説明

フレキシブル要素を有する貫通ピボット及びそのようなピボットを備える宇宙船

【課題】フレキシブル要素を有する貫通ピボット及びそのようなピボットを備える宇宙船を提供する。
【解決手段】貫通ピボットは第1のリング(1)及び第2のリング(2)を備え、2つのリングのうちの1つは他方のリングに対して長手方向軸(10)の周りで回転可能である。ピボットはさらに少なくとも1つの浮動フレーム(3)を備える。2つのリング(1、2)は、その2つのリング(1、2)を横断する方向に延びる幾つかのフレキシブル要素(7、8)の、少なくとも1組の第1セットと、それぞれ、少なくとも1組の第2セットとによって、浮動フレーム(3)に接続される。
浮動フレーム(3)は軸(10)周りの回転シリンダの形のリング、又はリング部分要素(3a、3b、3c)で構成されることができ、浮動フレームはリング(1、2)の内側あるいは外側のいずれかに区別なく置かれることが可能である。

少なくとも1つの要素又は装置の、所定の照準方向への微細な回転ガイダンスに関する、人工衛星のような宇宙船の分野への用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貫通ピボット、すなわちピボットの両端から外に延びる回転軸又は2つのピボット間の回転軸を支持できる装置、及び少なくとも1つのそのようなピボットを備える宇宙船に関する。本発明は、宇宙船の少なくとも1つの要素又は装置の、所定照準方向への細かい回転ガイダンスに関する、人工衛星のような宇宙船の分野に適用される。
【背景技術】
【0002】
宇宙用途においては、地表上の点に向けてそれらの照準を合わせたまま保つように、例えばそれらを惑星、受信機又は送信機のような外部の目標物に向けるため、所定の方向に宇宙船又は宇宙飛行体の、例えばアンテナ、マスト又は1つの装置のような一定の要素を向けることができるか、又は代わりに地表あるいは幾つかの天体表面における特定の領域を走査できることが必要である。これらの位置決めは、この方向を維持する能力における、避け難いドリフトを補償するために、しばしば修正される必要があり、これら幾多の修正は、これら宇宙用の付属品及びそれらの支持装置が、非常に多くの微細な回転周期を経験する必要があることを意味する。この局面は微細照準局面として知られる。
【0003】
人工衛星を軌道に乗せることが不可逆的な作業であることを考慮すると、宇宙船の設計に当っては、これら全ての繰り返し応力に耐える能力を保証するように、これらの支持装置が繰り返し数で測って非常に長い寿命を持つことを確実にする必要がある。例えば、寿命は30万サイクルを超え得る。支持装置への別の要求は、とりわけ支持される軸に作用する外力及び曲げモーメントに関する優れた機械的耐性、高い横剛性、高精度で遊びのないガイダンス、典型的には正と負の両方向に約5〜10°の、フレキシブル要素に対する大きな回転振幅、及び小さく一定の抵抗トルクを含む。
【0004】
十字形のフレキシブルなウェブを有するピボット、特に「ベンディックス・フリーフレックス・ピボット」("Bendix freeflex pivot")の名前で知られる種類のピボットを用いた、回転軸用の支持装置を作ることは既知の慣行である。このタイプのピボットは貫通ピボットではない。従って、支持される軸を一端のみにおいて、片持ちとして取り付ける必要があり、これはピボットのウェブに相当な応力をかけ、例え2組のピボット取付けであっても支持構造に相当な応力を伝達する。従ってこのタイプのピボットは機械的耐性と横剛性が限られており、宇宙用途を対象とした微細照準装置を作り出す際に伴う全ての要求には満足に応えられない。
【0005】
玉軸受で構成される2つのピボットを備えた装置を用いて軸を支持することも又、既知の慣行である。このような装置は、往復運動又は振動運動にさらされるとかなり摩耗し、従って限られた寿命しか有さない。それは又、宇宙用途を対象とした微細照準装置を作り出す際に伴う全ての要求には満足に応えられない。
【0006】
