説明

ブレーキ制御装置

【課題】ホイールシリンダに作動液を供給するためのモータを効率よく駆動させ、制動に用いる電力の消費を抑えることができるブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】液圧回路を介したホイールシリンダへのブレーキ液の供給によりホイールシリンダに液圧を供給し、当該液圧により車輪に制動力を付与するブレーキ制御装置において、液圧源は、液圧回路中に設けられ、モータの回転数に応じてホイールシリンダに液圧を供給する。液圧調整弁は、通電制御により開度が調節されて、ホイールシリンダの液圧を調整する。制御部は、モータの回転数と液圧調整弁の開度を制御することで車輪に付与する制動力を制御する。その制御部は、所定車速以下である場合に、モータを停止しつつ液圧調整弁の開度を調節して車輪に制動力を付与する制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられるブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液圧回路を介したホイールシリンダへのブレーキ液の供給をアクチュエータにより電子制御して、各ホイールシリンダに供給する液圧を制御する車両用ブレーキ制御装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1および特許文献2に記載の車両用ブレーキ制御装置は、モータにより駆動されるポンプとリニア弁との間にホイールシリンダが配置され、モータの回転数とリニア弁への通電量によりホイールシリンダ圧が制御される。そして、当該車両用ブレーキ制御装置は、制動時において、ホイールシリンダ圧を一定に保つ場合においても、リニア弁からある程度ブレーキ液漏れする状態で使用し、モータも常に回転させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−216772号公報
【特許文献2】特開2007−216765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
制動中にモータを常に回転させ、リニア弁を常に開弁しているのは、ホイールシリンダ圧が保持されるたびにモータを停止すると、モータを再駆動するときに作動液が脈動するおそれがあるためである。しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の技術において、ホイールシリンダ圧を保持する場合に、モータを常に回転させると、モータを回転させるための電力がかかる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ホイールシリンダに作動液を供給するためのモータを効率よく駆動させ、作動液の脈動を抑えつつ制動に用いる電力の消費を抑えることができるブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、液圧回路を介したホイールシリンダへのブレーキ液の供給によりホイールシリンダに液圧を供給し、当該液圧により車輪に制動力を付与するブレーキ制御装置であって、液圧回路中に設けられ、モータの回転数に応じてホイールシリンダに液圧を供給する液圧源と、通電制御により開度が調節されて、ホイールシリンダの液圧を調整する液圧調整弁と、モータの回転数と液圧調整弁の開度を制御することで車輪に付与する制動力を制御する制御部と、を備える。制御部は、所定車速以下である場合に、モータを停止しつつ液圧調整弁の開度を調節して車輪に制動力を付与する制御を実行する。
【0008】
この態様によると、所定車速以下の場合に、モータを停止しつつ車輪に制動力を付与する制御を実行することができ、モータを効率よく駆動させて渋滞時および車両停止時の制動に用いるエネルギーを低減することができる。
【0009】
制御部は、所定車速以下である場合に、モータを停止しつつ液圧調整弁を閉弁状態にして車輪に付与する制動力を保持する制御を実行してもよい。これにより、制動力を保持する時に、省エネルギーを実現することができる。
【0010】
制御部は、所定車速以下である場合に、モータを停止しつつ液圧調整弁を開弁状態にして車輪に付与する制動力を減圧する制御を実行してもよい。これにより、制動力を減圧する時に、省エネルギーを実現することができる。
【0011】
制御部は、所定車速以下である場合にモータを駆動してホイールシリンダの液圧を増圧する制御を実行するときに、モータの回転数を制限してもよい。これにより、制動中のモータの停止を遅らせ、モータの駆動および停止の切り替えの頻度を低減できる。
【0012】
制御部は、車輪に制動力を付与しつつモータを停止するとき、ホイールシリンダの実液圧をホイールシリンダの目標液圧より大きくし、モータを再び駆動し始める前に液圧調整弁を開弁状態にしてもよい。これにより、モータを停止した状態から駆動する場合に発生する液圧脈動を緩和することができる。
【0013】
制御部は、車両制動の制御モードを決定する制御モード決定部を備え、制御モード決定部により決定された制御モードに応じて車輪に付与する制動力を制御してもよい。これにより、状況に応じて制御モードを決定でき、制御モードに応じた制動制御を実行できる。
【0014】
モータを停止しつつ液圧調整弁の開度を調節して車輪に制動力を付与する制御は、省電力制御モードにおける制御であって、制御部は、省電力制御モードにおいて、モータを停止または駆動し、液圧調整弁の開度を調節して車輪に制動力を付与してもよい。制御モード決定部は、所定車速以下である場合に、所定の制動時間以上続けて車輪に制動力が付与されていれば、制御モードを省電力制御モードに決定してもよい。これにより、渋滞時や車両停止時等に、モータを停止しつつ液圧調整弁の開度を調節して車輪に制動力を付与する制御を実行することができる。
