説明

フルオロオレフィン重合

少なくとも1つのフッ素化モノマーを、開始剤および重合剤を含有する水性媒体中で重合させてフルオロポリマーの粒子の水性分散系を形成する工程を含む方法であって、前記重合剤が式(I):
f−O−(CF2n−COOX (I)
(式中、
fは、CF3CF2CF2−であり、
nは、3、5または7に等しい整数であり、
Xは、H、NH4、Li、NaまたはKである)
の化合物である方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性重合媒体中での少なくとも1つのフッ素化モノマーの分散重合法に関する。
【背景技術】
【0002】
高固形分フルオロポリマー分散系の成功裡の製造は、分散系を安定化させ、そして形成中のフルオロポリマー粒子の凝固を防ぐためにフルオロ界面活性剤の存在を一般に必要とする。フッ素化モノマーの分散重合に使用されるフルオロ界面活性剤は一般に、陰イオン性で、非テロゲン性で、水溶性であり、かつ、反応条件に安定である。最も広く使用されるフルオロ界面活性剤は、パーフルオロアルカンカルボン酸および塩、特にパーフルオロオクタン酸および塩ならびにパーフルオロノナン酸および塩である。界面活性剤の疎水性セグメントでのフルオロカーボン「テール」の存在は極めて低い表面エネルギーを提供することが知られている。かかるフッ素化界面活性剤は、それらの炭化水素相当品よりはるかにより界面活性である。米国特許第3,706,773号明細書で、Anelloらは、エーテル酸素を通して結合した高フッ素化末端分岐鎖を有するフルオロカーボンカルボン酸を開示した。しかしながら、分岐鎖フッ素化エーテルを含有する、かかるフッ素化界面活性剤は欠点を有する。かかる欠点は、厳しい皮膚刺激性で、高毒性の化合物である、パーフルオロケトン、特にヘキサフルオロアセトンがかかる分岐鎖フッ素化エーテルの製造に使用されることである。
【0003】
部分フッ素化エーテルカルボン酸および塩、ならびに過フッ素化エーテルまたはブチルエーテルが、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書に開示されているように分散重合に使用されてきた。加えて、米国特許出願公開第第2007/0015864号号明細書は、分散重合に使用されるフッ素化および部分フッ素化エーテルカルボン酸および塩を開示している。部分フッ素化界面活性剤は、過フッ素化界面活性剤ほど界面活性ではない。一般に、部分フッ素化界面活性剤中のプロトンの存在は、連鎖移動現象を誘発し、それ故にフルオロオレフィン重合用の界面活性剤として効率が悪い、劣った性能をもたらす。
【0004】
フッ素化界面活性剤のコストは、化合物中へ組み込まれたフッ素の量によって主として決定される。このように、より多いフッ素はより高い価格を意味する。しかしながら、例えば、表面張力低減における、フッ素化界面活性剤の性能は、フッ素化界面活性剤のフッ素化炭素鎖長さに比例する。フッ素化炭素鎖長さの増加は、表面張力低減の効率を高くするが、費用を増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
様々な条件にわたって安定であるフルオロポリマーの粒子の水性分散系を形成するためのフッ素化モノマーの分散重合法が必要とされている。生じた分散系の安定性に悪影響を及ぼすことなく、かかる重合に使用されるフルオロ界面活性剤中のフッ素の量を最小限にすることが必要とされている。本発明は、フルオロポリマーの安定な水性分散系を形成するためのフッ素化モノマーのかかる分散重合法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1つのフッ素化モノマーを、開始剤および重合剤を含有する水性媒体中で重合させてフルオロポリマーの粒子の水性分散系を形成する工程を含む方法であって、前記重合剤が式(I):
f−O−(CF2n−COOX (I)
(式中、
fは、CF3CF2CF2−であり、
nは、3、5または7に等しい整数であり、
Xは、H、NH4、Li、NaまたはKである)
の化合物である方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
商標は本明細書では大文字で示される。
【0008】
フルオロポリマー
本発明によって形成されるフルオロポリマー分散液は、少なくとも1つのフッ素化モノマー、すなわち、ここで、このモノマーの少なくとも1つがフッ素を含有し、好ましくは、少なくとも1つのフッ素またはパーフルオロアルキル基が二重結合炭素に結合したオレフィン性モノマーから製造されたフルオロポリマーの粒子からなる。本発明の方法に使用されるフッ素化モノマーは好ましくは独立して、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアルキルエチレン、フルオロビニルエーテル、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VF2)、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)およびパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)からなる群から選択される。好ましいパーフルオロアルキルエチレンモノマーは、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)である。好ましいフルオロビニルエーテルには、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、およびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)などのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)モノマー(PAVE)が含まれる。エチレンおよびプロピレンなどの非フッ素化オレフィン性コモノマーをフッ素化モノマーと共重合させることができる。
【0009】
フルオロビニルエーテルにはまた、フルオロポリマーへ官能性を導入するために有用なものが含まれる。これらには、CF2=CF−(O−CF2CFRfa−O−CF2CFR’fSO2F(式中、RfおよびR’fは独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0、1または2である)が含まれる。このタイプのポリマーは、米国特許第3,282,875号明細書(CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F、パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド))に、ならびに米国特許第4,358,545号明細書および同第4,940,525号明細書(CF2=CF−O−CF2CF2SO2F)に開示されている。別の例は、米国特許第4,552,631号明細書に開示されている、CF2=CF−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2CF2CO2CH3、パーフルオロ(4,7−ジオキサ−5−メチル−8−ノネンカルボン酸のメチルエステル)である。ニトリル、シアネート、カルバメート、およびホスフェートの官能性を持った類似のフルオロビニルエーテルは、米国特許第5,637,748号明細書;同第6,300,445号明細書;および同第6,177,196号明細書に開示されている。
【0010】
本発明は、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)を含むポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の分散系を製造するときにとりわけ有用である。PTFEおよび変性PTFEは典型的には、少なくとも約1×108Pa・sの溶融クリープ粘度を有し、かかる高溶融粘度で、このポリマーは溶融状態で有意に流れず、それ故溶融加工可能なポリマーではない。
【0011】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、いかなる有意なコモノマーも存在しない重合したテトラフルオロエチレンそれ自体を意味する。変性PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)と、得られたポリマーの融点がPTFEのそれよりも下に実質的に低下しないような少濃度のコモノマーとのコポリマーを意味する。かかるコモノマーの濃度は、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である。少なくとも約0.05重量%の最小量が有意な影響を及ぼすために好ましくは使用される。変性PTFEは、パーフルオロオレフィン、とりわけヘキサフルオロプロピレン(HFP)または、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が好ましい、アルキル基が1〜5個の炭素原子を含有する、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などの、焼き付け(融解)中のフィルム形成能力を向上させる少量のコモノマー変性剤を含有する。クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、または嵩高い側基を分子中へ導入する他のモノマーもまた含まれる。