仏国特許出願公開第2 703 415号明細書は、特に宇宙用途のための微細照準装置を作り出すのに適する、ウェブタイプの貫通ピボットを備えた回転軸を支持する装置を記述しているが、そのピボットの角度能力は小さい回転角度に限定され、必要な角度修正がより大きくなると直ちに不適当になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はこれらの問題を解決し、そして高精度で遊びのないガイダンスを可能にし、小さい抵抗トルクを与え、少なくとも30万回を超える非常に多数の回転振動に耐え得る寿命を持ち、仏国特許出願公開第2 703 415号明細書に記述されているピボットよりも少なくとも2倍の角度能力を有する、外力及び曲げモーメントに耐える優れた機械的耐性と能力、及び高い横剛性を伴うフレキシブル要素貫通ピボットを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は第1のリング及び第2のリングを備える貫通ピボットに関し、2つのリングが同一の長手方向軸の周りで回転対称性を有し、2つのリングのうちの1つが他方のリングに対して長手方向軸の周りで回転可能であり、それが長手方向軸の周りで動くことができる、少なくとも1つの浮動フレームを備え、2つのリングを横断する方向に延びる幾つかのフレキシブル要素の、少なくとも1組の第1セットと、それぞれ、少なくとも1組の第2セットとによって、2つのリングが浮動フレームに接続されることを特徴とする。
【0009】
有利なことに、第1セットのフレキシブル要素は、浮動フレームに接続された第1端、及び第1のリングに接続された、第1端とは反対の端部である第2端を有し、第2セットのフレキシブル要素は、浮動フレームに接続された第1端、及び第2のリングに接続された、第1端とは反対の端部である第2端を有する。
【0010】
静止状態において、フレキシブル要素は2つのリングに対して放射状に配置され得る。あるいは、代わりにフレキシブル要素はリングの半径方向に対して同一の傾斜角αだけ傾くことができ、そして同じ方向に傾き得る。
【0011】
代わりに、静止状態において、第1のリングに接続されたフレキシブル要素は、第1のリングの半径方向に対して同一の傾斜角αだけ傾くことができ、第2のリングに接続されたフレキシブル要素は、フレキシブル要素が傾いている方向に対して、反対方向であるが同一の傾斜角αだけ傾き得る。
【0012】
浮動フレームは2つのリングの外側か、2つのリングの内側に区別なく置かれ得る。
【0013】
浮動フレームは一体物で、長手方向軸の周りで回転対象性を有することができ、又はそれにフレキシブル要素の第1端が取り付けられている、幾つかのリング部分から構成され得る。
【0014】
フレキシブル要素は、フレキシブルなウェブであることが望ましい。
【0015】
有利なことに、2つのリングの少なくとも1つは長手方向軸の中心上に貫通穴を有し、前記中心穴を通過する貫通軸を受けることができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、第1のリングはフレキシブル要素の第2端が取り付けられている、少なくとも1つのシリンダを備え、第2のリングはフレキシブル要素の第2端が取り付けられている、少なくとも1つのシリンダを備え、それらのシリンダは同じ外径を有し、長手方向軸に沿って積み重ねられている。
【0017】
本発明はまた、少なくとも1つの貫通ピボットを備える宇宙船にも関する。
【0018】
本発明は単に限定されない例示の目的で記載される、多くの特定の実施形態に対する以下の記述の過程で、添付図を参照することによって、より良く理解され、それに関する他の対象、詳細、特徴及び利点がさらにはっきりと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態による、静止状態の中心位置での、外側浮動フレームと放射状のウェブを有する2段ピボットの一例の、断面概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による、正の回転位置における2段ピボットの一例の、断面概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による、負の回転位置における2段ピボットの一例の、断面概略図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による、内側浮動フレームを有する2段ピボットの一例の、断面概略図である。
【図5a】本発明の第3の実施形態による、重ねられた固定リング及び可動リングを有する2段ピボットの一例の、断面概略図である。
【図5b】本発明の第3の実施形態による、重ねられた固定リング及び可動リングを有する2段ピボットの一例の、側面概略図である。
【図6a】本発明の第4の実施形態による、内側浮動フレーム及び同一方向に傾いたウェブを有する2段ピボットの一例の、断面概略図である。
【図6b】様々な傾斜角に対して、このタイプのピボットで得られる、加えられたトルクと回転角度との間の関係を示すグラフの一例である。
【図7a】本発明の第5の実施形態による、内側浮動フレーム及び2つの反対方向に傾いたウェブを有する2段ピボットの一例の、断面概略図である。
