説明

ブレーキディスクおよびクラッチディスクの改良またはそれに関連する改良

本発明の炭素繊維強化型セラミック製のブレーキディスクおよびクラッチディスクは、単一の液体溶浸工程により製造された不完全に緻密化された炭素―炭素繊維プリフォームをシリコン処理し、シリコン処理された緻密化されたプリフォームを、例えば化学気相溶浸または液体溶浸による、炭素含浸工程に供することで製造される。本方法は、従来の化学気相溶浸と比べて、実質的に、処理時間およびコストの削減し、その一方で、最適化された構造的特性および摩擦特性、特に高温での安定性を有する非常に効果的な最終製品を生産する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、原動機付きの陸上車両用または航空機用の、ブレーキディスクおよびクラッチディスクの製造方法、および当該製造方法から得られる新規のブレーキディスクおよびクラッチディスクに関する。特に、本発明は、液体含浸技術を用いて、強化炭素繊維(reinforcing carbon fiber)の周囲に炭素マトリックス生成させ、当該炭素マトリックスを溶融シリコンで含浸させ、その後、シリコン処理された製品を炭素含浸(carbon impregnation)工程に供することで得られる炭素繊維強化セラミック材料等を含むブレーキディスクまたはクラッチディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化型セラミック製、特にシリコン処理炭素−炭素繊維複合体製のブレーキディスクの使用において、多くの関心が示されている。なぜならば、このようなディスクには、高い強度、高い稼働温度での優れた物理特性および摩擦特性を維持する能力、従来の金属製ディスクに比べて軽量であること、例えば標準的なキャストディスクに対して50〜70%の軽量化、が可能であるためである。このような軽量化は、性能および燃費性の向上に重要である。なぜならば、車両のバネ下荷重(unsprung weight)を低減することで、車両の路面接地性(road holding)、ハンドリング性(handling)および快適性をも向上できる。同様に、自動車両にとっても、クラッチディスクにおいて、このような軽量・高摩擦性の材料を使用することは有益である。
【0003】
既存の上市されているシリコン処理炭素繊維強化セラミック製のブレーキディスクは主に、強化炭素繊維および炭化性樹脂(carbonisable resin)(例えば、ピッチまたはフェノール樹脂)を、おおよその所望の形状に一体的に熱成形し、得られた成形済のプリフォームを炭化(例えば、不活性雰囲気下または真空下において、約2000℃まで加熱する。)し、必要に応じて黒鉛化(例えば、2000℃以上に加熱する。)する「レジン・チャ―」法(”resin char” method)によって製造されている。次いで、得られたグリーン体(green body)を、適宜成形および/または接合してもよく、さらに、例えば、溶融シリコン槽中への少なくとも部分的な浸漬または、高温等方圧(high temperature and isostatic pressure)下である真空容器内で、過剰のシリコンとともにカプセル封入すること(encapsulation)を含む高温等方圧処理によってシリコン処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レジンチャー法の手順は、比較的、操作しやすいという利点を有するが、多くの欠点が懸念される。上記のように、金型(mould)には、通常ランダムに配向された、一般的には30mm以下、より一般的には25mm以下の平均長を有する短い炭素繊維が充填されている。この繊維は、例えば、樹脂で予め含浸された炭素繊維のマッチ棒状集合体(matchstick-like aggregate)から切り取られているものでよい。代わりに、フェルトのような炭素繊維製布帛から切り取られた乾燥繊維が使用されてもよく、この場合、樹脂は別途、金型に射出される。必然的に、短い炭素繊維のランダムな配向のために、レジン・チャー法を用いて得られる製品の再現性(reproducibility)には限界があるものと評価される。
【0005】
もう一つの欠点は、炭化中において、樹脂が、一部の炭素繊維分から収縮しながら外れて、炭素繊維分が露出してしまう傾向があることである。
このような露出した繊維の結合性(integrity)は、後工程のシリコン処理工程におけるシリコンとの反応により、損なわれる場合がある。
【0006】
また、金型の使用が必要であることは、製品形状の所望に変更するにあたり、実質的に高額な設備の一新が必要となるために、本手順においては実用上の制限が加わる。
