説明

フルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ライン

【課題】 1つの製造ラインをフルフェイスホイールとコンベンショナルホイールの両方の製造に共用できるようにすること。
【解決手段】 共用リム搬送ライン21と、
共用ディスク搬送ライン22と、
共用リム搬送ラインに設けられたフルフェイスホイール用リム溶接開先切削装置101と、
ディスクのリムへの嵌入機23、およびフルフェイスホイール用のリムのディスクへの仮付け溶接機24と、
コンベンショナルホイールとフルフェイスホイールのリム・ディスク溶接に共用される本溶接機27が1以上配置された溶接ステーション28と、
嵌入機と仮付け溶接機から溶接ステーションまで延びるワーク搬送ライン29と、
を備えたフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ライン10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
片側フランジレスリムを、リムフランジを有するディスクのフランジ部背面に当接させ全周溶接して、意匠面に溶接部が現れないようにしたフルフェイスホイールは、知られている(たとえば、特開平08−183301号公報)。これに対し、コンベンショナルホイールは、ディスクがリムに嵌合され、リムのドロップ部またはビードシート部の内周面で、リムとドロップ部がピッチ溶接されるため、ディスクとリムとの嵌合線が意匠面側から見える。
【特許文献1】特開平08−183301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来は、フルフェイスホイールの製造ラインはコンベンショナルホイールの製造ラインとは別に設けられており、製造ラインの共用は行われていなかった。また、図9〜図11に示すように、フルフェイスホイール1fのリム2fとディスク3fとの溶接機4fのトーチ5fおよびポジショナー6fと、コンベンショナルホイール1cのリム2cとディスク3cとの溶接機4cのトーチ5cおよびポジショナー6cとは、それぞれ、別々に構成されていた。
その結果、フルフェイスホイールとコンベンショナルホイールの両方の製造ラインを設けていたため、設備費、ライン設置スペースが、コンベンショナルホイールの製造ラインのみの場合に比べてほぼ倍増するという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、ほぼ1つの製造ラインをフルフェイスホイールとコンベンショナルホイールの両方の製造に共用できるようにしたフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ラインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) コンベンショナルホイール用リムおよびフルフェイスホイール用リムの搬送に共用される共用リム搬送ラインと、
コンベンショナルホイール用ディスクおよびフルフェイスホイール用ディスクの搬送に共用される共用ディスク搬送ラインと、
共用リム搬送ラインに対して設けられたフルフェイスホイール用リムの溶接開先切削装置と、
共用リム搬送ラインの終端と共用ディスク搬送ラインの終端の近傍に配置された、コンベンショナルホイール用のディスクのリムへの嵌入機、およびフルフェイスホイール用のリムのディスクへの仮付け溶接機と、
共用リム搬送ラインからリムを嵌入機か仮付け溶接機の何れかに搬送するとともに共用ディスク搬送ラインからディスクを嵌入機か仮付け溶接機の何れかに搬送する1以上のロボットと、
コンベンショナルホイールとフルフェイスホイールのリム・ディスク溶接に共用される本溶接機が1以上配置された溶接ステーションと、
嵌入機と仮付け溶接機から溶接ステーションまで延び少なくとも一部がコンベンショナルホイール用リム・ディスクアッセンブリとフルフェイスホイール用リム・ディスクアッセンブリの搬送に共用される溶接ステーションへのワーク搬送ラインと、
を備えたフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ライン。
