説明

フルオロポリマーの製造方法

少なくとも1つのフルオロ界面活性剤が分散剤として用いられる非弾性フルオロポリマーの製造のための乳化重合法であって、前記フルオロ界面活性剤が式X−Rf−(CH2n−O−P(O)(OM)2(式中、nは1または2であり、X=HまたはFであり、M=一価のカチオンであり、RfはC4〜C6フルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基である)のフルオロアルキルリン酸エステルである乳化重合法が開示される。任意選択的に、第2の分散剤が重合に用いられてもよく、前記第2の分散剤は、カルボン酸、その塩、スルホン酸およびその塩、リン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を有するパーフルオロポリエーテルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの分散剤が用いられる非弾性フルオロポリマーの製造のための乳化重合法であって、前記分散剤が式X−Rf−(CH2n−O−P(O)(OM)2(式中、nは1または2であり、X=HまたはFであり、M=一価のカチオンであり、RfはC4〜C6フルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基(分岐または非分岐)である)のフルオロアルキルリン酸エステルである乳化重合法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化および溶液重合法による非弾性フルオロポリマーの製造は当該技術分野で周知であり;例えば米国特許第4,380,618号明細書および同第5,789,508号明細書を参照されたい。一般に、フルオロポリマーは、水溶性重合開始剤および比較的大量の分散剤(すなわち界面活性剤)が用いられる乳化重合法で製造される。
【0003】
Benning(米国特許第2,559,749号明細書および同第2,597,702号明細書)は、不飽和有機化合物の水性重合における乳化剤として用いられてもよいフッ素化脂肪族ホスフェートを開示している。これらのホスフェートエステルはテトラフルオロエチレン(TFE)およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)ホモポリマーの重合に特に有用であると言われている。
【0004】
Urban(米国特許出願公開第2006/0229398 A1号明細書)は、1)リン酸ビス(トリデカフルオロオクチル)エステルアンモニウム塩などのフルオロアルキルリン酸エステル塩、および2)ドデシル硫酸ナトリウムなどのアニオン性アルキルスルホネート分散剤の両方を用いる水性システムにおけるフルオロモノマーと(メタ)アクリレートとの重合を開示している。
【0005】
Morganら(米国特許第6,395,848 B1号明細書)は、少なくとも2つの分散剤の組み合わせを利用する水性分散重合法を開示している。少なくとも1つの分散剤は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)カルボン酸、スルホン酸もしくはそれらの塩であり、少なくとも1つの分散剤は、フルオロアルキルカルボン酸、スルホン酸もしくはそれらの塩、またはフルオロアルコキシアリールスルホン酸もしくはその塩である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、生じたフルオロポリマーがエマルジョンから容易に単離される非弾性フルオロポリマーの製造のための乳化重合法を提供する。この方法は、開始剤および分散剤を含む水性媒体中で少なくとも1つのフルオロモノマーを重合させてフルオロポリマーの水性分散体を得る工程であって、前記分散剤が式X−Rf−(CH2n−O−P(O)(OM)2(式中、nは1または2であり、X=HまたはFであり、M=一価のカチオンであり、RfはC4〜C6のフルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基である)のフルオロアルキルリン酸エステルである工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、非弾性フルオロポリマーを製造するための乳化重合法を指向する。フルオロポリマーは、部分フッ素化されていてもまたは過フッ素化されていてもよく、非晶質であっても結晶性であってもよい。「結晶性」とは、ポリマーがある程度の結晶化度を有し、ASTM D3418に従って測定される検出可能な融点、および少なくとも3J/gの溶融吸熱量によって特徴づけられることを意味する。先行定義に従って結晶性ではない溶融加工可能なフルオロポリマーは非晶質である。フルオロエラストマーである、すなわち20℃未満のガラス転移温度を有する非晶質フルオロポリマーの製造は、本発明に含まれない。
【0008】
本発明の方法によって製造されるフルオロポリマーは、少なくとも1つのフルオロモノマーの重合単位を含む。好ましくは、本発明の方法によって製造されるフルオロポリマーは、少なくとも1つのフルオロモノマーと第2の異なるモノマーとの共重合単位を含む。フルオロモノマーには、フッ素含有オレフィンおよびフッ素含有ビニルエーテルが含まれるが、それらに限定されない。
【0009】
本発明によって形成される非弾性フルオロポリマー分散液は、少なくとも1つのフッ素化モノマー、すなわち、ここで、このモノマーの少なくとも1つがフッ素を含有し、好ましくは、少なくとも1つのフッ素またはパーフルオロアルキル基が二重結合炭素に結合したオレフィン性モノマーから製造されたフルオロポリマーの粒子からなる。フルオロポリマーは、1つのフッ素化モノマーのホモポリマーか、またはその少なくとも1つがフッ素化されている、2つ以上のモノマーのコポリマーであることができる。本発明の方法に使用されるフッ素化モノマーは好ましくは独立して、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアルキルエチレン、フルオロビニルエーテル、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VF2)、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)およびパーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)からなる群から選択される。好ましいパーフルオロアルキルエチレンモノマーは、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)である。好ましいフルオロビニルエーテルには、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、およびパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)などのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)モノマー(PAVE)が含まれる。エチレンおよびプロピレンなどの非フッ素化オレフィン性コモノマーをフッ素化モノマーと共重合させることができる。
