説明

フレキシブル基板の製造方法およびフレキシブル基板

【課題】フレキシブル基板のカールがなく、金属箔エッチング後のポリイミドフィルムのカールがないフレキシブル基板であり、高線膨張率の熱可塑性ポリイミドを有さず、かつ、高い密着力を有するフレキシブル基板を提供する。
【解決手段】金属箔上に形成されるポリイミド層を有するフレキシブル基板であって、ポリイミド層の平均線膨張率が、5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下であり、フレキシブル基板の断面を光学顕微鏡の透過光モードで確認すると、ポリイミド層内の色相が単一の層として観察され、ラマン分光法を用いて膜厚方向分析すると、配向性パラメータの最大値が、ポリイミド層の金属箔側面とその反対側の表面との中央よりも金属箔面側にあることを特徴とするフレキシブル基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子工業分野で広く使用されているフレキシブル基板の製造方法およびフレキシブル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル基板は、金属箔層と絶縁樹脂層を積層して構成されたもので、屈曲性や柔軟性を有している。このフレキシブル基板は、高密度実装が要求される電子機器に広く利用されている。代表的なフレキシブル基板としては、金属箔層に銅箔、絶縁樹脂層にポリイミド系樹脂を使用したものがあり、広く利用されている。
【0003】
このようなフレキシブル基板の中でも、銅箔にポリイミド系樹脂を塗布する「キャスト型」について、精力的に検討されており実用化にいたっている。
【0004】
銅箔にポリイミド系樹脂を塗布する方法において、塗布するポリイミド系樹脂の熱処理後の線膨張率を銅箔に合わせることによりフレキシブル基板のカールをなくすことができる(特許文献1、2、3参照)。しかしながら、この方法により作製したフレキシブル基板は銅箔をエッチングした後、銅箔があった面を内側にしてカールをしてしまう。
【0005】
銅箔にポリイミド系樹脂を塗布する方法において、線膨張率の異なるポリイミドを複数層積層する方法により、フレキシブル基板の銅箔をエッチングした後もカールをなくすことができる(特許文献4参照)。しかしながら、この方法により作製したフレキシブル基板は、高線膨張率の熱可塑性ポリイミド樹脂を使用しており、例えば、チップオンフレックス(COF)における金/錫共晶形成反応で、高温ボンディングすると配線が沈み込む問題が生じてしまう。
【0006】
これらを解決する方法として、低線膨張のポリイミド系樹脂を複数層積層する方法が提案されている(特許文献5参照)。しかし、低線膨張率のポリイミド上に低線膨張率のポリイミドを積層すると、ポリイミド/ポリイミド間で剥離するという問題があった。
【特許文献1】特開昭60−157286号公報(第2−8頁)
【特許文献2】特開昭60−210894号公報(第1−2頁)
【特許文献3】特開昭61−111182号公報(第2−6頁)
【特許文献4】特開平1−245586号公報(第2−6頁)
【特許文献5】特開平4−337690号公報(第2−3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、フレキシブル基板において、金属箔付きの状態でカールがなく、金属箔エッチング後にもカールが発生しないフレキシブル基板であり、高線膨張率の熱可塑性ポリイミドを有さず、かつ、高い密着力を有するフレキシブル基板が求められているにもかかわらず、まだ達成されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、金属箔上に形成されるポリイミド層を有するフレキシブル基板であって、ポリイミド層の平均線膨張率が、5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下であり、フレキシブル基板の断面を光学顕微鏡の透過光モードで確認すると、ポリイミド層内の色相が単一の層として観察され、ラマン分光法を用いて膜厚方向分析すると、配向性パラメータの最大値が、ポリイミド層の金属箔側面とその反対側の表面との中央よりも金属箔面側にあることを特徴とするフレキシブル基板。
【0009】
また、本発明の別の態様は、金属箔上に形成されるポリイミド層を有するフレキシブル基板の製造方法であって、
(a)金属箔に、線膨張率が5×10−6(1/℃)以上25×10−6(1/℃)以下のポリイミドとなるポリアミド酸ワニスを膜厚T1で塗布する工程、
(b)(a)工程で塗布したポリアミド酸をイミド化率が15%以上95%以下になるように熱処理する工程、
(c)(b)工程で形成された層の上に、線膨張率が5×10−6(1/℃)以上25×10−6(1/℃)以下であるポリイミドとなるポリアミド酸ワニスを、膜厚T2で塗布する工程(ただし、1≦T2/T1≦100を満たす)、
(d)熱処理をして全層をイミド化する工程、
