ブラシレスファンモータの駆動装置及びブラシレスファンモータの制御方法
【課題】ブラシレスファンモータのロータ停止位置を精度良く検出できるようにする。
【解決手段】ラジエータに対して配設されたラジエータファンの回転機構に使用されるブラシレスファンモータのロータ停止位置を検出する際に、位置信号発生手段が、複数相のコイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させる。電流比較手段が、コイルに流れる電流の電流値が予め設定された閾値以上になったら検出信号を出力する。カウンタが、通電パターンを指令する信号が出力されてから検出信号が出力されるまでの時間を通電パターンごとに計数する。位置推定手段が、通電パターンごとに計数されたカウント値の大小からロータ停止位置を決定する。
【解決手段】ラジエータに対して配設されたラジエータファンの回転機構に使用されるブラシレスファンモータのロータ停止位置を検出する際に、位置信号発生手段が、複数相のコイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させる。電流比較手段が、コイルに流れる電流の電流値が予め設定された閾値以上になったら検出信号を出力する。カウンタが、通電パターンを指令する信号が出力されてから検出信号が出力されるまでの時間を通電パターンごとに計数する。位置推定手段が、通電パターンごとに計数されたカウント値の大小からロータ停止位置を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスファンモータの駆動装置、ブラシレスファンモータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルーム内に設けられた内燃機関のラジエータには、冷却効率を高めるラジエータファンが配設されている。このラジエータファンは、ブラシレスファンモータ(ブラシレスモータ)によって駆動される場合がある。ロータが永久磁石を有するタイプのブラシレスモータは、ロータの回転位置を検出する位置センサを設けずに位置センサレスで駆動制御を行うことがある。この場合には、開放区間(非通電相)のモータ端子に現れる誘起電圧と等価中性点電位をコンパレータに入力して得られるパルス信号のエッジ間隔からロータの回転位置を検出している。ところが、ブラシレスモータの始動時など、回転数がゼロである場合や回転数が極めて小さい場合には、誘起電圧が発生しないか極めて小さいので、回転位置の検出に十分な信号が得られなかった。
【0003】
ロータの停止位置を検出する従来の方法としては、3相のコイルに印加される電圧を検出し、電圧の立ち上がり時間の差からコイルのインダクタンスを検出して、永久磁石の磁極と対向しているコイルを判断することがあげられる(特許文献1参照)。なお、コイルによる磁束の方向と鉄心の磁束の方向とが一致していないときには、電流を流したときに鉄心の残留磁化によって電流を流す前後でインピーダンスが変化する。そこで、特許文献1に開示されている駆動装置では、同じ相に連続して二回以上電流を流し、二回目以降の電圧の立ち上がり時間が最小となるコイルを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−40943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロータの停止位置を検出する際、特許文献1に開示されているような方法では、ロータ停止位置を検出する停止位置検出回路を構成するトランジスタや抵抗、コンパレータなどを追加しなければならず、装置構成が複雑化する要因になっていた。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ブラシレスファンモータのロータ停止位置を精度良く検出できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する本発明の請求項1に係る発明は、エンジンルーム内のラジエータに対して配設され、ラジエータファンの回転機構に使用され、永久磁石を有するロータと複数相のコイルが巻装されたステータを備えるブラシレスファンモータの駆動装置であって、前記コイルに電流を供給するインバータ回路と、前記電流の供給を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させる位置信号発生手段と、前記コイルに流れる電流の電流値が予め設定された閾値以上になったら検出信号を出力する電流比較手段と、通電パターンを指令する信号が出力されてから検出信号が出力されるまでの時間を通電パターンごとに計数するカウンタと、通電パターンごとに計数されたカウント値の大小からロータ停止位置を決定する位置推定手段と、を備えることを特徴とするブラシレスファンモータの駆動装置とした。
コイルに通電したときに、ロータ停止位置によって磁束の流れ易さが異なる。このブラシレスファンモータの駆動装置は、コイルに流れる電流が所定の閾値になるまでに要する時間が通電パターンによって変化することに着目してロータ停止位置を検出する。ロータ停止位置は、コイルの流れる電流が所定の閾値になるまでに要する時間が最も少ない位置になる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のブラシレスファンモータの駆動装置において、連続して選択された2つの通電パターンにおけるカウント値の増減と、ロータ停止位置を関連付けたマップを備えることを特徴とする。
このブラシレスファンモータの駆動装置は、連続して選択された2つの通電パターンの間でカウント値の増減を演算し、マップを検索することでロータ停止位置を決定するための情報を得る。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のブラシレスファンモータの駆動装置において、前記インバータ回路は、複数相の通電切り換え用の複数のスイッチング素子を備え、前記電流比較手段は、前記インバータ回路に流れる過電流を検出する過電流検出回路であり、前記電流比較手段が前記過電流を検出した場合、全ての前記スイッチング素子が遮断状態に駆動されるとともに、前記制御装置は、前記コイルの通電を終了させるように制御することを特徴とする。
このブラシレスファンモータの駆動装置は、コイルに過電流を流さないように設けられている過電流検出回路を利用してロータ停止位置を判定する。
【0009】
請求項4に係る発明は、エンジンルーム内のラジエータに対して配設され、ラジエータファンの回転機構に使用され、永久磁石を有するロータと複数相のコイルが巻装されたステータを備えるブラシレスファンモータの制御方法であって、前記コイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させるステップと、前記コイルに流れる電流が所定の閾値以上になったら、電流供給を停止させるステップと、通電パターンを指令する信号の出力から前記コイルに流れる電流が前記閾値以上になるまでの時間をカウンタで計数するステップと、複数の通電パターンに対して前記カウンタで計数したカウント値の変化からロータ停止位置を判定するステップと、を備えることを特徴とするブラシレスモータのロータ停止位置の検出方法とした。
このブラシレスファンモータの制御方法は、コイルに流れる電流が所定の閾値以上になったら、電流供給を停止させると共に閾値に達するまでの時間をカウントする。複数の通電パターンについて、電流供給と停止を繰り返し、その間の時間をカウントして比較する。ロータ停止位置は、コイルに流れる電流が所定の閾値になるまでの時間が最も少ない位置になるので、カウント値の変化を調べればロータ停止位置がわかる。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のブラシレスファンモータのロータ停止位置の検出方法において、前記カウンタで計数するステップは、3つ又は4つの通電パターンについて実施されることを特徴とする。
このブラシレスファンモータのロータ停止位置の検出方法は、磁束の流れ易さによるカウント値の変化が通電パターンによって正弦波状又は台形波状に変化することを利用し、3つ又は4つの通電パターンについてカウントを行ってロータ停止位置を検出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブラシレスファンモータのロータ停止位置を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るブラシレスモータの駆動装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】誘起電力I/F回路の具体的な回路構成を例示する図である。
【図3】インバータ回路と、過電流検出回路の構成をさらに詳細に示す図である。
【図4】始動時の回転速度によって処理が切り替わることを模式的に説明する図である。
【図5】定時間割り込み処理のフローチャートである。
【図6】通電パターンによって発生する磁束及びトルクを説明する図である。
【図7】ロータ停止位置の検出方法を説明するチャートである。
【図8】ロータ停止位置に応じて2相通電あせた場合の発生トルクを示す図である。
【図9】ロータ停止位置P6における2相通電パターンとインダクタンス及び発生トルクの関係を示す図である。
【図10】ロータ停止位置と通電時間の関係を説明する図である。
【図11】停止位置検出処理のフローチャートである。
【図12】停止位置検出サブルーチンAのフローチャートである。
【図13】停止位置検出サブルーチンBのフローチャートである。
【図14】停止位置検出サブルーチンBのフローチャートである。
【図15】始動励磁処理のフローチャートである。
【図16】フリーラン処理のフローチャートである。
【図17】ブレーキ停止処理のフローチャートである。
【図18】始動時の処理を具体的に説明するためのタイミングチャートである。
【図19】ソフトスタートする場合のデューティ制御と回転速度を示す図である。
【図20】固定子巻線の誘起電圧波形の信号処理を説明する図であって、アナログ信号からデジタル信号を作成する手順を示すタイミングチャートである。
【図21】固定子巻線の誘起電圧波形の信号処理を説明する図であって、マスク信号の作成手順と、マスク処理後の位置検出信号の作成手順を示すタイミングチャートである。
【図22】誘起電圧エッジの判定処理を説明するタイミングチャートであって、方形波パルス電圧のパルス幅がマスク信号のパルス幅以下の場合を示す図である。
【図23】誘起電圧エッジの判定処理を説明するタイミングチャートであって、方形波パルス電圧のパルス幅がマスク信号のパルス幅を越える場合を示す図である。
【図24】U相の励磁タイミングを示す図である。
【図25】周波数に対するモータ端子電圧波形の遅れ位相を示す図である。
【図26】図4の領域R2から始動するときのタイミングチャートである。
【図27】図4の領域R3から始動するときのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、ブラシレスモータシステムは、ブラシレスモータ1と、ブラシレスモータ1の回転駆動を制御する駆動装置2とを有する。このブラシレスモータシステムは、ロータ位置を検出するセンサを有しないセンサレスタイプのシステムである。
ブラシレスモータ1は、永久磁石を有するロータとステータを有し、ステータには3相(U、V、W)のコイルU,V,Wが周方向に順番に巻装されている。
【0014】
駆動装置2は、マイコンなどから構成される制御装置11と、ブラシレスモータ1の3相U,V,Wのモータ端子の電圧を検出する誘起電圧I/F(インターフェイス)回路12と、通電切り換え用のスイッチング素子を備える駆動回路であるインバータ回路13とを有し、制御装置11とインバータ回路13の間に、プリドライバ(Hi側プリドライバ37A,Lo側プリドライバ37B)と、過電流検出手段38と、過電流保護手段39とが設けられている。
【0015】
図2に示すように、誘起電圧I/F回路12は、3相U,V,Wのそれぞれのモータ端子の電圧(アナログ信号)が入力され、コンパレータ17A〜17Cに入力可能な電圧に分圧する分圧回路(抵抗R11及び抵抗R12)とパルス幅変調信号のノイズを除去する1次のCRフィルタ(抵抗R11及びキャバシタC11)からなるローパスフィルタ回路15A,15B,15Cと、等価中性点電位を検出する回路16と、等価中性点電位と無通電相(開放区間)に現れる誘起電圧のアナログ信号からパルス信号を作成するコンパレータ17A,17B,17Cと、コンパレータ17A〜17Cの出力からチャタリング成分をカットするローパスフィルタ回路(1次のCRフィルタ)18A,18B,18Cとを有する。
【0016】
ここで、等価中性点電位を検出する回路16は、例えば、U相については、V相とW相のモータ端子電圧から等価中性点電位を検出するような、2相間比較方式を採用している。このようにすると、等価中性点電位として略フラットな電圧が得られる。なお、U、V、Wの3相全ての信号を用いて等価中性点電位を求める3相比較方式を採用しても良い。
この場合は、等価中性点の電位は、電源電圧の1/2を中心にした略三角波になる。
コンパレータ17A〜17Cは、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位より高いときはローレベルの信号を出力し、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位より低いときはハイレベルの信号を出力するパルス信号を発生させる。各コンパレータ17A〜17Cでは電気角120°の分解能のパルス信号が作成される。これら信号は、それぞれがローパスフィルタ回路18A〜18Cを経て分離手段21に入力される。
【0017】
図3に示すように、インバータ回路13は、6個のスイッチング素子40UH,40UL,40VH,40VL,40WH,40WLを電源20の正負両端子間に2個ずつブリッジ接続して構成される回路であって、電源20から供給された直流電圧を制御装置11から入力されるパルス幅変調信号(駆動信号)に基づく交流電圧に変換し、ブラシレスモータ1の各相U,V,Wに印加する。各スイッチング素子40UH〜40WLは、FET(Field effect transistor)と還流ダイオードを並列に接続した構成になっている。
【0018】
インバータ回路13とグランドレベルの間には、電流測定手段であるシャント抵抗13Aが設けられている。シャント抵抗13Aを用いることで、インバータ回路13に流れる電流、つまりブラシレスモータ1に入力される電流が過電流検出手段38を用いて検出できる。
【0019】
過電流検出手段38は、コンパレータを有する電流比較手段である。コンパレータのプラス側の入力端子には基準電圧が入力され、マイナス側の端子にはシャント抵抗13Aの電圧が入力されるようになっている。すなわち、シャント抵抗13Aを電流が流れることで発生する電圧が基準電位に達すると、過電流検出手段38から信号(過電流検出信号)が出力される。過電流検出手段38の出力は、制御装置11の立ち下がりエッジ検出用のポートを介してソフトウェア的な手段である過電流保護手段32に接続されると共に、ハードウェア的な手段である過電流保護手段39に接続されている。
過電流保護手段39は、過電流検出信号が入力されるとダイオードに電流が流れ、PWMデューティ決定手段28からの出力信号がHi側プリドライバ37Aに入力されないように構成されている。
【0020】
制御装置11は、CPU(中央演算装置)やメモリなどから構成され、誘起電圧I/F回路12に接続される分離手段21と、励磁切り替えタイミング演算手段22と、回転方向検出ロジック選択手段24と、モード選択手段40と、通電パターン決定手段26と、励磁信号出力手段27と、PWMデューティ決定手段28と、過電流保護手段32と、電流印加時間計測手段29と、電流印加時間比較手段30と、ロータ位置推定手段31と、過電流フラグセット手段41を備える。
通電パターン決定手段26は、停止位置検出モード26Aと、始動励磁モード26Bと、フリーラン制御モード26Cと、定常励磁モード26Dと、ブレーキ停止モード26Eと、停止モード26Fを備えている。
【0021】
回転方向検出ロジック選択手段24は、外部からの回転方向信号に応じて、分離手段21で使用するロジックを決定し、分離手段21に出力する。分離手段21は、選択された回転方向検出ロジックを用いて、誘起電圧I/F回路12から入力されるパルス信号のエッジを誘起電圧のエッジと方形波パルス電圧のエッジとに分離する処理を行う。励磁切り替えタイミング演算手段22は、誘起電圧エッジに応じた励磁位相を算出するために3つの電気角120°の分解能のパルス信号から1つの電気角60°の分解能のパルス信号を生成し、励磁切り替えタイミングを演算し、モード選択手段40に出力する。モード選択手段40は、励磁切り替えタイミング演算手段22から励磁切り替えタイミング信号が入力されるか否かにより回転方向を判定し、通電パターン決定手段26のモードを選択する。励磁切り替えタイミング信号が入力されている場合には、定常励磁モード26Dとする。同様に、励磁切り替えタイミング信号が入力されない場合にはブラシレスモータ1が逆転しているとみなして、ブレーキ停止モード26Eとし、ブラシレスモータ1を停止させるような通電パターンを励磁信号出力手段27に出力する。
【0022】
通電パターン決定手段26は、停止位置検出モード26Aと、始動励磁モード26Bと、フリーラン制御モード26Cと、定常励磁モード26Dと、ブレーキ停止モード26Eと、停止モード26Fとを有する。
通電パターン決定手段26の停止位置検出モード26Aは、外部からの始動指令を受けて励磁信号出力手段27にロータ停止位置を検出するためのパルス幅変調信号を発生させる。
始動励磁モード26Bは、ロータ位置推定手段31が判定したロータ停止位置に応じた通電パターンを決定する。
フリーラン制御モード26Cは、始動通電パターンを所定の初期通電時間Ts1だけ通電させた後、ブラシレスモータ1をフリーランさせて、励磁切り替えタイミング演算手段22のフリーランモード22Cによってロータ位置を検出する処理を実施する。
定常励磁モード26Dは、ブラシレスモータ1が回転しているときに励磁切り替えタイミング演算手段22の定常モード22Dが演算した励磁切り替えタイミングでロータ位置に応じた通電パターンを決定する。
これらの処理の詳細については、後述する。
【0023】
励磁信号出力手段27は、ブラシレスモータ1のコイルに励磁電流を印加する信号を各プリドライバ(Hi側プリドライバ37A、Lo側プリドライバ37B)に出力する。Hi側プリドライバ37Aは、PWMデューティ決定手段28が決定したデューティ比で高電位側のスイッチング素子のON/OFFを切り替えるドライバである。Lo側プリドライバ37Bは、低電位側のスイッチング素子のON/OFFを切り替えるドライバである。Hi側プリドライバ37Aは、インバータ回路13に過電流が流れて過電流保護手段39から信号が入力されると、各スイッチング素子をOFFにする機能を有する。また、過電流が検出されたときには、過電流保護手段32に信号が入力され、ソフトウェア上のリセットがかけられる。
【0024】
電流印加時間計測手段29は、過電流保護手段32の停止位置検出モード32Aと、通電パターン決定手段の停止位置検出モード26Aと、電流印加時間比較手段30に接続され、記憶手段29Aとカウンタ29Bを備える。カウンタ29Bは、停止位置検出モード26Aからの指令を受けてカウントを開始する。記憶手段29Aは、過電流保護手段32の停止位置検出モード32Aを経由して過電流検出手段38が出力する過電流検出信号が入力されたときのカウンタ29Bのカウント値を記憶する。カウンタ29Bは、所定の時間経過した後にリセットされ、それと同時に停止位置検出モード26Aに信号を出力する。