【0015】
制御モード決定部は、所定車速以下である場合に、ホイールシリンダの目標液圧からホイールシリンダの実液圧を引いた差圧が所定圧以下であれば、制御モードを省電力制御モードに決定してもよい。これにより、目標液圧に対して十分に増圧された後、モータを停止しつつ液圧調整弁の開度を調節して車輪に制動力を付与する制御を実行することができる。
【0016】
制御モード決定部は、所定車速以下であっても、車輪に続けて付与された制動力の制動時間が所定の制動時間より小さく、または、ホイールシリンダの目標液圧からホイールシリンダの実液圧を引いた差圧が所定圧より大きければ、モータの回転数を制限して車輪に制動力を付与する低回転数制御モードに決定してもよい。これにより、渋滞時であっても増圧が必要な場合や、十分に増圧されていても制動力のかけ始めである場合に、低回転数制御モードに移行することができ、モータの駆動および停止の切り替えの頻度を低減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ホイールシリンダに作動液を供給するためのモータを効率よく駆動させ、作動液の脈動を抑えつつ制動に用いる電力の消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るブレーキ制御装置の概略構成図である。
【図2】実施形態に係るブレーキECUの機能構成を示す図である。
【図3】実施形態に係る車両制動の制御モード決定処理を示すフローチャートである。
【図4】実施形態に係る省電力制御モードの制動制御処理を示すフローチャートである。
【図5】実施形態に係る車両制動の制御モード決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、実施形態に係るブレーキ制御装置100の概略構成図である。本図では右前輪−左後輪、左前輪−右後輪の各配管系統を備えるX配管の液圧回路を構成する車両に実施形態のブレーキ制御装置100を適用した例について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0020】
図1に示すように、ブレーキ制御装置100は、ブレーキペダル1、ストロークセンサ2、マスタシリンダ3、ストローク制御弁30、ストロークシミュレータ4、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5、ホイールシリンダ6FL、6FR、6RL、6RR(以下、総称する場合は、「ホイールシリンダ6」という)を備える。また、ブレーキ制御装置100は、ブレーキ制御装置100の各部の動作を制御する制御部としてのブレーキECU200を備えている。ブレーキ制御装置100は、液圧回路を介したホイールシリンダ6へのブレーキ液の供給によりホイールシリンダ6に液圧を供給し、当該液圧により車輪に制動力を付与する。なお、ブレーキECU200には車速センサ40が接続されている。
【0021】
ドライバによってブレーキペダル1が踏み込まれると、ブレーキペダル1の操作量としてのペダルストロークがストロークセンサ2に入力され、ペダルストロークに応じた検出信号がストロークセンサ2から出力される。この検出信号はブレーキECU200に入力され、ブレーキECU200でブレーキペダル1のペダルストロークが検出される。なお、ここではブレーキ操作部材の操作量を検出するための操作量センサとしてストロークセンサ2を例に挙げているが、ブレーキペダル1に加えられる踏力を検知する踏力センサ等であってもよい。
【0022】
ブレーキペダル1には、ペダルストロークをマスタシリンダ3に伝達するプッシュロッド等が接続されており、このプッシュロッド等が押されることでマスタシリンダ3に備えられているプライマリ室3aおよびセカンダリ室3bにマスタシリンダ圧が発生させられるようになっている。
【0023】
マスタシリンダ3には、プライマリ室3aとセカンダリ室3bを構成するプライマリピストン3cおよびセカンダリピストン3dが備えられている。プライマリピストン3cおよびセカンダリピストン3dは、スプリング3eの弾性力を受けることで、ブレーキペダル1が踏み込まれていないときには各ピストン3c、3dが押圧されてブレーキペダル1を初期位置側に戻るように構成されている。
【0024】
マスタシリンダ3のプライマリ室3aとセカンダリ室3bには、それぞれブレーキ液圧制御用アクチュエータ5に向けて延びる管路B、管路Aが連結されている。
【0025】
また、マスタシリンダ3には、リザーバタンク3fが備えられている。リザーバタンク3fは、ブレーキペダル1が初期位置のときに、プライマリ室3aおよびセカンダリ室3bのそれぞれと図示しない通路を介して接続されるもので、マスタシリンダ3内にブレーキ液を供給したり、マスタシリンダ3内の余剰ブレーキ液を貯留する。リザーバタンク3fには、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5に向けて延びる管路C、管路Dが連結されている。
【0026】
ストロークシミュレータ4は、管路Aにつながる管路Eに接続されており、セカンダリ室3b内のブレーキ液を収容する役割を果たす。管路Eには、管路Eの連通・遮断状態を制御できる常閉型の二位置弁により構成されたストローク制御弁30が備えられ、ストローク制御弁30により、ストロークシミュレータ4へのブレーキ液の流動が制御できるように構成されている。
【0027】
