フレキシブルで成形可能な伝導性フィルム
【課題】電気伝導性フィルムを提供する。
【解決手段】フレキシブルな支持体、伸張性のある金属または金属合金層、および架橋ポリマー保護層を含む電気伝導性フィルムが、少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域を有する。フィルムは、光透過性とすることができ、また複合曲率の領域を有することができ、および金属または金属合金層は実質的に連続とすることができる。フィルムによって、破損または腐食に対する感受性が、市販の電磁干渉(EMI)シールド・フィルムと比較して減る。
【解決手段】フレキシブルな支持体、伸張性のある金属または金属合金層、および架橋ポリマー保護層を含む電気伝導性フィルムが、少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域を有する。フィルムは、光透過性とすることができ、また複合曲率の領域を有することができ、および金属または金属合金層は実質的に連続とすることができる。フィルムによって、破損または腐食に対する感受性が、市販の電磁干渉(EMI)シールド・フィルムと比較して減る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連技術の相互参照〕
本出願は、一部継続出願として、米国特許出願第10/222,465号明細書「耐久性のある透明なEMIシールド・フィルム」、(2002年8月17日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、曲げおよび変形が可能で、たとえば電磁干渉(EMI)シールド用途での使用に適した電気伝導性フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
EMIシールド・フィルムを用いることによって、不要な電磁エネルギーが、電子機器の外へまたはその中へ透過することが防止される。この目的のために、種々の伝導性材料を用いることができる。シールドを透かして見る(たとえば、ディスプレイを見る)必要がある用途の場合には、微細なワイヤ・メッシュおよび特殊な透明フィルムを含むウィンドウが用いられている。透明なEMIシールドは、米国特許第4,910,090号明細書および同第5,489,489号明細書、ならびにEP810452においても記載されている。市販の透明なEMIシールド・フィルムでは通常、ポリマー基板たとえばPETに、伝導性酸化物フィルム(たとえば、インジウム・スズ酸化物)をコーティングしたもの、または金属(たとえば、銀)および伝導性酸化物を交互にコーティングした層を有するものが用いられる。代表的な市販の透明EMIシールド・フィルムとしては、AgHT(商標)−4およびAgHT(商標)−8フィルム(CPフィルム社(CPFilms、Inc.))、アルテア(ALTAIR)(商標)M、およびXIR(商標)透明伝導性フィルム(サウスウォール・テクノロジ(Southwall Technologies))、およびウィン・シールド(WIN−SHIELD)(商標)AgF8フィルム(パーカ・ハニフィン社コメリックス・ディビジョン(Chomerics Division of Parker Hannifin Corporation))が、挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在市販されているEMIシールド・フィルムには、適切な耐久性、耐汚染性、または耐腐食性がない。たとえば、CPフィルム社(CP Films、 Inc.)から販売されるフィルム・ベースのシールドに対する取り扱いガイドラインでは、シールド・フィルムを取り扱う際には、作業者は無塵ラテックスの手袋およびフェース・マスクを着用することを、推奨している。また伝導性フィルム・コーティングは、無機イオンたとえばナトリウム、カリウム、および塩化物による攻撃の影響を受けやすいという注意も出されているが、これらはすべて、人間の指および唾液中に存在するものである。さらに、フィルムが汚染された際には、その表面を、イソプロピルアルコールで湿らせた無繊維くずのクリーン・ルーム用ワイプできれいにすることが推奨されている。これらの取り扱いガイドラインではまた、コーティングを拭く際に、コーティングが非常に薄くて多少脆いので、過剰にこすらないように注意している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって、一態様においては、フレキシブルな支持体、伸張性のある金属または金属合金層、および架橋ポリマー保護層を含む伝導性フィルムであって、少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域を有する伝導性フィルムが提供される。
【0006】
第2の態様においては、本発明によって、ポリマーのスペーシング層によって分離された第1および第2の金属または金属合金層を有する熱可塑性のポリマー支持体を含む自立性の曲面状物品であって、スペーシング層の厚みが、高レベルの歪みを受けている物品領域において概ね低く、ほとんどまたは全く歪みを受けていない物品領域において概ね高い物品が提供される。開示された伝導性フィルムおよび成形された物品は、成形プロセスの間に受ける広範囲の応力および歪みに渡って、適切な伝導性を維持する。
【0007】
成形(モールディング)、エンボス加工、熱成形、曲げ等によって形成される開示された物品は、単純な曲面状および/または複合曲面状に、すなわち単一の点からの2つの異なる非直線方向に曲面状にすることができ、さらに、ある実施形態においては、電気伝導性フィルムが光透過性である。
【0008】
第3の態様においては、本発明によって、
(a)金属または金属合金層と架橋ポリマー保護層とを有する熱可塑性の支持体を含むプリフォームを用意するステップと、
(b)プリフォームをモールディング、エンボス加工、熱成形、または他の方法で変形させて、少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域を有する自立性の物品を用意するステップと、を含む物品の成形方法が提供される。
【0009】
開示されるフィルムおよび物品によって、成形されたとき、または曲げ、収縮、引き伸ばし、変形操作、または腐食性条件を受けたときの層間剥離、破損、または腐食に対する抵抗を増加させることができ、かつ依然として適切な電気伝導性を、したがって良好なEMIシールド性能を維持することができる。好ましくは、金属または金属合金層が、フィルムの実質的な領域に渡って、すなわちEMIシールド、加熱、または同様の機能性が望まれるフィルム部分に渡って、実質的に連続である。ある実施形態においては、金属または金属合金層が、フィルム全体に渡って完全に連続とすることができる。他の実施形態においては、金属または金属合金層をパターニングして、所望の機能性(たとえば、1つまたは複数の周波数選択性表面または別個の電気伝導性経路を設ける)に対する限定された数のアパーチャ、孔、またはチャネルを規定することができる。
【0010】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の詳細な説明から明らかである。しかしいかなる場合であっても、前述した概要は、特許請求された主題に対する限定と解釈してはならない。主題は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定され、出願手続き中に補正される場合がある。
【0011】
図面の種々の図における同様の参照符号は同様の要素を示す。図面中の要素は、一定の縮尺ではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】開示された電磁シールドされた物品を示す概略的な斜視図である。
【図2】開示されたフィルムを示す概略的な断面図である。
【図3】開示されたフィルムを示す概略的な断面図である。
【図4】開示されたフィルムを示す概略的な断面図である。
【図5】開示されたフィルムを示す概略的な断面図である。
【図6A】開示されたフィルムの製造装置を示す概略的な図である。
【図6B】開示された複合曲面状の物品を示す拡大部分断面図である。
【図6C】開示された複合曲面状の物品の一部を示す斜視図である。
【図6D】開示された複合曲面状の物品を示す拡大部分断面図である。
【図6E】開示された複合曲面状の物品を示す拡大部分断面図である。
【図6F】曲面状の物品を用意するために使用可能な波形成形装置を示す部分的な概略ダイアグラムである。
【図6G】波形成形された曲面状の物品を示す斜視図である。
【図6H】波形成形された曲面状の物品を示す斜視図である。
【図7】実施例1のフィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図8】実施例2フィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図9】実施例4のフィルムに対する伝導性対歪みを示すグラフである。
【図10】実施例5のフィルムに対する伝導性対歪みを示すグラフである。
【図11】実施例11のフィルムに対する伝導性対歪みを示すグラフである。
【図12】実施例12のフィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図13】実施例20のフィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図14】実施例21のフィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図15】実施例22のフィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図16】実施例24で形成された複合曲面状の形状を示す概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
方位についての言葉たとえば「頂上の(atop)」、「上の(on)」、「最上の(uppermost)」などを、開示されたフィルムまたは物品内での種々の層の位置を表わすために用いることによって、水平の支持体層に対する1つまたは複数の層の相対的な位置を指す。フィルムまたは物品が、その製造中または製造後に空間において任意の特定の方位を持つべきであることを、意図しているわけではない。
【0014】
「光透過性の」支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルム、または物品の平均透過Tが、対象とするスペクトル範囲において、少なくとも約20%(垂直軸に沿って測定)であるということである。「可視光透過性の」支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルム、または物品の透過Tvisが、スペクトルの可視部分において、少なくとも約20%(垂直軸に沿って測定)であるということである。「赤外線反射性の」支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルム、または物品の反射が、約700nm〜約2000nmの波長領域において、少なくとも100nm幅の帯域における光の少なくとも約50%(ほぼ垂直角度において(たとえば、約6度の入射において)測定)であるということである。「光」の意味は、太陽放射である。
【0015】
「フレキシブルな」支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルム、または物品を、その本来の位置から30度だけ曲げることができ(折り畳むことも折り目をつけることも必要とせずに)、また開放してその本来の形状の少なくとも一部に戻すことが、電気的な連続性を失うことなく、および約0.25メートルの距離にある裸眼によって検出されるような目に見える不連続性を形成することなく、できるということである。
【0016】
「金属層」の意味は、金属または金属合金層である。
【0017】
「伸張性のある」金属層の意味は、光透過性のフィルムまたは物品内に取り入れられたときに、面内方向において少なくとも3%だけ伸ばすことが、電気的な連続性を失うことなく、および約0.25メートルの距離にある裸眼によって検出されるような金属層表面での目に見える不連続性を形成することなく、可能である層である。
【0018】
「架橋」ポリマーの意味は、共有化学結合によってポリマー鎖が、通常は架橋分子または基を介して、互いに結合して、ネットワーク・ポリマーを形成するポリマーである。架橋ポリマーは、一般的な特徴として不溶性であるが、適切な溶媒が存在する場合には膨潤性を有する。用語「ポリマー」に含まれるのは、ホモポリマーおよびコポリマーだけでなく、混和性のブレンド中に形成され得るホモポリマーまたはコポリマーである。これはたとえば、同時押し出し成形によって、または反応(たとえば、エステル交換など)によって、なされる。用語「コポリマー」には、ランダムおよびブロック・コポリマーの両方が含まれる。
【0019】
「非平面の」支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルム、または物品が、連続的な、断続的な、非方向性の、または複合曲率を有するということである。支持体、層、フィルムまたは物品が「複合曲面状である」かまたは「複合曲率」を有するという意味は、支持体、層、フィルムまたは物品の表面が、単一の点から2つの異なる非直線方向に曲面を形成しているということである。
【0020】
「自立性の」複合曲面状の支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルムまたは物品が十分な剛性を有し、水平表面上に置かれたときに、および一方の端部を手で保持されて垂直方向に吊るされたときに、その形状を実質的に維持するということである。
【0021】
支持体、層、フィルム、または物品の「恒久的に変形された複合曲面状の領域」の意味は、支持体、層、フィルムまたは物品の表面に、複合曲率を有する非平面領域が含まれ、その形状が、支持体、層、フィルムまたは物品が、外見上の緩みを取り除くように2つの対向する端部において手によってぴんと張られても、実質的に存続するということである。
【0022】
「光学的に透明」の意味は、フィルムまたは物品内に、約1メートル好ましくは約0.5メートルの距離にある裸眼によって検出されるような見た目に分かるヘイズまたは傷がないことである。
【0023】
図1を参照して、医療用デバイス10は、金属ハウジング12によってEMIから部分的にシールドされている。ハウジング12上の情報ディスプレイ14が、透明なEMIシールド・フィルム16によって覆われている。金属製ベゼル18が、フィルム16を囲んでいて、フィルム16の周囲全体をハウジング12に電気的に接続する接地電極として機能している。フィルム16によって、EMIシールドが、ハウジング12によってまだシールドされていないデバイス10の残りの部分に対して得られる。
【0024】
図2を参照して、EMIシールドとして使用可能なフィルムを広く110で示す。フィルム110には、フレキシブルな支持体112が含まれ、これは可視光透明なプラスチック・フィルムたとえばポリエチレンフタレート(「PET」)で形成されている。伸張性のある可視光透明な金属層116(銀製)が、支持体112の頂部に設けられている。保護層122(架橋アクリレートポリマー製)が金属層116の頂部に設けられている。金属層116が、電極124を介して接地されている。
【0025】
図3において、EMIシールドとして使用可能な他のフィルムを広く130で示す。フィルム130はとフィルム110と似ているが、ベースコート層132を含んでいる。これは、支持体112と金属層116との間の架橋アクリレートポリマーから形成されている。
【0026】
図4において、EMIシールドとして使用可能なフィルムを広く140で示す。フィルム140はフィルム110と似ているが、支持体112の頂部にファブリー・ペロ干渉積層物114を含んでいる。積層物114には、第1の可視光透明な金属層116、架橋アクリレートポリマーで形成される可視光透明なスペーシング層118、および銀で形成される第2の可視光透明な金属層120が含まれている。金属層116および120と介在する架橋ポリマー層118との厚みは、金属層116および120が部分的に反射性で部分的に透過性となるように注意深く選択されている。スペーシング層118の光学的厚み(層の物理的な厚み×その面内の誘電率として定義される)は、透過光に対する所望のパス・バンドの中心を実現するようなものである。光は、波長がパス・バンド内にある場合には主に、薄い金属層116および120を通って透過する。光は、波長がパス・バンドを超えている場合には主に、薄い金属層116および120によって反射されるか、または相殺的な干渉によって打ち消し合う。またスペーシング層118は、第1の金属層116に対する保護層としても機能する。
【0027】
図5において、他の開示されたフィルムを広く150で示す。フィルム150はフィルム140に似ているが、ベースコート層132を支持体112と金属層116との間に含み、また第2の接地電極124を含んでいる。
【0028】
種々の可視光透明な支持体を用いることができる。好ましい支持体は、可視光透過が、550nmにおいて少なくとも約70%である。特に好ましい支持体は、フレキシブルなプラスチック材料に以下のものを含めたものである。熱可塑性フィルムたとえばポリエステル(たとえば、PET)、ポリアクリレート(たとえば、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高いまたは低い密度ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンジフルオリドおよびポリエチレンスルフィド;および熱硬化性フィルムたとえばセルロース誘導体、ポリイミド、ポリイミドベンゾオキサゾールおよびポリベンゾオキサゾール。また支持体は、以下のようなものとすることもできる。多層光学フィルム(「MOF」)、たとえば米国特許出願第2002/0154406A1号明細書に記載されているもの、またはMOFに少なくとも1つの架橋ポリマー層および金属層をコーティングしたもの、たとえば同時係属中の米国特許出願第10/222,473号明細書(2002年8月17日出願)および発明の名称「高度な熱ミラー・フィルム(ENHANCED HEAT MIRROR FILMS)」に記載されているものである。なお、これらの文献は本明細書において参照により援用されている。PETおよびMOFで形成された支持体が特に好ましい。好ましくは支持体の厚みは、約0.01〜約1mmである。しかし支持体は、かなり厚くても良い。これはたとえば、自立性の物品が必要な場合である。またこのような物品は、1つまたは複数の金属層および1つまたは複数の架橋−ポリマー層をフレキシブル支持体の頂部に形成して、およびフレキシブルな支持体を積層するか、そうでなければ、より厚くて、フレキシブルでないかまたはそれほどフレキシブルではない補助的な支持体(後に詳述する)に結合することによって作製することもでき、便利である。
【0029】
金属層116は、種々の材料から作製することができる。好ましい金属としては、銀、金、銅、ニッケル、およびクロム元素が挙げられ、銀が特に好ましい。ステンレス鋼などの合金、またはこれらの金属を互いにもしくは他の金属と混合させて含む分散物を用いることもできる。さらなる金属層を用いる場合、それらは互いに同じであっても良いし互いに異なっていても良い、また厚みが同じである必要はない。好ましくは、1つまたは複数の金属層は、面内方向に3%超だけ引き伸ばされても連続状態を保つほどに十分に厚く、またフィルムおよびフィルムを用いている物品が確実に、望ましい度合のEMIシールドおよび光透過を有するほどに十分に薄い。好ましくは、1つまたは複数の金属層の物理的な厚み(光学的な厚みではなく)は約3〜約50nm、より好ましくは約4〜約15nmである。通常は、1つまたは複数の金属層の形成は、前述の支持体上への堆積を、フィルム・メタライジング技術で用いられる技術たとえばスパッタリング(たとえば、カソードまたはプレーナ・マグネトロン・スパッタリング)、蒸着(たとえば、抵抗または電子ビーム蒸着)、化学気相成長法、プレーティングなどを用いて行なうことによって、なされる。
【0030】
第1の金属層の平滑性および連続性、ならびに支持体へのその接着力は、支持体の適切な前処理によって向上させることが好ましい。好ましい前処理方式としては、以下のものが挙げられる。反応性または非反応性の雰囲気が存在する中で支持体の電気放電前処理(たとえば、プラズマ、グロー放電、コロナ放電、誘電体バリア放電、または大気圧放電);化学的前処理;火炎前処理;または核生成層たとえば酸化物および合金を設けること(米国特許第3,601,471号明細書および同第3,682,528号明細書に記載)。これらの前処理によって、支持体の表面が、その後に設けられる金属層を受容することが、容易に確実にできる。プラズマ前処理が特に好ましい。さらに特に好ましい前処理方式としては、支持体に無機または有機のベースコート層たとえば前述の層132をコーティングすることが挙げられ、その後に任意に、プラズマまたは前述した他の前処理のうちの1つを用いた前処理をさらに行なうことができる。有機ベースコート層、特に架橋アクリレートポリマーに基づくベースコート層が、特に好ましい。最も好ましくは、ベースコート層の形成を、1つまたは複数の放射架橋可能なモノマー(たとえば、アクリレート・モノマー、任意に、適切な光開始剤と組み合わせる)のフラッシュ蒸発および蒸着と、その後に、その場架橋(たとえば、電子ビーム装置、UV光源、電気放電装置、または他の適切なデバイスを用いる)とによって行なう。これは以下の文献に記載されている。米国特許第4,696,719号明細書、同第4,722,515号明細書、同第4,842,893号明細書、同第4,954,371号明細書、同第5,018,048号明細書、同第5,032,461号明細書、同第5,097,800号明細書、同第5,125,138号明細書、同第5,440,446号明細書、同第5,547,508号明細書、同第6,045,864号明細書、同第6,231,939号明細書、および同第6,214,422号明細書;公開済みPCT出願国際公開第00/26973号パンフレット;D.G.ショー(D.G.Shaw)およびM.G.ラングロイス(M.G.Langlois)、「紙およびポリマー・ウェブをコーティングするための新しい蒸着法(A New Vapor Deposition Process for Coating Paper and Polymer Webs)」、第6回真空コーティング会議(6th International Vacuum Coating Conference)(1992);D.G.ショーおよびM.G.ラングロイス、「アクリレート薄膜を蒸着するための新しい高速法:更新(New High Speed Process for Vapor Depositing Acrylate Thin Films: An Update)」、真空コータ協会第36回年次技術会議録(Society of Vacuum Coaters 36th Annual Technical Conference Proceedings)(1993);D.G.ショーおよびM.G.ラングロイス、「蒸着アクリレート・コーティングを用いたメタライズド・フィルムのバリア特性向上(Use of Vapor Deposited Acrylate Coatings to Improve the Barrier Properties of Metallized Film)」、真空コータ協会第37回年次技術会議録(1994);D.G.ショー、M.ロエリグ(M.Roehrig)、M.G.ラングロイス、およびC.シーハン(C.Sheehan)、「蒸着アクリレート・コーティングを用いたポリエステルおよびポリプロピレン・フィルム基板表面の平滑化(Use of Evaporated Acrylate Coatings to Smooth the Surface of Polyester and Polypropylene Film Substrates)」、レッドテック(RadTech)(1996);J.アフィニト(J.Affinito)、P.マーチン(P.Martin)、M.グロス(M.Gross)、C.コロナド(C.Coronado)、およびE.グリーンウェル(E.Greenwell)、「光学用途における真空蒸着ポリマー/金属多層フィルム (Vacuum deposited polymer/metal multilayer films for optical application)」、固体薄膜(Thin Solid Films)270、43−48(1995);およびJ.D.アフィニト、M.E.グロス、C.A.コロナド、G.L.グラフ(G.L.Graff)、E.N.グリーンウェル、およびP.M.マーチン、「ポリマー−酸化物透明バリア層(Polymer−Oxide Transparent Barrier Layers)」、真空コータ協会第39回年次技術会議録(1996)。必要に応じて、ベースコートを、従来のコーティング方法たとえばロール・コーティング(たとえば、グラビア・ロール・コーティング)またはスプレイ・コーティング(たとえば、静電気スプレイ・コーティング)を用いて塗布した後に、架橋を行なうこと(たとえばUV放射によって)もできる。ベースコート層の望ましい化学的な組成および厚みは、一つには、支持体の種類に依存する。たとえばPET支持体の場合、ベースコート層は好ましくは、アクリレート・モノマーから形成され、通常は厚みが、単に数ナノメータ、最大で約2マイクロメータである。
【0031】
第1の金属層をベースコート層に接着させることは、接着促進剤または耐食添加剤をベースコート層に含めることによって、さらに改善することができる。この結果、ベースコート層と第1の金属層との間の界面の表面エネルギーまたは他の関連する特徴に、影響が出る場合がある。適切な接着促進剤または耐食添加剤としては、メルカプタン、チオール含有化合物、酸(たとえばカルボン酸または有機リン酸)、トリアゾール、染料および潤滑剤などが挙げられる。エチレングリコール・ビス−チオグリコレート(米国特許第4,645,714号明細書に記載)が、特に好ましい添加剤である。添加剤は好ましくは、第1の金属層の過度な酸化または他の劣化を引き起こすことなく、望ましい度合いの接着力増加が得られるほどに十分な量で存在する。
【0032】
架橋したポリマーの層が、第1金属層の上に設けられていて、他の金属層がない場合には、保護用耐食性トップコート122として機能し、さらなる金属層が用いられている場合には、保護層およびスペーシング層たとえば層118として機能する。積層物が2つ、3つ、または4つの金属層を含むことによって、ある用途に対しては望ましい特徴が得られる。積層物が2〜4つの金属層を含む場合、各金属層が架橋ポリマー層を有し、架橋ポリマー層は金属層の各面に隣接していることが、特に好ましい。ファブリー・ペロ光学干渉積層物を含む典型的なフィルムが、以下の文献に記載されている。同時係属中である米国特許出願第10/222,466号明細書(2002年8月17日出願)、発明の名称「ポリマー−金属の赤外線干渉フィルタ(POLYMER−METAL INFRARED INTERFERENCE FILTER)」(この文献は本明細書において参照により取り入れられている)、および前述した同時係属中の米国特許出願第10/222,473号明細書。金属層間に架橋ポリマーのスペーシング層を用いることによって、フィルムおよびその金属層がより容易に伸張性になると同時に、金属層へのダメージが減る。