【0010】
フルオロビニルエーテルにはまた、非弾性フルオロポリマーへ官能性を導入するために有用なものが含まれる。これらには、CF2=CF−(O−CF2CFRfa−O−CF2CFR’fSO2F(式中、RfおよびR’fは独立して、F、Clまたは1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0、1または2である)が含まれる。このタイプのポリマーは、米国特許第3,282,875号明細書(CF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F、パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド))に、ならびに米国特許第4,358,545号明細書および同第4,940,525号明細書(CF2=CF−O−CF2CF2SO2F)に開示されている。別の例は、米国特許第4,552,631号明細書に開示されている、CF2=CF−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2CF2CO2CH3、パーフルオロ(4,7−ジオキサ−5−メチル−8−ノネンカルボン酸のメチルエステル)である。ニトリル、ヒドロキシル、シアネート、カルバメート、およびホスホン酸の官能性を持った類似のフルオロビニルエーテルは、米国特許第5,637,748号明細書;同第6,300,445号明細書;および同第6,177,196号明細書に開示されている。
【0011】
本発明は、溶融加工可能な非弾性フルオロポリマーの分散系を製造するときに特に有用である。溶融加工可能なとは、ポリマーが溶融状態で加工できる(すなわち、それらの意図される目的のために有用であるのに十分な強度および強靱性を示すフィルム、繊維、およびチューブなどの造形品へ溶融物から二次加工できる)ことを意味する。かかる溶融加工可能な非弾性フルオロポリマーの例には、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのホモポリマー、またはテトラフルオロエチレン(TFE)と、コポリマーの融点をTFEホモポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のそれより実質的に下に、例えば、315℃以下の溶融温度に低下させるのに十分な量で通常ポリマー中に存在する少なくとも1つのフッ素化共重合性モノマー(コモノマー)とのコポリマーが挙げられる。
【0012】
溶融加工可能な非弾性TFEコポリマーは典型的には、特定のコポリマーにとって標準的である温度でASTM D−1238に従って測定されるときに約1〜100g/10分のメルトフローレイト(MFR)を有するコポリマーを提供するために、ある量のコモノマーをコポリマー中へ組み込んでいる。好ましくは、溶融粘度は、米国特許第4,380,618号明細書に記載されているように修正されたASTM D−1238の方法によって372℃で測定されて少なくとも約102Pa・sであり、より好ましくは、約102Pa・s〜約106Pa・s、最も好ましくは約103Pa・s〜約105Pa・sの範囲であろう。追加の溶融加工可能なフルオロポリマーは、エチレン(E)またはプロピレン(P)とTFEまたはCTFEとのコポリマー、とりわけETFE、ECTFEおよびPCTFEである。
【0013】
本発明の方法によって製造することができる好ましい溶融加工可能な非弾性コポリマーは、少なくとも約40〜99モル%のテトラフルオロエチレン単位と約1〜60モル%の少なくとも1つの他のモノマーとを含む。TFEとの好ましいコモノマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの、3〜8個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィン、および/または線状もしくは分岐のアルキル基が1〜5個の炭素原子を含有するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)である。好ましいPAVEモノマーは、アルキル基が1、2、3または4個の炭素原子を含有するものであり、コポリマーは幾つかのPAVEモノマーを使用して製造することができる。好ましいTFEコポリマーには、FEP(TFE/HFPコポリマー)、PFA(TFE/PAVEコポリマー)、TFE/HFP/PAVE(ここで、PAVEはPEVEおよび/またはPPVEである)、MFA(TFE/PMVE/PAVE(ここで、PAVEのアルキル基は少なくとも2個の炭素原子を有する)ならびにTHV(TFE/HFP/VF2)が含まれる。
【0014】
本発明はまた、変性PTFEを含むポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の分散系を製造するときにも有用である。PTFEおよび変性PTFEは典型的には、少なくとも1×108Pa・sの溶融クリープ粘度を有し、かかる高い溶融粘度で、このポリマーは溶融状態で有意に流れず、それ故溶融加工可能なポリマーではない。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、いかなる有意なコモノマーも存在しない重合したテトラフルオロエチレンそれ自体を意味する。変性PTFEは、TFEと、得られたポリマーの融点がPTFEのそれより下に実質的に低下しないような低濃度のコモノマーとのコポリマーを意味する。かかるコモノマーの濃度は、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である。少なくとも約0.05重量%の最小量が好ましくは使用されて有意な影響を及ぼす。少量のコモノマー変性剤を含有する変性PTFEは、焼き付け(融解)中に改善されたフィルム形成能力を有する。好適なコモノマーには、パーフルオロオレフィン、とりわけヘキサフルオロプロピレン(HFP)または、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が好ましい、アルキル基が1〜5個の炭素原子を含有するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)が含まれる。クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、または嵩高い側基を分子中へ導入する他のモノマーがまた使用されてもよい。