【0012】
本発明は、溶融加工可能なフルオロポリマーの分散系を製造するときに特に有用である。溶融加工可能な、とは、押出し機および注入成型機など従来からの加工装置を使用してポリマーが溶融状態で加工できる(すなわち、それらの意図される目的のために有用であるのに十分な強度および強靱性を示すフィルム、繊維、およびチューブなどの造形品へ溶融物から二次加工できる)ことを意味する。かかる溶融加工可能なフルオロポリマーの例には、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのホモポリマー、またはテトラフルオロエチレン(TFE)と、コポリマーの融点をテトラフルオロエチレン(TFE)ホモポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のそれより実質的に下に、例えば、315℃以下の溶融温度に低下させるのに十分な量で通常ポリマー中に存在する少なくとも1つのフッ素化共重合性モノマー(コモノマー)とのコポリマーが挙げられる。
【0013】
溶融加工可能なテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーは典型的には、特定のコポリマーにとって標準的である温度でASTM D−1238に従って測定されるときに約1〜100g/10分のメルトフローレイト(MFR)を有するコポリマーを提供するために、ある量のコモノマーをコポリマー中へ組み込んでいる。好ましくは、溶融粘度は、米国特許第4,380,618号明細書に記載されているように修正されたASTM D−1238の方法によって372℃で測定されて少なくとも約102Pa・sであり、より好ましくは、約102Pa・s〜約106Pa・s、最も好ましくは約103Pa・s〜約105Pa・sの範囲であろう。追加の溶融加工可能なフルオロポリマーは、エチレン(E)またはプロピレン(P)とテトラフルオロエチレン(TFE)またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー、とりわけエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)およびプロピレンクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)である。本発明の実施での使用のための好ましい溶融加工可能なコポリマーは、少なくとも約40〜98モル%のテトラフルオロエチレン単位と約2〜60モル%の少なくとも1つの他のモノマーとを含む。テトラフルオロエチレン(TFE)との好ましいコモノマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの、3〜8個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィン、および/または線状もしくは分岐のアルキル基が1〜5個の炭素原子を含有するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)である。好ましいPAVEモノマーは、アルキル基が1、2、3または4個の炭素原子を含有するものであり、コポリマーは、幾つかのPAVEモノマーを使用して製造することができる。
【0014】
好ましいテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーには、1)テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン(TFE/HFP)コポリマー;2)テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(TFE/PAVE)コポリマー;3)パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)がパーフルオロ(エチルビニルエーテル)またはパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)であるテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(TFE/HFP/PAVE)コポリマー、;4)パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)のアルキル基が少なくとも2個の炭素原子を有する、溶融加工可能なテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(TFE/PMVE/PAVE)コポリマー;および5)テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデンコポリマー(TFE/HFP/VF2)が含まれる。
【0015】
さらなる有用なポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のフィルム形成ポリマーおよびフッ化ビニリデンのコポリマーならびにポリフッ化ビニル(PVF)およびフッ化ビニルのコポリマーである。
【0016】
本発明はまた、フルオロカーボンエラストマーの分散系を製造するときにも有用である。これらのエラストマーは典型的には、25℃より下のガラス転移温度を有し、室温で結晶化度をほとんどまたは全く示さない。本発明の方法によって製造されたフルオロカーボンエラストマーコポリマーは典型的には、フルオロカーボンエラストマーの総重量を基準として、25〜70重量%の、フッ化ビニリデン(VF2)またはテトラフルオロエチレン(テトラフルオロエチレン(TFE))であってもよい第1フッ素化モノマーの共重合単位を含有する。フルオロカーボンエラストマー中の残りの単位は、フッ素化モノマー、炭化水素オレフィンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、前記第1モノマーとは異なる、1つ以上の追加の共重合モノマーからなる。本発明の方法によって製造されたフルオロカーボンエラストマーはまた、任意選択的に、1つ以上の硬化部位モノマーの単位を含んでもよい。存在するとき、共重合した硬化部位モノマーは典型的には、フルオロカーボンエラストマーの総重量を基準として、0.05〜7重量%のレベルである。好適な硬化部位モノマーの例には、i)臭素−、ヨウ素−、または塩素−含有フッ素化オレフィンまたはフッ素化ビビニルエーテル;ii)ニトリル基含有フッ素化オレフィンまたはフッ素化ビニルエーテル;iii)パーフルオロ(2−フェノキシビニルエーテル);およびiv)非共役ジエンが挙げられる。
【0017】
好ましいテトラフルオロエチレン(TFE)ベースのフルオロカーボンエラストマーコポリマーには、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(TFE/PMVE);テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)/エチレン(TFE/PMVE/E);テトラフルオロエチレン/プロピレン(TFE/P);およびテトラフルオロエチレン/プロピレン/フッ化ビニリデン(TFE/P/VF2)が含まれる。好ましいフッ化ビニリデン(VF2)ベースのフルオロカーボンエラストマーコポリマーには、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン(VF2/HFP);フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン(VF2/HFP/TFE);およびフッ化ビニリデン/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン(VF2/PMVE/TFE)が含まれる。これらのエラストマーコポリマーのいずれも、硬化部位モノマーの単位をさらに含んでもよい。
【0018】
界面活性剤重合剤
本発明に従った方法は、少なくとも1つのフッ素化モノマーを、開始剤および重合剤を含有する水性媒体中で重合させてフルオロポリマーの粒子の水性分散系であって、前記フルオロポリマーが上に記載された通りである分散系を形成する工程を含む。重合剤は、次式(I):
f−O−(CF2n−COOX (I)
(式中、
fは、CF3CF2CF2−であり、
nは、3、5または7に等しい整数であり、
Xは、H、NH4、Li、NaまたはKである)
によって表される、1個の酸素を含有するパーフルオロアルキルエーテル酸もしくは塩界面活性剤である。
【0019】
好ましくは、nは3または5であり、より好ましくは、nは3である。好ましくは、XはNa、H、またはNH4であり、より好ましくは、XはNH4である。
