定される値であるため、フラッシュ充電回路の構成による充電特性を測定しておくことが望ましい。図3は、フラッシュ充電回路の構成による充電特性の一例を示す図であり、一次側電流Iinをパラメータとした電源10の電圧Vin(横軸)と充電効率k(縦軸)との関係を示すグラフである。
【0032】
図3に示すように、電源10の電圧Vinが高くなるにしたがい、一次側電流Iinの大きさにかかわらず、充電効率kは高くなる。しかしながら、充電効率kが高くなる傾きは、一次側電流Iinの大きさにより変化する。例えば一次側電流Iinの値をA,B,C(A>B>C)としたとき、図3に示す実線は一次側電流Iinの値がAである場合の電圧Vin(横軸)と充電効率k(縦軸)との関係を示すグラフであり、破線は一次側電流Iinの値がBである場合の電圧Vin(横軸)と充電効率k(縦軸)との関係を示すグラフ、一点鎖線は一次側電流Iinの値がCである場合の電圧Vin(横軸)と充電効率k(縦軸)との関係を示すグラフである。一次側電流Iinが大きい場合(実線で示すAの場合)、充電効率kが高くなる傾きは全体として大きくなり、一次側電流Iinが小さい場合(一点鎖線で示すCの場合)、充電効率kが高くなる傾きは全体として小さくなる。
【0033】
一方、図3に示すように、電源10の電圧Vinが低い場合、一次側電流Iinが小さくなるにしたがい、充電効率kは高くなる。したがって、電源10の電圧Vinに適した一次側電流Iinを設定することにより充電効率kを最大にすることができる。更に、図2に示すようにカメラ内部の温度によりメインコンデンサ16の静電容量Cは変化するため、フラッシュ充電回路の構成による充電特性に加え、温度を変化させたときの充電特性も測定することで、電源10の電圧Vin及びカメラ内部の温度を考慮して充電効率kが最大となるように設定された一次側電流Iinの上限値を算出することができる。
【0034】
次に、MPU(電圧検出器)13により検出される電源10の電圧値から電源10の種類を判別し、電源10の種類に応じて一次側電流Iinの上限値を切り替えて充電を行う充電制御について説明する。
【0035】
電源10としてリチウムイオン電池を使用した場合、リチウムイオン電池の公称電圧は3.7Vである。一方、ACアダプタや外部電源はリチウムイオン電池への充電も行うため、その電圧は、3.7Vよりも高く設計されており、約4.2Vかそれ以上である。MPU(判別部)13は、A/Dコンバータ20に入力された信号S4に基づいて検出された電圧がリチウムイオン電池の電圧より大きい場合、ACアダプタや外部電源が接続されていると判別する。
【0036】
ここで、ACアダプタや外部電源においては、電池のように消耗するにしたがい出力電圧が低下することはなく、出力電圧は一定である。したがって、充電効率kよりも充電時間Tの短縮を優先させる充電制御を行う。即ち、図3に示す一次側電流Iinの値を大きくして(図3の実線A)、充電を行い、充電時間Tを短縮する。
【0037】
また、電池としてアルカリ電池を使用した場合、アルカリ電池の電圧は、リチウムイオン電池の電圧が消耗するにしたがい徐々に低下するのに対し、消耗途中で急激に低下する。したがって、MPU(判別部)13は、A/Dコンバータ20に入力された信号S4に基づいて検出された電圧の低下率をモニタすることにより、リチウムイオン電池とアルカリ電池のどちらが接続されているか判別することができる。電圧の低下率のモニタ方法として、例えば前回電源オンしたときの電圧を記憶しておき、記憶されている電圧と今回電源オンしたときの電圧を比較することにより電圧の低下率をモニタする。MPU13は、判別後、電池の種類に応じて一次側電流Iinの上限値を切り替えることにより充電制御を行う。なお、電源10の種類の判別方法として、カメラの使用者(ユーザー)に予め使用する電源10の種類を選択的に入力させるようにしてもよい。例えば、使用者がリチウムイオン電池、アルカリ電池、ACアダプタ等を示す情報を入力することにより電源10の種類を判別するようにしてもよい。
【0038】
次に、図4に示すフローチャートを参照して、この実施の形態に係るフラッシュ充電回路を用いたフラッシュ充電制御方法について説明する。図5は、この実施の形態に係るフラッシュ充電回路を用いたフラッシュ充電制御方法を説明するためのタイミングチャートである。
【0039】
まず、MPU13は、カメラ側からフラッシュ充電の指示を受け付け、充電動作を開始する前に、温度センサ14から信号S6を受信することでカメラ内部の温度を検出する(ステップS101、温度検出ステップ)。次に、MPU13は、温度センサ14により検出した温度に基づいてメインコンデンサ16の静電容量を算出する(ステップS102)。なお、MPU13が例えば図2に示す静電容量の変化率のテーブルを記憶する記憶部を備えるようにしてもよく、この場合には、MPU13は、記憶部に記憶されている静電容量の変化率のテーブルを参照してメインコンデンサ16の静電容量を算出する。
【0040】