を有するフレキシブル基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属箔上にポリアミド酸ワニスを塗布して熱処理することで形成される金属箔とポリイミド層を有するでフレキシブル基板において、高い密着力を有し、金属箔をエッチングした後もカールを生じない。また、300℃の温度がかかる金/錫共晶ボンディングの基板としても使用できる、非常に優れたフレキシブル基板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリイミド層は、全域にわたって平均線膨張率が5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下であるポリイミドである。本発明のポリイミド層の平均線膨張率は、5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下である。本発明における平均線膨張率は、ポリイミドの30℃から250℃までの平均線膨張率のことを指す。平均線膨張率が5×10−6(1/℃)よりも小さいと、フレキシブル基板が金属箔を内側にしてカールする。平均線膨張率が25×10−6(1/℃)よりも大きいとフレキシブル基板が金属箔を外側にしてカールする。
【0012】
本発明において、フレキシブル基板の断面を光学顕微鏡の透過光モードで観察したさいに、ポリイミド層内の色相が単一の層として観察される。ポリイミド層の色相が単一の層として観察されない場合とは、例えば、ポリイミドとポリイミドとの間に界面がある状態である。この界面で光の屈折率がわずかに変化しているため色相が単一に見えないと考えられる。ポリイミド層の色相が単一ではない場合、常態の密着力は高いが、高温高湿の雰囲気下におかれるとポリイミド−ポリイミド界面の密着力が著しく低下する。一方で、ポリイミド層の色相が単一に観察される場合は、ポリイミド中に界面がないため、高温高湿の雰囲気下におかれても密着力の低下はほとんどおこらない。高温高湿処理後(PCT処理後)のポリイミドと金属箔を剥離する際の密着力は10N/cm以上であることが好ましい。
本発明では、ポリイミド層をラマン分光法を用いて膜厚方向分析をし、そのときに得られる配向パラメータの最大値が、ポリイミド層の金属箔側面とその反対側の表面との中央よりも金属箔側にある。
【0013】
以下に本発明における、ポリイミド層をラマン分光法を用いて膜厚方向分析する方法について示す。フレキシブル基板の断面をラマン分光法で分析するさいに偏光させ、フレキシブル基板の垂直方向と平行方向の偏向ラマンスペクトルを得る。1615cm−1付近のフェニル基C=C伸縮で規格化すると、725cm−1付近、1100cm−1付近のC−N−C対称・逆対称伸縮、1770cm−1付近のC=O伸縮では、垂直方向のピーク強度が強くなり、1380cm−1付近のC−N伸縮では、平行方向のピーク強度が強くなる。本発明における配向性パラメータを下記のように定義した。
【0014】
配向性パラメータ=[A1380cm-1/A725cm-1(平行)]/[A1380cm-1/A725cm-1(垂直)]
これらのパラメータは、大きければ大きいほど配向性が大きいことを示し、無配向では1になる。
【0015】
本発明において、ポリイミド層をラマン分光法を用いて膜厚方向分析をしたときの、配向性パラメータの最大値とは、ポリイミド層中で最も配向性が大きい位置を示す。本発明において、配向性パラメータの最大値が、ポリイミド層の金属箔側面とその反対側の表面との中央よりも金属箔面側にあるということは、ポリイミド層の金属箔面とその反対側の表面との中央よりも金属箔側に最も配向性の大きい位置があることを示す。この位置に配向性の最も大きい位置があることによって、金属箔が付いた状態でカールが生じないだけでなく、金属箔をエッチングした後にもカールが生じないフレキシブル基板を得ることができる。
【0016】
本発明ではカールの評価方法を以下のように行う。全層を熱処理したフレキシブル基板を100mm×100mmにカットしたあと、25℃40〜60%RHの条件下で24時間放置後、平らな金属板の上に静置して、4画の反りの高さを測定した合計値を銅付きのカールとする。また、このフレキシブル基板の銅箔を塩化第2鉄溶液で全面エッチングして、同様に、25℃40〜60%RHの条件下で24時間放置後、平らな金属板の上に静置して、4画の反りの高さを測定した合計値を銅エッチング後のカールとする。カールは、10mm以下が好ましく、より好ましくは5mm以下である。
【0017】
以下に本発明のフレキブル基板の製造方法を詳細に示す。
本発明は、金属箔上形成されるポリイミド層を有するフレキシブル基板の製造方法であって、
(a)金属箔に、平均線膨張率が5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下のポリイミドとなるポリアミド酸ワニスを膜厚T1で塗布する工程、