(2) 本溶接機は、溶接トーチと汎用ロボットを有し、溶接トーチが静止で、ロボットがワークを保持してワークを溶接トーチに対して回転させる(1)記載のフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ライン。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)、(2)のフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ラインによれば、共用リム搬送ラインに対してフルフェイスホイール用リムの溶接開先切削装置を設け、ラインに嵌入機と仮付け溶接機とを配置し、コンベンショナルホイールとフルフェイスホイールのリム・ディスク溶接に共用可能な本溶接機を設けたので、1つのホイール製造ラインをコンベンショナルホイールとフルフェイスホイールの製造に共用できる。その結果、設備費、ライン設置スペースを、フルフェイスホイールとコンベンショナルホイールの各々に対して製造ラインを設けていた従来に比べて、ほぼ半減することができる。
上記(2)のフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ラインによれば、本溶接機は、溶接トーチと汎用ロボットを有し、溶接トーチが静止で、ロボットがワークを保持してワークを溶接トーチに対して回転させるので、フルフェイスホイールとコンベンショナルホイールの何れの、リムとディスクとの溶接にも対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ラインを、図1〜図8を参照して、説明する。
【0008】
〔全体構成〕
まず、全体構成を説明する。
本発明のフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ライン10は、図1に示すように、コンベンショナルホイール用リム12cおよびフルフェイスホイール用リム12fの搬送に共用される共用リム搬送ライン21と、コンベンショナルホイール用ディスク13cおよびフルフェイスホイール用ディスク13fの搬送に共用される共用ディスク搬送ライン22と、共用リム搬送ライン21に対して設けられたフルフェイスホイール用リム12fの溶接開先切削装置101と、共用リム搬送ライン21の終端と共用ディスク搬送ライン22の終端の近傍に配置された、コンベンショナルホイール用のディスク13cのリム12cへの嵌入機23、およびフルフェイスホイール用のリム12fのディスク13fへの仮付け溶接機24と、共用リム搬送ライン21からリム12を嵌入機23か仮付け溶接機24の何れかに搬送するとともに共用ディスク搬送ライン22からディスク13を嵌入機23か仮付け溶接機24の何れかに搬送する1以上のロボット25、26と、コンベンショナルホイール11cとフルフェイスホイール11fのリム・ディスク溶接に共用される本溶接機27が1以上配置された溶接ステーション28と、嵌入機23と仮付け溶接機24から溶接ステーション28まで延び少なくとも一部がコンベンショナルホイール用リム・ディスクアッセンブリとフルフェイスホイール用リム・ディスクアッセンブリの搬送に共用される溶接ステーション28へのワーク搬送ライン29と、溶接ステーション28で溶接されたコンベンショナルホイール11c、フルフェイスホイール11fを搬出する搬出ライン36を備えている。
以下、本発明において重要な機器、装置である、共用リム搬送ライン21に設けられた、フルフェイスホイール用リム12fの溶接用開先切削装置101と、フルフェイスホイール用のリム12fのディスク13fへの仮付け溶接機24と、溶接ステーション28に設けられた本溶接機27を、説明する。
【0009】
〔フルフェイスホイール用リムの溶接用開先切削装置〕
共用リム搬送ライン21には、フルフェイスホイール用リム12fの溶接用開先切削装置101がインライン化されて設けられている。
溶接用開先切削装置101は、図6に示すように、フルフェイスホイール用片側フランジレスリムのフランジレス側端部のディスク接合面を切削する装置であり、テールストック部113に設計変更を施した旋盤110と、ロボット120(これは、市販の6自由度ロボットでよい)を有するシステムである。
【0010】
旋盤110は、ワーク12f(フルフェイスホイール用片側フランジレスリム)をクランプ・アンクランプするチャック112を有しワークを回転させるヘッドストック111と、ワーク12fをクランプ・アンクランプするクランパー114および自身をヘッドストック111に前進・後退させるシリンダー115を有するテールストック113と、ヘッドストック111に保持されたワーク12fを切削するバイトを搭載したキャリッジ116と、を備えている。旋盤110は、テールストック部113に次ワークをセットしテールストック113を前進させてワーク12fをヘッドストック111にセットする機構を有する。
【0011】