電流印加時間比較手段30は、電流印加時間計測手段29の記憶手段29Aに記憶されたカウント値が入力され、後述するデータ処理を実施する。その出力はロータ位置推定手段31に接続されており、ロータ位置推定手段31と共にロータ位置を決定する位置推定手段を構成する。
ロータ位置推定手段31は、電流印加時間比較手段30の計算結果に基づいて停止時や低速時のロータ位置を推定する。
【0025】
次に、この駆動装置2の動作を説明する。
ブラシレスモータ1の始動時は、停止中のブラシレスモータ1を始動する場合と、外力によってブラシレスモータ1が回転させられている状態から始動する場合とがある。例えば、ブラシレスモータ1をラジエータファンの回転機構に使用した場合、ラジエータからエンジンルームに向かう方向に風が吹いている場合には、通電しなくてもラジエータファンの回転に従ってブラシレスモータ1が正回転させられる。これに対して、ブラシレスモータ1が逆回転している場合とは、エンジン側からラジエータの方向に風が吹いているときや、ラジエータファンに対して逆方向に負圧が生じたときが考えられる。
【0026】
駆動装置2をラジエータファンに使用することを想定した場合、ラジエータファンは正転方向に回転し易い構造になっており、逆転方向に回転するためには大きな風力が必要になる。しかしながら、車両の構造から逆方向に大きい風力が発生する可能性は少なく、ラジエータファンが逆回転する場合でも、その回転速度は小さいと考えられる。したがって、この駆動装置2では、ブラシレスモータ1が外部負荷によって逆回転させられている場合でも、その回転数及びトルクは小さいものとして始動時の制御を行う。
【0027】
図4に始動時のブラシレスモータ1の回転速度による始動方法の区分けを模式的に示す。この実施の形態では、回転速度に応じて3通りの場合分けを行っている。
駆動装置2は、横軸に示すブラシレスモータ1の回転速度がゼロを含む領域R1であれば、インダクタンス検出による始動開始処理を実行する。
ブラシレスモータ1の回転速度が正回転方向で領域R1より大きい領域R2にあれば、誘起電圧検出によるロータ位置検出を行い、回転制御をする。逆回転方向に回転速度が領域R1より大きい領域R3にある場合には、逆回転状態判別処理と、ロータの停止処理により領域R1へと移行させ、インダクタンス検出による始動開始処理を実行する。領域R1と領域R2は、回転速度がN1(rpm)付近で重なっている。回転速度N1は、誘起電圧検出によるロータ位置検出が不能となる低速回転速度に相当する。これは、回転速度がゼロ又は低速であれば、インダクタンス検出により電気角60°の分解能でロータ位置を検出し、正転方向に最大トルクを発生させることが可能な位相で通電を実施することができるのに対し、回転速度が上昇するにしたがって、インダクタンス検出によるロータ位置の検出結果は、電気角60°から位相がずれて検出精度が悪くなるため、起動トルクが停止状態と比較して減少するからである。
【0028】
ブラシレスモータ1の回転速度が逆回転方向で領域R1より大きい領域R3にあれば、後述するようにブラシレスモータ1にブレーキをかけ、領域R1に移行させた後にロータ位置の検出を行う。領域R1と領域R3は、回転速度が−N1(rpm)付近で重なっている。
なお、領域R1と領域R2は、重ならずに回転速度N1を境界として区分けしても良い。領域R1と領域R3は、重ならずに回転速度−N1を境界として区分けしても良い。
【0029】
駆動装置2は、最初にブラシレスモータ1の回転速度が領域R1にあると想定して処理を実行し、領域R2に相当する処理を経て定常駆動に移行する。領域R2に相当する処理を実施したときに、ロータ位置検出ができない場合には、ブラシレスモータ1の回転状態が領域R3にあるとみなし、領域R3に相当する処理からやり直す。
【0030】
このような始動時の処理は、図5に示す定時時間の割り込み処理として実施される。
モード選択手段40は、回転速度信号と過電流フラグ信号を確認する。過電流フラグは、インバータ回路13のシャント抵抗13Aを流れる電流値をモニタし、シャント抵抗13Aを流れる電流が、所定の値を越えたらON、つまり過負荷状態と判定する。回転速度信号がONとなったとき、過電流フラグがONならば(ステップS101でYes)、全相をOFFにして停止処理を実施して(ステップS102)、ここでの処理を終了する。このとき、PWMデューティを0%に設定し、各種パラメータも初期化する。
これに対し、回転速度信号はONであるが過電流フラグ信号がOFFの場合(ステップS101でNo)、通電パターン決定手段26を停止位置検出モード26Aにセットし(ステップS103)、ブラシレスモータ1のインダクタンスを検出してロータ位置を検出する停止位置検出処理を実施する(ステップS104)。
【0031】
モード選択手段40がロータ停止位置を検出したら、前記のステップS103からステップS105に進み、通電パターン決定手段26が始動励磁モード26Bにセットされる(ステップS105でYes)。通電パターン決定手段26が始動励磁処理を実施する(ステップS106)。
始動励磁処理を実施したら、ステップS107からステップS108に進んでフリーラン処理が実施される。このフリーラン処理では、慣性でブラシレスモータ1のロータがフリーランしている間に発生する誘起電圧から、正転専用ロジックを用いてロータの位置検出を実施する。
誘起電圧を用いたロータの位置検出が可能になったら、ステップS109からステップS110に進んで定常励磁処理が実施される(ステップS110)。誘起電圧を用いてロータの位置を検出できないときは、ステップS111からステップS112に進んでブレーキ停止処理が実施する(ステップS112)。
【0032】
ここで、ステップS104の停止位置検出処理では、コイルが作る磁束の方向と、マグネットの磁束の方向が同方向のときにマグネットのコアの透磁率が大きくなってインダクタンスが小さくなることに着目して停止位置を決定している。以下に、停止位置検出処理で通電パターンを決定する際の原理について説明する。
【0033】
停止状態にあるブラシレスモータ1を始動するときは、外部から制御装置11のモード選択手段40に回転速度信号(回転速度がゼロからある回転速度へステップ的に変化する信号)を入力する。これにより、モード選択手段40は、通電パターン決定手段26を停止位置検出モード26Aにセットする。通電パターン決定手段26の停止位置検出モード26Aは、予め定められた6つの停止位置判定用の通電パターンをロータが回転しない程度の時間だけ継続されるように励磁信号出力手段27に指令を出す。なお、ロータが回転しない程度の時間は、ブラシレスモータ1のイナーシャなどによって異なるが、例えば、数μ秒から数m秒の間であり、制御装置11が有するカウンタでカウントされる。励磁信号出力手段27は、通電パターンに応じたパルス幅変調信号をインバータ回路13に出力し、パルス幅変調信号に対応してスイッチング素子40UH〜40WLがON、OFFされて3相のいずれか2相に通電される。
【0034】
図6に停止位置検出手段34が指令する停止位置判定用の通電パターンを示す。これら通電パターン#1〜#6は、ブラシレスモータ1を駆動可能なパターンになっている。
通電パターン#1は、U相のコイルUからV相のコイルVに電流を流す。U相がN極磁化され、V相がS極磁化される。
通電パターン#2は、U相からW相のコイルWに電流を流す。U相がN極磁化され、W相がS極磁化される。
通電パターン#3は、V相からW相に電流を流す。V相がN極磁化され、W相がS極磁化される。
通電パターン#4は、V相からU相に電流を流す。V相がN極磁化され、U相がS極磁化される。
通電パターン#5は、W相からU相に電流を流す。W相がN極磁化され、U相がS極磁化される。
通電パターン#6は、W相からV相に電流を流す。W相がN極磁化され、V相がS極磁化される。
【0035】
図7に示すように、この実施の形態でロータ41の停止位置検査は、通電パターン#1〜#6に対応して実施される。
通電パターン#1では、U相からV相への通電を行い、その後に回生期間を設ける。すなわち、スイッチング素子40UNとスイッチング素子40VLにデューティ100%のPWM信号を入力し、それぞれをN極磁化とS極磁化する。コイルUからコイルVに電流が流れ、これに応じた電流がシャント抵抗13Aに流れる。シャント抵抗13Aに流れる電流は、電源20を通してブラシレスモータ1に印加される印加電流であり、時間の経過と共に徐々に増加する。
【0036】
印加電流が予め定められている過電流閾値に達したら、通電区間を終了して回生期間に移行する。具体的には、シャント抵抗13Aの電圧値をモニタしている過電流検出手段38は、基準電圧が過電流閾値に相当する電圧に設定されているので、シャント抵抗13Aに流れる印加電流に相当する電圧が基準電圧に達すると、過電流検出信号としてLowレベルの信号を出力する。これによって、過電流保護手段39の電位がLowレベルに落ち、High側の全てのスイッチング素子40UH〜40WHがOFFになる(ハードウェアリミット)。さらに、それと同時に、制御装置11は、過電流検出信号の立ち下がりエッジを検出したら、割り込み処理を実施して通電パターン#1の通電を終了させる(ソフトウェアリミット)。これにより、ブラシレスモータ1に流れる電流がゼロになる。ソフトウェアリミットの発生が遅れるので、ハードウェアリミットを併用して、素早く電流をゼロにする。
【0037】
通電パターン決定手段26の停止位置検出モード26Aは、過電流保護手段32の停止位置検出モード32Aを選択し、それと同時にカウンタ29Bはカウントアップを開始する。その後、過電流検出手段38から過電流検出信号が、過電流保護手段32の停止位置検出モード32Aを経由して、カウンタ29Bへ入力されると、カウンタ29Bのカウント値は記憶手段29Aに記憶される。記憶手段29Aは、このときのカウント値を通電パターン#1に対する通電時間T1として記憶する。
【0038】
なお、ブラシレスモータ1に流れる電流をゼロにするためにインバータ回路13のFETを全てOFFにする。このとき、コイルに蓄積されていた電力はFETのボディダイオードと、電源20と、シャント抵抗13Aを介してコイルに戻ってくる回路を流れる回生電流となるので、マイナスの電流となる。回生電流は、シャント抵抗13Aの電流波形に示すように、時間の経過と共にゼロなる。
【0039】
通電パターン決定手段26の停止位置検出モード26Aは、通電パターン#1の通電を指令する信号を出力してから、カウンタ29Bから所定の時間が経過した信号を受け取ったら、通電パターン#2の通電を指令する信号を出力する。所定の時間は、印加電流が過電流閾値に達し、その後に流れる回生電流がゼロになるまでに要する時間として十分な値が設定されている。なお、カウンタ29Bには、この所定の時間に相当するカウント値がカウンタクリア用の閾値として設定されている。このため、通電パターンを切り替えるタイミングでカウンタ29Bの値がリセットされる。
【0040】
なお、所定の時間は、印加電流が過電流閾値に達し、その後に流れる回生電流がゼロになるまでに要する時間として十分な値が設定されているが、電流を印加してから過電流閾値に達するまでの時間を計測し(記憶手段29Aの計測結果)、その時間と同じ時間を所定の時間としても良い。この場合は、記憶手段29Aが通電時間を計測する毎に、カウンタ29Bをリセットするための所定の時間のデータをカウンタ29Bに渡す。つまり、記憶手段29Aからカウンタ29Bに所定の時間信号が送られる。
【0041】
以降、同様にして通電パターン#2〜#6を実施すれば、それぞれの通電パターンに対応してシャント抵抗13Aに印加電流と回生電流が順番に流れる。電流印加時間計測手段29は、通電開始からのカウント値を通電パターン#2〜#6に対応して通電時間T2〜T6として記憶手段29Aに記憶する。
記憶手段29Aに記憶されるカウント値は、ロータ停止位置によって変化する。ロータ停止位置に対応する通電パターンでは、最も磁束が流れ易く、過電流閾値に達するまでの時間が短くなる。図7の例では、通電パターン#3のときが最も大きく、その隣りの通電パターン#2、#4が次に大きい、そして通電パターン#6のときが最も小さい。したがって、通電パターン#6に相当する位置にロータが停止していることになる。このように、カウント値の大小を電流印加時間比較手段30で調べれば、ロータ位置推定手段31においてロータ停止位置を推定することが可能になる。
【0042】
ロータ停止位置が推定された後に実施される通電パターン決定手段26の始動励磁モード26Bは、6通りの通電時間のうち最小になる通電パターンから回転方向に120°位相を進ませた通電パターンを始動時の通電パターンとして選択する。このことについて、図8を参照しながら説明する。
3相のブラシレスモータ1の2相間に電流を流してロータを回転させると、図8に示すように、位相がずれた正弦波状(又は台形波状)のトルクが発生する。例えば、通電パターン#3であるVW通電状態でロータを外部から回転させようとしたとき、ロータ位置の位相が±0°のときはトルクがゼロになり、ロータ位置の位相が+60°のときはプラス側の最大トルクの86.6%のトルクが得られる。以下、ロータ位置の位相が+120°のときはプラス側の最大トルクの86.6%のトルク、ロータ位置の位相が180°のときはゼロ、ロータ位置の位相が+210°のときはマイナス側の最大トルクの86.6%のトルクがそれぞれ得られる。
したがって、ロータ位置に応じて常にプラス側に大きいトルクが得られるように回転させるためには、ロータ位置がP1のときに通電パターン#3を実施すると、その後トルクが増大するので大きい力でロータ41を回転させることができる。
【0043】
このように、電気角60°ごとに2相通電パターンを切り替える120°矩形波駆動では、86.6%トルクから100%トルクを使用しながら駆動させる。
ロータ位置がP1のとき、ロック通電パターンはUV通電であるため、UV通電パターンから120°位相が進んだVW通電パターンを使用すれば高いトルクで始動させられる。ロック通電状態となるとき、ロータマグネット磁束とコイル磁束は増磁状態なのでコイルのインダクタンスが小さくなる。このため、任意のロータ位置においてコイルインダクタンスの最も小さな通電パターンを検索することで、任意のロータ位置におけるロック通電パターンを特定することができる。したがって、特定したロック通電パターンから120°位相が進んだ通電パターンを使用すれば高いトルクで始動させられる。なお、トルク波形が台形波になるときは、120°矩形波駆動であっても、ほぼ100%トルクを常に出すことができる。なお、ロック通電パターンは、ロータ停止位置に相当するものである。
【0044】
ここで、1つのロータ位置に対して、6通りの通電パターンを出力した場合の挙動について、ロータ位置が図8のP6にあると仮定して説明する。
図9のP6のロータ位置に対して最も増磁となる通電パターンは、通電パターン#6のWV通電である。このときにロータをプラス側の最大トルクでプラス方向に回転させるのは、120°進めた通電パターン#2:UW通電である。これは、P6のロータ位置に対して通電パターン#2の通電を実施すると、ステータコイルの磁束とロータマグネットの磁束による吸引反発の関係から、ロータにプラス方向に回転する力(トルク)を発生させることができるからである。
これは図6の(b)の状態と等価であり、ロータマグネットのN極の方向をd軸、d軸と直交した方向をq軸とすると、ステータコイルによる磁束のq軸成分は−86.6%であり、ロータをプラス方向に回転させると、q軸成分の磁束の絶対値は増加する。
また、P6にあるロータをマイナス側の最大トルクでマイナス方向に回転させるためには、通電パターン#4:VU通電を実施すれば良い。P6のロータ位置に対して通電パターン#4の通電を実施すると、ステータコイルの磁束とロータマグネットの磁束による吸引反発の関係から、ロータにマイナス方向に回転する力(トルク)が発生させられるからである。この場合、これは図6の(d)の状態と等価であり、ステータコイルによる磁束のq軸成分は86.6%であり、ロータをマイナス方向に回転させると、q軸成分の磁束の絶対値は増加する。
【0045】
図6の(a)の通電パターン#1では、UV通電が行われる。マグネット磁束ベクトルは、d軸と重なるが、コイル磁束ベクトルはd軸及びq軸からずれている。具体的には、d軸成分が50%で、q軸成分が−86.6%になっている。このため、瞬間的に発生するトルクは、−86.6%になる。ロータ(回転磁界)がプラス方向(正転方向)に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が減少するトルクが発生する。このときのトルクは2番目に大きいトルクが得られる。これに対し、ロータが−方向(逆転方向)に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が増加するが、この位置関係では回転させることができない。
【0046】
(b)の通電パターン#2:UW通電では、コイル磁束ベクトルがd軸成分が−50%で、q軸成分が−86.6%になっている。ロータ(回転磁界)が+方向に回転するq軸成分の磁束の絶対値が増加するトルクが発生する。このときに+回転方向で最も大きいトルクが得られる。これに対し、ロータが−方向に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が増加するが、この位置関係では回転させることができない。
【0047】
(c)の通電パターン#3:VW通電では、コイル磁束とマグネット磁束が真逆の関係になる。このため、吸引力がゼロで反発が最大になる。コイル磁束ベクトルは、d軸成分が−100%で、q軸成分が0%になる。瞬間発生トルクは0%になり、ロータがどちらに回転してもq軸成分の磁束の絶対値が増加するが、発生トルクは小さくほとんどゼロである。このとき、ステータコアを貫く磁束は最小になり、磁気飽和し難くなる。コアの透磁率が最大になって、ステータコイルのインダクタンスも最大となる。
【0048】
(d)の通電パターン#4:VU通電では、コイル磁束ベクトルがd軸成分が−50%で、q軸成分が86.6%になっている。このため、瞬間的に発生するトルクは、86.6%になる。ロータが+方向に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が減少するが、この位置関係では回転させることができない。ロータが−方向に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が増加するトルクが発生する。このときに−方向で最も大きいトルクが得られる。
【0049】
(e)の通電パターン#5:WU通電では、コイル磁束ベクトルがd軸成分が50%で、q軸成分が86.6%になっている。ロータが+方向に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が増加するが、この位置関係では回転させることができない。ロータが−方向に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が減少するトルクが発生する。このときに−方向で2番目に大きいトルクが得られる。
【0050】
(f)の通電パターン#6:WV通電では、コイル磁束とマグネット磁束が一致する。
このため、吸引力が最大になり、反発力がゼロになる。コイル磁束ベクトルは、d軸成分が100%で、q軸成分が0%になる。瞬間発生トルクは0%になり、ロータがどちらに回転してもq軸成分の磁束の絶対値が増加するが、発生トルクは小さくほとんどゼロである。この状態では、ステータコアを貫く磁束が最大となって、磁気飽和し易い。コアの透磁率が最小になって、ステータコイルのインダクタンスも最小となる。