【図7b】様々な傾斜角に対して、このタイプのピボットで得られる、加えられたトルクと回転角度との間の関係を示すグラフの一例である。
【図8】本発明の第4の実施形態による、2段ピボットの一例の斜視図である。
【図9】本発明の第5の実施形態による、2段ピボットの一例の斜視図である。
【図10a】本発明による、2段よりも多い段数を有するピボットの一例の斜視図である。
【図10b】本発明による、2段よりも多い段数を有するピボットの一例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1において断面で概略的に表わされているピボットは、第1のリング1及び第2のリング2を備え、2つのリングは長手方向軸10の回転円筒の形を示す。リングの1つ、例えばリング2は軸10の周りで回転可能であって回転子を構成し、他方のリング、例えばリング1は固定されて固定子を構成する。代わりに、リング1と2の役割は逆転し得る。回転子、例えばリング2は、図示されていないアクチュエータに接続されるように意図され、固定子、例えばリング1は図示されていない固定構造物に取り付けられる。少なくとも回転子は長手方向軸10上を中心とする貫通軸を有し、前記中心穴を通る貫通軸を受けることができる。リング1と2の各々は、例えばフレキシブルなウェブのようなフレキシブル要素7、8によりそれぞれ浮動フレーム3に接続され、浮動フレームは図1〜3及び図6〜9に表わされるように、2つのリング1と2の外側、あるいは図4及び5に表わされるように、2つのリング1と2の内側に位置することができる。浮動フレームは、例えば図1に示すように、軸10の周りの回転円筒の形である第3のリングを備えてもよく、あるいは回転子と固定子の円周のまわりに均等に分布するリング部分を形成する、幾つかの独立した別々の要素3a、3b、3cから構成されてもよく、そして図8、9、10に表わされるように、フレキシブル要素7、8の上端部に接続され得る。代わりに、浮動フレームは図5aに表わされるように、回転子及び固定子の内側に位置し得る。各フレキシブル要素7又は8は例えば、第1のリング又はそれぞれ第2のリングに取り付けられた下端と、浮動フレーム3に取り付けられた上端とを有する、平らな長方形板タイプの1つ以上のウェブから構成され得る。各フレキシブル・ウェブ7、8は、固定リング及び可動リング1、2に対して横断方向及び外側に延びる。浮動フレーム3は如何なるアクチュエータにも、又は如何なる固定構造物にも接続されず、従ってフレキシブル・ウェブ7、8の運動に従って自由に回転する。
【0021】
各種の図中に概略的に表わされる例示的な実施形態において、固定リング1は例えば120°離れて角度的に隔てられている、第1セットの3つのフレキシブル・ウェブ7により、浮動リング3に接続され、可動リング2は例えば120°離れて角度的に隔てられている、第2セットの3つのフレキシブル・ウェブ8により、浮動リング3に接続されている。勿論、ウェブの各セットにおけるフレキシブル・ウェブの数は3つに制限されず、同一のセットのウェブ間の間隔は120°以外であってもよい。
【0022】
3つの矢印12により識別される静止位置において、すなわちリングを回転させるように促すトルクがないとき、各フレキシブル・ウェブ7、8はリングの半径方向に一致し、図1、4、及び5aに表わされているような長手方向軸10を通る、横断方向に配置されることができ、あるいは図6a及び7aに表わされているような、リングの半径方向に対して非ゼロの傾斜角αをなす横断方向に配置され得る。傾斜角αがゼロでない場合、ウェブはピボット中心にある軸10に向かって集中せず、これはウェブが基本的に曲げにおいて作用し、半径方向のウェブで得られるものよりも大きな角運動に対する容量を得ることを可能にし、それは同じ回転角度に対して、引張と圧縮における動作モードへの移行を生じるであろう。例えば、傾斜角αは2°〜10°、そして望ましくは4°〜5°であり得る。
【0023】
図2及び3は、可動リング2が時計回り方向に相当する正の方向へ、又はそれぞれ、反時計回り方向に相当する負の方向へ長手方向軸10の周りで回転するときの、フレキシブル・ウェブ7、8の変形を示す。回転子を構成する可動リングがリング2であり、固定支持部に接続された固定子を構成する固定リングがリング1である場合、静止位置から出発して、時計回り方向に相当する正の方向への可動リング2の回転運動は、第2セットのウェブのフレキシブル・ウェブ8を介して、浮動フレーム3を正の方向に回転させ、浮動フレーム3を介して第1セットのウェブのフレキシブル・ウェブ7の曲げを生じさせる。可動リング2が負の方向へ回転する場合、ピボットは同じように動作するが、フレキシブル・ウェブの働きは逆転する。