【0033】
架橋ポリマー層は、種々の有機材料から形成することができる。好ましくはポリマー層は、第1の金属層の頂部に、その場で架橋する。必要に応じて、ポリマー層を、従来のコーティング方法たとえばロール・コーティング(たとえば、グラビア・ロール・コーティング)またはスプレイ・コーティング(たとえば、静電気スプレイ・コーティング)を用いて塗布した後に、架橋を行なうこと(たとえばUV放射によって)こともできる。最も好ましくは、ベースコート層132に対して前述したように、ポリマー層の形成を、モノマーのフラッシュ蒸発、蒸着および架橋によって行なう。揮発可能な(メタ)アクリレート・モノマーがこのような方法で用いるには好ましく、揮発可能なアクリレート・モノマーが特に好ましい。好ましい(メタ)アクリレートは、分子重量が約150〜約600であり、より好ましくは約200〜約400である。他の好ましい(メタ)アクリレートは、分子量とアクリレート官能基数との割合値が分子あたり、約150〜約600g/モル/(メタ)アクリレート基であり、より好ましくは約200〜約400g/モル/(メタ)アクリレート基である。フッ素化(メタ)アクリレートを、より高い分子量範囲または割合で用いることができ、たとえば、約400〜約3000分子量または約400〜約3000g/モル/(メタ)アクリレート基である。コーティング効率は、支持体を冷却することによって改善することができる。特に好ましいモノマーとしては、多官能基の(メタ)アクリレートが挙げられ、これを単独でまたは他の多官能基または単官能基の(メタ)アクリレートと組み合わせて用いる。たとえばヘキサンジオールジアクリレート、エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、シアノエチル(モノ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベータ−カルボキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジニトリルアクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ニトロフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2、2、2−トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、1、6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、ナフスロキシエチルアクリレート、IRR−214サイクリックなジアクリレート(UCBケミカルズ(UCB Chemicals)より)、エポキシアクリレートRDX80095(ラッド・キュア社(Rad−Cure Corporation)より)、およびこれらの混合物である。他の種々の硬化可能な材料を、架橋ポリマー層に含めることができる。たとえば、ビニールエーテル、ビニールナフチレン、アクリロニトリル、およびこれらの混合物である。架橋ポリマー層の物理的な厚みは、一つには、その屈折率に依存し、一つには、フィルムの所望の光学的な特徴(たとえば、フィルムにさらなる金属層が含まれているかどうか)に依存する。ファブリ・ペロ積層物を含む赤外線阻止EMIシールド・フィルムで用いる場合、架橋ポリマー層は通常、屈折率が約1.3〜約1.7であり、好ましくは光学的な厚みが約75〜約350nm、より好ましくは約100〜約275nmであり、対応する物理的な厚みは約45〜約270nm、より好ましくは約60〜約210nmである。
【0034】
架橋ポリマー層の平滑性および連続性と第1の金属層に対するその接着力とを好ましくは、架橋ポリマー層を設ける前に第1の金属層を適切に前処理することによって、または適切な添加剤を架橋ポリマー層に含めることによって、強化する。好ましい前処理としては、前述した支持体前処理が挙げられる。第1の金属層のプラズマ前処理が特に好ましい。架橋ポリマー層に対する好ましい添加剤としては、前述したベースコート層添加剤が挙げられる。
【0035】
さらに設ける任意の金属層の平滑性および連続性ならびにその下の架橋ポリマー層に対するその接着力は好ましくは、さらに設ける金属層を設ける前に架橋ポリマー層を適切に前処理することによって、または適切な添加剤を架橋ポリマー層に含めることによって向上させる。好ましい前処理としては、前述した支持体の前処理が挙げられ、架橋ポリマー層のプラズマ前処理が特に好ましい。架橋ポリマー層に対する好ましい添加剤としては、前述したベースコート層添加剤が挙げられる。
【0036】
驚くべきことに、発明者らがさらに見出したところによれば、前述した前処理の一方または両方を用いた場合、および前述したベースコート層の添加剤の1つまたは複数を、スペーシング層を形成するために用いられるモノマー混合物内に取り入れた場合には、電流の影響下での腐食に対する金属層の抵抗が著しく向上する。プラズマ処理が好ましい前処理であり、窒素プラズマが特に好ましい。エチレングリコール・ビス−チオグリコレートが、モノマー混合物内に取り入れるには好ましい添加剤である。
【0037】
種々の機能的な層またはコーティングを、EMIシールド・フィルムに加えることで、その物理的または化学的な特性を変えるかまたは向上させることが、特にフィルムの表面において可能である。このような層またはコーティングとしては、たとえば以下のものを挙げることができる。フィルム製造中のフィルムの扱いを容易にするための低摩擦コーティングまたはスリップ粒子;拡散特性をフィルムに加えるための、またはフィルムを他のフィルムまたは表面に隣接して配置したときの浸潤性またはニュートン・リングを防止するための粒子;EMIシールド・フィルムを情報ディスプレイの表面に対して設けたときのグレアを防止するための反射防止層;帯電防止コーティング;耐磨耗性またはハードコート材料;耐曇性材料;磁気または光磁気コーティングまたはフィルム;粘着剤たとえば感圧性粘着剤またはホット・メルト粘着剤;隣接層に対する接着を促進するためのプライマ;フィルムを粘着剤ロール形状で用いる場合に使用する低接着バックサイズ材料;液晶パネル;エレクトロクロミックまたはエレクトロルミネセント・パネル;写真乳剤;プリズム・フィルムおよびホログラフィ・フィルムまたは画像。さらなる機能的な層またはコーティングは、たとえば、公開済みPCT出願国際公開第97/01440号パンフレット、国際公開第99/36262号パンフレット、および国際公開第99/36248号パンフレットに記載されている。また機能的な層またはコーティングとして、耐破損性、耐侵入性、または耐穿孔裂けフィルムおよびコーティング、たとえば、公開済みPCT出願国際公開第01/96115号パンフレットに記載された機能的な層を挙げることができる。さらなる機能的な層またはコーティングとして、振動減衰フィルム層たとえば公開済みPCT出願国際公開第98/26927号パンフレットおよび米国特許第5,773,102号明細書に記載されているもの、および保護を与えるためのバリア層、または液体たとえば水もしくは有機溶媒に対するフィルムの透過性特性、または気体たとえば酸素、水蒸気もしくは二酸化炭素に対するフィルムの透過性特性を変えるためのバリア層を、挙げることができる。これらの機能的なコンポーネントを、EMIシールド・フィルムの最も外側の層の1つまたは複数の中に取り入れることができ、または別個のフィルムもしくはコーティングとして設けることができ、または補助的な支持体中に含めることができる。
【0038】
用途によっては、EMIシールド・フィルムの外観または性能を変えることが望ましい。これはたとえば、着色されたフィルム層をフィルムに積層することによって、色素性コーティングをフィルム表面に塗布することによって、または染料または顔料を、フィルムを作るために用いられる材料の1つまたは複数の中に含めることによって行われる。染料または顔料は、1つまたは複数の選択された領域のスペクトルを吸収することができ、たとえば赤外線、紫外線、または可視スペクトルの部分である。染料または顔料を用いて、フィルムの特性を補足することができる。これは特に、フィルムが一部の周波数を透過して他を反射する場合である。EMIシールド・フィルム中で用いることができる特に有用な色素性層は、公開済みPCT出願国際公開第2001/58989号パンフレットに記載されている。この層を、フィルム上の表面薄層として、積層し、押し出しコーティングし、または同時押し出し成形することができる。顔料の充填レベルを、約0.01重量%と約1.0重量%との間で変えることで、可視光の透過を要望どおりに変えることができる。またUV吸収性カバー層を追加することも、UV放射にさらされたときに不安定な場合があるフィルムの内側の任意の層を保護するために、望ましい可能性がある。またEMIシールド・フィルムを、たとえばインクまたは他の印刷された印、たとえば製品識別、方位情報、広告、警告、装飾、または他の情報を表示するために用いられるものによって、処理することもできる。種々の技術を用いて、EMIシールド・フィルム上に印刷することができる。たとえば、スクリーン・印刷、インクジェット・印刷、熱転写印刷、凸版印刷、オフセット・印刷、フレキソ印刷、点描印刷、レーザ・印刷など。また種々のタイプのインクを用いることができる。たとえば、一成分および二成分インク、酸化性の乾燥およびUV乾燥インク、溶解インク、分散インク、および100%インク・システム。
【0039】
EMIシールド・フィルムを配向して任意にヒート・セットすることを、フィルムが非平面の基板に実質的な皺寄せなく順応することを助けるのに十分な条件の下で、行なうことができる。これは、EMIシールド・フィルムが積層される非平面基板の形状または曲率が既知である場合、特に積層物の厳密な複合曲率が既知である場合に、特に有用である。各面内方向におけるEMIシールド・フィルムまたは基板の収縮を別個にコントロールすることによって、EMIシールド・フィルムが、積層、特にニップ・ロール積層の間に、制御された方法で縮むようにすることができる目標とする収縮特性を有する。MOF支持体の製造技術に関するさらなる詳細は、公開済みPCT出願国際公開第01/96104号パンフレットに記載されている。
【0040】
図6Aに、開示されたフィルムの製造に好都合に使用できる装置180を示す。電源供給されるリール181aおよび181bによって、支持ウェブ182が装置180の中を前後に移動する。温度制御された回転ドラム183aおよび183b、およびアイドラ184a、184b、184c、184d、および184eによって、ウェブ182が運ばれて、金属スパッタリング・アプリケータ185、プラズマ前処理器186、モノマー蒸発器187、およびEビーム架橋装置188を通り過ぎる。液体モノマー189が、リザーバ190から蒸発器187に供給される。装置180の中を通る複数のパスを用いて、連続的な層を、ウェブ182に設けることができる。装置180を、適切なチャンバ(図6Aでは図示せず)内で密閉して、真空状態に保つかまたは適切な不活性雰囲気を与えることで、酸素、水蒸気、ホコリおよび他の大気中の汚染物質が、種々の前処理、モノマー・コーティング、架橋およびスパッタリング・ステップに干渉することを、防ぐことができる。
【0041】
EMIシールド・フィルムの1つまたは複数の金属層を好ましくは、図2の少なくとも1つの接地電極たとえば電極124に接続する。接地電極を金属層に接続することは、EMIシールド・フィルムを、他の材料またはEMIシールドが必要なデバイスに結合する前に行なうこともできるし、または後に行なうこともできる。接地電極の形成は、マスキング、プレーティング、および当業者に良く知られた他のプリント回路技術を用いて行なうこともできるし、または金属ストリップ、ワイヤ、伝導性塗料、および同様に当業者に良く知られた他の接続部を用いて行なうこともできる。3M(商標)の伝導性テープ9703および9713(3M、セントボール、ミネソタ州(St.PaulMN))が、特に好ましい接地電極である。これらのテープには、最も外側の架橋ポリマー層に浸透する繊維または粒子が含まれ、その下の金属層に対する電気的な接続部を与える。2つ以上の金属層を直列または並列に接続する場合には、このようなテープとともに適切なバスバーを用いることができる。
【0042】
他の実施形態では、金属層を接地する必要がない。それほど好ましくはないのだが、このような実施形態では、反射によってEMIシールドが得られ、比較的低いレベルのEMIシールドが許容され得る用途に用いることができる。このような未接地のEMIシールド・フィルムに対する用途としては、試験設備、セキュリティ/安全部屋、およびアンテナ・コンポーネントが挙げられる。
【0043】
EMIシールドされた物品においては、好ましくは大部分、最も好ましくは全部のEMIシールド・フィルムの周囲が、接地電極に接続されている。接地電極は普通は、EMIシールドが必要なデバイスに、またはデバイスを囲むハウジング(たとえば、非透明なハウジング)に、接続または結合されている。
【0044】
EMIシールド・フィルムに複数の金属層が含まれている場合には、1つまたは複数の層をEMIシールドに対して使用して、1つまたは複数の残りの層をEMIシールド以外の目的に対して用いることができる。これはたとえば、ヒーティング、侵入検出、タッチ検出、赤外線阻止、および装飾的または他の光学的な目的である。複数の金属層を含むヒーティング・フィルムは、同時係属中の米国特許出願第10/222,449号明細書(2002年8月17日出願)、発明の名称「フレキシブル電導性フィルム(FLEXIBLE ELECTRICALLY CONDUCTIVE FILM)」に記載されている。なお、この文献は本明細書において参照により援用されている。またEMIシールド・フィルムは、EMIシールドが要求されない目的に対して用いることもできる。これはたとえば、意図的なEMIシールドの役割がないヒーティング、侵入検出、タッチ検出、赤外線阻止、および装飾的または他の光学的な目的である。したがってEMIシールド・フィルムおよび物品に対する他の用途としては、電気的に加熱された物品、電極を含む物品、バリア物品、セキュリティ物品、装飾的な物品、およびナンバ・プレートが挙げられる。
【0045】
EMIシールド・フィルムおよび物品は、フレキシブルなものとすることもできるし、または自立性のものとすることもできる。自立性物品の作製は、フィルムを積層するかまたはそうでなければ適切な補助支持体または他の基板に結合することによって、より簡単に行なうことができる。典型的な補助支持体または基板材料としては、グレージング材料たとえばガラス(絶縁、焼き戻し、積層、焼きなまし、または熱強化されていても良いし、またシートおよび成形品などの形態であっても良い)、金属(積層、焼きなまし、または熱強化されていても良いし、また連続または穿孔シート、メッシュ、スラブ、および成形品などの形態であっても良い)、およびプラスチック(積層、焼きなまし、または熱処理されていても良いし、また連続または穿孔シート、織られたまたは不織のメッシュ、スラブ、および成形品などの形態であっても良い)が挙げられる。EMIシールド・フィルムは、非平面の構成の場合に、または非平面基板(特に複合曲率を有するもの)と関連している場合に、特に有用である。これにはたとえば、ガラス、金属、プラスチック材料たとえば前述の支持体材料および他の適切な材料から形成される非平面パネルまたは成形品などが含まれる。このような非平面の構成は多くの場合、EMIシールド・フィルムを意図的に変形させることによって得ることができる。略して、言葉「プリフォーム」を用いて、変形操作を施すことが意図されるEMIシールド・フィルムを具体化するEMIシールド・フィルムまたは物品を記述することができる。変形操作によってたとえば、プリフォームの少なくとも1つの表面を、EMIシールド・フィルムが、作製された当初に通常有する一様に滑らかな平面から、変形しても良い。変形操作によって通常、プリフォームの略滑らかな平面仕上げされた領域が、3次元特徴を有する領域に変わる。変形操作では、熱を用いて、プリフォームの作業用品質および他の測定値たとえば圧力、真空、成形、等を改善することができる。たとえば好ましい変形操作の1つにおいては、熱成形を用いる。これにはたとえば、種々の形態の真空または圧力成形/フォーミング、プラグ成形、射出成形等が含まれる。プリフォームを、非平面基板(たとえば、複合曲面状の基板)に、接着するか、この基板上で伸ばすかまたは他の方法で変形することができる。プリフォームを、エンボス加工するかまたは他の方法で意図的に作り直すことができる。またプリフォームを引っ張ることまたは伸ばすことを用いて、恒久的に変形された複合曲面状の領域を、プリフォームに与えても良い。当業者であれば、種々の他の作製技術を用いて意図的な変形をプリフォームに与えられることを、理解するであろう。
【0046】
変形には、比較的小さい変形、たとえばフィルムをエンボシングするときに遭遇するもの、より大きな規模の変形、たとえばフィルムを成形または熱成形するときに遭遇するものまでが含まれる。プリフォームは好ましくは、実質的なクラッキングまたは折り目づけを伴うことなく、非平面の構成を採用することができる。このように変形されたフィルムまたは物品は、種々の構成を有することができる。図6Bに、構成の一つを示す。図では、プリフォーム200に、第1の主要な表面202および第2の主要な表面204が含まれ、これらは、選択された領域206および208で変形されている。選択された領域206は、第1の主要な表面202内の凹部であり、選択された領域208は、第2の主要な表面208内の隆起した領域である。またこの場合にはこれらの2つの領域は一致する。領域206および208を囲むプリフォーム200の略滑らかな平面部分によって、未変形厚みtoが規定される。選択された領域206および208によって、変形厚みtfが規定される。場合によっては、比to:t1が少なくとも約1.1:1、より好ましくは少なくとも約1.5:1、さらにより好ましくは少なくとも約1.75:1、およびさらにより好ましくは少なくとも約2:1であることが望ましい場合がある。
【0047】
図6Cおよび図6Dに、より極端な変形結果を示す。物品210は、圧伸変形操作の例と考えることができる。物品210には、第1の主要な表面212および第2の主要な表面214が含まれるとともに、複数の選択された領域においてプリフォームが変形されて、窪んだ領域216および開口部220が第1の主要な表面212内に形成され、また隆起した領域218が第2の主要な表面214上に形成されている。窪んだ領域216には、開口部220、曲率半径が連続的に小さくなる曲面状領域222および224、および深く抜き出された側壁226が含まれている。変形は、窪んだ領域216(開口部220に渡って測定)の平均幅wと窪んだ領域216の平均深さd(第1の主要な表面212から測定)とのアスペクト比によって、特徴づけることができる。開口部220が非円形である場合は、幅wをその最も狭い寸法に渡って測定することが好ましい。ある場合には、窪んだ領域216のアスペクト比w:dが、約10:1以下、より好ましくは2:1以下、さらに好ましくは約1:1以下、さらに好ましくは約0.5:1以下であることが好ましい。変形の程度は、必要に応じて、絶対項で測定することができる。ある場合には、深さdが、少なくとも約0.1ミリメートル以上、より好ましくは少なくとも約1ミリメートル以上、さらにより好ましくは少なくとも約10ミリメートル以上であることが好ましい。深さdがプリフォームの厚みにほぼ等しいかそれを超える場所において、隆起した領域218が第2の主要な表面214上に形成される可能性が高くなることが理解される。
【0048】
第1の主要な表面212内に形成される窪んだ領域216の深さdを測定することは、第1の主要な表面が平面である場合に限定されない。図6Eを参照して、変形されたプリフォーム230が曲面状構成で示されている。プリフォーム230には、第1の主要な表面234上に形成された窪んだ領域232、第2の主要な表面236上の対応する隆起した領域238、小さい曲率半径の領域240および242、および深く抜き出された側壁244が含まれている。窪んだ領域232の深さdは好ましくは、第1の主要な表面234によって概ね規定される幾何学的な表面から測定され、通常はその幾何学的な表面からの最大深さである。
【0049】
EMIシールド・フィルムがポリマーのスペーシング層を第1および第2の金属層の間に含む場合には、スペーシング層の厚みは変形操作により小さくなっても良い。そういった場合、ポリマーのスペーシング層の厚みは、変形方法中に高レベルの歪みを受けた物品領域において概ね小さく、また変形方法中にほとんどまたは全く歪を受けなかった物品領域において概ね大きい。
【0050】
理論に縛られることは望まないが、開示された方法によって形成される物品が受ける変化は、方法の結果生じる構造に反映されるものと考えられる。熱可塑性基板、少なくとも1つの金属または金属合金層、および少なくとも1つの架橋ポリマー層を含む平面フィルムを、説明した方法であるエンボシング、延長、または熱成形等によって変形させて、湾曲状、曲面状、または複合曲面状の形状に合わせる。この方法の結果、金属または金属合金層を、ある領域において細長くしても良く、また他の領域において圧縮しても良い。普通測定される材料特性は、破壊までの伸びであり、これは、材料が凝集破壊(すなわち破損)を受ける前に、材料を引き伸ばすことができる量(歪みによって測定される)に相当する。変形方法中に層が圧縮されたか引き伸ばされたかの判断は、当初の平面フィルムの中立面に対する層の空間的な関係によって記述することができる。このことは、米国特許第4,888,061号明細書に記載されている。好ましくは、金属または金属合金層は、フィルムの中立面の付近に位置する。フィルムの中立面上に位置する材料は、変形の結果としての応力を受けず、またフィルムの結果である歪みを全く受けない。変形の相対的な方向に依存して、中立面の上方または下方に位置する材料層は、圧縮または伸張のいずれかを受ける。たとえば、前述したプリフォーム平面フィルムは一般的に、基板内に中立面を有し、金属または金属合金層および付随する透明な架橋ポリマー層は、この中立面からある距離のところに位置する。平面フィルムが変形されて、金属含有層が中立面と曲率半径の外側エッジとの間にきた場合、金属含有層は引き伸ばされる。逆に、金属含有層が中立面と曲率半径の内側エッジとの間にある場合、金属含有層は圧縮される。同様にして、平面フィルム内の各層の相対的な厚みは、層の形成が圧縮下なのかまたは張力下(引き伸ばしを起こす)なのかに依存して、当初の厚みに対して変化し得る。金属含有層の破壊までの伸びは、層が圧縮されているか引き伸ばされているかに依存する。当初の平面フィルムの破壊までの伸びと比べて、変形方法中に引き伸ばされた金属含有層の破壊までの伸びは小さい(すなわち凝集破壊の前に層が耐えられる張力は非常に小さい)。加えて、フィルム内の各層の厚みは、この変形の間に小さくなる可能性がある。対照的に、金属含有層が圧縮されている場合、その破壊までの伸びは平面フィルムの場合よりも大きい。加えて、フィルム内の各層の厚みは、この変形の間に大きくなる可能性がある。
【0051】
図6Fに、プリフォームを波形成形するためのデバイス250の部分図を示す。波形整形は、第1および第2の略円筒形の波形成形部材またはローラ252および254を用いて行なう。波形成形部材またはローラ252および254はそれぞれ、軸と離間に配置された複数の尾根部分256および258とを有し、尾根部分256および258はそれぞれ、波形成形部材252および254の周囲を規定する。尾根部分256および258間のスペースは、プリフォーム260を、波形成形部材252および254間の噛み合い関係の中で受け取るように適合されている。また装置には、波形成形部材252または254の少なくとも一方を回転させるための適切なデバイス、およびプリフォーム260を供給するかまたは取り出すための適切なデバイスも含まれており、こうしてプリフォーム260が、第1の波形成形部材252の周囲によって定義される形状に合うように概ね変形されるようになっている。3次元的な構成、およびある場合には結果として生じる波形成形されたフィルムの装飾的外観に影響するプロセスパラメータとしては、波形成形ローラの温度、波形成形ローラ間のニップ圧力、波形成形ローラの直径、線速度、および尾根部分256および258の形状およびスペーディングが挙げられる。
【0052】
図6Gに、このような波形成形方法を用いて生成可能な波状構造280を示す。波形は、アーチ形部分282、谷形部分284、およびアーチ形部分を谷形部分に接続する中間部分286および288によって、特徴づけられる。図6Gに示す波形は正弦曲線の形状であるが、波形成形方法によって他の多くの所望する形状の波形、たとえば図6Hに示す波形成形された物品290における波形を、生成できることを認識いただきたい。加えて、波形成形は、プリフォームの全幅を広げる必要はなく、またプリフォームの幅に沿って延びる必要もない。むしろ波形成形は、任意の所望する長さに対して、およびプリフォームの平面または全体的な曲率における任意の方向に、延びても良い。
【0053】
当業者であれば、多種多様のプリフォームおよび変形技術を用いて、多種多様の恒久的に変形されたフィルムおよび物品を得ても良いことが認識される。
【0054】
完成したデバイス内のまたは密閉領域に隣接するEMIシールド・フィルムまたは物品の組み立てを、当業者に良く知られた技術を用いて行なうことができる。たとえば、EMIシールド・ウィンドウに対する代表的な構成上の詳細を、以下の文献で見ることができる。シールドされたエンクロージャのデザイン:EMIを防止するための費用対効果の高い方法(The Design of Shielded Enclosures: Cost−Effective Methods to Prevent EMI)、ルイス.T.グネッコ(Louis T. Gnecco)著、(ニューネス出版:バターワース−ハイネマン(Newnes Publishing:Butterworth−Heinemann)、ボストン(Boston)、2000)。さらなるEMIシールド材料たとえばガスケット、テープ、織物、発砲体または他の材料を、EMIシールド・フィルムまたは物品と組み合わせて用いても良い。このような他の材料を用いるための代表的なEMIシールドの方程式および技術は、上記で引用された文献に記載されている。電磁干渉および互換性に関するハンドブック・シリーズ(A Handbook Series on Electromagnetic Interference and Compatibility)(インターフェレンス・コントロール・テクノロジ社(Interference Control Technologies、Inc.)、ガイネスビレ、バージニア州(Gainesville、VA)、1988)において、特に第3巻:電磁シールド(Electromagnetic Shielding)、ドナルド.R.J.ホワイト(Donald R.J.White)およびミシェル・マーディギアン(Michel Mardiguian)著;第8巻:EMI制御方法論および手順(EMI Control Methodology and Procedures)、ミシェル・マーディギアン著;および第8章:電気工学における電磁気学的互換性(Electromagnetic Compatibility for Electrical Engineering)、B.A.オースチン(B.A.Austin)著、電気工学の参考書(Electrical Engineer's Reference Book)、G.R.ジョーンズ(G.R.Jones)、M.A.ラーフトン(M.A.Laughton)、およびM.G.セイ(M.G.Say)著、(バターワース−ハイネマン(Butterworth−Heinemann)、オックスフォード、英国(Oxford,UK)、1993)。代表的なデバイスとしては、機器、ディスプレイ(たとえば、プラズマ・ディスプレイ)、イメージング機器(たとえば、磁気共鳴イメージング機器)、コンピュータ機器(たとえば、サーバ)、通信機器(たとえば、携帯電話)、医療用デバイスなどが挙げられる。代表的な密閉領域としては、部屋(たとえば、安全な会議室および試験機器設備)、送信設備(またはその一部)、キャビネット、テントなどが挙げられる。