【0051】
インダクタンスに関しては、停止しているロータ位置に対して回転磁界(ステータコイル磁束)を変化させることで、原理的には正弦波状にコアを貫く磁束の量が変化するので、インダクタンスの変化も正弦波状になる。図9にロータ位置がP6のときの2相通電パターンとインダクタンス変化、及び発生トルクの変化を示す。
図9では、破線が発生トルクの変化を示し、実線がインダクタンスの変化を示している。インダクタンスが最大となる通電パターン#3が、通電時間が最も大きくなる通電パターンである。したがって、この通電パターン#3の1つ前の通電パターン、若しくは通電時間が最小となる通電パターン#6の2つ先の通電パターンが、正転方向の最大トルク発生可能通電パターンであり、この場合は通電パターン#2になる。
同様に、通電時間が最大となる通電パターン#3の1つ先の通電パターン、若しくは通電時間が最小となる通電パターン#6の2つ前の通電パターンが、逆転方向の最大トルク発生可能通電パターンである。このように求めた最大トルク発生可能通電パターンを、起動通電パターンにセットすることで、高トルクな起動が可能になる。
【0052】
さらに、各通電パターンと通電時間の関係は、図10の(a)に示すようになる。ラインL6に示す通電時間波形は、ロータが位置P6にあるときの通電時間の変化を示している。ラインL1の通電時間波形は、ロータがP6から正転方向にπ/3(60°)進んだ位置P1にあるときの通電時間の変化を示す。以下、ラインL2、L3、L4、L5は、それぞれ正転方向のπ/3(60°)ずつ進んだ位置P2、P3、P4、P5にあるときの通電時間波形である。このように、ロータ位置により6通りの正弦波状になるので、その正弦波から起動通電パターンを推定することができる。
図10の(b)に示すように、各通電時間波形を三角波として捉え、これら三角波のそれぞれを微分(差分ΔTをとる)して傾きの符号を求めると、図10の(c)に示すようになる。例えば、ラインL4の通電時間波形で、通電時間T1から通電時間T2に至るまでは減少傾向にあるので、通電時間T1と通電時間T2の差分ΔTの符号は、「−」になる。
【0053】
ここで、6通りの通電パターンの全てについて通電時間を調べて記憶手段29Aに記憶させることも可能であるが、この実施の形態では、電流印加時間比較手段30にマップ30Aを設けることで、3つ又は4つの通電パターンでロータ停止位置を推定するようにしている。すなわち、図10の(b)に示すように、4つの通電パターン#1〜#4の中で必ずピークが現れるので、差分T12(=T2−T1)、差分T23(=T3−T2)、差分T34(=T4−T3)の符号の組み合わせから、三角波の最大又は最小のピークを求め、起動通電パターンを推定することができる。
マップ30Aの構成を以下に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
マップ30Aから分かるように、ロータ停止位置P5とP2の2通りは、T12とT23のみで、T34を実施しなくても推定できる。
このように、表1に示すようなマップ30Aを予め用意しておき、前後して通電される2つの通電パターンのそれぞれの通電時間の差分で検索することで、3回又は4回の通電でロータ回転位置を推定できるようになる。なお、全ての場合において4回通電を行ってからロータ停止位置を判別しても良い。
【0056】
ここで、ステップS104の停止位置検出処理のフローを図11に示す。
最初に過電流保護手段32の停止位置検出モード32Aが選択され(ステップS121)、停止位置検出サブルーチンAが実施される(ステップS122)。停止位置検出サブルーチンAは、通電パターンの決定(ステップS122A)と、次のモードへの移行の可否の判定(ステップS122B)を実施する。
始動励磁パターンが確定していないときは、ステップS122BからステップS123に進む。この処理は、過電流検出信号の立下りを検出したときに発生する割り込み処理であり、ブラシレスモータ1に電流が流れている間待機し(ステップS123)、過電流検出が検出されたら(ステップS124)、停止位置検出サブルーチンBを実施する(ステップS125)。その後、停止位置検出サブルーチンAに戻る。
これに対し、始動励磁パターンが確定したときは、ステップS122BからステップS126に進んでカウンタ29Bを停止させる。この後、始動励磁モードに移行し(ステップS127)、過電流保護手段32の過電流検出モード32Bを設定する(ステップS128)。具体的には、過電流検出手段38が過電流を検出したら(ステップS128A)、過電流フラグを「1」にセットする(ステップS128B)。
【0057】
図12に示すように、停止位置検出サブルーチンAでは、通電ナンバー(通電No)のカウンタをインクリメントする(ステップS201)。1回目の処理では通電Noカウンタは1に設定される。カウンタ29Bのクリア用の閾値を最大値に設定し(ステップS202)、カウンタ29Bを一度リセットしてから(ステップS203)、PWMデューティを100%に設定する(ステップS204)。
通電Noカウンタが「1」であれば(ステップS205でYes)、通電パターン#1を実施する(ステップS206)。そして、ここでの処理を抜ける。
同様に、通電Noカウンタが「2」であれば(ステップS207でYes)、通電パターン#2を実施する(ステップS208)。
通電Noカウンタが「3」であれば(ステップS209でYes)、通電パターン#3を実施する(ステップS210)。
【0058】
これに対し、通電Noカウンタが「4」であれば(ステップS211でYes)、差分T12<0で、かつ差分T23>0の場合(ステップS212でYes)、又は差分T12>0で、かつ差分T23<0の場合(ステップS213でYes)、PWMデューティを0%に設定し(ステップS214)、次のモード(始動励磁モード26B)に移行する(ステップS215)。それ以外の場合(ステップS212、ステップS213が共にNo)、通電パターン#4を実施する(ステップS216)。
【0059】
そして、通電Noカウンタが「5」であれば(ステップS217でYes)、差分T12>0、かつ差分T23>0、かつ差分T34>0である場合(ステップS218でYes)、差分T12>0、かつ差分T23>0、かつ差分T34<0である場合(ステップS219でYes)、差分T12<0、かつ差分T23<0、かつ差分T34<0である場合(ステップS220でYes)、差分T12<0、かつ差分T23<0、かつ差分T34>0である場合(ステップS221でYes)、PWMデューティを0%に設定し(ステップS222)、次のモード(始動励磁モード26B)に移行する(ステップS223)。
【0060】
停止位置検出サブルーチンBの詳細を図13及び図14を示す。停止位置検出サブルーチンBは、電流印加時間計測手段29と、電流印加時間比較手段30と、ロータ位置推定手段31の処理の詳細を示すものである。まず、通電のカウンタを調べ、カウンタ番号が「1」であれば(ステップS251でYes)、カウンタ29Bのカウント値を通電時間T1として記憶手段29Aにメモリさせる(ステップS252)。
カウンタ番号が「2」であれば(ステップS253でYes)、カウンタ29Bのカウント値を通電時間T2として記憶手段29Aにメモリさせる(ステップS254)。さらに、差分T12を算出する(ステップS255)。
カウンタ番号が「3」であれば(ステップS256でYes)、カウンタ29Bのカウント値を通電時間T3として記憶手段29Aにメモリさせる(ステップS257)。さらに、差分T12を算出する(ステップS258)。
【0061】
ここで、差分T12<0で、かつ差分T23>0の場合(ステップS259でYes)、正転時であれば(ステップS260でのNo)、起動通電パターンを通電パターン#1に設定する(ステップS261)。逆転時であれば(ステップS260でYes)、起動通電パターンを通電パターン#3に設定する(ステップS262)。
一方、差分T12>0で、かつ差分T23<0で(ステップS263)、正転時には(ステップS264でNo)、起動通電パターンを通電パターン#4に設定する(ステップS265)。逆転時であれば(ステップS264でYes)、起動通電パターンを通電パターン#6に設定する(ステップS266)。
【0062】
カウンタ番号が「4」であれば(ステップS267でYes)、カウンタ29Bのカウント値を通電時間T4として記憶手段29Aにメモリさせる(ステップS268)。さらに、差分T34を算出する(ステップS269)。
ここで、差分T12>0、T23>0,T34>0の場合(ステップS270でYes)、正転時であれば(ステップS271でNo)、起動通電パターンを通電パターン#6に設定する(ステップS272)。逆転時であれば(ステップS271でYes)、起動通電パターンを通電パターン#2に設定する(ステップS273)。
【0063】
差分T12>0、T23>0,T34<0の場合(ステップS274でYes)、正転時であれば(ステップS275でYes)、起動通電パターンを通電パターン#5に設定する(ステップS276)。逆転時であれば(ステップs275でNo)、起動通電パターンを通電パターン#1に設定する(ステップS277)。
差分T12<0、T23<0,T34<0の場合(ステップS278でYes)、正転時であれば(ステップS279でNo)、起動通電パターンを通電パターン#3に設定する(ステップS280)。逆転時であれば(ステップS279でYes)、起動通電パターンを通電パターン#5に設定する(ステップS281)。
差分T12<0、T23<0,T34>0の場合(ステップS282でYes)、正転時であれば(ステップS283でNo)、起動通電パターンを通電パターン#2に設定する(ステップS284)。逆転時であれば(ステップS283でYes)、起動通電パターンを通電パターン#4に設定する(ステップS285)。
【0064】
次に、図5のステップS106の始動励磁処理の詳細について説明する。
図15に示すように、通電パターン決定手段26の始動励磁モード26Bでは、そのロータ位置に対して最大のトルクを発生可能な位相の始動通電パターンを決定し、励磁信号出力手段27に始動通電パターンを出力させる(ステップS131)。初期通電カウンタを起動させ、予め設定した一定の初期通電時間Ts1が経過するまで、前記した位相に通電する(ステップS132)。そして、所期通電時間Ts1経過したことを確認したら、モード選択手段40が通電パターン決定手段26をフリーラン制御モード26Cにセットする(ステップS133)。
【0065】
図5のステップS108のフリーラン制御処理の詳細について説明する。
図16に示すように、最初に、通電パターン決定手段26のフリーラン制御モード26Cがフリーランパターンとして、全相の通電をOFFにする通電パターンを出力する(ステップS141)。
慣性でブラシレスモータ1のロータがフリーランしている間に発生する誘起電圧から、正転専用ロジックを用いてロータの位置検出を実施する(ステップS142)。ロータ位置を予め定めた回数だけ検出できたら(ステップS143でYes)、通電パターン決定手段26を定常励磁モード26Dにセットし、誘起電圧によるセンサレス駆動(定常駆動モード)に移行する(ステップS144)。
ステップS143でロータ位置を予め定めた回数検出されていないときは(ステップS143でNo)、誘起電圧のエッジ間隔を計測する回数が予め設定された回数経過するまで(ステップS145)、ステップS142を繰り返す。所定回数経過してもロータ位置を予め定めた回数検出できないときは(ステップS145でYes)、ブラシレスモータ1が逆転していると判定し、モード選択手段40は、通電パターン決定手段26をブレーキ停止モード26Eにセットする(ステップS146)。
【0066】
図5のステップS112のブレーキ停止処理の詳細について説明する。
図17に示すように、ブレーキ停止モード26Eによるブレーキ停止処理として、低デューティで2相通電ロック処理が行われる(ステップS151)。2相通電ロック処理は、予め定められた一定時間実施し、この時間が経過したら(ステップS152)、停止位置検出モード26Aがセットされる(ステップS153)。
【0067】
次に、停止位置検出を含む始動時の処理の全体について、図18を参照してさらに詳細に説明する。図18は、横軸に時間経過をとっており、縦方向に各種の情報が並んで配置されている。なお、最も上側に示されているホールセンサ信号は、ホールセンサが取り付けられていた場合にホールセンサの出力として想定される信号である。
時間t1で始動信号が入力されたら、時間t2までの間にロータ停止位置検出処理(ステップS103)が行われる。この間の回転速度はゼロである。
【0068】
時間t2でロータ停止位置を決定したら、シャント抵抗13Aの電流波形に示すように、始動時励磁手段36が初期通電時間Ts1の間だけ始動励磁パターンを継続して通電させる。この間、ロータ41の回転速度が徐々に増大する。
ここで、初期通電時間Ts1は、通電をOFFにした後で誘起電圧のエッジが複数回、例えば、4回以上発生するまでの間、ロータ41を回転速度N1以上でフリーランさせることができるだけロータ41を加速できる時間である。この観点からは、初期通電時間Ts1が長いことが望ましい。しかしながら、初期通電時間Ts1が長すぎて通常運転時における励磁パターンの切り替え位置を越えて同じ励磁パターンを継続すると、逆トルクが発生してしまってロータ41を減速させてしまう。したがって、初期通電時間Ts1は、逆トルクが発生しない範囲内で、できるだけ長い時間とすることが好ましい。初期通電時間Ts1の決定方法の一例としては、設計段階や製造段階でブラシレスモータ1をホールセンサ付きで始動させ、最初にホールセンサの信号が切り替わるまでの時間を測定し、これと略同じ時間又はこれより短い時間を初期通電時間Ts1として制御装置11に記憶させることがあげられる。
【0069】
時間t3で初期通電時間Ts1が経過したら、通電パターン決定手段26がフリーラン制御モード26Cに移行し、全相への通電をOFFにする。シャント抵抗13Aで計測される電流値がゼロになり、ロータ41がフリーランする。以降は、時間の経過と共に回転速度がゆるやかに減少する。時間t3では、各位置信号にパルスが現れている。このため、3相の信号の立ち上がりエッジに対応して、励磁切り替えタイミング信号に1つ目の信号SL1が発生している。このときパルス信号は、ステータのコイルに蓄積されたエネルギがフライホイールパルスとして放出されときに、3相全てのモータ端子電圧に方形波パルス電圧が発生することに起因して発生している。通常駆動の場合はこれらの方形波パルス電圧は分離手段21により無視できるが、時間t3では全相をOFFするロジックなので、通常駆動時には在り得ない例外状態となるため、方形波パルス電圧を無視できずに誤検出となる。このため、始動後の1回目の信号SL1はロータ位置の検出には使用しない。
【0070】
さらに、ロータ41がフリーランすることで、ロータ41の回転位置に応じてブラシレスモータ1の所定の相のモータ端子に誘起電圧が発生する。この場合には、W相位置信号、U相位置信号、V相位置信号の順番に立ち上がりエッジ、又は立ち下がりエッジが発生している。その結果、励磁切り換えタイミング信号は、W相のエッジに起因する2回目の信号SL2と、U相のエッジに起因する3回目の信号SL3と、V相のエッジに起因する4回目の信号SL4とが発生する。なお、全相をOFFにすることで、インバータ回路13からブラシレスモータ1に入力されるパルス幅変調信号などの不要な信号成分がない状態で誘起電圧と等価中性点電位の交点を計測できるようになるので、ロータ位置を正確に検出できる。
【0071】
この間、励磁切り替えタイミング演算手段22は、2回目の信号SL2と3回目の信号SL3の時間間隔を計測して電気角60°を算出する。さらに、3回目の信号SL3と4回目の信号SL4の時間間隔を計測して電気角60°を算出する。これら時間間隔に基づいて、4回目の信号SL4から例えば電気角30°進角させるなどして、励磁切り替えタイミングを算出する。そして、以降は、モータ端子電圧と等価中性点電位の比較結果から生成される信号に基づいて励磁切り替えタイミングを決定し、通電パターンの切り替え制御を行うことで、ブラシレスモータ1の運転が行われる。ホールセンサを有する場合の電気角120°矩形波駆動と同等性能の駆動が可能になって、回転速度が制御される。
【0072】
なお、イナーシャが大きいブラシレスモータでは、5回目以降の信号を取得し、同様にして時間間隔から励磁通電タイミングを算出しても良い。始動時の安定性や、正確性をさらに向上できる。
また、イナーシャが大きいブラシレスモータでは、2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔と、3〜4回目の信号SL3,SL4の時間間隔が略等しい。このため、2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔のみでセンサレス駆動に移行しても良い。このようにすると、さらに短い時間で定常的な運転を開始することができる。また、1回目の信号SL1と2回目の信号SL2の時間間隔だけを取得してセンサレス駆動に移行しても良い。イナーシャが小さいブラシレスモータに有効である。この場合は、初期通電時間SL1は予め設定された値を用いており、SL2のタイミングを検出した時点でSL1とSL2の時間間隔を演算し、それをロータ位置信号として使用することができるので、2回目の信号SL2まででセンサレス駆動に移行できるようになる。
また、イナーシャが小さいブラシレスモータでは、減速が大きくなって2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔より、3〜4回目の信号SL3,SL4の時間間隔の方が大きくなる。この場合には、時間間隔の変化から加速度を算出し、この加速度を用いて次の時間間隔を推定することで励磁通電タイミングを算出しても良い。
【0073】
さらに、この始動方法では、モータ始動時に電流を抑制しながら起動する方法(以下、ソフトスタートという)を実施している。例えば、図19に示すように、始動時は、パルス幅変調信号(PWM)のデューティを例えば50%にして電流を抑制し、その後回転速度を上昇させ、初期通電時間Ts1が経過したら、一旦デューティを0%にして、フリーランさせる。フリーランが終了したら、再びデューティを約50%にし、そこからデューティを徐々に増加させ、最終的にデューティが100%に達しときに回転速度が目標値(例えば、最大回転数)に達するようにする。これによって、始動時に過電流が流れることを防止することができ、ブラシレスモータ1が搭載されているシステム全体の安定性を高めることができる。
【0074】
次に、図5のステップS110に示す誘起電圧によるセンサレス駆動(定常駆動モード)の詳細について説明する。
定常駆動モードでは、モータ端子の誘起電圧を検出してロータ位置を検出するが、誘起電圧波形には方形波状のスイッチングパルス(方形波パルス電圧)が重畳するので、このようなノイズを除去する必要がある。この実施の形態では、各相のロータ位置信号に相当するエッジを検出したときに、他相のレベル検出を行って、ロータ位置信号と方形波パルス電圧とを区別している。この際に使用される正転専用ロジックは、表2に示す誘起電圧信号検出ロジックと、表3に示す方形波パルス電圧終了エッジ判定ロジックとからなる。
なお、正転専用ロジックは、ブラシレスモータ1が正回転していると判定された場合に、回転方向検出ロジック選択手段24の指令によって分離手段21が参照する。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