【0020】
「鎖長」は、本出願で用いるところでは、本発明の方法に用いられるパーフルオロアルキルエーテル界面活性剤の疎水性テール中の最長線状鎖中の原子の数を意味する。鎖長は、パーフルオロアルキルエーテル界面活性剤の疎水性テールの鎖中の炭素に加えて酸素原子などの原子を含むが、最長線状鎖からの分岐を含まないかまたは陰イオン基の原子を含まず、例えば、カルボキシレート中の炭素を含まない。
【0021】
式(I)のパーフルオロアルキルエーテル界面活性剤を含む界面活性剤を分散重合法に使用することの利点の1つは、より安定な分散系の達成である。好ましくは、「フッ素効率」を上げるために減少したフッ素含有率を有する低下した濃度のフッ素化界面活性剤を使用する重合速度の増加もまた達成される。用語「フッ素効率」とは、本明細書で用いるところでは、ポリマーの所望の分散系を得るために最小量のフルオロ界面活性剤を使用する、およびより低いレベルのフッ素を使用する能力を意味する。フッ素含有率のレベルは、ポリマーの1グラム当たりの界面活性剤中のフッ素のマイクログラムで表される。分岐末端基を有するパーフルオロポリエーテルの使用は通常、線状末端基を有するパーフルオロポリエーテルでよりも高いフルオロ界面活性剤濃度を必要とする。
【0022】
例えば、表面張力低減での、フッ素化界面活性剤の効率は、存在するフッ素化炭素鎖長に比例する。フッ素化炭素鎖長の増加は、表面張力低減の効率を高くする。本発明に使用される式(I)のパーフルオロアルキルエーテル界面活性剤は、最小量のパーフルオロアルキルエーテル界面活性剤を使用してオレフィンフルオロモノマーの水性分散重合で所望の界面活性剤効果を得ることができるので「フッ素効率」を高くする。
【0023】
本発明に従って、式(I)のパーフルオロアルキルエーテル酸もしくは塩は、重合剤として有効に機能するために水性媒体中に好ましくは十分に分散される。「分散される」は、本出願で用いるところでは、パーフルオロアルキルエーテル酸もしくは塩界面活性剤が水性媒体に可溶である場合には溶解される、またはパーフルオロアルキルエーテル酸もしくは塩界面活性剤が水性媒体中に十分に可溶ではない場合には分散されて水性媒体中に非常に小さな粒子、例えば約1nm〜約1マイクロメートル粒度分布で存在する、のどちらかを意味する。同様に、「分散させる」は、本出願で用いるところでは、パーフルオロアルキルエーテル酸もしくは塩界面活性剤を溶解させる、またはそれが上に定義されたように分散されるように分散させる、のどちらかを意味する。好ましくは、パーフルオロアルキルエーテル酸もしくは塩界面活性剤は、パーフルオロアルキルエーテル酸もしくは塩界面活性剤を含有する重合媒体が無色透明またはほぼ無色透明に見えるように十分に分散される。
【0024】
好ましくは、本発明に従った好ましい方法で使用される重合剤の総量は、水性媒体中の水の重量を基準として約5〜約10,000マイクログラム/g、より好ましくは水性媒体中の水の重量を基準として約5〜約5000マイクログラム/gである。さらにより好ましくは、使用される重合剤の総量は、水性媒体中の水の重量を基準として約0.01%〜約10重量%、さらにより好ましくは約0.05%〜約3重量%、より好ましくは水性媒体中の水の重量を基準として約0.05%〜約3重量%である。
【0025】
重合剤の少なくとも一部は好ましくは、重合の開始前に重合に加えられる。その後加えられる場合、重合の全体にわたって連続的に、または重合中の予定の時間に1回分でもしくはある間隔で、を含む、重合剤についての添加の様々なモードを用いることができる。本発明の一実施形態に従って、重合剤の実質的に全ては、重合の開始前に、好ましくは開始剤添加前に水性媒体に加えられる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態に従って、本発明の実施に使用される重合剤は好ましくは、パーフルオロポリエーテル油(すなわち、中性の、非イオン性の、好ましくはフッ素または水素、末端基を有するパーフルオロポリエーテル)を実質的に含まない。パーフルオロポリエーテル油を実質的に含まないとは、水性重合媒体が水を基準として約10マイクログラム/g以下のかかる油を含有することを意味する。こうして、好ましく製造されたフルオロポリマー分散系は、高純度を有し、低い残留界面活性剤を含有し、好ましくはパーフルオロポリエーテル油を実質的に含まない。さらに、好ましい方法では、重合媒体は、重合の開始(キックオフ)時にフルオロポリマーシードを実質的に含まない。本発明のこの好ましい形態では、フルオロポリマーシード、すなわち、分散系形態での別個に重合された小さなフルオロポリマー粒子は、重合の開始前に加えられない。
【0027】
本発明に使用される式(I)の重合剤はフルオロポリマーを生成し、そして典型的なパーフルオロアルカンカルボン酸界面活性剤を使用し、高分散固形分濃度で製造されるものと実質的に同等の低下した非分散ポリマー(凝塊と言われる)を提供できることが分かった。
【0028】
本発明は、1個の酸素を含有する式(I)のフッ素化酸および塩の製造をさらに含む。式(I)のかかる化合物は、次のスキームに従って製造される:
【0029】
【化1】

【0030】
線状末端基C37を有するヨウ化パーフルオロアルキルエーテルC37−O−CF2CF2Iは、C25−COFをテトラフルオロエチレン(TFE)、ヨウ素(I2)、およびHFまたはアルカリ金属フッ化物(F-)と接触させることによって製造される。あるいはまた、ヨウ化パーフルオロアルキルエーテルC37−O−CF2CF2Iはまた、参照により本明細書に援用される、米国特許第5,481,028号明細書に、パーフルオロ−n−プロピルビニルエーテルからのこの化合物の製造を開示している、実施例8に記載されている手順によって製造することができる。上の通り製造された直鎖ヨウ化パーフルオロエーテルC37−O−CF2CF2Iとのテトラフルオロエチレン(テトラフルオロエチレン(TFE))のテロマー化は、構造C37−O−(CF2CF2p+1I(式中、pは1〜3以上、好ましくは1〜3の整数である)の化合物を生成する。これらの化合物はSO3と接触して構造C37−O−(CF22p+1−COFを有する1個の酸素を含有するフッ素化酸の化合物を生成し、それは加水分解されたときにC37−O−(CF22p+1−COOHを生成し、この酸は次に、構造C37−O−(CF22p+1−COONH4の化合物などの、関連する塩へ転化することができる。
【0031】
重合法
本方法はまた、加圧反応器でバッチ式、セミバッチ式または連続プロセスとして実施することができる。バッチ式プロセスでは、原料の全てがランの開始時に重合反応器に加えられ、容器から排出する前に完了まで反応するようにされる。セミバッチ式プロセスでは、1つ以上の原料(モノマー、開始剤、界面活性剤などの)が、反応器の初期プレチャージ後に反応にわたって容器に加えられる。セミバッチ式プロセスの完了時に、内容物が容器から排出される。連続プロセスでは、反応器は、予定の組成物をプレチャージされ、次にモノマー、界面活性剤、開始剤および水が反応器へ連続的にフィードされ、同時に等容量の反応物が反応器から連続的に取り出され、反応器内部に制御された容量の反応物をもたらす。このスタートアップ手順後に、連続プロセスは、フィード原料が反応器へ計量フィードされ続け、生成物が取り出される限り無限に行うことができる。シャットダウンが望ましいとき、反応器へのフィードは停止され、反応器から排出することができる。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態では、重合法は、加圧反応器でバッチ式プロセスとして実施される。本発明の方法を実施するための好適な垂直または水平反応器は、水性媒体用の攪拌機を備えている。反応器は、望ましい反応速度および用いられる場合コモノマーの一様な組み込みのためにテトラフルオロエチレン(TFE)などの気相モノマーの十分な接触を提供する。反応器は好ましくは、反応温度が制御された温度の熱交換媒体の循環によって都合よく制御されるように反応器を取り囲む冷却ジャケットを含む。
【0033】
典型的な方法では、反応器は重合媒体の脱イオン脱気水を先ず装入され、式(I)のパーフルオロアルキルエーテル酸もしくは塩界面活性剤が媒体中に分散される。パーフルオロアルキルエーテル酸もしくは塩界面活性剤の分散は、上に議論された通りである。重合剤の少なくとも一部は好ましくは、重合の開始前に重合に加えられる。その後加えられる場合、重合の全体にわたって連続的に、または重合中の予定の時間に1回分でもしくはある間隔でを含む、重合剤についての添加の様々なモードを用いることができる。
