説明

ブロー成形品およびその製造方法

【課題】ポリフェニレンスルフィド樹脂を含有するポリマー組成物から製造されたブロー成形品(中空成形品)を提供する。
【解決手段】本発明のポリマー組成物は、ポリフェニレンスルフィド樹脂に加えて、ガラス繊維などの補強剤、および有機シランカップリング剤と耐衝撃性改良剤の組み合わせをさらに含有する。アミノシランカップリング剤と耐衝撃性改良剤の組み合わせは、この組成物の高せん断粘度を増大することなく、この組成物の低せん断粘度および溶融強度を大幅に増大させることが見出された。低せん断粘度が増大すると、この組成物は、複雑な形状の成形品に特によく適合するようになる。ブロー成形品を製造する場合、例えば、この組成物は、より高い押出量および押出速度で内面平滑度を向上させる一方で、肉厚をより良好に制御できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑な形状の成形部品を形成できる、ポリアリーレンスルフィドポリマーを含有する繊維強化ポリマー組成物に関する。より詳細には、本発明は、複雑な形状の部品を製造するための押出およびブロー成形法に使用するのにより適し、かつ肉厚の優れた制御を可能にする、繊維強化ポリアリーレンスルフィド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる部品および物品を形成するのに使用できる、様々な異なる耐熱性(高温用)エンジニアリングプラスチックが存在する。このようなポリマーは、例えば、ポリアリーレンスルフィドポリマーを含む。ポリアリーレンスルフィドポリマーは丈夫であり、優れた耐化学薬品性を有し、高い剛性を有し、高温用途に使用できるほどの良好な耐熱性を有する。例えば、ポリアリーレンスルフィドポリマーを使用して、金属部品をその重量の数分の一で置き換えることができる。軽量であることに加えて、ポリアリーレンスルフィドポリマーから製造された物品は、多くの金属よりノイズも少なく、化学的侵食に対してより抵抗性を示す。
ポリアリーレンスルフィドポリマーは、本来熱可塑性でもあり、射出成形などの様々な成形法に使用することが可能である。
【0003】
例えばこれまでに、様々な成形部品が、ガラス繊維およびアミノシランと組み合わせたポリアリーレンスルフィドポリマーを含有する組成物から製造されてきた。前述の組成物は、射出成形によって特に製造される様々な製品を製造するのに、大きな成功を収めた。しかしながら、上記組成物を押出ブロー成形などの特定の成形法に使用する場合には、制限がある。
【0004】
例えば、繊維強化ポリアリーレンスルフィド樹脂をブロー成形する場合、パリソンの形成中に均一な肉厚を制御および/または実現する際に、問題に突き当たってきた。例えば、複雑なブロー成形操作中は、形状変化が絶えず起きる管状部材が形成される。一適用例では、例えば、パリソンは、このポリマー組成物が高温に留まる間に、下方向に押出される。このポリマー組成物は、所望の長さのパリソンが得られるまで、環状開口部またはダイを経由して押出される。パリソンは、押出されている間に均一な肉厚を維持し、ブロー成形を開始するのに所望の長さが得られるまで、自重のみによる引張りまたは伸びに耐える必要がある。パリソンを押出中に例えばロボットによって巧みに操作し、管状体の角変位(angular displacement)を特定の形状に変化させることもできる。
【0005】
所望の長さに達するとすぐに、管状体の上で金型が閉じ、ニードル(針)がこの閉じたパリソンの一端に挿入されることにより、ガスまたは空気を管状体内に注入し、物品をその最終形状にブロー成形することが可能となる。前記のプロセス中、ポリアリーレンスルフィド樹脂を含有する従来の組成物は、加工中にたるむ傾向があり、パリソンの厚さが意図せずして変化してしまう。たるみは、低せん断現象であり、ポリマー組成物の溶融強度または溶融弾性の影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに関して、本発明は、複雑な形状の成形部品を形成できる、ポリアリーレンスルフィドポリマーを含有する繊維強化ポリマー組成物を対象とする。より詳細には、本発明は、複雑な形状の部品を製造するための押出およびブロー成形法に使用するのにより適し、かつ肉厚の優れた制御を可能にする、繊維強化ポリアリーレンスルフィド組成物を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概して、本発明は、成形法、特に、比較的複雑な形状の部品を製造するためのブロー成形法に使用するのによく適した、繊維強化ポリアリーレンスルフィド組成物を対象とする。この組成物は、相当な数の角度変化および/またはかなりの長さを有する管状部材などの中空部材のブロー成形中に、肉厚の優れた制御を可能にすることが見出された。本発明の繊維強化ポリマー組成物は、複雑な形状の部品の成形をも、その部品の物理的特性を全く損なうことなく可能にする。事実、上記部品のいくつかの特性は、本発明の組成物を使用した場合、実際に向上し得る。
【0008】
