説明

プラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置および内面バリヤ膜被覆容器の製造方法

【課題】プラスチック容器内面に膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜を高速度で形成することが可能なプラスチック容器の内面へのバリヤ膜形成装置を提供する。
【解決手段】回転式真空シール機構に排気管11を通して連通され、プラスチック容器の内面にバリヤ膜を成膜するための複数の成膜チャンバを具備し、排気管は導電材料からなり、その内部の所望位置に通気性で導電性を有するハニカム形導体39が配置され、かつ成膜チャンバは容器が挿入された時にその容器を取り囲む大きさの空洞を有する外部電極と、容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられ、排気管が接続されと共に接地される導電性のチャンバヘッド部材と、外部電極内の容器内にチャンバヘッド部材側から挿入され、成膜ガスを吹き出すためのガス供給管と、外部電極と接地されたチャンバヘッド部材及び排気管との間に電界を付与するための電界付与手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置および内面バリヤ膜被覆プラスチック容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器、例えばペットボトルは、外部からの酸素の透過、内部(例えば炭酸飲料水)からの二酸化炭素の透過を防止するためにその内面にバリヤ膜、例えばDLC(Diamond Like Carbon)のような炭素膜を形成することが試みられている。
【0003】
このようなプラスチック容器内面に炭素膜を形成する方法としては、本出願人が既に出願し、公開された特許文献1に開示されている。この特許文献1の図7には、被処理物であるプラスチック容器が挿入された時にその容器を取り囲む大きさを有する外部電極と、前記プラスチック容器が挿入された時に少なくともその容器の口部および肩部と前記外部電極の間に介在された誘電体材料からなるスペーサと、前記容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられた排気管と、前記外部電極内の前記プラスチック容器内に前記排気管側から挿入され、接地側に接続される内部電極と、前記排気管に取り付けられた排気手段と、前記内部電極に媒質ガスを供給するためのガス供給手段と、前記外部電極に接続された高周波電源とを備えたプラスチック容器内面への炭素膜形成装置が記載されている。
【0004】
このような構成の特許文献1記載の炭素膜形成装置によるプラスチック容器、例えばペットボトル内面への炭素膜の形成方法を以下に説明する。
【0005】
まず、ペットボトルを外部電極内に挿入する。絶縁材料からなるガス吹き出し部が設けられた内部電極を前記ペットボトルの口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられた排気管から前記ペットボトルの内部に前記ガス吹き出し部が前記ペットボトルの底部側に位置するように挿入する。前記ペットボトル内外のガスを排気管手段により前記排気管を通して排気した後、前記内部電極に媒質ガスをガス供給手段により供給し、この内部電極のガス吹き出し部から前記ペットボトル内に媒質ガスを吹き出して前記ペットボトル内を含む排気管内を所定のガス圧力に設定する。つづいて、高周波電源から高周波電力を前記外部電極に供給し、前記ペットボトル内に位置する内部電極の周囲にプラズマを生成させ、このプラズマにより前記媒質ガスを解離させて前記ペットボトル内面に炭素膜を形成する。この時、放電領域は内部電極の周囲のみならず排気管(これと連通する分岐排気管も含む)内にも広がる可能性がある。
【0006】
しかしながら、前述した構成の炭素膜形成装置において、外部電極および排気管を備える成膜チャンバを複数用意し、これら成膜チャンバを排気管(分岐排気管)を通して排気手段である回転式真空シール機構にそれぞれ接続した場合には、前記放電領域が排気管を通して回転式真空シール機構に到達し、さらに隣接する他の成膜チャンバ前記回転式真空シール機構まで到達した放電(プラズマ)と相互に干渉して放電不安定、電源異常を誘発する可能性がある。また、放電領域が排気管に広がると、ペットボトル内部に注入されるパワーが減少してパワー効率の低下を招く虞がある。このため、本発明者らは放電領域を可能な限りペットボトル内の内部電極の周囲に規制するように研究、開発を行ってきた。