(b)(a)工程で塗布したポリアミド酸のイミド化率が15%以上95%以下になるように熱処理する工程、
(c)(b)工程で形成された層の上に、平均線膨張率が5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下であるポリイミドとなるポリアミド酸ワニスを、膜厚T2で塗布する工程(ただし、1≦T2/T1≦100を満たす)、
(d)熱処理をして全層をイミド化する工程を有するフレキシブル基板の製造方法である。
【0018】
本発明において、(d)の熱処理をした後のポリイミド層の厚みは通常2μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0019】
(a)工程で、平均線膨張率が5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下のポリイミドとなるポリアミド酸ワニスを塗布する。ポリイミド層の厚みT1と(c)工程で塗布したポリイミド層の厚みT2との割合T2/T1は、1≦T2/T1≦100であることが好ましい。T2/T1が1未満であると、以下の説明するラマン分光法の配向性パラメータの最大値が、ポリイミド層の金属箔面とその反対側の表面との中央よりも、その反対側面になってしまう。このため、金属箔をエッチングしたあと、金属箔があった方を内側にしてカールが発現してしまう。他方、T2/T1が100より大きいと、1層目部分の配向性パラメータの極大値が、配向性パラメータの最大値にならない。すなわち、配向性パラメータの最大値が、ポリイミド層の銅箔面とその反対側の表面との中央から、その反対の表面側になってしまう。このため、金属箔をエッチングしたあと、金属箔があった方を内側にしてカールが発現してしまう。好ましくは、1.5≦T2/T1≦50である。この範囲とすることで、金属箔をエッチングした後のカールが小さいフレキシブル基板を安定して製造できる。
【0020】
次に、(b)工程でポリアミド酸をイミド化率が15%以上95%以下になるように熱処理を行う。イミド化率が15%よりも小さいとポリイミドの配向性が不十分になる。その結果として、金属箔をエッチングした後にカールが生じる。より好ましくは、イミド化率40%以上である。40%以上になると、さらに十分な配向性が得られる。またイミド化率が95%よりも大きいと(c)工程でポリアミド酸ワニスを塗布して(d)工程で全層を熱処理した際に、ポリイミド層の色相が単一の層として観察されない。その結果として、高温高湿処理後の密着力が低下する。より好ましくは、90%以下である。90%以下とすれば、安定してポリイミド層の色相が単一なフレキシブル基板を得ることができる。
【0021】
なお、(b)工程のイミド化率はFTIR−ATRで測定することができる。1360cm−1付近のイミド環のC−N伸縮振動ピークと1515cm−1付近の芳香環との吸収スペクトル強度比を各ポリイミドについて測定することによって求める。このとき、窒素雰囲気中で350℃1時間キュアしたポリイミドのイミド化率を100%としてイミド化率を算出する。そして、(c)工程で、ポリアミド酸ワニスを塗布して、(d)工程で全域を熱処理する。
【0022】
このようにして製造されたフレキシブル基板のポリイミド層は、平均線膨張率が、5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下であり、フレキシブル基板の断面を、光学顕微鏡の透過光モードで観察すると、ポリイミド層内の色相が単一の層として観察され、またフレキシブル基板の断面を、ラマン分光法を用いて膜厚方向分析を行うと、配向性パラメータの最大値が、ポリイミド層の金属箔側面とその反対側の表面との中央よりも金属箔面側に発現する。
【0023】
本発明で用いるポリイミド層を形成する平均線膨張率が、5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下であるポリイミドは、上記平均線膨張率を満たせば特に限定されず、ポリアミド酸ワニスをキュアすることで生成でき、ポリアミド酸ワニスは、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを重合することで得られる。
【0024】
平均線膨張率を5×10−6(1/℃)以上25×10−6(1/℃)以下とするために、酸二無水物成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方を50モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。また、ジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、2’−メトキシ−4,4’−ジアミノベンズアニリド、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの少なくとも一種以上を合わせて50モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。