【0034】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホモポリマーおよび変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)については、安定剤としてのパラフィンワックスが多くの場合に添加される。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホモポリマーおよび変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のための好適な手順には、反応器をテトラフルオロエチレン(TFE)で先ず加圧する工程が含まれる。使用される場合、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)またはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などのコモノマーが次に加えられる。過硫酸アンモニウム溶液などのフリーラジカル開始剤溶液が次に加えられる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホモポリマーおよび変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)については、ジスクシニルペルオキシドなどのコハク酸源である第2開始剤が凝塊を減らすために開始剤溶液中に存在してもよい。あるいはまた、過マンガン酸カリウム/シュウ酸などのレドックス開始剤システムが使用される。温度が上げられ、重合が始まるとすぐに、追加のテトラフルオロエチレン(TFE)が圧力を維持するために加えられる。重合の開始はキックオフと言われ、ガス状モノマーフィード圧力が実質的に、例えば、約10psi(約70kPa)降下することが観察される時点と定義される。コモノマーおよび/または連鎖移動剤をまた、重合が進行するにつれて加えることができる。幾つかの重合については、追加のモノマー、開始剤および/または重合剤が重合中に加えられてもよい。
【0035】
所望量のポリマーまたは固形分が達成されたバッチ完了(典型的には数時間)後に、フィードは停止され、反応器がガス抜きされ、窒素でパージされ、容器中の生分散系は冷却容器に移される。
【0036】
重合完了時の分散系の固形分は、分散系について意図される使用に依存して変えることができる。例えば、本発明の方法は、より高い固形分レベルへのその後の重合プロセスのための「種」として用いられる、低い固形分、例えば、10重量%未満の「種」分散系を製造するために用いることができる。他のプロセスでは、本発明の方法によって製造されたフルオロポリマー分散系の固形分は、好ましくは少なくとも約10重量%である。より好ましくは、フルオロポリマー固形分は少なくとも約20重量%である。本方法によって製造されるフルオロポリマー固形分の好ましい範囲は、約14重量%〜約65重量%、さらにより好ましくは約20重量%〜約55重量%、最も好ましくは、約35重量%〜約55重量%である。
【0037】
本発明の好ましい方法では、重合は、生成するフルオロポリマーの総重量を基準にして約10重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満、最も好ましくは約0.5重量%未満の非分散フルオロポリマー(凝塊)を生成する。
【0038】
重合したままの分散系は、ある種の用途向けにアニオン性、カチオン性、または非イオン性界面活性剤で安定化させることができる。しかし典型的には、重合したままの分散系は、公知の方法によって非イオン性界面活性剤で典型的には安定化された濃縮分散系を生成する分散系濃縮操作に移される。濃縮分散系の固形分は典型的には約35〜約70重量%である。ある種のグレードのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散系は微粉末の生成のために製造される。この使用のために、分散系は凝固させられ、水性媒体は除去され、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は乾燥されて微粉末を生成する。
【0039】
溶融加工可能なコポリマーの分散重合は、かなりの量のコモノマーが最初にバッチに加えられるおよび/または重合中に導入されることを除いて似ている。連鎖移動剤は、コポリマーの分子量を低下させてメルトフローレイトの上昇をもたらすためにかなりの量で典型的には使用される。同じ分散系濃縮操作を、安定化された濃縮分散系を製造するために用いることができる。あるいはまた、成形樹脂として用いられる溶融加工可能なフルオロポリマーのために、分散系は凝固させられ、水性媒体は除去される。フルオロポリマーは乾燥され、次に、その後の溶融加工操作に使用するためのフレーク、チップまたはペレットなどの都合のよい形態へ加工される。
【0040】
本発明の方法はまた、加圧反応器でセミバッチ式プロセスとしてまたは連続プロセスとして実施することができる。これらのプロセスは、フルオロカーボンエラストマーの製造にとりわけ好適である。本発明のセミバッチ式乳化重合法では、所望の組成のガス状モノマー混合物(初期モノマー装入物)が、水性媒体プレチャージを含有する反応器へ導入される。開始剤、連鎖移動剤、緩衝剤、塩基、および界面活性剤などの、他の原料は、水と一緒にプレチャージに、およびまた重合反応中に加えることができる。所望の最終ポリマー組成に適切な濃度での追加のモノマーは、システム圧力を維持するために必要とされる速度で重合反応の間ずっと加えられる。約2〜約30時間の範囲の重合時間が典型的にはセミバッチ式重合法で用いられる。連続プロセスでは、反応器は、蒸気空間が全くないように水性媒体で完全に満たされる。ガス状モノマーと、水溶性モノマー、連鎖移動剤、緩衝剤、重合開始剤、界面活性剤などの他の原料の溶液とは、一定速度で別個の流れで反応器にフィードされる。フィード速度は、反応器中の平均ポリマー滞留時間が、モノマー反応性に依存して、一般に0.2〜約4時間であるように制御される。両タイプのプロセスについて、重合温度は、約25℃〜約130℃の範囲に、好ましくはセミバッチ式運転については約50℃〜約100℃、連続運転については約70℃〜約120℃の範囲に維持される。重合圧力は、約0.5〜約10MPa、好ましくは約1〜約6.2MPaの範囲に制御される。形成されるフルオロポリマーの量は、装入される増分フィードの量におおよそ等しく、水性エマルジョンの100重量部当たり約10〜約30重量部のフルオロポリマーの範囲に、好ましくは約20〜約30重量部のフルオロポリマーの範囲にある。
【0041】
本発明に従った重合は、重合の条件下にラジカルを発生させることができるフリーラジカル開始剤を用いる。当該技術分野でよく知られているように、本発明に従った使用のための開始剤は、フルオロポリマーのタイプおよび得られるべき所望の特性、例えば、末端基タイプ、分子量などに基づいて選択される。溶融加工可能なテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーなどの幾つかのフルオロポリマーについては、ポリマー中に陰イオン性末端基を生成する無機過酸の水溶性塩が用いられる。このタイプの好ましい開始剤は、比較的長い半減期を有し、好ましくは過硫酸塩、例えば、過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムである。過硫酸塩開始剤の半減期を短くするために、Feなどの金属触媒と一緒にまたはなしで、亜硫酸水素アンモニウムまたはメタ亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を使用することができる。好ましい過硫酸塩開始剤は金属イオンを実質的に含まず、最も好ましくはアンモニウム塩である。
【0042】
分散系最終用途向けのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散系の製造のためには、コハク酸などの少量の短鎖ジカルボン酸またはジコハク酸ペルオキシド(DSP)などのコハク酸を生成する開始剤が好ましくはまた、過硫酸塩などの比較的長い半減期の開始剤に加えて添加される。かかる短鎖ジカルボン酸は、非分散ポリマー(凝塊)を減らすのに典型的には有益である。微細粉末の製造のためのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散系の生成のためには、過マンガン酸カリウム/シュウ酸などのレドックス開始剤システムが多くの場合に使用される。
【0043】
開始剤は、所望の反応速度で重合反応を開始するおよび維持するのに十分な量で水性重合媒体に加えられる。開始剤の少なくとも一部は好ましくは、重合の開始時に加えられる。重合の全体にわたって連続的に、または重合中の予定の時間に1回分でもしくはある間隔でを、含む、添加の様々なモードが用いられてもよい。運転の特に好ましいモードは、開始剤が反応器にプレチャージされ、重合が進行するにつれて追加の開始剤が反応器に連続的にフィードされるものである。好ましくは、重合の経過中に用いられる過硫酸アンモニウムおよび/または過硫酸カリウムの総量は、水性媒体の重量を基準として約25マイクログラム/g〜約250マイクログラム/gである。他のタイプの開始剤、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸開始剤は、当該技術分野で公知のような量でおよび手順に従って用いることができる。
