説明

ブレーキ制御装置

【課題】 特別な部品を追加することなく、自動ブレーキ制御を実行中にブレーキ操作がなされた場合でも操作フィーリングを向上できるブレーキ制御装置を提供すること。
【解決手段】 ブレーキ操作力の増加を検出する操作力増加検出手段と、ブレーキ液を貯留可能なリザーバ15と、マスタシリンダM/Cとホイルシリンダ5を連通し、ゲートアウト弁1が設けられた第1通路10と、マスタシリンダM/Cとホイルシリンダ5を連通し、ポンプPが設けられた第2通路(吸入通路11及び吐出通路12)と、ホイルシリンダ5とリザーバを連通し、減圧弁8が設けられた減圧通路13と、リザーバとポンプPの吸入側を連通する掻き出し通路14と、第2通路においてマスタシリンダM/CとポンプPの間に設けられたゲートイン弁2と、を有し、操作力の増加が検出されると、ポンプPを駆動し、ゲートアウト弁1を閉じ、ゲートイン弁2及び減圧弁を開くこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作又は車両の走行状態に基づき車両のブレーキ圧を制御するブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者によるブレーキ操作から独立したブレーキ圧の制御(以下、自動ブレーキ制御という。)が可能であり、かつ運転者によるブレーキ操作部材の操作フィーリング(ブレーキペダルの踏み込みフィーリング)を向上するブレーキ制御装置として、特許文献1に開示された装置がある。
【0003】
この装置は、マスタシリンダから吐出されたブレーキ液を吸収可能なリザーバと、このリザーバ内へのブレーキ液の導入を許容・禁止可能なカット弁とを備え、自動ブレーキ制御を実行中にブレーキ操作がなされると、上記カット弁を開状態としてマスタシリンダから吐出されるブレーキ液を上記リザーバに貯留する。これにより無効ストローク(ホイルシリンダ圧を実質的に増加させないブレーキペダルのストローク)を確保し、ペダルストロークに対するホイルシリンダ圧の増加特性を、通常のブレーキ操作時(非自動ブレーキ制御時)の特性に近づけている。これにより、自動ブレーキ制御を実行中にブレーキ操作がなされた場合でも、運転者に違和感を与えないようにして操作フィーリングを向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−159949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記装置では、リザーバやカット弁を追加する必要があるため、システムが複雑化したりユニットが大型化したりするという問題があった。本発明は、上記課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、特別な部品を追加することなく、自動ブレーキ制御を実行中にブレーキ操作がなされた場合でも操作フィーリングを向上できるブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のブレーキ制御装置は、ブレーキ液を貯留可能なリザーバと、ホイルシリンダへ吐出圧を供給するポンプと、マスタシリンダとホイルシリンダを連通し、ゲートアウト弁が設けられた第1通路と、マスタシリンダとホイルシリンダを連通し、ポンプが設けられた第2通路と、ホイルシリンダとリザーバを連通し、減圧弁が設けられた減圧通路と、リザーバとポンプの吸入側を連通する掻き出し通路と、第2通路においてマスタシリンダとポンプの間に設けられたゲートイン弁と、を有し、運転者によるブレーキ操作力の増加が検出されると、ポンプを駆動し、ゲートアウト弁を閉じ、ゲートイン弁及び減圧弁を開くこととした。
【発明の効果】
【0007】
よって、ブレーキ圧を制御中、運転者によりブレーキ操作がなされた場合でも、ポンプによりマスタシリンダからブレーキ液を吸入することで、ブレーキ操作部材の作動が可能となる。したがって、特別な部品を追加することなく、運転者に違和感(石踏み感)を与えることを抑制し、ブレーキ操作フィーリングを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のブレーキ制御装置が適用される液圧ユニット(ブレーキ回路図)である。
【図2】実施例1の自動ブレーキ制御で実行される制御の流れを示す(ブレーキ操作が行われた場合)。
【図3】実施例1の自動ブレーキ制御で実行される制御の流れを示す(ブレーキ操作が行われなかった場合)。
【図4】実施例1で自動ブレーキ制御を実行した場合(ブレーキ操作が行われなかった場合)のタイムチャートである。
【図5】実施例1で自動ブレーキ制御を実行中にブレーキ操作が行われた場合のタイムチャートである。
【図6】実施例1で石踏み防止制御を実行中のブレーキ液の流れを示す。
【図7】実施例1及び比較例で自動ブレーキ制御を実行中にブレーキ操作が行われた場合のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のブレーキ制御装置を実現する形態を、図面に示す実施例に基づき説明する。
【実施例1】
【0010】
(ブレーキ回路の構成)
図1は、本実施例1のブレーキ制御装置が適用される液圧ユニットHUのブレーキ回路図である。液圧ユニットHUは、マスタシリンダM/Cと、各車輪FL〜RRのホイルシリンダ5a〜5dとに接続されている。以下、4輪各々に対応して複数設けられているものについてはa,b,c,dの記号を添えて区別するものとし、aは前左輪FL、bは前右輪FR、cは後左輪RL、dは後右輪RRにそれぞれ対応するものを表すこととする。同様に、各配管系統P,Sに対応して複数設けられているものについてはp,sの記号を添えて区別するものとする。
【0011】
車両のブレーキ配管系統は独立した2つの系統、すなわちプライマリP系統とセカンダリS系統に分かれている。P系統は前左輪FLのホイルシリンダ5aと後右輪RRのホイルシリンダ5dとに接続され、S系統は前右輪FRのホイルシリンダ5bと後左輪RLのホイルシリンダ5cとに接続されており、いわゆるX配管構造となっている。なお、X配管に限らず前後配管等であってもよい。
【0012】
ブレーキペダルBPは、運転者の踏み込みに応じてストローク(変位)するブレーキ操作部材であり、運転者の踏み込み操作力を倍力装置BSへ伝達する。倍力装置BSは、ブレーキペダルBPから伝達される力を増幅して、該増幅した力をマスタシリンダM/Cへ伝える。倍力装置BSの動力源として、例えばエンジンの負圧を利用することができるが、電動モータの動力を利用してもよく、特に限定しない。
【0013】
マスタシリンダM/Cは所謂タンデム型であり、周知のものである。前後に並んだ2つの液圧室は、液圧ユニットHUの外部に設けられたリザーバタンク(以下、外部リザーバRESという。)にそれぞれ接続されてブレーキ液の供給を受ける。一方の液圧室はP系統のブレーキ回路に接続され、他方の液圧室はS系統のブレーキ回路に接続されている。マスタシリンダM/Cは、倍力装置BSから伝達される力に応じた液圧(マスタシリンダ圧)を上記2つの液圧室に発生して各系統のブレーキ回路に供給する。
【0014】
液圧ユニットHU内には、各系統のブレーキ回路毎に、ゲートアウト弁1と、ゲートイン弁2と、増圧制御弁6と、減圧制御弁8と、ポンプPと、内部リザーバ15とが設けられている。以下、P系統を例にとってブレーキ回路の構成を説明する。P系統のブレーキ回路は、マスタシリンダM/Cとホイルシリンダ5を連通する第1通路10pと、第1通路10pとは別に設けられてマスタシリンダM/Cとホイルシリンダ5a,5dを連通する第2通路(吸入通路11p及び吐出通路12p)と、ホイルシリンダ5a,5dと内部リザーバ15pを連通する減圧通路13pと、内部リザーバ15pとポンプPpの吸入側を連通する掻き出し通路14pとを有している。