【0025】
その他に用いることができるテトラカルボン酸二無水物成分としては、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’− ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’− ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物などがあげられる。上記テトラカルボン酸二無水物は、単独、または、2種以上混合して用いることができる
その他に用いることができるジアミン成分としては、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノトルエン、2−メトキシ−1,4−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、2’−メチル−4,4’−ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどがあげられる。上記ジアミンは、単独、または、2種以上混合して用いることができる。
【0026】
ポリイミドの接着性を向上させるために、耐熱性を低下させない範囲でシロキサン結合を有するジアミンを共重合することが可能である。好ましい具体例としては、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどがあげられる。
【0027】
ポリアミド酸ワニスの溶媒には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系極性溶媒、メチルセロソルブなどのエーテル系溶媒、乳酸エチルなどのエステル系溶媒などが用いられる。また、これに加えて、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒も用いることができる。
【0028】
本発明において、ポリイミド層中にその他の樹脂や充填材を添加することができる。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂などがあげられる。充填材としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、石英粉、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸バリウム、マイカ、タルクなどがあげられる。
【0029】
本発明において使用するポリアミド酸ワニスの重合方法は特に限定されない。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを所定のモル比で、所定溶媒中、0〜80℃の温度範囲で0.1〜72時間反応させることによって得られる。この際、テトラカルボン酸二無水物成分の総モル数とジアミン成分との総モル数は92/100〜100/92であることが好ましい。実質的に100/100とすることで、ポリイミドの分子量が最大になり強靭なポリイミド膜ができる。必要に応じて、テトラカルボン酸二無水物成分、または、ジアミン成分を過剰にすることにより、重合粘度の調整、密着力の向上などが可能である。また、アニリン、無水フタル酸などのモノアミン、ジカルボン酸無水物で末端を封止することも可能である。
【0030】
このようにして得られたポリアミド酸ワニスを、金属箔に塗布する。金属箔としては、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔のいずれも用いることが可能である。金属箔はパターン加工して導体として使用される。フレキシブル基板においては、銅箔が好ましく利用され、目的に応じて電解銅箔と圧延銅箔が利用されるが、本発明においてはどちらを利用しても良い。銅箔は樹脂などとの密着性を向上させるために接着面側を粗化処理することがある。一方で、ファインピッチ対応や透明性向上のために、銅箔を粗化処理しないこともある。本発明においてはどちらも利用することができる。銅箔は、必要に応じて防錆処理がされていても良い。防錆処理とは、一般的にニッケル、亜鉛、クロム化合物などの薄膜層を銅箔表面に形成する。また、樹脂層との密着性を改良するために、銅箔表面がシランカップリング剤で処理されていても良い。
【0031】
金属箔の厚みは、1μm以上50μm以下のものが好ましく用いられる。導体の配線パターンが微細化されるにつれて、金属箔の厚みも薄い方が好ましい。しかし、金属箔が薄くなると単体で取り扱うことが困難になる。5μm以下の厚みの金属箔は、20〜50μm程度の厚みの樹脂または金属箔などの支持体(キャリヤ)に付着したキャリヤ付き金属箔として取り扱われてもよく、この場合、樹脂を積層した後、剥離して用いられる。また、10μm以上の金属箔に樹脂を積層した後、金属箔の全面を公知の金属エッチング液でエッチングすることにより金属箔を薄くし、好ましい厚さに調整してもよい。