【0007】
【特許文献1】特開2003−286571
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明らは、回転式真空シール機構に導電材料からなる排気管を通して被処理物であるプラスチック容器の内面にバリヤ膜を成膜するための複数の成膜チャンバを連通させた構成のプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置、およびこのバリヤ膜形成装置を用いてプラスチック容器内面に炭素膜のようなバリヤ膜を形成する方法に関して鋭意研究を重ねた結果、放電領域を成膜チャンバから排気管まで広げることによって、予想に反して大きなプラズマシース電圧が外部電極と成膜チャンバおよび排気管を含む接地電極間に加わり、プラズマ内で解離された媒質ガスのようなバリヤ膜生成ガスからの高エネルギーの正イオンを前記プラスチック容器内面に入射でき、プラスチック容器内面に膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜を高速で形成できることを究明した。ただし、放電領域を成膜チャンバから排気管まで広げることは背景技術でも説明したように回転式真空シール機構との関係で放電不安定、電源異常を誘発する可能性がある。
【0009】
このようなことから、本発明者らはさらに研究を重ねた結果、導電材料からなる排気管内部の所望位置に通気性で導電性を有する電界遮蔽部材を配置することによって、排気管内に発生させる放電領域が回転式真空シール機構にまで達するのを規制し、放電不安定、電源異常の誘発を防ぐことができることを究明し、本発明を完成するに至った。
【0010】
また、本発明者らは前記電界遮蔽部材の排気管への配置の代わりに、排気管を導電材料からなる管部と絶縁材料からなる管部とから構成し、この導電材料からなる管部側を成膜チャンバに連結することによって、同様に排気管内に発生させる放電領域が回転式真空シール機構にまで達するのを規制し、放電不安定、電源異常の誘発を防ぐことができることを究明し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置および内面バリヤ膜被覆プラスチック容器の製造方法は、次のような構成を有することを特徴とするものである。
【0012】
1)回転式真空シール機構と、この回転式真空シール機構に排気管を通して連通され、被処理物であるプラスチック容器の内面にバリヤ膜を成膜するための複数の成膜チャンバとを具備し、
前記排気管は、導電材料からなり、前記成膜チャンバから所望距離離れた内部に通気性で導電性を有する電界遮蔽部材が配置され、かつ
前記成膜チャンバは、前記プラスチック容器が挿入された時にその容器を取り囲む大きさの空洞を有する外部電極と、この容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられ、前記排気管が連結されると共に接地される導電性のチャンバヘッダ部材と、前記外部電極内の前記プラスチック容器内に前記チャンバヘッダ部材側から挿入され、バリヤ膜生成ガスを吹き出すためのガス吹き出し部材と、前記外部電極と接地された前記チャンバヘッダ部材および排気管との間に電界を付与するための電界付与手段とを備えることを特徴とするプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置。
【0013】
2)前記1)のバリヤ膜形成装置を用いて内面バリヤ膜被覆プラスチック容器を製造するにあたり、
(a)被処理物であるプラスチック容器を複数の成膜チャンバの各外部電極内にそれぞれ挿入する工程と、
(b)ガス吹き出し部材を前記容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられた導電性のチャンバヘッダ部材から前記プラスチック容器の内部に挿入する工程と、
(c)回転式真空シール機構により前記容器内外および前記チャンバヘッダ部材のガスを内部の所望位置に通気性で導電性を有する電界遮蔽部材が配置された排気管を通して排気しつつ、前記ガス吹き出し部材からバリヤ膜生成ガスを前記プラスチック容器内に吹き出して前記プラスチック容器内を含む前記チャンバヘッダ部材および排気管内を所定のガス圧力に設定する工程と、
(d)電界付与手段により前記外部電極と前記チャンバヘッダ部材および電界遮蔽部材位置から前記チャンバヘッダ部材に位置する前記排気管部分を含む接地電極との間に電界を付与し、前記プラスチック容器内を含む前記チャンバヘッダ部材および前記排気管部分にプラズマを生成させ、このプラズマにより前記バリヤ膜生成ガスを解離させて前記プラスチック容器内面にバリヤ膜を形成する工程と
