説明

フローリング材

【課題】床暖房システムを採用し、且つリフォーム需要に適するような板厚12mmという極めて薄いフローリング材の開発を技術課題としたものである。
【解決手段】本発明のフローリング材1は、丸太状の原木から引き割った床張り用の一枚無垢の長尺板材であって、この長尺板材の側面4には、一方に凸状の雄実突起41を含む雄実40が形成され、その対向面に凹状の小穴46を含む雌実45が形成される本実加工がなされ、且つ前記雄実40は、上堀込部42における板幅方向に向かっての上段堀込寸法を、下堀込部43の下段堀込寸法より大きく設定し、一方前記雌実45は、雄実形状に対応して上張出部47における上段張出寸法を下張出部における下段張出寸法よりも大きく設定したことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床張り部材であるフローリング材に関するものであり、特に実用施工に適するように薄板状に加工するにあたっての最適化技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、建物の床用フローリング材として天然無垢材の価値が評価され、多くの資材が提供されている。
この床施工にあたっての関連する状況として、床暖房を設備することが普及してきていること、新築住宅に比べて、既存の住宅のリフォーム需要がより多くあること等の状況があり、これに応じて種々の解決すべき課題が生じてきている。
即ち床暖房を具えるときには、床面が暖房用資材により加熱、放冷を繰り返すこととなる。このため天然無垢材の場合、その反り返り等が合板に比べて生じがちであることから、これを回避すべく単なる板材加工に留まらない入念な加工が求められている。
ちなみに本出願人は、既にこの点については充分実用に耐えるフローリング材を提供することができる技術を確立しており、特許出願に及んでいる(特許文献1)。
【0003】
一方リフォーム需要が増加したことにより生じた技術課題としては、従来の合板製フローリング材の厚さが12mmであることから、取り替えられるフローリング材についてもこの厚さ寸法が求められていることである。このように薄板にすることは、無垢材としては、前記反りの発生、施工時の止め釘による割れを回避することが極めて難しくなり、現実に板厚12mmの無垢板材は、市場に提供されていない。
このため、床暖房を導入するリフォームの際の要求に対しては、床面の若干の上昇による多くの施工箇所の寸法合わせをしながら妥協的に板厚15mmの無垢材のフローリング材を使用しているのが現状である。
【特許文献1】特願2005−287215
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、床暖房システムを採用し、且つリフォーム需要に適するような板厚12mmという極めて薄い設定寸法を可能としたフローリング材の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載のフローリング材は、丸太状の原木から引き割った床張り用の一枚無垢の長尺板材であって、この長尺板材の側面には、一方に凸状の雄実突起を含む雄実が形成され、その対向面に凹状の小穴を含む雌実が形成される本実加工がなされ、且つ前記雄実は、上堀込部における板幅方向に向かっての堀込幅を、下堀込部の堀込幅より大きく設定し、一方前記雌実は、雄実形状に対応して上張出部における張出幅を下張出部における張出幅よりも大きく設定したことを特徴として成るものである。
【0006】
請求項2記載のフローリング材は、前記請求項1の要件に加え、前記長尺板材の板厚寸法については、12mm±1mmであることを特徴として成るものである。
【0007】
請求項3記載のフローリング材は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記雄実における上堀込部、雄実本体、下堀込部における厚さ方向寸法上段厚、中段厚、下段厚を設定するにあたっては、中段厚を他より大きく設定するものであり、一方雌実は、これに対応してほぼ密に雄実と継合する寸法設定がされていることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項4記載のフローリング材は、前記請求項1、2または3記載の要件に加て、前記長尺板材は、挽き割り後に含水率約4〜8%に乾燥がなされるとともに、表面には天然素材のワックスの塗装がなされていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項5記載のフローリング材は、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記長尺板材は、挽き割り後に含水率4〜5%に乾燥した後に、含水率を6〜8%まで上昇させた後、ワックス塗装されていることを特徴として成るものである。