【0032】
ポリアミド酸ワニスの塗布方法には、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター、ナイフコーターなどがあげられる。この際の、ポリアミド酸ワニスの粘度は、10〜100000mPa・sが扱いやすい。
【0033】
ポリアミド酸ワニスを塗布した後は、上記にある(b)工程でポリアミド酸をイミド化率が15%以上95%以下になるように熱処理を行う。本発明において、(b)工程のイミド化率を15%以上95%以下にするための熱処理条件は、最高温度150℃以上240℃以下である。ワニス中の溶媒の突沸やイミド化で生成する水による発泡を防ぐために、60℃〜150℃の温度であらかじめ乾燥しても良い。最高温度150℃以上240℃以下での保持時間は10秒以上1時間以下が好ましい。10秒未満であると目的とするイミド化率まで達しないことがあり、安定して生産できない。1時間よりも多く熱処理することは、性能の上では問題ないが、コストがかかる。熱処理は、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0034】
(c)工程で塗布されるポリアミド酸ワニスは、線膨張係数が5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下であるポリイミドとなるポリアミド酸ワニスであることが必要である。(a)工程で塗布するポリアミド酸ワニスと(c)工程で塗布するポリアミド酸ワニスの組成は同一であってもよく、異なっていてもよい。そのなかでも、同一のポリイミドとなるポリアミド酸ワニスを用いることが最も好ましく行われる。
【0035】
(c)工程のポリアミド酸ワニスを塗布する前処理として、公知の前処理を行ってもよい。コロナ放電処理、プラズマ処理などの乾式処理やアルカリ処理などの湿式処理が好ましく用いられる。
【0036】
(d)工程において、金属箔に形成されたポリイミド全層のイミド化は実質的に100%までイミド化することが好ましい。実質的に100%のイミド化率にするためには、ポリイミドのガラス転移温度以上に加熱することが好ましいが、平均線膨張係数が5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下であるポリイミドでは明確なガラス転移温度を示さない場合も多い。この場合でも250℃以上で熱処理を行うと95%よりも大きなイミド化率となる。好ましくは、300℃以上で熱処理を行う。最高温度での保持時間は、1分以上24時間以内で好ましく行われる。熱処理は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0037】
本発明のフレキシブル基板および本発明の製造方法で製造されるフレキシブル基板は、電子機器に用いられるFPC用基板として使用され、その中でも、高温でプレスする工程のある多層フレキシブル基板や、ICのボンディングに300℃以上の熱がかかるCOF用に好ましく利用される。
【実施例】
【0038】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。平均線膨張率、断面の観察方法、ラマン分光法による配向性パラメータ、イミド化率、密着力、高温高湿処理後の密着力、カール測定、ボンディング試験の試験方法を下記する。
【0039】
(1)平均線膨張率
ポリアミド酸ワニスを厚み18μmの銅箔の光沢面に熱処理後の厚みが10μmになるようにバーコーターで塗布し、80℃で10分、120℃で10分間乾燥した。そして、窒素雰囲気下で、140℃で30分間、140℃から1時間で350℃に昇温して、350℃で1時間熱処理を行った。
【0040】
次に、銅箔を塩化第2鉄溶液でエッチングして、ポリイミドの単膜を得た。得られた単膜を30mm×15mmに切り取った。これを長さ方向に円筒状に巻き、熱機械的分析装置SS−6100(セイコーインスルメンツ(株)製)を用いて、0.5gの荷重をかけた際の各温度でのサンプル長を測定して求めた。まず、300℃まで昇温してアニールし、降温して30℃以下まで下げてから、30℃から250℃まで5℃/分で昇温して、30℃から250℃までの平均線膨張率を求めた。算出式は以下のとおりである。
平均線膨張率=(1/L30)×[(L250−L30)/(250−30)]
ここで、L30、L250は、それぞれ、30℃、250℃のときのサンプル長である。
【0041】
(2)断面の観察方法
得られたフレキシブル基板を、包埋樹脂に包埋して、研磨して断面を観察できるようにした。これを光学顕微鏡で観察した。透過光モードで観察した際に、ポリイミド層内の色相が単一のとき「単一」とし、ポリイミド層内の色相が2層になっているとき「2層」とした。
【0042】
(3)ラマン分光法による配向性パラメータ
得られたフレキシブル基板を、包埋樹脂に包埋して、研磨して断面を観察できるようにした。これを下記の条件で膜厚方向にラマン分光法で分析した。