本技術分野において、レジン・チャー法の代替方法として化学気相溶浸(chemical vapour infiltration)を使用して、炭素・炭素繊維複合材料を形成しているが、一般的には、化学気相溶浸は、航空機用の炭素―炭素繊維複合物製ブレーキディスクの製造のような高度に特殊化された使用以外では、あまりにも複雑かつ費用がかかるものと考えられている。このようなディスクの製造は、一般的には、例えば、熱分解炭素(pyrolitic carbon)の原料としてメタンを使用した、一連の化学気相溶浸工程に供される初期の炭素繊維プリフォームの生成工程を含む。この一連の工程は、沈着した炭素が強化繊維間の細孔を封止し、炭素吸着(carbon uptake)を防止する傾向にあるため、必要である。初期飽和(initial saturation)は、一般的には、10〜14日後に発生する。すなわち、この時までには、プリフォームが0.9〜1.6g/cm程度の密度を有するが、依然として、ブレーキディスクとして使用するための、十分な強度および結合性を有していない。そのため、部分的に緻密化したプリフォームを炉から取り出し、プリフォーム表面を機械加工して、封止された細孔を再度開放することは慣用されていることであり、その後、再び、化学気相溶浸を実施してもよい。許容可能な密度である約1.7〜1.9g/cmを有するディスクを得るためには、通常、さらに少なくとも一回の機械加工工程および第3の化学気相溶浸段階が必要である。この全加工時間は、一般的には、150日程度である。米国特許6,878,331号では、化学気相溶浸は、所望の密度を達成するまでには、通常3〜5回繰り返さなければならない旨が確認されている。
【0007】
このような方法で得られるディスクは、シリコン処理されていないが、航空機用のブレーキとして十分に機能する。しかしながら、このディスクは、使用時温度(ambient temperature)においては、乏しい摩擦特性を示すので、不定期的な軽いブレーキングを付与するためには使用できない。そのため、陸上車両での使用には不適切である。
【0008】
従来より、シリコン処理が意図され、かつ化学気相溶浸により調製されたディスクであってさえも、プリフォームを形成するために少なくとも2回段階の含浸操作が必要であると考えられている。このように、米国特許6,030,913号において、化学気相溶浸が一加工につき1度だけ使用された場合、沈着した熱分解炭素層(pyrocarbon layer)に微細なクラック(microcraks)が残存し、シリコン処理中に、望ましくないシリコンの浸入(penetration)を許してしまうことが指摘されている。また、この課題を解決するための多段階の含浸操作(multistage infiltration)は、非常に費用がかかる旨が述べられている。
【0009】
米国特許6,110,535号では、化学気相溶浸を用いる緻密化(densitific
ation)により得られる炭素複合材料の多孔質基質(porous substrate)に、溶融シリコン複合物を流入(deliver)させる技術が記載されているが、これは、通常、二段階の緻密化工程の第一段階であり、次いで、レジン・チャー緻密化に供されて、化学気相溶浸後に残存している余剰細孔空間(residual pore space)の細孔内に、コークス粒子(grains of coke)を形成する。
【0010】
さらなる炭素―炭素繊維複合材料を得るための手段は、例えば、WO−A―9964361および米国特許6,756,112号に記載されている湿潤性モノマー含浸工程(wetting monomer infiltration process)である。この工程では、炭素繊維プリフォームは、例えば、ナフタレンのような多核芳香族炭化水素のような1種類以上の液体のモノマーで、好ましくはルイス酸のような重合触媒とともに、含浸される。含浸されたプリフォームは、加熱されて、モノマーの重合化を促進し、その後、得られたポリマーがさらなる加熱により炭化される。
【0011】
この一連の、液体モノマー含浸、重合化および炭化は、通常、数回繰返されて、所望の緻密化の程度を達成する。このように、4〜5日に亘って実施される合計4サイクルが、一般的に採用されて、炭素―炭素繊維複合物に1.8g/cmの程度の密度が付与される。1回のサイクル後の一般的な密度は約1.4g/cmである。この製品は、合計4〜8ヶ月の期間に亘って実施された多段階の化学気相溶浸法によって調製された複合物に、匹敵すると言われている。
【0012】
本出願人による国際特許出願番号PCT/GB/2006/002815では、本出願において参照されるべき内容であるが、本出願人は、極めて効率的にシリコン処理された炭素―炭素繊維複合材料性のブレーキディスクおよびクラッチディスクが、実際に、単一の化学気相溶浸工程による緻密化を経た不完全に緻密化されたプリフォームのシリコン処理によって製造されるという予期しない知見を記載した。そのため、化学気相溶浸工程のプロセス時間を、約150日から、例えば早ければ7日またはそれ以下の日数に低減することが可能である。つまり、このことは、大いに、工程の操作コストを低減し、レジン・チャー法を用いる方法に比べて、コスト面で非常に有利な特性を有するブレーキおよびクラッチディスクの製造を可能にする。この低減された操作コストによって、本製品を、公道走行用(road going)およびレース用の自動車、モーターバイクおよび、小型トラック(vans)、大型トラック(lorries)、バス、長距離バス(coaches)、軍用車両(military vehicle)ならびに、鉄道機関車(railway engine) 、普通客車(coaches)、貨物車(truck)を含めた原動機付き陸上車両への適用を商業的に可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述の国際特許出願に準拠して得られたシリコン処置され、不完全に緻密化されたプリフォームを炭素含浸工程に供した場合に、有利な製品が得られるという知見に基づくものである。