定常駆動モードで通電制御しているときの信号波形を図20に示す。図20は、横軸に電気角をとり、縦軸は上側から各相U,V,Wへの通電状態と、各相U,V,Wの実際の誘起電圧波形Uv、Vv、Wv(アナログ信号)と、相U,V,Wごとの誘起電圧信号Ud,Vd,Wd(デジタル信号)とが図示されている。最上段の相U,V,Wへの通電状態は、上段で「+」が付加されている相U,V,Wが高電位側で、下段で「−」が付加されている相U,V,Wが低電位側であることを示している。つまり、電気角0°から60°までの間の「W+」「V−」は、W相からV相に通電することを示す(図6における通電パターン#6と同等)。また、例えば、誘起電圧波形Uvにおいて、電気角0°で立ち上がるパルスや、電気角180°で立ち下がるパルスが方形波パルス電圧Psであり、これら方形波パルス電圧Psがこの実施の形態において除去対象となる信号である。
【0078】
また、図21はマスク信号の生成過程及び位置検出信号の生成過程を模式的に示す図である。なお、図21は、横軸に電気角をとり、縦軸は上側から各相U,V,Wの誘起電圧信号Ud,Vd,Wd(図20と同じ信号)と、前記誘起電圧信号Ud、Vd、Wdそれぞれに重畳されている方形波パルス電圧信号Psを分離するためのマスク信号Um、Vm、Wmと、前記マスク信号によってUd、Vd、Wdから分離された方形波パル電圧信号Ups、Vps、Wpsと、各相U,V,Wの位置検出信号Us、Vs、Wsと、電気角30°位相シフトした後の位置検出信号Uss、Vss、Wssとが順番に図示されている。
【0079】
図20に示す各相U,V,Wの誘起電圧波形Uv、Vv、Wvは、誘起電圧I/F回路12(図1参照)に入力され、図2のローパスフィルタ回路15A〜15Cの分圧回路によりコンパレータ17A〜17Cに入力可能な電圧Uv2、Vv2、Wv2に分圧される。その後、ローパスフィルタ回路18A〜18CによりPWMノイズを除去した後の誘起電圧信号Uv3、Vv3、Wv3を生成し、これらの電圧値から等価中性点電圧が得られる。この等価中性点電圧と誘起電圧波形Uv3とをコンパレータに入力すると、誘起電圧信号Udが得られる。同様にして、アナログ信号の誘起電圧波形Vv3,Wv3からデジタル信号の誘起電圧信号Vd,Wdが得られる。これら、誘起電圧信号Ud,Vd,Wdは、制御装置11の分離手段21に入力され、以下の処理によって通電切り替えタイミングが生成される。
【0080】
分離手段21は、誘起電圧信号Ud,Vd,Wdのパルス信号から、方形波パルス電圧Psのエッジとロータ41の回転により生じる誘起電圧のエッジとを分離し、回転子位置検出部23がロータ41の回転により生じる誘起電圧の情報からなる位置検出信号Us,Vs,Wsを作成し、励磁切り替えタイミング演算手段22に受け渡す。励磁切り替えタイミング演算手段22では、図21に示す位置検出信号Us,Vs,Wsのエッジ(誘起電圧エッジ)の間隔Teをカウントする。具体的には、位置検出信号Us,Vs,Wsのすべてのエッジをトリガーとしてカウンタによる計測を開始し、次にいずれかの位置検出信号Us,Vs,Wsのエッジが検出されたらカウント値をクリアすると同時に次のカウントを開始する。ここで、ブラシレスモータ1が回転しているときには、誘起電圧エッジの間隔Teは、電気角60°ごとに発生するので、誘起電圧の発生間隔を示すカウント値からロータ41の回転速度や加速度を演算し、これに応じて次に通電を切り替えるタイミングを補正し、その分だけ位置検出信号Us,Vs,Wsの位相をシフトして位相検出信号Uss,Vss,Wssを生成する。そして、励磁信号出力手段27が、これら位相検出信号Uss,Vss,Wssに従ってインバータ回路13を制御し、各固定子巻線U,V,Wへの通電を切り替えてブラシレスモータ1のロータ41を回転させる。
【0081】
ここで、励磁信号出力手段27はマスク信号生成手段27Aを備えており、マスク信号生成手段27Aは、励磁信号出力手段27がインバータ回路13に通電パターンを出力する直前に分離手段21にマスク信号を出力する。
例えば、図21の例では、U相の位置検出信号Ussのエッジの発生タイミングの直前に、W相のマスク信号WmをH(High)レベルに設定する。同様に、V相の位置検出信号Vssのエッジエッジの発生タイミングの直前に、U相のマスク信号UmをH(High)レベルに設定する。W相の位置検出信号Wssのエッジの発生タイミングの直前に、V相のマスク信号VmをH(High)レベルに設定する。これら各マスク信号Um,Vm,Wmの信号レベルは所定の電気角の間維持された後にL(Low)レベルに変更される。
【0082】
なお、マスク信号Um,Vm,Wmのパルス幅を決定する電気角は、常にTeの計測値から予めメモリされている角度を算出する。具体的には、通常負荷で回転させたときの方形波パルス電圧Psのパルス幅よりも大きく、かつマスク信号のパルスで誘起電圧波形Uv,Vv,Wvと等価中性点電圧との交点がマスクされないような値、0°<θ<30°が用いられる。
【0083】
以降は、誘起電圧I/F回路12から入力される誘起電圧信号Ud,Vd,Wdに対して、マスク信号Um,Vm,Wmで方形波パルス電圧Psのパルスを除去して位置検出信号Us,Vs,Wsを作成し、複数台並列モータ1の通電制御を行う。
【0084】
ここで、方形波パルス電圧Psのパルス幅は、負荷の大きさや、回転速度によって変化する。これに対して、マスク信号Um,Vm,Wmは、一定のパルス幅なので、マスク信号Um,Vm,Wmで方形波パルス電圧Psのパルスを完全にマスクできる場合と、マスクしきれない場合とが生じる。
【0085】
まず、方形波パルス電圧Psのパルス幅がマスク幅以下の場合には、図22に示すように、方形波パルス電圧Psの開始エッジ及び終了エッジの両方をマスクすることができる。この場合には、分離手段21は、表1に示すような誘起電圧信号検出ロジックに従って、誘起電圧信号Ud,Vd,Wdから位置検出信号Us,Vs,Wsを作成する。
【0086】
なお、図22において、電気角θ1から始まる方形波パルス電圧Psの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジは、マスク信号UmがHレベルであるので無視される。電気角θ2における立ち上がりエッジは、表1の立ち上がりエッジの誘起電圧信号Udについての条件を満たすので、U相の誘起電圧の立ち上がりエッジとみなされる。同様に、電気角θ3から始まる方形波パルス電圧Psの立ち下がりエッジ及び立ち上がりエッジは、マスク信号UmがHレベルであるので無視される。電気角θ4における誘起電圧信号Udの立ち下がりエッジは、表1の立ち下がりエッジの誘起電圧信号Udについての条件を満たすので、固定子巻線Uの誘起電圧の立ち下がりエッジとみなされる。同様にして他の誘起電圧信号Vd,Wdについても、表1の誘起電圧信号検出ロジックに従って誘起電圧の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとを判定し、位置検出信号Us,Vs,Wsを作成する。
【0087】
これに対して、図23に示すように、方形波パルス電圧Psのパルス幅がマスク幅を越える場合には、方形波パルス電圧Psの開始エッジはマスクできるが、方形波パルス電圧Psの終了エッジはマスクすることができない。このような場合に、分離手段21は、表1に示すような誘起電圧信号検出ロジックに加えて、表2に示すような方形波パルス電圧終了エッジ判定ロジックを参照して誘起電圧エッジを分離し、位置検出信号Us,Vs,Wsを作成する。
【0088】
図23において、電気角θ1から始まる方形波パルス電圧Psの立ち上がりエッジは、マスクされるが、同じ方形波パルス電圧Psの立ち下がりエッジは、マスクできないので、表2及び表3に示す立ち下がりエッジの条件を満たすか否かを調べる。この場合には、表3の立ち下がりエッジの誘起電圧信号Udについての条件を満たすので、方形波パルス電圧Psのエッジであるとみなし、この信号を除去した上で位置検出信号Usを作成する。電気角θ2のエッジは、前記のように表1の条件を満たすので、誘起電圧エッジとする。同様に、電気角θ3から始まる方形波パルス電圧Psの立ち下がりエッジは、マスク信号Umによって除去され、同じ方形波パルス電圧Psの立ち上がりエッジは、表3の立ち上がりエッジの誘起電圧信号Udについての条件を満たすので除去する。このようにして、マスク信号Umで除去しきれない方形波パルス電圧Psのパルスがあった場合には、他の誘起電圧信号Vd,Wdの電圧レベルの高低を調べて表2及び表3の条件に当てはめることで除去の要否を判定し、方形波パルス電圧Psによる信号を除去して位置検出信号Usを作成する。さらに、同様にして、位置検出信号Vs,Wsを作成する。
【0089】
ここで、位相検出信号Uss,Vss,Wssを生成する際に、通電を切り替えるタイミングを補正する処理について説明する。補正は、励磁切り替えタイミング演算手段22に設けられた遅れ位相補正部22Aで実施する。補正の対象となる遅れ位相を図23に示す。図24は、U相における励磁タイミングと遅れ位相θ1、θ2を模式的に示している。遅れ位相θ1は、誘起電圧I/F回路12のローパスフィルタ回路15A〜15Cに起因し、回転速度によって変化する。遅れ位相θ2は、コンパレータ17A〜17Cから後段の誘起電圧I/F回路12、すなわちコンパレータ17A〜17Cとローパスフィルタ回路18A〜18Cによる遅れ成分θ2aと、制御装置11のマイコンの処理遅れ時間θ2bの和(θ2=θ2a+θ2b)であり、駆動装置2に固有の値である。したがって、遅れ位相補正部22Aは、遅れ位相θ1を補正するフィルタ遅れ位相補正手段、及び遅れ位相θ2を補正する回路遅れ位相補正手段として機能する。
【0090】
まず、フィルタ遅れ位相補正手段としての遅れ位相補正部22Aの処理について説明する。
図25に示す範囲R5がブラシレスモータ1の回転速度の制御範囲である場合、ローパスフィルタ回路15A〜15Cは、範囲R5より高い周波数領域にカットオフ周波数fcが設定される。図25は、横軸を周波数の対数表示とし、縦軸を位相にしたボード線図である。カットオフ周波数fcのローパスフィルタ回路15A〜15Cを通った誘起電圧信号には遅れ位相θ1が生じる。遅れ位相θ1は、高周波数になる程、大きくなる。
【0091】
ローパスフィルタ回路15A〜15Cの伝達関数G(s)は、τ(=C×R)を用いると次式で表せる。
G(s)=1/(τs+1) (1)
式(1)から、遅れ位相θ1〔rad〕は、
θ1=−arctan(ωτ) (2)
【0092】
ここで、角加速度ωは、回転速度に相当するモータ端子電圧の基本周波数fの関数として表すことができるので、
θ1=−arctan(2πτ×f) (3)
となる。単位を〔°〕に変換し、遅れにとると、
θ1=arctan(2πτ×f)×360/2π (4)
となる。電気角60°回転するのに要する時間をTaとすると、1/f=6Taなので、θ1=arctan(2πτ/6Ta)×360/2π (5)
式(5)からローパスフィルタ回路15A〜15Cによる遅れ位相θ1を算出できる。遅れ位相θ1は、式(5)からその都度計算しても良いが、この実施の形態では遅れ位相補正部22Aにマップ登録しておき、時間Taで検索して遅れ位相θ1を求める。
【0093】
次に、回路遅れ位相補正手段としての遅れ位相補正部22Aの処理について説明する。
遅れ位相θ2は、ローパスフィルタ回路15A〜15C以外のその他の回路及びソフトウェア処理によって発生する。この遅れ位相θ2は、コンパレータ17A〜17C、ローパスフィルタ回路18A〜18C、マイコンなどに起因して発生する。このときの遅れ時間T2は、回転速度に依らず一定値である。したがって、電気角60°回転するのに要する時間Taに対する遅れ時間T2の割合から遅れ位相θ2を算出できる。
θ2=(T2/Ta)×60〔°〕 (6)
【0094】
式(6)からは、遅れ時間T2が一定なので、回転速度が上昇して時間Taが短くなると、T2/Taの値が大きくなって、遅れ位相θ2が大きくなることがわかる。なお、式(6)もマップ化しておくと、計算をスムーズに行える。
【0095】
以上から、励磁を切り替えるタイミングEwは、
Ew=30−(θ1+θ2) (7)
になる。マップを使用してタイミングEwを補正することで、タイミングEwを速やかに演算できる。さらに、補正したタイミングEwを使用することで、回転速度に依らずに励磁を精度良く切り替えられる。
【0096】
次に、始動時に回転速度が既に領域R2にあるときについて説明する。
図26に示すように、始動前の状態が前記したフリーラン状態と同じになる。図5のフローチャートに従ってステップS103からステップS108の処理を実施してもフリーランしている回転状態への影響は少なく、フリーラン状態を維持できる。したがって、ステップS109からステップS110に進んで、定常駆動モードに移行する。
【0097】
始動時に回転速度が図4に示す領域R3にあるときについて説明する。
図5のステップS101からステップS108を実施しても、逆方向に回転しているロータ41の誘起電圧波形では、正転専用ロジックでロータ位置信号を抽出することはできない。したがって、ロータ位置信号が例えば1〜9秒程度の所定の時間の間、検出できないときは、励磁切り替えタイミング演算手段22のフリーランモード22Cからの励磁切り替えタイミング信号がモード選択手段40に送られないので、モード選択手段が逆転状態にあると判定する。
この場合、図1に示す制御装置11は、ブレーキ停止モード26Eが2相ロック通電を一定の時間、過電流とならない程度の低いデューティでブラシレスモータ1に印加する(ブレーキ停止モード26E)。ラジエータファンにはブレーキとして働き、ラジエータファンの回転速度が小さくなって、停止状態に近くなる。
【0098】
図27に始動時に逆回転しているときの回転速度の変化を示す。2相ロック通電を継続する時間は、予め設定されたブレーキ通電時間で、例えば、1〜9秒程度である。これによって、ブラシレスモータ1の回転速度は、−N1からゼロに近付く。前記したように、ラジエータファンは、逆回転している場合に回転数及びトルクは小さいからである。
【0099】
ブレーキ通電時間が経過したら、インダクタンス検出を用いた始動処理を実施する。ラジエータファンは、フリクションが大きいシステムなので機械的な時定数は大きく、逆回転中に強制的に停止させた場合、風力によって再び逆方向に回転し始めるまでには時間がかかるため、回転速度が領域R1に留まっているからである。以降は、前記したステップS102からステップS108を実施し、定常駆動モードに移行する。
【0100】
この実施の形態によれば、コイルが作る磁束とマグネットが作る磁束が同じ方向の場合、つまりコイルとマグネットの間で磁束が流れ易いようなロータ位置ではインダクタンスが小さくなることに着目したので、従来の方法に比べて精度良く、かつ安定してロータ停止位置を検出することができる。
インダクタンス検出のための特別の回路が不要になるので回路構成を簡略化できる。
【0101】
ここで、このようなブラシレスモータ1は、例えば、ファンモータや、燃料ポンプのモータなど、イナーシャが大きいモータ、コギングトルクが無いスロットレスモータ、摩擦やコギングトルク等による損失が少ない低損失モータがあげられる。スロットレスモータでは、スロットのコアがないことからインダクタンス検出によるロータ停止位置の検出ができない。しかしながら、イナーシャが極めて小さいことから、ロータの停止位置を検出する際の通電で所定の回転位置に容易に吸い付けることができるので、そのような方法で停止位置を決めて、そこから電気角120°位相が遅れた通電パターンを始動励磁パターンに選択すれば良い。
【0102】
なお、本発明は、前記の実施の形態に限定されずに広く応用することができる。
例えば、正転専用ロジックに加えて逆転専用ロジックを使用しても良い。逆転専用ロジックは、回転方向判定手段23が逆転と判定するときに回転方向検出ロジック選択手段24によって選択されるもので、表3に示す誘起電圧信号検出ロジックと、表2に示す方形波パルス電圧終了エッジ判定ロジックとからなり、分離手段21に登録されている。逆転専用ロジックを使用することで逆回転状態にあることを確実に検出できるようになる。
【0103】
ステップS112のブレーキ停止処理を最初に実施しても良い。始動時にブラシレスモータ1の回転速度がいずれの領域R1〜R3にある場合でも、ブレーキ停止処理によって強制的に領域R1に制御されるようになる。
6つの通電パターン全てについてカウント値を計数してロータ停止位置を判定しても良い。
ブラシレスモータ1は、複数台を並列に接続させても良い。
ロータ停止位置を検出した後の始動方法や、定常回転時の駆動方法は、実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0104】
1 ブラシレスモータ
2 駆動装置
11 制御装置
13 インバータ回路
13A シャント抵抗(電流測定手段)
29A 記憶手段
29B カウンタ
30 電流印加時間比較手段(位置推定手段)
30A マップ
31 ロータ位置推定手段(位置推定手段)
38 過電流検出手段(電流比較手段)
41 ロータ
U,V,W コイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスファンモータの駆動装置、ブラシレスファンモータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルーム内に設けられた内燃機関のラジエータには、冷却効率を高めるラジエータファンが配設されている。このラジエータファンは、ブラシレスファンモータ(ブラシレスモータ)によって駆動される場合がある。ロータが永久磁石を有するタイプのブラシレスモータは、ロータの回転位置を検出する位置センサを設けずに位置センサレスで駆動制御を行うことがある。この場合には、開放区間(非通電相)のモータ端子に現れる誘起電圧と等価中性点電位をコンパレータに入力して得られるパルス信号のエッジ間隔からロータの回転位置を検出している。ところが、ブラシレスモータの始動時など、回転数がゼロである場合や回転数が極めて小さい場合には、誘起電圧が発生しないか極めて小さいので、回転位置の検出に十分な信号が得られなかった。
【0003】
ロータの停止位置を検出する従来の方法としては、3相のコイルに印加される電圧を検出し、電圧の立ち上がり時間の差からコイルのインダクタンスを検出して、永久磁石の磁極と対向しているコイルを判断することがあげられる(特許文献1参照)。なお、コイルによる磁束の方向と鉄心の磁束の方向とが一致していないときには、電流を流したときに鉄心の残留磁化によって電流を流す前後でインピーダンスが変化する。そこで、特許文献1に開示されている駆動装置では、同じ相に連続して二回以上電流を流し、二回目以降の電圧の立ち上がり時間が最小となるコイルを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−40943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロータの停止位置を検出する際、特許文献1に開示されているような方法では、ロータ停止位置を検出する停止位置検出回路を構成するトランジスタや抵抗、コンパレータなどを追加しなければならず、装置構成が複雑化する要因になっていた。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ブラシレスファンモータのロータ停止位置を精度良く検出できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する本発明の請求項1に係る発明は、エンジンルーム内のラジエータに対して配設され、ラジエータファンの回転機構に使用され、永久磁石を有するロータと複数相のコイルが巻装されたステータを備えるブラシレスファンモータの駆動装置であって、前記コイルに電流を供給するインバータ回路と、前記電流の供給を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記コイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させる位置信号発生手段と、前記コイルに流れる電流の電流値が予め設定された閾値以上になったら検出信号を出力する電流比較手段と、通電パターンを指令する信号が出力されてから検出信号が出力されるまでの時間を通電パターンごとに計数するカウンタと、通電パターンごとに計数されたカウント値の大小からロータ停止位置を決定する位置推定手段と、を備えることを特徴とするブラシレスファンモータの駆動装置とした。