【0015】
マスタシリンダM/Cには第1通路10pの一端が接続されている。第1通路10pの他端側は2つの通路10a,10dに分岐しており、それぞれ左前輪FLと右後輪RRのホイルシリンダ5a,5dに接続されている。
【0016】
第1通路10pには、ゲートアウト弁1pが設けられている。ゲートアウト弁1pは、コントロールユニットCUからの指令電流に比例したバルブ開度で開閉動作を行う常開の比例電磁弁である。また、ゲートアウト弁1pと並列に、チェック弁(逆止弁)3pが設けられている。マスタシリンダ側を上流、ホイルシリンダ側を下流としたとき、チェック弁3pは、下流から上流へ向かうブレーキ液の流れを防止する。
【0017】
分岐通路10a,10dには、それぞれ増圧制御弁6a,6dが設けられている。増圧制御弁6a,6dは、コントロールユニットCUからの指令電流により2位置に制御され開閉動作を行う常開のオン・オフ電磁弁である。増圧制御弁6aと並列に、チェック弁7aが設けられている。チェック弁7aは、上流から下流へ向かうブレーキ液の流れを防止する。チェック弁7dも同様である。
【0018】
第1通路10pにおいて、マスタシリンダM/Cとゲートアウト弁1pの間には、吸入通路11pの一端が接続されている。吸入通路11pの他端はポンプPpの吸入側に接続されている。吸入通路11pには、ゲートイン弁2pが設けられている。ゲートイン弁2pは、コントロールユニットCUからの指令電流により2位置に制御され開閉動作を行う常閉のオン・オフ電磁弁である。
【0019】
ポンプPpの吐出側には吐出通路12pの一端が接続されている。吐出通路12pは、第1通路10pにおけるゲートアウト弁1pの下流側(かつ増圧制御弁6a,6dの上流側)に合流しており、分岐通路10a,10dを介して(すなわち第1通路10pと通路を共有して)ホイルシリンダ5a,5dに接続されている。また、吐出通路12pは、第1通路10p(ゲートアウト弁1p)を介してマスタシリンダM/Cと連通している。吐出通路12pには、マスタシリンダM/CからポンプPpの吐出側へ向かうブレーキ液の流れを防止するチェック弁4pが設けられている。
【0020】
第1通路10pの下流側の分岐通路10aには、増圧制御弁6aとホイルシリンダ5aとの間に、減圧通路13aの一端が接続されている。同様に、分岐通路10dには、増圧制御弁6dとホイルシリンダ5dとの間に、減圧通路13dの一端が接続されている。減圧通路13a,13dの他端側は互いに合流して1つの減圧通路13pを形成し、内部リザーバ15pに接続されている。このように減圧通路13p(13a,13d)は、ホイルシリンダ5a,5dと内部リザーバ15pとを連通している。
【0021】
減圧通路13a,13dには、それぞれ減圧制御弁8a,8dが設けられている。減圧制御弁8a,8dは、コントロールユニットCUからの指令電流に比例したバルブ開度で開閉動作を行う常閉の比例電磁弁である。
【0022】
内部リザーバ15pには、減圧通路13pと通路の一部を共有して、掻き出し通路14pの一端が接続されている。掻き出し通路14pの他端は、吸入通路11pにおけるゲートイン弁2pとポンプPpとの間に接続されている。このように掻き出し通路14pは、減圧通路13p及び吸入通路11pと通路の一部を共有することで、内部リザーバ15pとポンプPpの吸入側とを連通している。言い換えれば、内部リザーバ15pの内部に貯留されたブレーキ液をポンプPpにより掻き出すための掻き出し通路14pが、吸入通路11pとは別に設けられている。
【0023】
掻き出し通路14pには、チェック弁9pが設けられている。チェック弁9pは、吸入通路11p(マスタシリンダM/C)の側から内部リザーバ15pへ向かうブレーキ液の流れを防止する。
【0024】
以上のように構成されたP系統のブレーキ回路において、ゲートアウト弁1pは、第1通路10pにおけるマスタシリンダM/Cと増圧制御弁6a,6dの間を断続(連通・遮断)するとともに、ポンプPpの吐出側とマスタシリンダM/Cの間を断続する。ゲートアウト弁1pと並列のチェック弁3pは、ポンプPpの吐出側(かつゲートアウト弁1pの下流側)の回路からマスタシリンダM/Cへ向かうブレーキ液の流れを防止する。ゲートアウト弁1p及びゲートイン弁2pの閉弁時、運転者によりブレーキペダルBPが踏み込まれて「マスタシリンダ圧>(ポンプPpの吐出側の回路圧)」となった場合、チェック弁3pが開弁することで、マスタシリンダ圧をポンプPpの吐出側の上記回路へ伝達可能としている。
【0025】
ゲートイン弁2pは、マスタシリンダM/CとポンプPpの吸入側の間(吸入通路11p)を断続する。増圧制御弁6a,6dは、開弁によりマスタシリンダ圧又はポンプ圧をホイルシリンダ5a,5dに供給し、閉弁により上記供給を遮断する。チェック弁7aは、特にアンチスキッド制御(ABS制御)における増圧制御弁6aの閉弁時に運転者によりブレーキペダルBPが踏み戻されて「(前左輪FLのホイルシリンダ圧)>マスタシリンダ圧」となった場合、この踏み戻し操作に対応して開弁し、ホイルシリンダ圧をマスタシリンダM/Cに抜き減圧可能とする。チェック弁7dも同様である。
【0026】
減圧制御弁8a,8dは、開弁によりそれぞれホイルシリンダ5a,5dのブレーキ液を内部リザーバ15pに供給してホイルシリンダ圧を抜き減圧し、閉弁により上記供給を遮断する。内部リザーバ15pは、液圧ユニットHUの内部に設けられたリザーバであり、減圧制御弁8a,8dを介してホイルシリンダ5a,5d等から送られるブレーキ液を貯留する。
【0027】
S系統のブレーキ回路も、上記P系統と同様に構成されている。尚、P系統の第1通路10p(ゲートアウト弁1pの上流)ないし吸入通路11p(ゲートイン弁2pの上流)には、マスタシリンダM/Cが発生する液圧(マスタシリンダ圧)を検出するマスタシリンダ圧センサ20が設けられている。マスタシリンダ圧の検出値は、運転者によるブレーキペダルBPの操作力を表す。
【0028】
ポンプPp,Psは、P系統及びS系統にそれぞれ備えられ、同一の駆動源(モータM)によって回転駆動される外接型のギヤポンプである。尚、トロコイド等の内接型のギヤポンプを用いてもよいし、ベーンポンプやプランジャポンプ等でもよい。
【0029】
ポンプPp,Psは、各系統において、マスタシリンダM/C以外の液圧源として働き、例えば、内部リザーバ15から掻き出し通路14を介してブレーキ液を掻き出し、吐出通路12及び第1通路10を介してマスタシリンダM/Cへブレーキ液を戻す。また、マスタシリンダM/Cから吸入通路11を介してブレーキ液を吸入し、吐出通路11を介してホイルシリンダ5の側へブレーキ液を供給する。
【0030】
モータMは、コントロールユニットCUからの指令電流により回転数を制御されるサーボモータであり、液圧ユニットHUに一体に取り付けられている。モータMとして、例えばDCブラシレスの電動モータを用いることができるが、ACモータやブラシ付モータを用いてもよく、特に限定しない。
【0031】
ホイルシリンダ圧を制御しない通常ブレーキ時には、各アクチュエータ(ゲートアウト弁1等の電磁弁及びモータM)を非通電状態とし、両系統のゲートイン弁2及び減圧制御弁8を閉弁するとともにゲートアウト弁1及び増圧制御弁6を開弁し、モータMをオフ状態とする。この状態(以下、通常ブレーキ状態という。)で、運転者のブレーキペダル操作により発生したマスタシリンダ圧を全車輪のホイルシリンダ5へ供給し、運転者の要求に応じた制動力を発生させる。
【0032】
コントロールユニットCUは、マスタシリンダ圧センサ20から送られる検出値、及び車両側から送られる走行状態に関する情報の入力を受け、内蔵されるプログラムに基づき、液圧ユニットHUの各アクチュエータを制御する。これにより、アダプティブ・クルーズ・コントロール(以下、ACCという。)や車両挙動制御(以下、VDCという。)等における自動ブレーキ制御やアンチスキッド制御(以下、ABS制御という。)を実行可能である。
