説明

フレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物、フレキシブル基板及びフレキシブル基板の製造方法

【課題】可撓性(柔らかさ)とともに耐熱性が優れたフレキシブル基板のソルダーレジストを提供する。
【解決手段】フレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物は、水添ビフェニル型エポキシ樹脂(A)と、エポキシ基と反応する官能基を有するゴム状化合物(B)とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟な屈曲性が要求されるフレキシブル基板に使用されるソルダーレジストインキ、例えばモバイルノートパソコン、携帯電話などの小型電子機器のプリント配線板製造用のソルダーレジストインキとして用いられるフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジストとしては、カバーレイフィルムと呼ばれるポリイミドフィルムをパターンにあわせた金型で打ち抜いた後、接着剤を用いて貼り付けるタイプや、可撓性を有する被膜を形成する紫外線硬化型、熱硬化型のソルダーレジストインキ又は液状ポリイミドインキをスクリーン印刷により塗布するタイプや、可撓性を有する被膜を形成する液状フォトソルダーレジストインキのタイプがある。
【0003】
カバーレイフィルムでは、銅箔との追随性が無く、高精度なパターンを形成することができないという問題がある。一方、紫外線硬化型ソルダーレジストインキ及び液状フォトソルダーレジストインキでは、基材のポリイミドとの密着性が悪く、十分な可撓性が得られない。また、ソルダーレジストインキの硬化収縮及び硬化後の冷却収縮が大きいため反りが生じてしまうという問題がある。液状ポリイミドインキでは、可溶性芳香族ポリイミドが用いられるが(特許文献1参照)、高価であること、また、印刷時にニジミが生じてしまい、十分な作業性が得られないという問題がある。
【0004】
また、従来の熱硬化型ソルダーレジストインキとしては、メラミン樹脂等を用いたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらは、塗膜表面のみ脱水反応により硬化しており、塗膜内部は、未硬化の部分を有していることによりフレキシブル性が得られている。このため、はんだ耐熱性試験などを繰り返すと完全硬化し、塗膜がもろくなる。また、硬化触媒として、酸触媒を用いているため、電気特性などが劣るという問題もあった。
【0005】
特に、最近の急速な軽薄短小化に技術により、携帯電話等に用いられるビルドアップ基板のコア材も薄くなり、ソルダーレジストの硬化収縮による反りが解決すべき課題となっている。
【特許文献1】特開平1−121364、特許請求の範囲など
【特許文献2】特開昭50−69563、特許請求の範囲、明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、可撓性(柔らかさ)とともに耐熱性が優れたフレキシブル基板のソルダーレジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。
【0008】
(1)水添ビフェニル型エポキシ樹脂(A)と、エポキシ基と反応する官能基を有するゴム状化合物(B)とを含有することを特徴とするフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【0009】
(2)前記水添ビフェニル型エポキシ樹脂(A)は、平均水添率が5〜95%であることを特徴とする(1)記載のフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【0010】
(3)さらに、ビフェニル型エポキシ樹脂(C)を含有し、水添ビフェニル型エポキシ樹脂(A)とビフェニル型エポキシ樹脂(C)との総和((A)+(C))を基準としたときの平均水添率が5〜95%であることを特徴とする(1)又は(2)記載のフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【0011】
(4)前記水添ビフェニル型エポキシ樹脂(A)50質量部に対し、ビフェニル型エポキシ樹脂(C)を、2.5〜950質量部含有していることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか記載のフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【0012】
(5)前記ゴム状化合物(B)は、カルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリルであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか記載のフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【0013】