一実施形態では、例えば、本発明は、内部表面と外部表面があるブロー成形された中空部材を含むポリマー成形品を対象とする。この中空部材は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む繊維強化ポリマー組成物から製造される。このポリアリーレンスルフィド樹脂は、例えば、310℃、1200s−1で、約20Pa・sから約500Pa・sまでの溶融粘度を有する線状ポリフェニレンスルフィド樹脂を含むことができる。この組成物は、約10重量%から約50重量%までの量で存在する強化用繊維をさらに含有する。この強化用繊維は、例えばガラス繊維を含むことができる。この組成物は、有機シランカップリング剤および反応性耐衝撃性改良剤をさらに含有する。この有機シランカップリング剤は上記組成物中に、約0.1重量%から約2重量%までの量で存在する。
【0009】
反応性耐衝撃性改良剤は、有機シランカップリング剤および/またはポリアリーレンスルフィド樹脂に反応性である。反応性耐衝撃性改良剤は上記組成物中に、約0.5重量%から、上記成形品が少なくとも200℃(1.8MPaにおいて)の荷重たわみ温度(DTUL;deflection temperature under load)を示す上限までの量で存在する。本明細書で使用される際、荷重たわみ温度(DTUL)は、ISO試験No.75−1、−2に準拠して測定される。
【0010】
反応性耐衝撃性改良剤は、上記組成物の高せん断粘度が対応して増大することなく、上記組成物の低せん断粘度を増大できることが期せずして判明した。特に、反応性耐衝撃性改良剤は、上記組成物の1s−1で測定した低せん断溶融粘度が、Kayanessキャピラリーレオメーターで測定した場合、310℃で約15,000Pa・sから約85,000Pa・sまでになるように、上記組成物中に存在できる。
【0011】
上記組成物の低せん断粘度を上述したように増大させると、様々な有益性および利点が得られる。例えば、低せん断粘度が増大すると、成形中に組成物がより良好に制御される。最終的には、均一な肉厚を有するブロー成形品を製造できる。肉厚の制御に加えて、上記組成物中に反応性耐衝撃性改良剤が含まれていると、高い押出速度と内面平滑度が実現する。さらに、上記組成物は、ポリアリーレンスルフィドポリマーを含有する従来使用された組成物よりも良好な加工性、高い押出量および低いスクラップ率を実現する。
【0012】
特に利点として、上記耐衝撃性改良剤は、310℃でKayanessキャピラリーレオメーターを使用して1s−1から400s−1の間で測定した対数溶融粘度の傾きが、かかる改良剤を含有していない同様の組成物と比較して、少なくとも20%減少するように、例えば少なくとも30%減少するように、繊維強化ポリマー組成物中に存在できることが見出された。一実施形態では、例えば、対数溶融粘度の対数せん断速度に対する傾きは、−0.45未満である。例えば一実施形態では、対数溶融粘度の対数せん断速度に対する傾きは、約−0.5から約−0.7までになり得る。
【0013】
Kayanessキャピラリーレオメーターを使用した低せん断粘度の測定に加えて、低せん断粘度は、Ares平行平板型レオメーターを使用して測定することもできる。これに関して、本発明に従って生成される組成物は、Ares平行平板型レオメーターを使用した場合、310℃、0.1ラジアン/sで7,500Pa・sを超える溶融粘度を有することができ、例えば310℃、0.1ラジアン/sで18,000Pa・sを超える溶融粘度を有することができ、310℃、1.0ラジアン/sで4,000Pa・sを超える溶融粘度を有することができる。
【0014】
一実施形態では、本発明に従って使用される上記耐衝撃性改良剤は、ポリオレフィンとメタクリル酸グリシジルのランダムコポリマーを含む。特定の一実施形態では、例えば、上記耐衝撃性改良剤は、ポリエチレンとメタクリル酸グリシジルのランダムコポリマーを含むことができ、この場合、メタクリル酸グリシジルはこのコポリマー中に約6重量%から約10重量%までの量で存在する。上記耐衝撃性改良剤は、ポリフェニレンスルフィドポリマーと有機官能性シランの両方に反応性であるのが好ましい官能基を有することができる。好ましい官能基は、エポキシ、無水物、酸、オキサゾラン、アミン、メタクリル酸グリシジルを含み、0.5から20重量%の範囲になり得る。
【0015】
有機シランカップリング剤は、シランカップリング剤を含むことができる。一実施形態では、例えば、有機シランカップリング剤は、3−アミノプロピルトリメトキシシランおよび/または3−アミノプロピルトリエトキシシランを含むことができる。
【0016】
上記組成物の低せん断粘度が期せずして増大することに加えて、上記耐衝撃性改良剤は上記組成物の耐衝撃性をも増大させる。例えば、上記ポリマー成形品は、ノッチ付きアイゾット試験に準拠した5kJ/mを超える耐衝撃性を有することができる。本明細書で使用される際、ノッチ付きアイゾット試験は、ISO国際標準規格 180/1Aに準拠して実施される。
【0017】
上述したように、上記耐衝撃性改良剤は、上記組成物の高せん断粘度を同程度に増大させることなく、上記組成物の低せん断粘度を増大させる。これに関しては、この繊維強化組成物は、316℃、400s−1で測定した場合、約600Pa・sから約1,200Pa・sまでの溶融粘度を有し得る。
【0018】
本発明の他の特徴および態様は、以下でより詳細に論じられる。
【0019】