次に、MPU13は、A/Dコンバータ20に入力された信号S4に基づいて電源10の電圧を検出する(ステップS103、電圧検出ステップ)。そして、MPU13は、ステップS103において検出した電源10の電圧から電源10の種類を判別する。即ち、電源10の電圧が電池の公称電圧より高いか否かを判別する(ステップS104、判別ステップ)。
【0041】
電源10の電圧が電池の公称電圧以下である場合(ステップS104、No)、MPU13は、電源10が電池であると判断し、ステップS102において算出した静電容量及びステップS103において検出した電圧(電池電圧)から、上述の(3)式を用いて(3)式の充電効率kが最大となる一次側電流Iinを算出する(ステップS105、演算ステップ)。
【0042】
一方、電源10の電圧が電池の公称電圧よりも高い場合(ステップSl04、Yes)、MPU13は、電源10がACアダプタまたは外部電源であると判断し、電源10の許容できる範囲で一次側電流Iinを設定する(ステップS107、演算ステップ)。即ち、ACアダプタまたは外部電源においては流すことができる電流の上限が決まっているため、ステップS103において検出した電圧Vinから、流すことができる上限以内の電流であって充電効率kが最も良い一次側電流Iinを求める。なお、MPU13が例えば図3に示すような充電効率を示すテーブルを記憶する記憶部を備えるようにしてもよく、この場合には、MPU13は、記憶部に記憶されている充電効率を示すテーブルを参照して、ステップS103において検出した電圧Vin(横軸)から、流すことができる上限以内の電流であって充電効率k(縦軸)が最も良い一次側電流Iinを求める。
【0043】
次に、MPU13は、ステップS105またはステップS107において求めた一次側電流Iinの上限値に基づいて一次コイル110への一次側電流Iinの供給制御を行う(制御ステップ)。即ち、一次側電流Iinの上限値を示す信号S3を制御IC12に対して出力し、制御IC12において一次側電流Iinの上限値を設定する(ステップS106)。
【0044】
次に、MPU13は充電開始を示す信号S1を制御IC12に対して出力する。制御IC12は、図5(a)に示すように、時間Tにおいて信号S1を受信することによりラッチ部をL(オフ状態)からH(オン状態)へ移行させる。そして、メインコンデンサ16への充電を開始する(ステップS108)。
【0045】
次に、制御IC12は、スイッチング素子をオンする(ステップ S109)。図5(b)に示すように、スイッチング素子がオン(Ton)されることにより一次コイル110に一次側電流が流れ始める。制御IC12内のモニタ部は、一次側電流が上限値に達したか否かをモニタする(ステップS110)。モニタ部は、一次側電流が上限値に達するまでモニタを継続する(ステップS110、No)。そして、一次側電流Iinが図5(b)に示すように上限値に達したとき(ステップS110、Yes)、制御ICl2は,スイッチング素子をオフする(ステップS111)。
【0046】
スイッチング素子がオフ(Toff)されることにより、図5(b)に示すように一次コイル110に流れていた一次側電流がストップすると同時に、図5(c)に示すように二次コイル111に二次側電流が流れ始める。即ち、図5(b)及び(c)に示すように、スイッチング素子がオン(Ton)されている間は、一次側電流は流れ、二次側電流は流れない。そして、スイッチング素子がオフ(Toff)されている間は、一次側電流は流れず、二次側電流は流れる。
【0047】
二次コイル111に二次側電流が流れ始めると、二次側電流は整流ダイオード15により整流され、図5(d)に示すように整流された二次側電流は電気エネルギとしてメインコンデンサ16に充電される。
【0048】
次に、制御IC12のモニタ部は、二次側電流をモニタする(ステップS112)。モニタ部は、二次側電流のメインコンデンサ16への充電終了を検知するまでモニタを継続する(ステップS112、No)。そして、二次側電流が図5(c)に示すように流れ終わり、メインコンデンサ16への充電が終了したとき(ステップS112、Yes)、MPU13は、メインコンデンサ16が満充電になったか否かを判定する(ステップS113)。即ち、MPU13は、メインコンデンサ16が満充電に達したことを示す信号S5を制御IC12から受信したか否かを判定する。
【0049】
メインコンデンサ16が満充電になっていない場合には(ステップS113、No)、ステップS109の処理に戻り、メインコンデンサ16が満充電になるまでステップS109〜ステップS113の動作を繰り返す。即ち、制御IC12はスイッチング素子のオン/オフを繰り返し、一次側電流及び二次側電流が交互に流れることによりメインコンデンサ16への充電を継続する。
【0050】