(6)前記ゴム状化合物(B)は、(1)〜(5)のいずれかのソルダーレジスト中に配合されるエポキシ樹脂のエポキシ基1当量当たり、エポキシ基と反応する官能基(カルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリルの場合はカルボキシル基)が0.5〜3.0当量となるように配合されていることを特徴とするフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【0014】
(7)基板上に、(1)〜(6)のいずれかに記載されたソルダーレジスト組成物からなるソルダーレジストを形成してなることを特徴とするフレキシブル基板。
【0015】
(8)基板上に、(1)〜(6)のいずれかに記載されたソルダーレジスト組成物からなるソルダーレジストを塗布することを特徴とするフレキシブル基板の製造方法。
【0016】
尚、本発明において、平均水添率とは、原料となるエポキシ樹脂の芳香環に、全て水素添加して、シクロヘキサン環になる付加量(M)を100%とし、実際に付加した値(X)から、(X)/(M)として、求めた。
【0017】
平均水添率は、UV分光光度計で、276nmの吸光度から求めた。
【0018】
また、混合物における平均水添率は、原料となる全てのエポキシ樹脂の芳香環に、全て水素添加して、シクロヘキサン環になる付加量(M)を100%とし、実際に付加した値(X)から、(X)/(M)として、求めた。
【発明の効果】
【0019】
一般的にゴム状化合物(ソルダーレジスト硬化物のフレキシブル性を付与する)と液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂は相溶するが、耐熱性に劣る。またビフェニル型エポキシ樹脂(正確にはビキシレノール型エポキシ樹脂)は耐熱性に優れているが、結晶性が高い粉体のエポキシ樹脂であり、均一分散しても均一な硬化物が得られず、結果として、柔軟性に乏しい硬化物が得られる。
【0020】
これに対し、本発明ではこれらの樹脂に代えて水添ビフェニル型エポキシ樹脂を用いている。水添ビフェニル型エポキシ樹脂は耐熱性に優れ、また結晶性が低いためにゴム状化合物と相溶性が良く、柔軟性に優れた硬化物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(組成物)
本発明に係る組成物は、水添ビフェニル型エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂と反応する官能基を有するゴムとを有し、更に必要によりビフェニル型エポキシ樹脂を含有する。
【0022】
(1)水添ビフェニル型エポキシ樹脂(A)
水添ビフェニル型エポキシ樹脂としては、任意の水添ビフェニル型エポキシ樹脂を用いることができる。例えば、特開平11−335439号公報に記載されているように、ビフェノール化合物(ビフェノール、2,2’−ジメチルビフェノール、ビキシレノール、2,2’−ジアリルビフェノール、2,2’,6,6’−テトラアリルビフェノール等)を、三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素錯体を触媒として、水素添加した後、ハエピハロヒドリンを反応させて得られる水添ビフェニル型エポキシ樹脂を使用することができる。しかし、このように、酸性のフェノール性水酸基を中性のアルコール性水酸基にした場合、エピハロヒドリンとの反応では、β開裂だけでなく、α開裂も起こり、エポキシ基に閉環しない化合物が生成することから、得られた反応生成物は、分子中にハロゲン原子を比較的多く含んだ化合物となる。
【0023】
これに対して、例えば、特開2000−226380号公報に記載してあるような工法により、ビフェニル型エポキシ樹脂やビキシレノール型エポキシ樹脂のベンゼン環のみにルテニウム坦持触媒等を用いて選択的に水素添加して得られるエポキシ樹脂は、上記工法と異なり分子中のハロゲン原子少なく、電気特性に優れており、好ましい。市販品としては、ジャパンエポキシレジン(株)社製の商品名YL6800などが挙げられる。
【0024】
本発明に係る水添ビフェニル型エポキシ樹脂の平均水添率は、水添ビフェニル型エポキシ樹脂を低い結晶性(言い換えると、ゴム状化合物との相溶性)と良好な耐熱性を維持することとを考慮して決められる。具体的には、平均水添率は5〜95%、好ましくは25〜75%、より好ましくは35〜65%である。平均水添率が下限値より低いと結晶性が強くなり、ゴム状化合物との相溶性が低下する。上限値より高い場合も同様に、結晶性が強くなり、ゴム状化合物との相溶性が低下すると共に、耐熱性が低下する。
【0025】
水添ビフェニル型エポキシ樹脂の結晶性は、水添率のみで一義的に決められるものではなく、他の条件、例えば原料のビフェニル化合物に付いた置換基(アリル基等)なども水添ビフェニル型エポキシ樹脂の結晶性を決定するための重要な因子であるので、これらをゴム状化合物との相溶性を考慮して適宜設定する。
【0026】