【0033】
ここでACCとは、適切な車間距離を確保しつつ先行車に追従走行するよう自動的に加減速する制御である。また、VDCとは、車両姿勢を制御して走行安定性を保つ制御であり、具体的には、車両の実ヨーレイトをヨーレイトセンサ等により検出し、また、舵角センサ等を用いて目標ヨーレイトを求め、この目標ヨーレイトと実ヨーレイトとが一致するように特定の車輪のみに制動力を付与する。また、ABS制御とは車輪のスリップ率が所望の値となるようにホイルシリンダ圧の増減圧制御を行って車輪ロックを防止する制御である。
【0034】
(ABS制御)
ABS制御時、例えば前左輪FLのロック傾向が検出されてホイルシリンダ5aの制御時には、基本的にはゲートアウト弁1pを開きかつゲートイン弁2pを閉じた状態で、増圧制御弁6aを閉弁し、減圧制御弁8aを開弁することで、ホイルシリンダ5aのブレーキ液を内部リザーバ15pへ排出して減圧を行う。前左輪FLがロック傾向から回復すると、減圧制御弁8aを閉弁してホイルシリンダ圧を保持する。また、増圧制御弁6aを開弁して適宜増圧を行う。また、減圧開始とともにポンプPpを作動させ、減圧時に内部リザーバ15pに逃がしたブレーキ液をリザーバ15pから掻き出してマスタシリンダM/C側に戻す。
【0035】
一方、ABS制御を行わないS系統では、ポンプPsが作動する点を除けば通常ブレーキ状態となる。内部リザーバ15s内にブレーキ液が貯留しておらず、ゲートイン弁2sも閉じているため、ポンプPsは空回りしてブレーキ液を吸入・吐出しない。
【0036】
(自動ブレーキ制御)
図2及び図3は、ACC等の自動ブレーキ制御で各輪のホイルシリンダ圧を制御する場合に、本実施例1のコントロールユニットCUで実行される制御の流れを示す。
【0037】
図2のステップS10では、車両から送られる走行状態に関する情報等に基づき、ホイルシリンダ圧を制御するか否かを判断する。ホイルシリンダ圧を制御する場合、各輪のホイルシリンダ5a〜5d毎に、必要な制動力に応じたホイルシリンダ圧目標値(指令値)の入力を受けてS11へ移行する。ホイルシリンダ圧を制御しない場合、S17へ移行する。ホイルシリンダ圧目標値は、例えばACCでは(車間距離の目標値と検出値との偏差から算出される)自車の目標減速度から決定される。
【0038】
S11では、マスタシリンダ圧センサ20の検出値に基づき、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んだか否かを検出する。マスタシリンダ圧検出値が所定値(ゼロに近い所定の正値)を越えた場合、ブレーキペダルBPが踏み込まれたと判断し、S13へ移行する。検出値が上記所定値以下である(ゼロに近い)場合、ブレーキペダルBPが踏み込まれていないと判断し、S12へ移行する。
【0039】
(自動ブレーキ制御中にブレーキ操作が行われなかった場合)
以下、S11でNOと判断された場合、すなわち自動ブレーキ制御中にブレーキ操作が行われなかった場合に、S12で実行される制御の内容を、図3に基づき説明する。
S1では、(当該ホイルシリンダ5の)ホイルシリンダ圧を増圧するか否かを判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧の目標値と推定値を比較して行う。尚、推定値の代わりに、ホイルシリンダ圧センサを設けてホイルシリンダ圧の実値を検出することとしてもよい。増圧する場合、S2へ移行し、増圧しない場合、S4へ移行する。
【0040】
S2では、(当該ホイルシリンダ5が属する系統の)ゲートイン弁2を開き、ゲートアウト弁1を閉じ、(当該ホイルシリンダ5に対応する)増圧制御弁6を開いたままとし、減圧制御弁8の開度を比例制御する。また、モータをONし、ポンプPを駆動する。これにより、ポンプ圧が増圧制御弁6を介してホイルシリンダ5に供給され、ホイルシリンダ圧が増圧される。増圧量は減圧制御弁8の比例制御により調整される。その後、S3へ移行する。
尚、減圧制御弁8を比例制御する際、増圧開始直後に一度、大きな電流を与えて完全に開いた状態とする。その後、減圧制御弁8が中間開度となるまで電流値を下げていく。
【0041】
S3では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか否かを判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧の推定値を目標値と比較して行う。目標値に到達した場合、S16へ移行する。到達していない場合、S2へ戻り、引き続きホイルシリンダ圧の増圧を行う。
【0042】
S4では、ホイルシリンダ圧を減圧するか否かを判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧の目標値と推定値を比較して行う。減圧する場合、S5へ移行し、減圧しない場合、S7へ移行する。
【0043】
S5では、ゲートイン弁2を閉じ、ゲートアウト弁1の開度を比例制御し、増圧制御弁6を開いたままとし、減圧制御弁を閉じる。また、モータをONし、ポンプPを駆動する。これにより、ホイルシリンダ5の内部のブレーキ液がゲートアウト弁1(第1通路10)を介して外部リザーバRESへ滑らかに抜かれ、ホイルシリンダ圧が減圧される。減圧量はゲートアウト弁1の比例制御により調整される。また、内部リザーバ15に溜まっているブレーキ液がポンプPにより掻き出され、ゲートアウト弁1(第1通路10)を介して外部リザーバRESに戻される。その後、S6へ移行する。
【0044】
S6では、S3と同様、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか否かを判断する。目標値に到達した場合、S16へ移行する。到達していない場合、S5へ戻り、引き続きホイルシリンダ圧の減圧を行う。
【0045】
S7では、ホイルシリンダ圧を増圧も減圧もせず、保持する。ゲートイン弁2を閉じ、ゲートアウト弁1を閉じ、増圧制御弁6を開いたままとし、減圧制御弁8の開度を比例制御する。また、モータMをONし、ポンプPを駆動する。減圧制御弁8を比例制御することで、減圧通路13が連通され、ブレーキ液が減圧制御弁8を通って漏れ出す。また、ポンプPが作動しているため、ブレーキ液は、「(内部リザーバ15→)ポンプP→増圧制御弁6→減圧制御弁8(→内部リザーバ15)→ポンプP」と循環する。このため、ホイルシリンダ5へ出入りするブレーキ液量はほとんど変わらず、ホイルシリンダ圧が目標値に保持される。その後、S16へ移行する。
【0046】
(自動ブレーキ制御中にブレーキ操作が行われた場合)
次に、自動ブレーキ制御中にブレーキ操作が行われた場合の制御の流れについて説明する。図2のS13以降のステップは、自動ブレーキ制御中、すなわちS11→S12→S16→S11の流れによりホイルシリンダ圧を制御している間、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んだときに実行される制御の流れを示す。
【0047】
S13では、マスタシリンダ圧センサ20の検出値に基づき、マスタシリンダ圧が増加中であるか否かを判断する。増加中である場合、ブレーキ操作力が増加しているとして、S14へ移行する。増加中でない、すなわちマスタシリンダ圧が保持され、または減少中である場合、ブレーキ操作力が増加していないとして、S18へ移行する。
【0048】