【0015】
さらに有用な非弾性ポリマーは、ポリフッ化ビニル(PVF)およびフッ化ビニルのコポリマーだけでなくポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびフッ化ビニリデンのコポリマーのフィルム形成ポリマーである。
【0016】
本発明の乳化重合に用いられる分散剤は、式X−Rf−(CH2n−O−P(O)(OM)2(式中、n=1または2(好ましくはnは1)であり、X=HまたはFであり、M=一価のカチオン、好ましくはH、Na、K、LiまたはNH4であり、RfはC4〜C6フルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基である)のフルオロアルキルリン酸エステルである。フルオロアルキルおよびフルオロアルコキシ基は分岐であっても非分岐であってもよい。好ましくはフルオロアルキルおよびフルオロアルコキシ基は過フッ素化されている。各Mは同じものである必要はない。例えば、分散剤を含有する水溶液のpHに依存して、1つのMはHであってもよいが、他のMはNaまたはKである。
【0017】
かかる分散剤の具体的な例には、CF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OM)2、H−(CF26−CH2−O−P(O)(OM)2およびF−(CF25−CH2−O−P(O)(OM)2が挙げられるが、それらに限定されない。M=HまたはNH4が好ましい。CF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)2およびCF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)(ONH4)が特に好ましい。
【0018】
任意選択的に、(上記のフルオロアルキルリン酸エステルに加えて)第2の分散剤が本発明の重合法に用いられてもよい。本発明のこの態様においては、第2の分散剤は、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸およびリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を有するパーフルオロポリエーテル(PFPE)である。本発明に使用されるパーフルオロポリエーテルは、分子の主鎖において酸素原子が1〜3個の炭素原子を有する飽和フルオロカーボン基によって分離されている任意の鎖構造を有することができる。2つ以上のタイプのフルオロカーボン基が分子中に存在してもよい。代表的な構造は繰り返し単位
(−CFCF3−CF2−O−)n (XI)
(−CF2−CF2−CF2−O−)n (XII)
(−CF2CF2−O−)n−(CF2−O−)m (XIII)
(−CF2CFCF3−O−)n−(CF2−O−)m (XIV)
を有する。
【0019】
これらの構造は、J.Appl.Polymer Sci.57(1995),797ページにKasaiによって議論されている。そこに開示されているように、かかるPFPEは、一端にまたは両端にカルボン酸基もしくはその塩(「カルボキシル基」)を有することができる。かかる構造はまた、一端でのまたは両端でのスルホン酸基またはリン酸基でも可能である。「スルホン酸」基または「リン酸」基は、酸としてかもしくはそのイオン塩として存在してもよい。加えて、両端に酸官能性を持ったPFPEは、一端にカルボン酸基を、他端にスルホン酸基を有してもよい。PFPEスルホン酸は、140℃でジメチルホルムアミド中の相当するPFPEカルボン酸カリウムの溶液中にSO2をバブリングさせ、引き続き抽出およびイオン交換による酸形態への変換によって製造される。PFPE−リン酸は、PFPE−カルボン酸またはPFPE−酸フロオリドを先ず還元してアルコールにし、次にこのアルコールをPOCl3と反応させ、引き続き水中で加水分解するか、このアルコールをP25と反応させるかのどちらかによって製造される。構造XIを有するPFPEはDuPontから入手可能である。構造XIIを有するPFPEはダイキン工業株式会社から入手可能である。PFPE−XIIIおよびXIVは、Solvay Solexisから入手可能である。本発明に有用なPFPEは、これらの会社から入手可能な特定のPFPEに限定されない。モノカルボキシル、モノスルホン酸またはモノリン酸PFPEについては、分子の他端は通常過フッ素化されているが、水素または塩素原子を含有してもよい。本発明に使用することができる一端にまたは両端にカルボキシル、スルホン酸基またはリン酸基を有するPFPEは、少なくとも2個のエーテル酸素、より好ましくは少なくとも4個のエーテル酸素、さらにより好ましくは少なくとも6個のエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも1つ、より好ましくはかかるフルオロカーボン基の少なくとも2つは、2または3個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、エーテル酸素を分離するフルオロカーボン基の少なくとも50%は、2または3個の炭素原子を有する。同様に、好ましくは、PFPEは合計少なくとも9個の炭素原子を有し、それによって上記の繰り返し単位構造におけるnおよびn+mの最小値は少なくとも3である。分子量は、PFPEが室温で普通液体であるように十分に低い。一端または両端にカルボキシル、スルホン酸基またはリン酸基を有する2つ以上のPFPEを使用することができるが、普通はたった1つのかかるPFPEが用いられる。
【0020】
本発明の方法に用いられる全分散剤の量(すなわちフルオロアルキルリン酸エステルの量、プラス(もしあれば)任意選択のPFPEの量)は、典型的な範囲内にある。従って、全分散剤の量は、重合に使用される水の総重量を基準にして、約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは0.05〜7重量%であることができる。本発明の重合法に用いられてもよい分散剤の濃度は、各分散剤の臨界ミセル濃度(c.m.c.)より上または下であってもよい。c.m.c.は異なる分散剤について異なる。当業者が認めるように、所与のレベルの分散系安定性を達成するために必要とされる分散剤の量は、一定の粒度で製造されるべきポリマーの量と共に増加するであろう。安定性のために必要とされる分散剤の量はまた、製造される一定量のポリマーで粒径が減少すると共に、全表面積がこれらの条件下で増加するので増加する。これは、カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端を有するPFPEの不存在下に実施される類似の方法より小さい分散系粒子を一般に生成する、本発明の方法について幾つかの場合に観察される。かかる場合には、全分散剤を増やさないと、得られた分散系は室温で不安定であり得て、ゲルを形成する。しかしながら、本発明の分散系は依然として室温で、それらの全分散剤レベルからおよびそれらの小さい分散粒度で予期されるよりも安定である。意外にも、室温で不安定である生成分散系は、反応器中の少量の凝塊で判断されるように、重合に用いられる高温では安定であるように思われる。「凝塊」は、重合中に水性分散系から分離し得る非水湿潤性ポリマーである。形成される凝塊の量は、分散系安定性の指標である。