【0055】
EMIシールド・フィルムおよび物品の好ましい実施形態によって、光学的に透明な、フレキシブルまたは伸張性のシールドが得られる。このシールドによって、電磁干渉を起こす可能性があるかまたは電磁干渉に敏感な電子機器および他のデバイスの外へまたはその中へ、不要な電磁エネルギーが透過することを防ぐことができる。これらの好ましいEMIシールド・フィルムおよび物品によって、典型的な市販の光学的に透明なEMIシールド・フィルムよりも劇的に良好な機械的耐久性および腐食抵抗が得られる一方で、匹敵する光学的透明度およびシールド能力が得られる。驚くべきことに、これらの好ましいEMIシールド・フィルムは、引き伸ばされ、曲げられ、または折り目をつけられても、そのEMIシールド能力を保持する。EMIシールド・フィルムは好ましくは、その本来の長さの5%、10%、またはそれ以上、張力モードで歪んでも、そのEMIシールド能力を保持する。より好ましくは、EMIシールド・フィルムは、本来の長さの20%、30%、40%、またはさらに50%またはそれ以上、張力モードで歪んでも、そのEMIシールド能力を保持する。これは予期しない結果である。と言うのは、市販のEMIシールド・フィルムは、10%およびさらに5%よりもはるかに下の歪みにおいて、たとえば2%歪みにおいて、そのEMIシールド能力を失うからである。EMIシールド・フィルムは、好ましくは45度で曲げられても、より好ましくは90度で曲げられても、そのEMIシールド能力を保持する。最も好ましくは、EMIシールド・フィルムは、180度で曲げられるかまたは折り目をつけられても、そのEMIシールド能力を保持する。これは予期しない結果である。と言うのは、市販のEMIシールド・フィルムは、曲げられたときまたは粗く扱われたときでさえ、そのEMIシールド能力を失うからである。
【0056】
種々のEMIシールド・フィルムを評価するために、以下の試験が用いられた。
【0057】
腐食試験
2本のストリップ25.4mm幅×約254〜305mm長を、フィルム・サンプルの中心から切り取った。ストリップを、室温で20%KCl溶液を含むジャー内に入れて、各ストリップの約150〜200mmが塩溶液に浸かるようにした。ジャーの頂部をジャーにネジ止めして、塩溶液が蒸発しないようにした。15分間の浸漬の後、ストリップを取り出して、乾燥ペーパー・タオル上の支持体面の上に置き、ティッシュまたはペーパー・タオルを用いてストリップ幅に沿って拭いた。中間圧力を印加しながら、拭いた。次にストリップを冷水で洗浄して表面から塩を取り除いた後、フィルム表面の外観を観察した。外観の等級は、ストリップを拭いた後に取り除かれた金属層の量を視覚的に評価したものに基づいており、本来の金属層領域の割合として表現される。
【0058】
電流下での腐食試験
2本のストリップ25.4mm幅×203mm長を、フィルム・サンプルの中心から切り取った。ストリップの狭い方の端部を、両面について、22−201番の銀塗料(カティ社(Katy Company))を用いて塗装した。銀塗料が乾燥した後に、塗装されたエッジ上に銅を巻き付けて、耐久性のある電極をストリップの各端部に形成した。ワニ口クリップを用いて、電源を銅電極に接続した。4.0ボルトの電圧をコンタクト間に印加して、結果として生じる電流を測定および記録した。次に、各ストリップの中心付近の125〜150mm長の部分を、室温で20%KCl溶液中に沈めた。浸漬時間が経過する間、電流を測定および記録した。
【0059】
接着試験
四角形:約254mm幅×約254mm長を、フィルム・サンプルの中心から切り取った。マスキング・テープおよびフィラメント・テープの25.4mm幅×178mm長の片をそれぞれ、フィルムに、MDおよびTDの両方向において貼り付けて、2.3kgローラを用いて押圧した後、1週間エージングした。接着試験の等級は、テープを剥がした後に残っている金属層の量を視覚的に評価したものに基づいており、本来の金属層領域の割合として表現される。
【0060】
伝導性対歪み試験
EMIシールド・フィルムがそのEMIシールド能力を失うであろう歪みレベルの概算的な測定として、EMIシールド・フィルム・サンプルをSINTECH(商標)200/S張力テスタ(インストロン社(Instron Corp.))を用いて引き伸ばして、フィルムが電気を流すのを止めるであろうパーセント歪みを決定した。電流下での腐食試験で用意したストリップを張力テスタの掴み具内にクランプした後、ワニ口クリップを用いて電源を銅電極に接続した。ゲージ長さとして101.6mm、およびクロスヘッド速度として25.4mm/分を用いて、4ボルトの一定電圧をストリップに供給して、電流フローを、%歪みに対して測定および記録した。
【0061】
シート抵抗試験
EMIシールド・フィルムを、シート抵抗、または表面抵抗率について評価した。その際、非接触伝導性測定デバイス(モデル717Bベンチトップ・コンダクタンス・モニタ(Benchtop Conductance Monitor)、デルコム・インスツルメンツ社(Delcom Instruments Inc.)を用いた。
【0062】
太陽熱ゲイン係数およびシェーディング係数
値Teを、試料を透過した太陽エネルギー(250nm〜2500nm)を、全入射太陽エネルギーで割ったものの比(パーセントで表わす)で定義する。値Aeを、試料が吸収した太陽エネルギー(250nm〜2500nm)を、全入射太陽エネルギーで割ったものの比(パーセントで表わす)で定義する。太陽特性を、エア・マスとして1.5を用いてASTM E891からの太陽放射度データを用いて、計算する。太陽熱ゲイン係数(SHGC)を以下のように計算する。
SHGC=Te+0.27(Ae)
シェーディング係数(SC)を、所定のグレージングを通過した太陽熱ゲイン係数と、標準の3.2mm厚ウィンドウ・ガラスの単一のペインを通過した太陽熱ゲイン係数との比として定義し、以下のように計算する。
SC=SHGC/87.0
【0063】
EMIシールド強度
EMIシールド強度の評価を、ASTM D−4935−99に基づいて、同軸のTEMセルを用いた遠距離場型@試験によって行なった。結果報告は、デシベル(dB)で行なう。
【0064】
まずEMIシールド・フィルムおよび物品の説明を、以下の非限定の実施例を参照して行なう。この実施例では、すべての部およびパーセンテージは、特に断りのない限り、重量である。
【実施例】
【0065】
実施例1
(層1)ほぼ300メートル長のロールで0.05mm厚×508mm幅のPET支持体(メリネックス(MELINEX)(商標)453番フィルム、デュポン・テイジン・フィルムス(DuPont Teijin Films))を、図6Aに示したものに似た真空チャンバを巻くために、ロールに積めた。真空チャンバ内の圧力を、3×10-4トールまで下げた。支持体を連続してプラズマで前処理してアクリレートでコーティングすることを、ウェブ速度が36.6m/分の1つのパスの間に行なった。プラズマ前処理では、クロム・ターゲットと、70sccmの窒素ガス流を伴う窒素雰囲気の下で1500ワット・パワー(429ボルトおよび3.5アンペア)で動作する非平衡なdcマグネトロンとを用いた。アクリレート・コーティングでは、IRR214アクリレート(UCBケミカルズ)およびラウリルアクリレートの50:50混合物を1時間の間脱ガスしたものを用いた。脱ガスは、液体モノマー混合物の容器をベル・ジャー内に置いて、圧力をほぼ1ミリトールまで下げることによって行なった。脱ガスされたモノマーを、ポンプによって2.35ml/分の流量で、超音波アトマイザを通して、274℃に維持された蒸発チャンバまで流した。ドラム温度として−18℃を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた後、電子ビームによる架橋を、7.59kVおよび2.0ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行なった。
【0066】
(層2)ウェブの方向を反対にした。再び36.6m/分で動作させて、アクリレート表面をプラズマ処理した後、マグネトロン・スパッタリングした銀によってコーティングした。プラズマ前処理は前述と同じであるが、413ボルトおよび3.64アンペアで行なった。銀のスパッタリングは、10,000ワット・パワー(590ボルトおよび16.96アンペア)、ドラム温度として25℃、および90sccmのアルゴン・ガス流を伴うアルゴン雰囲気で行なった。
【0067】
(層3)ウェブの方向を再び反対にした。再び36.6m/分で動作させて、架橋したスペーシング層を、前述したモノマー混合物を用いて形成した。しかしモノマー堆積前の銀表面のプラズマ前処理は行なわなかった。ドラム温度として−17℃および前述した他のモノマー堆積条件を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた後、電子ビームによる架橋を、7.8kVおよび3.8ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行なった。
【0068】
(層4)ウェブの方向を再び反対にした。再び36.6m/分で動作させて、架橋したスペーシング層をプラズマ前処理した後、マグネトロン・スパッタリングした銀によってコーティングした。プラズマ前処理は前述と同じであるが、429ボルトおよび3.5アンペアを用いた。銀のスパッタリングは前述と同じであるが、590ボルトおよび16.94アンペアで行ない、ドラム温度として22℃を用いた。
【0069】
(層5)ウェブの方向を再び反対にした。保護層の形成を、前述したモノマー混合物を用いて行なった。しかしモノマー堆積前の銀表面のプラズマ前処理は行なわなかった。ドラム温度として−17℃および前述した他のモノマー堆積条件を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた後、電子ビームによる架橋を、10.11kVおよび3.8ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行なった。
【0070】
図7に、結果として生じる5つ層の赤外線阻止アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレートの光学積層物の光学特性を示す曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過(Tvis)および反射を示す。光学的なモデリングを用いて、およびブラッガーマン密度として銀に対して0.97を仮定して、5つの層に対して計算された厚みは、120nm(アクリレート層1)/12nm(Ag層2)/85nm(アクリレート層3)/12nm(Ag層4)/120nm(アクリレート層5)であった。
【0071】
実施例2
実施例1の方法を用いて、PET支持体を、5つの層アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物によって覆った。しかしプラズマ前処理は、金属層の頂部および底部の両方に対して行なった。個々の層の違いは、以下の通りであった。
【0072】
(層1)支持体のプラズマ前処理は、前述と同じであるが、1000ワット・パワー(402ボルトおよび2.5アンペア)および窒素ガス流として102sccmで行なった。モノマー流量は2.45ml/分であり、蒸発チャンバ温度は276℃であった。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結することを、−21℃のドラム温度を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.0kVおよび6.5ミリアンペアで動作させた。
【0073】
(層2)プラズマ前処理を、1000ワット・パワー(309ボルトおよび3.34アンペア)および窒素ガス流として90sccmで行なった。銀のスパッタリングは、570ボルトおよび17.88アンペア、ドラム温度として21℃、およびアルゴン・ガス流として93.2sccmで行なった。
【0074】
(層3)銀表面のプラズマ前処理を、スペーシング層の堆積の前に行なった。プラズマ前処理では、クロム・ターゲットおよび1000ワット・パワー(308ボルトおよび3.33アンペア)を用いた。ドラム温度として−23℃を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた後、電子ビームによる架橋を、8.0kVおよび6.0ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行なった。
【0075】
(層4)プラズマ前処理を316ボルトおよび3.22アンペアで行ない、窒素ガス流量は90sccmであった。銀のスパッタリングを、567ボルトおよび17.66アンペア、ドラム温度として20℃、およびアルゴン・ガス流として95.5sccmで行なった。
【0076】
(層5)銀表面のプラズマ前処理を、保護層の堆積の前に行なった。プラズマ前処理は、層3の場合と同じであった。ドラム温度として−23℃を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた後、電子ビームによる架橋を、8.0kVおよび6.2ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行なった。
【0077】
図8に、結果として生じる5層の赤外線阻止アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物の光学特性を示す。曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過および反射を示す。光学的なモデリングを用いて、およびブラッガーマン密度として銀に対して0.97を仮定して、5つの層に対して計算された厚みは、120nm(アクリレート層1)/9nm(Ag層2)/95nm(アクリレート層3)/9nm(Ag層4)/120nm(アクリレート層5)であった。
【0078】
実施例3〜5
実施例2の方法を用いて、5層の赤外線阻止アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物の銀層の厚みを変えたものを、PET支持体上に形成した。結果として生じるフィルムの評価を、外観、透過(Tvis)、反射、太陽熱ゲイン係数(SHGC)、シェーディング係数(SC)、およびシート抵抗率に対して行なった。下表1に、処理条件および評価結果を示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果によれば、ライン速度を変えることによって、金属層の厚みが変わることが分かる。フィルムとしては、Tvisが72%と高くシート抵抗が3.9Ω/スクエアと低いものが得られた。また、それぞれ実施例4および5のフィルムである2つのサンプルの評価も、伝導性対歪み試験を用いて行なった。図9および図10に、結果をそれぞれ示す。すべてのフィルム・サンプルにおいて、電流が、50%以上の歪みにおいて流れた。
【0081】
比較例1
透明な銀層および酸化インジウム無機誘電体をベースにした市販の製品(XIR(商標)75フィルム、サウスウォール・テクノロジ社(Southwall Technologoes,Inc.))の評価を、伝導性対歪み試験を用いて行なった。サンプルの破損が、わずか1%の歪みを加えたときに起きた。
【0082】
実施例6〜11
実施例3〜5の方法を用いて、5層の赤外線阻止アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物を、PET支持体(実施例6〜9)または復屈折の多層光学フィルム支持体(3M(商標)太陽光反射フィルム、41−4400−0146−3、実施例10〜11)上に形成し、任意にプラズマ後処理を行なった。層5の厚みを、以下に示すように堆積条件を変えることによって、変化させた。結果として生じるフィルムの評価を、外観、透過、反射、太陽熱ゲイン係数、シェーディング係数およびシート抵抗率に対して行なった。表2に、処理条件および評価結果を示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2の結果によれば、2つの異なる基板を用いて、保護トップコートの厚みを変え、トップコートの任意のプラズマ後処理を用いていることが示されている。フィルムとしては、Tvisが約73%と高くシート抵抗が3.9Ω/スクエアと低いものが得られた。また実施例11のフィルムの2つのサンプルの評価も、伝導性対歪み試験を用いて行なった。図11に結果を示す。両方のフィルム・サンプルにおいて、電流が、50%以上の歪みにおいて流れた。
【0085】
実施例12
実施例2の方法を用いて、PET支持体を、5つの層アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物によって覆った。しかしプラズマ前処理は、金属層の頂部および底部の両方に対して行なった。個々の層の違いは、以下の通りであった。
【0086】
(層1)支持体のプラズマ前処理は1000ワット・パワーであったが、322ボルト、3.15アンペア、および窒素ガス流として70sccmを用いた。モノマー流量は2.65ml/分であり、蒸発チャンバ温度は274℃であった。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結することを、−20℃のドラム温度を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.04kVおよび5.7ミリアンペアで動作させた。
【0087】
(層2)プラズマ前処理は1000ワット・パワーであったが、378ボルト、3.09アンペア、および窒素ガス流として70sccmを用いた。銀のスパッタリングは、547ボルトおよび18.36アンペア、ドラム温度として26℃、およびアルゴン・ガス流として70sccmで行なった。
【0088】
(層3)プラズマ前処理は1000ワット・パワーであったが、327ボルト、3.1アンペアを用いた。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結することを、−19℃のドラム温度を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.04kVおよび6.3ミリアンペアで動作させた。
【0089】
(層4)プラズマ前処理は1000ワット・パワーであったが、328ボルト、3.07アンペア、および窒素ガス流量として70sccmを用いた。銀のスパッタリングは、546ボルトおよび18.34アンペア、ドラム温度として28℃、およびアルゴン・ガス流として70sccmで行なった。
【0090】
(層5)プラズマ前処理は1000ワット・パワーであったが、359ボルト、2.82アンペアを用いた。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結することを、−18℃のドラム温度を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.04kVおよび4.6ミリアンペアで動作させた。
【0091】
図12に、結果として生じる5層の赤外線阻止アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物の光学特性を示す。曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過および反射を示す。フィルムのTvisは71.5%であった。次にフィルムを切断して、30.5cm×2.54cmのストリップにした。エッジの塗装を、銀伝導性塗料(シルバー・プリント(SILVER PRINT)(商標)、O.K.トーセン社(O.K.Thorsen Inc.)を用いて行なった。2.54cm×2.54cmの銅箔を、ストリップの対向するそれぞれの狭い端部において折り重ね、テスト・リードにワニ口クリップを取り付けたものを用いて、0−20ボルト電源(モデル6253AデュアルDC、ヒューレット・パッカード社(Hewlett Packard,Inc.))に接続した。電圧をストリップに印加して、電流およびストリップ温度の測定を、時間の関数として行なった。ストリップ温度の増加が止まったら、より高い電圧を印加した。下表3に、結果を示す。
【0092】
【表3】
【0093】
表3の結果によれば、フィルムは、非常に高いパワー密度および非常に高い温度に、回路が故障することなく、耐えることができる。ストリップを冷却させた後に、16ボルトをストリップに印加した結果、電流として0.27アンペアが測定された。フィルムは、触ると暖かく感じられるようになった。次にフィルムを、カウンター・トップのエッジにおいて、45度に、次に90度に曲げた。フィルムは依然として触ると暖かく感じられ、電流は0.27アンペアのままであった。次にフィルムを、180度に曲げた。サンプルは依然として触ると暖かく、電流は0.27アンペアのままであった。クラッキングが起きたとしたら、ホット・スポットがフィルム内に生じて、実質的な電流変化(または電流の完全な停止)が観察されて、同時にEMIシールド能力の損失が起きたであろう。
【0094】
比較例2
実施例12の方法を用いて、サンプルとしてXIR75酸化インジウム・フィルム(サウスウォール・テクノロジ社)に通電して加熱した。サンプルの破損が、24ボルトを加えたときにまたは曲げたときに起きた。下表4に、結果を示す。
【0095】
【表4】
【0096】
表4の結果によれば、比較フィルムを電気的に加熱できることが示されている。しかし電圧を24ボルトまで増加させたら、フィルムは破損した。これは、酸化インジウム層のクラッキングが原因であると考えられた。比較フィルムの別個のサンプルを、印加電圧として16ボルトを用いて電気的に加熱した結果、電流として0.235アンペアが測定された。比較フィルムは、触ると暖かく感じられるようになった。比較フィルムを、カウンター・トップのエッジにおいて45度に曲げたら、フィルムは破損した。光学的な顕微鏡法を用いれば、クラックをコーティング内に観察することができる。
【0097】
実施例13
304mm×304mmサンプルとして、シート抵抗が4.2Ω/スクエアである実施例5のフィルムを、電気的にバスバーに接続して、両方の金属層を接地できるようにした。
【0098】
実施例14
PET支持体を、3層のアクリレート/Ag/アクリレート積層物で覆った。個々の層は次のように形成した。
【0099】
(層1)914メートル長のロールで0.05mm厚×508mm幅のPETフィルム(メリネックス(商標)453番フィルム、デュポン・テイジン・フィルムス)を、真空チャンバを巻くためにロールに積めた。そしてチャンバ圧力をポンプで引いて、8×10−6トールの圧力にした。PETフィルムに、アクリレート混合物として、48.5%のIRR214アクリレート、48.5%のラウリルアクリレート、および3.0%のエベクリル(EBECRYL)(商標)170接着促進剤を含むものを、コーティングした。アクリレート混合物を、コーティングの前に真空脱ガスした後、ポンプによって、2.35ml/分の流量で超音波アトマイザを通して、275℃に維持された蒸発チャンバまで流した。PETフィルムを、0℃に維持されたコーティング・ドラム上に、ウェブ速度として30.4メートル/分で通して、モノマー蒸気を凝結させた。そして電子ビームによる架橋を、8.0kVおよび2.0ミリアンペアで動作する単一のフィラメントを用いて行なった。この結果、アクリレート層として、硬化後に100nm厚みとなるものが生成された。
【0100】
(層2)ウェブの方向を、チャンバ内で反対にして、アクリレート表面に銀層をスパッタ・コーティングした。銀のスパッタリングは、10kWパワーで、アルゴンをスパッタリング・ガスとして用いて、チャンバ圧力として2.0ミリトール、およびウェブ速度として30.4メートル/分の下で行なって、10nm厚の銀層を得た。
【0101】
(層3)ウェブの方向を再び反対にした。層1の場合と同じ条件を用いて、100nm厚のアクリレート層を銀層上に堆積した。
【0102】
結果として生じる3層のフィルム積層物は、良好なスペクトル透過および反射率の特徴を示し(すなわち、光透過性であった)、および電気抵抗率が10Ω/スクエアであった。電流下での腐食試験を行なったところ、浸漬してから数秒して、電流がゼロになった。このことは、銀腐食、電気回路故障、およびEMIシールド能力の起こり得る損失が、厳しい腐食条件下において望ましいものよりも速く発生したことを示している。
【0103】
実施例15
第2の3層フィルム積層物を実施例14の場合と同じ仕方で用意した。しかしPETの窒素プラズマ前処理、層1のアクリレート・コーティング、および層2の銀コーティングをその後の層の堆積前に行なうことを、用いた。結果として生じたフィルムは、光透過性であった。窒素プラズマを、非平衡なdcマグネトロン・ソースを1.0kWおよび2.0ミリトール圧力で動作させて用いて、印加した。電流下での腐食試験を行なったところ、電流は、浸漬してから500〜600秒が経つまでゼロにならなかった。このことは、銀腐食および電気回路故障が、実施例14の場合よりもはるかに遅く、EMIシールド能力の保持力が改善されたことを示している。
【0104】
実施例16
3層のフィルム積層物を、実施例14の場合と同じ仕方で用意した。ただし、2%エチレングリコール・ビス−チオグリコレートを、モノマー混合物に添加した。結果として生じたフィルムは、光透過性であった。電流下での腐食試験を行なったところ、電流は、浸漬してから500〜600秒後にゼロになった。このことは、銀腐食および電気回路故障が、実施例14の場合よりもはるかに遅く、実施例15に匹敵する性能であることを示している。
【0105】
実施例17
3層のフィルム積層物を、実施例14の場合と同じ仕方で用意した。しかし、実施例15の場合と同じように窒素プラズマ前処理を使用し、また実施例16の場合と同じように2%エチレングリコール・ビス−チオグリコレート添加を用いた。結果として生じたフィルムは、光透過性であった。電流下での腐食試験を行なったところ、電流は、浸漬してから900秒超の間、一定のままであった。なおこの時間は、試験を終了させた時間である。このことは、銀腐食、回路故障の可能性、およびEMIシールド能力の損失が、実施例14〜16と比較してさらに低減したことを示している。
【0106】
実施例18
実施例12のフィルムを、550nmでの光の透過、シート抵抗、およびEMIシールド強度について、試験した。測定された光の透過は75%であり、表面抵抗率は4.5Ω/スクエアであり、およびEMIシールド強度は29dBであった。
【0107】
比較例3