本制御フローにおいて、S13を最初に実行した後(すなわち運転者によりブレーキペダルBPが踏み込まれた後)、S11でNOと判断される(すなわちブレーキペダルBPが踏み込まれなくなる)までの間、ホイルシリンダ圧の目標値は、他の制御フローにより次のように決定される。すなわち、マスタシリンダ圧の検出値が自動ブレーキ制御におけるホイルシリンダ圧の目標値以下であるときは、この自動ブレーキ制御において設定されたホイルシリンダ圧目標値が維持される。一方、マスタシリンダ圧検出値が自動ブレーキ制御におけるホイルシリンダ圧目標値よりも高いときは、マスタシリンダ圧検出値に相当するホイルシリンダ圧目標値が設定される。
【0049】
(操作力増加中の制御)
S14では、石踏み防止制御を行う。すなわち、(当該ホイルシリンダ5が属する系統の)ゲートイン弁2を開き(ゲートイン弁2の開度をデューティ制御し)、ゲートアウト弁1を閉じ、(当該ホイルシリンダ5に対応する)増圧制御弁6を開いたままとし、減圧制御弁8の開度を比例制御する。また、モータMをONし、ポンプPを駆動する。
【0050】
ポンプPが作動しているため、マスタシリンダM/Cから吸入通路11を介してブレーキ液がポンプPに吸入され、吐出通路12へ吐出される。減圧制御弁8の開度を比例制御により調整することで、吐出通路12へ供給されたブレーキ液のうち、ホイルシリンダ圧目標値を達成するために必要なブレーキ液量がホイルシリンダ5へ供給されるとともに、不必要なブレーキ液量が減圧通路13を介して内部リザーバ15へ漏らされる。このような漏らし制御により、ホイルシリンダ圧を調整しつつ、マスタシリンダM/Cから送られた余分なブレーキ液を内部リザーバ15に貯留する。その後、S15へ移行する。
【0051】
S15では、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか否かを判断する。この判断は、ホイルシリンダ圧の推定値を目標値と比較して行う。目標値に到達した場合、S16へ移行する。到達していない場合、S14へ戻り、引き続き石踏み防止制御を行う。
【0052】
S16では、車両から送られる走行状態に関する情報等に基づき、ホイルシリンダ圧の制御を終了するか否かを判断する。終了する場合、S17へ移行する。引き続きホイルシリンダ圧を制御する場合、S11へ戻る。
【0053】
S17では、自動ブレーキ制御終了のための処理を行う。すなわち、ゲートイン弁2を閉じ、ゲートアウト弁1を開き、増圧制御弁6を開いたままとし、減圧制御弁8を閉じ、モータMをOFFとして、通常ブレーキ状態とする。これによりマスタシリンダM/Cとホイルシリンダ5の間(第1通路10)が連通し、マスタシリンダ圧をホイルシリンダ5に直接供給可能な状態となり、運転者のブレーキ操作によりホイルシリンダ圧が増圧されるようになる。
【0054】
(操作力非増加中の制御)
S18では、S1と同様、ホイルシリンダ圧を増圧するか否かを判断する。増圧する場合、S19へ移行し、増圧しない場合、S21へ移行する。
【0055】
S19では、ゲートイン弁2を開き、ゲートアウト弁1を閉じ、増圧制御弁6を開いたままとし、減圧制御弁8の開度を比例制御する。また、モータMをONし、ポンプPを駆動する。これにより、ホイルシリンダ圧を増圧する。ポンプPが作動しているため、マスタシリンダM/Cからブレーキ液がポンプPに吸入され、吐出通路12へ吐出される。吐出通路12へ供給されたブレーキ液は、必要に応じてホイルシリンダ5へ供給されるとともに、残りのブレーキ液が減圧制御弁8を介して内部リザーバ15へ漏らされる。その後、S20へ移行する。
【0056】
S20では、S15と同様、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか否かを判断する。目標値に到達した場合、S16へ移行する。到達していない場合、S19へ戻り、引き続き増圧を行う。
【0057】
S21では、S4と同様、ホイルシリンダ圧を減圧するか否かを判断する。減圧する場合、S22へ移行し、減圧しない場合、S24へ移行する。
【0058】
S22では、S5と異なる処理を行い、ホイルシリンダ圧を減圧する。すなわち、ゲートイン弁2を閉じ、ゲートアウト弁1を閉じ、増圧制御弁6を開いたままとし、減圧制御弁8の開度を比例制御する。また、モータMをONし、ポンプPを駆動する。減圧制御弁8を比例制御する(開度を大きくする)ことにより、ホイルシリンダ5のブレーキ液が減圧制御弁8を介して内部リザーバ15へ抜かれ、ホイルシリンダ圧が減圧される。また、ポンプPが作動しているため、ブレーキ液は、「(内部リザーバ15→)ポンプP→増圧制御弁6→減圧制御弁8(→内部リザーバ15)→ポンプP」と循環しつつ、内部リザーバ15にブレーキ液量が貯留する。その後、S23へ移行する。
【0059】
S23では、S15と同様、ホイルシリンダ圧が目標値に到達したか否かを判断する。目標値に到達した場合、S16へ移行する。到達していない場合、S22へ戻り、引き続き減圧を行う。
【0060】
S24では、S7と同様の処理を行い、ホイルシリンダ圧を保持する。その後、S16へ移行する。
【0061】
次に、本実施例1のブレーキ制御装置の作用を説明する。
【0062】
(ブレーキ操作が行われなかった場合のタイムチャート)
図4は、図2及び図3の制御フローに従って自動ブレーキ制御を実行した場合(制御中にブレーキ操作が行われなかった場合)のタイムチャートであり、各弁及びモータM(ポンプP)の作動状態と内部リザーバ15の液量及びホイルシリンダ圧(実値)の時間変化を示す。ブレーキ操作が行われないため、ブレーキペダルBPのストローク(以下、ペダルストロークという。)はゼロであり、マスタシリンダ圧は発生しない。以下、ACCを実行する場合、すなわちP系統及びS系統の全輪で同様のホイルシリンダ圧制御を実行する場合を例にとり、前左輪FL(P系統)についてのみ説明する。
【0063】
制御が開始される時刻t1までは、通常ブレーキ状態(S17)であり、かつマスタシリンダ圧は発生していないため、ホイルシリンダ5aの液圧(以下、ホイルシリンダ圧という。)はゼロである。また、モータはOFFとされポンプPpは作動しておらず、内部リザーバ15pに貯留する液量(以下、リザーバ液量という。)はゼロである。
【0064】
時刻t1で、車両から送られる走行状態に関する情報等に基づき、ACCが開始される。ACC中は、ホイルシリンダ圧目標値(図4の一点鎖線)の入力を逐次受けて、モータMをONしてポンプPpを作動させるとともに、増圧制御弁6aを全開状態に維持する。
【0065】
t1で、ホイルシリンダ5aの増圧を開始し、ホイルシリンダ圧が目標値に達するt2まで、増圧を行う(S2,S3)。ホイルシリンダ5aの増圧中は、その系統(P系統)のゲートイン弁2pを開弁し、ゲートアウト弁1pを閉弁する。減圧制御弁8aの開度は、増圧開始直後のt1に、大きな電流を与えて一度全開とされた後、比例制御され、電流値を下げることで徐々に中間開度まで絞られる。
【0066】
このとき、ポンプPpによりマスタシリンダM/C(に接続された外部リザーバRES)から吸入通路11pを介してブレーキ液が吸入され、吐出通路12aへ所定のポンプ圧が供給される。これにより、ポンプPpの吐出圧が増圧制御弁6a(吐出通路12p,10a)を介してホイルシリンダ5aに供給され、ホイルシリンダ圧が増圧される。このとき、ホイルシリンダ圧を目標値に近づけるように、減圧制御弁8aの開度が比例制御される。減圧制御弁8aの比例制御により、ブレーキ液が減圧通路13a,13pを通って内部リザーバ15pへ漏れ出し、リザーバ液量が僅かに増加する。
【0067】
尚、減圧制御弁8aを上記のように一度全開にしてから比例制御を開始するのは、減圧制御弁8aのばね(電磁力に抗して弁体を閉弁方向に常時付勢するリターンスプリング)を一旦縮めてから戻す(伸ばす)ほうが中間開度を保ちやすく、弁開度の制御がより正確になるからである。また、減圧制御弁8aはモータMに比べて指令電流に対する応答が速いため、一度完全に開いた後に中間開度にしたとしても、モータ回転初期におけるホイルシリンダ圧の低下(ホイルシリンダ5aから減圧通路13aへのブレーキ液の漏れ)は発生しにくいからである。