例えば、水添ビフェニル型エポキシ樹脂の数平均分子量は300〜1,000、特に380〜450が好ましい。この範囲内にすることにより、結晶性を低減できると共に、ゴム状化合物との相溶性が良くなり、耐熱性にも優れている。
【0027】
(2)ビフェニル型エポキシ樹脂(C)など他のエポキシ樹脂
本発明では、硬化物のフレキシブル性を阻害する等、塗膜に悪影響を及ぼさない範囲で、周知慣用のエポキシ樹脂、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル化合物;テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどのグリシジルエステル化合物;トリグリシジルイソシアヌレート、N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエンなどを配合することができる。
【0028】
ビフェニル型エポキシ樹脂(ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールエポキシ樹脂などの総称)として、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製の商品名YX4000が挙げられる。
【0029】
ビフェニル型エポキシ樹脂を配合した場合、水添ビフェニル型エポキシ樹脂とビフェニルエポキシ樹脂との総和を基準としたときの平均水添率は、水添ビフェニル型エポキシ樹脂を常温で液状とすることと良好な耐熱性を維持することを考慮して決められる。具体的には、平均水添率5〜95%、好ましくは25〜75%、より好ましくは35〜65である。平均水添率が下限値より低いと結晶性が強くなり、ゴム状化合物との相溶性が低下する。上限値より高い場合も同様に、結晶性が強くなり、ゴム状化合物との相溶性が低下すると共に、耐熱性が低下する。
【0030】
ビフェニル型エポキシ樹脂の配合割合は、耐熱性向上と結晶性の観点から、水添ビフェニル型エポキシ50質量部に対し、2.5〜950質量部、好ましくは10〜300質量部、特に好ましくは30〜100質量部とするのがよい。
【0031】
ビフェニル型エポキシ樹脂の数平均分子量は300〜1,000、特に380〜450が好ましい。この範囲内にすることにより、結晶性を低減できると共に、ゴム状化合物との相溶性が良くなり、耐熱性にも優れている。
【0032】
(3)エポキシ基と反応する官能基を有するゴム状化合物(B)
ゴム状化合物は、ソルダーレジスト硬化物に柔軟性を付与する成分である。
【0033】
エポキシ基と反応する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。これらの官能基を有するゴム状化合物としては、例えば、ポリブタジエンと無水マレイン酸の反応させたマレイン化ポリブダジエン、更にこのマレイン化ポリブタジエンに一級アルコールを反応させ、遊離カルボキシル基を持つマレイン化ポリブタシエンハーフエステル、カルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリル、アミノ基含有ブタジエンアクリロニトニルなどが挙げられる。
【0034】
これらの中で、特にCTBNと呼ばれるカルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリルが好ましい。カルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリルは、分子量が2000〜5000のものが好適である。市販品としては、宇部興産(株)製のハイカーCTBN2000×162、CTBN1300×31、CTBN1300×8、CTBN1300×13、CTBNX1300×9などが挙げられる。
【0035】
これらのゴム状化合物(B)の配合割合は、硬化物の電気絶縁性、柔軟性の観点から、ソルダーレジスト中に配合されるエポキシ樹脂(水添ビフェニル型エポキシ樹脂及び必要により添加されるその他のエポキシ樹脂の総和)のエポキシ基1当量当たり、エポキシ基と反応する官能基(カルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリルの場合はカルボキシル基)0.5〜3.0当量、好ましくは0.8〜2.0当量配合されているのがよい。
【0036】
(4)その他の配合成分
本発明に係るフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物は、組成物の調整や粘度調整のために、有機溶剤を添加しても良い。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などの有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
これら有機溶剤の配合量は、特に限定されるものでないが、コーティング性や硬化塗膜の膜厚確保のため、組成物中に50質量%以下、好ましくは30質量%以下となる割合である。
【0038】