本発明の完全かつ実施可能な開示は、当業者にとって最良のその形態を含めて、本明細書の以下の部分に、添付図面の参照を含めてより詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本開示に従って製造できる成形品の一実施形態の斜視図である。
【図2】以下に記載の実施例で得られた結果のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書および図面において参照符号が繰返し使用されているのは、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すことを意図する。
【0022】
当業者は、本考察が例示的な実施形態の説明にすぎず、本開示のより広い態様の制限を意図していないことを理解されたい。
【0023】
概して、本発明は、複雑な形状を有する成形部品の製造に特によく適した繊維強化ポリマー組成物を対象とする。従来、例えば強化ポリアリーレンスルフィド樹脂をブロー成形する場合、溶融強度が不十分なために、パリソンの形成中に均一な肉厚を制御または実現する際に問題に突き当たってきた。しかしながら、強化用繊維およびポリアリーレンスルフィド樹脂を含有する組成物中に、有機シランカップリング剤と耐衝撃性改良剤の組み合わせを取り入れることにより、組成物の加工性が著しく増大し、押出およびブロー成形中に肉厚の優れた制御が可能になることが期せずして見出された。特に、有機シランカップリング剤が上記耐衝撃性改良剤と相乗的に反応することにより、上記組成物の低せん断粘度および溶融強度が著しく増大することが見出された。この相乗効果により、肉厚と表面平滑度が制御された製品を比較的高い押出速度で製造するためのブロー成形中に、大幅に向上した制御が可能になる。特に利点として、上記の有益性は、組成物の高せん断粘度を、さもなければ成形に悪影響を与える程度までには増大させずに得られる。この成形に悪影響を与える程度とは、メルトフラクチュア(melt fractures)の存在および/または表面粗さの増大のために成形に悪影響を与えるか、またはパリソンの押出速度を制限すると思われる程度である。
【0024】
本発明の組成物中に使用できるポリアリーレンスルフィド樹脂は、特定の用途および所望の結果に応じて変化し得る。使用できるポリアリーレンスルフィド樹脂は、式−(−Ar−S−)−によって表される繰返し単位からなり、式中、Arはアリーレン基である。
【0025】
ポリアリーレンスルフィド樹脂中に存在できるアリーレン基の例は、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基および置換フェニレン基(ただし、この置換基は、好ましくは1個から5個の炭素原子を有するアルキル基またはフェニル基である)、p,p’−ジフェニレンスルホン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基およびナフタレン基を含む。
【0026】
使用できるポリアリーレンスルフィドは、一実施形態では、下記の式の繰返し単位を含有するポリアリーレンチオエーテルを含む:
【0027】
【化1】

【0028】
式中、Ar、Ar、Ar、およびArは、同一または異なり、6個から18個の炭素原子のアリーレン単位であり;W、X、Y、およびZは、同一または異なり、−SO−、−S−、−SO−、−CO−、−O−、−COO−、または1個から6個の炭素原子を有するアルキレン基もしくはアリキリデン基から選択される2価の連結基であり、この連結基の少なくとも1つが−S−であり;n、m、i、j、k、l、o、およびpは、これらの合計が2以上になるという条件の下で独立に、0、または1、2、3、もしくは4である。アリーレン単位Ar、Ar、Ar、およびArは、選択的に置換または非置換になり得る。アリーレン単位は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセンおよびフェナントレンを含む。ポリアリーレンスルフィドは、少なくとも30モル%、特に少なくとも50モル%、より特定すれば少なくとも70モル%のアリーレンスルフィド(−S−)単位を含むことができる。ポリアリーレンスルフィドポリマーは、2個の芳香環に直接結合した少なくとも85モル%のスルフィド結合を含むことができる。
【0029】
一実施形態では、ポリアリーレンスルフィドポリマーは、その成分としてフェニレンスルフィド構造−(C−S)−(式中、nは1以上の整数である)を含有するものとして本明細書に規定するポリフェニレンスルフィド(PPS;polyphenylene sulfide)である。
【0030】
本発明の実施に利用するのに適したポリフェニレンスルフィド樹脂を製造するのに使用できる合成手法は、米国特許第4,814,430号明細書、米国特許第4,889,893号明細書、米国特許第5,380,783号明細書、および米国特許第5,840,830号明細書に記載されており、これらの教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
ポリアリーレンスルフィドポリマーは、線状構造または分岐構造を有することができる。しかしながら、一実施形態では、線状ポリマーが使用される。知られてはいないが、線状ポリマーの方が、有機シランカップリング剤および耐衝撃性改良剤とより良好に配位結合できると考えられる。