【0021】
カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端を有するPFPEは、分散剤において多量に存在してもよいが、かかる化合物は高価である。全分散剤のうち、カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端基を有する任意選択のPFPEは好ましくは少量で、すなわち、重量で全分散剤の半分未満で存在する。カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端を有するPFPEの量は、全分散剤の重量を基準にして、より好ましくは25重量%以下、最も好ましくは15重量%以下である。存在するとき、カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端を有する任意選択のPFPEの量は、全分散剤の重量を基準にして、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%である。使用されるカルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端基を有するPFPEの量は、望まれる効果(すなわち、粒度)のレベルに依存するであろう。意外にも、単独での、例えば、フルオロアルキルリン酸エステル分散剤の不存在下でのカルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端を有するPFPEの使用は、フルオロアルキルリン酸エステル分散剤の単独での使用と比較して改善された結果をもたらさない。すなわち、分散剤の少なくとも1つがフルオロアルキルリン酸エステルであり、分散剤の少なくとも1つがパーフルオロポリエーテルカルボン酸、リン酸、もしくはスルホン酸またはそれらの塩である、少なくとも2つの分散剤の組み合わせの使用は、どちらかのタイプの分散剤単独の使用と比べて、相乗効果を本重合プロセスに与える。
【0022】
本明細書で用いるところでは、「分散剤の組み合わせ」は、「組み合わせ」の成分が重合の間ずっと反応器中に存在することを意味する。成分は、時間を変えるなど、別々に導入することができ、それらはそのように組み合わせられてもよいが、反応器中への導入前に物理的に組み合わせられる必要はない。バッチ式乳化重合において、分散剤のすべては、重合が始められる前に反応器に加えられてもよいか、または添加は、反応器プレチャージと、その後の添加、典型的には粒子核生成のほとんど起こった後との間に分割することができる。任意選択のPFPEの添加は好ましくはプレチャージによる。連続重合では、分散剤成分は好ましくは、典型的には重合の全体にわたって、混合物として添加される。
【0023】
本発明の乳化重合法は連続、セミバッチ式またはバッチ式プロセスであってもよい。いかなる方法においても、1つ以上のモノマーは任意選択的に、10ミクロン未満のモノマー液滴サイズを有するマイクロエマルジョンを生成するために界面活性剤で前もって乳化させられてよい。高剪断ミキサーが典型的にはマイクロエマルジョンを形成するために用いられる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態の実施に際して、本方法は、加圧反応器でバッチ式プロセスとして実施される。本発明の方法を実施するための好適な垂直または水平反応器は、望ましい反応速度および用いられる場合コモノマーの一様な組み込みのためにTFEなどの気相モノマーの十分な接触を水性媒体が提供するための攪拌機を備えている。反応器は好ましくは、制御された温度の熱交換媒体の循環によって反応温度が都合よく制御できるように反応器を取り囲む冷却ジャケットを含む。
【0025】
典型的な方法では、反応器は先ず、重合媒体としての脱イオン脱気水を装入される。上記のフルオロアルキルリン酸エステル分散剤と(上記のような)カルボキシル、リン酸またはスルホン酸末端基を有する任意選択のPFPEとがこの媒体に分散される。PTFEホモポリマーおよび変性PTFEのためには、安定剤としてのパラフィンワックスが多くの場合に添加される。PTFEホモポリマーおよび変性PTFEのための好適な手順には、先ず反応器をTFEで加圧する工程が含まれる。使用される場合、HFPまたはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)などのコモノマーが次に加えられる。過硫酸アンモニウム溶液などのフリーラジカル開始剤溶液が次に加えられる。PTFEホモポリマーおよび変性PTFEのためには、コハク酸の源である第2開始剤(例えばジスクシニルペルオキシド)が凝塊を減らすために開始剤溶液中に存在してもよい。あるいはまた、過マンガン酸カリウム/シュウ酸などのレドックス開始剤システムが使用される。温度が上げられ、重合が始まるとすぐに、追加のTFEが圧力を維持するために加えられる。重合の開始は「キックオフ」と言われ、ガス状モノマーフィード圧力が実質的に、例えば、約10psi(約70kPa)低下することが観察される時点と定義される。コモノマーおよび/または連鎖移動剤をまた、重合が進行するにつれて加えることができる。幾つかの重合については、追加のモノマー、開始剤および/または重合剤が重合中に加えられてもよい。
【0026】
バッチ式分散重合は、手順通り2段階で説明することができる。反応の初期は、所定数の粒子が確立される核生成段階であると言うことができる。その後、新規粒子の形成はほとんどまたは全くなしに、主たる行動が既成粒子上でのモノマーの重合である成長段階が起こると言うことができる。核生成から重合の成長段階への遷移は円滑に起こる。TFEの重合では、これは典型的には、約4〜約10重量%のポリマー固形分が反応器中に存在する期間にわたって起こる。
【0027】