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5には、マスタシリンダ3のセカンダリ室3bと前輪FRに対応するホイールシリンダ6FRを接続するように、管路Aに連結された管路Fが備えられている。管路Fには、遮断弁36が備えられている。遮断弁36は、非通電時には開状態(連通状態)、通電時には閉状態(遮断状態)となる二位置弁であり、遮断弁36によって管路Fの連通・遮断状態が制御され、これにより管路A、Fを介したホイールシリンダ6FRへのブレーキ液の供給が制御される。
【0028】
また、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5には、マスタシリンダ3のプライマリ室3aと前輪FLに対応するホイールシリンダ6FLを接続するように、管路Bに連結された管路Gが備えられている。管路Gには、遮断弁37が備えられている。遮断弁37は、非通電時には開状態、通電時には閉状態となる二位置弁であり、遮断弁37によって管路Gの連通・遮断状態が制御され、これにより管路B、Gを介したホイールシリンダ6FLへのブレーキ液の供給が制御される。
【0029】
また、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5には、リザーバタンク3fから延設された管路Cに接続された管路Hと、管路Dに接続された管路Iが設けられている。管路Hは、管路H1、H2という2本の管路に分岐して、それぞれホイールシリンダ6FR、6RLに接続されている。また、管路Iは、管路I3、I4という2本の管路に分岐して、それぞれホイールシリンダ6FL、6RRに接続されている。ホイールシリンダ6RLおよびホイールシリンダ6RRは、それぞれ後輪RL、後輪RRに対応している。
【0030】
各管路H1、H2、I3、I4には、それぞれ1つずつポンプ7、8、9、10が備えられている。各ポンプ7〜10は、例えば静寂性に優れたトロコイドポンプにより構成されている。ポンプ7〜10のうち、2つのポンプ7およびポンプ8は、第1モータ11によって駆動され、2つのポンプ9およびポンプ10は、第2モータ12によって駆動される。実施形態では、4つのポンプ7〜10が液圧源として機能する。各ポンプ7〜10は、液圧回路中に設けられ、接続された第1モータ11または第2モータ12(以下、総称して「モータ」という場合がある)の回転数に応じてホイールシリンダにブレーキ液を供給する。すなわち、2つのポンプが1つのモータの駆動により作動され、2つのポンプのそれぞれには1つのホイールシリンダが接続されている。
【0031】
また、ポンプ7〜10のそれぞれに、並列的に管路J1、J2、J3、J4が備えられている。ポンプ7に対して並列的に接続された管路J1には、直列的に接続された連通弁38と液圧調整弁32が備えられている。連通弁38および液圧調整弁32は、連通弁38がポンプ7の吸入ポート側(管路J1におけるブレーキ液流動方向の下流側)に、液圧調整弁32がポンプ7の吐出ポート側(管路J1におけるブレーキ液流動方向の上流側)にそれぞれ位置するように配置されている。つまり、連通弁38によってリザーバタンク3fと液圧調整弁32との間の連通・遮断を制御できる構成とされている。連通弁38は、非通電時には閉状態、通電時には開状態となる二位置弁であり、液圧調整弁32は、非通電時には開状態、通電時には閉状態で、通電制御により弁の開度が調整される常開型のリニア弁である。
【0032】
ここで、液圧調整弁32には以下に示す力が作用する。液圧調整弁32のリニアソレノイドへの通電電流に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、液圧調整弁32の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とし、ソレノイドの摺動に対する摩擦力F4とすると、F1=F2+F3+F4という関係が成立して、液圧調整弁32の開度は、{(F2+F3+F4)−F1}の値に依存する。つまり、電磁駆動力F1が大きくなるにつれて、弁の開度が小さくなる。
【0033】
次に、液圧調整弁32には以下に示す閉弁電流特性がある。閉弁電流とは、弁を開いた状態から閉じるときの弁への通電電流値をいう。閉弁電流特性とは、閉弁電流とホイールシリンダ圧の関係を示す特性をいい、閉弁電流特性は、閉弁電流がホイールシリンダ圧に対してリニアに比例する一次関数である。液圧調整弁32の作動液は、ホイールシリンダ6FRから下流側の連通弁38方向へ排出される。常開型のリニア弁において、液圧調整弁32の通電電流が増加されるにつれて弁の開度が小さくなり、液圧調整弁32の流量は減少する。そして、通電電流が閉弁電流に達したときに液圧調整弁32は閉弁し、液圧調整弁32の流量はゼロとなる。なお、液圧調整弁32の流量とは、液圧調整弁32を通るブレーキ液の流量をいう。
【0034】
ポンプ8に対して並列的に接続された管路J2には、液圧調整弁33が備えられている。液圧調整弁33は、液圧調整弁32と同様にリニア弁である。常開型のリニア弁である液圧調整弁33〜35も液圧調整弁32と同様に機能する。なお、以下において液圧調整弁32〜35を総称して、単に「液圧調整弁」という場合がある。
【0035】
ポンプ9に対して並列的に接続された管路J3には、直列的に接続された連通弁39と液圧調整弁35が備えられている。連通弁39および液圧調整弁35は、連通弁39がポンプ9の吸入ポート側(管路J3におけるブレーキ液流動方向の下流側)に、液圧調整弁35がポンプ9の吐出ポート側(管路J3におけるブレーキ液流動方向の上流側)にそれぞれ位置するように配置されている。つまり、連通弁39によってリザーバタンク3fと液圧調整弁35との間の連通・遮断を制御できる構成とされている。連通弁39は、非通電時には閉状態、通電時には開状態となる二位置弁であり、液圧調整弁35は、非通電時には開状態、通電時には閉状態で、通電制御により弁の開度が調整されるリニア弁である。液圧調整弁35は、通電制御により開度が調整されて、ホイールシリンダ6FLのブレーキ液量を調整する。