【0043】
分析方法:レーザーラマン分光法
装置:PDP320((株)フォトンデザイン製)
条件:測定モード;顕微ラマン、対物レンズ;×100、ビーム径;1μm、クロススリット;400μm、光源;Nd−YAG/1064nm、レーザーパワー;1W/45°、回折格子;Spectrograph 300gr/mm、900gr/mm、スリット;100μm、検出器;InGaAs/Roper Scientific 512。
【0044】
この条件で、測定したラマンスペクトルを1615cm−1付近のフェニル基C=C伸縮のラマンバンドで規格化した。この偏向スペクトルによると、725cm−1付近のC−N−C対称・逆対称伸縮のラマンバンドは垂直方向で増加する傾向にあった。一方で、1380cm−1付近のC−N伸縮のラマンバンドは平行方向で増加する傾向にあった。これらのラマンバンドの異方性は分子配向を反映したものであり、バンド強度の違いが大きいほど異方性が大きい、すなわち配向性が高いことを示す。
【0045】
本発明において、配向性パラメータを下記のように設定した。
配向性パラメータ=[A1380cm-1/A725cm-1(平行)]/[A1380cm-1/A725cm-1(垂直)]
ここでAは、その波数におけるラマンバンド強度を示す。
【0046】
(4)イミド化率
ポリアミド酸ワニスをバーコーターで塗布し、乾燥した後、設定された温度で熱処理した。イミド化率を、FTIR−ATRによって測定した。
分析方法:FTIR−ATR
装置:FTS−55A(Bio−Rad社製)
条件:ATRアタッチメント(Ge45°)、光源;特殊セラミックス、検出器;MCT、分解能;4cm−1、積算回数;128回。
【0047】
1380cm−1付近のイミド環のC−N伸縮と1515cm−1付近の芳香環との吸収スペクトル強度を測定し、その比を各ポリイミドについて求めた。このとき、窒素雰囲気中で350℃、1時間キュアしたポリイミドのイミド化率を100%としてイミド化率を算出した。算出式は以下のとおりである。
イミド化率=[A1380cm-1/A1515cm-1(設定温度)]/[A1380cm-1/A1515cm-1(350℃)]。
【0048】
(5)常態時の密着力の測定
フレキシブル基板の銅箔を塩化第2鉄溶液でエッチングして2mm幅のパターンを形成した。この2mm幅の金属層を“テンシロン”UTM−4−100(TOYO BOLDWIN社製)にて引っ張り速度50mm/分、90度剥離で測定した。
【0049】
(6)高温高湿処理後(PCT処理後)の密着力の測定
フレキシブル基板の銅箔を塩化第2鉄溶液でエッチングして2mm幅のパターンを形成した。このサンプルをPCT条件(121℃、100%RH、2気圧)の条件に96時間おいたあと、(5)と同様に密着力を測定した。
【0050】
(7)カール測定
全層を熱処理したフレキシブル基板を100mm×100mmにカットしたあと、25℃40〜60%RHの条件下で24時間放置後、平らな金属板の上に静置して、4画の反りの高さを測定し合計値をフレキシブル基板のカールとした。また、このフレキシブル基板の銅箔を塩化第2鉄溶液で全面エッチングして、同様に、25℃40〜60%RHの条件下で24時間放置後、平らな金属板の上に静置して、4画の反りの高さを測定し合計値を銅エッチング後のカールとした。また、大きくカールして円筒形になった場合は、何周カールしたかを示した。銅箔側を内側としてカールをした場合、測定値を「+」とし、銅箔側を外側としてカールをした場合、測定値を「−」とした。
【0051】
(8)金/錫共晶ボンディング耐性
フレキシブル基板の銅層表面にポジ型レジスト300RH(東京応化(株)製)を乾燥後の膜厚が4μmになるように塗布した後、ボンディング用パターンが形成されたマスクを介して露光し、現像液PMER「P−1S」(東京応化(株)製)を用いて現像した。これを、塩化第2鉄水溶液でエッチングして、アルカリ水溶液でレジスト膜を剥離することにより、ボンディング部分が200本の銅配線パターンを形成した。これを、脱脂、ソフトエッチングをしてから、TINPOSIT「LT−34」(シプレイファーイースト(株)製)で錫めっきを行った。
【0052】
フリップチップボンダーFC2000(東レエンジニアリング(株)製)を用いて、下記の条件で金バンプを200ピン持つICチップのボンディングを行った。
ステージ温度;80℃、荷重;40N、押し込み時間;3秒、ツール温度;380℃、接合界面温度;300℃
接合部分の形状を光学顕微鏡、および、SEMで観察した。
【0053】
以下の製造例に示している酸二無水物、ジアミン、溶媒の略記号の名称は下記のとおりである。
【0054】
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
PDA :p−フェニレンジアミン
DAE :ジアミノジフェニルエーテル
DAPE:2’−メトキシ−4,4’−ジアミノベンズアニリド
