説明

ブラシ装置

【課題】付加的操作を要さずに異なる直径、長さの工作物の連続的、均一な加工が可能なブラシの提供。
【解決手段】技術的な表面、特にほぼ回転対称の工作物(3)の表面を加工する装置で、少なくとも1つの加工ユニット(4)と工作物支持体(1)を有し、工作物支持体に駆動装置と、工作物支持体上に回転可能に固定された、工作物を加工ユニットへあてがうための2つ以上のホルダ(5)が設けられている、ものにおいて、加工ユニットが、工作物の表面上にほぼ一定の圧接圧力を形成するための手段(6)を有し、かつ駆動装置が、加工ユニットへ工作物をあてがう時間的な順序と処理長さを定めるように、設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1に記載のブラシ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的または装飾的表面を処理するため、たとえばバリ取り、研磨ないし精密研磨および艶だしのためのブラシ装置は、ブラシ製品を手動であてがう簡単なブラシ台としての仕様においてずっと以前から知られている。最近は、一方でブラシプロセスのより高い自動化度を、他方ではより高い再現可能性を保証するために、種々のブラシ装置が開発されている。
【0003】
たとえば、引用文献1には、様々な部分を仕上げるための自動的な製作センターが記載されており、それにおいては3つの軸線内で移動可能で、付加的に回転可能な加工ヘッドが、揺動可能に軸承されている部品の表面を加工することができる。引用文献2には、サニタリー装置を処理するための製作自動機が記載されている。ブラシ操作にも使用することができる、他の製作自動機が、従来技術から知られている。多くのこの種の自動機は、もちろん、6軸まで移動可能な操作を支配し、ないしは加工ロボットと工作物との間の複雑な相対移動を支配して制御することから生じる、高い複雑性の欠点を有している。
【0004】
たとえば、表面修正のために使用される、Sinjet Osborn社のCNC制御される設備が知られている。特に、この設備は、工作物のバリ取りに使用される。この設備は、技術的に複雑であって、高価である。というのは、ここでもCNC制御が多くの軸線内で移動可能なブラシアームに作用するからである。その場合に加工すべき表面にブラシをあてがうことは、たとえば幾何学的な工作物寸法の入力によって行われ、その工作物寸法からそれに応じた送りが計算される。これは、付加的な操作の手間を必要とする。
【0005】
ずっと簡単な原理が、Rene’ Gerber AGのブラシ機械によって知られている。この機械は、バッチ駆動で作業し、その場合に半径方向外側へ向けられたホルダを搭載したリボルバがシャフト工具を装填されて、次に工具が共通に回転するディスクブラシによって加工される。ブラシプロセスの終了後に、ブラシディスクが取り外されて、リボルバが新たに装填される。工具のシリーズ製作のためには、それに応じた装填および排出時間を有する、この種のバッチ駆動は、欠点となる場合がある。さらに、工具はブラシ工具の半径方向速度が異なることによりシャフト長さにわたって異なるように加工されるので、工具が長い場合に尖端では、シャフトの近傍の側面部分におけるよりもブラシ作用がずっと激しくなる可能性がある。それぞれ与えられたブラシ/装填幾何学配置の他に、これが他の理由となり、従ってこの種の機械によっては、制限された長さを有する工具しか加工することができない。
【0006】
【特許文献1】US2002037689
【特許文献2】WO97/00757
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の課題は、上述した従来技術の欠点を回避する、ほぼ回転対称の工作物のためのブラシ装置を提供することである。特にそれによって、付加的な操作の手間なしで、異なる直径および長さを有する工作物の連続的な均一な加工を可能にしようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この種のブラシ装置は、請求項1の特徴に基づく装置によって実現され、その場合に従属請求項が本発明の様々な実施形態を記述している。
【0009】
技術的表面を加工するための装置は、特に、ほぼ回転対称の工作物を処理するのに適しており、かつ少なくとも1つの加工ユニットと工作物支持体を有しており、その工作物支持体に駆動装置と、その工作物支持体上に回転可能に固定されている、工作物を処理ユニットへあてがうための少なくとも2あるいはそれより多いホルダを有している。その場合に加工ユニットは、工作物の表面上にほぼ一定の圧接圧力を形成するための手段を有しており、かつ駆動装置は、工作物を加工ユニットにあてがう時間的順序と処理長さを定めるように、設計されている。
【0010】