を含むことを特徴とする内面バリヤ膜被覆プラスチック容器の製造方法。
【0014】
3)回転式真空シール機構と、この回転式真空シール機構に排気管を通して連通され、被処理物であるプラスチック容器の内面にバリヤ膜を成膜するための複数の成膜チャンバとを具備し、
前記排気管は、導電材料からなる管部と絶縁材料からなる管部とから構成され、導電材料からなる管部は前記各成膜チャンバに連結され、かつ
前記成膜チャンバは、前記プラスチック容器が挿入された時にその容器を取り囲む大きさの空洞を有する外部電極と、この容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられ、前記導電材料からなる管部が連結されると共に接地される導電性のチャンバヘッダ部材と、前記外部電極内の前記プラスチック容器内に前記チャンバヘッダ部材側から挿入され、バリヤ膜生成ガスを吹き出すためのガス吹き出し部材と、前記外部電極と接地された前記チャンバヘッダ部材および前記導電材料からなる管部との間に電界を付与するための電界付与手段とを備えることを特徴とするプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置。
【0015】
4)前記3)のバリヤ膜形成装置を用いて内面バリヤ膜被覆プラスチック容器を製造するにあたり、
(a)被処理物であるプラスチック容器を複数の成膜チャンバの各外部電極内にそれぞれ挿入する工程と、
(b)ガス吹き出し部材を前記容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられた導電性のチャンバヘッダ部材から前記プラスチック容器の内部に挿入する工程と、
(c)回転式真空シール機構により前記容器内外および前記チャンバヘッダ部材のガスを導電材料からなる管部と絶縁材料からなる管部とから構成された排気管を通して排気しつつ、前記ガス吹き出し部材からバリヤ膜生成ガスを前記プラスチック容器内に吹き出して前記プラスチック容器内を含む前記チャンバヘッダ部材および排気管内を所定のガス圧力に設定する工程と、
(d)電界付与手段により前記外部電極と前記チャンバヘッダ部材および前記導電材料からなる管部を含む接地電極との間に電界を付与し、前記プラスチック容器内を含む前記チャンバヘッダ部材および前記導電材料からなる管部にプラズマを生成させ、このプラズマにより前記バリヤ膜生成ガスを解離させて前記プラスチック容器内面にバリヤ膜を形成する工程と
を含むことを特徴とする内面バリヤ膜被覆プラスチック容器の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、回転式真空シール機構との関係で放電不安定、電源異常の誘発を防止できると共に、回転式真空シール機構に排気管を通して連通された複数の成膜チャンバにおいて、プラスチック容器内面に膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜を高速度で形成することが可能なプラスチック容器の内面へのバリヤ膜形成装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明によれば回転式真空シール機構との関係で放電不安定、電源異常の誘発を防止できると共に、回転式真空シール機構に排気管を通して連通された複数の成膜チャンバにおいて、膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜が内面に形成され、酸素および二酸化炭素に対するバリヤ性が優れたプラスチック容器を製造し得る方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置を示す平面図、図2は図1の成膜チャンバを含む要部断面図である。
【0020】
図1の回転式真空シール機構1は、固定盤(図示せず)上に例えば反時計回り方向に回転する回転盤2を備えている。この回転盤2の外周側面には、放射状に配列された複数の排気管11が連結され、かつそれら排気管11の先端に成膜チャンバ21がそれぞれ連結されている。前記回転式真空シール機構1において、前記回転盤2には前記排気管11の本数に対応した数の排気穴が貫通され、それら排気穴の一端は前記排気管11に連通され、他端は固定盤に穿設された所定数の長穴(例えば4つの長穴)を通して4段階の真空度を持つ真空ポンプ(図示せず)に連通される構造を有する。すなわち、図1のS点に位置する成膜チャンバ21に被処理物であるプラスチック容器(例えばペットボトル)が搬送され、前記回転盤2により反時計回り方向に回転しながら図1のF点でバリヤ膜が形成されたペットボトルを取り出され、このF点手前のバリヤ膜の成膜位置までの間、前記成膜チャンバ21内の真空度は4つのゾーンで低真空から高真空に徐々に上げられ、成膜に適した真空度に達する。