【0032】
本発明の組成物中に使用するために選択されるポリアリーレンスルフィドポリマーは、様々な要因に依存し得る。例えば、通常は、ブロー成形プロセスなどの成形プロセスと、組成物中に含有されている他の成分とに適合するポリアリーレンスルフィドポリマーを選択すべきである。通常、例えば、ポリアリーレンスルフィドポリマーは、約20Pa・sから約500Pa・sまで(約200ポアズから約5,000ポアズまで)の溶融粘度を有することができる。本明細書で使用される際、ポリアリーレンスルフィドポリマーの溶融粘度は、316℃、1200s−1で、ASTM試験No.1238−70に準拠して測定される。
【0033】
本発明に使用するために選択されるポリアリーレンスルフィドポリマーはまた、比較的低い塩素含有量を有し得る。概して、ポリマーの溶融粘度が低いほど、塩素含有量が通常大きくなる。したがって、適当な溶融粘度を有するポリマーの選択と、一方で低い塩素含有量を有するポリマーの選択とは、うまく両立させることができる。一実施形態では、ポリアリーレンスルフィドポリマーは、塩素含有量が900ppm未満の組成物を生成するために、約2000ppm未満の塩素含有量を有し得る。
【0034】
ポリアリーレンスルフィドポリマーは、ポリフェニレンスルフィドであってもよく、分岐または架橋結合したミクロ構造を有し得る。分岐は、トリクロロベンゼンなどの三官能性モノマーを0.1から6%のモル重量比率にして共重合することにより、達成できる。分岐は、二官能性モノマーで線状ポリマーを最初に得た後、このポリマーを空気中または空気/窒素混合物中で、ガラス転移温度(80℃)と融点転移(275℃)の間の温度で長時間加熱することにより、固化してより大きな分子量にすることによって実現することができる。高度の分岐が達成された場合、ポリフェニレンスルフィドの粘度は、非常に高いものになり得る。
【0035】
本発明に使用できるポリアリーレンスルフィドポリマーは、数多くの市販元から入手可能である。一実施形態では、例えば、ポリマーは、Ticona LLCおよび/またはCelanese Corporationから、商標FORTRONの名の下で購入できる。本開示に使用するための適切なポリアリーレンスルフィドポリマーの選択は、概して、シランカップリング剤および耐衝撃性改良剤と共に使用された場合に所望の低せん断粘度が得られることに依存する。
【0036】
一実施形態では、所望の特性を有するPPSポリマーを生成するために、比較的高い溶融粘度を有するポリアリーレンスルフィドポリマーを、比較的低い溶融粘度を有するポリアリーレンスルフィドポリマーと組み合わせることができる。
【0037】
上記ポリマー組成物は、強化用繊維または無機充填剤などの補強剤も含有できる。一実施形態では、例えば、上記樹脂組成物は、強化用ガラス繊維を含有することができる。適切な任意のガラス繊維が、上記組成物中に含まれ得る。一実施形態では、例えば、この繊維は、石灰−アルミニウムホウケイ酸ガラスからなることができる。
【0038】
本発明に従って使用できる他の強化用繊維は、炭素繊維、金属繊維、芳香族ポリアミド繊維、岩綿繊維、形状記憶合金繊維、ホウ素繊維、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)繊維、およびこれらの混合物を含む。使用できる炭素繊維は、非晶質炭素繊維、グラファイト型炭素繊維、または金属被覆型炭素繊維を含む。金属繊維は、ステンレス鋼繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、タングステン繊維などを含み得る。
【0039】
繊維径は、使用される特定の繊維に応じて変動でき、細断または連続形態のいずれかで利用できる。この強化用繊維は例えば、約100マイクロメートル未満、例えば約50マイクロメートル未満の直径を有することができる。例えば、細断または連続した繊維は、約5マイクロメートルから約50マイクロメートルまで、例えば約5マイクロメートルから約15マイクロメートルまでの繊維径を有し得る。所望であれば、この繊維は、上記ポリマーとの混合を容易にすることもできるサイズ剤で前処理してもよい。繊維長は、ポリマー組成物中の上記繊維の混合および/または分散を実施するために使用する配合条件(例えば温度分布、比率、およびせん断またはスクリュー速度)およびスクリュー設計(混合強度を制御する)を変更することで、当業者であれば配合中に制御できる。一実施形態では、例えば、この繊維は、配合後の最終長が、配合に使用する配合条件およびスクリュー設計の選択に応じて、100マイクロメートルから1500マイクロメートルまで変動し得るのならば、約3mmから約5mmまでの初期長を有し得る。
【0040】
この強化用繊維は得られた物品中に、約10重量%から約50重量%までの量、例えば約10重量%から約25重量%までの量で存在できる。
【0041】
樹脂組成物中に含まれ得る適切な無機充填剤は、滑石(タルク)、粘土、シリカ、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、雲母、炭酸カルシウム、二酸化チタン、およびこれらの混合物などを含む。この充填剤は上記組成物中に、約0.5重量%から約30重量%までの量、例えば約5重量%から約25重量%までの量で存在できる。