【0036】
ポンプ10に対して並列的に接続された管路J4には、液圧調整弁34が備えられている。液圧調整弁34は、液圧調整弁35と同様にリニア弁である。
【0037】
そして、管路J1〜J4における各ポンプ7〜10と各ホイールシリンダ6FR、6FL、6RR、6RLとの間には、液圧センサ13、14、15、16が配置されており、各ホイールシリンダ6FR、6FL、6RR、6RLにおける液圧を検出できるように構成されている。また、管路F、Gにおける遮断弁36、37よりも上流側(マスタシリンダ3側)にも液圧センサ17、18が配置されており、マスタシリンダ3のプライマリ室3aとセカンダリ室3bに発生しているマスタシリンダ圧を検出できるように構成されている。
【0038】
さらに、ホイールシリンダ6FRを加圧するためのポンプ7の吐出ポートおよびホイールシリンダ6FLを加圧するためのポンプ9の吐出ポートには、それぞれ、逆止弁20、21が備えられている。逆止弁20、21は、それぞれホイールシリンダ6FR、6FL側からポンプ7、9側へのブレーキ液の流動を禁止するために備えられている。このような構造により、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5が構成されている。
【0039】
上述の構成を備えたブレーキ制御装置100では、管路C、管路H、管路H1、管路H2を通じてリザーバタンク3fとホイールシリンダ6FR、6RLをつなぐ回路と、ポンプ7、8に並列的に接続された管路J1、J2の回路とを含む液圧回路と、管路A、管路Fを通じてセカンダリ室3bとホイールシリンダ6FRをつなぐ液圧回路とが、第1配管系統を構成している。
【0040】
また、管路D、管路I、管路I3、管路I4を通じてリザーバタンク3fとホイールシリンダ6FL、6RRをつなぐ回路と、ポンプ9、10に並列的に接続された管路J3、J4の回路とを含む液圧回路と、管路B、管路Gを通じてプライマリ室3aとホイールシリンダ6FLをつなぐ液圧回路とが、第2配管系統を構成している。
【0041】
そして、ストロークセンサ2や各液圧センサ13〜18の検出信号がブレーキECU200に入力され、これら各検出信号から求められるペダルストロークやホイールシリンダの液圧およびマスタシリンダ圧に基づいて、ストローク制御弁30、遮断弁36、37、連通弁38、39、および液圧調整弁32〜35(以下、総称する場合は「各液圧調整弁」という)や、第1モータ11、第2モータ12を駆動するための制御信号がブレーキECU200から出力されるようになっている。
【0042】
実施形態に係るブレーキ制御装置100では、ホイールシリンダ6FR、6RLと、ホイールシリンダ6FL、6RRとが、それぞれ別々の管路C、H、もしくは管路D、Iで接続されている。そのため、ホイールシリンダ6FR、6RL、6FL、6RRとリザーバタンク3fとが一本の管路で接続されている場合と比べて、より多くのブレーキ液を各ホイールシリンダ6FR、6RL、6FL、6RRに供給することが可能となる。また、一方の管路が故障しても、他方の管路を介して当該他方の管路に連結されたホイールシリンダにブレーキ液を供給できるため、全てのホイールシリンダが加圧不可能となってしまう状況を回避できる。その結果、ブレーキ制御装置100の信頼性が向上する。
【0043】
通常時には、ブレーキペダル1が踏み込まれ、ストロークセンサ2の検出信号がブレーキECU200に入力されると、ブレーキECU200は各電磁制御弁30、32〜39や、第1モータ11、第2モータ12を制御して、次のような状態にする。すなわち、遮断弁36および遮断弁37への通電は共にONされ、連通弁38および連通弁39への通電も共にONされる。これにより、遮断弁36および遮断弁37は遮断状態、連通弁38および連通弁39は連通状態とされる。
【0044】
また、液圧調整弁32〜35は、通電電流値に応じて弁の開度が調整される。ストローク制御弁30は、通電がONされる。このため、管路A、Eを通じて、ストロークシミュレータ4がセカンダリ室3bと連通状態となり、ブレーキペダル1が踏み込まれたときに、各ピストン3c、3dが移動しても、セカンダリ室3b内のブレーキ液がストロークシミュレータ4に移動することになる。
【0045】
さらに、第1モータ11および第2モータ12への通電が共にONされ、ポンプ7〜10から電磁制御弁を介さないでホイールシリンダ6へのブレーキ液の吐出が行われる。すなわち、ポンプ7〜10によるポンプ動作が行われると、各ホイールシリンダ6に対してブレーキ液が供給される。
【0046】
ブレーキECU200により第1モータ11および第2モータ12のモータ回転数が制御されることで、ホイールシリンダ6へのブレーキ液の供給量が制御される。このとき、遮断弁36および遮断弁37が遮断状態とされているため、ポンプ7〜10の下流側の液圧、つまり各ホイールシリンダ6へのブレーキ液の供給量が増加する。そして、連通弁38および連通弁39が連通状態とされ、かつ、液圧調整弁32〜35の開度がそれぞれ制御されているため、開度に応じてブレーキ液が排出され、各ホイールシリンダ6の液圧が調整される。
【0047】
ブレーキECU200は、各液圧センサ13〜16の検出信号に基づいて各ホイールシリンダ6に供給されている液圧をモニタリングし、液圧調整弁32〜35への通電電流値を制御することで、各ホイールシリンダ6の液圧が所望の値となるようにする。すなわち、ポンプ7〜11からの供給量(モータの回転数)と液圧調整弁32〜35からの排出量(液圧調整弁への通電電流値)と差分でホイールシリンダ圧を制御する。これにより、ブレーキペダル1のペダルストロークに応じた制動力が発生させられることになる。以上のようにして、実施形態のブレーキ制御装置100のブレーキ制御が行われる。