【0021】
前記成膜チャンバ21は、図2に示すように円環状基台22上に載置された上下端にフランジ23a,23bを有する導電材料からなる円筒状支持部材24を備えている。筒状の導電材料からなる外部電極本体25は、前記支持部材24内に配置されている。円板状をなす導電材料からなる外部電極底部材26は、前記外部電極本体25の底部に着脱可能に取り付けられている。前記外部電極本体25および前記外部電極底部材26によりバリヤ膜(例えば炭素膜)が形成されるプラスチック容器(ペットボトル)Bを設置可能な大きさの空間をもつ有底円筒状の外部電極27が構成されている。円板状絶縁体28は、前記基台22と前記外部電極底部材26の間に配置されている。
【0022】
なお、前記外部電極底部材26、前記円板状絶縁体28および前記基台22は図示しないプッシャーにより前記外部電極本体25に対して一体的に上下動し、前記外部電極本体25の底部を開閉する。
【0023】
内部に挿入されるペットボトルBの口部および肩部に対応する円柱および円錐台を組み合わせた形状をなす空洞部29を有する誘電体材料からなる円柱状スペーサ30は、前記外部電極27における前記本体25の上部に挿入されている。このスペーサ30は、この上に載置される後述する環状絶縁部材から螺着されたねじ(図示せず)により固定されている。環状絶縁部材31は、前記外部電極27上面にその環状絶縁部材31上面が前記筒状支持部材24の上部フランジ23aと面一になるように載置されている。この環状絶縁部材31の中空部は、前記スペーサ30上端の空洞部29と同じ径を有する。
【0024】
このように円柱状スペーサ30を前記外部電極27における前記本体25の上部に挿入し、かつ前記環状絶縁部材31をそのスペーサ30および外部電極27上面に固定することにより、ペットボトルBを前記外部電極本体25の底部側からその内部に挿入すると、そのペットボトルBの口部上端が前記環状絶縁部材31の中空部内に、ペットボトルBの口部および肩部が前記スペーサ30の空洞部29内に、これ以外のペットボトルB部分が前記外部電極27内に収納される。
【0025】
前記スペーサ30を構成する誘電体材料としては、例えば比誘電率が1.5〜20のプラスチックまたはセラミックを挙げることができる。プラスチックとしては、種々のものを用いることができるが、特に高周波損失が低く(例えばtanθが20×10-4以下)、耐熱性の優れたポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系樹脂が好ましい。セラミックとしては、高周波損失が低い(例えばtanθが20×10-4以下)アルミナ、ステアタイトまたは機械加工性が高いマコール(登録商標)が好ましい。
【0026】
導電材料からなる矩形ブロック形状のチャンバヘッド部材32は、前記筒状支持部材24の上部フランジ23aおよび環状絶縁部材31の上面に固定され、かつ接地されている。このチャンバヘッド部材32は、底面から側面(図2の左側面)に亘って断面略L形の放電室33が形成されている。この放電室33は、その底部側で前記環状絶縁部材31の中空部(ペットボトルBの挿入時にはその口部)と連通されている。前記チャンバヘッド部材32の側面には、前記排気管11が前記放電室33と連通するように連結されている。
【0027】
ガス吹き出し部材であるガス供給管34は、前記チャンバヘッド部材32を貫通して前記外部電極27の本体25内におけるペットボトルBの底部付近に挿入されている。このガス供給管34は、例えばアルミニウム、ステンレス鋼などの金属のような導電材料で製作しても、例えばアルミナなどのセラミックのような絶縁材料で製作してもよい。ただし、ガス供給管34は接地された前記チャンバヘッド部材32を貫通することから、導電材料から製作した場合にはチャンバヘッド部材32と共に接地される。
【0028】
前記外部電極27と後述する接地電極間に電界を付与するための電界付与手段である例えば周波数13.56MHzの高周波電力を出力する高周波電源35は、ケーブル36および給電端子37を通して前記外部電極27の本体25側面に接続されている。整合器38は、前記高周波電源35と前記給電端子37の間の前記ケーブル36に介装されている。
【0029】