【0068】
t2で、ホイルシリンダ圧が目標値に達するため、以後、ホイルシリンダ圧を保持する(S7)。ホイルシリンダ5aの液圧保持中は、その系統(P系統)のゲートイン弁2p及びゲートアウト弁1pを閉じ、減圧制御弁8aの開度を比例制御(中間開度に維持)する。「(内部リザーバ15p→)ポンプPp→増圧制御弁6a→減圧制御弁8a(→内部リザーバ15p)→ポンプPp」という閉通路が形成され、ブレーキ液は上記閉通路内を循環するため、ホイルシリンダ5aへはブレーキ液が給排されず、内部リザーバ15pにはブレーキ液が貯留しない。よって、ホイルシリンダ圧が目標値に保持されるとともに、リザーバ液量は変わらない。
【0069】
t3で、ホイルシリンダ圧目標値がゼロに設定され、減圧開始が判断される。t3以後、ホイルシリンダ圧が目標値に達するt4まで、ホイルシリンダ5aの減圧を行う(S5,S6)。減圧制御弁8aを閉弁し、その系統(P系統)のゲートアウト弁1pの開度を比例制御する(徐々に大きくする)ことで、ホイルシリンダ5a及びポンプPpの吐出側とマスタシリンダM/Cとを連通する。これによりホイルシリンダ5aから外部リザーバRESへブレーキ液が戻され、ホイルシリンダ圧が減圧される。また、ゲートイン弁2pを閉弁し、ポンプPpを駆動することで、内部リザーバ15からブレーキ液が掻き出され、外部リザーバRESへブレーキ液が戻される。よってリザーバ液量が減少する。
【0070】
t4で、ホイルシリンダ圧が目標値(ゼロ)まで減圧され、リザーバ液量がゼロまで減少する。また、ゲートアウト弁1pが全開状態となる。またt4で、車両から送られる走行状態に関する情報等に基づき、ACCを終了する。以後、通常ブレーキ状態(S17)に戻る。
【0071】
(ブレーキ操作が行われた場合のタイムチャート)
図5は、自動ブレーキ制御中にブレーキ操作が行なわれた場合に、図2及び図3の制御フローに従って制御を実行したときの、図4と同様のタイムチャートであり、ペダルストロークとマスタシリンダ圧(検出値)の変化を合わせて示す。ACC(ホイルシリンダ圧保持)の実行中にブレーキ操作が行われた場合を例にとり、前左輪FL(P系統)についてのみ説明する。
【0072】
ブレーキ操作が行われるt21までは図4と同様である。t2以後、t21まで、ホイルシリンダ圧が保持される(S7)。すなわち、「(内部リザーバ15p→)ポンプPp→増圧制御弁6a→減圧制御弁8a(→内部リザーバ15p)→ポンプPp」という閉通路内をブレーキ液が循環し、ホイルシリンダ圧が目標値に保持されている。説明の便宜上、このときのリザーバ液量はゼロとみなす。尚、図4と同様、t3まで、ACCにおけるホイルシリンダ圧目標値(以下、保持圧Pw0という。)は一定であるものと仮定する。
【0073】
t21で、運転者によりブレーキペダルBPが踏み込まれる。ブレーキペダルBPの踏み込みによりマスタシリンダ圧が発生し、t21の直後にマスタシリンダ圧の検出値が(ゼロに近い正値に設定された)所定値を上回る。よって、t21以後、ペダル踏み込みが終了する(マスタシリンダ圧検出値が上記所定値以下となる)t26まで、図2のS13以降の制御フローを実行する。
【0074】
t21からt23まで、ブレーキペダルBPの踏み増しが行われる。これにより、t21からt23まで、マスタシリンダ圧(検出値)が増加する。よって、石踏み防止制御を実行するとともに(S14)、ホイルシリンダ5aの液圧(ホイルシリンダ圧)が目標値(保持圧Pw0)になるように制御する(S15)。具体的には、その系統(P系統)のゲートアウト弁1pを閉じたままゲートイン弁2pの開度をデューティ制御し、減圧制御弁8aの開度を比例制御する。
【0075】
図6は、石踏み防止制御を実行中、油通路におけるブレーキ液の流れを模式的に示す。吸入通路11pを介してポンプPpにマスタシリンダM/Cからの液圧が加わるが、ポンプPpが作動しているため、ブレーキ液がポンプPpにより吸入され、吐出通路12pへ供給される。吐出通路12pへ供給されたブレーキ液は、開いた減圧制御弁8aを通って内部リザーバ15pの側へ送られる。
【0076】
尚、図6において、ゲートイン弁2p及び減圧制御弁8aは、便宜上、閉状態を示しているが、石踏み防止制御の実行中は通電されて開状態となる。同様に、ゲートアウト弁1pは、図6で開状態を示しているが、石踏み防止制御の実行中は通電されて閉状態となる。また、石踏み防止制御は、全輪ないし一輪のみ、P,S両系統又は片系統のみ、のいずれでも実行可能である。
【0077】
t21からt22まで、マスタシリンダ圧(検出値)は、保持圧Pw0以下である。このため、ホイルシリンダ圧目標値として、保持圧Pw0を維持する。そして、減圧制御弁8aの開度を比例制御により増加させ、マスタシリンダM/Cから新たに吸入した分のブレーキ液を内部リザーバ15pへ漏らし(供給し)、ホイルシリンダ5aへは供給しないように、減圧制御弁8aの開度を調整する。これにより、ホイルシリンダ圧が目標値(保持圧Pw0)に維持されるとともに、マスタシリンダM/Cから送られた液量分だけブレーキ液が内部リザーバ15pに溜まり、リザーバ液量が増加する。
【0078】
t22以降、マスタシリンダ圧(検出値)が、保持圧Pw0よりも高くなるため、ホイルシリンダ圧がマスタシリンダ圧に相当する値となるように、マスタシリンダ圧の上昇に合わせてホイルシリンダ圧目標値を(再)設定する。そして、減圧制御弁8aの開度を比例制御により減少させ、マスタシリンダM/Cから新たに吸入した分のブレーキ液をホイルシリンダ5aへ供給し、内部リザーバ15pには漏らさない(供給しない)ように、減圧制御弁8aの開度を調整する。これにより、ホイルシリンダ圧がマスタシリンダ圧相当に増圧されるとともに、リザーバ液量が一定となる。
【0079】
以上のように、運転者によりブレーキペダルBPが踏み増されるt21からt23までの間、マスタシリンダM/Cからのブレーキ液は内部リザーバ15p又はホイルシリンダ5aに供給される。このため、図5に示すように、t21からt23までの間、運転者のブレーキ操作力(ペダル踏力)に応じてペダルストロークが増加する。すなわち、ホイルシリンダ圧を目標値に維持・制御しつつ、ペダル踏み増し開始直後からペダル踏力に応じたペダルストロークの増加が可能となっており、これにより操作フィーリングが良好に確保されている。
【0080】
尚、t21〜t23で、マスタシリンダ圧が増加している間、ゲートイン弁2の開度をデューティ制御する(S14)。これにより、ゲートイン弁2pの下流側とポンプPpの吸入側とを接続する吸入通路11p内の圧力の過度な上昇を抑制し、ポンプPpに適度なブレーキ液量を供給する。よって、マスタシリンダM/Cからのブレーキ液を上記閉通路内に適当な速度で供給でき、当該閉通路内をブレーキ液が円滑に流通することが可能となるため、ホイルシリンダ圧を目標値に維持・制御しつつ操作フィーリングを良好に確保するという上記作用を向上できる。
【0081】
t23で、運転者によるブレーキペダルBPの踏み増しが終了する。すなわち、踏み込み力(ペダル踏力)が一定となり、増加しなくなる。これに伴い、マスタシリンダ圧(検出値)も一定となる。よって、石踏み防止制御が中止され、所定のホイルシリンダ圧制御が実行される(S18〜S24)。
【0082】
t23以後、ブレーキペダルBPの踏み戻しが開始されるt24まで、マスタシリンダ圧が一定であり、かつ保持圧Pw0よりも高いため、ホイルシリンダ圧目標値はマスタシリンダ圧に相当する一定値Pw1に設定され、ホイルシリンダ圧は上記マスタシリンダ圧相当値Pw1に保持される(S24)。具体的には、図4のt2〜t3と同様、ゲートイン弁2p及びゲートアウト弁1pを閉じ、減圧制御弁8aの開度を比例制御(所定開度に維持)する。ブレーキ液は上記閉通路内を循環するため、ホイルシリンダ5aへはブレーキ液が供給されず、内部リザーバ15pにはブレーキ液が貯留しない。よって、ホイルシリンダ圧が目標値Pw1に保持され、リザーバ液量は変わらない。また、ペダルストロークは一定に保持される。