メインコンデンサ16が満充電になった場合には(ステップS113、Yes)、MPU13は、充電終了を示す信号S2を制御IC12に対して出力する。制御IC12は、時間Tにおいて信号S2を受信すると、図5(a)に示すようにラッチ部をH(オン状態)からL(オフ状態)へ移行させる。そして、メインコンデンサ16への充電を終了する(ステップS114)。メインコンデンサ16への充電終了後、カメラ側からトリガ信号が送信されることにより発光回路17にてフラッシュ発光がなされる。
【0051】
この実施の形態に係るフラッシュ充電回路によれば、MPU13により検出された電圧及び温度センサ14により検出された温度に基づいて昇圧トランス11の一次コイル110へ供給する一次側電流Iinの上限値を演算し、演算された上限値に基づいて一次コイル110への一次側電流の供給を制御する。したがって、複雑な構成を用いることなく、周囲の温度及び出力電圧による充電効率の低下を防止することができ、必要最小限の構成により充電の高効率化及び電池の長寿命化を実現することができる。
【0052】
また、この実施の形態に係るフラッシュ充電制御方法によれば、一次側電流の供給を制御することができるため、周囲の温度及び出力電圧による充電効率の低下を防止し、充電の高効率化及び電池の長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係るフラッシュ充電回路の構成を示すブロック図である。
【図2】温度とメインコンデンサの静電容量との関係を示すグラフである。
【図3】一次側電流をパラメータとした電源電圧と充電効率との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態に係るフラッシュ充電回路を用いたフラッシュ充電制御方法について説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係るフラッシュ充電回路を用いたフラッシュ充電制御方法について説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
【0054】
11…昇圧トランス、12…制御IC、13…MPU、14…温度センサ、15…整流ダイオード、16…メインコンデンサ、17…発光回路、20…A/Dコンバータ、110…一次コイル、111…二次コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の電圧を昇圧する昇圧トランスと、
前記昇圧トランスの二次コイルから供給される電流によりフラッシュ発光用の電気エネルギを蓄積するコンデンサと、
前記コンデンサへの充電動作前に前記電源の電圧を検出する電圧検出器と、
周囲の温度を検出する温度検出器と、
前記電圧検出器により検出された前記電圧及び前記温度検出器により検出された前記温度に基づいて前記昇圧トランスの一次コイルへ供給する電流の上限値を演算する演算部と、
前記演算部により演算された前記上限値に基づいて前記一次コイルへの電流の供給を制御する制御部と、
を備えることを特徴とするフラッシュ充電回路。
【請求項2】
前記制御部は、前記一次コイルへ供給される電流が前記上限値に達したとき前記一次コイルへの電流の供給をオフすることを特徴とする請求項1記載のフラッシュ充電回路。
【請求項3】
前記電圧検出器により検出された前記電圧から前記電源の種類を判別する判別部を更に備え、
前記演算部は、前記判別部により判別された前記電源の種類に応じた前記上限値を演算することを特徴とする請求項1または請求項2記載のフラッシュ充電回路。
【請求項4】
電源の電圧を昇圧する昇圧トランスの二次コイルから供給される電流によりフラッシュ発光用の電気エネルギを蓄積するコンデンサへの充電動作前に前記電源の電圧を検出する電圧検出ステップと、
周囲の温度を検出する温度検出ステップと、
前記電圧検出ステップにより検出された前記電圧及び前記温度検出ステップにより検出された前記温度に基づいて前記昇圧トランスの一次コイルへ供給する電流の上限値を演算する演算ステップと、
前記演算ステップにより演算された前記上限値に基づいて前記一次コイルへの電流の供給を制御する制御ステップと、
を含むことを特徴とするフラッシュ充電制御方法。
【請求項5】
前記制御ステップは、前記一次コイルへ供給される電流が前記上限値に達したとき前記一次コイルへの電流の供給をオフすることを特徴とする請求項4記載のフラッシュ充電制御方法。
【請求項6】
前記電圧検出ステップにより検出された前記電圧から前記電源の種類を判別する判別ステップを更に含み、
前記演算ステップは、前記判別ステップにより判別された前記電源の種類に応じた前記上限値を演算することを特徴とする請求項4または請求項5記載のフラッシュ充電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−16967(P2010−16967A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174169(P2008−174169)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】