【0048】
ところで、ブレーキ制御装置100は、制動中において、第1モータ11および第2モータ12を常に回転させながら、各ホイールシリンダ6の液圧を制御することが標準であった。すなわち、ブレーキ制御装置100は、ホイールシリンダ圧を一定に保つ場合においても、第1モータ11および第2モータ12を駆動して作動液を供給しつつ液圧調整弁32〜35により作動液を排出する。この制御を標準制御という。これは、制動中では第1モータ11および第2モータ12を常に駆動し、液圧調整弁32〜35を常に開いていれば、モータの駆動および停止、弁の開閉に伴う応答遅れを防ぎ、ホイールシリンダ圧を精度良く調整することができるためである。さらに、標準制御によって、第1モータ11および第2モータ12の駆動を開始するときに発生しうる作動液の液圧脈動による作動音を低減するためである。
【0049】
通常の走行中であれば、制動時間は比較的短いが、渋滞時の走行においては、制動時間が比較的長いことがある。このような場合に、ホイールシリンダ6から作動液を排出しながら標準制御を実行すると、モータを回転させるための電力がかかる。また、渋滞時などに車両が停止している場合に制動の応答性を変えたとしても、運転者が違和感を感じることが少ない。
【0050】
そこで、実施形態に係るブレーキ制御装置100は、所定車速以下である場合に、第1モータ11および第2モータ12を停止して液圧調整弁32〜35の開度を調節することで、車輪に制動力を付与する制御を実行する。これにより、効率よくモータを駆動することができ、省エネルギーとなる。そして、所定車速以下の場合に限定することで、制動の応答性の変化に対して運転者に違和感をほとんど感じさせないようにできる。また、所定車速以下の場合に限定することで、ホイールシリンダ圧を保持するときに常にモータの停止および駆動をする場合と比べて、作動液の液圧脈動の頻度を低減することができる。なお、ブレーキECU200は、決定された制御モードに応じて車輪に付与する制動力を制御し、省電力制御モードにおいてモータを停止して車輪に制動力を付与する。
【0051】
図2は、実施形態に係るブレーキECU200の機能構成を示す。ブレーキECU200は、目標液圧算出部42と、液圧制御部44と、制御モード決定部48と、モータ駆動部52と、液圧調整弁駆動部54とを備える。
【0052】
目標液圧算出部42は、ストロークセンサ2の出力にもとづいて各ホイールシリンダ6に付与すべき制動力に応じた目標液圧を算出する。なお、目標液圧算出部42は、所与の運転支援制御からの出力に応じた目標液圧を算出してもよい。
【0053】
液圧制御部44は、目標液圧算出部42から目標液圧を受け取る。液圧制御部44は、目標液圧に応じて、ホイールシリンダ圧を制御する。具体的には、液圧制御部44は、目標液圧にもとづき所定の計算式により第1モータ11および第2モータ12のモータ回転数を算出する。ここで、たとえば、第1モータ11のモータ回転数は、ホイールシリンダ6FRとホイールシリンダ6RLに付与すべき目標液圧のうち高い目標液圧にもとづいて算出される。液圧制御部44は、算出したモータ回転数をモータ駆動部52に供給する。
【0054】
液圧制御部44は、モータ回転数と目標液圧に応じて制御特性から各液圧調整弁への通電電流値を導出する。ここで、「制御特性」とは、モータの回転数と、各液圧調整弁への通電電流値と、ホイールシリンダ6の液圧との関係を示す制御特性をいう。制御特性は3次元マップであってよい。この制御特性は、モータの回転数がゼロである場合の各液圧調整弁への通電電流値と、ホイールシリンダ6の液圧との関係を含んでよい。
【0055】
液圧制御部44は、液圧調整弁駆動部54に導出した各液圧調整弁への通電電流値を供給する。液圧制御部44は、制御特性に応じた各液圧調整弁への通電電流値にもとづいて制御されたホイールシリンダ6の実液圧を液圧センサ13〜16から取得する。液圧制御部44は、制御特性にもとづいて制御されたホイールシリンダ6の実液圧が目標液圧と異なる場合は、フィードバック制御によるフィードバック電流値を算出し、算出されたフィードバック電流値を各液圧調整弁へ加え、ホイールシリンダ6の実液圧を目標液圧に調整する。すなわち液圧制御部44は、制御特性にもとづいて各液圧調整弁への通電電流値を制御することで、ホイールシリンダ6の実液圧をそれぞれのホイールシリンダ6の目標液圧にするように調整し、制御特性にもとづく各液圧調整弁への通電電流値により調整されたホイールシリンダ6の実液圧がホイールシリンダ6の目標液圧と異なる場合は、フィードバック制御にもとづいて各液圧調整弁への通電電流値を制御することで、ホイールシリンダ6の実液圧をホイールシリンダ6の目標液圧に調整する。
【0056】
モータ駆動部52は、算出されたモータ回転数を液圧制御部44から受け取り、それぞれのモータ回転数に応じて第1モータ11および第2モータ12を駆動させる。
【0057】
液圧調整弁駆動部54は、導出された通電電流値および算出されたフィードバック電流値を液圧制御部44から受け取り、これらの電流値に応じて各液圧調整弁を駆動させ、弁の開度を調節する。
【0058】
制御モード決定部48は、車両制動の制御モードを決定する。たとえば、制御モード決定部48は、車両の車速を検出する車速センサ40から車速を受け取り、車速にもとづいて車両制動の制御モードを決定する。液圧制御部44は、制御モード決定部48により決定された制御モードにもとづいてモータの回転数および液圧調整弁への通電電流値を算出する。
【0059】
図3は、実施形態に係る車両制動の制御モード決定処理を示すフローチャートである。本図に示す処理は所定の制御周期で実行される。また、制御モード決定処理は、たとえばブレーキペダルが踏まれている場合などの制動制御中に実行される。