少なくとも1つの加工ユニットは、ブラシユニットまたは研磨ユニット、特に好ましくはラウンドブラシまたはベルトブラシを有している。一定の圧接圧力を形成するために、ガス圧ダンパー、ばね手段、弾性的な手段または重り手段と、必要な場合にレバー手段を使用することができる。工作物支持体は、皿状またはベルト状に形成されており、連続的、サイクリックあるいは歩進的に送る駆動装置を有することができる。ホルダは、別の駆動手段によって回転することができ、それら駆動手段はたとえば少なくとも1つの歯車、歯付きリム、摩擦ホィール、摩擦リムなどを有することができ、好ましくは工作物の周面に作用する、加工ユニットの接線力によって回転可能である。
【0011】
この種の装置によって、特にたとえば表1)のテストに記載されるように、ほぼ円筒状の工作物の表面を加工するための様々な方法を実現することができる。それによって様々なコーティング(その中にPVD(physical vapor deposition)またはCVD(chemical vapor deposition)も入る)を有する工作物の処理も可能である。
【0012】
この種のブラシ装置によって、専用の軸を中心に回転可能な工作物をブラシステーションを通過するように連続的、歩進的および/またはサイクリックに案内し、かつ、ブラシプロセスを中断することなしに、処理すべき工作物の簡単な装着および取出しが可能である。時間、圧接力、ブラシ角度およびブラシの回転速度のようなブラシパラメータは、ブラシ手段の選択と必要な場合にはブラシ角度の調節が行われた後に、それ以上の手間なしで自動的に工作物の様々な直径および長さに適合され、それによって加工された表面の定められた最終状態が保証される。工作物が、ブラシ工具の回転のみによって回転されない場合には、個々のホルダサテライトを、たとえば固定の歯付きリム上のホブによって、回転させることができ、その場合に回転速度は、当業者に知られているように、変化させることができる。
【0013】
従って本発明に基づくブラシ装置によって、ほぼ回転対称の部品上で、たとえば平滑化、バリ取り、エッジ面取り、丸み取りのような、すべての普及しているブラシ操作を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
例としての図面を用いて、本発明の種々の好ましい形態を説明する。
図1は、ベルトブラシ装置を示している。その場合に工作物は、周回の中断なしで、あるいはクロック駆動で移動させることができる。ブラシ4の数と位置は、変化することができる。さらに、ブラシ長さは、知られているように適合させることができる(1つないし複数のローラ間隔の延長および/またはベルトの延長)。
【0015】
回転対称の工作物の表面の修正(たとえば;平滑化、粗面化;エッジ準備、エッジ面取り;バリ取り)は、連続方法で行われる。そのために、工具3がホルダ5内へセットされて(ホルダ自体は回転可能なサテライト2上に固定されている)、図1と図2に示すような皿1上または図3と図4に示すような回転するベルト1’上で1つまたは複数のブラシ4を通過するように移動される。その場合に工作物3を有するホルダ5は、サテライト2の軸を中心に回転する。回転方向および速度は、皿1ないしバンド1’、サテライト2ないしブラシ4において、必要に応じて変化させることができる(左回転、右回転、異なる角速度)。簡単であるが、多くの適用にとって十分である形態において、サテライト回転は、ブラシ4から工具3へ伝達される力によってもたらされる。
【0016】
ブラシ4は、それぞれ要請に応じて、たとえば切削溝角度に対して平行にブラッシングするために、角度において工作物に適合させることができる。工作物長さ全体にわたって均一な処理を保証するために、ブラシ4、特に図2と図4に示すような、ラウンドブラシは、高さにおいて交差するように配置することができる。代替的に、1つまたは複数のブラシ4を処理の間好ましくは工具に対して平行に上昇および下降するように案内することができる。付加的に、ブラシ4を、たとえば定められた圧力を有するガス圧ダンパー6を介して1〜100Nの力で工具にあてがうことができる。ばね手段、弾性的な手段または重り手段によって必要な場合にレバー増幅によってブラシに該当する圧接力を及ぼす、同様な装置が、当業者に知られている。従って1つないし複数のブラシの定められた、ほぼ一定の圧接力を工具の加工すべき長さにわたって保証することができる。その場合に直径と長さが変化する異なる種類の工具における補償は、簡単かつ好ましくは、付加的な制御なしで、機械的に行われる。というのは、セルフ調整による適応が行われるからである。従ってより大きい直径を有する工具が、より小さい直径を有する工具に続く場合に、ブラシは自動的に必要な量だけ側方へかつ反対に揺動し、その場合に2つの直径のために圧接力は同じままである。たとえばブラシユニット4を駆動モータを含めて、ここには詳しく図示されていない揺動アーム上に取り付けることができる。揺動は、側方へ、あるいは高さにおいて行うことができる。