【0044】
連鎖移動剤は、溶融粘度を制御するという目的で分子量を下げるために、幾つかのタイプのポリマーの重合について、例えば、溶融加工可能なテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーについて本発明に従った方法で使用することができる。この目的のために有用な連鎖移動剤は、フッ素化モノマーの重合での使用についてよく知られている。好ましい連鎖移動剤には、水素、1〜20個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、ハロカーボン、ハイドロハロカーボンまたはアルコールが含まれる。かかる連鎖移動剤の代表的な例は、エタンなどのアルカン、クロロホルム、1,4−ジヨードパーフルオロブタンおよびメタノールである。
【0045】
連鎖移動剤の量および添加のモードは、特定の連鎖移動剤の活性におよびポリマー生成物の所望の分子量に依存する。重合開始前の単一添加、重合の全体にわたって連続的に、または重合中の予定の時間に1回分でもしくはある間隔でを含む、添加の様々なモードを用いることができる。重合反応器に供給される連鎖移動剤の量は、生じるフルオロポリマーの重量を基準として好ましくは約0.005〜約5重量%、より好ましくは約0.01〜約2重量%である。
【0046】
本発明に従って、本発明は、オレフィンフルオロモノマーを、式(I)のパーフルオロアルキルエーテル界面活性剤を含有する水性媒体中で重合させる工程を含む方法を本発明の実施形態の1つとしてさらに提供する。式(I)のパーフルオロアルキルエーテル界面活性剤がオレフィンフルオロモノマーの水性分散重合の方法に使用される。水溶性開始剤は一般に、存在する水の重量を基準として約2〜約500マイクログラム/gの量で使用される。かかる開始剤の例には、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過マンガン酸塩/シュウ酸、およびジコハク酸ペルオキシドが挙げられる。重合は、水、界面活性剤、オレフィンフルオロモノマー、および任意選択的に連鎖移動剤を重合反応器に装入し、反応器の内容物をかき混ぜ、反応器を所望の重合温度、例えば、約25℃〜約110℃に加熱することによって実施することができる。
【0047】
上述の本発明の方法に使用される式(I)のパーフルオロアルキルエーテル酸もしくは塩界面活性剤の量は、公知の範囲内、例えば、重合に使用される水を基準として、約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.05〜約3重量%、より好ましくは約0.05〜1.0重量%である。本発明の重合法に用いることができる界面活性剤の濃度は、界面活性剤の臨界ミセル濃度(c.m.c.)より上または下であることができる。
【0048】
本発明は、上記のオレフィンフルオロモノマーの水性分散重合の結果としてフルオロポリマーの分散系をさらに提供する。
【0049】
原材料および試験方法
以下の原材料および試験方法を本明細書での実施例で使用した。
【0050】
試験方法1−表面張力測定
表面張力は、機器の使用説明書に従ってKruess Tensiometer,K11 Version 2.501を用いて測定した。Wilhelmy Plate法を用いた。既知の周囲長さの垂直プレートを天秤に取り付け、湿潤による力を測定した。10の反復試験体を各希釈について試験し、以下の機械設定を用いた:方法:Plate Method SFT;Interval:1.0秒;湿潤長さ:40.2mm;Reading限界:10;Min Standard Deviation:2ダイン/cm;Gr.Acc.:9.80665m/秒^2。
【0051】
試験方法2−コモノマー含有率
コモノマー含有率パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)は、次の通り米国特許第4,743,658号明細書、列5、行9〜23に開示されている方法に従ってFTIRによって測定した。PPVE含有率は、赤外分光分析法によって測定した。10.07マイクロメートルでの吸光度対4.25マイクロメートルでの吸光度の比を、おおよそ0.05mm厚さのフィルムを使用して窒素雰囲気下に測定した。フィルムを350℃で圧縮成形し、次に氷水中で直ちに急冷した。この吸光度比を次に使用して既知のPPVE含有率の基準フィルムで確立された検量線を用いてパーセントPPVEを測定した。19F NMRを、基準フィルムを較正するための一次標準として使用した。
【0052】
試験方法3−粒度
粒度、すなわち、生の分散系粒度(RDPS)は、Microtrac Ultrafine Particle Analyzer(UPA)を用いて材料の粒度分布(PSD)を測定するレーザー分画技法によって測定した。UPAは、0.003ミクロン〜6.54ミクロンのサイズ範囲のPSDを測定するための動的光散乱原理を用いる。水でのバックグランドを集めた後にサンプルを分析した。測定を3回繰り返し、平均した。
【0053】
試験方法4−凝固
乾燥凝塊量は、重合の経過中に凝固した湿潤ポリマーを物理的に集め、凝塊を30mmHg(4kPa)の減圧で80℃で一晩乾燥させることによって測定した。乾燥凝塊を秤量して生成した全フルオロポリマーの重量を基準として存在する百分率を測定した。
【0054】
試験方法5−ガラス転移温度(Tg)および溶融温度(Tm)
ガラス転移温度(Tg)および溶融温度(Tm)はそれぞれ、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定した。DSC測定は、機器使用説明書に従ってPerkin Elmer Differential Scanning Calorimeter Pyris 1機器を用いて行った。走査を、キャリアガスとして窒素を使用して−100℃〜50℃の温度範囲で10℃毎分または20℃毎分のどちらかの加熱速度で記録した。値を二次加熱後に報告した。
【0055】
原材料
使用されるテトラフルオロエチレンは、E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEから入手した。オレフィンは商用グレード原材料であり、入手したまま使用した。開始剤、過硫酸アンモニウムを含む他の試薬は、例えば、Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WIから商業的に入手可能であった。
【0056】
化合物1
テトラフルオロエチレン(180g)を、C37OCF2CF2I(600g)を装入されたオートクレーブに導入し、反応器を230℃で2時間加熱した。同じ反応を2回繰り返した。生成物を組み合わせ、減圧蒸留によって単離して出発原料の回収に基づきC37OCF2CF2CF2CF2I(370g、29%)を得た。b.p.60mmHg(80×102Pa)で63〜66℃;19F NMR(300MHz,CO(CD32:−65.63〜65.75(2F,m),−82.65(3F,t,J=7.3Hz),−84.41〜84.54(2F,m),−85.34〜85.47(2F,m),−115.07(2F,s),−125.49〜125.61(2F,m),−131.03(2F,s);MS:513(M++1)。
【0057】
発煙硫酸(H2SO4中の65%SO3、75g)、C37OCF2CF2CF2CF2I(50g)およびP25(0.295g)の混合物を105℃で12時間加熱した。生じたC37OCF2CF2CF2COFを分離し、22%硫酸(110mL)で一晩加水分解した。相分離後に、最終酸C37OCF2CF2CF2COOH(34g、91%)を減圧蒸留によって得た。
【0058】
b.p.40mmHg(53.3×102Pa)で100〜103℃;19F NMR(300MHz,CO(CD32):−82.64(3F,t,J=7.3Hz),−84.26〜84.38(2F,m),−85.34〜85.47(2F,m),−120.56(2F,t−d,J1=8.8Hz,J2=2.0Hz),−127.93(2F,s),−131.03(2F,s)。22mLの水中のNH4HCO3(4.4g)を、173mLの水中のC37OCF2CF2CF2COOH(21g)に滴加した。反応液を室温で2時間撹拌し、生じた塩C37OCF2CF2CF2COONH4(20g、92%)を、水を蒸発させた後に白色固体として得た。m.p.125〜128℃;19F NMR(300MHz,CD3COCD3):−81.64(3F,t,J=7.1Hz),−83.87〜83.99(2F,m),−84.60〜84.73(2F,m),−118.23(2F,t,J=7.3Hz),−127.56(2F,s),−130.16(2F,s)。
【0059】
実施例1において上で生成した生成物C37OCF2CF2CF2COONH4を含有する水溶液の表面張力を、試験方法1の手順に従って測定した。結果を表1に示す。
【0060】
比較化合物A