SiDA:ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
NMP :N−メチル−2−ピロリドン。
【0055】
製造例1
温度計、乾燥窒素導入口、温水、冷水による加熱冷却装置、および、撹拌装置をつけた反応釜にSiDA12.4g(0.05モル)、PDA73.5g(0.68モル)、DAE54.1g(0.27モル)、NMP1200gを仕込み、30℃で撹拌して完全に溶解させた。次に、30℃でBPDA291.3g(0.99モル)、NMP525gを仕込んだ。60℃で4時間反応させ、20%のポリアミド酸ワニスAを得た。このワニスを目的に応じてNMPで希釈して用いた。このポリアミド酸のキュア後の線膨張率は16×10−6(1/℃)であった。
【0056】
製造例2
温度計、乾燥窒素導入口、温水、冷水による加熱冷却装置、および、撹拌装置をつけた反応釜にPDA81.1g(0.75モル)、DAE50.1g(0.25モル)、NMP1200gを仕込み、30℃で撹拌して完全に溶解させた。次に、30℃でPMDA163.6g(0.75モル)、BPDA70.6g(0.24モル)、NMP266gを仕込んだ。60℃で4時間反応させ、20%のポリアミド酸ワニスBを得た。このワニスを目的に応じてNMPで希釈して用いた。このポリアミド酸のキュア後の線膨張率は16×10−6(1/℃)であった。
【0057】
製造例3
温度計、乾燥窒素導入口、温水、冷水による加熱冷却装置、および、撹拌装置をつけた反応釜にDAPE154.4g(0.6モル)、DAE80.1g(0.4モル)、NMP1200gを仕込み、30℃で撹拌して完全に溶解させた。次に、30℃でPMDA215.9g(0.99モル)、NMP602gを仕込んだ。60℃で4時間反応させ、20%のポリアミド酸ワニスCを得た。このワニスを目的に応じてNMPで希釈して用いた。このポリアミド酸のキュア後の線膨張率は13×10−6(1/℃)であった。
【0058】
製造例4
温度計、乾燥窒素導入口、温水、冷水による加熱冷却装置、および、撹拌装置をつけた反応釜にDAE200.2g(1モル)、NMP1200gを仕込み、30℃で撹拌して完全に溶解させた。次に、30℃でPMDA65.4(0.3モル)、BTDA222.3g(0.69モル)、NMP752gを仕込んだ。60℃で4時間反応させ、20%のポリアミド酸ワニスDを得た。このワニスを目的に応じてNMPで希釈して用いた。このポリアミド酸のキュア後の線膨張率は45×10−6(1/℃)であった。
【0059】
実施例1
接着面側が粗面化された厚み18μmの電解銅箔SQ−VLP(三井金属鉱業(株)製)にポリアミド酸ワニスAを熱処理後の膜厚が3μmになるようにバーコーターで塗布した。これを、80℃で10分間、120℃で10分間乾燥後、窒素雰囲気下、80℃から200℃に30分で昇温して、200℃で30分間の熱処理を行った。このときのIRで測定したイミド化率は62%だった。
【0060】
この上に、ポリアミド酸ワニスAを熱処理後の膜厚が22μmになるようにアプリケーターで塗布した。これを80℃で10分、120℃で10分間乾燥後、窒素雰囲気下、140℃で30分間、140℃から1時間で350℃に昇温して、350℃で1時間熱処理を行った。このときのイミド化率を100%とした。
【0061】
このときの、常態の密着力は14N/cm、PCT処理後の密着力は13N/cmであった。断面を光学顕微鏡で観察した結果、色相が単一であった。写真を図1に示した。ラマン分光法による、配向性パラメータの最大値が銅箔面から3μmにありそのときの値が4.07であった。配向性パラメータと銅箔面からの距離との関係を図3に示した。このフレキシブル基板のカールは、銅箔付きのときが1mm、銅箔をエッチングした後も1mmでありカールが小さかった。ボンディング試験の結果は良好であり、金/錫共晶反応が起こる温度でも、銅−ポリイミド間の剥離やポリイミドの沈み込みなどは観察されなかった。
【0062】
比較例1
接着面側が粗面化された厚み18μmの電解銅箔SQ−VLP(三井金属鉱業(株)製)にポリアミド酸ワニスAを熱処理後の膜厚が25μmになるようにアプリケーターで塗布した。これを、80℃で10分間、120℃で10分間乾燥後、窒素雰囲気下、140℃で30分間、140℃から1時間で350℃に昇温して、350℃で1時間熱処理を行った。
【0063】
このときの、常態の密着力は14N/cm、PCT処理後の密着力は13N/cmであった。断面を光学顕微鏡で観察した結果、色相が単一であった。ラマン分光法による、配向性パラメータの最大値が銅箔面から24μmにありそのときの値が3.53であった。配向性パラメータと銅箔面からの距離との関係を図3に示した。このフレキシブル基板のカールは、銅箔付きのときが1mmであったが、銅箔をエッチングした後銅箔があった方の面を内側にして1.5周カールした
比較例2