所望量のポリマーまたは固形分が達成されたバッチ完了(典型的には数時間)後に、フィードは停止され、反応器がガス抜きされ、窒素でパージされ、容器中の生分散系は冷却容器に移される。
【0028】
重合完了時の分散系の固形分は、分散系について意図される使用に依存して変えることができる。例えば、本発明の方法は、より高い固形分レベルへのその後の重合プロセスのための「種」として用いられる、低い固形分、例えば、10重量%未満の「種」分散系を製造するために用いることができる。他のプロセスでは、本発明の方法によって製造されたフルオロポリマー分散系の固形分は、好ましくは少なくとも約10重量%である。より好ましくは、フルオロポリマー固形分は少なくとも約20重量%である。本方法によって製造されるフルオロポリマー固形分の好ましい範囲は、約20重量%〜約65重量%、さらにより好ましくは約20重量%〜約55重量%、最も好ましくは、約35重量%〜約55重量%である。
【0029】
本発明の好ましい方法では、重合は、生成するフルオロポリマーの総重量を基準にして約10重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満、最も好ましくは約0.5重量%未満の非分散フルオロポリマー(凝塊)を生成する。
【0030】
重合したままの分散系は、ある種の用途向けにアニオン性、カチオン性、または非イオン性界面活性剤で安定化させることができる。しかし典型的には、重合したままの分散系は、公知の方法によって非イオン性界面活性剤で典型的には安定化された濃縮分散系を生成する分散系濃縮操作に移される。濃縮分散系の固形分は典型的には約35〜約70重量%である。ある種のグレードのPTFE分散系は微粉末の生成のために製造される。この使用のために、分散系は凝固させられ、水性媒体は除去され、PTFEは乾燥されて微粉末を生成する。
【0031】
溶融加工可能なコポリマーの分散重合は、かなりの量のコモノマーが最初にバッチに加えられるおよび/または重合中に導入されることを除いて似ている。連鎖移動剤は、メルトフローレイトの増加をもたらすコポリマーの分子量を低下させるためにかなりの量で典型的には使用される。同じ分散系濃縮操作を、安定化された濃縮分散系を製造するために用いることができる。あるいはまた、成形樹脂として用いられる溶融加工可能なフルオロポリマーのために、分散系は凝固させられ、水性媒体は除去される。フルオロポリマーは乾燥され、次に、その後の溶融加工操作に使用するためのフレーク、チップまたはペレットなどの都合のよい形態へ加工される。
【0032】
本発明で重合を開始させるために使用されてもよい水溶性過酸化物には、例えば、過硫酸水素のアンモニウム、ナトリウムまたはカリウム塩が含まれる。レドックス型開始においては、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤が過酸化物に加えて存在する。これらの水溶性過酸化物は、単独でまたは2つ以上のタイプの混合物として使用されてもよい。使用される量は、一般にポリマーの100重量部当たり0.01〜0.4重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲で選択される。重合中にフルオロポリマー鎖端の幾らかは、これらの過酸化物の分解によって発生した断片でキャップされる。
【0033】
任意選択的に、フルオロポリマーゴムまたは小片は、分散系への凝固剤の添加によって本発明の方法によって製造されるフルオロポリマー分散系から単離されてもよい。当該技術分野で公知の任意の凝固剤が使用されてもよい。好ましくは、分散系に含有される分散剤と水溶性塩を形成する凝固剤が選ばれる。さもなければ、沈澱する分散剤塩が単離されるフルオロエラストマー中に同伴されることになる可能性があり、その結果ビスフェノール型硬化剤でのフルオロエラストマーの硬化を妨害する。
【0034】
一般的な凝固剤には、アルミニウム塩(例えば硫酸カリウムアルミニウム)、カルシウム塩(例えば硝酸カルシウム)、マグネシウム塩(例えば硫酸マグネシウム)、または鉱酸(例えば硝酸)が含まれるが、それらに限定されない。かかる短鎖界面活性剤とのカルシウム、マグネシウム、または一価のカチオンの塩は水溶性であり、こうしてフルオロエラストマーから容易に除去可能である。
【0035】
凝固剤を用いる代わりに、本発明によって製造されるフルオロポリマーは、機械凝固または凍結融解凝固されてもよい。
【0036】
本発明の方法によって製造されるフルオロポリマーは、フィルム、シール、ワイヤコーティング、チューブ材料およびラミネートを含むがそれらに限定されない、多くの工業用途で有用である。
【実施例】
【0037】
試験方法
コモノマー含有率(PPVE)は、米国特許第4,743,658号明細書、列5、行9〜23に開示されている方法に従ってFTIRによって測定した。
【0038】
粒度、すなわち、生の分散系粒度(RDPS)は、Microtrac Ultrafine Particle Analyzer(UPA)を用いて材料の粒度分布(PSD)を測定するレーザー回折法によって測定した。UPAは、0.003ミクロン〜6.54ミクロンのサイズ範囲のPSDを測定するための動的光散乱原理を用いる。水でバックグランドを集めた後にサンプルを分析した。測定を3回繰り返し、平均した。
【0039】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、それらに限定されない。
【0040】
本発明の乳化重合法での使用に好適なフルオロアルキルリン酸エステルは、次の手順によって製造した。
【0041】
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1−ヘプタンリン酸エステル[H(CF26−CH2O−PO(OH)2]の製造:
第1段階において、ホスホロジクロリデートをフルオロアルキルアルコールから製造した。冷却器および温度プローブを備えた反応フラスコへ、1H,1H,7H−パーフルオロヘプタン−1−オール(150グラム、0.45モル)および塩化カルシウム(10.2グラム、0.092モル)を加えた。内容物を窒素下に撹拌しながら、オキシ塩化リン(207.3グラム、1.35モル)をフラスコに加えた。内容物の温度は周囲温度から約15℃に低下した。反応混合物を次に110℃に6時間加熱した。
【0042】
(ガスクロマトグラフィーによって確認されるように)反応が完了した後に、過剰のオキシ塩化リンを留去した(bp.105℃)。さらなる真空蒸留は、所望のホスホロジクロリデート生成物を透明な無色の液体として与えた。Bp.95℃/0.3mmHg。収量=158〜170g。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ6.83(tt,J=51Hz,5.2Hz,1H),5.20(m,2H);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−119.4(m,2F),−121.7(m,2F),−122.4(m,2F),−122.9(m,2F),−129.1(m,2F),−138.0(dm,J=51Hz,2F)。