【0010】
更に請求項6記載のフローリング材は、前記請求項1、2、3、4または5記載の要件に加え、前記長尺板材の下面には、長尺板材の長手方向にわたって反り防止溝が形成されるものであり、この反り防止溝の形成間隔は13〜19mm間隔で形成されていることを特徴として成るものである。
【0011】
更にまた請求項7記載のフローリング材は、前記請求項1、2、3、4、5または6記載の要件に加え、前記長尺板材に塗装される天然素材は、蜜ろうワックスであり、この蜜ろうワックスは単位面積当たりの質量が約5g/m2 以下で塗装されることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフローリング材は、上述した構成により以下のような効果を奏するものである。
すなわち請求項1記載のフローリング材によれば、実の部位に関する新規な構造を有していることから、板厚を薄くした無垢材フローリング材同士をしっかりと連結固定することができる。
【0013】
また請求項2記載のフローリング材によれば、板厚を12mmとしていることから、リフォーム等の際に既存のフローリング材を取り除いた後に、いわゆるレベル調整作業を行うことなく敷設することができる。
【0014】
また請求項3記載のフローリング材によれば、雄実、雌実部分の寸法が最適なものとしていることから、特に板厚を薄くしていった場合であっても、実部分の強度が保たれ、釘、ステープル等の固定手段によって割れ等が生じることを回避することができ、確実に固定することができる。
【0015】
また請求項4記載のフローリング材によれば、含水率約4〜8%に乾燥された後、ワックス塗装がなされているため、耐久性が高く、径年変化等の変形が生じにくく、不具合の発生が少ない。また長尺板材そのものはもちろんのこと、この板材に施される表面化粧にも蜜ろうワックス等の天然素材が適用されるため、ハウスシック症候群を誘発せず、燃やしてもダイオキシン等の有害物質を発生することが全くなく、人や環境に優しいフローリング材を提供できる。
【0016】
また請求項5記載のフローリング材によれば、長尺板材は、挽き割り後に、一度含水率4〜5%に乾燥されるため、木材組織中の導管が機能を失い、水分の取り込みがほとんど無くなり、その後周辺環境の変化によっても水分値に影響を受けにくくなる。従って、製品たるフローリング材の変形、割れ、反り、突き上げ、破損が防止できる。また一度含水率4〜5%に乾燥した後に、含水率を少し上昇させて6〜8%とするため、床暖房システムを入れたとき(含水率5%程度となる)と、切ったとき(天気等の周辺環境にもよるが例えば含水率10%程度となる)のフローリング材の含水率の差が、少なくなる。従って床暖房システムを入れたときと切ったときのフローリング材の含水率の差に起因する収縮、膨張時の大きさの差が僅かで、隣接するフローリング材で隙間が開き過ぎたり、隣接し過ぎたりということが生じない。また機械乾燥と加水を数回繰り返すことにより、含水率に偏りのない均質なフローリング材が得られる。
【0017】
更に請求項6記載のフローリング材によれば、長尺板材の下面には、長尺板材の長手方向にわたって反り防止溝が、形成間隔13〜19mm間隔という比較的短いピッチ間隔で形成されるため、フローリング材に反りが生じ難い。
【0018】
更にまた請求項7記載のフローリング材によれば、長尺板材に塗装される天然素材は、蜜ろうワックスであり、この蜜ろうワックスは単位面積当たりの塗布量が約5g/m2 以下で塗装されるため、単位面積当たりの塗布量が充分に抑えられ、高価な蜜ろうワックスを使用しても、塗装が低コストで行え、また見た目にも極めて綺麗なフローリング材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の最良の形態は、具体的には以下の図示の実施例に述べる通りである。
【実施例】
【0020】
以下本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。まず本発明のフローリング材1は、一例として長さ約1818mm(雄実50の寸法除く)、幅約85mm(雄実40の寸法除く)、厚さ約12mmの一枚無垢の檜材、杉材等の長尺平板材である。サイズとしては、この他、長さ1212mm(雄実50の寸法除く)、幅約85mm(雄実40の寸法除く)、厚さ約12mmの寸法のものや、その他厚さは12mmである外は適宜の長さ、幅寸法で実施することが可能である。