コイルに通電したときに、ロータ停止位置によって磁束の流れ易さが異なる。このブラシレスファンモータの駆動装置は、コイルに流れる電流が所定の閾値になるまでに要する時間が通電パターンによって変化することに着目してロータ停止位置を検出する。ロータ停止位置は、コイルの流れる電流が所定の閾値になるまでに要する時間が最も少ない位置になる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のブラシレスファンモータの駆動装置において、連続して選択された2つの通電パターンにおけるカウント値の増減と、ロータ停止位置を関連付けたマップを備えることを特徴とする。
このブラシレスファンモータの駆動装置は、連続して選択された2つの通電パターンの間でカウント値の増減を演算し、マップを検索することでロータ停止位置を決定するための情報を得る。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のブラシレスファンモータの駆動装置において、前記インバータ回路は、複数相の通電切り換え用の複数のスイッチング素子を備え、前記電流比較手段は、前記インバータ回路に流れる過電流を検出する過電流検出回路であり、前記電流比較手段が前記過電流を検出した場合、全ての前記スイッチング素子が遮断状態に駆動されるとともに、前記制御装置は、前記コイルの通電を終了させるように制御することを特徴とする。
このブラシレスファンモータの駆動装置は、コイルに過電流を流さないように設けられている過電流検出回路を利用してロータ停止位置を判定する。
【0009】
請求項4に係る発明は、エンジンルーム内のラジエータに対して配設され、ラジエータファンの回転機構に使用され、永久磁石を有するロータと複数相のコイルが巻装されたステータを備えるブラシレスファンモータの制御方法であって、前記コイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させるステップと、前記コイルに流れる電流が所定の閾値以上になったら、電流供給を停止させるステップと、通電パターンを指令する信号の出力から前記コイルに流れる電流が前記閾値以上になるまでの時間をカウンタで計数するステップと、複数の通電パターンに対して前記カウンタで計数したカウント値の変化からロータ停止位置を判定するステップと、を備えることを特徴とするブラシレスモータのロータ停止位置の検出方法とした。
このブラシレスファンモータの制御方法は、コイルに流れる電流が所定の閾値以上になったら、電流供給を停止させると共に閾値に達するまでの時間をカウントする。複数の通電パターンについて、電流供給と停止を繰り返し、その間の時間をカウントして比較する。ロータ停止位置は、コイルに流れる電流が所定の閾値になるまでの時間が最も少ない位置になるので、カウント値の変化を調べればロータ停止位置がわかる。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のブラシレスファンモータのロータ停止位置の検出方法において、前記カウンタで計数するステップは、3つ又は4つの通電パターンについて実施されることを特徴とする。
このブラシレスファンモータのロータ停止位置の検出方法は、磁束の流れ易さによるカウント値の変化が通電パターンによって正弦波状又は台形波状に変化することを利用し、3つ又は4つの通電パターンについてカウントを行ってロータ停止位置を検出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブラシレスファンモータのロータ停止位置を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るブラシレスモータの駆動装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】誘起電力I/F回路の具体的な回路構成を例示する図である。
【図3】インバータ回路と、過電流検出回路の構成をさらに詳細に示す図である。
【図4】始動時の回転速度によって処理が切り替わることを模式的に説明する図である。
【図5】定時間割り込み処理のフローチャートである。
【図6】通電パターンによって発生する磁束及びトルクを説明する図である。
【図7】ロータ停止位置の検出方法を説明するチャートである。
【図8】ロータ停止位置に応じて2相通電あせた場合の発生トルクを示す図である。
【図9】ロータ停止位置P6における2相通電パターンとインダクタンス及び発生トルクの関係を示す図である。
【図10】ロータ停止位置と通電時間の関係を説明する図である。
【図11】停止位置検出処理のフローチャートである。
【図12】停止位置検出サブルーチンAのフローチャートである。
【図13】停止位置検出サブルーチンBのフローチャートである。
【図14】停止位置検出サブルーチンBのフローチャートである。
【図15】始動励磁処理のフローチャートである。
【図16】フリーラン処理のフローチャートである。
【図17】ブレーキ停止処理のフローチャートである。
【図18】始動時の処理を具体的に説明するためのタイミングチャートである。
【図19】ソフトスタートする場合のデューティ制御と回転速度を示す図である。
【図20】固定子巻線の誘起電圧波形の信号処理を説明する図であって、アナログ信号からデジタル信号を作成する手順を示すタイミングチャートである。
【図21】固定子巻線の誘起電圧波形の信号処理を説明する図であって、マスク信号の作成手順と、マスク処理後の位置検出信号の作成手順を示すタイミングチャートである。
【図22】誘起電圧エッジの判定処理を説明するタイミングチャートであって、方形波パルス電圧のパルス幅がマスク信号のパルス幅以下の場合を示す図である。
【図23】誘起電圧エッジの判定処理を説明するタイミングチャートであって、方形波パルス電圧のパルス幅がマスク信号のパルス幅を越える場合を示す図である。
【図24】U相の励磁タイミングを示す図である。
【図25】周波数に対するモータ端子電圧波形の遅れ位相を示す図である。
【図26】図4の領域R2から始動するときのタイミングチャートである。
【図27】図4の領域R3から始動するときのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、ブラシレスモータシステムは、ブラシレスモータ1と、ブラシレスモータ1の回転駆動を制御する駆動装置2とを有する。このブラシレスモータシステムは、ロータ位置を検出するセンサを有しないセンサレスタイプのシステムである。
ブラシレスモータ1は、永久磁石を有するロータとステータを有し、ステータには3相(U、V、W)のコイルU,V,Wが周方向に順番に巻装されている。
【0014】
駆動装置2は、マイコンなどから構成される制御装置11と、ブラシレスモータ1の3相U,V,Wのモータ端子の電圧を検出する誘起電圧I/F(インターフェイス)回路12と、通電切り換え用のスイッチング素子を備える駆動回路であるインバータ回路13とを有し、制御装置11とインバータ回路13の間に、プリドライバ(Hi側プリドライバ37A,Lo側プリドライバ37B)と、過電流検出手段38と、過電流保護手段39とが設けられている。
【0015】
図2に示すように、誘起電圧I/F回路12は、3相U,V,Wのそれぞれのモータ端子の電圧(アナログ信号)が入力され、コンパレータ17A〜17Cに入力可能な電圧に分圧する分圧回路(抵抗R11及び抵抗R12)とパルス幅変調信号のノイズを除去する1次のCRフィルタ(抵抗R11及びキャバシタC11)からなるローパスフィルタ回路15A,15B,15Cと、等価中性点電位を検出する回路16と、等価中性点電位と無通電相(開放区間)に現れる誘起電圧のアナログ信号からパルス信号を作成するコンパレータ17A,17B,17Cと、コンパレータ17A〜17Cの出力からチャタリング成分をカットするローパスフィルタ回路(1次のCRフィルタ)18A,18B,18Cとを有する。
【0016】
ここで、等価中性点電位を検出する回路16は、例えば、U相については、V相とW相のモータ端子電圧から等価中性点電位を検出するような、2相間比較方式を採用している。このようにすると、等価中性点電位として略フラットな電圧が得られる。なお、U、V、Wの3相全ての信号を用いて等価中性点電位を求める3相比較方式を採用しても良い。
この場合は、等価中性点の電位は、電源電圧の1/2を中心にした略三角波になる。
コンパレータ17A〜17Cは、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位より高いときはローレベルの信号を出力し、誘起電圧のアナログ信号が等価中性点電位より低いときはハイレベルの信号を出力するパルス信号を発生させる。各コンパレータ17A〜17Cでは電気角120°の分解能のパルス信号が作成される。これら信号は、それぞれがローパスフィルタ回路18A〜18Cを経て分離手段21に入力される。
【0017】
図3に示すように、インバータ回路13は、6個のスイッチング素子40UH,40UL,40VH,40VL,40WH,40WLを電源20の正負両端子間に2個ずつブリッジ接続して構成される回路であって、電源20から供給された直流電圧を制御装置11から入力されるパルス幅変調信号(駆動信号)に基づく交流電圧に変換し、ブラシレスモータ1の各相U,V,Wに印加する。各スイッチング素子40UH〜40WLは、FET(Field effect transistor)と還流ダイオードを並列に接続した構成になっている。
【0018】
インバータ回路13とグランドレベルの間には、電流測定手段であるシャント抵抗13Aが設けられている。シャント抵抗13Aを用いることで、インバータ回路13に流れる電流、つまりブラシレスモータ1に入力される電流が過電流検出手段38を用いて検出できる。
【0019】
過電流検出手段38は、コンパレータを有する電流比較手段である。コンパレータのプラス側の入力端子には基準電圧が入力され、マイナス側の端子にはシャント抵抗13Aの電圧が入力されるようになっている。すなわち、シャント抵抗13Aを電流が流れることで発生する電圧が基準電位に達すると、過電流検出手段38から信号(過電流検出信号)が出力される。過電流検出手段38の出力は、制御装置11の立ち下がりエッジ検出用のポートを介してソフトウェア的な手段である過電流保護手段32に接続されると共に、ハードウェア的な手段である過電流保護手段39に接続されている。
過電流保護手段39は、過電流検出信号が入力されるとダイオードに電流が流れ、PWMデューティ決定手段28からの出力信号がHi側プリドライバ37Aに入力されないように構成されている。
【0020】
制御装置11は、CPU(中央演算装置)やメモリなどから構成され、誘起電圧I/F回路12に接続される分離手段21と、励磁切り替えタイミング演算手段22と、回転方向検出ロジック選択手段24と、モード選択手段40と、通電パターン決定手段26と、励磁信号出力手段27と、PWMデューティ決定手段28と、過電流保護手段32と、電流印加時間計測手段29と、電流印加時間比較手段30と、ロータ位置推定手段31と、過電流フラグセット手段41を備える。
通電パターン決定手段26は、停止位置検出モード26Aと、始動励磁モード26Bと、フリーラン制御モード26Cと、定常励磁モード26Dと、ブレーキ停止モード26Eと、停止モード26Fを備えている。
【0021】
回転方向検出ロジック選択手段24は、外部からの回転方向信号に応じて、分離手段21で使用するロジックを決定し、分離手段21に出力する。分離手段21は、選択された回転方向検出ロジックを用いて、誘起電圧I/F回路12から入力されるパルス信号のエッジを誘起電圧のエッジと方形波パルス電圧のエッジとに分離する処理を行う。励磁切り替えタイミング演算手段22は、誘起電圧エッジに応じた励磁位相を算出するために3つの電気角120°の分解能のパルス信号から1つの電気角60°の分解能のパルス信号を生成し、励磁切り替えタイミングを演算し、モード選択手段40に出力する。モード選択手段40は、励磁切り替えタイミング演算手段22から励磁切り替えタイミング信号が入力されるか否かにより回転方向を判定し、通電パターン決定手段26のモードを選択する。励磁切り替えタイミング信号が入力されている場合には、定常励磁モード26Dとする。同様に、励磁切り替えタイミング信号が入力されない場合にはブラシレスモータ1が逆転しているとみなして、ブレーキ停止モード26Eとし、ブラシレスモータ1を停止させるような通電パターンを励磁信号出力手段27に出力する。
【0022】
通電パターン決定手段26は、停止位置検出モード26Aと、始動励磁モード26Bと、フリーラン制御モード26Cと、定常励磁モード26Dと、ブレーキ停止モード26Eと、停止モード26Fとを有する。
通電パターン決定手段26の停止位置検出モード26Aは、外部からの始動指令を受けて励磁信号出力手段27にロータ停止位置を検出するためのパルス幅変調信号を発生させる。
始動励磁モード26Bは、ロータ位置推定手段31が判定したロータ停止位置に応じた通電パターンを決定する。
フリーラン制御モード26Cは、始動通電パターンを所定の初期通電時間Ts1だけ通電させた後、ブラシレスモータ1をフリーランさせて、励磁切り替えタイミング演算手段22のフリーランモード22Cによってロータ位置を検出する処理を実施する。
定常励磁モード26Dは、ブラシレスモータ1が回転しているときに励磁切り替えタイミング演算手段22の定常モード22Dが演算した励磁切り替えタイミングでロータ位置に応じた通電パターンを決定する。
これらの処理の詳細については、後述する。
【0023】
励磁信号出力手段27は、ブラシレスモータ1のコイルに励磁電流を印加する信号を各プリドライバ(Hi側プリドライバ37A、Lo側プリドライバ37B)に出力する。Hi側プリドライバ37Aは、PWMデューティ決定手段28が決定したデューティ比で高電位側のスイッチング素子のON/OFFを切り替えるドライバである。Lo側プリドライバ37Bは、低電位側のスイッチング素子のON/OFFを切り替えるドライバである。Hi側プリドライバ37Aは、インバータ回路13に過電流が流れて過電流保護手段39から信号が入力されると、各スイッチング素子をOFFにする機能を有する。また、過電流が検出されたときには、過電流保護手段32に信号が入力され、ソフトウェア上のリセットがかけられる。
【0024】
電流印加時間計測手段29は、過電流保護手段32の停止位置検出モード32Aと、通電パターン決定手段の停止位置検出モード26Aと、電流印加時間比較手段30に接続され、記憶手段29Aとカウンタ29Bを備える。カウンタ29Bは、停止位置検出モード26Aからの指令を受けてカウントを開始する。記憶手段29Aは、過電流保護手段32の停止位置検出モード32Aを経由して過電流検出手段38が出力する過電流検出信号が入力されたときのカウンタ29Bのカウント値を記憶する。カウンタ29Bは、所定の時間経過した後にリセットされ、それと同時に停止位置検出モード26Aに信号を出力する。
電流印加時間比較手段30は、電流印加時間計測手段29の記憶手段29Aに記憶されたカウント値が入力され、後述するデータ処理を実施する。その出力はロータ位置推定手段31に接続されており、ロータ位置推定手段31と共にロータ位置を決定する位置推定手段を構成する。
ロータ位置推定手段31は、電流印加時間比較手段30の計算結果に基づいて停止時や低速時のロータ位置を推定する。
【0025】
次に、この駆動装置2の動作を説明する。
ブラシレスモータ1の始動時は、停止中のブラシレスモータ1を始動する場合と、外力によってブラシレスモータ1が回転させられている状態から始動する場合とがある。例えば、ブラシレスモータ1をラジエータファンの回転機構に使用した場合、ラジエータからエンジンルームに向かう方向に風が吹いている場合には、通電しなくてもラジエータファンの回転に従ってブラシレスモータ1が正回転させられる。これに対して、ブラシレスモータ1が逆回転している場合とは、エンジン側からラジエータの方向に風が吹いているときや、ラジエータファンに対して逆方向に負圧が生じたときが考えられる。
【0026】
駆動装置2をラジエータファンに使用することを想定した場合、ラジエータファンは正転方向に回転し易い構造になっており、逆転方向に回転するためには大きな風力が必要になる。しかしながら、車両の構造から逆方向に大きい風力が発生する可能性は少なく、ラジエータファンが逆回転する場合でも、その回転速度は小さいと考えられる。したがって、この駆動装置2では、ブラシレスモータ1が外部負荷によって逆回転させられている場合でも、その回転数及びトルクは小さいものとして始動時の制御を行う。
【0027】
図4に始動時のブラシレスモータ1の回転速度による始動方法の区分けを模式的に示す。この実施の形態では、回転速度に応じて3通りの場合分けを行っている。
駆動装置2は、横軸に示すブラシレスモータ1の回転速度がゼロを含む領域R1であれば、インダクタンス検出による始動開始処理を実行する。
ブラシレスモータ1の回転速度が正回転方向で領域R1より大きい領域R2にあれば、誘起電圧検出によるロータ位置検出を行い、回転制御をする。逆回転方向に回転速度が領域R1より大きい領域R3にある場合には、逆回転状態判別処理と、ロータの停止処理により領域R1へと移行させ、インダクタンス検出による始動開始処理を実行する。領域R1と領域R2は、回転速度がN1(rpm)付近で重なっている。回転速度N1は、誘起電圧検出によるロータ位置検出が不能となる低速回転速度に相当する。これは、回転速度がゼロ又は低速であれば、インダクタンス検出により電気角60°の分解能でロータ位置を検出し、正転方向に最大トルクを発生させることが可能な位相で通電を実施することができるのに対し、回転速度が上昇するにしたがって、インダクタンス検出によるロータ位置の検出結果は、電気角60°から位相がずれて検出精度が悪くなるため、起動トルクが停止状態と比較して減少するからである。
【0028】
ブラシレスモータ1の回転速度が逆回転方向で領域R1より大きい領域R3にあれば、後述するようにブラシレスモータ1にブレーキをかけ、領域R1に移行させた後にロータ位置の検出を行う。領域R1と領域R3は、回転速度が−N1(rpm)付近で重なっている。
なお、領域R1と領域R2は、重ならずに回転速度N1を境界として区分けしても良い。領域R1と領域R3は、重ならずに回転速度−N1を境界として区分けしても良い。
【0029】
駆動装置2は、最初にブラシレスモータ1の回転速度が領域R1にあると想定して処理を実行し、領域R2に相当する処理を経て定常駆動に移行する。領域R2に相当する処理を実施したときに、ロータ位置検出ができない場合には、ブラシレスモータ1の回転状態が領域R3にあるとみなし、領域R3に相当する処理からやり直す。
【0030】