【0060】
制御モード決定部48は、車速センサ40から車速データを取得し、車速が所定の第1車速以下であるかどうか判定する(S10)。所定の第1車速は、たとえば、時速3kmに設定され、渋滞時の低速の走行速度に定められる。制御モード決定部48は、車速が所定の第1車速以下であれば(S10のY)、車両制動の制御モードを省電力制御モードに決定する(S14)。省電力制御モードについては、図4において後述する。
【0061】
制御モード決定部48は、車速が所定の第1車速以下でなければ(S10のN)、車速が所定の第2車速より大きいかどうか判定する(S12)。ここで、所定の第2車速は、たとえば時速5kmに設定され、所定の第1車速より数km大きい値に設定されてよい。制御モード決定部48は、車速が所定の第2車速より大きければ(S12のY)、車両制動の制御モードを標準制御モードに決定する(S16)。標準制御モードは、制動中において、第1モータ11および第2モータ12を常に回転させながら、液圧調整弁を開弁して各ホイールシリンダ6の液圧を制御する制御モードである。
【0062】
制御モード決定部48は、車速が所定の第2車速より大きくなければ(S12のN)、制御モードを保持することを決定する(S18)。なお、制御モード決定処理における最初の制御モードは標準制御モードに予め設定されていてよい。このように制御モードを切り替える車速を異ならせることで、車速が所定の第1車速付近で上下する度に、制御モードが変更されることを抑制できる。
【0063】
制御モード決定部48は、車両制動の制御モードを決定すると、液圧制御部44に決定した制御モードを送出する(S20)。以上のように所定の第1車速以下の場合に、モータを停止しつつ車輪に制動力を付与する省電力制御モードを実行することができ、渋滞時および車両停止時の制動に用いるエネルギーを低減することができる。
【0064】
図4は、実施形態に係る省電力制御モードの制動制御処理を示すフローチャートである。この制動制御処理は、車両制動時において制御モード決定部48により省電力制御モードに決定された場合に実行される。
【0065】
液圧制御部44は、ホイールシリンダ6の目標液圧からホイールシリンダ6の実液圧を引いた差が所定圧以下かどうか判定する(S22)。すなわち、実液圧が目標液圧にある程度以上に近づいたかどうか、実液圧が十分に増圧されたかどうかを判定する。所定圧は、たとえば、0.1Mpa(メガパスカル)に設定され、目標液圧と所定圧がほぼ等しいと判断できる値に設定される。
【0066】
液圧制御部44は、ホイールシリンダ6の目標液圧からホイールシリンダ6の実液圧を引いた差が所定圧以下であれば(S22のY)、ホイールシリンダ6の目標液圧が前回値より減少したかどうか判定する(S24)。なお、前回値とは、前回の制御周期で算出された目標液圧をいう。
【0067】
液圧制御部44は、ホイールシリンダ6の目標液圧が前回値より減少していなければ(S24のN)、モータを停止し、液圧調整弁を閉弁してホイールシリンダ圧を保持する(S28)。通常であればモータを駆動し、液圧調整弁を開弁してホイールシリンダ圧を保持するが、渋滞時や車両停止時にモータを停止し、液圧調整弁を閉弁してホイールシリンダ圧を保持することで、モータにかかる電力量を低減でき、省エネルギーに貢献することができる。
【0068】
液圧制御部44は、ホイールシリンダ6の目標液圧が前回値より減少していれば(S24のY)、モータを停止したまま、液圧調整弁を開弁してホイールシリンダ圧を減圧する(S26)。これにより、制動制御中の減圧時にもモータを停止することができ、モータにかかる電力量を低減することができる。
【0069】
液圧制御部44は、ホイールシリンダ6の目標液圧からホイールシリンダ6の実液圧を引いた差が所定圧以下でなければ(S22のN)、モータを駆動し、液圧調整弁を閉弁してホイールシリンダ圧を増圧する(S30)。
【0070】
液圧制御部44は、モータを駆動してホイールシリンダ圧を増圧するときに、モータの回転数を制限してもよい。モータの回転数は、制御特性を用いて目標液圧に対して定められるモータの回転数より所定値以上小さいモータの回転数に制限される。これにより、増圧にかかる時間を長くして、省電力制御モードにおいて増圧状態から保持状態に移行するときに行われるモータの停止頻度を低減することができ、モータを再駆動する際の液圧脈動による作動音の発生を低減することができる。なお、モータの回転数を制限すると、運転者のブレーキフィーリングが変化するが、たとえば時速3km以下の低速走行中であるため、運転者がブレーキフィーリングの変化に対して違和感なく操作することができる。
【0071】
また、液圧制御部44は、省電力制御モードでの増圧時において、ホイールシリンダ6の実液圧をホイールシリンダ6の目標液圧より余分に大きくしてよい。そして、モータを停止した後、モータを再び駆動し始める前に液圧調整弁を開弁状態にする。このとき、
所定圧はゼロ以下の値に設定される。
【0072】
モータを停止状態から駆動する場合には、作動液の液圧脈動が発生する。この液圧脈動を緩和するため、液圧制御部44は、モータを再駆動する場合に液圧調整弁を先に開弁状態にし、作動液の脈動を開弁した液圧調整弁から漏らす。そして、液圧制御部44は、液圧調整弁の通電電流値を徐々に増加させて、液圧調整弁を閉弁して、省電力制御モードを継続する。このように、モータを停止する前にホイールシリンダに作動液を余分に供給することで、増圧時に液圧調整弁を開弁する余裕をもたせ、モータを再び駆動し始める前に液圧調整弁を開弁状態にして、モータの再駆動による液圧脈動を緩和することができる。なお、制御モードが代わった場合においても、モータを再び駆動し始める前に液圧調整弁を開弁状態にしてもよい。