【0083】
t24で、運転者によるブレーキペダルBPの踏み戻しが開始され、t26まで、ブレーキペダルBPが踏み戻される。すなわち、t24からt26まで、踏み込み力(ペダル踏力)が減少し、これによりマスタシリンダ圧(検出値)が減少する。よって、t24からt26までの間、所定のホイルシリンダ圧制御が実行される(S18〜S24)。尚、外部リザーバRESとマスタシリンダM/Cの液圧室との連通を調節するマスタシリンダM/Cの周知のカップシール構造により、ペダルストロークの減少及びマスタシリンダ圧の減圧は円滑になされる。
【0084】
t24からt25まで、マスタシリンダ圧(検出値)は保持圧Pw0よりも高い。このため、ホイルシリンダ圧がマスタシリンダ圧相当値となるように、マスタシリンダ圧の下降に合わせてホイルシリンダ圧目標値を(再)設定する。よって、ホイルシリンダ圧は、下降する上記目標値と一致するように減圧される(S22,S23)。具体的には、ゲートイン弁2及びゲートアウト弁1を閉じたまま、減圧制御弁8aの開度を比例制御により増加させる。これによりブレーキ液が上記閉通路を循環するとともに、ホイルシリンダ5aのブレーキ液が減圧制御弁8aを通って内部リザーバ15pへ抜かれ、リザーバ液量が増大するとともに、ホイルシリンダ圧が減圧される。
【0085】
t25で、マスタシリンダ圧(検出値)=ホイルシリンダ圧が、保持圧Pw0まで低下する。t25からt26まで、マスタシリンダ圧(検出値)は保持圧Pw0以下であるため、ホイルシリンダ圧目標値として保持圧Pw0が維持され、ホイルシリンダ圧は保持圧Pw0に保たれる(S24)。ブレーキ液が上記閉通路を循環するとともに、ホイルシリンダ5a及び内部リザーバ15pへブレーキ液が給排されない。
【0086】
t26で、運転者によるブレーキペダルBPの踏み戻しが終了し、ペダルストローク及びマスタシリンダ圧がゼロまで減少する。t26以後、運転者のブレーキペダル操作がないため、ACCにおけるホイルシリンダ圧制御を続行する(S12)。具体的には、ホイルシリンダ圧をACCにおける目標値(保持圧Pw0)に保持する(S7)。t3〜t4は図4と同様である(S5,S17)。
【0087】
(比較例との対比における実施例1の作用効果)
比較例として、例えば本実施例1と同様の液圧ユニットHU(図1)を用いて自動ブレーキ制御を実行可能であり、かつ本実施例1のような石踏み防止制御を行わない装置を考える。比較例では、自動ブレーキ制御を実行中(例えばゲートアウト弁1を閉じてホイルシリンダ圧を減圧又は保持中)、運転者によりブレーキペダルBPが踏み込まれた場合、ゲートアウト弁1と並列に設けられたチェック弁3を介して、マスタシリンダM/Cからのブレーキ液をホイルシリンダ5へ供給する。チェック弁3は、マスタシリンダ圧がホイルシリンダ圧を上回ったときに開弁し、ブレーキ液の流通を可能にする。これにより、ブレーキペダルBPの変位(ストローク)や、マスタシリンダ圧の上昇に応じたホイルシリンダ圧の増加を、一定程度可能にする。しかし、この装置は、以下に示すように、運転者のブレーキ操作フィーリングを十分に向上できない。
【0088】
図7は、図5と同様、自動ブレーキ制御(ACCにおけるホイルシリンダ圧保持)中にブレーキ操作が行なわれた場合のタイムチャート(ホイルシリンダ圧、マスタシリンダ圧、及びペダルストロークの変化のみ示す。)であり、ペダルストロークの変化につき、本実施例1と比較例を対比して示す。
【0089】
図7に示すように、比較例では、運転者のブレーキペダルBPの踏み込みによってマスタシリンダ圧が発生するt21以後、マスタシリンダ圧がホイルシリンダ圧(ACCにおける目標値=保持圧Pw0)まで上昇するt22までの間、マスタシリンダM/Cからチェック弁3を介してブレーキ液をホイルシリンダ5へ供給することができないため、ブレーキペダルBPのストロークが不可能である。ペダルストロークが可能となる時刻t22は、運転者によるペダル踏み込み開始時刻t21よりも遅れる。
【0090】
よって、操作力(マスタシリンダ圧)が増加し始めてからペダルストロークが可能となるまでの間、ブレーキ操作初期において「硬さ」の感覚(ブレーキペダルの石踏み感)が生じる。また、このように遅れる分だけ、同じホイルシリンダ圧を発生させるにしても、そのためのペダルストロークが小さくなる。このように、比較例では、運転者の意図通りにブレーキペダルBPが作動(ストローク)しないため、運転者に違和感を与えるおそれがあり、ブレーキ操作フィーリングを十分に向上できない。
【0091】
尚、比較例において、自動ブレーキ制御中にブレーキペダルBPの踏み増しを検出したとき、(ゲートアウト弁1を閉じ、かつマスタシリンダM/CとポンプPの吸入側とを連通しない状態で)減圧制御弁8を開くことで、ブレーキペダルBPのストロークを促進することも考えられる。すなわち、減圧制御弁8を開けば、ホイルシリンダ5内のブレーキ液が内部リザーバ15に抜かれ、ホイルシリンダ圧(チェック弁3の下流の液圧)が下降する。このため、マスタシリンダ圧(チェック弁3の上流の液圧)がホイルシリンダ圧を上回りやすくなる。すなわち、マスタシリンダM/Cから送出されるブレーキ液がチェック弁3を通って移動しやすくなり、ブレーキペダルBPのストロークが可能になる時期が早まる。
【0092】
しかし、この場合でも、マスタシリンダ圧がホイルシリンダ圧を上回るまではチェック弁3は開かず、よってブレーキペダルBPもストローク不可能であることに変わりはない。よって、ブレーキペダルBPの踏み込み初期の「硬さ」(石踏み感)が生じるという課題は解消されない。また、ホイルシリンダ圧が制御目標(保持圧Pw0)よりも一旦低下する必要があるため、ホイルシリンダ圧制御とブレーキ操作フィーリングの向上とがトレードオフの関係になり、これらを最適に両立できないおそれがある。
【0093】
これに対し、本実施例1では、運転者のブレーキ操作に応じて、マスタシリンダM/Cからのブレーキ液をポンプPにより吸入する構成であるため、マスタシリンダ圧の上昇(ブレーキペダルBPの踏み増し)開始時刻t21と略同時にペダルストロークが可能となる。すなわち、マスタシリンダ圧がホイルシリンダ圧(保持圧Pw0)まで上昇するt22の前であって、ブレーキ操作力(マスタシリンダ圧)が増加し始めるt21の直後から、ペダルストロークが増加し始める。よって、運転者に石踏み感を与えることを防止できる。
【0094】
また、ペダルストロークの開始がブレーキ操作(ペダル踏み込み)の開始に対して遅れないため、同じホイルシリンダ圧を発生させるにしても、そのためのペダルストロークが小さくなることがない。言い換えると、ペダルストロークとホイルシリンダ圧との関係が通常ブレーキ時と同様の特性となる。よって、石踏み感の抑制と併せて、通常ブレーキ時と同様のペダルストロークを実現でき、運転者の意図通りの良好なペダルフィーリングを発生することが可能である。
【0095】
また、ポンプPにより吸入されるマスタシリンダM/Cからのブレーキ液は、減圧通路13等を介して内部リザーバ15に貯留可能であるため、ホイルシリンダ圧の制御が大きく影響を受けることはない。例えばホイルシリンダ圧保持中に本実施例1の石踏み防止制御を実行しても、マスタシリンダM/Cからのブレーキ液を全て内部リザーバ15に貯留すれば、ホイルシリンダ5へ供給されるブレーキ液量は不変となるため、ホイルシリンダ圧が変動することはない。すなわち、石踏み防止制御(ブレーキ操作フィーリングの向上)とホイルシリンダ圧制御とはトレードオフの関係にならず、これらを両立できる。