【0043】
第2段階において、このホスホロジクロリデートを加水分解してフルオロアルキルリン酸エステルを生成した。丸底フラスコに、上で製造された1H,1H,7H−パーフルオロヘプタン−1−オール、ホスホロジクロリデート(158グラム、0.352モル)を装入した。温度を35℃〜45℃に維持しながら(外部氷−水冷却)、水(12.78グラム、0.71モル)を滴加した。添加を完了した後、反応混合物を周囲温度で3時間撹拌した。生じた溶液を45℃〜50℃で高真空下に置き、白色固体生成物をもたらした。収率は定量的であった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ9.68(S,−OH’s),6.82(tt,J=51Hz,10.5Hz,1H),4.61(m,2H);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−120.5(m,2F),−122.1(m,2F),−123.1(m,2F),−123.3(m,2F),−129.5(m,2F),−138.4(dm,J=51Hz,2F)。
【0044】
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロ−1−ヘキサリン酸エステル[F(CF25−CH2O−PO(OH)2]の製造:
第1段階において、ホスホロジクロリデートをフルオロアルキルアルコールから製造した。冷却器および温度プローブを備えた反応フラスコに、1H,1H−パーフルオロヘキサン−1−オール(50グラム、0.166モル)および塩化カルシウム(2.9グラム、0.026モル)を加えた。フラスコ内容物を窒素下に撹拌しながら、オキシ塩化リン(207グラム、1.35モル)をこのアルコールにゆっくり加えた。反応混合物を次に110℃に5時間加熱した。
【0045】
反応が完了した後に、過剰のオキシ塩化リンを留去した。さらなる真空蒸留は、所望のホスホロジクロリデート生成物を透明な無色の液体として与えた。Bp.88℃〜90℃/5mmHg。収量=53.3g。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ5.25(m,2H);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−80.7(m,3F),−119.3(m,2F),−122.4(m,4F),−125.7(m,2F)。
【0046】
第2段階において、このホスホロジクロリデートを加水分解してフルオロアルキルリン酸エステルを生成した。丸底フラスコへ、1H,1H−パーフルオロヘキサン−1−オール、ホスホロジクロリデート(83.4グラム、0.20モル)を装入した。温度を35℃〜45℃に維持しながら(外部氷−水冷却)、水(7.2グラム、0.40モル)を滴加した。添加を完了した後、反応混合物を周囲温度で2時間撹拌した。この溶液を次に60℃で高真空下に置いて乾燥させ、白色固体生成物をもたらした。収量は75.9グラムであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ4.60(m,2H);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−82.2(m,3F),−121.5(m,2F),−123.9(m,2F),−124.0(m,2F),−127.3(m,2F)。
【0047】
2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサノイルリン酸エステル[CF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)2]の製造:
第1段階において、フルオロアルキルアルコールを2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサノイルフルオリド(HFPOダイマー)から製造した。冷却器および温度プローブを備えた反応フラスコに、LiAlH4(13.5g、0.355モル)および500mlのエーテル溶媒を装入し、内容物を0℃に冷却した。(NaBH4をLiAlH4の代わりに用いてもよい)。HFPO−ダイマー(149.4g、0.45モル)をゆっくり加え、反応フラスコ内容物温度を外部冷却で10℃未満に制御した。添加が完了した後、反応混合物を5〜10℃で2〜3時間撹拌した。反応混合物を400mlの6N HCl/500mL氷水混合物へゆっくり移し、エーテル層を分離した。底部層を200mLのエーテルで(2回)抽出した。エーテル層を一緒にし、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次に蒸留してフルオロアルコール(2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサン−1−オール)(HFPOダイマーアルコール)を透明な無色の液体として得た。Bp.112℃〜114℃。収量:127グラム(89%)。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ 4.30(m);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−80.5〜−82.5(m,8F),−129.4(m,2F),−134.6(dm,1F)。
【0048】
第2段階において、ホスホロジクロリデート(2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロ−ヘキサノイルホスホロジクロリド酸(phosphorodichloridic acid))(HFPOダイマーホスホリルクロリド)をフルオロアルキルアルコールから製造した。冷却器および温度プローブを備えた反応フラスコに、オキシ塩化リン(255.1g、1.662モル)および塩化カルシウム(7.14g、0.064モル)を装入した。フラスコ内容物を窒素下に撹拌しながら、HFPOダイマーアルコール(127g、0.402モル)を数回の大部分で加えた。内容物の温度は数度低下した。反応混合物を105℃〜110℃で6時間加熱した。反応の進行をGCによって監視した。
【0049】