前記排気管11は、例えばステンレス鋼などの金属のような導電材料で製作され、前記チャンバヘッド部材32に連結することにより接地される。通気性で導電性を有する電界遮蔽部材であるハニカム形導体39は、前記排気管11内の所望位置に配置されている。
【0030】
前記排気管11内へのハニカム形導体39の配置位置を変える(つまり実効的に接地電極として機能する排気管11の長さを変える)ことにより外部電極と接地電極の面積比(S2/S1)を制御することが可能になる。ここで、S1はプラスチック容器が収納される前記外部電極27内面の面積、S2は接地電極の面積、つまり前記チャンバヘッド部材32の放電室33内面およびハニカム形導体39からチャンバヘッド部材32までの排気管11内面の面積を合算した面積である。なお、前記ガス供給管34が導電材料で製作される場合は接地電極として機能することから、そのチャンバヘッド部材32および外部電極27内に位置するガス供給管34の外周面積もS2として合算される。
【0031】
次に、前述した図1および図2に示すバリヤ膜形成装置を用いて内面バリヤ膜被覆プラスチック容器の製造方法を説明する。
【0032】
図1に示すS点において、図示しないプッシャーにより成膜チャンバ21の外部電極底部材26、円板状絶縁体28および基台22を取り外して外部電極本体25の底部を開放する。つづいて、プラスチック容器、例えばペットボトルBを開放した外部電極本体25の底部側にそのペットボトルBの口部側から挿入した後、図示しないプッシャーにより外部電極本体25の底部側に外部電極底部材26、円板状絶縁体28および基台22をこの順序で取り付けることによって、図2に示すようにペットボトルBの口部上端を前記環状絶縁部材31の中空部内に、ペットボトルBの口部および肩部を前記スペーサ30の空洞部29内に、これ以外のペットボトルB部分を前記外部電極27内に収納する。このとき、前記ペットボトルBはチャンバヘッド部材32の放電室33にその口部を通して連通される。
【0033】
次いで、ペットボトルBが収納された成膜チャンバ21を回転式真空シール機構1の回転盤2により反時計回り方向に回転しながら図1のF点でバリヤ膜が形成されたペットボトルを取り出す手前のバリヤ膜の成膜位置までの間、排気管11を通して前記成膜チャンバ21のチャンバヘッド部材32の放電室33および前記ペットボトルB内外のガスを排気し、それらの空間の真空度を回転式真空シール機構1の4つのゾーンで低真空から高真空に徐々に上昇させる。つづいて、バリヤ膜生成ガス(例えば媒質ガス)をガス供給管34に供給し、その下端からペットボトルB内に吹き出させる。この媒質ガスは、さらにペットボトルBの口部に向かって流れていく。ひきつづき、ガス供給量とガス排気量のバランスをとり、前記ペットボトルB内を所定のガス圧力に設定する。
【0034】
次いで、高周波電源35から例えば周波数13.56MHzの高周波電力をケーブル36、整合器38および給電端子37を通して前記外部電極27の本体25に供給する。このとき、前記外部電極27と、接地電極である前記チャンバヘッド部材32およびハニカム形導体39の配置位置からチャンバヘッド部材32までの排気管11部分、(ガス供給管34が導電材料から製作される場合、接地電極として機能する)との間で放電が生じてプラズマが生成される。このようなプラズマの生成によって、媒質ガスが前記プラズマで解離され、成膜種イオンが前記外部電極27内のペットボトルB内面に堆積されて膜質が良好なバリヤ膜である炭素膜が高速で形成されることにより内面バリヤ膜被覆ペットボトルが製造される。この後、成膜チャンバ21が回転式真空シール機構1の回転盤2により図1のF点に達すると成膜チャンバ21から内面バリヤ膜被覆ペットボトルが取り出される。
【0035】
前記媒質ガスとしては炭化水素を基本とし、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ブタジエン等のアルケン類;アセチレン等のアルキン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタリン、フェナントレン等の芳香族炭化水素類;シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロパラフィン類;シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン類;メチルアルコール、エチルアルコール等の含酸素炭化水素類;メチルアミン、エチルアミン、アニリン等の含窒素炭化水素類などが使用でき、その他一酸化炭素、二酸化炭素なども使用できる。また、プラズマの安定化、プラズマ特性の適正化のためにAr,He等の希ガス等を媒質ガスに混合する場合もある。