【0024】
ピボットは、浮動フレーム3が例えば図4の第2実施形態において表わされるように、2つのリング1、2の内側で形成される場合、また同じように動作する。
【0025】
図5a及び5bの第3実施形態は、可動リング2と固定リング1が同じ外径を持ち、重ねられた互いに平行な異なる平面に配置された場合に相当する。可動リング2は、固定リング1の各々の側に対称に配置された、2つの同一のはっきりと区別できる環状部品2a、2bを有する。この場合、可動リング2の2つの部品2a、2bの各々が、この実施形態において2つのリング1、2の内側に位置する、浮動フレーム3に接続され得るように、フレキシブル要素8a、8bの幾つかが二重にされる必要がある。
【0026】
本発明の第4実施形態において、及び図6aで3つの矢印12により識別される、静止した中心にある位置において、第1及び第2セットのウェブのフレキシブル・ウェブ7、8は、同一の方向に、例えば図6aにおいて点線で表わされている、リングの半径方向13に対して、負の方向として知られる反時計回り方向に、角度αだけ傾いている。この場合、回転子を構成する可動リングがリング2であり、固定支持部に接続された固定子を構成する固定リングがリング1である場合、静止位置から出発して、時計回り方向に相当する正の方向への外側可動リング2の回転運動は、第3のリング3を正の方向に回転させ、第1セットのフレキシブル・ウェブ7の曲げを生じさせ、一方で第2セットのフレキシブル・ウェブ8は、それらが傾いている方向の故に曲がらない。
【0027】
さらに、静止位置から出発して、可動リング2の負の方向への回転運動は、第2セットのウェブのフレキシブル・ウェブ8の曲げを生じさせる。
【0028】
本発明の第5の実施形態において、及び図7aで3つの矢印12により識別される静止した偏心位置において、第1及び第2セットのウェブのフレキシブル・ウェブ7、8は角度αだけ傾斜するが、2つの方向は反対である。例えば、第1セットのフレキシブル・ウェブ7は、リング1、2の半径方向に対して負の方向に−αの角度だけ傾いているが、一方で第2セットのフレキシブル・ウェブ8は正の方向に+αの角度だけ傾いている。この実施形態において、ピボットは図7に表わされるように、正の方向に相当する1つの回転方向のみに働く。静止位置から出発して、可動リング2の正の方向への回転運動は、第2セットのウェブのフレキシブル・ウェブ8を回転させ、これは第3のリング3の正方向への回転を生じ、第1セットのフレキシブル・ウェブ7の曲げを発生させる。
【0029】
本発明によるピボットの様々な実施形態において、固定リング1は先行技術のピボットのようには可動リング2に直接接続されないが、2つの固定リングと可動リングは浮動フレーム3を介して、及びピボットの第2段を構成する追加セットのウェブを介して接続され、2組のウェブ7、8は直列に動作する。この構成は同じ剛性の等価なフレキシブル・ウェブを使用することにより、1段のピボット構成の2倍の角度能力を得ることを可能にする。
【0030】
図6b及び7bに表わされているサンプルのグラフは、様々な傾斜角に対して、図6aに対応する本発明の第4実施形態、及びそれぞれに、図7aに対応する本発明の第5実施形態によって生み出される、ピボット用の可動リングに作用するトルクの関数として得られた回転振幅を示す。図6bのグラフにおいて、ピボットは静止位置に相当する基準位置の周りに、6°程度にわたる角度振幅で振動している。図7bのグラフにおいて、ピボットは選ばれた基準位置の周りに、例えば3°に等しくなるまで振動している。しかしながら、これらの値は単に限定されない例として与えられており、これより大きい角度能力を有するピボットを作ることも可能である。角度能力は使用されるフレキシブル・ウェブの材料、長さ、及び横断面に依存する。ウェブがより長く、より薄くなるほど、それらはより柔軟になり角度能力が大きくなるが、耐荷重能力は減少する。従ってウェブの寸法及び材料の選定は、求められる用途と求められる角度能力による。
【0031】