そして本発明に係るフローリング材1の特徴の一つとして、屋外乾燥により含水率18〜22%に乾燥した後、機械乾燥により含水率6〜8%に乾燥される点が挙げられる。なお機械乾燥工程の最中には、長尺板材の含水率を4〜5%に乾燥した後、エアコンディショナーにより含水率6〜8%になるように加水する工程が数回行われる。
因みに一般的に流通している製品のフローリング材1の含水率は、通常約15%位であり、本発明に係るフローリング材1は、その半分位の含水率である。このように低い含水率にされるとともに天然素材のワックス材が塗布されているため、床暖房という過酷な条件下でも、変形、割れが生じ難く、耐久性が高い。
【0021】
因みに長尺板材は、挽き割り後に、一度含水率4〜5%までに乾燥されることにより、木材組織中の導管の機能が失われる。これにより長尺板材の水分の取り込みが著しく減少し、その後周辺環境の変化によっても比較的設定された水分値を維持でき、ひいては製品たるフローリング材の変形、割れ、反り、突き上げ、破損が防止できる。
また上述した機械乾燥工程後にエアコンディショナーにより加水して含水率を6〜8%に上昇させるのは、床暖房システムを入れたときと(含水率5%程度となる)、切ったとき(天気等の周辺環境にもよるが例えば含水率10%程度となる)のフローリング材の含水率の差を、少なくし、床暖房システムを入れたときと切ったときのフローリング材の含水率の差に起因する収縮、膨張時の大きさの差を僅かとして、隣接するフローリング材で隙間が開き過ぎたり、隣接し過ぎたりということがないようにするためである。また機械乾燥と加水を数回繰り返すことにより、含水率に偏りのない均質なフローリング材が得られる。
なお本発明において、フローリング材1の四面は、敷設使用状態を基準として上面2、下面3、側面4及び小口端面5と定義する。
【0022】
次に、本発明の主要な技術的特徴点である実部分の構造について説明する。
まずフローリング材1の側面4には、隣接し合うフローリング材1と互いに係止させるための本実加工が施されるものであり、側面4の一方に凸状の雄実40、もう一方にこれに係合する凹陥状の雌実45が形成されている。
この本実加工について詳しく述べると、雄実40は、その上下方向中間部に雄実突起41を設け、その上、下には雄実突起41が張り出すことにより、相対的に掘り込まれた形状となる上堀込部42、下堀込部43が形成されている。一方の雌実45については、その上下方向中間部に凹溝状の小穴46を設け、その上下には、小穴46が凹溝であることにより相対的に突出するような形状となった上張出部47、下張出部48が形成されている。
【0023】
これらの具体的な寸法設定については、一例として本実施例の板厚12mmとした場合においては、次のようなものが可能である。
まず雄実部における上堀込部42、雄実突起41、下堀込部43における厚さ方向寸法については、図2に示す例では、上段厚d1:中段厚d2:下段厚d3が、約3:5:4であり、具体的には、板厚12mmの場合には、3mm、5mm、4mmとなる。もちろんこのような寸法設定のほか、例えば上段厚d1:中段厚d2:下段厚d3を、7:10:7として、板厚12mmの場合には、3.5mm、7mm、3.5mmとなるような形状設定も選択できるが、いずれにせよ中段厚d2をもっとも大きくとることが好ましい。なお材質によっては、上段厚d1:中段厚d2:下段厚d3をそれぞれ均等配分した寸法設定としてもよい。
また雄実40については、図2に示すように上堀込部42の雄実突起41先端からの寸法となる上堀込部の堀込幅(上段堀込寸法L1)が、下堀込部43の堀込幅(下段堀込寸法L2)よりも大きくなるようにするものであり、一例として本実施例の板厚12mmとした場合においては、上段堀込寸法L1が5mm程度、下段堀込寸法L2が4mm程度とすることが好ましい。
【0024】
一方この雄実40に対応した雌実45における厚さ寸法、上段厚di、中段厚dii、下段厚diii の比は、約3:5:4である。当然雄実突起41を受け入れる関係でそれを許容する寸法設定とする。具体的には、前記雄実40が、板厚12mmの場合、上述した図2に示した厚さ寸法であるときは、上段厚diが3mm弱、中段厚diiが5mm強、下段厚diii が4mm弱となるが、一方雄実突起41を雌実45の小穴46に密に嵌め込ませるときには同寸法ないしはそれ以上にしてもよい。