実施例18の方法を用いて、AgHT(商標)−4の光学的に透明なEMIシールド・フィルム(CPフィルム)のサンプルを評価した。測定された光の透過は76%であり、表面抵抗率は4.7Ω/スクエアであり、およびEMIシールド強度は29dBであった。フィルムを手で皺寄せした後、EMIシールド強度について再試験をした。EMIシールド強度は、5dBに低下した。またフィルムの新鮮なサンプルも、腐食および歪み抵抗について評価した。電流下での腐食試験において回路故障が20秒で発生し、また伝導性対歪み試験において伝導性が2%歪みにおいてゼロになった。
【0108】
実施例19
実施例12の方法を用いて、PET支持体を、5層のアクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物で覆った。その際、プラズマ前処理を、金属層の頂部および底部の両方に対して行なった。モノマー混合物には、2%のエチレングリコール・ビス−チオグリコレートが含まれていた。その他の個々の層の違いは、以下の通りであった。
【0109】
(層1)支持体のプラズマ前処理を1000ワット・パワーで行なったが、428ボルトおよび2.3アンペアを用いた。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させることを、−17℃のドラム温度を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.0kVおよび2.8ミリアンペアで動作させた。
【0110】
(層2)プラズマ前処理を1000ワット・パワーで行なったが、368ボルトおよび2.72アンペアを用いた。銀のスパッタリングを、632ボルト、15.8アンペア、ドラム温度として31℃、およびアルゴン・ガス流として87sccmの下で行なった。
【0111】
(層3)プラズマ前処理を1000ワット・パワーで行なったが、430ボルトおよび2.3アンペアを用いた。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させることを、ドラム温度として−17℃を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.0kVおよび4.8ミリアンペアで動作させた。
【0112】
(層4)プラズマ前処理を1000ワット・パワーで行なったが、368ボルトおよび2.72アンペアを用いた。銀のスパッタリングを、634ボルト、15.8アンペア、ドラム温度として32℃、およびアルゴン・ガス流として87sccmの下で行なった。
【0113】
(層5)プラズマ前処理を1000ワット・パワーで行なったが、448ボルトおよび2.2アンペアを用いた。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させることを、ドラム温度として−19℃を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.0kVおよび5.7ミリアンペアで動作させた。
【0114】
結果として生じるフィルムの測定された光の透過は70%であり、表面抵抗率は5.6Ω/スクエアであり、およびEMIシールド強度は28dBであった。比較例3の場合と同じように、フィルムを手で皺寄せした後、EMIシールド強度について試験した。EMIシールド強度は28dBに保たれた。このことは、EMIシールド能力が十分に保持されていることを示している。
【0115】
実施例20
実施例1の一般的な方法を用いて(しかしクロム・スパッタリングをプラズマ前処理の代わりに用いて、クロム金属層を堆積して)、PET支持体を、7層のアクリレート/Cr/Ag/アクリレート/Cr/Ag/アクリレート光学積層物で覆った。モノマー混合物には、IRR214アクリレート、ラウリルアクリレート、およびダロクア(DAROCUR)(商標)1173の光開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))の43:43:14混合物が含まれていた。光開始剤をモノマー混合物に添加することを、真空脱ガスの後でコーティングの直前に、行なった。個々の層は次のように形成した。
【0116】
(層1)真空チャンバ内の圧力を、2×10-5トールまで低減した。支持体を連続してプラズマ前処理してアクリレートでコーティングすることを、24.4m/分ウェブ速度での1つのパス内で行なった。その際、500sccmの窒素ガス流、450kHzにおける800ワットのRFプラズマ・パワー、および−9.4℃のコーティング・ドラム温度を用いた。3成分のモノマー混合物を、ポンプを用いて、1.5ml/分の流量で引いた。UVランプを用いて、モノマー混合物を硬化した。
【0117】
(層2)ウェブの方向を反対にした。アクリレート層へのクロムのコーティングを、12.2m/分において、2.5kW DCのスパッタリング・パワー、および10sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0118】
(層3)ウェブの方向を反対にした。クロム層への銀のコーティングを、24.4m/分において、9.0kW DCのスパッタリング・パワー、および10sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0119】
(層4)同じパスにおいて連続して、銀層に、層1の場合と同様のモノマー混合物をコーティングした。
【0120】
(層5)ウェブの方向を反対にした。アクリレート層に、層3の場合と同様のクロムをコーティングした。
【0121】
(層6)ウェブの方向を反対にした。24.4m/分で動作させて、クロム層に、層4の場合と同様の銀をコーティングした。
【0122】
(層7)同じパスにおいて連続して、銀層に、層1の場合と同様のモノマー混合物をコーティングした。
【0123】
図13に、結果として生じる7つの層赤外線阻止アクリレート/Cr/Ag/アクリレート/Cr/Ag/アクリレート光学積層物の光学特性を示す。曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過および反射を示している。完成したフィルムは、可視透過が76%、ヘイズが0.68%、表面抵抗率が5.9Ω/スクエア、およびEMIシールド強度が5GHzにおいて33dBである。
【0124】
実施例21
実施例20の一般的な方法を用いて、PET支持体を、6層のTi/Ag/アクリレート/Ti/Ag/アクリレート光学積層物で覆った。モノマー混合物には、IRR214アクリレート、ラウリルアクリレート、およびエチレングリコール・ビス−チオグリコレートの64:28:8混合物が含まれていた。個々の層は次のように形成した。
【0125】
(層1)支持体は、製造業者から提供されたときには、未確認の処理が一方の側になされていた。支持体の未処理側へのチタンのコーティングを、36.6m/分において、−23℃のドラム温度、2.8kW DCのスパッタリング・パワー(426ボルトおよび6.8アンペア)、および50sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0126】
(層2)同じパスにおいて連続して、チタン層への銀のコーティングを、−23℃のドラム温度、15kW DCのスパッタリング・パワー(779ボルトおよび19.6アンペア)、および150sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0127】
(層3)同じパスにおいて連続して、銀層へのモノマー混合物のコーティングを、流量として2.4ml/分、274℃の蒸発チャンバ温度、−23℃のドラム温度を用いて、また単一のフィラメント電子ビーム・ガンを7.5kVおよび9.7ミリアンペアで動作させて行なった。
【0128】
(層4)ウェブの方向を反対にした。アクリレート層へのチタンのコーティングを、36.6m/分において、−16℃のドラム温度、2.8kW DCの(412ボルトおよび11.1アンペア)スパッタリング・パワー、および90sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0129】
(層5)同じパスにおいて連続して、チタン層への銀のコーティングを、−16℃のドラム温度、15kW DCのスパッタリング・パワー(778ボルトおよび19.5アンペア)、および150sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0130】
(層6)同じパスにおいて連続して、層3の場合と同様に銀層へのモノマー混合物のコーティングを、−17℃のドラム温度を用いて、また単一のフィラメント電子ビーム・ガンを7.5kVおよび7.2ミリアンペアで動作させて行なった。
【0131】
図14に、結果として生じる6層の赤外線阻止Ti/Ag/アクリレート/Ti/Ag/アクリレート光学積層物の光学特を示す。曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過および反射を示す。完成したフィルムは、可視透過が73%、ヘイズが0.44%、および表面抵抗率が6.2Ω/スクエアであった。
【0132】
実施例22
実施例21の一般的な方法を用いて、PET支持体を、6層のTi/Ag/アクリレート/Ti/Ag/アクリレート光学積層物で覆った。個々の層は次のように形成した。
【0133】
(層1)真空チャンバ内の圧力を、1.5×10-5トールまで低減した。ウェブへのチタンのコーティングを、24.4m/分において、−17℃のドラム温度、2.8kW DCのスパッタリング・パワー(404ボルトおよび7.2アンペア)、および10sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0134】
(層2)同じパスにおいて連続して、チタン層への銀のコーティングを、−17℃のドラム温度、15kW DCのスパッタリング・パワー(742ボルトおよび20.5アンペア)、および90sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0135】
(層3)同じパスにおいて連続して、銀層へのモノマー混合物のコーティングを、された流量として1.8ml/分、274℃の蒸発チャンバ温度、−18℃のドラム温度を用いて、また単一のフィラメント電子ビーム・ガンを7.5kVおよび10.9ミリアンペアで動作させて行なった。
【0136】
(層4)ウェブの方向を反対にした。アクリレート層へのチタンのコーティングを、24.4m/分において、−16℃のドラム温度、2.8kW DC(371ボルトおよび7.8アンペア)のスパッタリング・パワー、および10sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0137】
(層5)同じパスにおいて連続して、チタン層への銀のコーティングを、−16℃のドラム温度、15kWのDCスパッタリング・パワー(739ボルトおよび20.6アンペア)、および90sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0138】
(層6)ウェブの方向を反対にした。層3の場合と同様に銀層へのモノマー混合物のコーティングを、45.7m/分において、流量として1.5ml/分、−18℃のドラム温度を用いて、また単一のフィラメント電子ビーム・ガンを7.5kVおよび4.1ミリアンペアで動作させて行なった。
【0139】
図15に、結果として生じる6層の赤外線阻止Ti/Ag/アクリレート/Ti/Ag/アクリレート光学積層物の光学特性を示す。曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過および反射を示す。完成したフィルムは、可視透過として78%、ヘイズとして0.76%、表面抵抗率として6.5Ω/スクエア、およびEMIシールド強度として5GHzにおいて32dBを示した。
【0140】
実施例23
実施例20のフィルムを熱成形して、フィルムの一部が3次元の半球状のくぼみを有するようにした。熱成形方法は、プラスチック製スラブ内の45mm直径の孔を、フィルムでテーピングして覆うことによって行なった。スラブ内の孔を通してフィルムに対して真空引きを行なう一方で、ヒート・ガンを用いてフィルムを加熱する。これを、フィルムが十分に熱くなって下方に変形して孔内へと入るまで行なう。ヒート・ガンを取り外し、フィルムを冷却してスラブから取り除く。結果として生じる熱成形による半球状のくぼみは、残りのフィルムの公称上の平面領域に対して深さが5mmである。フィルムを対向する2つの端部において手で保持して、ぴんと張るように十分に引っ張って外見上の緩みを取り除いても、くぼみは存続した。変形された領域は、光透過性であり、表面抵抗率として5.5Ω/スクエア、ヘイズとして1.6%を示し、これと比較して、熱成形されていないフィルムの場合は、5.9Ω/スクエアおよび0.68%の値であった。
【0141】
比較例4
実施例23の方法を用いて、XIR75酸化インジウム・フィルムを熱成形して、フィルムの一部が3次元の半球状のくぼみを有するようにした。熱成形された領域の表面抵抗率は5,000Ω/スクエアに増加し、これと比較して、熱成形されていないフィルムの場合は5.2Ω/スクエアであった。熱成形されたフィルムに対する大きな表面抵抗率は、電気伝導性、赤外線反射率、およびEMIシールド強度のうちの1つまたは複数が失なわれることと一致する。熱成形された領域のヘイズは13.9%に増加し、これと比較して、熱成形されていないフィルムの場合は0.56%であった。
【0142】
比較例5〜8
実施例23の方法を用いて、CPフィルム社から市販されている複数のフィルムを熱成形して、それぞれのフィルムの一部が3次元の半球状のくぼみを有するようにした。フィルムを、表面抵抗率について特徴づけした。下表5に、結果を示す。
【0143】
【表5】
【0144】
上述の結果によれば、市販のフィルムは、熱成形を試みたときに、表面抵抗率の著しい増加を示した(これは、電気伝導性、赤外線反射率および、EMIシールド強度の1つまたは複数が失なわれることと一致する)。
【0145】
実施例24
実施例21のフィルムを積層して、0.25mm厚の補助的なポリカーボネート支持体(レキサン(LEXAN)(商標)8010、ジェネラル・エレクトリック(General Electric))にした。その際、467番MP遷移型粘着剤(3M)を用いた。結果として生じる積層された構成を、対流オーブン内に125℃で約20分間置いて、粘着剤を乾燥させた。その後、積層された構成を熱成形して、携帯電話の正面に対応する3次元形状にした。熱成形方法では、ラブフォーム圧力形成器(Labform Pressure Former)(ハイドロ・トリム社(Hydro−Trim Corporation))を用いた。これを、90秒間約222℃で予熱した後、90秒間同じ温度で熱成形ステップを行なって、動作させた。結果として生じる熱成形された部品は、透明で、比較的硬くて自立性があり、恒久的に変形された複合曲面状の特徴を有していた。結果として生じる熱成形された部品の表面抵抗率は、6.0Ω/スクエアであった。これは、熱成形されていないフィルムの場合の6.2Ω/スクエア表面抵抗率に、非常によく似ている。
【0146】
図16に、熱成形された部品を示す。携帯電話カバー300の正面部分302は、前方から見ると、略凸状の形状である。くぼみ304によって、マイクロフォン位置が指定される。くぼみ306によって、キーパッド・ボタン位置が指定される。領域308によって、ディスプレイ領域が指定される。成形フランジ310が、正面部分302を囲んでいる。成形フランジ310を、完成した電話カバーから取り外すことは、成形されたプラスチック物を作る当業者に良く知られている技術を用いて行なうことができる。
【0147】
比較例9
実施例24の方法を用いて、XIR75酸化インジウム・フィルムを積層して、0.25mm厚のポリカーボネートの補助支持体にした後、熱成形した。結果として生じる熱成形された部品は、透明であった。XIR75フィルムを含む熱成形と積層とがなされた構成の表面抵抗率は、990Ω/スクエアであった。これは、熱成形されていないフィルムの5.2Ω/スクエア表面抵抗率よりも、はるかに高い。
【0148】
実施例25
実施例21のフィルムを、0.25mm厚のポリカーボネートの補助支持体(レキサン8010、ジェネラル・エレクトリック)と、ビクイッティ(VIKUITI)(商標)高度鏡面反射器(ESR)多層光学膜(3M)との間に積層した。その際、467番MP遷移型粘着剤(3M)を用いた。結果として生じる積層された構成を乾燥させた後、熱成形して、同じ3次元の携帯電話の正面形状にした。その際、実施例24の方法を用いた。ビクイッティESRフィルム表面を、成形物(mold)に対して置いた。結果として生じる熱成形された部品は、光透過性ではなく、銀色の外観を有していた。これは、透明な実施例21のフィルムおよびポリカーボネート補助支持体の下の構成にビクイッティESRフィルムを含めることに起因する。結果として生じる熱成形された部品の表面抵抗率は、6.4Ω/スクエアであった。これは、熱成形されていないフィルムの6.2Ω/スクエアの表面抵抗率に非常によく似ている。
【0149】
比較例10
実施例25の方法を用いて、XIR75酸化インジウム・フィルムを、0.25mm厚のポリカーボネート補助支持体とビクイッティESRフィルムとの間に積層し、乾燥させ、そして熱成形して同じ3次元の携帯電話の正面形状にした。結果として生じる熱成形された部品は、ビクイッティESRフィルムを含むことに起因する銀外観を有していたが、熱成形された部品の表面抵抗率は840Ω/スクエアであった。これは、熱成形されていないXIR75フィルムの5.2Ω/スクエアの表面抵抗率よりも、はるかに高い。
【0150】
実施例26
実施例22のフィルムをエンボス加工して、3次元のパターンを有するようにした。エンボシング・パターンは、実施例22のフィルムを1.5m/分で、オーバーラップする加熱されたニップ・ロールに通して供給することによって生成した。ニップ・ロールは、嵌まり合うダイアモンド形状の突出部および凹部を有する。ニップ・ロールの温度は、176〜193℃であった。フィルムの表面抵抗率は、実際には、エンボシングの後に低下して、エンボス加工されたフィルムの場合に3.75Ω/スクエアであった。これと比較して、エンボス加工されていないフィルムの場合は6.5Ω/スクエアであった。
【0151】
比較例11
実施例26の方法を用いて、XIR75酸化インジウム・フィルムをダイアモンド・パターンにエンボス加工した。XIR75フィルムの表面抵抗率は、エンボシングの後に増加して、エンボス加工されたフィルムの場合に885Ω/スクエアであった。これと比較して、エンボス加工されていないフィルムの場合には5.2Ω/スクエアであった。
【0152】
実施例27
実施例1および20の一般的な方法を用いて、PET支持体をプラズマ処理して、3層のクロム/アクリレート/アルミニウム積層物で覆った。個々の層は次のように形成した。
【0153】
(層1)真空チャンバ内の圧力を、3×10-4トールまで低減した。支持体のプラズマ前処理を、別個のパスにおいて、15.2m/分で行なった。その際、クロム・ターゲットを使用し、また非平衡なdcマグネトロンを、1.5kWパワー(429ボルトおよび3.5アンペア)において、70sccmの窒素ガス流を伴う窒素雰囲気の下で動作させた。クロムを第2のパスにおいて堆積させた。その際、クロム・ターゲットを使用し、また非平衡なdcマグネトロンを、12kWパワーにおいて、91ml/分のアルゴン・ガス流を伴うアルゴン雰囲気および15.2m/分のウェブ速度の下で動作させた。
【0154】
(層2)実施例14のモノマー混合物を、脱ガスした後、ポンプで2.79ml/分の流量で引いて、超音波アトマイザを通して274℃に保持された蒸発チャンバ内に流した。ドラム温度として−18℃を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた。そして、電子ビームで架橋することを、7.59kVおよび2.0ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行った。
【0155】
(層3)アルミニウム金属を、熱的に蒸発させて、アクリレート層上に30nmの厚みにした。その際、抵抗加熱されたボートを使用し、ウェブ速度として50ft/分を用いた。
【0156】
実施例28
上述のフィルムのほぼ6×12インチのサンプルを、車両用バッジング用途のための隆起した図形を作るために用いられる熱真空成形機内に置いた。フィルムを熱成形して、オートバイ名「デゥカッティ(DUCATI)」(商標)と綴る3次元図形用の凹部成形にした。熱成形されたフィルムに、ポリウレタン樹脂を充填した後、背面に感圧性粘着剤の層がコーティングされたライナ上で硬化した。結果は、非光透過性だが、粘着剤で裏打ちされた濃く着色された3次元の図形であり、これは、観察角度が変わるとマゼンタからグリーンに色彩が移った。
【0157】
本発明の種々の変更および修正が、本発明から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明は、説明するためだけに本明細書で述べてきた事柄に限定してはならない。
【技術分野】
【0001】
〔関連技術の相互参照〕
本出願は、一部継続出願として、米国特許出願第10/222,465号明細書「耐久性のある透明なEMIシールド・フィルム」、(2002年8月17日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、曲げおよび変形が可能で、たとえば電磁干渉(EMI)シールド用途での使用に適した電気伝導性フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
EMIシールド・フィルムを用いることによって、不要な電磁エネルギーが、電子機器の外へまたはその中へ透過することが防止される。この目的のために、種々の伝導性材料を用いることができる。シールドを透かして見る(たとえば、ディスプレイを見る)必要がある用途の場合には、微細なワイヤ・メッシュおよび特殊な透明フィルムを含むウィンドウが用いられている。透明なEMIシールドは、米国特許第4,910,090号明細書および同第5,489,489号明細書、ならびにEP810452においても記載されている。市販の透明なEMIシールド・フィルムでは通常、ポリマー基板たとえばPETに、伝導性酸化物フィルム(たとえば、インジウム・スズ酸化物)をコーティングしたもの、または金属(たとえば、銀)および伝導性酸化物を交互にコーティングした層を有するものが用いられる。代表的な市販の透明EMIシールド・フィルムとしては、AgHT(商標)−4およびAgHT(商標)−8フィルム(CPフィルム社(CPFilms、Inc.))、アルテア(ALTAIR)(商標)M、およびXIR(商標)透明伝導性フィルム(サウスウォール・テクノロジ(Southwall Technologies))、およびウィン・シールド(WIN−SHIELD)(商標)AgF8フィルム(パーカ・ハニフィン社コメリックス・ディビジョン(Chomerics Division of Parker Hannifin Corporation))が、挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在市販されているEMIシールド・フィルムには、適切な耐久性、耐汚染性、または耐腐食性がない。たとえば、CPフィルム社(CP Films、 Inc.)から販売されるフィルム・ベースのシールドに対する取り扱いガイドラインでは、シールド・フィルムを取り扱う際には、作業者は無塵ラテックスの手袋およびフェース・マスクを着用することを、推奨している。また伝導性フィルム・コーティングは、無機イオンたとえばナトリウム、カリウム、および塩化物による攻撃の影響を受けやすいという注意も出されているが、これらはすべて、人間の指および唾液中に存在するものである。さらに、フィルムが汚染された際には、その表面を、イソプロピルアルコールで湿らせた無繊維くずのクリーン・ルーム用ワイプできれいにすることが推奨されている。これらの取り扱いガイドラインではまた、コーティングを拭く際に、コーティングが非常に薄くて多少脆いので、過剰にこすらないように注意している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって、一態様においては、フレキシブルな支持体、伸張性のある金属または金属合金層、および架橋ポリマー保護層を含む伝導性フィルムであって、少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域を有する伝導性フィルムが提供される。
【0006】
第2の態様においては、本発明によって、ポリマーのスペーシング層によって分離された第1および第2の金属または金属合金層を有する熱可塑性のポリマー支持体を含む自立性の曲面状物品であって、スペーシング層の厚みが、高レベルの歪みを受けている物品領域において概ね低く、ほとんどまたは全く歪みを受けていない物品領域において概ね高い物品が提供される。開示された伝導性フィルムおよび成形された物品は、成形プロセスの間に受ける広範囲の応力および歪みに渡って、適切な伝導性を維持する。
【0007】
成形(モールディング)、エンボス加工、熱成形、曲げ等によって形成される開示された物品は、単純な曲面状および/または複合曲面状に、すなわち単一の点からの2つの異なる非直線方向に曲面状にすることができ、さらに、ある実施形態においては、電気伝導性フィルムが光透過性である。
【0008】
第3の態様においては、本発明によって、
(a)金属または金属合金層と架橋ポリマー保護層とを有する熱可塑性の支持体を含むプリフォームを用意するステップと、
(b)プリフォームをモールディング、エンボス加工、熱成形、または他の方法で変形させて、少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域を有する自立性の物品を用意するステップと、を含む物品の成形方法が提供される。
【0009】
開示されるフィルムおよび物品によって、成形されたとき、または曲げ、収縮、引き伸ばし、変形操作、または腐食性条件を受けたときの層間剥離、破損、または腐食に対する抵抗を増加させることができ、かつ依然として適切な電気伝導性を、したがって良好なEMIシールド性能を維持することができる。好ましくは、金属または金属合金層が、フィルムの実質的な領域に渡って、すなわちEMIシールド、加熱、または同様の機能性が望まれるフィルム部分に渡って、実質的に連続である。ある実施形態においては、金属または金属合金層が、フィルム全体に渡って完全に連続とすることができる。他の実施形態においては、金属または金属合金層をパターニングして、所望の機能性(たとえば、1つまたは複数の周波数選択性表面または別個の電気伝導性経路を設ける)に対する限定された数のアパーチャ、孔、またはチャネルを規定することができる。
【0010】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の詳細な説明から明らかである。しかしいかなる場合であっても、前述した概要は、特許請求された主題に対する限定と解釈してはならない。主題は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定され、出願手続き中に補正される場合がある。
【0011】