実施例1の手順を用いたが、C25OCF2CF2Iを出発原料として使用し、生じた化合物C25OCF2CF2CF2COONH4を得た。その表面張力を、試験方法1を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0061】
比較化合物B
1300mLステンレススチール振盪機管に、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE、346グラム、1.30モル)、一塩化ヨウ素(248.5グラム、1.53モル)、HF(500グラム、25モル)、および三フッ化ホウ素(50グラム、0.737モル)を装入した。管を密封し、冷却排気した。「冷却排気した」とは、酸素を除去するために真空を適用しながら全ての原料が反応器に留まるように十分に反応器内容物を冷却することによって酸素が反応器から除去されたことを意味する。管および内容物を次に、振盪しながら75℃で24時間加熱した。冷却後に、生成物混合物を管からアンロードし、飽和亜硫酸水素ナトリウム溶液で洗浄して未反応の残存ヨウ素を除去した。乾燥後に、生成物(CF3CF2CF2−O−CF2CF2−I)を透明の無色液体、bp.85〜86℃へ蒸留した、収量:400グラム(75%)。
【0062】
1300mLステンレススチール振盪機管に、1−ヨード−3−オキサ−パーフルオロヘキサン(CF3CF2CF2−O−CF2CF2−I)(370.8グラム、0.90モル)およびd−(+)−リモネン(1.0グラム)を装入した。管を密封し、冷却排気し、エチレン(42グラム、1.50モル)を管へ移した。管を再び密封し、220℃で10時間加熱した。生成物(CF3CF2CF2−O−CF2CF2−CH2CH2−I)を管からアンロードし、蒸留によって精製して薄いピンク色の透明液体、bp.50mmHg(66.6×102Pa)で65〜69℃を得た。収量:340グラム(86%)。1H−NMR(CDCl3,400MHz):δ 3.24(t,J=8.7Hz,2H),2.72(m,2H);19F−NMR(CDCl3,376.89MHz):−81.8(t,J=7.5Hz,3F),−84.5(m,2F),−88.0(t,J=13.2Hz,2F),−119.3(t,J=17Hz,2F),−130.4(s,2F)。
【0063】
反応フラスコに、1−ヨード−1,1,2,2−テトラヒドロ−5−オキサ−パーフルオロオクタン(CF3CF2CF2−O−CF2CF2−CH2CH2−I)(176グラム、0.40モル)と一緒に、相関移動触媒(DuPontから入手可能な([C1225][PhCH2][CH2CH(OH)CH32)(60%水溶液)(29.6グラム、0.042モル)、10M KOH溶液(280mL、2.80モル)を装入した。反応混合物を周囲温度で14時間撹拌した。生成物混合物を分液漏斗へ移し、下部有機層を分離し、水で2回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次に蒸留してCF3CF2CF2−O−CF2CF2−CH=CH2生成物を透明の無色液体、bp.75〜76℃として得た、収量:172グラム(72%)。1H−NMR(CDCl3,400MHz):δ 5.90(m,1H),5.92(m,2H);19F−NMR(CDCl3,376.89MHz):−81.9(t,J=7.5Hz,3F),−85.1(m,2F),−85.3(t,J=13.2Hz,2F),−118.3(d,J=11.3Hz,2F),−130.5(s,2F)。
【0064】
KMnO4(50g、0.315モル)を脱イオン水に溶解させ、これにH2SO4(53g、0.541モル)の添加が続いた。C37OCF2CF2CH=CH2(上の実施例でのように調製された)(20g、0.094モル)を過マンガン酸塩溶液に60℃で滴加し、酸化反応を70℃で3時間行った。次に、生じた溶液を室温に冷却し、100mLエーテルで3回抽出した。抽出液をMgSO4上で乾燥させ、次に濾過した。フッ素化カルボン酸生成物(C37OCF2CF2COOH)を減圧蒸留によって蒸留した(9g、29%収率)、b.p.30mmHg(40×102Pa)で62〜63℃。
【0065】
19F NMR(376MHz,CDCl3):−84.52(3F,t,J=8Hz),−84.7〜−85.0(2F,m),−86.17〜86.23(2F,m),−125.20〜−125.21(2H,t,J=2.1Hz),−134.49(2F,s)。
【0066】
炭酸水素アンモニウム溶液(10mL水中の1.48g、0.0187モル)を、上で製造されたフッ素化カルボン酸C37OCF2CF2COOH(6g、0.0182モル)に加えた。反応液を室温で1時間撹拌した。水をrotovapで除去し、生成物(C37OCF2CF2COONH4)を白色固体(4g、79%収率)、b.p.121〜123℃としてもたらした。
【0067】
19F NMR(376MHz,CDCl3):−81.61(3F,t,J=8Hz),−84.7〜−85.0(2F,m),−86.17〜86.23(2F,m),−121.17〜121.19(2H,t,J=2.1Hz),−130.27(2F,s)。その表面張力を、試験方法1を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1のデータは、上のパーフルオロアルキルエーテル界面活性剤が指定の比で脱イオン水に加えられたとき、それぞれの水溶液の表面張力が著しく低下したことを示す。化合物1は、濃度が増加するにつれて比較化合物AおよびBのいずれよりも良好な表面張力低減を示した。
【0070】
化合物2
テトラフルオロエチレン(180g)を、C37OCF2CF2I(600g)を装入されたオートクレーブに導入し、反応器を230℃で2時間加熱した。同じ反応を2回繰り返した。生成物を組み合わせ、減圧蒸留によって単離して出発原料の回収に基づきC37OCF2CF2CF2CF2CF2CF2I(234g、18%)、b.p.60mmHg(80×102Pa)で89〜94℃を得た。
【0071】
19F NMR(300MHz,CD3COCD3:−65.33〜65.45(2F,m),−82.72(3F,t,J=7.2Hz),−84.08〜84.21(2F,m),−85.37〜85.47(2F,m),−114.60〜114.75(2F,m),−121.96〜122.18(2F,m),−123.19(2F,s),−126.43〜126.55(2F,m),−131.09(2F,s);
MS:613(M++1)。
【0072】
発煙硫酸(H2SO4中の65%SO3、75g)、C37OCF2CF2CF2CF2CF2CF2I(50g)およびP25(0.236g)の混合物を105℃で12時間加熱した。生じたC37OCF2CF2CF2CF2CF2COFを分離し、22%硫酸(160mL)で一晩加水分解した。相分離後に、最終酸C37OCF2CF2CF2CF2CF2COOH(36g、91%)を減圧蒸留によって得た。b.p.40mmHg(53.3×102Pa)で114〜117℃;19F NMR(300MHz,CD3COCD3):−82.64(3F,t,J=7.5Hz),−84.07〜84.19(2F,m),−85.29〜85.42(2F,m),−120.15(2F,t−t,J1=12.3Hz,J2=3.4Hz),−123.0〜123.1(2F,m),−124.05〜−124.19(2F,m),−126.54〜−126.63(2F,m),−131.03(2F,s)。22mLの水中のNH4HCO3(2.71g)を、173mLの水中のC37OCF2CF2CF2CF2CF2COOH(16g)に滴加した。反応液を室温で2時間撹拌し、生じた塩C37OCF2CF2CF2CF2CF2COONH4(14g、85%)を、水の蒸発後に白色固体として得た。m.p.131〜133℃;19F NMR(300MHz,CD3COCD3):−84.64(3F,t,J=7.5Hz),−85.94〜86.17(2F,m),−87.27〜87.45(2F,m),−120.14(2F,t−t,J=12.3Hz),−125.09(2F,s),−125.87〜125.95(2F,s),−128.46(2F,s),−133.03(2F,s)。
【実施例】
【0073】
実施例1
1Lステンレス反応器に、蒸留水(450mL)、化合物1として上記の通り調製されたC37OCF2CF2CF2COONH4(4.0g)、リン酸水素二ナトリウム(0.4g)および過硫酸アンモニウム(0.4g)を装入し、引き続きテトラフルオロエチレン(TFE)(45g)およびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)(40g)を導入した。反応器を攪拌下に70℃で4時間加熱した。反応器からアンロードしたポリマーエマルジョンを飽和MgSO4水溶液で凝固させた。ポリマー沈澱物を濾過によって集め、温水(70℃)で数回洗浄した。真空オーブン(100mmHg)中100℃で24時間乾燥させた後に、60gの白色ポリマーを得た。Tg:−5.5℃;組成 19F NMR(モル%):PMVE/TFE(25.7/74.3)。重合に使用された界面活性剤のF含有率は約0.5重量%であった。