接着面側が粗面化された厚み18μmの電解銅箔SQ−VLP(三井金属鉱業製))にポリアミド酸ワニスAを熱処理後の膜厚が3μmになるようにバーコーターで塗布した。これを、80℃で10分間、120℃で10分間乾燥後、窒素雰囲気下、80℃から250℃に30分で昇温して、250℃で30分間の熱処理を行った。このときのIRで測定したイミド化率は98%だった。
【0064】
この上に、ポリアミド酸ワニスAを熱処理後の膜厚が22μmになるようにアプリケーターで塗布した。これを80℃で10分、120℃で10分間乾燥後、窒素雰囲気下、140℃で30分間、140℃から1時間で350℃に昇温して、350℃で1時間熱処理を行った。このときのイミド化率を100%とした。
【0065】
このときの、常態の密着力は14N/cm、PCT処理後の密着力は1N/cmであり、ポリイミド/ポリイミドの界面で剥離した。断面を光学顕微鏡で観察した結果、色相が単一ではなく、2層に観察された。写真を図2に示した。ラマン分光法による、配向性パラメータの最大値が銅箔から3μmにありそのときの値が4.22であった。このフレキシブル基板のカールは、銅箔付きのときが1mm、銅箔をエッチングした後も1mmでありカールが小さかった。
【0066】
実施例2〜18、比較例3〜5
1層目のポリイミドの熱処理温度、1層目のポリイミドの膜厚、ポリアミド酸ワニス、銅箔を表1に示すようにした以外は実施例1と同様の実験を行った。使用した銅箔は、接着面側が粗面化されていない厚み12μmの電解銅箔F0−WS(古河サーキットフォイル(株)製)、および、NS−VLP(三井金属鉱業(株)製)、接着面側が粗面化された厚み12μmの電解銅箔F1−WS(古河サーキットフォイル(株)製)、接着面側が粗面化された厚み18μmの圧延銅箔BHY(日鉱マテリアルズ(株)製)である。
【0067】
【表1】

【0068】
比較例6
接着面側が粗面化された厚み18μmの電解銅箔SQ−VLP(三井金属鉱業(株)製)にポリアミド酸ワニスDを熱処理後の膜厚が3μmになるようにバーコーターで塗布した。これを、80℃で10分間、120℃で10分間した。この上に、ポリアミド酸ワニスCを熱処理後の膜厚が19μmになるようにアプリケーターで塗布した。これを、80℃で10分間、120℃で10分間した。この上に、ポリアミド酸ワニスDを熱処理後の膜厚が3μmになるようにバーコーターで塗布した。これを、80℃で10分間、120℃で10分間した。これを窒素雰囲気下、140℃で30分間、140℃から1時間で350℃に昇温して、350℃で1時間熱処理を行った。このときの、ボンディング試験の結果、金/錫共晶反応が起こる温度で、ポリイミド層の沈み込みが生じ、パターンの先端部の剥離が認められた。
【符号の説明】
【0069】
1 銅箔
2 ポリイミド層
2a ポリイミド層(1層目)
2b ポリイミド層(2層目)
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例1のポリイミド層の光学顕微鏡による色相を示した写真
【図2】比較例2のポリイミド層の光学顕微鏡による色相を示した写真
【図3】実施例1および比較例2の配向性パラメータを示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔上に形成されるポリイミド層を有するフレキシブル基板であって、ポリイミド層の平均線膨張率が、5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下であり、フレキシブル基板の断面を光学顕微鏡の透過光モードで確認すると、ポリイミド層内の色相が単一の層として観察され、ラマン分光法を用いて膜厚方向分析すると、配向性パラメータの最大値が、ポリイミド層の金属箔側面とその反対側の表面との中央よりも金属箔面側にあることを特徴とするフレキシブル基板。
【請求項2】
金属箔上に形成されるポリイミド層を有するフレキシブル基板の製造方法であって、
(a)金属箔に、平均線膨張率が5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下のポリイミドとなるポリアミド酸ワニスを膜厚T1で塗布する工程、
(b)(a)工程で塗布したポリアミド酸をイミド化率が15%以上95%以下になるように熱処理する工程、
(c)(b)工程で形成された層の上に、平均線膨張率が5×10−6以上25×10−6(1/℃)以下であるポリイミドとなるポリアミド酸ワニスを、膜厚T2で塗布する工程(ただし、1≦T2/T1≦100を満たす)、
(d)熱処理をして全層をイミド化する工程、
を有するフレキシブル基板の製造方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−159411(P2006−159411A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349282(P2004−349282)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】