【0096】
以上のように、本実施例1では、自動ブレーキ制御中にブレーキ操作がなされた場合、マスタシリンダM/Cからのブレーキ液を内部リザーバ15で吸収する構成としており、内部リザーバ15に、いわばストロークシミュレータの機能を発揮させている。ここでストロークシミュレータとは、マスタシリンダM/Cとホイルシリンダ5を連通する通路が遮断されているときでもブレーキ操作に応じたストロークや反力をブレーキ操作部材(ブレーキペダルBP)に発生させるための部材であり、例えばリザーバのように、ばねの力を受けながら移動可能なピストン等から構成される。また、ストロークシミュレータへの入力通路には、ストロークシミュレータとマスタシリンダM/Cとの連通を遮断可能なカット弁を設けるのが通常である。
【0097】
本実施例1の装置は、自動ブレーキ制御中にブレーキ操作がなされた場合、液圧ユニットに従来から備えられている内部リザーバ15が、いわばストロークシミュレータの機能をも果たす。このため、ストロークシミュレータ(新たなリザーバ)やカット弁等の部品を追加することなく、(マスタシリンダM/Cとホイルシリンダ5との連通を遮断して)自動ブレーキ制御を継続しつつ、適正な操作フィーリングを発生させることができる。言い換えると、ストロークシミュレータ付のブレーキ制御装置と同様、ブレーキ操作フィーリングを確保しつつ自動ブレーキ制御(例えばハイブリッド車における回生協調制御等)を実行可能であり、かつストロークシミュレータ等の追加部品が不要であるため、システムの簡素化や装置の小型化が可能である。
【0098】
その一方で、本実施例1では倍力装置BSを備えているため、自動ブレーキ制御系(ポンプP等)が失陥したときでも、運転者のブレーキ操作に応じた所望のホイルシリンダ圧(制動力)を発生させることが可能であり、ブレーキ制御装置の信頼性が高い。
【0099】
[実施例1の効果]
以下、本実施例1のブレーキ制御装置の効果を列挙する。
(1)本実施例1の装置は、運転者によるブレーキ操作部材の操作に応じて液圧(マスタシリンダ圧)を発生するマスタシリンダM/Cと車輪FL〜RRに設けられブレーキ液圧を発生するホイルシリンダ5との間に設けられた液圧ユニットHUと、運転者がブレーキ操作部材を操作する力の増加を検出する操作力増加検出手段と、を備え、液圧ユニットHUは、ブレーキ液を貯留可能なリザーバ(内部リザーバ15)と、ホイルシリンダ5へ吐出圧を供給するポンプPと、マスタシリンダM/Cとホイルシリンダ5を連通し、ゲートアウト弁1が設けられた第1通路10と、マスタシリンダM/Cとホイルシリンダ5を連通し、ポンプPが設けられた第2通路(吸入通路11及び吐出通路12)と、ホイルシリンダ5とリザーバ(内部リザーバ15)を連通し、減圧弁(減圧制御弁8)が設けられた減圧通路13と、リザーバ(内部リザーバ15)とポンプPの吸入側を連通する掻き出し通路14と、第2通路においてマスタシリンダM/CとポンプPの間に設けられたゲートイン弁2と、ポンプP及び各弁1,2,8の作動を制御するコントロールユニットCUと、を有し、コントロールユニットCUは、操作力増加検出手段により操作力の増加が検出されると、ポンプPを駆動し、ゲートアウト弁1を閉じ、ゲートイン弁2及び減圧弁を開くこととした。
【0100】
具体的には、ブレーキ操作部材はブレーキペダルBPであり、操作力増加検出手段は運転者によるブレーキペダルBPの踏み増しを検出する踏み増し検出手段(マスタシリンダ圧センサ20)であり、液圧ユニットHUは、ホイルシリンダ5を自動加圧可能なポンプPと、ブレーキ液を貯留可能なリザーバ(内部リザーバ15)と、マスタシリンダM/Cとホイルシリンダ5を連通する第1通路10と、マスタシリンダM/CとポンプPの吸入側を連通する吸入通路11と、ポンプPの吐出側とホイルシリンダ5を連通する吐出通路12と、ホイルシリンダ5とリザーバ(内部リザーバ15)を連通する減圧通路13と、リザーバ(内部リザーバ15)とポンプPの吸入側を連通する掻き出し通路14と、第1通路10上に配置されたゲートアウト弁1と、吸入通路11上に配置されたゲートイン弁2と、減圧通路13上に配置された減圧弁(減圧制御弁8)と、ポンプP及び各弁1,2,8を制御することでホイルシリンダ5の液圧を制御するコントロールユニットCUと、を有し、コントロールユニットCUは、ホイルシリンダ5の液圧を制御中、踏み増し検出手段によりブレーキペダルBPの踏み増しが検出されると、ポンプPを駆動し、ゲートアウト弁1を閉じ、ゲートイン弁2を開き、減圧弁の開度を制御して、ホイルシリンダ5の液圧を目標値に制御するとともに、マスタシリンダM/Cからのブレーキ液をリザーバ(内部リザーバ15)に貯留することとした。
【0101】
よって、ホイルシリンダ圧の制御中に運転者によりブレーキ操作がなされた場合でも、通常ブレーキ時と同様のペダルストロークを実現できる。したがって、運転者に石踏み感を与えることを防止でき、ブレーキ操作フィーリングを向上することができる。また、ストロークシミュレータ等の追加部品が不要であり、装置の小型化を図ることが可能である。
【0102】
(2)コントロールユニットCUは、操作力増加検出手段により操作力の増加が検出されると(具体的には踏み増し検出手段によりブレーキペダルBPの踏み増しが検出されると)、ゲートイン弁2の開度を制御してポンプ吸入側の液圧を制御することとした。
【0103】
よって、ポンプPによるマスタシリンダM/Cからのブレーキ液の吸入が円滑になされるため、上記(1)の効果をより向上できる。
【0104】
(3)コントロールユニットCUは、ブレーキ液圧の保持制御中(ホイルシリンダ圧を目標値に保持中)、ゲートアウト弁1及びゲートイン弁2を閉じ、ポンプPを駆動し、ポンプ吐出側の第2通路(吐出通路12)、減圧通路13、及び掻き出し通路14で形成される閉通路内でブレーキ液を還流させることとした。
【0105】
よって、保持制御中に運転者がブレーキペダルBPを踏み込んだ場合でも、上記閉通路内でブレーキ液を還流させるとともに、マスタシリンダM/Cから吐出されるブレーキ液をポンプPにより吸入し、吸入した分のブレーキ液量を内部リザーバ15に逃がすことで、ブレーキ液圧を所望の値に保持しつつ、ブレーキペダルBPを石踏み感なくストロークさせることができる。
【0106】
(4)マスタシリンダM/Cが発生する液圧は、ブレーキ操作部材(ブレーキペダルBP)に連結された倍力装置BSにより昇圧されることとした。
【0107】
よって、失陥時におけるブレーキ制御装置の信頼性を向上できる。
【0108】
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0109】
例えば、実施例1では、運転者のブレーキ操作力の増加を検出する操作力増加検出手段としてマスタシリンダ圧センサを用いたが、ペダル踏力センサ等を用いてもよい。
【0110】
実施例1では、ブレーキ操作力(マスタシリンダ圧)の増加が検出されると直ちに石踏み防止制御を行うこととしたが、増加検出後、石踏み感を特に感じさせない所定の時間経過後に石踏み防止制御を開始することとしてもよい。
【0111】
実施例1では、自動ブレーキ制御中にブレーキ操作がなされた場合にのみ石踏み防止制御を実行することとしたが、この場合に限らず、自動ブレーキ制御を実行していない通常ブレーキ時に、運転者のブレーキ操作に応じて、石踏み防止制御を実行することとしてもよい。この場合、ストロークシミュレータ等の追加部品なしに、操作フィーリングを確保しつつホイルシリンダ圧を自由に調整できるため、例えば回生制動力とホイルシリンダの液圧制動力との間での協調制御を実行可能となる。
【0112】