また張り出し幅については、上張出部47の上張出寸法Liが5.5mm程度、下張出部48の下張出寸法Liiが3.5mm程度とする。
【0025】
また同様にフローリング材1の小口端面5にも本実加工が施されるものであり、一方に凸状の雄実50、もう一方にこれに係合する凹陥状の雌実55が形成されている。
なお、小口端面5に施される本実加工については、一例として上述した側面4における本実加工と同様のものを適用され、それぞれ部位に対応する符号は、雄実50、雄実突起51、上堀込部52、下堀込部53、雌実55、小穴56、上張出部57、下張出部58を用いる。
また更にフローリング材1の下面3には一例として四本の反り防止溝30が長手方向に形成されるものであり、これによってフローリング材1の主に上面2側への反り変形が防止されている。
【0026】
またフローリング材1の表面全体(四面)には、蜜ろうワックスの塗装が施されるものである。この密ろうワックスとは、特開2000−319595号に記載されるように、プロポリスを含有する未晒しの密鑞に、えごま油を混合して製造されるもので、このようなものとして有限会社小川耕太郎∞百合子社で製造販売されている「未晒し蜜ロウワックス」を用いることが可能である。
上述のように塗装が、蜜ろうワックスという天然素材を用いているため、人や環境に優しく、無公害化を促進し得るものである。更にこの塗装は、単位面積当たりの塗布量が一例として5g/m2 程度と、非常に薄く均一に行えるものであり、美しい光沢仕上げが得られるとともに、極めて低コストで塗装が行えるものである。なお具体的な塗装手法については後述のフローリング材1の製造方法において説明するが、従来はハケ等により手塗りが主流であり、この場合には単位面積当たりの塗布量は約15g/m2 であるのが一般的であった。
なお上記塗装は、必ずしも蜜ろうワックスに限定されるものではなく、天然素材のワックス材であれば柿渋や木ろう等、他の塗料を代用することも可能である。
【0027】
また本発明のフローリング材1としては、節がないものの方が市場価値が高いが、節のあるものでも適用可能である。節のあるものの場合、いわゆる生節はそのまま用いるが、いわゆる死節は、その部分をくり抜き、別途枝材等を用いて栓をするような修正加工することも行われる。
【0028】
次に上述したフローリング材1を原木A0から製材加工し、市場に供給するまでの工程について説明しながら、フローリング材の製造方法について説明する。
(1)四面挽き落とし(原木から角材への加工)
まず図3に示すように、丸太状の原木A0の四面を挽き落とし角材A1を得る。もちろんこの挽き落としにあたっては、反りや矢高等、原木A0が有する変形を考慮し、最も効率的に角材A1や長尺板材A(フローリング材1)が得られるように木取りを行うものである。なお最適な木取り等を考慮することは、原木A0の買い付けの段階においても行われるものである。原木として好適なものとしては、木曽地方産の50〜100年生の檜が上げられるが、一般に内地材の杉、檜が利用できる。
【0029】
(2)挽き割り(角材から板材への加工)
その後、角材A1は、適宜の厚さの長尺板材Aに挽き割られてフローリング材1の原材となる。
なお檜や杉は一般に小径木であるので、このような板状への挽き割りで製品木地(長尺板材A)が完成する。すなわち上記板材を更に長手方向に挽き割る木取りは、ほとんど行われないものである。
【0030】
(3)屋外乾燥
挽き割り後、長尺板材Aの乾燥を行うが、乾燥を行う前に、乾燥時に小口端面5に割れなどが生じやすいため、蝋やラッカーなどの塗料を塗る(後の形状加工工程時にこの塗料が塗られた小口端面は切り落とされる)その後長尺板材Aは屋外乾燥後及び機械乾燥を経て含水率約5%になるまで乾燥される。
前記屋外乾燥は、例えば直接雨が当たらない場所で約3カ月の間、屋外雰囲気に放置されて行われるものであり、ここで長尺板材Aは、ほぼ20%まで乾燥される。因みに屋外乾燥を受ける以前の長尺板材Aは、含水率が概ね30%である。
【0031】
(4)機械乾燥・加水
次に屋外乾燥後の長尺板材Aを、庫内温度約65℃程度の乾燥室に約9日間入れて含水率を4〜5%に乾燥するとともに、エアコンディショナーにより乾燥室を調湿して長尺板材Aが含水率6〜8%になるように加水することを数回繰り返し、最終的に含水率を6〜8%に加水した状態で取り出す。