【0042】
ポリアリーレンスルフィドポリマーおよび補強剤に加えて、本発明の組成物は有機シランカップリング剤および耐衝撃性改良剤の組み合わせをさらに含有する。シランカップリング剤は、ポリアリーレンスルフィドポリマーと化学的に反応し、耐衝撃性改良剤とも反応すると考えられる。本発明によれば、有機シランカップリング剤と耐衝撃性改良剤の組み合わせは、組成物の低せん断粘度および溶融強度を驚異的に増大させることが、期せずして見出された。
【0043】
有機シランカップリング剤は、一実施形態では、各分子内に少なくとも2つの異なる反応基を含有する。この2つの異なる反応基は、ポリアリーレンスルフィド樹脂への結合だけでなく、耐衝撃性改良剤への結合も可能にし、ポリフェニレンスルフィド、耐衝撃性改良剤、およびシランの間に反応生成物またはグラフト分子を生成する。
【0044】
本発明に従って加えられる例示的な有機シランは、米国特許第5,149,731号明細書に記載されており、この教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。含まれる上記有機シランは、ビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、およびメルカプトアルコキシシランからなる群より選択される。利用できるビニルアルコキシシランの例は、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランを含む。使用できるエポキシアルコキシシランの例は、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよびγ−グリシドオキシプロピルトリエトキシシランを含む。使用できるメルカプトアルコキシシランの例は、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよびγ−メルカプトプロピルトリエトキシシランを含む。
【0045】
アミノ官能性シラン化合物が好ましく、典型的には、式:R−Si−(Rであり、式中、Rは、NHなどのアミノ基;炭素原子が約1個から約10個まで、好ましくは炭素原子が約2個から約5個までであるアミノアルキル基、例えばアミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチルなど;炭素原子が約2個から約10個まで、好ましくは炭素原子が約2個から約5個までであるアルケン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなど;および、炭素原子が約2個から約10個まで、好ましくは炭素原子が約2個から約5個までであるアルキン、例えばエチン、プロピン、ブチンなど;からなる群より選択され;そして、式中、Rは、約1個から約10個までの炭素原子、好ましくは約2個から約5個までの炭素原子を有するアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシなどである。好ましい実施形態では、R−Si−(Rのアミノ官能性シラン化合物において、Rは、アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、エチレン、エチン、プロピレンおよびプロピンからなる群より選択され、Rは、メトキシ基、エトキシ基、およびプロポキシ基からなる群より選択される。
【0046】
典型的には、アミノシラン化合物は、式:R−Si−(Rであるのが好ましく、式中、Rは、NHなどのアミノ基、または炭素原子が約1個から約10個までであるアミノアルキル基、例えばアミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチルなどであり;そして、式中、Rは、約1個から約10個までの炭素原子のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などである。アミノシランは、式:R−Si−(Rであるのも好ましく、式中、Rは、炭素原子が約2個から約10個までであるアルケン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなど、および炭素原子が約2個から約10個までであるアルキン、例えばエチン、プロピン、ブチンなどからなる群より選択され;そして、式中、Rは、約1個から約10個までの炭素原子のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などである。アミノシランは、式R−Si−(R、R−Si−(R、およびR−Si−(Rの様々な化合物の混合物であってもよい。
【0047】
アミノ官能性シラン化合物の具体的な代表例は、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、エチレントリメトキシシラン、エチレントリエトキシシラン、エチントリメトキシシラン、エチントリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−アミノプロピル)テトラメトキシシラン、ビス(3−アミノプロピル)テトラエトキシジシロキサン、およびこれらの組み合わせを含む。アミノシランは、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノアルコキシシランであってもよい。非常に好ましいアミノシランは、Degussa, Sigma Chemical Company、およびAldrich Chemical Companyから入手可能な3−アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0048】