図面の種々の図における同様の参照符号は同様の要素を示す。図面中の要素は、一定の縮尺ではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】開示された電磁シールドされた物品を示す概略的な斜視図である。
【図2】開示されたフィルムを示す概略的な断面図である。
【図3】開示されたフィルムを示す概略的な断面図である。
【図4】開示されたフィルムを示す概略的な断面図である。
【図5】開示されたフィルムを示す概略的な断面図である。
【図6A】開示されたフィルムの製造装置を示す概略的な図である。
【図6B】開示された複合曲面状の物品を示す拡大部分断面図である。
【図6C】開示された複合曲面状の物品の一部を示す斜視図である。
【図6D】開示された複合曲面状の物品を示す拡大部分断面図である。
【図6E】開示された複合曲面状の物品を示す拡大部分断面図である。
【図6F】曲面状の物品を用意するために使用可能な波形成形装置を示す部分的な概略ダイアグラムである。
【図6G】波形成形された曲面状の物品を示す斜視図である。
【図6H】波形成形された曲面状の物品を示す斜視図である。
【図7】実施例1のフィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図8】実施例2フィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図9】実施例4のフィルムに対する伝導性対歪みを示すグラフである。
【図10】実施例5のフィルムに対する伝導性対歪みを示すグラフである。
【図11】実施例11のフィルムに対する伝導性対歪みを示すグラフである。
【図12】実施例12のフィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図13】実施例20のフィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図14】実施例21のフィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図15】実施例22のフィルムに対する透過率および反射率を示すグラフである。
【図16】実施例24で形成された複合曲面状の形状を示す概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
方位についての言葉たとえば「頂上の(atop)」、「上の(on)」、「最上の(uppermost)」などを、開示されたフィルムまたは物品内での種々の層の位置を表わすために用いることによって、水平の支持体層に対する1つまたは複数の層の相対的な位置を指す。フィルムまたは物品が、その製造中または製造後に空間において任意の特定の方位を持つべきであることを、意図しているわけではない。
【0014】
「光透過性の」支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルム、または物品の平均透過Tが、対象とするスペクトル範囲において、少なくとも約20%(垂直軸に沿って測定)であるということである。「可視光透過性の」支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルム、または物品の透過Tvisが、スペクトルの可視部分において、少なくとも約20%(垂直軸に沿って測定)であるということである。「赤外線反射性の」支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルム、または物品の反射が、約700nm〜約2000nmの波長領域において、少なくとも100nm幅の帯域における光の少なくとも約50%(ほぼ垂直角度において(たとえば、約6度の入射において)測定)であるということである。「光」の意味は、太陽放射である。
【0015】
「フレキシブルな」支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルム、または物品を、その本来の位置から30度だけ曲げることができ(折り畳むことも折り目をつけることも必要とせずに)、また開放してその本来の形状の少なくとも一部に戻すことが、電気的な連続性を失うことなく、および約0.25メートルの距離にある裸眼によって検出されるような目に見える不連続性を形成することなく、できるということである。
【0016】
「金属層」の意味は、金属または金属合金層である。
【0017】
「伸張性のある」金属層の意味は、光透過性のフィルムまたは物品内に取り入れられたときに、面内方向において少なくとも3%だけ伸ばすことが、電気的な連続性を失うことなく、および約0.25メートルの距離にある裸眼によって検出されるような金属層表面での目に見える不連続性を形成することなく、可能である層である。
【0018】
「架橋」ポリマーの意味は、共有化学結合によってポリマー鎖が、通常は架橋分子または基を介して、互いに結合して、ネットワーク・ポリマーを形成するポリマーである。架橋ポリマーは、一般的な特徴として不溶性であるが、適切な溶媒が存在する場合には膨潤性を有する。用語「ポリマー」に含まれるのは、ホモポリマーおよびコポリマーだけでなく、混和性のブレンド中に形成され得るホモポリマーまたはコポリマーである。これはたとえば、同時押し出し成形によって、または反応(たとえば、エステル交換など)によって、なされる。用語「コポリマー」には、ランダムおよびブロック・コポリマーの両方が含まれる。
【0019】
「非平面の」支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルム、または物品が、連続的な、断続的な、非方向性の、または複合曲率を有するということである。支持体、層、フィルムまたは物品が「複合曲面状である」かまたは「複合曲率」を有するという意味は、支持体、層、フィルムまたは物品の表面が、単一の点から2つの異なる非直線方向に曲面を形成しているということである。
【0020】
「自立性の」複合曲面状の支持体、層、フィルム、または物品の意味は、支持体、層、フィルムまたは物品が十分な剛性を有し、水平表面上に置かれたときに、および一方の端部を手で保持されて垂直方向に吊るされたときに、その形状を実質的に維持するということである。
【0021】
支持体、層、フィルム、または物品の「恒久的に変形された複合曲面状の領域」の意味は、支持体、層、フィルムまたは物品の表面に、複合曲率を有する非平面領域が含まれ、その形状が、支持体、層、フィルムまたは物品が、外見上の緩みを取り除くように2つの対向する端部において手によってぴんと張られても、実質的に存続するということである。
【0022】
「光学的に透明」の意味は、フィルムまたは物品内に、約1メートル好ましくは約0.5メートルの距離にある裸眼によって検出されるような見た目に分かるヘイズまたは傷がないことである。
【0023】
図1を参照して、医療用デバイス10は、金属ハウジング12によってEMIから部分的にシールドされている。ハウジング12上の情報ディスプレイ14が、透明なEMIシールド・フィルム16によって覆われている。金属製ベゼル18が、フィルム16を囲んでいて、フィルム16の周囲全体をハウジング12に電気的に接続する接地電極として機能している。フィルム16によって、EMIシールドが、ハウジング12によってまだシールドされていないデバイス10の残りの部分に対して得られる。
【0024】
図2を参照して、EMIシールドとして使用可能なフィルムを広く110で示す。フィルム110には、フレキシブルな支持体112が含まれ、これは可視光透明なプラスチック・フィルムたとえばポリエチレンフタレート(「PET」)で形成されている。伸張性のある可視光透明な金属層116(銀製)が、支持体112の頂部に設けられている。保護層122(架橋アクリレートポリマー製)が金属層116の頂部に設けられている。金属層116が、電極124を介して接地されている。
【0025】
図3において、EMIシールドとして使用可能な他のフィルムを広く130で示す。フィルム130はとフィルム110と似ているが、ベースコート層132を含んでいる。これは、支持体112と金属層116との間の架橋アクリレートポリマーから形成されている。
【0026】
図4において、EMIシールドとして使用可能なフィルムを広く140で示す。フィルム140はフィルム110と似ているが、支持体112の頂部にファブリー・ペロ干渉積層物114を含んでいる。積層物114には、第1の可視光透明な金属層116、架橋アクリレートポリマーで形成される可視光透明なスペーシング層118、および銀で形成される第2の可視光透明な金属層120が含まれている。金属層116および120と介在する架橋ポリマー層118との厚みは、金属層116および120が部分的に反射性で部分的に透過性となるように注意深く選択されている。スペーシング層118の光学的厚み(層の物理的な厚み×その面内の誘電率として定義される)は、透過光に対する所望のパス・バンドの中心を実現するようなものである。光は、波長がパス・バンド内にある場合には主に、薄い金属層116および120を通って透過する。光は、波長がパス・バンドを超えている場合には主に、薄い金属層116および120によって反射されるか、または相殺的な干渉によって打ち消し合う。またスペーシング層118は、第1の金属層116に対する保護層としても機能する。
【0027】
図5において、他の開示されたフィルムを広く150で示す。フィルム150はフィルム140に似ているが、ベースコート層132を支持体112と金属層116との間に含み、また第2の接地電極124を含んでいる。
【0028】
種々の可視光透明な支持体を用いることができる。好ましい支持体は、可視光透過が、550nmにおいて少なくとも約70%である。特に好ましい支持体は、フレキシブルなプラスチック材料に以下のものを含めたものである。熱可塑性フィルムたとえばポリエステル(たとえば、PET)、ポリアクリレート(たとえば、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高いまたは低い密度ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンジフルオリドおよびポリエチレンスルフィド;および熱硬化性フィルムたとえばセルロース誘導体、ポリイミド、ポリイミドベンゾオキサゾールおよびポリベンゾオキサゾール。また支持体は、以下のようなものとすることもできる。多層光学フィルム(「MOF」)、たとえば米国特許出願第2002/0154406A1号明細書に記載されているもの、またはMOFに少なくとも1つの架橋ポリマー層および金属層をコーティングしたもの、たとえば同時係属中の米国特許出願第10/222,473号明細書(2002年8月17日出願)および発明の名称「高度な熱ミラー・フィルム(ENHANCED HEAT MIRROR FILMS)」に記載されているものである。なお、これらの文献は本明細書において参照により援用されている。PETおよびMOFで形成された支持体が特に好ましい。好ましくは支持体の厚みは、約0.01〜約1mmである。しかし支持体は、かなり厚くても良い。これはたとえば、自立性の物品が必要な場合である。またこのような物品は、1つまたは複数の金属層および1つまたは複数の架橋−ポリマー層をフレキシブル支持体の頂部に形成して、およびフレキシブルな支持体を積層するか、そうでなければ、より厚くて、フレキシブルでないかまたはそれほどフレキシブルではない補助的な支持体(後に詳述する)に結合することによって作製することもでき、便利である。
【0029】
金属層116は、種々の材料から作製することができる。好ましい金属としては、銀、金、銅、ニッケル、およびクロム元素が挙げられ、銀が特に好ましい。ステンレス鋼などの合金、またはこれらの金属を互いにもしくは他の金属と混合させて含む分散物を用いることもできる。さらなる金属層を用いる場合、それらは互いに同じであっても良いし互いに異なっていても良い、また厚みが同じである必要はない。好ましくは、1つまたは複数の金属層は、面内方向に3%超だけ引き伸ばされても連続状態を保つほどに十分に厚く、またフィルムおよびフィルムを用いている物品が確実に、望ましい度合のEMIシールドおよび光透過を有するほどに十分に薄い。好ましくは、1つまたは複数の金属層の物理的な厚み(光学的な厚みではなく)は約3〜約50nm、より好ましくは約4〜約15nmである。通常は、1つまたは複数の金属層の形成は、前述の支持体上への堆積を、フィルム・メタライジング技術で用いられる技術たとえばスパッタリング(たとえば、カソードまたはプレーナ・マグネトロン・スパッタリング)、蒸着(たとえば、抵抗または電子ビーム蒸着)、化学気相成長法、プレーティングなどを用いて行なうことによって、なされる。
【0030】
第1の金属層の平滑性および連続性、ならびに支持体へのその接着力は、支持体の適切な前処理によって向上させることが好ましい。好ましい前処理方式としては、以下のものが挙げられる。反応性または非反応性の雰囲気が存在する中で支持体の電気放電前処理(たとえば、プラズマ、グロー放電、コロナ放電、誘電体バリア放電、または大気圧放電);化学的前処理;火炎前処理;または核生成層たとえば酸化物および合金を設けること(米国特許第3,601,471号明細書および同第3,682,528号明細書に記載)。これらの前処理によって、支持体の表面が、その後に設けられる金属層を受容することが、容易に確実にできる。プラズマ前処理が特に好ましい。さらに特に好ましい前処理方式としては、支持体に無機または有機のベースコート層たとえば前述の層132をコーティングすることが挙げられ、その後に任意に、プラズマまたは前述した他の前処理のうちの1つを用いた前処理をさらに行なうことができる。有機ベースコート層、特に架橋アクリレートポリマーに基づくベースコート層が、特に好ましい。最も好ましくは、ベースコート層の形成を、1つまたは複数の放射架橋可能なモノマー(たとえば、アクリレート・モノマー、任意に、適切な光開始剤と組み合わせる)のフラッシュ蒸発および蒸着と、その後に、その場架橋(たとえば、電子ビーム装置、UV光源、電気放電装置、または他の適切なデバイスを用いる)とによって行なう。これは以下の文献に記載されている。米国特許第4,696,719号明細書、同第4,722,515号明細書、同第4,842,893号明細書、同第4,954,371号明細書、同第5,018,048号明細書、同第5,032,461号明細書、同第5,097,800号明細書、同第5,125,138号明細書、同第5,440,446号明細書、同第5,547,508号明細書、同第6,045,864号明細書、同第6,231,939号明細書、および同第6,214,422号明細書;公開済みPCT出願国際公開第00/26973号パンフレット;D.G.ショー(D.G.Shaw)およびM.G.ラングロイス(M.G.Langlois)、「紙およびポリマー・ウェブをコーティングするための新しい蒸着法(A New Vapor Deposition Process for Coating Paper and Polymer Webs)」、第6回真空コーティング会議(6th International Vacuum Coating Conference)(1992);D.G.ショーおよびM.G.ラングロイス、「アクリレート薄膜を蒸着するための新しい高速法:更新(New High Speed Process for Vapor Depositing Acrylate Thin Films: An Update)」、真空コータ協会第36回年次技術会議録(Society of Vacuum Coaters 36th Annual Technical Conference Proceedings)(1993);D.G.ショーおよびM.G.ラングロイス、「蒸着アクリレート・コーティングを用いたメタライズド・フィルムのバリア特性向上(Use of Vapor Deposited Acrylate Coatings to Improve the Barrier Properties of Metallized Film)」、真空コータ協会第37回年次技術会議録(1994);D.G.ショー、M.ロエリグ(M.Roehrig)、M.G.ラングロイス、およびC.シーハン(C.Sheehan)、「蒸着アクリレート・コーティングを用いたポリエステルおよびポリプロピレン・フィルム基板表面の平滑化(Use of Evaporated Acrylate Coatings to Smooth the Surface of Polyester and Polypropylene Film Substrates)」、レッドテック(RadTech)(1996);J.アフィニト(J.Affinito)、P.マーチン(P.Martin)、M.グロス(M.Gross)、C.コロナド(C.Coronado)、およびE.グリーンウェル(E.Greenwell)、「光学用途における真空蒸着ポリマー/金属多層フィルム (Vacuum deposited polymer/metal multilayer films for optical application)」、固体薄膜(Thin Solid Films)270、43−48(1995);およびJ.D.アフィニト、M.E.グロス、C.A.コロナド、G.L.グラフ(G.L.Graff)、E.N.グリーンウェル、およびP.M.マーチン、「ポリマー−酸化物透明バリア層(Polymer−Oxide Transparent Barrier Layers)」、真空コータ協会第39回年次技術会議録(1996)。必要に応じて、ベースコートを、従来のコーティング方法たとえばロール・コーティング(たとえば、グラビア・ロール・コーティング)またはスプレイ・コーティング(たとえば、静電気スプレイ・コーティング)を用いて塗布した後に、架橋を行なうこと(たとえばUV放射によって)もできる。ベースコート層の望ましい化学的な組成および厚みは、一つには、支持体の種類に依存する。たとえばPET支持体の場合、ベースコート層は好ましくは、アクリレート・モノマーから形成され、通常は厚みが、単に数ナノメータ、最大で約2マイクロメータである。
【0031】
第1の金属層をベースコート層に接着させることは、接着促進剤または耐食添加剤をベースコート層に含めることによって、さらに改善することができる。この結果、ベースコート層と第1の金属層との間の界面の表面エネルギーまたは他の関連する特徴に、影響が出る場合がある。適切な接着促進剤または耐食添加剤としては、メルカプタン、チオール含有化合物、酸(たとえばカルボン酸または有機リン酸)、トリアゾール、染料および潤滑剤などが挙げられる。エチレングリコール・ビス−チオグリコレート(米国特許第4,645,714号明細書に記載)が、特に好ましい添加剤である。添加剤は好ましくは、第1の金属層の過度な酸化または他の劣化を引き起こすことなく、望ましい度合いの接着力増加が得られるほどに十分な量で存在する。
【0032】
架橋したポリマーの層が、第1金属層の上に設けられていて、他の金属層がない場合には、保護用耐食性トップコート122として機能し、さらなる金属層が用いられている場合には、保護層およびスペーシング層たとえば層118として機能する。積層物が2つ、3つ、または4つの金属層を含むことによって、ある用途に対しては望ましい特徴が得られる。積層物が2〜4つの金属層を含む場合、各金属層が架橋ポリマー層を有し、架橋ポリマー層は金属層の各面に隣接していることが、特に好ましい。ファブリー・ペロ光学干渉積層物を含む典型的なフィルムが、以下の文献に記載されている。同時係属中である米国特許出願第10/222,466号明細書(2002年8月17日出願)、発明の名称「ポリマー−金属の赤外線干渉フィルタ(POLYMER−METAL INFRARED INTERFERENCE FILTER)」(この文献は本明細書において参照により取り入れられている)、および前述した同時係属中の米国特許出願第10/222,473号明細書。金属層間に架橋ポリマーのスペーシング層を用いることによって、フィルムおよびその金属層がより容易に伸張性になると同時に、金属層へのダメージが減る。
【0033】
架橋ポリマー層は、種々の有機材料から形成することができる。好ましくはポリマー層は、第1の金属層の頂部に、その場で架橋する。必要に応じて、ポリマー層を、従来のコーティング方法たとえばロール・コーティング(たとえば、グラビア・ロール・コーティング)またはスプレイ・コーティング(たとえば、静電気スプレイ・コーティング)を用いて塗布した後に、架橋を行なうこと(たとえばUV放射によって)こともできる。最も好ましくは、ベースコート層132に対して前述したように、ポリマー層の形成を、モノマーのフラッシュ蒸発、蒸着および架橋によって行なう。揮発可能な(メタ)アクリレート・モノマーがこのような方法で用いるには好ましく、揮発可能なアクリレート・モノマーが特に好ましい。好ましい(メタ)アクリレートは、分子重量が約150〜約600であり、より好ましくは約200〜約400である。他の好ましい(メタ)アクリレートは、分子量とアクリレート官能基数との割合値が分子あたり、約150〜約600g/モル/(メタ)アクリレート基であり、より好ましくは約200〜約400g/モル/(メタ)アクリレート基である。フッ素化(メタ)アクリレートを、より高い分子量範囲または割合で用いることができ、たとえば、約400〜約3000分子量または約400〜約3000g/モル/(メタ)アクリレート基である。コーティング効率は、支持体を冷却することによって改善することができる。特に好ましいモノマーとしては、多官能基の(メタ)アクリレートが挙げられ、これを単独でまたは他の多官能基または単官能基の(メタ)アクリレートと組み合わせて用いる。たとえばヘキサンジオールジアクリレート、エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、シアノエチル(モノ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベータ−カルボキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジニトリルアクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ニトロフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2、2、2−トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、1、6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、ナフスロキシエチルアクリレート、IRR−214サイクリックなジアクリレート(UCBケミカルズ(UCB Chemicals)より)、エポキシアクリレートRDX80095(ラッド・キュア社(Rad−Cure Corporation)より)、およびこれらの混合物である。他の種々の硬化可能な材料を、架橋ポリマー層に含めることができる。たとえば、ビニールエーテル、ビニールナフチレン、アクリロニトリル、およびこれらの混合物である。架橋ポリマー層の物理的な厚みは、一つには、その屈折率に依存し、一つには、フィルムの所望の光学的な特徴(たとえば、フィルムにさらなる金属層が含まれているかどうか)に依存する。ファブリ・ペロ積層物を含む赤外線阻止EMIシールド・フィルムで用いる場合、架橋ポリマー層は通常、屈折率が約1.3〜約1.7であり、好ましくは光学的な厚みが約75〜約350nm、より好ましくは約100〜約275nmであり、対応する物理的な厚みは約45〜約270nm、より好ましくは約60〜約210nmである。
【0034】
架橋ポリマー層の平滑性および連続性と第1の金属層に対するその接着力とを好ましくは、架橋ポリマー層を設ける前に第1の金属層を適切に前処理することによって、または適切な添加剤を架橋ポリマー層に含めることによって、強化する。好ましい前処理としては、前述した支持体前処理が挙げられる。第1の金属層のプラズマ前処理が特に好ましい。架橋ポリマー層に対する好ましい添加剤としては、前述したベースコート層添加剤が挙げられる。
【0035】
さらに設ける任意の金属層の平滑性および連続性ならびにその下の架橋ポリマー層に対するその接着力は好ましくは、さらに設ける金属層を設ける前に架橋ポリマー層を適切に前処理することによって、または適切な添加剤を架橋ポリマー層に含めることによって向上させる。好ましい前処理としては、前述した支持体の前処理が挙げられ、架橋ポリマー層のプラズマ前処理が特に好ましい。架橋ポリマー層に対する好ましい添加剤としては、前述したベースコート層添加剤が挙げられる。
【0036】
驚くべきことに、発明者らがさらに見出したところによれば、前述した前処理の一方または両方を用いた場合、および前述したベースコート層の添加剤の1つまたは複数を、スペーシング層を形成するために用いられるモノマー混合物内に取り入れた場合には、電流の影響下での腐食に対する金属層の抵抗が著しく向上する。プラズマ処理が好ましい前処理であり、窒素プラズマが特に好ましい。エチレングリコール・ビス−チオグリコレートが、モノマー混合物内に取り入れるには好ましい添加剤である。
【0037】
種々の機能的な層またはコーティングを、EMIシールド・フィルムに加えることで、その物理的または化学的な特性を変えるかまたは向上させることが、特にフィルムの表面において可能である。このような層またはコーティングとしては、たとえば以下のものを挙げることができる。フィルム製造中のフィルムの扱いを容易にするための低摩擦コーティングまたはスリップ粒子;拡散特性をフィルムに加えるための、またはフィルムを他のフィルムまたは表面に隣接して配置したときの浸潤性またはニュートン・リングを防止するための粒子;EMIシールド・フィルムを情報ディスプレイの表面に対して設けたときのグレアを防止するための反射防止層;帯電防止コーティング;耐磨耗性またはハードコート材料;耐曇性材料;磁気または光磁気コーティングまたはフィルム;粘着剤たとえば感圧性粘着剤またはホット・メルト粘着剤;隣接層に対する接着を促進するためのプライマ;フィルムを粘着剤ロール形状で用いる場合に使用する低接着バックサイズ材料;液晶パネル;エレクトロクロミックまたはエレクトロルミネセント・パネル;写真乳剤;プリズム・フィルムおよびホログラフィ・フィルムまたは画像。さらなる機能的な層またはコーティングは、たとえば、公開済みPCT出願国際公開第97/01440号パンフレット、国際公開第99/36262号パンフレット、および国際公開第99/36248号パンフレットに記載されている。また機能的な層またはコーティングとして、耐破損性、耐侵入性、または耐穿孔裂けフィルムおよびコーティング、たとえば、公開済みPCT出願国際公開第01/96115号パンフレットに記載された機能的な層を挙げることができる。さらなる機能的な層またはコーティングとして、振動減衰フィルム層たとえば公開済みPCT出願国際公開第98/26927号パンフレットおよび米国特許第5,773,102号明細書に記載されているもの、および保護を与えるためのバリア層、または液体たとえば水もしくは有機溶媒に対するフィルムの透過性特性、または気体たとえば酸素、水蒸気もしくは二酸化炭素に対するフィルムの透過性特性を変えるためのバリア層を、挙げることができる。これらの機能的なコンポーネントを、EMIシールド・フィルムの最も外側の層の1つまたは複数の中に取り入れることができ、または別個のフィルムもしくはコーティングとして設けることができ、または補助的な支持体中に含めることができる。
【0038】