【0014】
このような処理は、特に、航空機用ブレーキディスクの製品寿命(lifetime)および、耐摩耗性(wear resistance)や 摩擦特性(frictional performance)に例示される性能を向上させる点で有利である。このようなブレーキディスクは、着陸時には、時折、シリコンの融点(1410℃)を超える著しい高温動作温度に達する。このような条件下では、シリコン処理された炭素―炭素繊維複合材製のディスク中において、遊離シリコン(free silicon)がディスク表面領域において融解し、反応して、炭化ケイ素(silicon carbide)を形成してしまうか、あるいは薄膜として凝固してしまう。前者の場合、炭化ケイ素の高い研磨性(abrasive nature)によって、共働するブレーキ構成部材(brake component)における摩耗の増加に至る可能性があり、一方、後者の場合、ディスクの摩擦特性については妥協しなければならない可能性がある。
【0015】
シリコン処理された部分的に緻密化されたプリフォームの炭素含浸は、遊離シリコンの反応および/または被膜化、すなわち、ディスク温度が、使用時にシリコンの融点を超える際に、ディスク構造内における遊離シリコンと反応する炭素の蓄積に由来する問題を未然に防ぐ。炭素/シリコンおよび炭素/炭化ケイ素の比率を制御して、硬度(hardness)および耐摩耗性と研磨性との間における好適なバランスを付与することが好ましい。
【0016】
このように、本発明の一面によると、 所望のディスクの寸法と実質的に一致する寸法を有する炭素繊維プリフォームを調製し、当該プリフォームを、単一の液体溶浸工程のみを用いて、炭素で緻密化し、緻密化されたプリフォームを、溶融シリコンとの反応により、シリコン処理し、シリコン処理された緻密化されたプリフォームを炭素含浸工程に供することを含む、炭素繊維強化型セラミックブレーキディスクまたはクラッチディスクの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法の主な利点は、金型の使用を避けることで、炭素繊維プリフォームの形状に、わずかな制限があるだけで、主要設備の入れ替えをする必要がなく、要求に応じて変更でき、そのため製造工程を使用勝手の良いものにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
同様に、使用される炭素繊維の長さについての制限はない。長い繊維は、製品の強度および結合性を向上できることから、プリフォームは、例えば、少なくとも50mm、好ましくは少なくとも、75、100、125、150mmの平均長を有する長い繊維から本質的になることが有利である。理論的考察に拘束されることを望まないが、長い繊維の存在は、前述の米国特許番号6,030,913にて考察された、単一の化学気相溶浸工程により調製された先行技術製品と比べて、本発明の製品では、微小なクラック等の構造的な欠陥がないことを確保するのに役立つ。
【0019】
強化炭素繊維は、実質的に連続的、つまり平均長さが、前記ディスクの外周と内周との間の半径方向距離以上であることが特に好ましい。このような連続的な繊維のプリフォームの特に簡単な調製方法は、炭素繊維製布帛の連続シート材または円筒材、例えば、0度および90度で例示される異なる角度で配置された炭素繊維の交互層(alternating layer)を含む織布または不織布フェルトから切り取られることである。
【0020】
単一の化学気相溶浸工程(single chemical vapour infiltration step)によるプリフォームの緻密化(densification)は、適当な炉において、本質的には公知の手段により実施されてもよく、好ましくは遅延して、加熱コストができるだけ低く維持されることを確実にする。メタン、プロパンまたはブタンのような低分子量の炭化水素またはこれらのガスの混合物を、例えば熱分解炭素源(pyrolytic carbon source)として使用してもよく、窒素のようなキャリアガスとともに使用してもよい。コスト性の理由から、メタンの使用が好ましい。本工程は、1100±100℃で例示される約1100℃の温度、最大21日間、例えば7〜14日間で実施される。この間、プリフォームの密度が、初期の0.3〜0.6g/cmから0.9〜1.6g/cmの範囲の値までに典型的には上昇する。
【0021】
化学気相溶浸中に沈着された炭素マトリックス(carbon matrix)の形態は、適切な、操作温度および操作圧力の制御によって、変更可能であり、このことは、レジン・チャー法の場合では不可能であった方法である。該マトリックスの反応性は、このように改変され、シリコン処理されたマトリックスにおける、相対的な、炭素、シリコン、炭化ケイ素(silicon carbide)の成分量の「微調整(fine tuning)」を可能にし、最終製品の構造的特性および摩擦特性を最適化する。
【0022】