以上のように一度含水率4〜5%に乾燥されるため、木材組織中の導管が機能を失い、水分の取り込みがほとんど無くなり、その後周辺環境の変化によっても水分値に影響を受けにくくなる。従って製品たるフローリング材の変形、割れ、反り、突き上げ、破損が防止できる。また一度含水率4〜5%に乾燥した後に、含水率を少し上昇させて6〜8%とするため、床暖房システムを入れたときと(含水率5%程度となる)、切ったとき(天気等の周辺環境にもよるが例えば含水率10%程度となる)のフローリング材の含水率の差が、少なくなる。従って床暖房システムを入れたときと切ったときのフローリング材の含水率の差に起因する収縮、膨張時の大きさの差が僅かで、隣接するフローリング材で隙間が開き過ぎたり、隣接し過ぎたりということが生じない。また機械乾燥と加水を数回繰り返すことにより、含水率に偏りのない均質なフローリング材が得られる。
【0032】
(5)形状加工
図4に示すように、乾燥後、長尺板材Aには、側面4と小口端面5に雄実40、50や雌実45、55が形成される。
具体的には、ルーター等の木工機械を用いて、板厚12mmの場合には、図2に示すように雄実40については、上段厚d1:中段厚d2:下段厚d3が例えば3mm、5mm、4mmとなるように設定され上堀込部の堀込幅(上段堀込寸法L1)が、下堀込部43の堀込幅(下段堀込寸法L2)よりも大きくなるように、一例として本実施例の板厚12mmとした場合においては、上段堀込寸法L1が5mm、下段堀込部4mmとなるように設定されて加工がなされる。同様に雌実45についても加工がされる。
また下面3に反り防止溝30等が、多軸鉋盤(モルダー)等の木工機械によってほぼ等間隔に四本形成されるものである。なおこの反り防止溝30は、五、六本を形成して実施することも可能である。
【0033】
(6)蜜ろうワックス塗装
その後、長尺板材Aの表面には、一例として蜜ろうワックスが、薄く(一例として5g/m2 程度)且つ均一に塗装が施される。この塗装の手法については、長尺板材Aの上面2と下面3には、塗布装置10を用いて塗装が行われ、一方、側面4、小口端面5及び下面3の反り防止溝30には、一例として刷毛を用いて塗装が行われる。
【0034】
上記長尺板材Aの上面2と下面3に対する塗布装置10を用いた塗装について概略的に説明する。蜜ろうワックス塗装は、一例として図5に示すように、貯留された蜜ろうワックスを長尺板材Aの表面に付着させる塗布装置10と、長尺板材Aに付着した蜜ろうワックスを表面全体に拡げる拭き取り装置11とによって行われるものであり、これら両装置がベルトコンベヤ等で接続される。ここで図中符号10aは、塗布装置10の主要部材となる塗布ローラであり、符号11aは、拭き取り装置11の主要部材となる回転拭き取り体11aである。そして、蜜ろうワックスの塗布対象表面に蜜ろうワックスが塗布された長尺板材Aが、ベルトコンベヤ等によって拭き取り装置11に供給されるものである。なお上記説明においては、拭き取り装置11(回転拭き取り体11a)によって蜜ろうワックスを拭き取る旨を記述したものの、これは余分な蜜ろうワックスを拭い取るものではなく、むしろ塗布された直後の蜜ろうワックスを塗布対象表面全体に均一に塗り拡げるように延展させるものである。
【0035】
このように本実施の形態では、塗布直後に蜜ろうワックスを拭き取るように、延展させるため、高価な蜜ろうワックスを使用しながらも、蜜ろうワックスを無駄にすることなく、塗装コストを安価に抑え得るものである。なおハケ等による手塗りの場合には、一例として15g/m2 程度の塗装となり、上述した塗布装置10と拭き取り装置11を用いた場合には、塗装厚さが約1/3程度にまで抑えられる。
【0036】
(7)ワックス乾燥・研磨
表面塗装が施された長尺板材Aは、その後、蜜ろうワックスが乾燥される。この際、本実施の形態では、上述したように塗布直後に蜜ろうワックスが拭き取られるため、ここでの乾燥は比較的短時間で行えるものである。
その後、長尺板材Aの塗装面を研磨することによって蜜ろうワックスを定着させつつ美しい光沢に仕上げ、製品としてのフローリング材1を得るものである。
【0037】
(8)梱包・出荷
このように表面化粧が施されたフローリング材1は、一例として10枚1セットや20枚1セットでシュリンク梱包される。なおここで10枚1セットや20枚1セットとするのは、例えばフローリング材1が、幅約90mm、長さ約1820mm程度の場合、10枚で半坪(一畳)分の床が張れ、床張面積(畳数)に対する、フローリング材1の必要セット数をわかりやすくしたためである。
【0038】