用途によっては、EMIシールド・フィルムの外観または性能を変えることが望ましい。これはたとえば、着色されたフィルム層をフィルムに積層することによって、色素性コーティングをフィルム表面に塗布することによって、または染料または顔料を、フィルムを作るために用いられる材料の1つまたは複数の中に含めることによって行われる。染料または顔料は、1つまたは複数の選択された領域のスペクトルを吸収することができ、たとえば赤外線、紫外線、または可視スペクトルの部分である。染料または顔料を用いて、フィルムの特性を補足することができる。これは特に、フィルムが一部の周波数を透過して他を反射する場合である。EMIシールド・フィルム中で用いることができる特に有用な色素性層は、公開済みPCT出願国際公開第2001/58989号パンフレットに記載されている。この層を、フィルム上の表面薄層として、積層し、押し出しコーティングし、または同時押し出し成形することができる。顔料の充填レベルを、約0.01重量%と約1.0重量%との間で変えることで、可視光の透過を要望どおりに変えることができる。またUV吸収性カバー層を追加することも、UV放射にさらされたときに不安定な場合があるフィルムの内側の任意の層を保護するために、望ましい可能性がある。またEMIシールド・フィルムを、たとえばインクまたは他の印刷された印、たとえば製品識別、方位情報、広告、警告、装飾、または他の情報を表示するために用いられるものによって、処理することもできる。種々の技術を用いて、EMIシールド・フィルム上に印刷することができる。たとえば、スクリーン・印刷、インクジェット・印刷、熱転写印刷、凸版印刷、オフセット・印刷、フレキソ印刷、点描印刷、レーザ・印刷など。また種々のタイプのインクを用いることができる。たとえば、一成分および二成分インク、酸化性の乾燥およびUV乾燥インク、溶解インク、分散インク、および100%インク・システム。
【0039】
EMIシールド・フィルムを配向して任意にヒート・セットすることを、フィルムが非平面の基板に実質的な皺寄せなく順応することを助けるのに十分な条件の下で、行なうことができる。これは、EMIシールド・フィルムが積層される非平面基板の形状または曲率が既知である場合、特に積層物の厳密な複合曲率が既知である場合に、特に有用である。各面内方向におけるEMIシールド・フィルムまたは基板の収縮を別個にコントロールすることによって、EMIシールド・フィルムが、積層、特にニップ・ロール積層の間に、制御された方法で縮むようにすることができる目標とする収縮特性を有する。MOF支持体の製造技術に関するさらなる詳細は、公開済みPCT出願国際公開第01/96104号パンフレットに記載されている。
【0040】
図6Aに、開示されたフィルムの製造に好都合に使用できる装置180を示す。電源供給されるリール181aおよび181bによって、支持ウェブ182が装置180の中を前後に移動する。温度制御された回転ドラム183aおよび183b、およびアイドラ184a、184b、184c、184d、および184eによって、ウェブ182が運ばれて、金属スパッタリング・アプリケータ185、プラズマ前処理器186、モノマー蒸発器187、およびEビーム架橋装置188を通り過ぎる。液体モノマー189が、リザーバ190から蒸発器187に供給される。装置180の中を通る複数のパスを用いて、連続的な層を、ウェブ182に設けることができる。装置180を、適切なチャンバ(図6Aでは図示せず)内で密閉して、真空状態に保つかまたは適切な不活性雰囲気を与えることで、酸素、水蒸気、ホコリおよび他の大気中の汚染物質が、種々の前処理、モノマー・コーティング、架橋およびスパッタリング・ステップに干渉することを、防ぐことができる。
【0041】
EMIシールド・フィルムの1つまたは複数の金属層を好ましくは、図2の少なくとも1つの接地電極たとえば電極124に接続する。接地電極を金属層に接続することは、EMIシールド・フィルムを、他の材料またはEMIシールドが必要なデバイスに結合する前に行なうこともできるし、または後に行なうこともできる。接地電極の形成は、マスキング、プレーティング、および当業者に良く知られた他のプリント回路技術を用いて行なうこともできるし、または金属ストリップ、ワイヤ、伝導性塗料、および同様に当業者に良く知られた他の接続部を用いて行なうこともできる。3M(商標)の伝導性テープ9703および9713(3M、セントボール、ミネソタ州(St.PaulMN))が、特に好ましい接地電極である。これらのテープには、最も外側の架橋ポリマー層に浸透する繊維または粒子が含まれ、その下の金属層に対する電気的な接続部を与える。2つ以上の金属層を直列または並列に接続する場合には、このようなテープとともに適切なバスバーを用いることができる。
【0042】
他の実施形態では、金属層を接地する必要がない。それほど好ましくはないのだが、このような実施形態では、反射によってEMIシールドが得られ、比較的低いレベルのEMIシールドが許容され得る用途に用いることができる。このような未接地のEMIシールド・フィルムに対する用途としては、試験設備、セキュリティ/安全部屋、およびアンテナ・コンポーネントが挙げられる。
【0043】
EMIシールドされた物品においては、好ましくは大部分、最も好ましくは全部のEMIシールド・フィルムの周囲が、接地電極に接続されている。接地電極は普通は、EMIシールドが必要なデバイスに、またはデバイスを囲むハウジング(たとえば、非透明なハウジング)に、接続または結合されている。
【0044】
EMIシールド・フィルムに複数の金属層が含まれている場合には、1つまたは複数の層をEMIシールドに対して使用して、1つまたは複数の残りの層をEMIシールド以外の目的に対して用いることができる。これはたとえば、ヒーティング、侵入検出、タッチ検出、赤外線阻止、および装飾的または他の光学的な目的である。複数の金属層を含むヒーティング・フィルムは、同時係属中の米国特許出願第10/222,449号明細書(2002年8月17日出願)、発明の名称「フレキシブル電導性フィルム(FLEXIBLE ELECTRICALLY CONDUCTIVE FILM)」に記載されている。なお、この文献は本明細書において参照により援用されている。またEMIシールド・フィルムは、EMIシールドが要求されない目的に対して用いることもできる。これはたとえば、意図的なEMIシールドの役割がないヒーティング、侵入検出、タッチ検出、赤外線阻止、および装飾的または他の光学的な目的である。したがってEMIシールド・フィルムおよび物品に対する他の用途としては、電気的に加熱された物品、電極を含む物品、バリア物品、セキュリティ物品、装飾的な物品、およびナンバ・プレートが挙げられる。
【0045】
EMIシールド・フィルムおよび物品は、フレキシブルなものとすることもできるし、または自立性のものとすることもできる。自立性物品の作製は、フィルムを積層するかまたはそうでなければ適切な補助支持体または他の基板に結合することによって、より簡単に行なうことができる。典型的な補助支持体または基板材料としては、グレージング材料たとえばガラス(絶縁、焼き戻し、積層、焼きなまし、または熱強化されていても良いし、またシートおよび成形品などの形態であっても良い)、金属(積層、焼きなまし、または熱強化されていても良いし、また連続または穿孔シート、メッシュ、スラブ、および成形品などの形態であっても良い)、およびプラスチック(積層、焼きなまし、または熱処理されていても良いし、また連続または穿孔シート、織られたまたは不織のメッシュ、スラブ、および成形品などの形態であっても良い)が挙げられる。EMIシールド・フィルムは、非平面の構成の場合に、または非平面基板(特に複合曲率を有するもの)と関連している場合に、特に有用である。これにはたとえば、ガラス、金属、プラスチック材料たとえば前述の支持体材料および他の適切な材料から形成される非平面パネルまたは成形品などが含まれる。このような非平面の構成は多くの場合、EMIシールド・フィルムを意図的に変形させることによって得ることができる。略して、言葉「プリフォーム」を用いて、変形操作を施すことが意図されるEMIシールド・フィルムを具体化するEMIシールド・フィルムまたは物品を記述することができる。変形操作によってたとえば、プリフォームの少なくとも1つの表面を、EMIシールド・フィルムが、作製された当初に通常有する一様に滑らかな平面から、変形しても良い。変形操作によって通常、プリフォームの略滑らかな平面仕上げされた領域が、3次元特徴を有する領域に変わる。変形操作では、熱を用いて、プリフォームの作業用品質および他の測定値たとえば圧力、真空、成形、等を改善することができる。たとえば好ましい変形操作の1つにおいては、熱成形を用いる。これにはたとえば、種々の形態の真空または圧力成形/フォーミング、プラグ成形、射出成形等が含まれる。プリフォームを、非平面基板(たとえば、複合曲面状の基板)に、接着するか、この基板上で伸ばすかまたは他の方法で変形することができる。プリフォームを、エンボス加工するかまたは他の方法で意図的に作り直すことができる。またプリフォームを引っ張ることまたは伸ばすことを用いて、恒久的に変形された複合曲面状の領域を、プリフォームに与えても良い。当業者であれば、種々の他の作製技術を用いて意図的な変形をプリフォームに与えられることを、理解するであろう。
【0046】
変形には、比較的小さい変形、たとえばフィルムをエンボシングするときに遭遇するもの、より大きな規模の変形、たとえばフィルムを成形または熱成形するときに遭遇するものまでが含まれる。プリフォームは好ましくは、実質的なクラッキングまたは折り目づけを伴うことなく、非平面の構成を採用することができる。このように変形されたフィルムまたは物品は、種々の構成を有することができる。図6Bに、構成の一つを示す。図では、プリフォーム200に、第1の主要な表面202および第2の主要な表面204が含まれ、これらは、選択された領域206および208で変形されている。選択された領域206は、第1の主要な表面202内の凹部であり、選択された領域208は、第2の主要な表面208内の隆起した領域である。またこの場合にはこれらの2つの領域は一致する。領域206および208を囲むプリフォーム200の略滑らかな平面部分によって、未変形厚みtoが規定される。選択された領域206および208によって、変形厚みtfが規定される。場合によっては、比to:t1が少なくとも約1.1:1、より好ましくは少なくとも約1.5:1、さらにより好ましくは少なくとも約1.75:1、およびさらにより好ましくは少なくとも約2:1であることが望ましい場合がある。
【0047】
図6Cおよび図6Dに、より極端な変形結果を示す。物品210は、圧伸変形操作の例と考えることができる。物品210には、第1の主要な表面212および第2の主要な表面214が含まれるとともに、複数の選択された領域においてプリフォームが変形されて、窪んだ領域216および開口部220が第1の主要な表面212内に形成され、また隆起した領域218が第2の主要な表面214上に形成されている。窪んだ領域216には、開口部220、曲率半径が連続的に小さくなる曲面状領域222および224、および深く抜き出された側壁226が含まれている。変形は、窪んだ領域216(開口部220に渡って測定)の平均幅wと窪んだ領域216の平均深さd(第1の主要な表面212から測定)とのアスペクト比によって、特徴づけることができる。開口部220が非円形である場合は、幅wをその最も狭い寸法に渡って測定することが好ましい。ある場合には、窪んだ領域216のアスペクト比w:dが、約10:1以下、より好ましくは2:1以下、さらに好ましくは約1:1以下、さらに好ましくは約0.5:1以下であることが好ましい。変形の程度は、必要に応じて、絶対項で測定することができる。ある場合には、深さdが、少なくとも約0.1ミリメートル以上、より好ましくは少なくとも約1ミリメートル以上、さらにより好ましくは少なくとも約10ミリメートル以上であることが好ましい。深さdがプリフォームの厚みにほぼ等しいかそれを超える場所において、隆起した領域218が第2の主要な表面214上に形成される可能性が高くなることが理解される。
【0048】
第1の主要な表面212内に形成される窪んだ領域216の深さdを測定することは、第1の主要な表面が平面である場合に限定されない。図6Eを参照して、変形されたプリフォーム230が曲面状構成で示されている。プリフォーム230には、第1の主要な表面234上に形成された窪んだ領域232、第2の主要な表面236上の対応する隆起した領域238、小さい曲率半径の領域240および242、および深く抜き出された側壁244が含まれている。窪んだ領域232の深さdは好ましくは、第1の主要な表面234によって概ね規定される幾何学的な表面から測定され、通常はその幾何学的な表面からの最大深さである。
【0049】
EMIシールド・フィルムがポリマーのスペーシング層を第1および第2の金属層の間に含む場合には、スペーシング層の厚みは変形操作により小さくなっても良い。そういった場合、ポリマーのスペーシング層の厚みは、変形方法中に高レベルの歪みを受けた物品領域において概ね小さく、また変形方法中にほとんどまたは全く歪を受けなかった物品領域において概ね大きい。
【0050】
理論に縛られることは望まないが、開示された方法によって形成される物品が受ける変化は、方法の結果生じる構造に反映されるものと考えられる。熱可塑性基板、少なくとも1つの金属または金属合金層、および少なくとも1つの架橋ポリマー層を含む平面フィルムを、説明した方法であるエンボシング、延長、または熱成形等によって変形させて、湾曲状、曲面状、または複合曲面状の形状に合わせる。この方法の結果、金属または金属合金層を、ある領域において細長くしても良く、また他の領域において圧縮しても良い。普通測定される材料特性は、破壊までの伸びであり、これは、材料が凝集破壊(すなわち破損)を受ける前に、材料を引き伸ばすことができる量(歪みによって測定される)に相当する。変形方法中に層が圧縮されたか引き伸ばされたかの判断は、当初の平面フィルムの中立面に対する層の空間的な関係によって記述することができる。このことは、米国特許第4,888,061号明細書に記載されている。好ましくは、金属または金属合金層は、フィルムの中立面の付近に位置する。フィルムの中立面上に位置する材料は、変形の結果としての応力を受けず、またフィルムの結果である歪みを全く受けない。変形の相対的な方向に依存して、中立面の上方または下方に位置する材料層は、圧縮または伸張のいずれかを受ける。たとえば、前述したプリフォーム平面フィルムは一般的に、基板内に中立面を有し、金属または金属合金層および付随する透明な架橋ポリマー層は、この中立面からある距離のところに位置する。平面フィルムが変形されて、金属含有層が中立面と曲率半径の外側エッジとの間にきた場合、金属含有層は引き伸ばされる。逆に、金属含有層が中立面と曲率半径の内側エッジとの間にある場合、金属含有層は圧縮される。同様にして、平面フィルム内の各層の相対的な厚みは、層の形成が圧縮下なのかまたは張力下(引き伸ばしを起こす)なのかに依存して、当初の厚みに対して変化し得る。金属含有層の破壊までの伸びは、層が圧縮されているか引き伸ばされているかに依存する。当初の平面フィルムの破壊までの伸びと比べて、変形方法中に引き伸ばされた金属含有層の破壊までの伸びは小さい(すなわち凝集破壊の前に層が耐えられる張力は非常に小さい)。加えて、フィルム内の各層の厚みは、この変形の間に小さくなる可能性がある。対照的に、金属含有層が圧縮されている場合、その破壊までの伸びは平面フィルムの場合よりも大きい。加えて、フィルム内の各層の厚みは、この変形の間に大きくなる可能性がある。
【0051】
図6Fに、プリフォームを波形成形するためのデバイス250の部分図を示す。波形整形は、第1および第2の略円筒形の波形成形部材またはローラ252および254を用いて行なう。波形成形部材またはローラ252および254はそれぞれ、軸と離間に配置された複数の尾根部分256および258とを有し、尾根部分256および258はそれぞれ、波形成形部材252および254の周囲を規定する。尾根部分256および258間のスペースは、プリフォーム260を、波形成形部材252および254間の噛み合い関係の中で受け取るように適合されている。また装置には、波形成形部材252または254の少なくとも一方を回転させるための適切なデバイス、およびプリフォーム260を供給するかまたは取り出すための適切なデバイスも含まれており、こうしてプリフォーム260が、第1の波形成形部材252の周囲によって定義される形状に合うように概ね変形されるようになっている。3次元的な構成、およびある場合には結果として生じる波形成形されたフィルムの装飾的外観に影響するプロセスパラメータとしては、波形成形ローラの温度、波形成形ローラ間のニップ圧力、波形成形ローラの直径、線速度、および尾根部分256および258の形状およびスペーディングが挙げられる。
【0052】
図6Gに、このような波形成形方法を用いて生成可能な波状構造280を示す。波形は、アーチ形部分282、谷形部分284、およびアーチ形部分を谷形部分に接続する中間部分286および288によって、特徴づけられる。図6Gに示す波形は正弦曲線の形状であるが、波形成形方法によって他の多くの所望する形状の波形、たとえば図6Hに示す波形成形された物品290における波形を、生成できることを認識いただきたい。加えて、波形成形は、プリフォームの全幅を広げる必要はなく、またプリフォームの幅に沿って延びる必要もない。むしろ波形成形は、任意の所望する長さに対して、およびプリフォームの平面または全体的な曲率における任意の方向に、延びても良い。
【0053】
当業者であれば、多種多様のプリフォームおよび変形技術を用いて、多種多様の恒久的に変形されたフィルムおよび物品を得ても良いことが認識される。
【0054】
完成したデバイス内のまたは密閉領域に隣接するEMIシールド・フィルムまたは物品の組み立てを、当業者に良く知られた技術を用いて行なうことができる。たとえば、EMIシールド・ウィンドウに対する代表的な構成上の詳細を、以下の文献で見ることができる。シールドされたエンクロージャのデザイン:EMIを防止するための費用対効果の高い方法(The Design of Shielded Enclosures: Cost−Effective Methods to Prevent EMI)、ルイス.T.グネッコ(Louis T. Gnecco)著、(ニューネス出版:バターワース−ハイネマン(Newnes Publishing:Butterworth−Heinemann)、ボストン(Boston)、2000)。さらなるEMIシールド材料たとえばガスケット、テープ、織物、発砲体または他の材料を、EMIシールド・フィルムまたは物品と組み合わせて用いても良い。このような他の材料を用いるための代表的なEMIシールドの方程式および技術は、上記で引用された文献に記載されている。電磁干渉および互換性に関するハンドブック・シリーズ(A Handbook Series on Electromagnetic Interference and Compatibility)(インターフェレンス・コントロール・テクノロジ社(Interference Control Technologies、Inc.)、ガイネスビレ、バージニア州(Gainesville、VA)、1988)において、特に第3巻:電磁シールド(Electromagnetic Shielding)、ドナルド.R.J.ホワイト(Donald R.J.White)およびミシェル・マーディギアン(Michel Mardiguian)著;第8巻:EMI制御方法論および手順(EMI Control Methodology and Procedures)、ミシェル・マーディギアン著;および第8章:電気工学における電磁気学的互換性(Electromagnetic Compatibility for Electrical Engineering)、B.A.オースチン(B.A.Austin)著、電気工学の参考書(Electrical Engineer's Reference Book)、G.R.ジョーンズ(G.R.Jones)、M.A.ラーフトン(M.A.Laughton)、およびM.G.セイ(M.G.Say)著、(バターワース−ハイネマン(Butterworth−Heinemann)、オックスフォード、英国(Oxford,UK)、1993)。代表的なデバイスとしては、機器、ディスプレイ(たとえば、プラズマ・ディスプレイ)、イメージング機器(たとえば、磁気共鳴イメージング機器)、コンピュータ機器(たとえば、サーバ)、通信機器(たとえば、携帯電話)、医療用デバイスなどが挙げられる。代表的な密閉領域としては、部屋(たとえば、安全な会議室および試験機器設備)、送信設備(またはその一部)、キャビネット、テントなどが挙げられる。
【0055】
EMIシールド・フィルムおよび物品の好ましい実施形態によって、光学的に透明な、フレキシブルまたは伸張性のシールドが得られる。このシールドによって、電磁干渉を起こす可能性があるかまたは電磁干渉に敏感な電子機器および他のデバイスの外へまたはその中へ、不要な電磁エネルギーが透過することを防ぐことができる。これらの好ましいEMIシールド・フィルムおよび物品によって、典型的な市販の光学的に透明なEMIシールド・フィルムよりも劇的に良好な機械的耐久性および腐食抵抗が得られる一方で、匹敵する光学的透明度およびシールド能力が得られる。驚くべきことに、これらの好ましいEMIシールド・フィルムは、引き伸ばされ、曲げられ、または折り目をつけられても、そのEMIシールド能力を保持する。EMIシールド・フィルムは好ましくは、その本来の長さの5%、10%、またはそれ以上、張力モードで歪んでも、そのEMIシールド能力を保持する。より好ましくは、EMIシールド・フィルムは、本来の長さの20%、30%、40%、またはさらに50%またはそれ以上、張力モードで歪んでも、そのEMIシールド能力を保持する。これは予期しない結果である。と言うのは、市販のEMIシールド・フィルムは、10%およびさらに5%よりもはるかに下の歪みにおいて、たとえば2%歪みにおいて、そのEMIシールド能力を失うからである。EMIシールド・フィルムは、好ましくは45度で曲げられても、より好ましくは90度で曲げられても、そのEMIシールド能力を保持する。最も好ましくは、EMIシールド・フィルムは、180度で曲げられるかまたは折り目をつけられても、そのEMIシールド能力を保持する。これは予期しない結果である。と言うのは、市販のEMIシールド・フィルムは、曲げられたときまたは粗く扱われたときでさえ、そのEMIシールド能力を失うからである。
【0056】
種々のEMIシールド・フィルムを評価するために、以下の試験が用いられた。
【0057】
腐食試験
2本のストリップ25.4mm幅×約254〜305mm長を、フィルム・サンプルの中心から切り取った。ストリップを、室温で20%KCl溶液を含むジャー内に入れて、各ストリップの約150〜200mmが塩溶液に浸かるようにした。ジャーの頂部をジャーにネジ止めして、塩溶液が蒸発しないようにした。15分間の浸漬の後、ストリップを取り出して、乾燥ペーパー・タオル上の支持体面の上に置き、ティッシュまたはペーパー・タオルを用いてストリップ幅に沿って拭いた。中間圧力を印加しながら、拭いた。次にストリップを冷水で洗浄して表面から塩を取り除いた後、フィルム表面の外観を観察した。外観の等級は、ストリップを拭いた後に取り除かれた金属層の量を視覚的に評価したものに基づいており、本来の金属層領域の割合として表現される。
【0058】
電流下での腐食試験
2本のストリップ25.4mm幅×203mm長を、フィルム・サンプルの中心から切り取った。ストリップの狭い方の端部を、両面について、22−201番の銀塗料(カティ社(Katy Company))を用いて塗装した。銀塗料が乾燥した後に、塗装されたエッジ上に銅を巻き付けて、耐久性のある電極をストリップの各端部に形成した。ワニ口クリップを用いて、電源を銅電極に接続した。4.0ボルトの電圧をコンタクト間に印加して、結果として生じる電流を測定および記録した。次に、各ストリップの中心付近の125〜150mm長の部分を、室温で20%KCl溶液中に沈めた。浸漬時間が経過する間、電流を測定および記録した。
【0059】
接着試験
四角形:約254mm幅×約254mm長を、フィルム・サンプルの中心から切り取った。マスキング・テープおよびフィラメント・テープの25.4mm幅×178mm長の片をそれぞれ、フィルムに、MDおよびTDの両方向において貼り付けて、2.3kgローラを用いて押圧した後、1週間エージングした。接着試験の等級は、テープを剥がした後に残っている金属層の量を視覚的に評価したものに基づいており、本来の金属層領域の割合として表現される。
【0060】
伝導性対歪み試験
EMIシールド・フィルムがそのEMIシールド能力を失うであろう歪みレベルの概算的な測定として、EMIシールド・フィルム・サンプルをSINTECH(商標)200/S張力テスタ(インストロン社(Instron Corp.))を用いて引き伸ばして、フィルムが電気を流すのを止めるであろうパーセント歪みを決定した。電流下での腐食試験で用意したストリップを張力テスタの掴み具内にクランプした後、ワニ口クリップを用いて電源を銅電極に接続した。ゲージ長さとして101.6mm、およびクロスヘッド速度として25.4mm/分を用いて、4ボルトの一定電圧をストリップに供給して、電流フローを、%歪みに対して測定および記録した。
【0061】
シート抵抗試験
EMIシールド・フィルムを、シート抵抗、または表面抵抗率について評価した。その際、非接触伝導性測定デバイス(モデル717Bベンチトップ・コンダクタンス・モニタ(Benchtop Conductance Monitor)、デルコム・インスツルメンツ社(Delcom Instruments Inc.)を用いた。
【0062】
太陽熱ゲイン係数およびシェーディング係数
値Teを、試料を透過した太陽エネルギー(250nm〜2500nm)を、全入射太陽エネルギーで割ったものの比(パーセントで表わす)で定義する。値Aeを、試料が吸収した太陽エネルギー(250nm〜2500nm)を、全入射太陽エネルギーで割ったものの比(パーセントで表わす)で定義する。太陽特性を、エア・マスとして1.5を用いてASTM E891からの太陽放射度データを用いて、計算する。太陽熱ゲイン係数(SHGC)を以下のように計算する。
SHGC=Te+0.27(Ae)
シェーディング係数(SC)を、所定のグレージングを通過した太陽熱ゲイン係数と、標準の3.2mm厚ウィンドウ・ガラスの単一のペインを通過した太陽熱ゲイン係数との比として定義し、以下のように計算する。
SC=SHGC/87.0
【0063】
EMIシールド強度
EMIシールド強度の評価を、ASTM D−4935−99に基づいて、同軸のTEMセルを用いた遠距離場型@試験によって行なった。結果報告は、デシベル(dB)で行なう。
【0064】
まずEMIシールド・フィルムおよび物品の説明を、以下の非限定の実施例を参照して行なう。この実施例では、すべての部およびパーセンテージは、特に断りのない限り、重量である。
【実施例】
【0065】
実施例1