図8における斜視図は、浮動フレーム3が、回転子と固定子の円周のまわりに均等に分布するリング部分を形成する、3つの別々の要素3a、3b、3cから構成され、それにフレキシブル・ウェブ7、8全ての上端が取り付けられている、本発明の第3実施形態による、静止した中心位置におけるピボットの一実施形態を表わす。2つの固定リング1及び可動リング2は、長手方向軸10に沿って積み重ねられた、同じ長手方向軸10と同じ外径を有する回転中空シリンダで構成される。中央のシリンダ1は、例えばアクチュエータに接続され、中央のシリンダ1の各々の側に対称に配置されている2つのシリンダ2a、2bは、図示されていない固定構造によって共に接合され得る。2組のフレキシブル・ウェブの全てのウェブ7、8は、同じレベルに位置して同じ長さであり、半径方向に対し、そして同一の傾斜方向に同じ角度だけ傾いている。各々のウェブ7は中央のシリンダ1に取り付けられた下端と、浮動フレームの要素3a、3b、3cに接続された上端を有する。各々のウェブ8は2つの半ウェブ8a、8bで構成され、各々がシリンダ2a、2bの1つにそれぞれ取り付けられた下端と、浮動フレームの同一要素3a、3b、3cに接続された上端とをそれぞれ有する。第2セットのフレキシブル・ウェブの、各ウェブ8の2つの半ウェブ8a、8bは、第1セットのフレキシブル・ウェブのウェブ7の各々の側に配置されている。中央のシリンダ1は、例えばその内面にしっかりと固定された軸を受けることが出来るように、スプライン加工された内面を持ち得る。中央のシリンダ1の各々の側に対称に位置する2つのシリンダ2a、2bへと可動リング2を分割することは、ピボットに加わる荷重のより良い分布を可能にし、従ってその寿命を改善する。代わりに、固定され得る中央のシリンダ1と、動き得る2つの外側シリンダ2a、2bの役割を逆にすることが可能であり、そのキーポイントはピボットの2つの、内側リング1と外側リング2との間に相対運動が存在することである。
【0032】
図9の斜視図は、浮動フレーム3が、全てのフレキシブル・ウェブ7、8の上端がそれに取り付けられている3つの別々の要素3a、3b、3cで構成される、本発明の第2実施形態による、静止した偏心位置におけるピボットの1つの例示的な実施形態を表わす。本発明のこの例示的な実施形態において、図8に対する差はウェブが静止状態で傾く方向にある。各ウェブ8の2つの半ウェブ8a、8bは、半径方向に対し、そして同一の傾斜方向に同一角度だけ傾いており、一方でウェブ7は半径方向であるが、しかしウェブ8が傾いている方向とは逆の方向に対して、同一角度だけ傾いている。
【0033】
前述の全ての例示的な実施形態は、同じウェブの寸法に対して、1段のみのウェブを有するピボットの2倍の角度能力を備える、2段のフレキシブル・ウェブを有するピボットに関する。しかしながら、さらに大きな角度能力を得るため、2段よりも多い段数を有するピボットを同様に生み出すことが可能である。
【0034】
図10a及び10bの斜視図及び側面図は、内側シリンダ1を含む内側リングにわたって角度方向に分布している、3つのフレキシブル・ウェブの7組、7、8a、8b、9a、9b、11a、11bの4段、内側リングの各々の側に対称に位置する、2つの外側シリンダ2a、2bを含む外側リング、及び5つの内側浮動フレーム4a、4bと外側浮動フレーム3、5、6を有する、多段ウェブ型の貫通ピボットの一例を表わし、フレキシブル・ウェブはそれぞれ各種の浮動フレーム及び各種シリンダに取り付けられている。3つの浮動フレーム3、5、6は3つの別個の要素で構成されるが、代わりに環状リングでも構成され得る。第4段は外側リングの2つの外側シリンダ2a、2bに取り付けられた4組の外側フレキシブル・ウェブ9a、9b及び11a、11bで構成され、前記外側シリンダは相互に、例えば図示されていない固定構造物を介して接続されることが可能である。
【0035】
本発明は特定の実施形態に関して記述されているが、決してそれに限定されず、本発明の範囲内の、記述された手段及びそれらの組合せと技術的に等価なもの全てを、本発明が包含することは極めて明らかである。各セットにおけるフレキシブル・ウェブの数は、とりわけ3以外であり得る。
【符号の説明】
【0036】
1 第1のリング
2 第2のリング
2a シリンダ
2b シリンダ
3 浮動フレーム
3a リング部分
3b リング部分
3c リング部分
4a 内側浮動フレーム
4b 内側浮動フレーム
5 外側浮動フレーム
6 外側浮動フレーム
7 フレキシブル要素
8 フレキシブル要素
8a フレキシブル要素
8b フレキシブル要素
9a 外側フレキシブル・ウェブ
9b 外側フレキシブル・ウェブ
10 長手方向軸
11a 外側フレキシブル・ウェブ
11b 外側フレキシブル・ウェブ
12 矢印