所望の場合、シリコン処理に先立って、部分的に緻密化されたプリフォームが、例えば、約2000℃以上、例えば2400℃までの温度で、例えばアルゴンのような不活性ガスまたは真空の条件で例示されるような非酸化的条件(non-oxidising condition)下で、例えばピーク温度で約96時間の時間の、熱処理によって、グラファイト化されてもよい。
【0023】
シリコン処理は、本技術分野において知られているような適切な手段によって実施され得る。操作性の簡便性から、必要に応じて、グラファイト化された部分的に緻密化されたプリフォームの少なくとも一部が溶融シリコンに浸漬されるディプ工程(dip process)か、あるいは高温等方圧プレス法(hot isotatic pressing procedure)が好ましい。シリコン処理された製品の密度は、例えば、1.9〜2.4g/cmである。
【0024】
この製品は、シリコン処理の前あるいは後の何れかにおいて、所望の最終寸法に機械加工されてもよい。シリコン処理された最終製品よりも、シリコン処理前の中間製品は、硬質ではなく、容易に機械加工できることから、前者が好ましい。
【0025】
シリコン処理された緻密化されたプリフォームの炭素含浸は、単一の、例えば化学気相溶浸または液体溶浸によって実施されることが好ましい。
化学気相溶浸は、プリフォームの緻密化工程の項での内容と同様にして実施されてもよい。
【0026】
化学気相溶浸工程は、本出願において参照される内容であるが、上述のWO-A-9964361および米国特許6,756,112号に記載されているような、湿潤性モノマー(wetting monomer)の含浸法を用いて実施されても良い。
【0027】
使用される湿潤性モノマーは、フルフラールおよび多核芳香族炭化水素を含む。フルフラールおよび多核芳香族炭化水素は、例えば、合計2〜4環が結合したベンゼン環を含むものであり、一部が水素化されてもよく、必要に応じて、1種類以上のC1~4のアルキル(例えば、メチル、エチル)基のような置換基を有する。このような炭化水素の典型的な例は、ナフタレン、メチルナフタレン、テトラヒドロナフタレン、フェナンスレン、アントラセン、およびピレンを含む。ナフタレンの使用は、取り扱いが容易であること、および比較的低コストである理由で有利である。例えば、融点が225度を超えない、好ましくは175度を超えないような、比較的低融点のモノマーは、処理を促進してプリフォームを含浸する点で好ましい。室温(ambient temperature)で液体である1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンのような、部分的に水素化された炭化水素も同様に有利である。
【0028】
含漬(impregnation)は、毛細管引力(capillary attraction)により、所望の量のモノマーが、プリフォームに移行するまで、すなわち取り込まれるまで、液体または溶融状態のモノマー(liquid or molten monomer(s))をディッピング(dipping)または浸漬(immersing)することにより実施される。含浸時間は、2〜10時間、例えば1〜5時間が好ましく、この時間は、プリフォームの寸法およびモノマーの性状や温度などの因子に依存する。
【0029】
含浸モノマー(impregnated monomer)の重合化は、例えば、300〜500℃の範囲の温度まで加熱することによって実施される。この反応時間は、約2〜6時間、例えば、約4時間であることが好ましい。得られたポリマーマトリックス(polymer matrix)は、その後さらに、6〜24時間、例えば10〜18時間に亘って、例えば700〜1400℃の範囲の温度まで加熱することで炭化される。湿潤性モノマーの溶浸工程、すなわち含浸工程、重合工程および炭化工程を含めた工程時間の合計は、有利には約12〜36時間、好ましくは20〜30時間、より好ましくは約24時間である。
【0030】
一方で、プリフォームは、液体状のポリマー(溶融状態のポリマーを含む。)または樹脂に、好ましくは、低分子量のポリマーまたは樹脂(例えば、5,000以下、好ましくは3,000以下または2,500以下)およびそれに相応して低粘度を有するポリマーまたは樹脂に、直接、浸漬され、上述のように加熱によって炭化されてもよい。
【0031】
本発明の方法によって得られる炭素繊維強化型セラミック製ブレーキまたはクラッチは、新規かつ有用な製品であり、本発明そのものの特徴を維持する。従来のレジン・チャー法を使用して得られた製品とは違って、本発明の製品の炭素マトリックスは、強化繊維に特に高水準の密着性(adherence)を示す。そのため、シリコン処理中での、シリコンとの好ましくない相互作用に関して、該繊維は優位に防止され、この製品は、従来技術による製品と比べて、実質的な強度および結合性の向上がみられる。
【0032】
この含浸処理の結果として、最終段階の炭素含浸段階に供されたシリコン処理されたディスクでは、どのようなシリコン成分でも、効果的にディスク中へ固定される。また、シリコンの融点を超える操作温度では、シリコンのディスク表面への移入を制限してもよい。
【0033】
本発明のさらなる特徴によれば、シリコン成分を被覆している含浸された炭素を含むことを特徴とする、シリコン処理された炭素―炭素繊維複合材製のブレーキディスクまたはクラッチディスクが提供される。
【0034】