(層1)ほぼ300メートル長のロールで0.05mm厚×508mm幅のPET支持体(メリネックス(MELINEX)(商標)453番フィルム、デュポン・テイジン・フィルムス(DuPont Teijin Films))を、図6Aに示したものに似た真空チャンバを巻くために、ロールに積めた。真空チャンバ内の圧力を、3×10-4トールまで下げた。支持体を連続してプラズマで前処理してアクリレートでコーティングすることを、ウェブ速度が36.6m/分の1つのパスの間に行なった。プラズマ前処理では、クロム・ターゲットと、70sccmの窒素ガス流を伴う窒素雰囲気の下で1500ワット・パワー(429ボルトおよび3.5アンペア)で動作する非平衡なdcマグネトロンとを用いた。アクリレート・コーティングでは、IRR214アクリレート(UCBケミカルズ)およびラウリルアクリレートの50:50混合物を1時間の間脱ガスしたものを用いた。脱ガスは、液体モノマー混合物の容器をベル・ジャー内に置いて、圧力をほぼ1ミリトールまで下げることによって行なった。脱ガスされたモノマーを、ポンプによって2.35ml/分の流量で、超音波アトマイザを通して、274℃に維持された蒸発チャンバまで流した。ドラム温度として−18℃を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた後、電子ビームによる架橋を、7.59kVおよび2.0ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行なった。
【0066】
(層2)ウェブの方向を反対にした。再び36.6m/分で動作させて、アクリレート表面をプラズマ処理した後、マグネトロン・スパッタリングした銀によってコーティングした。プラズマ前処理は前述と同じであるが、413ボルトおよび3.64アンペアで行なった。銀のスパッタリングは、10,000ワット・パワー(590ボルトおよび16.96アンペア)、ドラム温度として25℃、および90sccmのアルゴン・ガス流を伴うアルゴン雰囲気で行なった。
【0067】
(層3)ウェブの方向を再び反対にした。再び36.6m/分で動作させて、架橋したスペーシング層を、前述したモノマー混合物を用いて形成した。しかしモノマー堆積前の銀表面のプラズマ前処理は行なわなかった。ドラム温度として−17℃および前述した他のモノマー堆積条件を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた後、電子ビームによる架橋を、7.8kVおよび3.8ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行なった。
【0068】
(層4)ウェブの方向を再び反対にした。再び36.6m/分で動作させて、架橋したスペーシング層をプラズマ前処理した後、マグネトロン・スパッタリングした銀によってコーティングした。プラズマ前処理は前述と同じであるが、429ボルトおよび3.5アンペアを用いた。銀のスパッタリングは前述と同じであるが、590ボルトおよび16.94アンペアで行ない、ドラム温度として22℃を用いた。
【0069】
(層5)ウェブの方向を再び反対にした。保護層の形成を、前述したモノマー混合物を用いて行なった。しかしモノマー堆積前の銀表面のプラズマ前処理は行なわなかった。ドラム温度として−17℃および前述した他のモノマー堆積条件を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた後、電子ビームによる架橋を、10.11kVおよび3.8ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行なった。
【0070】
図7に、結果として生じる5つ層の赤外線阻止アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレートの光学積層物の光学特性を示す曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過(Tvis)および反射を示す。光学的なモデリングを用いて、およびブラッガーマン密度として銀に対して0.97を仮定して、5つの層に対して計算された厚みは、120nm(アクリレート層1)/12nm(Ag層2)/85nm(アクリレート層3)/12nm(Ag層4)/120nm(アクリレート層5)であった。
【0071】
実施例2
実施例1の方法を用いて、PET支持体を、5つの層アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物によって覆った。しかしプラズマ前処理は、金属層の頂部および底部の両方に対して行なった。個々の層の違いは、以下の通りであった。
【0072】
(層1)支持体のプラズマ前処理は、前述と同じであるが、1000ワット・パワー(402ボルトおよび2.5アンペア)および窒素ガス流として102sccmで行なった。モノマー流量は2.45ml/分であり、蒸発チャンバ温度は276℃であった。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結することを、−21℃のドラム温度を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.0kVおよび6.5ミリアンペアで動作させた。
【0073】
(層2)プラズマ前処理を、1000ワット・パワー(309ボルトおよび3.34アンペア)および窒素ガス流として90sccmで行なった。銀のスパッタリングは、570ボルトおよび17.88アンペア、ドラム温度として21℃、およびアルゴン・ガス流として93.2sccmで行なった。
【0074】
(層3)銀表面のプラズマ前処理を、スペーシング層の堆積の前に行なった。プラズマ前処理では、クロム・ターゲットおよび1000ワット・パワー(308ボルトおよび3.33アンペア)を用いた。ドラム温度として−23℃を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた後、電子ビームによる架橋を、8.0kVおよび6.0ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行なった。
【0075】
(層4)プラズマ前処理を316ボルトおよび3.22アンペアで行ない、窒素ガス流量は90sccmであった。銀のスパッタリングを、567ボルトおよび17.66アンペア、ドラム温度として20℃、およびアルゴン・ガス流として95.5sccmで行なった。
【0076】
(層5)銀表面のプラズマ前処理を、保護層の堆積の前に行なった。プラズマ前処理は、層3の場合と同じであった。ドラム温度として−23℃を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた後、電子ビームによる架橋を、8.0kVおよび6.2ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行なった。
【0077】
図8に、結果として生じる5層の赤外線阻止アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物の光学特性を示す。曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過および反射を示す。光学的なモデリングを用いて、およびブラッガーマン密度として銀に対して0.97を仮定して、5つの層に対して計算された厚みは、120nm(アクリレート層1)/9nm(Ag層2)/95nm(アクリレート層3)/9nm(Ag層4)/120nm(アクリレート層5)であった。
【0078】
実施例3〜5
実施例2の方法を用いて、5層の赤外線阻止アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物の銀層の厚みを変えたものを、PET支持体上に形成した。結果として生じるフィルムの評価を、外観、透過(Tvis)、反射、太陽熱ゲイン係数(SHGC)、シェーディング係数(SC)、およびシート抵抗率に対して行なった。下表1に、処理条件および評価結果を示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果によれば、ライン速度を変えることによって、金属層の厚みが変わることが分かる。フィルムとしては、Tvisが72%と高くシート抵抗が3.9Ω/スクエアと低いものが得られた。また、それぞれ実施例4および5のフィルムである2つのサンプルの評価も、伝導性対歪み試験を用いて行なった。図9および図10に、結果をそれぞれ示す。すべてのフィルム・サンプルにおいて、電流が、50%以上の歪みにおいて流れた。
【0081】
比較例1
透明な銀層および酸化インジウム無機誘電体をベースにした市販の製品(XIR(商標)75フィルム、サウスウォール・テクノロジ社(Southwall Technologoes,Inc.))の評価を、伝導性対歪み試験を用いて行なった。サンプルの破損が、わずか1%の歪みを加えたときに起きた。
【0082】
実施例6〜11
実施例3〜5の方法を用いて、5層の赤外線阻止アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物を、PET支持体(実施例6〜9)または復屈折の多層光学フィルム支持体(3M(商標)太陽光反射フィルム、41−4400−0146−3、実施例10〜11)上に形成し、任意にプラズマ後処理を行なった。層5の厚みを、以下に示すように堆積条件を変えることによって、変化させた。結果として生じるフィルムの評価を、外観、透過、反射、太陽熱ゲイン係数、シェーディング係数およびシート抵抗率に対して行なった。表2に、処理条件および評価結果を示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2の結果によれば、2つの異なる基板を用いて、保護トップコートの厚みを変え、トップコートの任意のプラズマ後処理を用いていることが示されている。フィルムとしては、Tvisが約73%と高くシート抵抗が3.9Ω/スクエアと低いものが得られた。また実施例11のフィルムの2つのサンプルの評価も、伝導性対歪み試験を用いて行なった。図11に結果を示す。両方のフィルム・サンプルにおいて、電流が、50%以上の歪みにおいて流れた。
【0085】
実施例12
実施例2の方法を用いて、PET支持体を、5つの層アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物によって覆った。しかしプラズマ前処理は、金属層の頂部および底部の両方に対して行なった。個々の層の違いは、以下の通りであった。
【0086】
(層1)支持体のプラズマ前処理は1000ワット・パワーであったが、322ボルト、3.15アンペア、および窒素ガス流として70sccmを用いた。モノマー流量は2.65ml/分であり、蒸発チャンバ温度は274℃であった。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結することを、−20℃のドラム温度を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.04kVおよび5.7ミリアンペアで動作させた。
【0087】
(層2)プラズマ前処理は1000ワット・パワーであったが、378ボルト、3.09アンペア、および窒素ガス流として70sccmを用いた。銀のスパッタリングは、547ボルトおよび18.36アンペア、ドラム温度として26℃、およびアルゴン・ガス流として70sccmで行なった。
【0088】
(層3)プラズマ前処理は1000ワット・パワーであったが、327ボルト、3.1アンペアを用いた。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結することを、−19℃のドラム温度を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.04kVおよび6.3ミリアンペアで動作させた。
【0089】
(層4)プラズマ前処理は1000ワット・パワーであったが、328ボルト、3.07アンペア、および窒素ガス流量として70sccmを用いた。銀のスパッタリングは、546ボルトおよび18.34アンペア、ドラム温度として28℃、およびアルゴン・ガス流として70sccmで行なった。
【0090】
(層5)プラズマ前処理は1000ワット・パワーであったが、359ボルト、2.82アンペアを用いた。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結することを、−18℃のドラム温度を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.04kVおよび4.6ミリアンペアで動作させた。
【0091】
図12に、結果として生じる5層の赤外線阻止アクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物の光学特性を示す。曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過および反射を示す。フィルムのTvisは71.5%であった。次にフィルムを切断して、30.5cm×2.54cmのストリップにした。エッジの塗装を、銀伝導性塗料(シルバー・プリント(SILVER PRINT)(商標)、O.K.トーセン社(O.K.Thorsen Inc.)を用いて行なった。2.54cm×2.54cmの銅箔を、ストリップの対向するそれぞれの狭い端部において折り重ね、テスト・リードにワニ口クリップを取り付けたものを用いて、0−20ボルト電源(モデル6253AデュアルDC、ヒューレット・パッカード社(Hewlett Packard,Inc.))に接続した。電圧をストリップに印加して、電流およびストリップ温度の測定を、時間の関数として行なった。ストリップ温度の増加が止まったら、より高い電圧を印加した。下表3に、結果を示す。
【0092】
【表3】
【0093】
表3の結果によれば、フィルムは、非常に高いパワー密度および非常に高い温度に、回路が故障することなく、耐えることができる。ストリップを冷却させた後に、16ボルトをストリップに印加した結果、電流として0.27アンペアが測定された。フィルムは、触ると暖かく感じられるようになった。次にフィルムを、カウンター・トップのエッジにおいて、45度に、次に90度に曲げた。フィルムは依然として触ると暖かく感じられ、電流は0.27アンペアのままであった。次にフィルムを、180度に曲げた。サンプルは依然として触ると暖かく、電流は0.27アンペアのままであった。クラッキングが起きたとしたら、ホット・スポットがフィルム内に生じて、実質的な電流変化(または電流の完全な停止)が観察されて、同時にEMIシールド能力の損失が起きたであろう。
【0094】
比較例2
実施例12の方法を用いて、サンプルとしてXIR75酸化インジウム・フィルム(サウスウォール・テクノロジ社)に通電して加熱した。サンプルの破損が、24ボルトを加えたときにまたは曲げたときに起きた。下表4に、結果を示す。
【0095】
【表4】
【0096】
表4の結果によれば、比較フィルムを電気的に加熱できることが示されている。しかし電圧を24ボルトまで増加させたら、フィルムは破損した。これは、酸化インジウム層のクラッキングが原因であると考えられた。比較フィルムの別個のサンプルを、印加電圧として16ボルトを用いて電気的に加熱した結果、電流として0.235アンペアが測定された。比較フィルムは、触ると暖かく感じられるようになった。比較フィルムを、カウンター・トップのエッジにおいて45度に曲げたら、フィルムは破損した。光学的な顕微鏡法を用いれば、クラックをコーティング内に観察することができる。
【0097】
実施例13
304mm×304mmサンプルとして、シート抵抗が4.2Ω/スクエアである実施例5のフィルムを、電気的にバスバーに接続して、両方の金属層を接地できるようにした。
【0098】
実施例14
PET支持体を、3層のアクリレート/Ag/アクリレート積層物で覆った。個々の層は次のように形成した。
【0099】
(層1)914メートル長のロールで0.05mm厚×508mm幅のPETフィルム(メリネックス(商標)453番フィルム、デュポン・テイジン・フィルムス)を、真空チャンバを巻くためにロールに積めた。そしてチャンバ圧力をポンプで引いて、8×10−6トールの圧力にした。PETフィルムに、アクリレート混合物として、48.5%のIRR214アクリレート、48.5%のラウリルアクリレート、および3.0%のエベクリル(EBECRYL)(商標)170接着促進剤を含むものを、コーティングした。アクリレート混合物を、コーティングの前に真空脱ガスした後、ポンプによって、2.35ml/分の流量で超音波アトマイザを通して、275℃に維持された蒸発チャンバまで流した。PETフィルムを、0℃に維持されたコーティング・ドラム上に、ウェブ速度として30.4メートル/分で通して、モノマー蒸気を凝結させた。そして電子ビームによる架橋を、8.0kVおよび2.0ミリアンペアで動作する単一のフィラメントを用いて行なった。この結果、アクリレート層として、硬化後に100nm厚みとなるものが生成された。
【0100】
(層2)ウェブの方向を、チャンバ内で反対にして、アクリレート表面に銀層をスパッタ・コーティングした。銀のスパッタリングは、10kWパワーで、アルゴンをスパッタリング・ガスとして用いて、チャンバ圧力として2.0ミリトール、およびウェブ速度として30.4メートル/分の下で行なって、10nm厚の銀層を得た。
【0101】
(層3)ウェブの方向を再び反対にした。層1の場合と同じ条件を用いて、100nm厚のアクリレート層を銀層上に堆積した。
【0102】
結果として生じる3層のフィルム積層物は、良好なスペクトル透過および反射率の特徴を示し(すなわち、光透過性であった)、および電気抵抗率が10Ω/スクエアであった。電流下での腐食試験を行なったところ、浸漬してから数秒して、電流がゼロになった。このことは、銀腐食、電気回路故障、およびEMIシールド能力の起こり得る損失が、厳しい腐食条件下において望ましいものよりも速く発生したことを示している。
【0103】
実施例15
第2の3層フィルム積層物を実施例14の場合と同じ仕方で用意した。しかしPETの窒素プラズマ前処理、層1のアクリレート・コーティング、および層2の銀コーティングをその後の層の堆積前に行なうことを、用いた。結果として生じたフィルムは、光透過性であった。窒素プラズマを、非平衡なdcマグネトロン・ソースを1.0kWおよび2.0ミリトール圧力で動作させて用いて、印加した。電流下での腐食試験を行なったところ、電流は、浸漬してから500〜600秒が経つまでゼロにならなかった。このことは、銀腐食および電気回路故障が、実施例14の場合よりもはるかに遅く、EMIシールド能力の保持力が改善されたことを示している。
【0104】
実施例16
3層のフィルム積層物を、実施例14の場合と同じ仕方で用意した。ただし、2%エチレングリコール・ビス−チオグリコレートを、モノマー混合物に添加した。結果として生じたフィルムは、光透過性であった。電流下での腐食試験を行なったところ、電流は、浸漬してから500〜600秒後にゼロになった。このことは、銀腐食および電気回路故障が、実施例14の場合よりもはるかに遅く、実施例15に匹敵する性能であることを示している。
【0105】
実施例17
3層のフィルム積層物を、実施例14の場合と同じ仕方で用意した。しかし、実施例15の場合と同じように窒素プラズマ前処理を使用し、また実施例16の場合と同じように2%エチレングリコール・ビス−チオグリコレート添加を用いた。結果として生じたフィルムは、光透過性であった。電流下での腐食試験を行なったところ、電流は、浸漬してから900秒超の間、一定のままであった。なおこの時間は、試験を終了させた時間である。このことは、銀腐食、回路故障の可能性、およびEMIシールド能力の損失が、実施例14〜16と比較してさらに低減したことを示している。
【0106】
実施例18
実施例12のフィルムを、550nmでの光の透過、シート抵抗、およびEMIシールド強度について、試験した。測定された光の透過は75%であり、表面抵抗率は4.5Ω/スクエアであり、およびEMIシールド強度は29dBであった。
【0107】
比較例3
実施例18の方法を用いて、AgHT(商標)−4の光学的に透明なEMIシールド・フィルム(CPフィルム)のサンプルを評価した。測定された光の透過は76%であり、表面抵抗率は4.7Ω/スクエアであり、およびEMIシールド強度は29dBであった。フィルムを手で皺寄せした後、EMIシールド強度について再試験をした。EMIシールド強度は、5dBに低下した。またフィルムの新鮮なサンプルも、腐食および歪み抵抗について評価した。電流下での腐食試験において回路故障が20秒で発生し、また伝導性対歪み試験において伝導性が2%歪みにおいてゼロになった。
【0108】
実施例19
実施例12の方法を用いて、PET支持体を、5層のアクリレート/Ag/アクリレート/Ag/アクリレート光学積層物で覆った。その際、プラズマ前処理を、金属層の頂部および底部の両方に対して行なった。モノマー混合物には、2%のエチレングリコール・ビス−チオグリコレートが含まれていた。その他の個々の層の違いは、以下の通りであった。
【0109】
(層1)支持体のプラズマ前処理を1000ワット・パワーで行なったが、428ボルトおよび2.3アンペアを用いた。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させることを、−17℃のドラム温度を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.0kVおよび2.8ミリアンペアで動作させた。
【0110】
(層2)プラズマ前処理を1000ワット・パワーで行なったが、368ボルトおよび2.72アンペアを用いた。銀のスパッタリングを、632ボルト、15.8アンペア、ドラム温度として31℃、およびアルゴン・ガス流として87sccmの下で行なった。
【0111】
(層3)プラズマ前処理を1000ワット・パワーで行なったが、430ボルトおよび2.3アンペアを用いた。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させることを、ドラム温度として−17℃を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.0kVおよび4.8ミリアンペアで動作させた。
【0112】
(層4)プラズマ前処理を1000ワット・パワーで行なったが、368ボルトおよび2.72アンペアを用いた。銀のスパッタリングを、634ボルト、15.8アンペア、ドラム温度として32℃、およびアルゴン・ガス流として87sccmの下で行なった。
【0113】
(層5)プラズマ前処理を1000ワット・パワーで行なったが、448ボルトおよび2.2アンペアを用いた。モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させることを、ドラム温度として−19℃を用いて行なった。電子ビーム・フィラメントを、8.0kVおよび5.7ミリアンペアで動作させた。
【0114】
結果として生じるフィルムの測定された光の透過は70%であり、表面抵抗率は5.6Ω/スクエアであり、およびEMIシールド強度は28dBであった。比較例3の場合と同じように、フィルムを手で皺寄せした後、EMIシールド強度について試験した。EMIシールド強度は28dBに保たれた。このことは、EMIシールド能力が十分に保持されていることを示している。
【0115】
実施例20
実施例1の一般的な方法を用いて(しかしクロム・スパッタリングをプラズマ前処理の代わりに用いて、クロム金属層を堆積して)、PET支持体を、7層のアクリレート/Cr/Ag/アクリレート/Cr/Ag/アクリレート光学積層物で覆った。モノマー混合物には、IRR214アクリレート、ラウリルアクリレート、およびダロクア(DAROCUR)(商標)1173の光開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))の43:43:14混合物が含まれていた。光開始剤をモノマー混合物に添加することを、真空脱ガスの後でコーティングの直前に、行なった。個々の層は次のように形成した。
【0116】
(層1)真空チャンバ内の圧力を、2×10-5トールまで低減した。支持体を連続してプラズマ前処理してアクリレートでコーティングすることを、24.4m/分ウェブ速度での1つのパス内で行なった。その際、500sccmの窒素ガス流、450kHzにおける800ワットのRFプラズマ・パワー、および−9.4℃のコーティング・ドラム温度を用いた。3成分のモノマー混合物を、ポンプを用いて、1.5ml/分の流量で引いた。UVランプを用いて、モノマー混合物を硬化した。
【0117】
(層2)ウェブの方向を反対にした。アクリレート層へのクロムのコーティングを、12.2m/分において、2.5kW DCのスパッタリング・パワー、および10sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0118】
(層3)ウェブの方向を反対にした。クロム層への銀のコーティングを、24.4m/分において、9.0kW DCのスパッタリング・パワー、および10sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0119】
(層4)同じパスにおいて連続して、銀層に、層1の場合と同様のモノマー混合物をコーティングした。
【0120】
(層5)ウェブの方向を反対にした。アクリレート層に、層3の場合と同様のクロムをコーティングした。
【0121】
(層6)ウェブの方向を反対にした。24.4m/分で動作させて、クロム層に、層4の場合と同様の銀をコーティングした。
【0122】
(層7)同じパスにおいて連続して、銀層に、層1の場合と同様のモノマー混合物をコーティングした。
【0123】
図13に、結果として生じる7つの層赤外線阻止アクリレート/Cr/Ag/アクリレート/Cr/Ag/アクリレート光学積層物の光学特性を示す。曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過および反射を示している。完成したフィルムは、可視透過が76%、ヘイズが0.68%、表面抵抗率が5.9Ω/スクエア、およびEMIシールド強度が5GHzにおいて33dBである。
【0124】
実施例21
実施例20の一般的な方法を用いて、PET支持体を、6層のTi/Ag/アクリレート/Ti/Ag/アクリレート光学積層物で覆った。モノマー混合物には、IRR214アクリレート、ラウリルアクリレート、およびエチレングリコール・ビス−チオグリコレートの64:28:8混合物が含まれていた。個々の層は次のように形成した。
【0125】
(層1)支持体は、製造業者から提供されたときには、未確認の処理が一方の側になされていた。支持体の未処理側へのチタンのコーティングを、36.6m/分において、−23℃のドラム温度、2.8kW DCのスパッタリング・パワー(426ボルトおよび6.8アンペア)、および50sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0126】
(層2)同じパスにおいて連続して、チタン層への銀のコーティングを、−23℃のドラム温度、15kW DCのスパッタリング・パワー(779ボルトおよび19.6アンペア)、および150sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0127】
(層3)同じパスにおいて連続して、銀層へのモノマー混合物のコーティングを、流量として2.4ml/分、274℃の蒸発チャンバ温度、−23℃のドラム温度を用いて、また単一のフィラメント電子ビーム・ガンを7.5kVおよび9.7ミリアンペアで動作させて行なった。
【0128】