なおフローリング材1の荷姿としては、一例として図4に示すように、下面3同士を向かい合わせたものを5組もしくは10組梱包するものであり、この際、上面2同士を密着させ、空気を遮断した状態で梱包するとヤニが生じやすくなるため、これを防止すべく、それぞれの上面2の間には紙製のスペーサSを介在させるものである。特にこの紙製のスペーサSは、フローリング材1の呼吸を阻害しないように、言わば段ボールの断面のように空気層Saが形成されることが好ましい。もちろんこのスペーサSは、例えば搬送中、フローリング材1に掛かる衝撃を和らげ、フローリング材1を保護するクッション(緩衝)作用をも担うものである。
【0039】
また上面2の間に介在させるスペーサSが紙製であるため、開封後、そのまま廃棄した場合には生分解され、また燃やしても合成樹脂のような有害ガスが生じることがなく、極めて環境に優しく処分できるものである。
更にフローリング材1の梱包にあたっては、熱によって収縮するシュリンク包装が適用されるものであり、このフィルムには、環境に配慮し、オレフィン系のものが適用される。すなわちオレフィン系のフィルムは、従来の塩ビ(塩化ビニル)系のフィルムとは異なり、塩素分子を含まないため、燃焼の際、ダイオキシンを生じることがなく、より一層、無公害化に寄与するものである。なおこのフィルムにも表面に多くの孔を開口しておき、フローリング材1の呼吸を阻害しないようにすることが望ましい。
【0040】
(9)フローリング材の設置態様
本発明に係るフローリング材1を敷設するにあたっては、図6(b)(c)に示されるように、下地合板F1等の上に小根太M3入りハードタイプなどの床暖房用の温水式の発熱マットMを敷き、その上に本発明に係るフローリング材1を敷設するものである。なお符号M2で示す部材は発熱マットMに埋設された配管であり、符号M1はマット本体である。また前記発熱マットMが敷設された下地合板F1の下方には、一例として断熱材F2、防湿シートF3が敷設される。
【0041】
具体的なフローリング材1の敷設態様について説明すると、小根太M3の上全面に対し接着剤を塗布し、図6(a)に示すようにフローリング材1を発熱マットMの小根太M3に直交する方向に敷設し、雄実40、50部位にてステープル、釘等の固定手段6で小根太M3へ固定する。
なおフローリング材1の小口端面5は、小根太M3の中央に位置するように敷設するもので、二つのフローリング材1の小口端面5を本実接合する。また側部へ並設されるフローリング材1同士も互いの雄実40と雌実45とで本実接合を行い、床面全面にフローリング材1を敷設していく。
特に本発明のフローリング材1の実部における固定については、図1に拡大して示すように、上堀込部42、52の奥隅部から、斜め奥方に固定手段6たる釘、ステープル等を打ち込むものである。このときフローリング材1の板厚が薄い場合であっても、上部堀込部42、52の奥隅部の位置は、下堀込部43、53の奥隅部より奥まっており、雄実突起41の基部において下方に向けての実質的厚み寸法が、雄実突起部41の厚さ(中段厚寸法d2)5mmと下堀込部43の厚さ(下段厚寸法d3)4mmとの合計9mmが確保されることから、板割れ等の発生は確実に回避されている。
【0042】
(10)リフォーム作業に床暖房設備の設置を導入する施工について
また本発明のフローリング材1は、既存の合板製床板材101と同じ12mmの板厚であることから、背景技術でも触れたようにリフォームの際に既設済みの合板製床板材101を除去し、そのスペースに本フローリング材1を敷設することも可能である。
更にもともと床暖房機能を考慮していない床構造の場合であっても、電気発熱素子を用いた薄膜シート状の電熱シートM10と、本フローリング材1とを併せて用いることにより、床暖房機能を併せもった無垢板フローリングを容易に敷設することができる。
【0043】
具体的には、図7に示すような敷設作業を行う。
先ず図7(a)に示すように、既設されている合板製床板材101を下地合板F1から除去し、下地合板F1を露出させる。次に図7(b)に示すように、薄い電熱シートM10を下地合板F1上に敷設し適宜の電源供給のための電気配線を接続設置する。次に図7(c)に示すように、本発明のフローリング材1を既に敷設した電熱シートM10上に連設するようにして敷設する工程を示したものである。
【0044】
もちろん、本発明のフローリング材1を用いたこのような敷設方法以外にも、床材とあわせて下地合板F1を除去し、床暖房を考慮して設計された新規な下地合板F1を敷設して、無垢製床材を用いた床暖房を設置することも可能ある。
また、図7に示すように本発明のフローリング材1と電熱シートM10とを組合わせた床暖房設備であれば、リフォームにあたっても、既存の観音開きタイプの備え付けクローゼットやドアなどの建具と、床面とのレベル補正(干渉回避施工)を行う必要が無く、低廉な価格で床暖房設備を導入できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のフローリング材を示す斜視図である。