【0073】
以上のように、省電力制御モードにおいて、ホイールシリンダ圧の保持時および減圧時には、モータを停止しつつ液圧調整弁の開度を調節して車輪に制動力を付与する制御が実行され、ホイールシリンダ圧の保持時、減圧時および増圧時には、モータを停止または駆動し、液圧調整弁の開度を調節して車輪に制動力を付与する制御が実行される。これにより、効率よくモータが駆動される。
【0074】
図5は、実施形態に係る車両制動の制御モード決定処理を示すフローチャートである。本図に示す制御モードは3つあり、この制御モード決定処理では、図3に示す制御モード決定処理より、モータの駆動と停止の切り替えの頻度が低減されている。なお、本図に示す処理は所定の制御周期で実行される。また、制御モード決定処理は、たとえばブレーキペダルが踏まれている場合などの制動制御中に実行される。
【0075】
制御モード決定部48は、車速センサ40から車速データを取得し、車速が所定の第1車速以下であるかどうか判定する(S32)。所定の第1車速は、たとえば、時速3kmに設定され、渋滞時の低速の走行速度に定められる。制御モード決定部48は、車速が所定の第1車速以下であれば(S32のY)、省電力制御モード中であるかどうか判定する(S34)。
【0076】
制御モード決定部48は、省電力制御モード中であれば(S34のY)、制御モードを保持するよう決定する(S46)。すなわち、省電力制御モードがそのまま継続される。
【0077】
制御モード決定部48は、省電力制御モード中でなければ(S34のN)、所定の制動時間以上続けて車輪に制動力が付与されているかどうか、および、ホイールシリンダ6の目標液圧からホイールシリンダ6の実液圧を引いた差圧が所定圧以下であるかどうか判定する(S36)。所定の制動時間は、たとえば、0.1秒に設定され、制動が継続されているかどうかを判定する。所定圧は、たとえば、0.1Mpa(メガパスカル)に設定され、目標液圧と所定圧がほぼ等しいと判断できる値に設定される。なお、上述のS36に示す2つの条件は、どちらか一方の条件だけであってよい。
【0078】
所定の制動時間以上続けて車輪に制動力が付与されているかどうかにより、渋滞時や車両停止時であることを判定できる。一般に、車両の制動時間は1〜2秒であるため、車両が停止していることを判定する場合には、所定の制動時間を2秒より大きい値に設定されてよい。たとえば、所定の制動時間を10秒以上に設定すれば、より確実に車両の停止時にのみ省電力制御モードを実行でき、モータの駆動および停止の切り替えを低減できる。なお、ホイールシリンダ6の目標液圧からホイールシリンダ6の実液圧を引いた差圧が所定圧以下であるかどうかにより、十分に増圧されたかどうか判定できる。これにより、制御モードの切り替え頻度を低減することができる。
【0079】
制御モード決定部48は、所定の制動時間以上続けて車輪に制動力が付与されており、かつ、ホイールシリンダ6の目標液圧からホイールシリンダ6の実液圧を引いた差圧が所定圧以下であれば(S36のY)、制御モードを省電力制御モードに決定する(S40)。これにより、渋滞時および車両停止時で、増圧の必要のないときに、省電力制御モードに移行することができる。
【0080】
制御モード決定部48は、所定の制動時間以上続けて車輪に制動力が付与されておらず、または、ホイールシリンダ6の目標液圧からホイールシリンダ6の実液圧を引いた差圧が所定圧以下でなければ(S36のN)、制御モード決定部48は、制御モードを低回転数制御モードに決定する(S38)。すなわち、制御モード決定部48は、車輪に続けて付与された制動力の制動時間が所定の制動時間より小さく、または、ホイールシリンダ6の目標液圧からホイールシリンダ6の実液圧を引いた差圧が所定圧より大きければ、制御モードを低回転数制御モードに決定する。つまり、渋滞時であっても増圧が必要な場合や、十分に増圧されていても制動力のかけ始めである場合には、低回転数制御モードに移行する。
【0081】
低回転数制御モードは、モータの回転数を制限する制御モードであって、制御特性を用いて目標液圧に対して定められるモータの回転数より小さいモータの回転数に制限する制御モードであり、モータの回転数を制限している以外は標準制御モードと同様の制御である。これにより、増圧時間を長くすることができ、省電力制御モードへの移行を遅らせ、モータの駆動および停止の切り替えの頻度を低減できる。なお、液圧制御部44は、低回転数制御モードでの増圧時において、ホイールシリンダ6の実液圧をホイールシリンダ6の目標液圧より余分に大きくし、モータを停止した後において、モータを再び駆動し始める前に液圧調整弁を開弁状態にしてよい。
【0082】
制御モード決定部48は、車速が所定の第1車速以下でなければ(S32のN)、車速が所定の第2車速以上であるかどうか判定する(S42)。所定の第2車速は、たとえば時速5kmに設定され、所定の第1車速より数km大きい値に設定されてよい。
【0083】
制御モード決定部48は、車速が所定の第2車速以上でなければ(S42のN)、制御中の制御モードが標準制御モードであるかどうか判定する(S44)。制御モード決定部48は、制御中の制御モードが標準制御モードでなければ(S44のN)、省電力制御モード中であるかどうか判定し(S34)、上述の処理を実行する。
【0084】
制御モード決定部48は、制御中の制御モードが標準制御モードであれば(S44のY)、制御モードを保持するよう決定する(S46)。すなわち、標準制御モードがそのまま継続される。
【0085】
制御モード決定部48は、車速が所定の第2車速以上であれば(S42のY)、制御モードを標準制御モードに決定する(S48)。
【0086】