反応が完了した後に、過剰のオキシ塩化リンを留去した(Bp.105℃)。さらなる真空蒸留は、所望のホスホロジクロリデートを透明な無色の液体として与えた。Bp.35℃〜38℃/2〜3mmHg(または59℃/4.2mmHg)。収量はおよそ105グラム(60%)であった。
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−80.5〜−82.5(m,8F),−129.4(m,2F),−135.1(dm,1F)。
【0050】
第3段階において、このホスホロジクロリデートを加水分解してフルオロアルキルリン酸エステル(2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサノイルリン酸エステル)を生成した。丸底フラスコに、上で製造されたHFPOダイマーホスホリルクロリド(105グラム、0.242モル)基質を装入した。温度を30℃より下に維持しながら(外部氷−水冷却)、水(9.8グラム、0.544モル)を滴加した。添加を完了した後、反応物を周囲温度で一晩にわたり撹拌した。2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサノイルリン酸エステル生成物を70℃の真空オーブン中で乾燥させ、透明な無色の粘稠な液体を得た。収率は定量的であった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d6):δ 4.80(m);
19F−NMR(376.89MHz,アセトン−d6):−80.6〜−82.5(m,8F),−129.4(m,2F),−134.7(dm,1F)。
【0051】
実施例1
本実施例では、用いた分散剤は、以下の手順によって製造した、水溶液中の19重量%の部分中和した(すなわち1個のP−(OH)がP−(ONH4)で置き換えられた)2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1−ヘプタンリン酸エステル(DA7)であった。反応フラスコ中の25mLの蒸留H2Oに、pH約9.0まで2、3滴のNH4OHを加えた。上記の溶液を撹拌し、40℃で加熱しながら、数部分(合計6.84g)の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1−ヘプタンリン酸エステル(上記の通り製造された)を加えた。2、3滴のNH4OHを再び加えてこれらの部分間でpHを約6に調整した。生じた水溶液は、幾分穏やかな泡形成と共に透明になった。それは、30mLの総容量および19重量%の部分中和分散剤(DA7)を有した。
【0052】
本実施例ではまた、1000gの脱イオン水中の1.0gの過硫酸アンモニウムの開始剤溶液を用いた。
【0053】
脱気水を重合に使用した。それは、脱イオン水を大きいステンレススチール容器にポンピングし、すべての酸素を除去するために水を通して窒素ガスをおよそ30分間激しくバブリングすることによって調製した。
【0054】
反応器は、3枚羽根付きリボンかき混ぜ機および邪魔板インサートを備えた、Inconel(登録商標)でできた1リットルの垂直オートクレーブであった。本実施例では連鎖移動剤は全く使用しなかった。
【0055】
およそ13PSIG(11.7kPa)の減圧を反応器にかけた。これを用いて分散剤の上記溶液の4.8gの溶液と500mLの脱気水とをプレチャージとして吸い込んだ。反応器を次に、窒素ガスでの50PSIG(450kPa)への加圧、引き続き1PSIG(108kPa)へのガス抜きによって3回パージして(かき混ぜ機速度=100回転毎分(rpm))酸素含有率を低下させた。それをさらに、ガス状テトラフルオロエチレン(TFE)での25PSIG(274kPa)への加圧、引き続き1PSIG(108kPa)へのガス抜きによって3回パージし(かき混ぜ機=100rpm)、オートクレーブの内容物が酸素を含まないことをさらに確実にした。かき混ぜ機速度を600rpmに上げ、反応器を65℃に加熱し、次にパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)(12.8g)を反応器中へ液体としてポンピングした。
【0056】
65℃でのときに、反応器圧力を、TFE(約38g)を加えることによって名目250PSIG(1.83MPa)に上昇させた。上記調製開始剤溶液を20mL/分の速度で1分間反応器にフィードして0.02gの過硫酸アンモニウムのプレチャージを提供した。それを次に、TFE秤量タンクの質量損失として測定される、90gのTFEが消費された時点と定義されるバッチの終わりまで0.25mL/分の速度でポンピングした。
【0057】
キックオフ(10PSIG(70kPa)圧力低下が観察された時点と定義される)で重合が開始したと見なされ、それはまた、重合の残りのために0.12g/分の速度でPPVEをフィードする出発点でもあった。全重合の全体にわたって必要に応じてTFEをフィードすることによって反応器圧力を250PSIG(1.83MPa)で一定に保った。
【0058】
90gのTFEが消費された後、かき混ぜ機を200rpmに遅くし、反応器へのすべてのフィードを止め、内容物を30分にわたって30℃に冷却した。かき混ぜ機を次に100rpmに下げ、反応器を大気圧までガス抜きした。このように製造されたフルオロポリマー分散系は、典型的には15〜16重量%の固形分を有した。
【0059】
凍結し、解凍し濾過することによってポリマーを分散系から単離した。ポリマーを脱イオン水で洗浄し、数回濾過し、その後80℃および30mmHg(4kPa)の減圧で真空オーブン中一晩にわたり乾燥させた。結果を表1に報告する。
【0060】
実施例2
分散剤の溶液が、以下の手順によって調製された、18.3重量%の分散剤DA7とカルボキシレート末端基を有する3.7重量%のパーフルオロポリエーテル(PFPE)(DuPontから入手可能なKrytox(登録商標)157 FSL)との組み合わせを含有したことを除いて実施例1の一般手順を繰り返した。反応フラスコ中の25mLの蒸留H2Oに、pH約9.0まで2、3滴のNH4OHを加えた。上記の溶液を撹拌し、40℃で加熱しながら、数部分(合計6.84g)の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1−ヘプタンリン酸エステル(上記の通り製造された)を加えた。2、3滴のNH4OHを再び加えてこれらの部分間でpHを約6に調整した。生じた水溶液は、幾分穏やかな泡形成と共に透明になった。それは、30mLの総容量を有した。この溶液に次に、1.37gのKrytox(登録商標)157 FSLを加え、溶液を撹拌しながら50℃に加熱した。Krytox(登録商標)157 FSLは迅速に溶解して無色透明な溶液を与えた。
【0061】
実施例3