【図2】同上、平面図、背面部及び左側面図である。
【図3】長尺板材を原木から挽き割り、乾燥するまでの工程を示す説明図である。
【図4】長尺板材を形状の加工と、塗装を行い梱包を行うまでの工程を示す説明図である。
【図5】長尺板材の上面に蜜ろうワックスを塗布する装置(a)、並びに塗布された蜜ろうワックスを上面に塗り拡げる拭き取り装置(b)を骨格的に示す説明図である。
【図6】フローリング材の敷設態様を示す平面図と、二種の断面図である。
【図7】本発明のフローリング材と床暖房用電熱シートとを適用したリフォームの施工工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 フローリング材
10 塗布装置
10a 塗布ローラ
11 拭き取り装置
11a 回転拭き取り体
101 (既設の)フローリング材
2 上面
3 下面
30 反り防止溝
4 側面
40 雄実
41 雄実突起
42 上堀込部
43 下堀込部
45 雌実
46 小穴
47 上張出部
48 下張出部
5 小口端面
50 雄実
51 雄実突起
52 上堀込部
53 下堀込部
55 雌実
56 小穴
57 上張出部
58 下張出部
6 固定手段
A 長尺板材
A0 原木
A1 角材
d1 上段厚
d2 中段厚
d3 下段厚
di 上段厚
dii 中段厚
diii 下段厚
L1 上段堀込寸法
L2 下段堀込寸法
Li 上段張出寸法
Lii 下段張出寸法
M 発熱マット
M1 マット本体
M2 配管
M3 小根太
M10 電熱シート
S スペーサ
Sa 空気層
F1 下地合板
F2 断熱材
F3 防湿シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸太状の原木から引き割った床張り用の一枚無垢の長尺板材であって、この長尺板材の側面には、一方に凸状の雄実突起を含む雄実が形成され、その対向面に凹状の小穴を含む雌実が形成される本実加工がなされ、且つ前記雄実は、上堀込部における板幅方向に向かっての堀込幅を、下堀込部の堀込幅より大きく設定し、一方前記雌実は、雄実形状に対応して上張出部における張出幅を下張出部における張出幅よりも大きく設定したことを特徴とするフローリング材。
【請求項2】
前記長尺板材の板厚寸法は、12mm±1mmであることを特徴とする前記請求項1記載のフローリング材。
【請求項3】
前記雄実における上堀込部、雄実本体、下堀込部における厚さ方向寸法である上段厚、中段厚、下段厚を設定するにあたっては、中段厚を他より大きく設定するものであり、一方雌実は、これに対応してほぼ密に雄実と継合する寸法設定がされていることを特徴とする前記請求項1または2記載のフローリング材。
【請求項4】
前記長尺板材は、挽き割り後に含水率約4〜8%に乾燥がなされるとともに、表面には天然素材のワックスの塗装がなされていることを特徴とする前記請求項1、2または3記載のフローリング材。
【請求項5】
前記長尺板材は、挽き割り後に含水率4〜5%に乾燥した後に、含水率を6〜8%まで上昇させた後、ワックス塗装されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載のフローリング材。
【請求項6】
前記長尺板材の下面には、長尺板材の長手方向にわたって反り防止溝が形成されるものであり、この反り防止溝の形成間隔は13〜19mm間隔で形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のフローリング材。
【請求項7】
前記長尺板材に塗装される天然素材は、蜜ろうワックスであり、この蜜ろうワックスは単位面積当たりの質量が約5g/m2 以下で塗装されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のフローリング材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−240245(P2008−240245A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77888(P2007−77888)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(502143353)加藤木材産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】