一方、従来技術であるレジン・チャー法による製品における炭素マトリックスは、大部分が、無定形のガラス状炭素(amorphous glassy carbon)を含むのに対して、本発明の製品におけるマトリックス炭素成分は、比較的、高い規則性があり、一般的には等方性(isotropic)の、粗面薄層(rough laminar)形状あるいは滑面薄層(smooth laminar)形状である。このことは、シリコン処理中において、より均質かつ制御されたシリコンとの相互作用を可能にし、さらにより均一かつ再現性が良い製品の製造も可能にする。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望のディスクの寸法と実質的に一致する寸法を有する炭素繊維プリフォームを調製し、
前記プリフォームを、単一の液体溶浸工程のみを用いて、炭素で緻密化し、
前記緻密化されたプリフォームを、溶融シリコンとの反応により、シリコン処理し、
前記シリコン処理された緻密化されたプリフォームを、炭素含浸工程に供することを含む、炭素繊維強化型セラミックブレーキディスクまたはクラッチディスクの製造方法。
【請求項2】
前記プリフォーム中の炭素繊維の平均長さが、少なくとも50mmである請求項1の方法。
【請求項3】
前記プリフォーム中の炭素繊維の平均長さが、前記ディスクの外周と内周との間の半径方向距離以上である請求項1の方法。
【請求項4】
前記プリフォームが、炭素繊維製布帛の連続シート材または円筒材から切り取られている請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記連続シート材が、不織布フェルトである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記最初のプリフォームが、0.3〜0.6g/cmの密度を有する請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記緻密化されたプリフォームが、0.9〜1.6g/cmの密度を有する請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プリフォームが、合計で最長21日間実施された単一の湿潤モノマー溶浸工程により、緻密化されている請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶浸工程が、合計で7〜14日間実施される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記緻密化されたプリフォームが、溶融シリコンとの反応の前に、所望のディスク寸法に機械加工される請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶融シリコンとの反応が、
緻密化された前記プリフォームを、溶融シリコン槽に、少なくとも部分的に浸漬することで、または
緻密化された前記プリフォームを、高温等方圧下の真空容器内に、過剰のシリコンとともに封入することで、
実施される請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記シリコン処理された緻密化されたプリフォームが、1.9〜2.4g/cmの密度を有する請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記シリコン処理された緻密化されたプリフォームが、所望のディスク寸法に機械加工される請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記シリコン処理された緻密化されたプリフォームが、単一の、化学気相溶浸法または液体溶浸法である炭素含浸工程に供される請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記化学気相溶浸法が、合計で7〜14日間実施される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記液体溶浸法が、合計で12〜36時間実施される湿潤性モノマー含浸法である請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記湿潤性モノマー溶浸法が、合計で約24時間実施される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか一項に記載の方法で得られる炭素繊維強化型セラミックブレーキディスクまたはクラッチディスク。
【請求項19】
シリコン成分を被覆する含浸炭素を含むことを特徴とするシリコン処理された炭素−炭素繊維複合材料製のブレーキディスクまたはクラッチディスク。

【公表番号】特表2010−516981(P2010−516981A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547757(P2009−547757)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000325
【国際公開番号】WO2008/093091
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(508028195)サーフィス トランスフォームズ ピーエルシー (4)
【Fターム(参考)】