【0074】
実施例2
1Lステンレス反応器に、蒸留水(450mL)、化合物1として上記の通り調製されたC37OCF2CF2CF2COONH4(3.0g)、リン酸水素二ナトリウム(0.4g)および過硫酸アンモニウム(0.4g)を装入し、引き続きテトラフルオロエチレン(TFE)(40g)およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)(200g)を導入した。反応器をかき混ぜ下に70℃で8時間加熱した。反応器からアンロードしたポリマーエマルジョンを飽和MgSO4水溶液で凝固させた。ポリマー沈澱物を濾過によって集め、温水(70℃)で数回洗浄した。真空オーブン(100mmHg)(133.3×102Pa)中100℃で24時間乾燥させた後に、36gの白色ポリマーを得た。Tm:−255℃;組成 19F NMR(モル%):HFP/TFE(12.4/87.6)。重合に使用された界面活性剤のF含有率は約0.84重量%であった。
【0075】
実施例3
本発明の方法を、化合物1として上記の通り調製された2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−4−(パーフルオロプロポキシ)ブタン酸アンモニウム(CF3CF2CF2OCF2CF2CF2COONH4)の4.2グラムの20重量%水溶液を含有する界面活性剤溶液を使用するテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)とのコポリマーの重合で例示する。脱気水を重合に使用した。それは、脱イオン水を大きいステンレススチール容器にポンピングし、全ての酸素を除去するために水を通して窒素ガスをおおよそ30分間激しくバブリングすることによって調製した。反応器は、3枚羽根付きリボンかき混ぜ機および邪魔板インサートを備えた1L垂直オートクレーブであった。連鎖移動剤は全く使用しなかった。おおよそ−13PSIG(11.7kPa)の減圧を反応器にかけた。これを用いて2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−4−(パーフルオロプロポキシ)ブタン酸アンモニウムの20重量%水溶液の4.2グラムの溶液と500mLの脱気水とをプレチャージとして吸い込んだ。反応器を次に、窒素ガスでの50PSIG(450kPa)への加圧、引き続き1PSIG(108kPa)へのガス抜きによって3回パージして(かき混ぜ機=100RPM)酸素含有率を低下させた。それをさらに、ガス状テトラフルオロエチレン(TFE)での25PSIG(274kPa)への加圧、引き続き1PSIG(108kPa)へのガス抜きによって3回パージし(かき混ぜ機=100rpm)、オートクレーブの内容物が酸素を含まないことをさらに確実にした。かき混ぜ機速度を600RPMに上げ、反応器を65℃に加熱し、次にパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)(12.8g)を液体として反応器中へポンピングした。
【0076】
温度でのときに、反応器圧力を、テトラフルオロエチレン(TFE)(約38g)を加えることによって名目250PSIG(1.83MPa)に上昇させた。開始剤溶液(過硫酸アンモニウム)を20mL/分の速度で1分間反応器にフィードして0.02gの過硫酸アンモニウムのプレチャージを提供した。それを次に、テトラフルオロエチレン(TFE)秤量タンクの質量損失として測定される、90gのテトラフルオロエチレン(TFE)が消費された時点と定義されるバッチの終わりまで0.25mL/分の速度でポンピングした。キックオフ(10PSIG(70kPa)圧力低下が観察された時点と定義される)で重合が開始したと見なされ、それはまた、重合の残りのために0.12g/分の速度でPPVEをフィードする出発点でもあった。全重合の全体にわたって必要に応じてテトラフルオロエチレン(TFE)をフィードすることによって反応器圧力を250PSIG(1.83MPa)で一定に保った。90gのテトラフルオロエチレン(TFE)が消費された後、かき混ぜ機を200RPMに遅くし、反応器へのすべてのフィードを止め、内容物を30分にわたって30℃に冷却した。かき混ぜ機を次に100RPMに下げ、反応器を大気圧までガス抜きした。
【0077】
このように製造されたフルオロポリマー分散系は、典型的には約15〜16重量%の固形分を有した。凍結し、解凍し濾過することによってポリマーを分散系から単離した。ポリマーを脱イオン水で洗浄し、数回濾過し、その後80℃および30mmHg(4kPa)の減圧で真空オーブン中一晩にわたり乾燥させた。ポリマーを試験方法2、3および4に従って分析した。結果を表2に報告する。
【0078】
比較例C
実施例3の一般的な手順を、C37OCF2CF2COONH4の3.7gの20重量%水溶液の界面活性剤溶液を使用して用いた。結果を表2に報告する。
【0079】
【表2】

【0080】
表2のデータは、本発明の方法を用いる実施例3での化合物1の使用が、比較例Cでの比較化合物Bの使用より小さい粒度および少ない非分散ポリマーを有するコポリマーを提供することを実証した。より小さい粒度は、比較例Cでの化合物Bについてよりも実施例3での化合物1について大きいコポリマー分散系安定性を示唆した。
【0081】
実施例4
1Lステンレス反応器に、蒸留水(450mL)、化合物2として上記の通り調製されたC37OCF2CF2CF2CF2CF2COONH4(4.0g)、リン酸水素二ナトリウム(0.4g)および過硫酸アンモニウム(0.4g)を装入し、引き続きテトラフルオロエチレン(45g)およびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(40g)を導入した。反応器をかき混ぜ下に70℃で4時間加熱した。反応器からアンロードしたポリマーエマルジョンを飽和MgSO4水溶液で凝固させた。ポリマー沈澱物を濾過によって集め、温水(70℃)で数回洗浄した。100mmHg(133.34×102Pa)での真空オーブン中100℃で24時間乾燥させた後に、60gの白色ポリマーを得た。Tg:−5.5℃;組成 19F NMR(モル%):PMVE/テトラフルオロエチレン(TFE)(24.9/74.3)。重合に使用された界面活性剤のF含有率は約0.57重量%であった。
【0082】
実施例5
1Lステンレス反応器に、蒸留水(450mL)、化合物2として上記の通り調製されたC37OCF2CF2CF2CF2CF2COONH4(4.0g)、リン酸水素二ナトリウム(0.4g)および過硫酸アンモニウム(0.4g)を装入し、引き続きテトラフルオロエチレン(45g)およびヘキサフルオロプロピレン(200g)を導入した。反応器をかき混ぜ下に70℃で8時間加熱した。反応器からアンロードしたポリマーエマルジョンを飽和MgSO4水溶液で凝固させた。ポリマー沈澱物を濾過によって集め、温水(70℃)で数回洗浄した。100mmHg(133.34×102Pa)での真空オーブン中100℃で24時間乾燥させた後に、38gの白色ポリマーを得た。Tm:2605℃;組成 19F NMR(モル%):HFP/テトラフルオロエチレン(TFE)(14.8/85.2)。重合に使用された界面活性剤のF含有率は約0.43重量%であった。
【0083】
実施例6
本発明の方法を、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、すなわち、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)とのコポリマーの重合で例示する。脱気水を重合に使用した。それは、脱イオン水を大きいプラスチック容器にポンピングし、全ての酸素を除去するために水を通して窒素ガスを激しくバブリングすることによって調製した。脱気水を、重合での使用のためにこのプラスチック容器から必要に応じて取り出した。反応器は、クレーブの全長にわたる中央に中心シャフトを有する、伸びた錨型かき混ぜ機を備えた、HASTELLOYでできた1ガロン水平オートクレーブであった。駆動部から最も遠い端を閉じ、外側の羽根が内壁の1インチまたは2インチ(2.54cm〜3.08cm)内でクレーブ本体の内部を掃引した。連鎖移動剤はこれらの実施例では全く使用しなかった。反応器に、1850gの脱気水を注射器ポンプを用いて装入した。次に、反応器の開口部を通して、上記の通り調製された、界面活性剤としての化合物1の48.6gの20重量%溶液を反応器へピペットで装入した。界面活性剤は、界面活性剤を反応器へパイピングする際に起こる可能性があるいかなる二次汚染をも避けるためにピペットから反応器に直接加えた。脱気水および化合物1溶液は、反応器プレチャージを構成した。容器を100RPMで3〜5分間かき混ぜ、次にかき混ぜ機を停止した。反応器を次に、窒素ガスでの80PSIG(650kPa)への加圧、引き続き1PSIG(108kPa)へのガス抜きによって3回パージして(かき混ぜ機オフ)酸素含有率を低下させた。