ロボット120は、6自由度をもつ関節型汎用ロボット120で、1台の旋盤110に対して1台設けられる。ロボット120は、切削前のワーク12fを旋盤110のテールストック113に搬送し、切削後のワーク12fを旋盤のヘッドストック111から搬出する。121はロボット120のチャックである。
ロボット120は、共用リム搬送ライン21の一部を構成するワーク搬入路130のワーク(フルフェイスホイール用片側フランジレスリム12f)を取り出して旋盤110のテールストック113に搬送してテールストック113にセットし、切削済のワーク12fをヘッドストック111から共用リム搬送ライン21の一部を構成するワーク搬出路131に搬出する装置である。
【0012】
フルフェイスホイール用片側フランジレスリムのディスク接合面切削は、上記装置を用いて、つぎの手順で行われる。
ただし、つぎの手順において、n−1番目のワークの切削の次にn番目のワークが切削されるものとする。
【0013】
(i) 旋盤がn−1番目のワーク12fを切削している間に、ロボット120がつぎのn番目のワーク12fをワーク搬入路130に取りに行く。
(ii) 旋盤がn−1番目のワーク12fを切削している間に、ロボット120がn番目のワーク12fをワーク搬入路130からテールストック113に搬送する。
(iii) 旋盤がn−1番目のワーク12fを切削している間に、テールストック113のクランパー114がn番目のワーク12fをクランプし、ロボット120はn番目のワーク12fをアンクランプする。
(iv) ロボット120がn−1番目の切削済のワーク12fをヘッドストック111からワーク搬出路131に搬送している間に、テールストック113がヘッドストック111に向かって前進して、n番目のワーク12fを、ヘッドストック111に移送し、ヘッドストック111のチャック112はn番目のワーク12fを掴む。n番目のワーク12fをアンクランプしたテールストック113は後退して元位置に戻る。
(v) 旋盤でn番目のワーク12fを切削する。(n番目のワーク12fを切削中にn+1番目の上記(i) 、(ii)、(iii) を行っている。)
(vi) 旋盤がn番目のワーク12fを切削完了後、ロボット120はヘッドストック111にある切削済のn番目のワーク12fを取りに行く。
(vii) ロボット120は、ヘッドストック111のチャック112が外したn番目のワーク12fを受け取り、切削済のn番目のワーク12fをヘッドストック111からワーク搬出路131上に搬送し取り出す。(ロボット120がn番目のワーク12fをヘッドストック111からワーク搬出路131上に搬送している間に、テールストック113がヘッドストック111に向かって前進して、n+1番目のワーク12fを、ヘッドストック111に移送してヘッドストック111にセットし、元に戻る。)
【0014】
これによって、(イ)n−1番目の切削済ワーク12fのヘッドストック111からワーク搬出路131への搬出と、n番目のワーク12fのテールストック113によるヘッドストック111への搬送、セットとを、並列に、時間的に重複させて、行うことができる。
また、(ロ)n−1番目のワーク12fの切削(v)と、n番目のワーク12fのワーク搬入路130からテールストック113への搬送とセットとを、並列に、時間的に重複させて、行うことができる。
【0015】
〔フルフェイスホイール用のリムのディスクへの仮付け溶接機〕
ワークを仮付け溶接機24に搬入、搬出する第1、第2のロボット25、26には、市販の6自由度の関節型汎用ロボットを使用できる。
フルフェイスホイール用のリムのディスクへの仮付け溶接機24は、図7、図8に示すように、ディスク13fとリム12fとをセンタリングし固定するセンタリング治具220と、ディスク13fとリム12fとを点溶接にて複数箇所、仮付け溶接する仮付け溶接トーチ230と、を備えている。
【0016】
仮付け溶接機24は、テーブル221と、テーブル221の上方でテーブル221に対して上下動する上型222とを有する。上型222はサーボモータ226により上下動する。センタリング治具220は、ディスク芯出し部223およびリム芯出し部224を有し、センタリング治具のディスク芯出し部223およびリム芯出し部224は上型222側に設けられており、上型222とともに上下動する。ディスク芯出し部223とリム芯出し部224とは互いに同芯である。リム芯出し部224に対してスプリング225が設けられており、ディスク芯出し部223が先にディスク13fを芯出しし、さらにリム芯出し部224を下降させて(ディスク芯出し部223はそのまま、スプリング225があるので、ディスク芯出し部223とリム芯出し部224は相対動できる)、スプリング225の付勢力でリム芯出し部224を下方に押し、リム芯出し部224がリム12fを芯出しする。