上記ポリマー組成物中に存在する有機シランカップリング剤の量は、他の成分と、利用する特定の有機シランカップリング剤との相対量を含めた様々な要因に依存し得る。一実施形態では、例えば、有機シランカップリング剤は、上記組成物中に約0.1重量%から約2重量%までの量、例えば約0.4重量%から約1重量%までの量で存在できる。一実施形態では、上記組成物が約10重量%から約20重量%までの強化用繊維を含有する場合、上記組成物は、有機シランカップリング剤を約0.4重量%から約1重量%までの量で含有する。
【0049】
上述したように、有機シランカップリング剤は、耐衝撃性改良剤と共に上記ポリマー組成物に添加される。一実施形態では、有機シランカップリング剤と化学的に反応する耐衝撃性改良剤が、選択される。一実施形態では、例えば、この耐衝撃性改良剤は、ポリオレフィンとメタクリル酸グリシジルのランダムコポリマーを含むことができる。例えば、一実施形態では、この耐衝撃性改良剤は、ポリエチレンとメタクリル酸グリシジルのランダムコポリマーを含むことができる。ランダムコポリマー中に含有されるメタクリル酸グリシジルの量は、変動し得る。特定の一実施形態では、このランダムコポリマーは、メタクリル酸グリシジルを約6重量%から約10重量%までの量で含有する。
【0050】
これまで、耐衝撃性改良剤は、ポリマーから製造した成形部品の耐衝撃性を増大させるために、様々な熱可塑性ポリマーと組み合わされてきた。しかしながら、上記耐衝撃性改良剤は、有機シランカップリング剤およびポリフェニレンスルフィド樹脂と相乗的に結合し、上記組成物の低せん断粘度および溶融強度を上昇させることが見出された。したがって、一実施形態では、耐衝撃性改良剤は、上記組成物の低せん断粘度を、上記組成物の荷重たわみ温度(DTUL)特性などの他の特性に対していかなる実質的な悪影響も与えずに上昇させるために、上記組成物中に十分な量で存在する。例えば、一実施形態では、耐衝撃性改良剤は、約200℃を超えても荷重たわみ温度(DTUL)を維持しながら、低せん断粘度を増大するために十分な量で上記組成物中に存在できる。
【0051】
上記ポリマー組成物の低せん断粘度は、Kayanessキャピラリーレオメーターを使用して、またはAres平行平板型レオメーターを使用することにより、測定できる。一実施形態では、例えば、耐衝撃性改良剤は、1s−1で測定した組成物の低せん断溶融粘度が、Kayanessキャピラリーレオメーターを使用した場合、310℃で約15,000Pa・sから約85,000Pa・sまでになるように、上記組成物中に存在する。Kayanessキャピラリーレオメーターで測定した場合、上記組成物は、310℃、400s−1で測定した場合、約600Pa・sを超える溶融粘度を有することもできる。
【0052】
Ares平行平板型レオメーターによって測定した場合、上記組成物は、310℃、0.1ラジアン/sで約7,500Pa・sを超える溶融粘度を示し得る。さらに、上記組成物は、310℃、1.0ラジアン/sで、約4,000Pa・sを超える溶融粘度、例えば前述の条件で約4,000Pa・sの溶融粘度から約8,000Pa・sの溶融粘度までを示し得る。
【0053】
耐衝撃性改良剤は、溶融粘度の対数のせん断速度の対数に対する傾きを増大することにより、上記組成物の低せん断溶融粘度を増大する。例えば、以下の実施例で説明されるように、対数溶融粘度の対数せん断速度に対する傾きは、20%を超えて、例えば30%さえ超えて減少し得る。例えば、一実施形態では、対数溶融粘度の対数せん断速度に対する傾きは、約−0.45未満になり得る。一実施形態では、例えば、溶融粘度の対数のせん断速度の対数に対する傾きは、310℃において、Kayanessキャピラリーレオメーターを使用して、1s−1から400s−1の間でせん断速度を測定した場合、約−0.5から約−0.7までになり得る。
【0054】
繊維強化ポリマー組成物の低せん断粘度が増大すると、特に、複雑な形状を成形するために上記組成物を使用する場合には、様々な利点および有益性が得られる。低せん断粘度が増大すると、例えば、パリソンの押出または成形中に上記ポリマーをより良好に制御することが可能になる。例えば、本発明の組成物は、均一な肉厚および平滑な内面を有する物品の押出ブロー成形を可能にする。さらに、上記ポリマー組成物は、高い押出速度を可能にする。上記組成物の加工性が改善されるので、上記組成物は、耐衝撃性改良剤を記述された量で含有しない比較製品よりも低いスクラップ率で押出量が高くなる。
【0055】
特に利点として、組成物中に有機シランカップリング剤および耐衝撃性改良剤を加えることにより、上記組成物の高せん断粘度が対応して増大することなく、上記組成物の低せん断粘度および溶融強度が上昇する。上記組成物の高せん断粘度が増大すると、例えば、早期のメルトフラクチュアおよび表面粗さの増大のために、押出速度に悪影響が出ることがあり、316℃、400s−1で1,500Pa・sを超える溶融粘度などのように、押出速度に悪影響が出ることがある。