【0017】
ホルダ5は、簡単な方法で回転皿ないしベルト上に差込み可能に形成することができる。ホルダ内で工具の回転を回避するために、他のクリップ装置または他のように作用する固定装置を設けることができる。たとえば、既知のクリップばねをホルダ内に、ないしはホルダに取り付けることができ、それが工具3を十分堅固にホルダ5内に保持する。
【0018】
特に好ましくは、この種のブラシ装置によってシャフト工具と回転対称の構成部品、たとえば多段の直径を有するものも加工される。しかし、たとえばホブのような、シャフトのない回転対称の工具は、たとえば差込み突起を有するホルダのような、適切なホルダを用いて、容易に加工することができる。
【0019】
本発明の他の好ましい作用
本発明に基づくブラシ装置によって初めて、CVDコーティングまたはPVDコーティングされた工具をブラッシングし、それによって進入挙動を改良することが試みられた。次に、PVDコーティングされた工作物のためのこの種のブラシ処理の他の利点を示す、種々の例を説明する。
【0020】
その場合に、図2に示すように20のホルダサテライトと3つの固定された、高さにおいてそれぞれ50mmだけ変位されたブラシからなる本発明に基づくブラシ装置上で、異なるようにコーティングされた、あるいはコーティングされていない工具の表面が、垂直から、ないしは工具軸に対して約60度の添接角度でブラッシングされた。ブラシの寸法は、次のように選択された:直径=150mm、それぞれメーカーに応じた個別ブラシの、約17mmのブラシ幅、その場合に4〜6の個別ブラシがスペーサ片と共に約80−100mmの全体幅を有するブラシローラとして構築される。3つの定められた高さの1つにおけるブラシの処理時間は、5〜30秒の間に調節され、その場合に選択されたブラシパラメータにおいて、処理時間が8〜10秒の場合に、表面状態と生産性に関して特に良好な結果が得られた。その場合に1〜150mmの間の機能長さを有する工具が処理された。この場合において、回転皿の360度の回転が、約3分続いた。複数の工具が同時に処理されるので、10秒毎に処理の終わった工具を出口開口部へ排出して、未処理の新しい工具を取り付けることができる。
【0021】
40のサテライト仕様において、選択された直径のブラシの場合にブラシステーション当たりそれぞれ2つの工具を同時に処理することができ、それによって45秒の処理時間が変化しない場合でも、単位時間当たり2倍の通過量を達成することができる。
【0022】
本発明に基づくブラシ装置の上述したような20−サテライト仕様上で、試験体と工具が、表1に抜粋して示されるような、様々なパラメータでブラッシングされた。欄2は、ナイロンブラシと混ぜられた研磨材料(Al2O3、SiC)あるいはブラシ体自体の毛材料である(真鍮、Fibre(ファイバー)=吸収性の天然繊維))。
【0023】
【表1】

【0024】
工具刃のエッジ面取りは、研磨材を装填した、あるいはそれなしの様々なブラシ体で、ダイアモンドペーストおよび潤滑剤も付加しながらテストされた。その場合にダイアモンド粒子の粒大きさは、0.25μm〜15μmであった。これらの条件の元で、1から8のテストにおいて、3μ〜30μの間のエッジ面取りを保証することができ、すなわち粒が極めて細かい場合にエッジはほぼパーフェクトに得ることができ、粒が幾分大きい場合に定められた面取りを調節することができる。
【0025】
このブラシ装置によって、エッジ面取りを工具と適用に応じて調節することができる。しかし、大量生産のためには、特に敏感な工具において最大許容されるエッジ面取りのためのパラメータを一度定めて、それに応じたブラシパラメータをすべてのブラシプロセスのために維持することが推奨される。目的は、刃エッジの安定化と研磨欠けの均等化を達成することである。
【0026】
0.3r.p.mの皿の回転速度を有するテストNo.1に基づく処理は、ブラシないし高さ当たり約15秒の処理時間に相当し、その場合に刃エッジにおけるPVD層を損傷することなしに、平滑化を得るのに適しており、かつ経済的であることが証明された。
【0027】
その場合にAlCrNとTiSiN個別層からなる多層の層上で(登録商標Balinit Helica)、次のように粗さ値の改良を得ることができた:
処理前の粗さ値 Ra0.22、Rz4.47、Rp4.07;
処理後の粗さ値 Ra0.22、Rz2.47、Rp1.72
【0028】
その場合に際だったのは、中心粗さ値Raは変わらないが、平均された粗さ深さRと平滑化深さRpは、約50%改良することができたことである。特性数のこの変化は、同時に粗さピークを除去しながら、基本粗さを維持していることを示している。
【0029】
より敏感な工具のためには、F800の粒化を有するテストNo.3に基づくパラメータが推奨される。表面の同一の初期状態において、この種の処理についての粗さ測定は、表2にまとめた結果をもたらした;