【0036】
前記バリヤ膜生成ガスとしては、前記媒質ガスの他に、SiOxの成膜のためのヘキサメチルジシロキサンのようなシロキサンと酸素の混合ガスを用いることができる。
【0037】
前記高周波電力は、一般的に13.56MHz、100〜1000Wのものが用いられるが、これに限るものではない。また、これら電力の印加は連続的でも間欠的(パルス的)でもよい。
【0038】
前記ペットボトルB内面へのバリヤ膜の形成に際し、前記排気管11内へのハニカム形導体39の配置位置を変える(つまり実効的に接地電極として機能する排気管11の長さを変える)ことにより前述したペットボトルBが収納される外部電極27内面の面積(S1)と接地電極の面積(S2)との面積比(S2/S1)を1以上に制御することが好ましい。ただし、この面積比(S2/S1)を必要以上に大きくすると、放電領域が広がり過ぎてパワー効率が低下してペットボトル内面に形成されたバリヤ膜のバリヤ性が低下する虞がある。このため、前記面積比(S2/S1)の上限は5にすることが好ましい。
【0039】
以上、第1実施形態によれば回転式真空シール機構1の回転盤2に排気管11を通して複数連結された成膜チャンバ21内にペットボトルBを収納し、そのペットボトルBの内面にバリヤ膜を連続的に形成する際、排気管11内に通気性で導電性を有する電界遮蔽部材であるハニカム形導体39を配置し、導電材料からなるチャンバヘッド部材32のみならず前記ハニカム形導体39の配置位置からチャンバヘッド部材32までの排気管11部分をも接地電極として機能させて放電領域をチャンバヘッド部材32からこれに連通する排気管11まで広げることによって、大きなプラズマシース電圧を外部電極27とチャンバヘッド部材32および前記排気管11部分を含む接地電極との間に印加でき、プラズマ内で解離された媒質ガスのようなバリヤ膜生成ガスからの高エネルギーの正イオンを前記ペットボトルB内面に入射できるために、ペットボトルB内面に膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜を高速で形成できる。
【0040】
また、導電材料からなる排気管11内部の所望位置にハニカム形導体39を配置することによって、排気管11内に発生させる放電領域をハニカム形導体39で規制して回転式真空シール機構1にまで達するのを阻止できるため、放電不安定、電源異常の誘発を防ぐことができる。
【0041】
なお、前記排気管11内へのハニカム形導体39の配置位置を変える(つまり実効的に接地電極として機能する排気管11の長さを変える)ことにより前述したペットボトルが収納される外部電極27内面の面積(S1)と接地電極の面積(S2)との面積比(S2/S1)を1以上に制御することによって、ペットボトルB内面に膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜を高速で形成できる。
【0042】
さらに、空洞部29を有する誘電体材料からなる円柱状スペーサ30を外部電極27の上部に挿入、固定し、ペットボトルBの少なくとも口部から肩部を前記スペーサ30の空洞部29内にその内面に接触させて収納させることによって、前記ペットボトルBの肩部から下の胴部内面のみならず、前記誘電体材料からなるスペーサ30と対向するペットボトルBの口部から肩部の内面に均一厚さで膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜を形成することができる。
【0043】
したがって、ペットボトルB内面に膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜を高速で形成することが可能な高信頼性のプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置を提供できる。
【0044】
また、外部からの酸素の透過、内部(例えば炭酸飲料水)からの二酸化炭素の透過を防止したバリヤ性の優れた内面バリヤ膜被覆ペットボトルを製造することができる。
【0045】
なお、前述した第1実施形態では排気管11内に配置する通気性で導電性を有する電界遮蔽部材としてハニカム形導体を用いたが、以下の図3、図4を参照して説明するように種々の形態のものを使用することが可能である。なお、図3、図4において前述した図2と同様な部材は同符号を付して説明を省略する。
【0046】