このような始動時の処理は、図5に示す定時時間の割り込み処理として実施される。
モード選択手段40は、回転速度信号と過電流フラグ信号を確認する。過電流フラグは、インバータ回路13のシャント抵抗13Aを流れる電流値をモニタし、シャント抵抗13Aを流れる電流が、所定の値を越えたらON、つまり過負荷状態と判定する。回転速度信号がONとなったとき、過電流フラグがONならば(ステップS101でYes)、全相をOFFにして停止処理を実施して(ステップS102)、ここでの処理を終了する。このとき、PWMデューティを0%に設定し、各種パラメータも初期化する。
これに対し、回転速度信号はONであるが過電流フラグ信号がOFFの場合(ステップS101でNo)、通電パターン決定手段26を停止位置検出モード26Aにセットし(ステップS103)、ブラシレスモータ1のインダクタンスを検出してロータ位置を検出する停止位置検出処理を実施する(ステップS104)。
【0031】
モード選択手段40がロータ停止位置を検出したら、前記のステップS103からステップS105に進み、通電パターン決定手段26が始動励磁モード26Bにセットされる(ステップS105でYes)。通電パターン決定手段26が始動励磁処理を実施する(ステップS106)。
始動励磁処理を実施したら、ステップS107からステップS108に進んでフリーラン処理が実施される。このフリーラン処理では、慣性でブラシレスモータ1のロータがフリーランしている間に発生する誘起電圧から、正転専用ロジックを用いてロータの位置検出を実施する。
誘起電圧を用いたロータの位置検出が可能になったら、ステップS109からステップS110に進んで定常励磁処理が実施される(ステップS110)。誘起電圧を用いてロータの位置を検出できないときは、ステップS111からステップS112に進んでブレーキ停止処理が実施する(ステップS112)。
【0032】
ここで、ステップS104の停止位置検出処理では、コイルが作る磁束の方向と、マグネットの磁束の方向が同方向のときにマグネットのコアの透磁率が大きくなってインダクタンスが小さくなることに着目して停止位置を決定している。以下に、停止位置検出処理で通電パターンを決定する際の原理について説明する。
【0033】
停止状態にあるブラシレスモータ1を始動するときは、外部から制御装置11のモード選択手段40に回転速度信号(回転速度がゼロからある回転速度へステップ的に変化する信号)を入力する。これにより、モード選択手段40は、通電パターン決定手段26を停止位置検出モード26Aにセットする。通電パターン決定手段26の停止位置検出モード26Aは、予め定められた6つの停止位置判定用の通電パターンをロータが回転しない程度の時間だけ継続されるように励磁信号出力手段27に指令を出す。なお、ロータが回転しない程度の時間は、ブラシレスモータ1のイナーシャなどによって異なるが、例えば、数μ秒から数m秒の間であり、制御装置11が有するカウンタでカウントされる。励磁信号出力手段27は、通電パターンに応じたパルス幅変調信号をインバータ回路13に出力し、パルス幅変調信号に対応してスイッチング素子40UH〜40WLがON、OFFされて3相のいずれか2相に通電される。
【0034】
図6に停止位置検出手段34が指令する停止位置判定用の通電パターンを示す。これら通電パターン#1〜#6は、ブラシレスモータ1を駆動可能なパターンになっている。
通電パターン#1は、U相のコイルUからV相のコイルVに電流を流す。U相がN極磁化され、V相がS極磁化される。
通電パターン#2は、U相からW相のコイルWに電流を流す。U相がN極磁化され、W相がS極磁化される。
通電パターン#3は、V相からW相に電流を流す。V相がN極磁化され、W相がS極磁化される。
通電パターン#4は、V相からU相に電流を流す。V相がN極磁化され、U相がS極磁化される。
通電パターン#5は、W相からU相に電流を流す。W相がN極磁化され、U相がS極磁化される。
通電パターン#6は、W相からV相に電流を流す。W相がN極磁化され、V相がS極磁化される。
【0035】
図7に示すように、この実施の形態でロータ41の停止位置検査は、通電パターン#1〜#6に対応して実施される。
通電パターン#1では、U相からV相への通電を行い、その後に回生期間を設ける。すなわち、スイッチング素子40UNとスイッチング素子40VLにデューティ100%のPWM信号を入力し、それぞれをN極磁化とS極磁化する。コイルUからコイルVに電流が流れ、これに応じた電流がシャント抵抗13Aに流れる。シャント抵抗13Aに流れる電流は、電源20を通してブラシレスモータ1に印加される印加電流であり、時間の経過と共に徐々に増加する。
【0036】
印加電流が予め定められている過電流閾値に達したら、通電区間を終了して回生期間に移行する。具体的には、シャント抵抗13Aの電圧値をモニタしている過電流検出手段38は、基準電圧が過電流閾値に相当する電圧に設定されているので、シャント抵抗13Aに流れる印加電流に相当する電圧が基準電圧に達すると、過電流検出信号としてLowレベルの信号を出力する。これによって、過電流保護手段39の電位がLowレベルに落ち、High側の全てのスイッチング素子40UH〜40WHがOFFになる(ハードウェアリミット)。さらに、それと同時に、制御装置11は、過電流検出信号の立ち下がりエッジを検出したら、割り込み処理を実施して通電パターン#1の通電を終了させる(ソフトウェアリミット)。これにより、ブラシレスモータ1に流れる電流がゼロになる。ソフトウェアリミットの発生が遅れるので、ハードウェアリミットを併用して、素早く電流をゼロにする。
【0037】
通電パターン決定手段26の停止位置検出モード26Aは、過電流保護手段32の停止位置検出モード32Aを選択し、それと同時にカウンタ29Bはカウントアップを開始する。その後、過電流検出手段38から過電流検出信号が、過電流保護手段32の停止位置検出モード32Aを経由して、カウンタ29Bへ入力されると、カウンタ29Bのカウント値は記憶手段29Aに記憶される。記憶手段29Aは、このときのカウント値を通電パターン#1に対する通電時間T1として記憶する。
【0038】
なお、ブラシレスモータ1に流れる電流をゼロにするためにインバータ回路13のFETを全てOFFにする。このとき、コイルに蓄積されていた電力はFETのボディダイオードと、電源20と、シャント抵抗13Aを介してコイルに戻ってくる回路を流れる回生電流となるので、マイナスの電流となる。回生電流は、シャント抵抗13Aの電流波形に示すように、時間の経過と共にゼロなる。
【0039】
通電パターン決定手段26の停止位置検出モード26Aは、通電パターン#1の通電を指令する信号を出力してから、カウンタ29Bから所定の時間が経過した信号を受け取ったら、通電パターン#2の通電を指令する信号を出力する。所定の時間は、印加電流が過電流閾値に達し、その後に流れる回生電流がゼロになるまでに要する時間として十分な値が設定されている。なお、カウンタ29Bには、この所定の時間に相当するカウント値がカウンタクリア用の閾値として設定されている。このため、通電パターンを切り替えるタイミングでカウンタ29Bの値がリセットされる。
【0040】
なお、所定の時間は、印加電流が過電流閾値に達し、その後に流れる回生電流がゼロになるまでに要する時間として十分な値が設定されているが、電流を印加してから過電流閾値に達するまでの時間を計測し(記憶手段29Aの計測結果)、その時間と同じ時間を所定の時間としても良い。この場合は、記憶手段29Aが通電時間を計測する毎に、カウンタ29Bをリセットするための所定の時間のデータをカウンタ29Bに渡す。つまり、記憶手段29Aからカウンタ29Bに所定の時間信号が送られる。
【0041】
以降、同様にして通電パターン#2〜#6を実施すれば、それぞれの通電パターンに対応してシャント抵抗13Aに印加電流と回生電流が順番に流れる。電流印加時間計測手段29は、通電開始からのカウント値を通電パターン#2〜#6に対応して通電時間T2〜T6として記憶手段29Aに記憶する。
記憶手段29Aに記憶されるカウント値は、ロータ停止位置によって変化する。ロータ停止位置に対応する通電パターンでは、最も磁束が流れ易く、過電流閾値に達するまでの時間が短くなる。図7の例では、通電パターン#3のときが最も大きく、その隣りの通電パターン#2、#4が次に大きい、そして通電パターン#6のときが最も小さい。したがって、通電パターン#6に相当する位置にロータが停止していることになる。このように、カウント値の大小を電流印加時間比較手段30で調べれば、ロータ位置推定手段31においてロータ停止位置を推定することが可能になる。
【0042】
ロータ停止位置が推定された後に実施される通電パターン決定手段26の始動励磁モード26Bは、6通りの通電時間のうち最小になる通電パターンから回転方向に120°位相を進ませた通電パターンを始動時の通電パターンとして選択する。このことについて、図8を参照しながら説明する。
3相のブラシレスモータ1の2相間に電流を流してロータを回転させると、図8に示すように、位相がずれた正弦波状(又は台形波状)のトルクが発生する。例えば、通電パターン#3であるVW通電状態でロータを外部から回転させようとしたとき、ロータ位置の位相が±0°のときはトルクがゼロになり、ロータ位置の位相が+60°のときはプラス側の最大トルクの86.6%のトルクが得られる。以下、ロータ位置の位相が+120°のときはプラス側の最大トルクの86.6%のトルク、ロータ位置の位相が180°のときはゼロ、ロータ位置の位相が+210°のときはマイナス側の最大トルクの86.6%のトルクがそれぞれ得られる。
したがって、ロータ位置に応じて常にプラス側に大きいトルクが得られるように回転させるためには、ロータ位置がP1のときに通電パターン#3を実施すると、その後トルクが増大するので大きい力でロータ41を回転させることができる。
【0043】
このように、電気角60°ごとに2相通電パターンを切り替える120°矩形波駆動では、86.6%トルクから100%トルクを使用しながら駆動させる。
ロータ位置がP1のとき、ロック通電パターンはUV通電であるため、UV通電パターンから120°位相が進んだVW通電パターンを使用すれば高いトルクで始動させられる。ロック通電状態となるとき、ロータマグネット磁束とコイル磁束は増磁状態なのでコイルのインダクタンスが小さくなる。このため、任意のロータ位置においてコイルインダクタンスの最も小さな通電パターンを検索することで、任意のロータ位置におけるロック通電パターンを特定することができる。したがって、特定したロック通電パターンから120°位相が進んだ通電パターンを使用すれば高いトルクで始動させられる。なお、トルク波形が台形波になるときは、120°矩形波駆動であっても、ほぼ100%トルクを常に出すことができる。なお、ロック通電パターンは、ロータ停止位置に相当するものである。
【0044】
ここで、1つのロータ位置に対して、6通りの通電パターンを出力した場合の挙動について、ロータ位置が図8のP6にあると仮定して説明する。
図9のP6のロータ位置に対して最も増磁となる通電パターンは、通電パターン#6のWV通電である。このときにロータをプラス側の最大トルクでプラス方向に回転させるのは、120°進めた通電パターン#2:UW通電である。これは、P6のロータ位置に対して通電パターン#2の通電を実施すると、ステータコイルの磁束とロータマグネットの磁束による吸引反発の関係から、ロータにプラス方向に回転する力(トルク)を発生させることができるからである。
これは図6の(b)の状態と等価であり、ロータマグネットのN極の方向をd軸、d軸と直交した方向をq軸とすると、ステータコイルによる磁束のq軸成分は−86.6%であり、ロータをプラス方向に回転させると、q軸成分の磁束の絶対値は増加する。
また、P6にあるロータをマイナス側の最大トルクでマイナス方向に回転させるためには、通電パターン#4:VU通電を実施すれば良い。P6のロータ位置に対して通電パターン#4の通電を実施すると、ステータコイルの磁束とロータマグネットの磁束による吸引反発の関係から、ロータにマイナス方向に回転する力(トルク)が発生させられるからである。この場合、これは図6の(d)の状態と等価であり、ステータコイルによる磁束のq軸成分は86.6%であり、ロータをマイナス方向に回転させると、q軸成分の磁束の絶対値は増加する。
【0045】
図6の(a)の通電パターン#1では、UV通電が行われる。マグネット磁束ベクトルは、d軸と重なるが、コイル磁束ベクトルはd軸及びq軸からずれている。具体的には、d軸成分が50%で、q軸成分が−86.6%になっている。このため、瞬間的に発生するトルクは、−86.6%になる。ロータ(回転磁界)がプラス方向(正転方向)に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が減少するトルクが発生する。このときのトルクは2番目に大きいトルクが得られる。これに対し、ロータが−方向(逆転方向)に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が増加するが、この位置関係では回転させることができない。
【0046】
(b)の通電パターン#2:UW通電では、コイル磁束ベクトルがd軸成分が−50%で、q軸成分が−86.6%になっている。ロータ(回転磁界)が+方向に回転するq軸成分の磁束の絶対値が増加するトルクが発生する。このときに+回転方向で最も大きいトルクが得られる。これに対し、ロータが−方向に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が増加するが、この位置関係では回転させることができない。
【0047】
(c)の通電パターン#3:VW通電では、コイル磁束とマグネット磁束が真逆の関係になる。このため、吸引力がゼロで反発が最大になる。コイル磁束ベクトルは、d軸成分が−100%で、q軸成分が0%になる。瞬間発生トルクは0%になり、ロータがどちらに回転してもq軸成分の磁束の絶対値が増加するが、発生トルクは小さくほとんどゼロである。このとき、ステータコアを貫く磁束は最小になり、磁気飽和し難くなる。コアの透磁率が最大になって、ステータコイルのインダクタンスも最大となる。
【0048】
(d)の通電パターン#4:VU通電では、コイル磁束ベクトルがd軸成分が−50%で、q軸成分が86.6%になっている。このため、瞬間的に発生するトルクは、86.6%になる。ロータが+方向に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が減少するが、この位置関係では回転させることができない。ロータが−方向に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が増加するトルクが発生する。このときに−方向で最も大きいトルクが得られる。
【0049】
(e)の通電パターン#5:WU通電では、コイル磁束ベクトルがd軸成分が50%で、q軸成分が86.6%になっている。ロータが+方向に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が増加するが、この位置関係では回転させることができない。ロータが−方向に回転すると、q軸成分の磁束の絶対値が減少するトルクが発生する。このときに−方向で2番目に大きいトルクが得られる。
【0050】
(f)の通電パターン#6:WV通電では、コイル磁束とマグネット磁束が一致する。
このため、吸引力が最大になり、反発力がゼロになる。コイル磁束ベクトルは、d軸成分が100%で、q軸成分が0%になる。瞬間発生トルクは0%になり、ロータがどちらに回転してもq軸成分の磁束の絶対値が増加するが、発生トルクは小さくほとんどゼロである。この状態では、ステータコアを貫く磁束が最大となって、磁気飽和し易い。コアの透磁率が最小になって、ステータコイルのインダクタンスも最小となる。
【0051】
インダクタンスに関しては、停止しているロータ位置に対して回転磁界(ステータコイル磁束)を変化させることで、原理的には正弦波状にコアを貫く磁束の量が変化するので、インダクタンスの変化も正弦波状になる。図9にロータ位置がP6のときの2相通電パターンとインダクタンス変化、及び発生トルクの変化を示す。
図9では、破線が発生トルクの変化を示し、実線がインダクタンスの変化を示している。インダクタンスが最大となる通電パターン#3が、通電時間が最も大きくなる通電パターンである。したがって、この通電パターン#3の1つ前の通電パターン、若しくは通電時間が最小となる通電パターン#6の2つ先の通電パターンが、正転方向の最大トルク発生可能通電パターンであり、この場合は通電パターン#2になる。
同様に、通電時間が最大となる通電パターン#3の1つ先の通電パターン、若しくは通電時間が最小となる通電パターン#6の2つ前の通電パターンが、逆転方向の最大トルク発生可能通電パターンである。このように求めた最大トルク発生可能通電パターンを、起動通電パターンにセットすることで、高トルクな起動が可能になる。
【0052】
さらに、各通電パターンと通電時間の関係は、図10の(a)に示すようになる。ラインL6に示す通電時間波形は、ロータが位置P6にあるときの通電時間の変化を示している。ラインL1の通電時間波形は、ロータがP6から正転方向にπ/3(60°)進んだ位置P1にあるときの通電時間の変化を示す。以下、ラインL2、L3、L4、L5は、それぞれ正転方向のπ/3(60°)ずつ進んだ位置P2、P3、P4、P5にあるときの通電時間波形である。このように、ロータ位置により6通りの正弦波状になるので、その正弦波から起動通電パターンを推定することができる。
図10の(b)に示すように、各通電時間波形を三角波として捉え、これら三角波のそれぞれを微分(差分ΔTをとる)して傾きの符号を求めると、図10の(c)に示すようになる。例えば、ラインL4の通電時間波形で、通電時間T1から通電時間T2に至るまでは減少傾向にあるので、通電時間T1と通電時間T2の差分ΔTの符号は、「−」になる。
【0053】
ここで、6通りの通電パターンの全てについて通電時間を調べて記憶手段29Aに記憶させることも可能であるが、この実施の形態では、電流印加時間比較手段30にマップ30Aを設けることで、3つ又は4つの通電パターンでロータ停止位置を推定するようにしている。すなわち、図10の(b)に示すように、4つの通電パターン#1〜#4の中で必ずピークが現れるので、差分T12(=T2−T1)、差分T23(=T3−T2)、差分T34(=T4−T3)の符号の組み合わせから、三角波の最大又は最小のピークを求め、起動通電パターンを推定することができる。
マップ30Aの構成を以下に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
マップ30Aから分かるように、ロータ停止位置P5とP2の2通りは、T12とT23のみで、T34を実施しなくても推定できる。
このように、表1に示すようなマップ30Aを予め用意しておき、前後して通電される2つの通電パターンのそれぞれの通電時間の差分で検索することで、3回又は4回の通電でロータ回転位置を推定できるようになる。なお、全ての場合において4回通電を行ってからロータ停止位置を判別しても良い。
【0056】
ここで、ステップS104の停止位置検出処理のフローを図11に示す。
最初に過電流保護手段32の停止位置検出モード32Aが選択され(ステップS121)、停止位置検出サブルーチンAが実施される(ステップS122)。停止位置検出サブルーチンAは、通電パターンの決定(ステップS122A)と、次のモードへの移行の可否の判定(ステップS122B)を実施する。