(層4)ウェブの方向を反対にした。アクリレート層へのチタンのコーティングを、36.6m/分において、−16℃のドラム温度、2.8kW DCの(412ボルトおよび11.1アンペア)スパッタリング・パワー、および90sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0129】
(層5)同じパスにおいて連続して、チタン層への銀のコーティングを、−16℃のドラム温度、15kW DCのスパッタリング・パワー(778ボルトおよび19.5アンペア)、および150sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0130】
(層6)同じパスにおいて連続して、層3の場合と同様に銀層へのモノマー混合物のコーティングを、−17℃のドラム温度を用いて、また単一のフィラメント電子ビーム・ガンを7.5kVおよび7.2ミリアンペアで動作させて行なった。
【0131】
図14に、結果として生じる6層の赤外線阻止Ti/Ag/アクリレート/Ti/Ag/アクリレート光学積層物の光学特を示す。曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過および反射を示す。完成したフィルムは、可視透過が73%、ヘイズが0.44%、および表面抵抗率が6.2Ω/スクエアであった。
【0132】
実施例22
実施例21の一般的な方法を用いて、PET支持体を、6層のTi/Ag/アクリレート/Ti/Ag/アクリレート光学積層物で覆った。個々の層は次のように形成した。
【0133】
(層1)真空チャンバ内の圧力を、1.5×10-5トールまで低減した。ウェブへのチタンのコーティングを、24.4m/分において、−17℃のドラム温度、2.8kW DCのスパッタリング・パワー(404ボルトおよび7.2アンペア)、および10sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0134】
(層2)同じパスにおいて連続して、チタン層への銀のコーティングを、−17℃のドラム温度、15kW DCのスパッタリング・パワー(742ボルトおよび20.5アンペア)、および90sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0135】
(層3)同じパスにおいて連続して、銀層へのモノマー混合物のコーティングを、された流量として1.8ml/分、274℃の蒸発チャンバ温度、−18℃のドラム温度を用いて、また単一のフィラメント電子ビーム・ガンを7.5kVおよび10.9ミリアンペアで動作させて行なった。
【0136】
(層4)ウェブの方向を反対にした。アクリレート層へのチタンのコーティングを、24.4m/分において、−16℃のドラム温度、2.8kW DC(371ボルトおよび7.8アンペア)のスパッタリング・パワー、および10sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0137】
(層5)同じパスにおいて連続して、チタン層への銀のコーティングを、−16℃のドラム温度、15kWのDCスパッタリング・パワー(739ボルトおよび20.6アンペア)、および90sccmのアルゴン・ガス流を用いて行なった。
【0138】
(層6)ウェブの方向を反対にした。層3の場合と同様に銀層へのモノマー混合物のコーティングを、45.7m/分において、流量として1.5ml/分、−18℃のドラム温度を用いて、また単一のフィラメント電子ビーム・ガンを7.5kVおよび4.1ミリアンペアで動作させて行なった。
【0139】
図15に、結果として生じる6層の赤外線阻止Ti/Ag/アクリレート/Ti/Ag/アクリレート光学積層物の光学特性を示す。曲線TおよびRはそれぞれ、完成したフィルムに対する透過および反射を示す。完成したフィルムは、可視透過として78%、ヘイズとして0.76%、表面抵抗率として6.5Ω/スクエア、およびEMIシールド強度として5GHzにおいて32dBを示した。
【0140】
実施例23
実施例20のフィルムを熱成形して、フィルムの一部が3次元の半球状のくぼみを有するようにした。熱成形方法は、プラスチック製スラブ内の45mm直径の孔を、フィルムでテーピングして覆うことによって行なった。スラブ内の孔を通してフィルムに対して真空引きを行なう一方で、ヒート・ガンを用いてフィルムを加熱する。これを、フィルムが十分に熱くなって下方に変形して孔内へと入るまで行なう。ヒート・ガンを取り外し、フィルムを冷却してスラブから取り除く。結果として生じる熱成形による半球状のくぼみは、残りのフィルムの公称上の平面領域に対して深さが5mmである。フィルムを対向する2つの端部において手で保持して、ぴんと張るように十分に引っ張って外見上の緩みを取り除いても、くぼみは存続した。変形された領域は、光透過性であり、表面抵抗率として5.5Ω/スクエア、ヘイズとして1.6%を示し、これと比較して、熱成形されていないフィルムの場合は、5.9Ω/スクエアおよび0.68%の値であった。
【0141】
比較例4
実施例23の方法を用いて、XIR75酸化インジウム・フィルムを熱成形して、フィルムの一部が3次元の半球状のくぼみを有するようにした。熱成形された領域の表面抵抗率は5,000Ω/スクエアに増加し、これと比較して、熱成形されていないフィルムの場合は5.2Ω/スクエアであった。熱成形されたフィルムに対する大きな表面抵抗率は、電気伝導性、赤外線反射率、およびEMIシールド強度のうちの1つまたは複数が失なわれることと一致する。熱成形された領域のヘイズは13.9%に増加し、これと比較して、熱成形されていないフィルムの場合は0.56%であった。
【0142】
比較例5〜8
実施例23の方法を用いて、CPフィルム社から市販されている複数のフィルムを熱成形して、それぞれのフィルムの一部が3次元の半球状のくぼみを有するようにした。フィルムを、表面抵抗率について特徴づけした。下表5に、結果を示す。
【0143】
【表5】
【0144】
上述の結果によれば、市販のフィルムは、熱成形を試みたときに、表面抵抗率の著しい増加を示した(これは、電気伝導性、赤外線反射率および、EMIシールド強度の1つまたは複数が失なわれることと一致する)。
【0145】
実施例24
実施例21のフィルムを積層して、0.25mm厚の補助的なポリカーボネート支持体(レキサン(LEXAN)(商標)8010、ジェネラル・エレクトリック(General Electric))にした。その際、467番MP遷移型粘着剤(3M)を用いた。結果として生じる積層された構成を、対流オーブン内に125℃で約20分間置いて、粘着剤を乾燥させた。その後、積層された構成を熱成形して、携帯電話の正面に対応する3次元形状にした。熱成形方法では、ラブフォーム圧力形成器(Labform Pressure Former)(ハイドロ・トリム社(Hydro−Trim Corporation))を用いた。これを、90秒間約222℃で予熱した後、90秒間同じ温度で熱成形ステップを行なって、動作させた。結果として生じる熱成形された部品は、透明で、比較的硬くて自立性があり、恒久的に変形された複合曲面状の特徴を有していた。結果として生じる熱成形された部品の表面抵抗率は、6.0Ω/スクエアであった。これは、熱成形されていないフィルムの場合の6.2Ω/スクエア表面抵抗率に、非常によく似ている。
【0146】
図16に、熱成形された部品を示す。携帯電話カバー300の正面部分302は、前方から見ると、略凸状の形状である。くぼみ304によって、マイクロフォン位置が指定される。くぼみ306によって、キーパッド・ボタン位置が指定される。領域308によって、ディスプレイ領域が指定される。成形フランジ310が、正面部分302を囲んでいる。成形フランジ310を、完成した電話カバーから取り外すことは、成形されたプラスチック物を作る当業者に良く知られている技術を用いて行なうことができる。
【0147】
比較例9
実施例24の方法を用いて、XIR75酸化インジウム・フィルムを積層して、0.25mm厚のポリカーボネートの補助支持体にした後、熱成形した。結果として生じる熱成形された部品は、透明であった。XIR75フィルムを含む熱成形と積層とがなされた構成の表面抵抗率は、990Ω/スクエアであった。これは、熱成形されていないフィルムの5.2Ω/スクエア表面抵抗率よりも、はるかに高い。
【0148】
実施例25
実施例21のフィルムを、0.25mm厚のポリカーボネートの補助支持体(レキサン8010、ジェネラル・エレクトリック)と、ビクイッティ(VIKUITI)(商標)高度鏡面反射器(ESR)多層光学膜(3M)との間に積層した。その際、467番MP遷移型粘着剤(3M)を用いた。結果として生じる積層された構成を乾燥させた後、熱成形して、同じ3次元の携帯電話の正面形状にした。その際、実施例24の方法を用いた。ビクイッティESRフィルム表面を、成形物(mold)に対して置いた。結果として生じる熱成形された部品は、光透過性ではなく、銀色の外観を有していた。これは、透明な実施例21のフィルムおよびポリカーボネート補助支持体の下の構成にビクイッティESRフィルムを含めることに起因する。結果として生じる熱成形された部品の表面抵抗率は、6.4Ω/スクエアであった。これは、熱成形されていないフィルムの6.2Ω/スクエアの表面抵抗率に非常によく似ている。
【0149】
比較例10
実施例25の方法を用いて、XIR75酸化インジウム・フィルムを、0.25mm厚のポリカーボネート補助支持体とビクイッティESRフィルムとの間に積層し、乾燥させ、そして熱成形して同じ3次元の携帯電話の正面形状にした。結果として生じる熱成形された部品は、ビクイッティESRフィルムを含むことに起因する銀外観を有していたが、熱成形された部品の表面抵抗率は840Ω/スクエアであった。これは、熱成形されていないXIR75フィルムの5.2Ω/スクエアの表面抵抗率よりも、はるかに高い。
【0150】
実施例26
実施例22のフィルムをエンボス加工して、3次元のパターンを有するようにした。エンボシング・パターンは、実施例22のフィルムを1.5m/分で、オーバーラップする加熱されたニップ・ロールに通して供給することによって生成した。ニップ・ロールは、嵌まり合うダイアモンド形状の突出部および凹部を有する。ニップ・ロールの温度は、176〜193℃であった。フィルムの表面抵抗率は、実際には、エンボシングの後に低下して、エンボス加工されたフィルムの場合に3.75Ω/スクエアであった。これと比較して、エンボス加工されていないフィルムの場合は6.5Ω/スクエアであった。
【0151】
比較例11
実施例26の方法を用いて、XIR75酸化インジウム・フィルムをダイアモンド・パターンにエンボス加工した。XIR75フィルムの表面抵抗率は、エンボシングの後に増加して、エンボス加工されたフィルムの場合に885Ω/スクエアであった。これと比較して、エンボス加工されていないフィルムの場合には5.2Ω/スクエアであった。
【0152】
実施例27
実施例1および20の一般的な方法を用いて、PET支持体をプラズマ処理して、3層のクロム/アクリレート/アルミニウム積層物で覆った。個々の層は次のように形成した。
【0153】
(層1)真空チャンバ内の圧力を、3×10-4トールまで低減した。支持体のプラズマ前処理を、別個のパスにおいて、15.2m/分で行なった。その際、クロム・ターゲットを使用し、また非平衡なdcマグネトロンを、1.5kWパワー(429ボルトおよび3.5アンペア)において、70sccmの窒素ガス流を伴う窒素雰囲気の下で動作させた。クロムを第2のパスにおいて堆積させた。その際、クロム・ターゲットを使用し、また非平衡なdcマグネトロンを、12kWパワーにおいて、91ml/分のアルゴン・ガス流を伴うアルゴン雰囲気および15.2m/分のウェブ速度の下で動作させた。
【0154】
(層2)実施例14のモノマー混合物を、脱ガスした後、ポンプで2.79ml/分の流量で引いて、超音波アトマイザを通して274℃に保持された蒸発チャンバ内に流した。ドラム温度として−18℃を用いて、モノマー蒸気を、移動するウェブ上に凝結させた。そして、電子ビームで架橋することを、7.59kVおよび2.0ミリアンペアで動作する単一のフィラメント・ガンを用いて行った。
【0155】
(層3)アルミニウム金属を、熱的に蒸発させて、アクリレート層上に30nmの厚みにした。その際、抵抗加熱されたボートを使用し、ウェブ速度として50ft/分を用いた。
【0156】
実施例28
上述のフィルムのほぼ6×12インチのサンプルを、車両用バッジング用途のための隆起した図形を作るために用いられる熱真空成形機内に置いた。フィルムを熱成形して、オートバイ名「デゥカッティ(DUCATI)」(商標)と綴る3次元図形用の凹部成形にした。熱成形されたフィルムに、ポリウレタン樹脂を充填した後、背面に感圧性粘着剤の層がコーティングされたライナ上で硬化した。結果は、非光透過性だが、粘着剤で裏打ちされた濃く着色された3次元の図形であり、これは、観察角度が変わるとマゼンタからグリーンに色彩が移った。
【0157】
本発明の種々の変更および修正が、本発明から逸脱することなく当業者には明らかである。本発明は、説明するためだけに本明細書で述べてきた事柄に限定してはならない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルな支持体、伸張性のある金属または金属合金層、および架橋ポリマー保護層を含む伝導性フィルムであって、少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域を有する伝導性フィルム。
【請求項2】
前記金属または金属合金層が実質的に連続であり、前記少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域が複合曲面状である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムが光透過性である請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記金属または金属合金層が銀を含み、前記架橋ポリマー層がアクリレートポリマーを含む請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
2つ以上の金属または金属合金層を含む請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記層が、架橋ポリマーのスペーシング層によって分離され、赤外線阻止のファブリ・ペロ積層物を与える請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
前記フィルム内の前記金属または金属合金層と隣接層との間の界面が接着力増強処理を受けているか、前記フィルム内の1つまたは複数の隣接層が接着力増強アジュバントを含むことによって、前記フィルムの耐腐食性が増加する請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
ある長さおよび電磁シールド能力を有し、前記電磁シールド能力は、前記フィルムがその長さの5%だけ張力モードで歪んだ場合に保持される請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
ある長さおよび電磁シールド能力を有し、前記電磁シールド能力は、前記フィルムがその長さの10%だけ張力モードで歪んだ場合に保持される請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムが45度で曲げられた場合に保持される電磁シールド能力を有する請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
異なる観察角度から見たときに色彩がシフトする挙動を示す請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
少なくとも1つの平面領域をさらに含む請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
熱可塑性の補助支持体をさらに含む請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項14】
請求項1、2、または3のいずれかのフィルムを含む電気的デバイス。
【請求項15】
携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
ヒータを含む請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
(a)金属または金属合金層と架橋ポリマー保護層とを有する熱可塑性の支持体を含むプリフォームを用意するステップと、
(b)前記プリフォームをモールディング、エンボス加工、熱成形、または他の方法で変形させて、少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域を有する自立性の物品を用意するステップと、を含む物品の成形方法。
【請求項18】
前記金属または金属合金層が実質的に連続であり、前記少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域が複合曲面状である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記金属または金属合金層と前記架橋ポリマー保護層とが光透過性である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属または金属合金層が銀を含み、前記架橋ポリマー層がアクリレートポリマーを含む請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記プリフォームが2つ以上の金属または金属合金層を含む請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記変形を真空成形によって行なう請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記変形を熱成形によって行なう請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記変形をエンボス加工によって行なう請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記成形された物品が、ある長さおよび電磁シールド能力を有し、電磁シールド能力は、前記物品が張力モードによってその長さの5%だけ歪んだ場合に保持される請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記成形された物品が、前記物品が45度で曲げられた場合に保持される電磁シールド能力を有する請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記プリフォームが第1の表面抵抗率を有し、前記変形によって前記物品を張力モードにおいてその長さの少なくとも5%だけ歪ませ、および前記成形された物品が、前記第1の表面伝導性に対して実質的に低下しない第2の表面抵抗率を有する請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の表面抵抗率が、前記第1の表面抵抗率の2倍以下である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の表面抵抗率が、前記第1の表面抵抗率未満である請求項27に記載の方法。
【請求項30】
プリフォームが第1の量のヘイズを有し、前記変形によって前記物品を張力モードにおいてその長さの少なくとも5%だけ歪ませ、および前記成形された物品が、前記第1の量のヘイズに対して実質的に低下しない第2の量のヘイズを有する請求項19に記載の方法。
【請求項31】
第1および第2の量のヘイズが両方とも5%、3%、または2%未満である請求項30に記載の方法。
【請求項1】
フレキシブルな支持体、伸張性のある金属または金属合金層、および架橋ポリマー保護層を含む伝導性フィルムであって、少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域を有する伝導性フィルム。
【請求項2】
前記金属または金属合金層が実質的に連続であり、前記少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域が複合曲面状である請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムが光透過性である請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記金属または金属合金層が銀を含み、前記架橋ポリマー層がアクリレートポリマーを含む請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
2つ以上の金属または金属合金層を含む請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記層が、架橋ポリマーのスペーシング層によって分離され、赤外線阻止のファブリ・ペロ積層物を与える請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
前記フィルム内の前記金属または金属合金層と隣接層との間の界面が接着力増強処理を受けているか、前記フィルム内の1つまたは複数の隣接層が接着力増強アジュバントを含むことによって、前記フィルムの耐腐食性が増加する請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
ある長さおよび電磁シールド能力を有し、前記電磁シールド能力は、前記フィルムがその長さの5%だけ張力モードで歪んだ場合に保持される請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
ある長さおよび電磁シールド能力を有し、前記電磁シールド能力は、前記フィルムがその長さの10%だけ張力モードで歪んだ場合に保持される請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムが45度で曲げられた場合に保持される電磁シールド能力を有する請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
異なる観察角度から見たときに色彩がシフトする挙動を示す請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
少なくとも1つの平面領域をさらに含む請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
熱可塑性の補助支持体をさらに含む請求項1、2、または3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項14】
請求項1、2、または3のいずれかのフィルムを含む電気的デバイス。
【請求項15】
携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
ヒータを含む請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
(a)金属または金属合金層と架橋ポリマー保護層とを有する熱可塑性の支持体を含むプリフォームを用意するステップと、
(b)前記プリフォームをモールディング、エンボス加工、熱成形、または他の方法で変形させて、少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域を有する自立性の物品を用意するステップと、を含む物品の成形方法。
【請求項18】
前記金属または金属合金層が実質的に連続であり、前記少なくとも1つの恒久的に変形された曲面状領域が複合曲面状である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記金属または金属合金層と前記架橋ポリマー保護層とが光透過性である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属または金属合金層が銀を含み、前記架橋ポリマー層がアクリレートポリマーを含む請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記プリフォームが2つ以上の金属または金属合金層を含む請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記変形を真空成形によって行なう請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記変形を熱成形によって行なう請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記変形をエンボス加工によって行なう請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記成形された物品が、ある長さおよび電磁シールド能力を有し、電磁シールド能力は、前記物品が張力モードによってその長さの5%だけ歪んだ場合に保持される請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記成形された物品が、前記物品が45度で曲げられた場合に保持される電磁シールド能力を有する請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記プリフォームが第1の表面抵抗率を有し、前記変形によって前記物品を張力モードにおいてその長さの少なくとも5%だけ歪ませ、および前記成形された物品が、前記第1の表面伝導性に対して実質的に低下しない第2の表面抵抗率を有する請求項17、18、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の表面抵抗率が、前記第1の表面抵抗率の2倍以下である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の表面抵抗率が、前記第1の表面抵抗率未満である請求項27に記載の方法。
【請求項30】
プリフォームが第1の量のヘイズを有し、前記変形によって前記物品を張力モードにおいてその長さの少なくとも5%だけ歪ませ、および前記成形された物品が、前記第1の量のヘイズに対して実質的に低下しない第2の量のヘイズを有する請求項19に記載の方法。
【請求項31】
第1および第2の量のヘイズが両方とも5%、3%、または2%未満である請求項30に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−18931(P2011−18931A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−203017(P2010−203017)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【分割の表示】特願2004−529489(P2004−529489)の分割
【原出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203017(P2010−203017)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【分割の表示】特願2004−529489(P2004−529489)の分割
【原出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]