用いた分散剤(DA8)が、以下の手順によって製造された、水溶液中の19重量%の部分中和した2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロ−1−ヘキサリン酸エステル(すなわち1個のP−(OH)がP−(ONH4)で置き換えられた)であったことを除いて実施例1の一般手順を繰り返した。反応フラスコ中の25mLの蒸留H2Oに、pH約9.0まで2、3滴のNH4OHを加えた。上記の溶液を撹拌し、40℃で加熱しながら、数部分(合計6.84g)の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロ−1−ヘキサリン酸エステル(上記の通り製造された)を加えた。2、3滴のNH4OHを再び加えてこれらの部分間でpHを約6に調整した。生じた水溶液は、幾分穏やかな泡形成と共に透明になった。それは、30mLの総容量を有した。
【0062】
実施例4
分散剤の溶液が、以下の手順によって調製された、18.3重量%の分散剤DA8と、カルボキシレート末端基を有する3.7重量%のパーフルオロポリエーテル(PFPE)(DuPontから入手可能なKrytox(登録商標)157 FSL)との組み合わせを含有したことを除いて実施例1の一般手順を繰り返した。反応フラスコ中の25mLの蒸留H2Oに、pH約9.0まで2、3滴のNH4OHを加えた。上記の溶液を撹拌し、40℃で加熱しながら、数部分(合計6.84g)の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロ−1−ヘキサリン酸エステル(上記の通り製造された)を加えた。2、3滴のNH4OHを再び加えてこれらの部分間でpHを約6に調整した。生じた水溶液は、幾分穏やかな泡形成と共に透明になった。それは、30mLの総容量を有した。この溶液に次に、1.37gのKrytox(登録商標)157 FSLを加え、溶液を、Krytox(登録商標)157 FSLがゆっくり溶解して、無色透明な溶液をもたらす間室温で数時間撹拌した。
【0063】
実施例5
用いた分散剤(HFPO−DP)が、水溶液中の部分中和した2−トリフルオロメチル−3−オキサ−2,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロヘキサノイルリン酸エステル(すなわち1個のP−(OH)がP−(ONH4)で置き換えられた)の7.8gの11重量%水溶液であったことを除いて実施例1の一般手順を繰り返した。またモノマーフィードは、60gのTFEが消費された後に止めた。
【0064】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始剤および少なくとも1つの分散剤を含む水性媒体中で少なくとも1つのフルオロモノマーを重合させてフルオロポリマーの水性分散体を得る工程を含む、非弾性フルオロポリマーの製造のための乳化重合法であって、前記分散剤が式X−Rf−(CH2n−O−P(O)(OM)2(式中、nは1または2であり、X=HまたはFであり、M=一価のカチオンであり、RfはC4〜C6のフルオロアルキルまたはフルオロアルコキシ基である)のフルオロアルキルリン酸エステルである乳化重合法。
【請求項2】
前記分散剤が、式CF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OM)2のものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分散剤が、CF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)2およびCF3CF2CF2OCF(CF3)CH2OPO(OH)(ONH4)からなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分散剤が、式H−(CF26−CH2−O−P(O)(OM)2のものである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分散剤が、式F−(CF25−CH2−O−P(O)(OM)2のものである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのフルオロモノマーが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアルキルエチレン、フルオロビニルエーテル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールおよびパーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソランからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フルオロポリマーが、i)テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレン、ii)テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、iii)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデン、iv)エチレンおよびテトラフルオロエチレン、v)エチレンおよびクロロトリフルオロエチレン、ならびにvi)プロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンからなる群から選択される共重合単位を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第2の分散剤の導入をさらに含む請求項1に記載の乳化重合法であって、前記第2の分散剤がカルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸およびリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を有するパーフルオロポリエーテルである乳化重合法。

【公表番号】特表2011−510160(P2011−510160A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544389(P2010−544389)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/031474
【国際公開番号】WO2009/094346
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(597035953)デュポン パフォーマンス エラストマーズ エルエルシー (44)
【Fターム(参考)】