【0056】
上記利点に加えて、耐衝撃性改良剤をポリマー組成物中に加えることにより、上記組成物から製造される物品の耐衝撃性も増大する。例えば、本発明に従って製造された成形品は、耐衝撃性改良剤を含有しない組成物の耐衝撃性よりも少なくとも20%より大きい耐衝撃性、例えば、30%より大きい耐衝撃性を有することができる。一実施形態では、例えば、本発明に従って製造された成形品は、7kJ/mを超えるノッチ付きアイゾット耐衝撃性、例えば、約7kJ/mから約10kJ/mまでのノッチ付きアイゾット耐衝撃性を有することができる。上記の耐衝撃特性は、ISO試験180に準拠して測定できる。
【0057】
図1を参照すると、本発明に従って製造された成形品の一実施形態が示されている。示されているように、この実施形態では、上記成形品は、管状部材10を構成する。管状部材10は、ブロー成形法によって製造できる。示されているように、管状部材10は複数の方向に伸びており、比較的複雑な形状になっている。例えば、上記ポリマー組成物が固化し得る前に、図1に示されている角変位(angular displacement)が、この部品に形成される。この管状部材10は、角変位12、14および16を含む。管状部材10は、例えば、車両の排気装置に使用可能な自動車部品を構成してもよい。示されているように、管状部材10は、内部表面18および外部表面20を含む。ブロー成形中、不活性ガスなどの加圧ガスが、管状部材の内面に力を加える。低せん断粘度の増大は、このポリマーにメルトフラクチュアまたは他の欠陥を生じさせずに、均一な肉厚を有するパリソンの押出を可能にする。
【0058】
図1に示されている管状部材10を製造する方法は、様々である。一実施形態では、例えば、本発明のポリマー組成物を、ダイを使用して押出し、パリソンにすることができる。パリソンは通常、下方向に押出される。パリソンが所望の長さに達したとき、ノズルまたはピンをパリソンの開口端に挿入してパリソンを膨張させ、パリソンを所望の形状に成形する。一実施形態では、ロボットアームを使用し、ブロー成形加工中のパリソンを移動させて、角変位を生じさせることができる。
【0059】
上記部品が成形されるとすぐに、管状部材中にポリマーを固化するために冷気を注入することができる。
【0060】
本発明は、下の実施例を参照することによってより深く理解し得る。
【実施例】
【0061】
組成物を本発明に従って調合した。この組成物は、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ガラス繊維、有機シランカップリング剤および耐衝撃性改良剤を含有していた。耐衝撃性改良剤を含有しない同様の組成物も調合した。次に、両方の組成物の低せん断における溶融粘度を試験した。
【0062】
本発明に従って調合した組成物は、以下の成分を含有していた:
1.316℃、1200s−1で測定した溶融粘度が140Pa・sであるポリフェニレンスルフィド樹脂が、上記組成物中に約81.9重量%の量で存在していた。
2.10マイクロメートルの平均直径を有するガラス繊維が、15重量%の量で存在していた。
3.アミノシランカップリング剤が、上記組成物中に0.6重量%の量で存在していた。このシランカップリング剤は、信越化学工業から市販されている製品番号KBE−903だった。
4.耐衝撃性改良剤が、上記組成物中に2.5重量%の量で存在していた。耐衝撃性改良剤は、エチレンとメタクリル酸グリシジルのランダムコポリマーを含有しており、このコポリマー中では、メタクリル酸グリシジル含有量は8重量%だった。
【0063】
比較するために、耐衝撃性改良剤を含有しない同様の組成物を調合した。その結果、ポリフェニレンスルフィド樹脂が、約82.5重量%の量で存在していた。
【0064】
次に、2つの組成物の、310℃、1s−1のせん断速度と、310℃、400s−1のせん断速度とにおけるに溶融粘度を、Kayanessキャピラリーレオメーターを使用して試験した。以下の結果が得られた:
【0065】
【表1】

【0066】
せん断速度の対数に対する溶融粘度の対数も、図2に図示されている。図2に示されているように、本発明に従って製造された上記組成物(試料1)が−0.55の傾きを有する一方、比較例試料の傾きは、約−0.42だった。したがって、試料1の傾きは、この対照(比較例)の傾きよりも20%より大きく減少し、また、30%よりも大きく減少した。
【0067】
試料1の溶融強度の尺度である溶融弾性(G’)を310℃、1ラジアン/sでAresによって測定した結果からも、上記試料が、比較例より250%を超えて有意に高いことが確認された(表2)。
【0068】
【表2】

【0069】
さらに、試料1の様々な他の特性を試験した。特に、試料1の組成物は、破断時引張強さが115MPa(ISO527)、破断時伸びが2.5%(ISO527)、引張弾性率が6700MPa(ISO527)、破断時曲げ強度が190MPa(ISO178)、曲げ弾性率が6500MPa(ISO178)、ノッチ付きアイゾット衝撃が7kJ/m(ISO180/1A)であることを示した。この組成物は、1.8MPaで210℃の荷重たわみ温度(DTUL)(ISO75)も示した。