【0017】
ディスク芯出し部223は、下方に向かって径が縮小するテーパコーンから構成され、下降されディスク13fのハブ穴に進入してディスク13fをハブ穴基準で芯出しする。
リム芯出し部224は、下方に向かって径が縮小するテーパ面をもつ円盤状部材からなり、下降されリム12fのフランジ有り側のビードシート部に進入してリム12fをリムの内径基準で芯出しする。
【0018】
仮付け溶接トーチ230は、点溶接の溶接トーチ本体231と、溶接トーチ本体231をリム・ディスクの半径方向外側からリム・ディスクに進退動させるアクチュエータ232と、溶接トーチ本体231のリム・ディスクに対する位置を検出するスタイラスピン233と、を有する。
仮付け溶接トーチ230は、リム・ディスクの外側に、ホイール周方向に複数箇所(図示例では4ヵ所)設けられ、各仮付け溶接トーチ230の溶接トーチ本体231がアクチュエータ232によって、リム・ディスクの半径方向に、リム・ディスクに対して進退動する。
点溶接のため、トーチ本体231の狙い位置がずれると、リム・ディスク当接部を溶接することができないので、トーチ本体位置を出すために、スタイラスピン233が設けられる。
【0019】
仮付け溶接機24による仮付け溶接は、つぎの手順で行われる。
仮付け溶接は、製造ラインにおいて、ワーク流れ方向に、本溶接の上流側で実行される。
ディスク周方向位置決め部で予め周方向位置決めされたディスク13fを、第1のロボット25で掴んで、フルフェイスホイール用リム・ディスク仮付け溶接機24のテーブル221上に置く。ディスク13fは背面側を上にしてテーブル221上に置かれる。ロボット搬送のため、ディスク13fはテーブル221上でも周方向位置を維持している。また、第1のロボット25がディスク13fをテーブル221上に搬送する時、先に仮付け溶接されてテーブル221上に位置している先のリム・ディスクをリム・ディスク搬送ライン29上に押し出す。
【0020】
つぎに、リム周方向位置決め部で予め周方向位置決めされたリム12fを、第2のロボット26で掴んで、仮付け溶接機24のテーブル221上にセットされているディスク13f上に置く。リム12fはフランジレス側端をディスク13fに向けてディスク13fに置かれる。ロボット搬送のため、リム12fはディスク13f上でも周方向位置を維持している。したがって、リム12fとディスク13fは周方向には互いに位置が合った状態にあり、後はリム12fとディスク13fを互いに芯出しするだけの状態となる。
【0021】
ついで、リム12fのバルブ穴の位置ズレ無し(ディスクの飾り穴と合っていること)を、たとえばピン挿入方式などにより、確認する。
ついで、ディスク13fとリム12fをセンタリング治具220でセンタリングし、リム・ディスクをテーブル221に押し付けてリム・ディスクを固定する。
この状態で、溶接トーチ230を溶接すべき部位に前進させ、4点でTig溶接の点溶接にて、リム12fとディスク13fを仮付け溶接する。リム12fとディスク13fは、周方向に位置決めされ互いにセンタリングされた状態で、仮付け溶接される。
【0022】
つぎの、ディスク13fの仮付け溶接機24への搬入時にロボット25で押し出された、仮付け溶接されているリム・ディスクは本溶接機27への搬送ライン29上に押し出され、本溶接機27に搬送され、複数の、図示例では6台の、本溶接機27に配分されて本溶接される。
【0023】
リム・ディスク仮付け溶接機24は、リムとディスクとを本溶接する本溶接機27よりワーク流れ方向上流側に配置され、ディスク13fの搬入、リム12fの搬入、仮付けされたリム・ディスクの搬出がロボット25、26で行われるので、ワークのセンタリング、仮溶接、本溶接機27への搬送を、従来の手作業から、ロボット25、26による搬送、リム・ディスク仮付け溶接機24によるセンタリングに機械化、自動化でき、生産性が向上する。
また、ディスク13fの仮付け溶接機24への搬入、リム12fの仮付け溶接機24への搬入、仮付けされたリム・ディスクの仮付け溶接機24からの搬出がロボット25、26で行われるので、作業員への付加が軽減する。
また、ロボット25、26によるワークの搬入、搬出のため、搬送の位置精度が高く、かつ、力も人力に比べて大であるので、リム、ディスクと治具のピンとのクリアランスを大きくして精度が出なかった従来に比べて、リム12fとディスク13fのセンタリングを高精度に行うことができる。
【0024】
〔本溶接機〕