13 リングの半径方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のリング(1)及び第2のリング(2)を備え、2つのリングが同一の長手方向軸(10)の周りで回転対称性を有し、2つのリングのうちの1つが他方のリングに対して長手方向軸(10)の周りで回転可能である貫通ピボットであって、長手方向軸(10)の周りで動くことができる、少なくとも1つの浮動フレーム(3)を備え、前記2つのリング(1、2)を横断する方向に延びる幾つかのフレキシブル要素(7、8)の、少なくとも1組の第1セットと、それぞれ、少なくとも1組の第2セットとによって、前記2つのリング(1、2)が前記浮動フレーム(3)に接続されることを特徴とする貫通ピボット。
【請求項2】
前記第1セットの前記フレキシブル要素(7)が、前記浮動フレーム(3)に接続された第1端、及び前記第1のリング(1)に接続された、前記第1端とは反対の端部である第2端を有し、前記第2セットの前記フレキシブル要素(8)が、前記浮動フレーム(3)に接続された第1端、及び前記第2のリング(2)に接続された、前記第1端とは反対の端部である第2端を有することを特徴とする、請求項1に記載の貫通ピボット。
【請求項3】
静止状態において、前記フレキシブル要素(7、8)が前記2つのリング(1、2)に対して放射状に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の貫通ピボット。
【請求項4】
静止状態において、前記フレキシブル要素(7、8)が、前記リング(1、2)の半径方向に対して同一の傾斜角(α)だけ傾き、そして同一方向に傾いていることを特徴とする、請求項2に記載の貫通ピボット。
【請求項5】
静止状態において、前記第1のリング(1)に接続された前記フレキシブル要素(7)が、前記第1のリング(1)の半径方向に対して同一の傾斜角(α)だけ傾き、前記第2のリング(2)に接続された前記フレキシブル要素(8)が、前記フレキシブル要素(7)が傾いている方向に対して、反対方向であるが同一の傾斜角(α)だけ傾くことを特徴とする、請求項2に記載の貫通ピボット。
【請求項6】
前記浮動フレーム(3)が、前記2つのリング(1、2)の外側に位置することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の貫通ピボット。
【請求項7】
前記浮動フレーム(3)が、前記2つのリング(1、2)の内側に位置することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の貫通ピボット。
【請求項8】
前記浮動フレーム(3)が一体物であり、前記長手方向軸(10)の周りで回転対象性を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の貫通ピボット。
【請求項9】
前記浮動フレーム(3)が、前記フレキシブル要素(7、8)の前記第1端が取り付けられる、幾つかのリング部分(3a、3b、3c)で構成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の貫通ピボット。
【請求項10】
前記フレキシブル要素(7、8)がフレキシブルなウェブであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の貫通ピボット。
【請求項11】
前記2つのリング(1、2)の少なくとも1つが、前記長手方向軸(10)において中心にある貫通穴を有し、前記中心穴を通過する貫通軸を受けるのが可能であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の貫通ピボット。
【請求項12】
前記第1のリング(1)が、前記フレキシブル要素(7)の前記第2端が取り付けられる、少なくとも1つのシリンダ(1)を含み、前記第2のリング(2)が、前記フレキシブル要素(8)の前記第2端が取り付けられる、少なくとも1つのシリンダ(2a、2b)を含み、前記シリンダ(1、2a、2b)が同じ外径を有し、前記長手方向軸(10)に沿って積み重ねられることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の貫通ピボット。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の、少なくとも1つの貫通ピボットを備える宇宙船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【公開番号】特開2010−270912(P2010−270912A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−113835(P2010−113835)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】