【0070】
当業者は、本発明に対するこれらおよび他の改変および変形を、添付された特許請求の範囲により詳細に記載されている、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく実施することができる。加えて、様々な実施形態の態様は、全体または一部が共に交換可能なものであると理解されたい。さらに、以上の説明は例示であるにすぎず、添付された特許請求の範囲に詳しく記載した本発明を制限することは意図していないことは、当業者なら理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部表面と外部表面とを含み、該内部表面と該外部表面の間に肉厚を有する、ブロー成形された中空部材を含むポリマー成形品であって、
前記中空部材が、繊維強化ポリマー組成物から製造され、当該繊維強化ポリマー組成物が、重量%に基づいて、
(a)約20Pa・sから約500Pa・sまでの溶融粘度を有する線状ポリフェニレンスルフィド;
(b)前記組成物中に約10重量%から約50重量%までの量で存在する強化用繊維;
(c)前記組成物中に約0.1重量%から約2重量%までの量で存在する有機シランカップリング剤;および
(d)前記有機シランカップリング剤に反応性である反応性耐衝撃性改良剤であって、この反応性耐衝撃性改良剤の存在量が、約0.5重量%から、上限が、前記成形品が少なくとも200℃の荷重たわみ温度(DTUL)を示し、Kayanessキャピラリーレオメーターで測定して、310℃において1s−1で計測して、15,000Pa・sから85,000Pa・sの低せん断溶融粘度を示すまでである、前記反応性耐衝撃性改良剤;
を含む、前記ポリマー成形品。
【請求項2】
前記耐衝撃性改良剤は、Kayanessキャピラリーレオメーターを使用して、310℃において1s−1から400s−1の間で測定した対数溶融粘度の傾きが、前記耐衝撃性改良剤を含有しない同様の組成物と比較して、少なくとも20%減少するように、前記繊維強化ポリマー組成物中に存在する、請求項1に記載のポリマー成形品。
【請求項3】
前記耐衝撃性改良剤が、ポリオレフィンとメタクリル酸グリシジルのランダムコポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー成形品。
【請求項4】
前記耐衝撃性改良剤が、ポリエチレンとメタクリル酸グリシジルのランダムコポリマーを含み、メタクリル酸グリシジルが、前記耐衝撃性改良剤中に約6重量%から約10重量%までの量で存在する、請求項3に記載のポリマー成形品。
【請求項5】
前記有機シランカップリング剤が、アミノシランを含む、請求項1に記載のポリマー成形品。
【請求項6】
アミノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシランを含むか、または3−アミノプロピルトリエトキシシランを含む、請求項5に記載のポリマー成形品。
【請求項7】
対数溶融粘度の対数せん断速度に対する傾きが、−0.45未満である、請求項2に記載のポリマー成形品。
【請求項8】
対数溶融粘度の対数せん断速度に対する傾きが、−0.5から−0.7である、請求項2に記載のポリマー成形品。
【請求項9】
前記繊維強化ポリマー組成物が、Kayanessキャピラリーレオメーターを使用して測定して、310℃、1s−1で約20,000Pa・sから約30,000Pa・sの溶融粘度を有する、請求項1に記載のポリマー成形品。
【請求項10】
前記耐衝撃性改良剤は、Kayanessキャピラリーレオメーターを使用して、310℃において1s−1から400s−1の間で測定した対数溶融粘度の傾きが、前記耐衝撃性改良剤を含有しない同様の組成物と比較して、少なくとも30%減少するように、前記繊維強化ポリマー組成物中に存在する、請求項1に記載のポリマー成形品。
【請求項11】
前記複合ポリマー組成物の溶融粘度が、Ares平行平板型レオメーターを使用して測定して、310℃、0.1ラジアン/sで7,500Pa・sよりも大きく、310℃、1.0ラジアン/sで4,000Pa・sよりも大きい、請求項1に記載のポリマー成形品。
【請求項12】
前記成形品が、ノッチ付きアイゾット衝撃試験に準拠した、少なくとも約7kJ/mの衝撃強度を有する、請求項1に記載のポリマー成形品。
【請求項13】
前記成形品が、複数の方向に曲がっている管状部材を含み、この管状部材が約2mmから約6mmまでの肉厚を有する、請求項1に記載のポリマー成形品。
【請求項14】
前記繊維強化ポリマー組成物が、316℃、400s−1で約600Pa・sから約1,200Pa・sの溶融粘度を有する、請求項1に記載のポリマー成形品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−256387(P2011−256387A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−126843(P2011−126843)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(500100822)ティコナ・エルエルシー (19)
【Fターム(参考)】