始動励磁パターンが確定していないときは、ステップS122BからステップS123に進む。この処理は、過電流検出信号の立下りを検出したときに発生する割り込み処理であり、ブラシレスモータ1に電流が流れている間待機し(ステップS123)、過電流検出が検出されたら(ステップS124)、停止位置検出サブルーチンBを実施する(ステップS125)。その後、停止位置検出サブルーチンAに戻る。
これに対し、始動励磁パターンが確定したときは、ステップS122BからステップS126に進んでカウンタ29Bを停止させる。この後、始動励磁モードに移行し(ステップS127)、過電流保護手段32の過電流検出モード32Bを設定する(ステップS128)。具体的には、過電流検出手段38が過電流を検出したら(ステップS128A)、過電流フラグを「1」にセットする(ステップS128B)。
【0057】
図12に示すように、停止位置検出サブルーチンAでは、通電ナンバー(通電No)のカウンタをインクリメントする(ステップS201)。1回目の処理では通電Noカウンタは1に設定される。カウンタ29Bのクリア用の閾値を最大値に設定し(ステップS202)、カウンタ29Bを一度リセットしてから(ステップS203)、PWMデューティを100%に設定する(ステップS204)。
通電Noカウンタが「1」であれば(ステップS205でYes)、通電パターン#1を実施する(ステップS206)。そして、ここでの処理を抜ける。
同様に、通電Noカウンタが「2」であれば(ステップS207でYes)、通電パターン#2を実施する(ステップS208)。
通電Noカウンタが「3」であれば(ステップS209でYes)、通電パターン#3を実施する(ステップS210)。
【0058】
これに対し、通電Noカウンタが「4」であれば(ステップS211でYes)、差分T12<0で、かつ差分T23>0の場合(ステップS212でYes)、又は差分T12>0で、かつ差分T23<0の場合(ステップS213でYes)、PWMデューティを0%に設定し(ステップS214)、次のモード(始動励磁モード26B)に移行する(ステップS215)。それ以外の場合(ステップS212、ステップS213が共にNo)、通電パターン#4を実施する(ステップS216)。
【0059】
そして、通電Noカウンタが「5」であれば(ステップS217でYes)、差分T12>0、かつ差分T23>0、かつ差分T34>0である場合(ステップS218でYes)、差分T12>0、かつ差分T23>0、かつ差分T34<0である場合(ステップS219でYes)、差分T12<0、かつ差分T23<0、かつ差分T34<0である場合(ステップS220でYes)、差分T12<0、かつ差分T23<0、かつ差分T34>0である場合(ステップS221でYes)、PWMデューティを0%に設定し(ステップS222)、次のモード(始動励磁モード26B)に移行する(ステップS223)。
【0060】
停止位置検出サブルーチンBの詳細を図13及び図14を示す。停止位置検出サブルーチンBは、電流印加時間計測手段29と、電流印加時間比較手段30と、ロータ位置推定手段31の処理の詳細を示すものである。まず、通電のカウンタを調べ、カウンタ番号が「1」であれば(ステップS251でYes)、カウンタ29Bのカウント値を通電時間T1として記憶手段29Aにメモリさせる(ステップS252)。
カウンタ番号が「2」であれば(ステップS253でYes)、カウンタ29Bのカウント値を通電時間T2として記憶手段29Aにメモリさせる(ステップS254)。さらに、差分T12を算出する(ステップS255)。
カウンタ番号が「3」であれば(ステップS256でYes)、カウンタ29Bのカウント値を通電時間T3として記憶手段29Aにメモリさせる(ステップS257)。さらに、差分T12を算出する(ステップS258)。
【0061】
ここで、差分T12<0で、かつ差分T23>0の場合(ステップS259でYes)、正転時であれば(ステップS260でのNo)、起動通電パターンを通電パターン#1に設定する(ステップS261)。逆転時であれば(ステップS260でYes)、起動通電パターンを通電パターン#3に設定する(ステップS262)。
一方、差分T12>0で、かつ差分T23<0で(ステップS263)、正転時には(ステップS264でNo)、起動通電パターンを通電パターン#4に設定する(ステップS265)。逆転時であれば(ステップS264でYes)、起動通電パターンを通電パターン#6に設定する(ステップS266)。
【0062】
カウンタ番号が「4」であれば(ステップS267でYes)、カウンタ29Bのカウント値を通電時間T4として記憶手段29Aにメモリさせる(ステップS268)。さらに、差分T34を算出する(ステップS269)。
ここで、差分T12>0、T23>0,T34>0の場合(ステップS270でYes)、正転時であれば(ステップS271でNo)、起動通電パターンを通電パターン#6に設定する(ステップS272)。逆転時であれば(ステップS271でYes)、起動通電パターンを通電パターン#2に設定する(ステップS273)。
【0063】
差分T12>0、T23>0,T34<0の場合(ステップS274でYes)、正転時であれば(ステップS275でYes)、起動通電パターンを通電パターン#5に設定する(ステップS276)。逆転時であれば(ステップs275でNo)、起動通電パターンを通電パターン#1に設定する(ステップS277)。
差分T12<0、T23<0,T34<0の場合(ステップS278でYes)、正転時であれば(ステップS279でNo)、起動通電パターンを通電パターン#3に設定する(ステップS280)。逆転時であれば(ステップS279でYes)、起動通電パターンを通電パターン#5に設定する(ステップS281)。
差分T12<0、T23<0,T34>0の場合(ステップS282でYes)、正転時であれば(ステップS283でNo)、起動通電パターンを通電パターン#2に設定する(ステップS284)。逆転時であれば(ステップS283でYes)、起動通電パターンを通電パターン#4に設定する(ステップS285)。
【0064】
次に、図5のステップS106の始動励磁処理の詳細について説明する。
図15に示すように、通電パターン決定手段26の始動励磁モード26Bでは、そのロータ位置に対して最大のトルクを発生可能な位相の始動通電パターンを決定し、励磁信号出力手段27に始動通電パターンを出力させる(ステップS131)。初期通電カウンタを起動させ、予め設定した一定の初期通電時間Ts1が経過するまで、前記した位相に通電する(ステップS132)。そして、所期通電時間Ts1経過したことを確認したら、モード選択手段40が通電パターン決定手段26をフリーラン制御モード26Cにセットする(ステップS133)。
【0065】
図5のステップS108のフリーラン制御処理の詳細について説明する。
図16に示すように、最初に、通電パターン決定手段26のフリーラン制御モード26Cがフリーランパターンとして、全相の通電をOFFにする通電パターンを出力する(ステップS141)。
慣性でブラシレスモータ1のロータがフリーランしている間に発生する誘起電圧から、正転専用ロジックを用いてロータの位置検出を実施する(ステップS142)。ロータ位置を予め定めた回数だけ検出できたら(ステップS143でYes)、通電パターン決定手段26を定常励磁モード26Dにセットし、誘起電圧によるセンサレス駆動(定常駆動モード)に移行する(ステップS144)。
ステップS143でロータ位置を予め定めた回数検出されていないときは(ステップS143でNo)、誘起電圧のエッジ間隔を計測する回数が予め設定された回数経過するまで(ステップS145)、ステップS142を繰り返す。所定回数経過してもロータ位置を予め定めた回数検出できないときは(ステップS145でYes)、ブラシレスモータ1が逆転していると判定し、モード選択手段40は、通電パターン決定手段26をブレーキ停止モード26Eにセットする(ステップS146)。
【0066】
図5のステップS112のブレーキ停止処理の詳細について説明する。
図17に示すように、ブレーキ停止モード26Eによるブレーキ停止処理として、低デューティで2相通電ロック処理が行われる(ステップS151)。2相通電ロック処理は、予め定められた一定時間実施し、この時間が経過したら(ステップS152)、停止位置検出モード26Aがセットされる(ステップS153)。
【0067】
次に、停止位置検出を含む始動時の処理の全体について、図18を参照してさらに詳細に説明する。図18は、横軸に時間経過をとっており、縦方向に各種の情報が並んで配置されている。なお、最も上側に示されているホールセンサ信号は、ホールセンサが取り付けられていた場合にホールセンサの出力として想定される信号である。
時間t1で始動信号が入力されたら、時間t2までの間にロータ停止位置検出処理(ステップS103)が行われる。この間の回転速度はゼロである。
【0068】
時間t2でロータ停止位置を決定したら、シャント抵抗13Aの電流波形に示すように、始動時励磁手段36が初期通電時間Ts1の間だけ始動励磁パターンを継続して通電させる。この間、ロータ41の回転速度が徐々に増大する。
ここで、初期通電時間Ts1は、通電をOFFにした後で誘起電圧のエッジが複数回、例えば、4回以上発生するまでの間、ロータ41を回転速度N1以上でフリーランさせることができるだけロータ41を加速できる時間である。この観点からは、初期通電時間Ts1が長いことが望ましい。しかしながら、初期通電時間Ts1が長すぎて通常運転時における励磁パターンの切り替え位置を越えて同じ励磁パターンを継続すると、逆トルクが発生してしまってロータ41を減速させてしまう。したがって、初期通電時間Ts1は、逆トルクが発生しない範囲内で、できるだけ長い時間とすることが好ましい。初期通電時間Ts1の決定方法の一例としては、設計段階や製造段階でブラシレスモータ1をホールセンサ付きで始動させ、最初にホールセンサの信号が切り替わるまでの時間を測定し、これと略同じ時間又はこれより短い時間を初期通電時間Ts1として制御装置11に記憶させることがあげられる。
【0069】
時間t3で初期通電時間Ts1が経過したら、通電パターン決定手段26がフリーラン制御モード26Cに移行し、全相への通電をOFFにする。シャント抵抗13Aで計測される電流値がゼロになり、ロータ41がフリーランする。以降は、時間の経過と共に回転速度がゆるやかに減少する。時間t3では、各位置信号にパルスが現れている。このため、3相の信号の立ち上がりエッジに対応して、励磁切り替えタイミング信号に1つ目の信号SL1が発生している。このときパルス信号は、ステータのコイルに蓄積されたエネルギがフライホイールパルスとして放出されときに、3相全てのモータ端子電圧に方形波パルス電圧が発生することに起因して発生している。通常駆動の場合はこれらの方形波パルス電圧は分離手段21により無視できるが、時間t3では全相をOFFするロジックなので、通常駆動時には在り得ない例外状態となるため、方形波パルス電圧を無視できずに誤検出となる。このため、始動後の1回目の信号SL1はロータ位置の検出には使用しない。
【0070】
さらに、ロータ41がフリーランすることで、ロータ41の回転位置に応じてブラシレスモータ1の所定の相のモータ端子に誘起電圧が発生する。この場合には、W相位置信号、U相位置信号、V相位置信号の順番に立ち上がりエッジ、又は立ち下がりエッジが発生している。その結果、励磁切り換えタイミング信号は、W相のエッジに起因する2回目の信号SL2と、U相のエッジに起因する3回目の信号SL3と、V相のエッジに起因する4回目の信号SL4とが発生する。なお、全相をOFFにすることで、インバータ回路13からブラシレスモータ1に入力されるパルス幅変調信号などの不要な信号成分がない状態で誘起電圧と等価中性点電位の交点を計測できるようになるので、ロータ位置を正確に検出できる。
【0071】
この間、励磁切り替えタイミング演算手段22は、2回目の信号SL2と3回目の信号SL3の時間間隔を計測して電気角60°を算出する。さらに、3回目の信号SL3と4回目の信号SL4の時間間隔を計測して電気角60°を算出する。これら時間間隔に基づいて、4回目の信号SL4から例えば電気角30°進角させるなどして、励磁切り替えタイミングを算出する。そして、以降は、モータ端子電圧と等価中性点電位の比較結果から生成される信号に基づいて励磁切り替えタイミングを決定し、通電パターンの切り替え制御を行うことで、ブラシレスモータ1の運転が行われる。ホールセンサを有する場合の電気角120°矩形波駆動と同等性能の駆動が可能になって、回転速度が制御される。
【0072】
なお、イナーシャが大きいブラシレスモータでは、5回目以降の信号を取得し、同様にして時間間隔から励磁通電タイミングを算出しても良い。始動時の安定性や、正確性をさらに向上できる。
また、イナーシャが大きいブラシレスモータでは、2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔と、3〜4回目の信号SL3,SL4の時間間隔が略等しい。このため、2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔のみでセンサレス駆動に移行しても良い。このようにすると、さらに短い時間で定常的な運転を開始することができる。また、1回目の信号SL1と2回目の信号SL2の時間間隔だけを取得してセンサレス駆動に移行しても良い。イナーシャが小さいブラシレスモータに有効である。この場合は、初期通電時間SL1は予め設定された値を用いており、SL2のタイミングを検出した時点でSL1とSL2の時間間隔を演算し、それをロータ位置信号として使用することができるので、2回目の信号SL2まででセンサレス駆動に移行できるようになる。
また、イナーシャが小さいブラシレスモータでは、減速が大きくなって2〜3回目の信号SL2,SL3の時間間隔より、3〜4回目の信号SL3,SL4の時間間隔の方が大きくなる。この場合には、時間間隔の変化から加速度を算出し、この加速度を用いて次の時間間隔を推定することで励磁通電タイミングを算出しても良い。
【0073】
さらに、この始動方法では、モータ始動時に電流を抑制しながら起動する方法(以下、ソフトスタートという)を実施している。例えば、図19に示すように、始動時は、パルス幅変調信号(PWM)のデューティを例えば50%にして電流を抑制し、その後回転速度を上昇させ、初期通電時間Ts1が経過したら、一旦デューティを0%にして、フリーランさせる。フリーランが終了したら、再びデューティを約50%にし、そこからデューティを徐々に増加させ、最終的にデューティが100%に達しときに回転速度が目標値(例えば、最大回転数)に達するようにする。これによって、始動時に過電流が流れることを防止することができ、ブラシレスモータ1が搭載されているシステム全体の安定性を高めることができる。
【0074】
次に、図5のステップS110に示す誘起電圧によるセンサレス駆動(定常駆動モード)の詳細について説明する。
定常駆動モードでは、モータ端子の誘起電圧を検出してロータ位置を検出するが、誘起電圧波形には方形波状のスイッチングパルス(方形波パルス電圧)が重畳するので、このようなノイズを除去する必要がある。この実施の形態では、各相のロータ位置信号に相当するエッジを検出したときに、他相のレベル検出を行って、ロータ位置信号と方形波パルス電圧とを区別している。この際に使用される正転専用ロジックは、表2に示す誘起電圧信号検出ロジックと、表3に示す方形波パルス電圧終了エッジ判定ロジックとからなる。
なお、正転専用ロジックは、ブラシレスモータ1が正回転していると判定された場合に、回転方向検出ロジック選択手段24の指令によって分離手段21が参照する。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
定常駆動モードで通電制御しているときの信号波形を図20に示す。図20は、横軸に電気角をとり、縦軸は上側から各相U,V,Wへの通電状態と、各相U,V,Wの実際の誘起電圧波形Uv、Vv、Wv(アナログ信号)と、相U,V,Wごとの誘起電圧信号Ud,Vd,Wd(デジタル信号)とが図示されている。最上段の相U,V,Wへの通電状態は、上段で「+」が付加されている相U,V,Wが高電位側で、下段で「−」が付加されている相U,V,Wが低電位側であることを示している。つまり、電気角0°から60°までの間の「W+」「V−」は、W相からV相に通電することを示す(図6における通電パターン#6と同等)。また、例えば、誘起電圧波形Uvにおいて、電気角0°で立ち上がるパルスや、電気角180°で立ち下がるパルスが方形波パルス電圧Psであり、これら方形波パルス電圧Psがこの実施の形態において除去対象となる信号である。
【0078】
また、図21はマスク信号の生成過程及び位置検出信号の生成過程を模式的に示す図である。なお、図21は、横軸に電気角をとり、縦軸は上側から各相U,V,Wの誘起電圧信号Ud,Vd,Wd(図20と同じ信号)と、前記誘起電圧信号Ud、Vd、Wdそれぞれに重畳されている方形波パルス電圧信号Psを分離するためのマスク信号Um、Vm、Wmと、前記マスク信号によってUd、Vd、Wdから分離された方形波パル電圧信号Ups、Vps、Wpsと、各相U,V,Wの位置検出信号Us、Vs、Wsと、電気角30°位相シフトした後の位置検出信号Uss、Vss、Wssとが順番に図示されている。
【0079】
図20に示す各相U,V,Wの誘起電圧波形Uv、Vv、Wvは、誘起電圧I/F回路12(図1参照)に入力され、図2のローパスフィルタ回路15A〜15Cの分圧回路によりコンパレータ17A〜17Cに入力可能な電圧Uv2、Vv2、Wv2に分圧される。その後、ローパスフィルタ回路18A〜18CによりPWMノイズを除去した後の誘起電圧信号Uv3、Vv3、Wv3を生成し、これらの電圧値から等価中性点電圧が得られる。この等価中性点電圧と誘起電圧波形Uv3とをコンパレータに入力すると、誘起電圧信号Udが得られる。同様にして、アナログ信号の誘起電圧波形Vv3,Wv3からデジタル信号の誘起電圧信号Vd,Wdが得られる。これら、誘起電圧信号Ud,Vd,Wdは、制御装置11の分離手段21に入力され、以下の処理によって通電切り替えタイミングが生成される。
【0080】
分離手段21は、誘起電圧信号Ud,Vd,Wdのパルス信号から、方形波パルス電圧Psのエッジとロータ41の回転により生じる誘起電圧のエッジとを分離し、回転子位置検出部23がロータ41の回転により生じる誘起電圧の情報からなる位置検出信号Us,Vs,Wsを作成し、励磁切り替えタイミング演算手段22に受け渡す。励磁切り替えタイミング演算手段22では、図21に示す位置検出信号Us,Vs,Wsのエッジ(誘起電圧エッジ)の間隔Teをカウントする。具体的には、位置検出信号Us,Vs,Wsのすべてのエッジをトリガーとしてカウンタによる計測を開始し、次にいずれかの位置検出信号Us,Vs,Wsのエッジが検出されたらカウント値をクリアすると同時に次のカウントを開始する。ここで、ブラシレスモータ1が回転しているときには、誘起電圧エッジの間隔Teは、電気角60°ごとに発生するので、誘起電圧の発生間隔を示すカウント値からロータ41の回転速度や加速度を演算し、これに応じて次に通電を切り替えるタイミングを補正し、その分だけ位置検出信号Us,Vs,Wsの位相をシフトして位相検出信号Uss,Vss,Wssを生成する。そして、励磁信号出力手段27が、これら位相検出信号Uss,Vss,Wssに従ってインバータ回路13を制御し、各固定子巻線U,V,Wへの通電を切り替えてブラシレスモータ1のロータ41を回転させる。
【0081】
ここで、励磁信号出力手段27はマスク信号生成手段27Aを備えており、マスク信号生成手段27Aは、励磁信号出力手段27がインバータ回路13に通電パターンを出力する直前に分離手段21にマスク信号を出力する。