実施例1では倍力装置BSを備えることとしたが、倍力装置を省略して、通常ブレーキ時であっても、(検出した)ブレーキ操作力に応じた所望のホイルシリンダ圧を、ポンプ等により発生させることとしてもよい。この場合、石踏み防止制御を実行することで適当な操作フィーリングを確保できる。
【0113】
実施例1では、ゲートアウト弁1及び減圧制御弁8に比例制御弁を用いたが、構成がより簡便なオン・オフ制御弁を用いてデューティ制御することとしてもよい。また、実施例1では、ゲートイン弁2及び増圧制御弁6にオン・オフ制御弁を用いたが、制御精度がより良い比例制御弁を用いることも可能である。
【0114】
実施例1では、ポンプの駆動源として、制御性に優れるサーボモータを用いたが、内燃機関等の駆動源を用いてもよい。
【0115】
実施例1では、モータMをオン・オフ制御し、かつ減圧制御弁8を比例制御することを前提として、モータMをオンしたまま減圧制御弁8の開度(漏れ量)を比例制御することで、ホイルシリンダへ供給し又はホイルシリンダから排出するブレーキ液量を調整することとしたが、減圧制御弁8を所定開度に固定したままモータMの回転数(ポンプ吐出量)を比例制御することでホイルシリンダへの給排液量を調整することとしてもよい。
【0116】
実施例1では、(自動ブレーキ制御中にブレーキ操作がない場合、)ゲートアウト弁1の開度を比例制御することでホイルシリンダ圧の減圧量を調整することとしたが、(自動ブレーキ制御中にブレーキ操作があった場合と同様、)減圧制御弁8の開度を比例制御することでホイルシリンダ圧の減圧量を調整することとしてもよい。
【0117】
実施例1では、4輪の車両に本発明のブレーキ制御装置を適用することとしたが、2輪の車両に適用することとしてもよい。例えば、図1の液圧ユニットHUの一方の配管系統と同様のブレーキ回路構成を備えた自動二輪車や、図1の液圧ユニットHUの各系統において各1つの輪を有するようなブレーキ回路構成を備えた自動二輪車であって、自動ブレーキ制御等を実行可能なものに対しても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 ゲートアウト弁
2 ゲートイン弁
5 ホイルシリンダ
8 減圧制御弁(減圧弁)
10 第1通路
11 吸入通路(第2通路)
12 吐出通路(第2通路)
13 減圧通路
14 掻き出し通路
15 内部リザーバ(リザーバ)
20 マスタシリンダ圧センサ(操作力増加検出手段、踏み増し検出手段)
BP ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)
M/C マスタシリンダ
FL〜RR 車輪
HU 液圧ユニット
P ポンプ
CU コントロールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によるブレーキ操作部材の操作に応じて液圧を発生するマスタシリンダと車輪に設けられブレーキ液圧を発生するホイルシリンダとの間に設けられた液圧ユニットと、
運転者が前記ブレーキ操作部材を操作する力の増加を検出する操作力増加検出手段と、を備え、
前記液圧ユニットは、
ブレーキ液を貯留可能なリザーバと、
前記ホイルシリンダへ吐出圧を供給するポンプと、
前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダを連通し、ゲートアウト弁が設けられた第1通路と、
前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダを連通し、前記ポンプが設けられた第2通路と、
前記ホイルシリンダと前記リザーバを連通し、減圧弁が設けられた減圧通路と、
前記リザーバと前記ポンプの吸入側を連通する掻き出し通路と、
前記第2通路において前記マスタシリンダと前記ポンプの間に設けられたゲートイン弁と、
前記ポンプ及び前記各弁の作動を制御するコントロールユニットと、を有し、
前記コントロールユニットは、前記操作力増加検出手段により操作力の増加が検出されると、前記ポンプを駆動し、前記ゲートアウト弁を閉じ、前記ゲートイン弁及び前記減圧弁を開く
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記操作力増加検出手段により操作力の増加が検出されると、前記ゲートイン弁の開度を制御して前記ポンプの吸入側の液圧を制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、ブレーキ液圧の保持制御中、前記ゲートアウト弁及び前記ゲートイン弁を閉じ、前記ポンプを駆動し、前記ポンプの吐出側の前記第2通路、前記減圧通路、及び前記掻き出し通路で形成される閉通路内でブレーキ液を還流させることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のブレーキ制御装置において、
前記マスタシリンダが発生する液圧は、前記ブレーキ操作部材に連結された倍力装置により昇圧されることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項5】
運転者によるブレーキペダルの操作に応じてブレーキ圧を発生するマスタシリンダと車輪に設けられたホイルシリンダとの間に設けられた液圧ユニットと、
運転者による前記ブレーキペダルの踏み増しを検出する踏み増し検出手段と、を備え、
前記液圧ユニットは、
前記ホイルシリンダを自動加圧可能なポンプと、
ブレーキ液を貯留可能なリザーバと、
前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダを連通する第1通路と、
前記マスタシリンダと前記ポンプの吸入側を連通する吸入通路と、
前記ポンプの吐出側と前記ホイルシリンダを連通する吐出通路と、
前記ホイルシリンダと前記リザーバを連通する減圧通路と、
前記リザーバと前記ポンプの吸入側を連通する掻き出し通路と、
前記第1通路上に配置されたゲートアウト弁と、
前記吸入通路上に配置されたゲートイン弁と、
前記減圧通路上に配置された減圧弁と、
前記ポンプ及び前記各弁を制御することで前記ホイルシリンダの液圧を制御するコントロールユニットと、を有し、
前記コントロールユニットは、前記ホイルシリンダの液圧を制御中、前記踏み増し検出手段により前記ブレーキペダルの踏み増しが検出されると、前記ポンプを駆動し、前記ゲートアウト弁を閉じ、前記ゲートイン弁を開き、前記減圧弁の開度を制御して、前記ホイルシリンダの液圧を目標値に制御するとともに、前記マスタシリンダからのブレーキ液を前記リザーバに貯留する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記踏み増し検出手段により前記ブレーキペダルの踏み増しが検出されると、前記ゲートイン弁の開度を制御して前記ポンプの吸入側の液圧を制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記ホイルシリンダの液圧を目標値に保持する制御中、前記ゲートアウト弁及び前記ゲートイン弁を閉じ、前記ポンプを駆動し、前記吐出通路、前記減圧通路、及び前記掻き出し通路で形成される閉通路内でブレーキ液を還流させることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載のブレーキ制御装置において、
前記マスタシリンダが発生する液圧は、前記ブレーキペダルに連結された倍力装置により昇圧されることを特徴とするブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−184573(P2010−184573A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29541(P2009−29541)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】