制御モード決定部48は、車両制動の制御モードを決定すると、液圧制御部44に決定した制御モードを送出する(S50)。以上のように、渋滞時および車両停止時を精度良く判定することができ、制御モードの切り替え頻度を低減しつつ省電力制御モードを実行することで、効率よくモータを駆動することができる。
【0087】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施の形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれ得る。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0088】
A,B,C,D,E,F,G,H,H1,H2,J1,J2,J3,J4,I,I3,I4 管路、 1 ブレーキペダル、 2 ストロークセンサ、 3 マスタシリンダ、 3a プライマリ室、 3b セカンダリ室、 3c プライマリピストン、 3d セカンダリピストン、 3e スプリング、 3f リザーバタンク、 4 ストロークシミュレータ、 5 ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、 6FL,6FR,6RL,6RR,6 ホイールシリンダ、 7,8,9,10 ポンプ、 11 第1モータ、 12 第2モータ、 13,14,15,16,17,18 液圧センサ、 20,21 逆止弁、 30 ストローク制御弁、 32,33,34,35 液圧調整弁、 36,37 遮断弁、 38,39 連通弁、 40 車速センサ、 42 目標液圧算出部、 44 液圧制御部、 48 制御モード決定部、 52 モータ駆動部、 54 液圧調整弁駆動部、 100 ブレーキ制御装置、 200 ブレーキECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧回路を介したホイールシリンダへのブレーキ液の供給により前記ホイールシリンダに液圧を供給し、当該液圧により車輪に制動力を付与するブレーキ制御装置であって、
前記液圧回路中に設けられ、モータの回転数に応じて前記ホイールシリンダに液圧を供給する液圧源と、
通電制御により開度が調節されて、前記ホイールシリンダの液圧を調整する液圧調整弁と、
前記モータの回転数と前記液圧調整弁の開度を制御することで車輪に付与する制動力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、所定車速以下である場合に、前記モータを停止しつつ前記液圧調整弁の開度を調節して車輪に制動力を付与する制御を実行することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、所定車速以下である場合に、前記モータを停止しつつ前記液圧調整弁を閉弁状態にして車輪に付与する制動力を保持する制御を実行することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、所定車速以下である場合に、前記モータを停止しつつ前記液圧調整弁を開弁状態にして車輪に付与する制動力を減圧する制御を実行することを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、所定車速以下である場合に前記モータを駆動して前記ホイールシリンダの液圧を増圧する制御を実行するときに、前記モータの回転数を制限することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、車輪に制動力を付与しつつモータを停止するとき、前記ホイールシリンダの実液圧を前記ホイールシリンダの目標液圧より大きくし、前記モータを再び駆動し始める前に前記液圧調整弁を開弁状態にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、車両制動の制御モードを決定する制御モード決定部を備え、前記制御モード決定部により決定された制御モードに応じて車輪に付与する制動力を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記モータを停止しつつ前記液圧調整弁の開度を調節して車輪に制動力を付与する制御は、省電力制御モードにおける制御であって、
前記制御部は、前記省電力制御モードにおいて、前記モータを停止または駆動し、前記液圧調整弁の開度を調節して車輪に制動力を付与することを特徴とする請求項6に記載のブレーキ制御装置。
【請求項8】
前記制御モード決定部は、前記所定車速以下である場合に、所定の制動時間以上続けて車輪に制動力が付与されていれば、制御モードを前記省電力制御モードに決定することを特徴とする請求項7に記載のブレーキ制御装置。
【請求項9】
前記制御モード決定部は、前記所定車速以下である場合に、前記ホイールシリンダの目標液圧から前記ホイールシリンダの実液圧を引いた差圧が所定圧以下であれば、制御モードを前記省電力制御モードに決定することを特徴とする請求項7または8に記載のブレーキ制御装置。
【請求項10】
前記制御モード決定部は、前記所定車速以下であっても、車輪に続けて付与された制動力の制動時間が所定の制動時間より小さく、または、前記ホイールシリンダの目標液圧から前記ホイールシリンダの実液圧を引いた差圧が所定圧より大きければ、前記モータの回転数を制限して車輪に制動力を付与する低回転数制御モードに決定することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−37404(P2011−37404A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189049(P2009−189049)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】