本発明に係るフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物は、塗膜に悪影響を及ぼさない範囲で周知慣用の無機フィラー又は有機フィラーを用いることができる。
【0039】
これらフィラーを例示すれば、硫酸バリウム、タルク、シリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムなどの無機フィラー、及びベンゾグアナミン樹脂などの有機フィラーが挙げられる。このようなフィラーの粒径としては、電気特性を良好に維持する観点から、20μm以下、好ましくは10μm以下とするのがよい。上記範囲より、粒径が大きいと、塗膜から突出したフィラーにより、塗膜の表面状態が悪くなり、また、フィラー界面を通して水分などが入り、電気特性を低下させるので、好ましくない。
【0040】
これらのフィラーの配合量としては、組成物中に、50質量%以下、好ましくは30質量%以下の範囲とするのがよい。上記範囲より多いと塗膜の硬化収縮による反り等は、低減されるが、フレキ性が損なわれるので好ましくない。
【0041】
本発明に係るフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物は、更に必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの周知慣用の着色剤、ハイドロノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の周知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの周知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などの周知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0042】
(5)この組成物によるソルダーレジストの塗布方法および得られる硬化塗膜の特性
以上のような本発明に係るフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物は、回路形成されたフレキシブルプリント配線板に、通常、80〜250メッシュのスクリーン製版を用いて、スクリーン印刷法により塗布する。塗布した基板は、例えば120〜200℃の温度に加熱して、20〜120分間、熱硬化させる。必要に応じて、温度、時間を変えて、二段硬化しても良い。
【0043】
このようにして得られた硬化塗膜は、硬化収縮及び冷却収縮による反りがなく、基材に対する密着性、耐屈曲性、耐折性、柔軟性、耐めっき性、PCT耐性、はんだ耐熱性、電気絶縁性等に優れている。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものである。
【0045】
表1に記載された実施例及び比較例の熱硬化組成物を、回路形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、170℃で60分間硬化させた。
【0046】
(評価方法)
(1)耐溶剤性
得られた基板をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに30分間浸漬し、乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれ・変色について評価した。
【0047】
○:剥がれや変色のないもの
×:剥がれ又は変色のあるもの
(2)耐熱性
実施例及び比較例の熱硬化組成物を用いて耐溶剤性と同様の方法で得られた基板にロジン系フラックスを塗布して260℃のはんだ槽で30秒間フローさせて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより洗浄・乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれが発生しない最大回数。
【0048】
(3)鉛筆硬度
実施例及び比較例の熱硬化組成物を用いて耐溶剤性と同様の方法で得られた基板に、Bから9Hの鉛筆の芯を先が平らになるように研ぎ、約45°の角度で押し付けて、塗膜の下の銅箔が見えない鉛筆の最大硬さを記録した。
【0049】
(4)電気絶縁性
実施例及び比較例の熱硬化組成物を、IPC規格8パターンのくし形電極が形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、170℃で60分間硬化させた。得られた基板の電極間の絶縁抵抗値を印加電圧500Vにて測定した。
【0050】
(5)耐屈曲性
実施例及び比較例の熱硬化組成物を、それぞれカプトン材(厚さ50μm)上にスクリーン印刷で全面印刷し、170℃で60分間硬化させた(乾燥膜厚20μm)。その硬化塗膜の耐屈曲性をIPC−SM−849B TM2.4.29に従って直径1/8インチ、10サイクルの条件にて以下の基準で評価した。
【0051】
○:硬化塗膜にクラックのないもの
△:硬化塗膜に若干クラックがあるもの