溶接ステーション28に設けられた本溶接機27は、溶接トーチ30と汎用ロボット31を有する。ロボット31は、ワーク11(ディスク13とリム12とが嵌入または仮付け溶接で固定されているホイール11、フルフェイスホイール11fでもコンベンショナルホイール11cでもよい)をワーク搬送ライン29から溶接ステーション28に搬入し、溶接ステーション28でワーク11をトーチ30に対して回転させ、溶接が終了したワーク11を溶接ステーション28から搬出ライン36に搬出する。
【0025】
溶接においては、溶接トーチ30は静止で、ロボット31がワーク11を保持してワーク11を溶接トーチ30に対して回転させる。ロボット31には、市販の6自由度の関節型ロボットを使用できる。ロボット31のハンドにワーク把持治具32を取り付けてワーク11を位置決めし把持するようにする。ワーク把持治具32は、たとえば、シリンダー35で往復動されるテーパコーン34によりコレットチャック33を開閉する構造を有し、テーパコーン34をロボットハンド側に引き寄せてコレットチャック33を開拡し、ワーク11をハンド側に引きつけるとともに、ディスクのハブ穴でワーク11をハンドに対して固定する。ただし、ワーク把持治具32は、コレットチャック以外の構造でワークを把持するものであってもよい。
【0026】
従来は、図9〜図11に示すように、ワークをポジショナーに固定し、トーチの方を溶接部に沿って移動させて溶接していた。これに対し、本発明では、図3〜図5に示すように、ワーク11を6自由度のロボット31で支持するようにしたので、ワーク11に任意の姿勢をとらせることができ、トーチ30を固定させたまま、ワーク11の方を傾けた姿勢でワーク軸芯まわりに1周回転させて溶接を行う。コンベンショナルホイール11cではリム12cとディスク13cはピッチ溶接され、フルフェイスホイール11fではリム12fとディスク13fは連続全周溶接される。図3はコンベンショナルホイール11cでリム12cとディスク13cをリムのビードシート部の内周部位で溶接する場合を示し、図4はコンベンショナルホイール11cでリム12cとディスク13cをリムのドロップ部の内周部位で溶接する場合を示し、図5はフルフェイスホイール11fでリム12fとディスク13fをリム外周側から溶接する場合を示している。
【0027】
ワーク搬送ライン29に沿って溶接ステーション28が複数設けられている。図示例は、ワーク搬送ライン29が2列で、連絡ライン29aを設けて自在にワークの配分ができるようになっており、溶接ステーション28は3個ずつ2列、さらに3個の追加設置が可能となっている場合を示している。仮付け溶接機、嵌入機より溶接ステーション28の数を多くしてあるのは、本溶接に要する時間が仮付け溶接や嵌入に要する時間より長いため、ライン上のワークの流れに溜まりが生じないようにするためである。
【0028】
本溶接の作用を説明する。仮付け溶接された、あるいは嵌入されたワーク11はワーク搬送ライン29上を流れて、複数の溶接ステーション28に配分されて送られる。ロボット31は、溶接ステーション28の搬送ライン29端に来て停止したワーク11を把持して、下方に延びるトーチ30の直下に移動させ、トーチ30の溶接を開始して、ロボット31がワーク11を傾けた状態でワーク軸芯まわりに回転させ、溶接が行われる。
ロボット31は、溶接が終了したワーク11をトーチ30の直下から搬出ライン36に搬出する。
【0029】
〔全体の作用・効果〕
本発明のフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ラインによれば、共用リム搬送ライン21に対してフルフェイスホイール用リム12fの溶接開先切削装置101を設け、ラインに嵌入機23と仮付け溶接機24とを配置し、コンベンショナルホイール11cとフルフェイスホイール11fのリム・ディスク溶接に共用可能な本溶接機27を設けたので、ライン21,22,29を含む1つのホイール製造ラインをコンベンショナルホイール11cとフルフェイスホイール11fの製造に共用できる。その結果、設備費、ライン設置スペースを、フルフェイスホイールとコンベンショナルホイールの各々に対して別々に製造ラインを設けていた従来に比べて、ほぼ半減することができる。
また、本溶接機27は、溶接トーチ30と汎用ロボット31を有し、溶接トーチ30が静止で、ロボット31がワーク11を保持してワーク11をワーク軸芯まわりに溶接トーチ30に対して回転させるので、フルフェイスホイール11fとコンベンショナルホイール11cの何れの、リムとディスクとの溶接にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ラインの平面図である。
【図2】図1のうち本溶接機のロボットのハンド近傍の断面図である。