例えば、図21の例では、U相の位置検出信号Ussのエッジの発生タイミングの直前に、W相のマスク信号WmをH(High)レベルに設定する。同様に、V相の位置検出信号Vssのエッジエッジの発生タイミングの直前に、U相のマスク信号UmをH(High)レベルに設定する。W相の位置検出信号Wssのエッジの発生タイミングの直前に、V相のマスク信号VmをH(High)レベルに設定する。これら各マスク信号Um,Vm,Wmの信号レベルは所定の電気角の間維持された後にL(Low)レベルに変更される。
【0082】
なお、マスク信号Um,Vm,Wmのパルス幅を決定する電気角は、常にTeの計測値から予めメモリされている角度を算出する。具体的には、通常負荷で回転させたときの方形波パルス電圧Psのパルス幅よりも大きく、かつマスク信号のパルスで誘起電圧波形Uv,Vv,Wvと等価中性点電圧との交点がマスクされないような値、0°<θ<30°が用いられる。
【0083】
以降は、誘起電圧I/F回路12から入力される誘起電圧信号Ud,Vd,Wdに対して、マスク信号Um,Vm,Wmで方形波パルス電圧Psのパルスを除去して位置検出信号Us,Vs,Wsを作成し、複数台並列モータ1の通電制御を行う。
【0084】
ここで、方形波パルス電圧Psのパルス幅は、負荷の大きさや、回転速度によって変化する。これに対して、マスク信号Um,Vm,Wmは、一定のパルス幅なので、マスク信号Um,Vm,Wmで方形波パルス電圧Psのパルスを完全にマスクできる場合と、マスクしきれない場合とが生じる。
【0085】
まず、方形波パルス電圧Psのパルス幅がマスク幅以下の場合には、図22に示すように、方形波パルス電圧Psの開始エッジ及び終了エッジの両方をマスクすることができる。この場合には、分離手段21は、表1に示すような誘起電圧信号検出ロジックに従って、誘起電圧信号Ud,Vd,Wdから位置検出信号Us,Vs,Wsを作成する。
【0086】
なお、図22において、電気角θ1から始まる方形波パルス電圧Psの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジは、マスク信号UmがHレベルであるので無視される。電気角θ2における立ち上がりエッジは、表1の立ち上がりエッジの誘起電圧信号Udについての条件を満たすので、U相の誘起電圧の立ち上がりエッジとみなされる。同様に、電気角θ3から始まる方形波パルス電圧Psの立ち下がりエッジ及び立ち上がりエッジは、マスク信号UmがHレベルであるので無視される。電気角θ4における誘起電圧信号Udの立ち下がりエッジは、表1の立ち下がりエッジの誘起電圧信号Udについての条件を満たすので、固定子巻線Uの誘起電圧の立ち下がりエッジとみなされる。同様にして他の誘起電圧信号Vd,Wdについても、表1の誘起電圧信号検出ロジックに従って誘起電圧の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとを判定し、位置検出信号Us,Vs,Wsを作成する。
【0087】
これに対して、図23に示すように、方形波パルス電圧Psのパルス幅がマスク幅を越える場合には、方形波パルス電圧Psの開始エッジはマスクできるが、方形波パルス電圧Psの終了エッジはマスクすることができない。このような場合に、分離手段21は、表1に示すような誘起電圧信号検出ロジックに加えて、表2に示すような方形波パルス電圧終了エッジ判定ロジックを参照して誘起電圧エッジを分離し、位置検出信号Us,Vs,Wsを作成する。
【0088】
図23において、電気角θ1から始まる方形波パルス電圧Psの立ち上がりエッジは、マスクされるが、同じ方形波パルス電圧Psの立ち下がりエッジは、マスクできないので、表2及び表3に示す立ち下がりエッジの条件を満たすか否かを調べる。この場合には、表3の立ち下がりエッジの誘起電圧信号Udについての条件を満たすので、方形波パルス電圧Psのエッジであるとみなし、この信号を除去した上で位置検出信号Usを作成する。電気角θ2のエッジは、前記のように表1の条件を満たすので、誘起電圧エッジとする。同様に、電気角θ3から始まる方形波パルス電圧Psの立ち下がりエッジは、マスク信号Umによって除去され、同じ方形波パルス電圧Psの立ち上がりエッジは、表3の立ち上がりエッジの誘起電圧信号Udについての条件を満たすので除去する。このようにして、マスク信号Umで除去しきれない方形波パルス電圧Psのパルスがあった場合には、他の誘起電圧信号Vd,Wdの電圧レベルの高低を調べて表2及び表3の条件に当てはめることで除去の要否を判定し、方形波パルス電圧Psによる信号を除去して位置検出信号Usを作成する。さらに、同様にして、位置検出信号Vs,Wsを作成する。
【0089】
ここで、位相検出信号Uss,Vss,Wssを生成する際に、通電を切り替えるタイミングを補正する処理について説明する。補正は、励磁切り替えタイミング演算手段22に設けられた遅れ位相補正部22Aで実施する。補正の対象となる遅れ位相を図23に示す。図24は、U相における励磁タイミングと遅れ位相θ1、θ2を模式的に示している。遅れ位相θ1は、誘起電圧I/F回路12のローパスフィルタ回路15A〜15Cに起因し、回転速度によって変化する。遅れ位相θ2は、コンパレータ17A〜17Cから後段の誘起電圧I/F回路12、すなわちコンパレータ17A〜17Cとローパスフィルタ回路18A〜18Cによる遅れ成分θ2aと、制御装置11のマイコンの処理遅れ時間θ2bの和(θ2=θ2a+θ2b)であり、駆動装置2に固有の値である。したがって、遅れ位相補正部22Aは、遅れ位相θ1を補正するフィルタ遅れ位相補正手段、及び遅れ位相θ2を補正する回路遅れ位相補正手段として機能する。
【0090】
まず、フィルタ遅れ位相補正手段としての遅れ位相補正部22Aの処理について説明する。
図25に示す範囲R5がブラシレスモータ1の回転速度の制御範囲である場合、ローパスフィルタ回路15A〜15Cは、範囲R5より高い周波数領域にカットオフ周波数fcが設定される。図25は、横軸を周波数の対数表示とし、縦軸を位相にしたボード線図である。カットオフ周波数fcのローパスフィルタ回路15A〜15Cを通った誘起電圧信号には遅れ位相θ1が生じる。遅れ位相θ1は、高周波数になる程、大きくなる。
【0091】
ローパスフィルタ回路15A〜15Cの伝達関数G(s)は、τ(=C×R)を用いると次式で表せる。
G(s)=1/(τs+1) (1)
式(1)から、遅れ位相θ1〔rad〕は、
θ1=−arctan(ωτ) (2)
【0092】
ここで、角加速度ωは、回転速度に相当するモータ端子電圧の基本周波数fの関数として表すことができるので、
θ1=−arctan(2πτ×f) (3)
となる。単位を〔°〕に変換し、遅れにとると、
θ1=arctan(2πτ×f)×360/2π (4)
となる。電気角60°回転するのに要する時間をTaとすると、1/f=6Taなので、θ1=arctan(2πτ/6Ta)×360/2π (5)
式(5)からローパスフィルタ回路15A〜15Cによる遅れ位相θ1を算出できる。遅れ位相θ1は、式(5)からその都度計算しても良いが、この実施の形態では遅れ位相補正部22Aにマップ登録しておき、時間Taで検索して遅れ位相θ1を求める。
【0093】
次に、回路遅れ位相補正手段としての遅れ位相補正部22Aの処理について説明する。
遅れ位相θ2は、ローパスフィルタ回路15A〜15C以外のその他の回路及びソフトウェア処理によって発生する。この遅れ位相θ2は、コンパレータ17A〜17C、ローパスフィルタ回路18A〜18C、マイコンなどに起因して発生する。このときの遅れ時間T2は、回転速度に依らず一定値である。したがって、電気角60°回転するのに要する時間Taに対する遅れ時間T2の割合から遅れ位相θ2を算出できる。
θ2=(T2/Ta)×60〔°〕 (6)
【0094】
式(6)からは、遅れ時間T2が一定なので、回転速度が上昇して時間Taが短くなると、T2/Taの値が大きくなって、遅れ位相θ2が大きくなることがわかる。なお、式(6)もマップ化しておくと、計算をスムーズに行える。
【0095】
以上から、励磁を切り替えるタイミングEwは、
Ew=30−(θ1+θ2) (7)
になる。マップを使用してタイミングEwを補正することで、タイミングEwを速やかに演算できる。さらに、補正したタイミングEwを使用することで、回転速度に依らずに励磁を精度良く切り替えられる。
【0096】
次に、始動時に回転速度が既に領域R2にあるときについて説明する。
図26に示すように、始動前の状態が前記したフリーラン状態と同じになる。図5のフローチャートに従ってステップS103からステップS108の処理を実施してもフリーランしている回転状態への影響は少なく、フリーラン状態を維持できる。したがって、ステップS109からステップS110に進んで、定常駆動モードに移行する。
【0097】
始動時に回転速度が図4に示す領域R3にあるときについて説明する。
図5のステップS101からステップS108を実施しても、逆方向に回転しているロータ41の誘起電圧波形では、正転専用ロジックでロータ位置信号を抽出することはできない。したがって、ロータ位置信号が例えば1〜9秒程度の所定の時間の間、検出できないときは、励磁切り替えタイミング演算手段22のフリーランモード22Cからの励磁切り替えタイミング信号がモード選択手段40に送られないので、モード選択手段が逆転状態にあると判定する。
この場合、図1に示す制御装置11は、ブレーキ停止モード26Eが2相ロック通電を一定の時間、過電流とならない程度の低いデューティでブラシレスモータ1に印加する(ブレーキ停止モード26E)。ラジエータファンにはブレーキとして働き、ラジエータファンの回転速度が小さくなって、停止状態に近くなる。
【0098】
図27に始動時に逆回転しているときの回転速度の変化を示す。2相ロック通電を継続する時間は、予め設定されたブレーキ通電時間で、例えば、1〜9秒程度である。これによって、ブラシレスモータ1の回転速度は、−N1からゼロに近付く。前記したように、ラジエータファンは、逆回転している場合に回転数及びトルクは小さいからである。
【0099】
ブレーキ通電時間が経過したら、インダクタンス検出を用いた始動処理を実施する。ラジエータファンは、フリクションが大きいシステムなので機械的な時定数は大きく、逆回転中に強制的に停止させた場合、風力によって再び逆方向に回転し始めるまでには時間がかかるため、回転速度が領域R1に留まっているからである。以降は、前記したステップS102からステップS108を実施し、定常駆動モードに移行する。
【0100】
この実施の形態によれば、コイルが作る磁束とマグネットが作る磁束が同じ方向の場合、つまりコイルとマグネットの間で磁束が流れ易いようなロータ位置ではインダクタンスが小さくなることに着目したので、従来の方法に比べて精度良く、かつ安定してロータ停止位置を検出することができる。
インダクタンス検出のための特別の回路が不要になるので回路構成を簡略化できる。
【0101】
ここで、このようなブラシレスモータ1は、例えば、ファンモータや、燃料ポンプのモータなど、イナーシャが大きいモータ、コギングトルクが無いスロットレスモータ、摩擦やコギングトルク等による損失が少ない低損失モータがあげられる。スロットレスモータでは、スロットのコアがないことからインダクタンス検出によるロータ停止位置の検出ができない。しかしながら、イナーシャが極めて小さいことから、ロータの停止位置を検出する際の通電で所定の回転位置に容易に吸い付けることができるので、そのような方法で停止位置を決めて、そこから電気角120°位相が遅れた通電パターンを始動励磁パターンに選択すれば良い。
【0102】
なお、本発明は、前記の実施の形態に限定されずに広く応用することができる。
例えば、正転専用ロジックに加えて逆転専用ロジックを使用しても良い。逆転専用ロジックは、回転方向判定手段23が逆転と判定するときに回転方向検出ロジック選択手段24によって選択されるもので、表3に示す誘起電圧信号検出ロジックと、表2に示す方形波パルス電圧終了エッジ判定ロジックとからなり、分離手段21に登録されている。逆転専用ロジックを使用することで逆回転状態にあることを確実に検出できるようになる。
【0103】
ステップS112のブレーキ停止処理を最初に実施しても良い。始動時にブラシレスモータ1の回転速度がいずれの領域R1〜R3にある場合でも、ブレーキ停止処理によって強制的に領域R1に制御されるようになる。
6つの通電パターン全てについてカウント値を計数してロータ停止位置を判定しても良い。
ブラシレスモータ1は、複数台を並列に接続させても良い。
ロータ停止位置を検出した後の始動方法や、定常回転時の駆動方法は、実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0104】
1 ブラシレスモータ
2 駆動装置
11 制御装置
13 インバータ回路
13A シャント抵抗(電流測定手段)
29A 記憶手段
29B カウンタ
30 電流印加時間比較手段(位置推定手段)
30A マップ
31 ロータ位置推定手段(位置推定手段)
38 過電流検出手段(電流比較手段)
41 ロータ
U,V,W コイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内のラジエータに対して配設され、ラジエータファンの回転機構に使用され、永久磁石を有するロータと複数相のコイルが巻装されたステータを備えるブラシレスファンモータの駆動装置において、
前記コイルに電流を供給するインバータ回路と、
前記電流の供給を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記コイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させる位置信号発生手段と、
前記コイルに流れる電流の電流値が予め設定された閾値以上になったら検出信号を出力する電流比較手段と、
通電パターンを指令する信号が出力されてから検出信号が出力されるまでの時間を通電パターンごとに計数するカウンタと、
通電パターンごとに計数されたカウント値の大小からロータ停止位置を決定する位置推定手段と、
を備えることを特徴とするブラシレスファンモータの駆動装置。
【請求項2】
連続して選択された2つの通電パターンにおけるカウント値の増減と、ロータ停止位置を関連付けたマップを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のブラシレスファンモータの駆動装置。
【請求項3】
前記インバータ回路は、複数相の通電切り換え用の複数のスイッチング素子を備え、
前記電流比較手段は、前記インバータ回路に流れる過電流を検出する過電流検出回路であり、
前記電流比較手段が前記過電流を検出した場合、全ての前記スイッチング素子が遮断状態に駆動されるとともに、前記制御装置は、前記コイルの通電を終了させるように制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブラシレスファンモータの駆動装置。
【請求項4】
エンジンルーム内のラジエータに対して配設され、ラジエータファンの回転機構に使用され、永久磁石を有するロータと複数相のコイルが巻装されたステータを備えるブラシレスファンモータの制御方法であって、
前記コイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させるステップと、
前記コイルに流れる電流が所定の閾値以上になったら、電流供給を停止させるステップと、
通電パターンを指令する信号の出力から前記コイルに流れる電流が前記閾値以上になるまでの時間をカウンタで計数するステップと、
複数の通電パターンに対して前記カウンタで計数したカウント値の変化からロータ停止位置を判定するステップと、
を備えることを特徴とするブラシレスファンモータの制御方法。
【請求項5】
前記カウンタで計数するステップは、3つ又は4つの通電パターンについて実施されることを特徴とする請求項4に記載のブラシレスファンモータの制御方法。
【請求項1】
エンジンルーム内のラジエータに対して配設され、ラジエータファンの回転機構に使用され、永久磁石を有するロータと複数相のコイルが巻装されたステータを備えるブラシレスファンモータの駆動装置において、
前記コイルに電流を供給するインバータ回路と、
前記電流の供給を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記コイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させる位置信号発生手段と、
前記コイルに流れる電流の電流値が予め設定された閾値以上になったら検出信号を出力する電流比較手段と、
通電パターンを指令する信号が出力されてから検出信号が出力されるまでの時間を通電パターンごとに計数するカウンタと、
通電パターンごとに計数されたカウント値の大小からロータ停止位置を決定する位置推定手段と、
を備えることを特徴とするブラシレスファンモータの駆動装置。
【請求項2】
連続して選択された2つの通電パターンにおけるカウント値の増減と、ロータ停止位置を関連付けたマップを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のブラシレスファンモータの駆動装置。
【請求項3】
前記インバータ回路は、複数相の通電切り換え用の複数のスイッチング素子を備え、
前記電流比較手段は、前記インバータ回路に流れる過電流を検出する過電流検出回路であり、
前記電流比較手段が前記過電流を検出した場合、全ての前記スイッチング素子が遮断状態に駆動されるとともに、前記制御装置は、前記コイルの通電を終了させるように制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブラシレスファンモータの駆動装置。
【請求項4】
エンジンルーム内のラジエータに対して配設され、ラジエータファンの回転機構に使用され、永久磁石を有するロータと複数相のコイルが巻装されたステータを備えるブラシレスファンモータの制御方法であって、
前記コイルに流す電流の通電パターンを指令する信号を発生させるステップと、
前記コイルに流れる電流が所定の閾値以上になったら、電流供給を停止させるステップと、
通電パターンを指令する信号の出力から前記コイルに流れる電流が前記閾値以上になるまでの時間をカウンタで計数するステップと、
複数の通電パターンに対して前記カウンタで計数したカウント値の変化からロータ停止位置を判定するステップと、
を備えることを特徴とするブラシレスファンモータの制御方法。
【請求項5】
前記カウンタで計数するステップは、3つ又は4つの通電パターンについて実施されることを特徴とする請求項4に記載のブラシレスファンモータの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2013−81374(P2013−81374A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−21823(P2013−21823)
【出願日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【分割の表示】特願2007−235239(P2007−235239)の分割
【原出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【分割の表示】特願2007−235239(P2007−235239)の分割
【原出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】
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