【0030】
【表2】

【0031】
然るべき処理によって、新しい工具を使用する場合に発生する作用力を20から50%減少させることができ、それによって工具の進入挙動が著しく改良され、たとえば進入の間のエッジ欠けないし層剥がれおよび同様の望ましくない現象の危険が減少される。
【0032】
図5a、図5bは、2つの、TiTex社の硬い層を有する砲金穿孔機モデルAlpha A3365、d=6.8mm、のトルク推移および軸力推移を、CK45に孔をあける場合において示している。加工パラメータ:切断速度Vc=120m/min、送りf=0.2mm/回転。2つの工具は、Balzers社の陰極火花蒸着設備タイプRCS内で、AlCrNとTiSiN個別層からなる多層の層(登録商標Balinit Helica)で約4μmの全層厚でコーティングされた。次に、工具は他の後処理なしでテストされ、穿孔機の進入深さにわたってトルクMz(左の垂直軸)および軸力Fz(右の垂直軸)の推移が、図5aのように示された。その場合に軸力とトルクは、逆方向の様態を示す。軸力は最初1.700Nmと2.000Nmの非常に高い値から徐々に約1.500Nmの値へ下降し、工具のトルクは16〜18mmの間で3〜9Nmへ上昇し、次に著しく変動しながら再び下降する。それに対して図5bに示すように、コーティング後にテストNo.1に従って650r.p.mにおいて30Nの圧接力でブラッシングされた穿孔機は、作用力の完全に均一な、低い推移を示す。同様な様態が、コーティングされた穿孔機ないしコーティングされてブラッシングされた穿孔機のすべての比較において発見された。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ベルトブラシ装置を示している。
【図2】ラウンドブラシ装置を示している。
【図3】ベルトブラシの線形供給を示している。
【図4】ラウンドブラシの線形供給を示している。
【図5a】トルク測定を示している。
【図5b】トルク測定を示している。
【符号の説明】
【0034】
1 回転皿/ベルト
2 サテライト
3 工具
4 ブラシユニット
5 ホルダ
6 ガス圧ダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
技術的な表面、特にほぼ回転対称の工作物(3)の表面を加工する装置であって、
少なくとも1つの加工ユニット(4)と工作物支持体(1)を有し、該工作物支持体に、駆動装置と、前記工作物支持体上に回転可能に固定された、工作物(3)を加工ユニット(4)へあてがうための少なくとも2つまたはそれより多いホルダ(5)が設けられている、装置において、
加工ユニット(4)が、工作物(3)の表面上にほぼ一定の圧接圧力を形成するための手段(6)を有しており、かつ、
駆動装置が、加工ユニット(4)へ工作物(3)をあてがう時間的な順序と処理長さを定めるように、設計されている、
ことを特徴とする技術的な表面を加工する装置。
【請求項2】
少なくとも1つの加工ユニット(4)が、ブラシユニットまたは研磨ユニット、しかし好ましくはラウンドブラシまたはベルトブラシを有している、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記手段(6)が、少なくとも1つのガス圧ダンパー、ばね手段、弾性的な手段または重り手段と必要な場合にはレバー手段を有している、ことを特徴とする請求項1と2のいずれか1項に記載の装置。
【請求項4】
工作物支持体が、皿状またはベルト状に形成されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
駆動装置が連続的、サイクリックあるいは歩進的に送る駆動装置である、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
ホルダ(5)が、工作物(3)の周面に接する加工ユニット(4)の接線力によって回転可能である、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
ホルダが、別の駆動手段によって回転可能である、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
駆動手段が、歯車とリム、摩擦ホィールと摩擦リムなどを有している、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公開番号】特開2007−190672(P2007−190672A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5948(P2007−5948)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(590000031)オーツェー エルリコン バルツェルス アクチェンゲゼルシャフト (8)
【Fターム(参考)】