【図3】図1のうち本溶接機の溶接トーチとロボットのハンド近傍の、ワークが(リムビードシート部内周でリムとディスクが溶接された)コンベンショナルホイールの場合の、側面図である。
【図4】図1のうち本溶接機の溶接トーチとロボットのハンド近傍の、ワークが(リムドロップ部内周でリムとディスクが溶接された)コンベンショナルホイールの場合の、側面図である。
【図5】図1のうち本溶接機の溶接トーチとロボットのハンド近傍の、ワークがフルフェイスホイールの場合の、側面図である。
【図6】図1のうちフルフェイスホイール用リムの溶接用開先切削装置の概略平面図である。
【図7】図1のうちフルフェイスホイール用のリムのディスクへの仮付け溶接機の概略正面図である。
【図8】図3の仮付け溶接機の溶接トーチ近傍の側面図である。
【図9】従来の溶接機の、ワークが(リムビードシート部内周でリムとディスクが溶接された)コンベンショナルホイールの場合の、側面図である。
【図10】従来の溶接機の、ワークが(リムドロップ部内周でリムとディスクが溶接された)コンベンショナルホイールの場合の、側面図である。
【図11】従来の溶接機の、ワークがフルフェイスホイールの場合の、側面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 フルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ライン
11 ホイール(ワーク)
11c コンベンショナルホイール
11f フルフェイスホイール
12 リム
12c コンベンショナルホイール用リム
12f フルフェイスホイール用のリム
13 ディスク
13c コンベンショナルホイール用ディスク
13f フルフェイスホイール用ディスク
21 共用リム搬送ライン
22 共用ディスク搬送ライン
23 嵌入機
24 仮付け溶接機
25、26 ロボット
27 本溶接機
28 溶接ステーション
29 ワーク搬送ライン
29a 連絡ライン
30 溶接トーチ
31 ロボット
32 ワーク把持治具
33 コレットチャック
34 テーパコーン
35 シリンダー
36 搬出ライン
101 溶接用開先切削装置
110 旋盤
112 チャック
113 テールストック部
114 クランパー
115 シリンダー
116 キャリッジ
120 ロボット
121 チャック
130 ワーク搬入路
131 ワーク搬出路
221 テーブル
222 上型
223 ディスク芯出し部
224 リム芯出し部
230 仮付け溶接トーチ
231 溶接トーチ本体
232 アクチュエータ
233 スタイラスピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベンショナルホイール用リムおよびフルフェイスホイール用リムの搬送に共用される共用リム搬送ラインと、
コンベンショナルホイール用ディスクおよびフルフェイスホイール用ディスクの搬送に共用される共用ディスク搬送ラインと、
共用リム搬送ラインに対して設けられたフルフェイスホイール用リムの溶接開先切削装置と、
共用リム搬送ラインの終端と共用ディスク搬送ラインの終端の近傍に配置された、コンベンショナルホイール用のディスクのリムへの嵌入機、およびフルフェイスホイール用のリムのディスクへの仮付け溶接機と、
共用リム搬送ラインからリムを嵌入機か仮付け溶接機の何れかに搬送するとともに共用ディスク搬送ラインからディスクを嵌入機か仮付け溶接機の何れかに搬送する1以上のロボットと、
コンベンショナルホイールとフルフェイスホイールのリム・ディスク溶接に共用される本溶接機が1以上配置された溶接ステーションと、
嵌入機と仮付け溶接機から溶接ステーションまで延び少なくとも一部がコンベンショナルホイール用リム・ディスクアッセンブリとフルフェイスホイール用リム・ディスクアッセンブリの搬送に共用される溶接ステーションへのワーク搬送ラインと、
を備えたフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ライン。
【請求項2】
本溶接機は、溶接トーチと汎用ロボットを有し、溶接トーチが静止で、ロボットがワークを保持してワークを溶接トーチに対して回転させる請求項1記載のフルフェイスホイール・コンベンショナルホイール共用ホイール製造ライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−224109(P2006−224109A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37396(P2005−37396)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】