それをさらに、ガス状テトラフルオロエチレン(TFE)での25PSIG(274kPa)への加圧、引き続き1PSIG(108kPa)へのガス抜きによって3回パージし(かき混ぜ機オフ)、オートクレーブの内容物が酸素を含まないことをさらに確実にした。かき混ぜ機速度を100RPMに上げ、反応器を75℃に加熱し、次にパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)(31.5ml)を液体として反応器へ31.5ml/分の一定速度で1分間ポンピングした。容器温度が75℃で平衡したとき、反応器圧力を、圧力調整器を通してテトラフルオロエチレン(TFE)を反応器へ加えることによって名目250PSIG(1.83MPa)に上げた。開始剤溶液(1リットルの脱塩および脱酸素水中の1gの過硫酸アンモニウム)を20mL/分の速度で1分間、反応器にフィードして0.02g過硫酸アンモニウムのプレチャージを提供した。それを次に、105.7mL/分の速度で1分間、引き続き、333gのテトラフルオロエチレン(TFE)がマスフローコントローラを通して反応器にフィードされた時点と定義される、バッチの終わりまで1.01mL/分の速度で反応器にポンピングした。(10PSIG(70kPa)圧力降下が観察される時点と定義される)キックオフ時に重合が開始したと見なされ、それはまた、重合の残りの間0.30g/分の速度でパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)をフィードする開始点でもあった。反応器圧力を、全重合の全体にわたって必要に応じてテトラフルオロエチレン(TFE)をフィードすることによって250PSIG(1.83MPa)で一定に保った。333gのテトラフルオロエチレン(TFE)が消費された後、反応器への全フィードを止め、内容物を約90分にわたって30℃に冷却した。反応器を次に大気圧にガス抜きした。このように生成したフルオロポリマー分散系は、典型的には約20重量%の固形分を有した。ポリマーを凍結、解凍および濾過によって分散系から単離した。ポリマーを数回脱イオン水で洗浄し、濾過し、その後80℃および30mmHg(4kPa)での真空オーブン中一晩乾燥させた。ポリマーを試験方法2、3および4に従って分析した。結果を表3に報告する。
【0084】
比較例D
実施例6の手順に従って、CF3(CF26COOHのアンモニア塩、パーフルオロオクタン酸アンモニウムの79.6gの20重量%溶液を界面活性剤重合助剤として使用した。生じたポリマーを試験方法2、3および4に従って分析した。結果を表3に報告する。
【0085】
比較例E
発煙硫酸(H2SO4中の67%SO3、75g)、C37OCF2CF2I(50g)およびP25(0.295g)の混合物を105℃で12時間加熱した。生じたC37OCF2COFを分離し、22%硫酸(110mL)で一晩加水分解した。相分離後に、酸C37OCF2COOHを減圧蒸留によって得た。22mLの水中のNH4HCO3(4.4g)を、173mLの水中21gのこの酸に滴加した。反応液を室温で2時間撹拌して塩C37OCF2COONH4を、水を蒸発させた後に白色固体としてもたらした。実施例6の手順に従って、C37OCF2COONH4の78.6gの20重量%水溶液を界面活性剤重合助剤として使用した。生じたポリマーを試験方法2、3および4に従って分析した。結果を表3に報告する。
【0086】
【表3】

【0087】
表3のデータは、本発明の方法での実施例6の使用が、比較例DおよびEより少ない非分散ポリマーを提供したことを実証する。これは、商業的に有用であるのに十分なサイズの粒子を持ちながら、溶液から沈澱する傾向がより少ない、より大きいポリマー安定性を示唆した。
【0088】
実施例7
本発明の方法を用いてテトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、およびパーフルオロ−8(シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)(8CNVE)の共重合モノマーを含有するパーフルオロエラストマーを次の通り調製した:3つの水性流れをそれぞれ、1リットルの機械撹拌される、水ジャケット付きステンレススチールオートクレーブに81cc/時の速度で連続的にフィードした。第1流れは、脱イオン水の1リットル当たり1.13gの過硫酸アンモニウムおよび28.6gのリン酸水素二ナトリウム七水和物からなった。第2流れは、脱イオン水の1リットル当たり90gの化合物1からなった。第3流れは、脱イオン水の1リットル当たり1.13gの過硫酸アンモニウムからなった。ダイヤフラム圧縮機を使用して、TFE(56.3g/時)とPMVE(68.6g/時)との混合物を一定速度でフィードした。反応の全体にわたって温度を85℃に、圧力を4.1MPa(600psi)に、pHを5.2に維持した。ポリマーエマルジョンを、レットダウンバルブを用いて連続的は取り出し、未反応モノマーをガス抜きした。先ずエマルジョンの1リットル当たり8リットルの脱イオン水の比でそれを脱イオン水で希釈し、引き続く60℃の温度でのエマルジョンの1リットル当たり320ccの硫酸マグネシウム溶液(脱イオン水の1リットル当たり100gの硫酸マグネシウム七水和物)の添加によってポリマーをエマルジョンから単離した。生じたスラリーを濾過し、エマルジョンの1リットルから得られたポリマー固形分を60℃での8リットルの脱イオン水に再分散させた。濾過後に、湿潤粉を強制空気オーブン中70℃で48時間乾燥させた。ポリマー収量は、反応器運転の1時間当たり121gであった。FTIRを用いて分析された、ポリマー組成は、50.2重量%PMVE、2.35重量%8CNVEであり、残りはテトラフルオロエチレンであった。ポリマーは、100gの「Flutec」PP−11(F2 Chemicals Ltd.,Preston,UK)中0.1gポリマーの溶液で測定される0.86の固有粘度を有した。Mooney粘度、ML(1+10)は、1分の予熱時間および10分の回転子操作時間を用いて、175℃でL(大きい)タイプの回転子を使ってASTM D1646に従って測定されるように、53.5であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のフッ素化モノマーを、開始剤および重合剤を含有する水性媒体中で重合させてフルオロポリマーの粒子の水性分散系を形成する工程を含む方法であって、前記重合剤が式(I):
f−O−(CF2n−COOX (I)
(式中、
fは、CF3CF2CF2−であり、
nは、3、5または7に等しい整数であり、
Xは、H、NH4、Li、NaまたはKである)
の化合物である方法。
【請求項2】
前記重合剤が、前記水性媒体中の水の重量を基準として約0.01%〜約10%の量で前記水性媒体中に存在する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
形成されたフルオロポリマーの粒子の前記水性分散系が、少なくとも約10重量%のフルオロポリマー固形分を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
形成されたフルオロポリマーの粒子の前記水性分散系が、約14重量%〜約65重量%のフルオロポリマー固形分を有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水性媒体が、パーフルオロポリエーテル油を実質的に含まない請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水性媒体が、重合開始時に、フルオロポリマーシードを実質的に含まない請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記重合が、生成フルオロポリマーの総重量を基準として約10重量%未満の非分散フルオロポリマーを生成する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記重合が、生成フルオロポリマーの総重量を基準として約3重量%未満の非分散フルオロポリマーを生成する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
バッチ式プロセス、セミバッチ式プロセスとして、または連続プロセスとして行われる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フルオロポリマーがパーフルオロエラストマーである請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2012−508296(P2012−508296A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535679(P2011−535679)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/063518
【国際公開番号】WO2010/054172
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】