×:硬化塗膜にクラックがあるもの
合成例1
温度計、攪拌器、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、カルビトールアセテート214.3部、アゾビスイソブチロニトリル24.0部を入れ、窒素雰囲気下で70℃に加熱せしめた。そこに、アクリル酸18.0部、i−ブチルメタクリレート162.5部、及び2−エチルヘキシルメタクリレート319.5部の混合モノマーを3時間かけて滴下した。その後さらに4時間撹拌・反応させ、不揮発分70%、固形分酸価28.1mgKOH/g、質量平均分子量16,000、FOXの式によるTgの計算値=9.7℃のポリカルボン酸樹脂溶液を得た。以下、このポリカルボン酸樹脂溶液をAワニスと称す。
【0052】
各組成物の成分及び評価を下記表1にまとめる。
【表1】

【0053】
表1から明らかなように、実施例1〜3のソルダーレジストは、屈曲性、耐溶剤性、鉛筆硬度、電気絶縁性が優れ、しかも、耐熱性も優れており、フレキシブル基板用として優れた特性を有することがわかる。
【0054】
これに対し、比較例1は、水添ビフェニル型エポキシ樹脂を配合せずに、ビフェニル型エポキシ樹脂と液状CTBNとを配合したものである。ビフェニル型エポキシ樹脂は結晶性のため、配合不良となった。
【0055】
比較例2は、水添ビフェニル型エポキシ樹脂に代えて水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用い、これと液状CTBNとを配合したものである。比較例2のソルダーレジストは、屈曲性、耐溶剤性、鉛筆硬度、電気絶縁性に優れているが、耐熱性に劣ることがわかる。
【0056】
比較例3は、水添ビフェニル型エポキシ樹脂に代えて水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用い、これと液状CTBNとを配合したものである。比較例3のソルダーレジストは、屈曲性、耐溶剤性、鉛筆硬度、電気絶縁性に優れているが、耐熱性に劣ることがわかる。
【0057】
比較例4は、水添ビフェニル型エポキシ樹脂に代えてビスフェノールA型エポキシ樹脂を用い、これと液状CTBNとを配合したものである。このものは撹拌時にゲル化してしまった。
【0058】
比較例5は、水添ビフェニル型エポキシ樹脂もビフェニル型エポキシ樹脂もビスフェノール型エポキシ樹脂もゴムも配合しない例である。このものは、屈曲性、鉛筆硬度、電気絶縁性優れているが、耐溶剤性、耐熱性に劣ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添ビフェニル型エポキシ樹脂(A)と、エポキシ基と反応する官能基を有するゴム状化合物(B)とを含有することを特徴とするフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【請求項2】
前記水添ビフェニル型エポキシ樹脂(A)は、平均水添率が5〜95%であることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【請求項3】
さらに、ビフェニル型エポキシ樹脂(C)を含有し、水添ビフェニル型エポキシ樹脂(A)とビフェニル型エポキシ樹脂(C)との総和((A)+(C))を基準としたときの平均水添率が5〜95%であることを特徴とする請求項1又は2記載のフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【請求項4】
前記水添ビフェニル型エポキシ樹脂(A)50質量部に対し、ビフェニル型エポキシ樹脂(C)を、2.5〜950質量部含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【請求項5】
前記ゴム状化合物(B)は、カルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【請求項6】
前記ゴム状化合物(B)は、請求項1〜5のいずれかのソルダーレジスト中に配合されるエポキシ樹脂のエポキシ基1当量当たり、エポキシ基と反応する官能基が0.5〜3.0当量となるように配合されていることを特徴とするフレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物。
【請求項7】
基板上に、請求項1〜6のいずれかに記載されたソルダーレジスト組成物からなるソルダーレジストを形成してなることを特徴とするフレキシブル基板。
【請求項8】
基板上に、請求項1〜6のいずれかに記載されたソルダーレジスト組成物からなるソルダーレジストを塗布することを特徴とするフレキシブル基板の製造方法。

【公開番号】特開2007−314695(P2007−314695A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146993(P2006−146993)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】