(1)図3に示すように通気性で導電性を有する電界遮蔽部材である複数枚、例えば3枚積層した金属メッシュ40は、前記排気管11内の所望位置に配置されている。このような構成において、前記排気管11内への積層金属メッシュ40の配置位置を変える(つまり実効的に接地電極として機能する排気管11の長さを変える)ことにより外部電極と接地電極の面積比(S2/S1)を制御することが可能であり、その面積比(S2/S1)を1以上にすることが好ましい。ただし、前述したように放電領域が広がり過ぎることによるペットボトル内面に形成されたバリヤ膜のバリヤ性の低下を考慮して、前記面積比(S2/S1)の上限を5にすることが好ましい。
【0047】
(2)図4に示すように通気性で導電性を有する電界遮蔽部材である導電材料からなるバッフル41は、前記排気管11内の所望位置に配置されている。このような構成において、前記排気管11内へのバッフル41の配置位置を変える(つまり実効的に接地電極として機能する排気管11の長さを変える)ことにより外部電極と接地電極の面積比(S2/S1)を制御することが可能であり、その面積比(S2/S1)を1以上にすることが好ましい。ただし、前述したように放電領域が広がり過ぎることによるペットボトル内面に形成されたバリヤ膜のバリヤ性の低下を考慮して、前記面積比(S2/S1)の上限を5にすることが好ましい。
【0048】
(実施例1)
前述した図1および図2に示すバリヤ膜形成装置を用い、ペットボトルBの口部上端を前記環状絶縁部材31の中空部内に、ペットボトルBの口部および肩部を前記スペーサ30の空洞部29内に、これ以外のペットボトルB部分を前記外部電極27内に収納し、アルミニウム製のガス供給管34を用い、かつ排気管11内へのハニカム形導体39の配置位置を変えてペットボトルBが収納される外部電極27内面の面積(S1)と接地電極の面積(S2)との面積比(S2/S1)を制御し、下記条件で前記ペットボトルB内面に炭素膜を形成した。
【0049】
<炭素膜の形成条件>
・円柱状スペーサ30:ホトベール(商品名、住金セラミックス製)から製作、
・面積比(S2/S1)=1〜3.5、
・媒質:C22ガス、
・媒質のガス流量:124sccm、
・ペットボトルBおよびチャンバヘッド部材32内のガス圧力:0.3Torr、
・外部電極27に供給する高周波電力:13MHz、1600W、
・成膜時間:3秒間。
【0050】
(比較例1)
前述した図1および図2に示すバリヤ膜形成装置を用い、ペットボトルBの口部上端を前記環状絶縁部材31の中空部内に、ペットボトルBの口部および肩部を前記スペーサ30の空洞部29内に、これ以外のペットボトルB部分を前記外部電極27内に収納し、かつハニカム形導体をチャンバヘッド部材33における立ち上がりから排気管11側に延びる角部に配置して排気管を放電領域と機能させず、外部電極27内面の面積(S1)と接地電極の面積(S2)との面積比(S2/S1)を0.7にした以外、実施例1と同様な方法でペットボトル内面に炭素膜を形成した。
【0051】
実施例1および比較例1において面積比(S2/S1)が異なる値で炭素膜を形成したペットボトルBの胴部から30cm2のサンプルをそれぞれ切り出し、酸素透過率測定装置(Modern Control社商品名:OXTRAN)を用いて酸素透過率を測定し、厚さ20nmの炭素膜に換算した酸素透過率から相対的な酸素バリヤ性を求めた。これらの結果を図5に示す。
【0052】
図5からから明らかなように排気管11を実効的に放電領域として機能させ、外部電極27内面の面積(S1)と接地電極の面積(S2)との面積比(S2/S1)を1以上にした実施例1では、排気管11を放電領域として機能させず、前記面積比(S2/S1)を0.7とした比較例1に比べてガスバリヤ性が良好、つまり膜質が良好な炭素膜をペットボトルB内面に形成できることがわかる。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置は、図6に示す排気管構造が異なる以外、実質的に前述した図1および図2と同様な構造を有する。
【0054】
このバリヤ膜形成装置は、図6に示すように排気管11がステンレス鋼などの金属のような導電材料からなる管部(導電管部)12aとポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂、アルミナなどのセラミックのような絶縁材料からなる管部(絶縁管部)12bとを互いに連結して構成されている。この導電管部12a側は、成膜チャンバ21のチャンバヘッド部材32の側面にその部材32の放電室33と連通するように連結され、前記絶縁管部12b側は回転式真空シール機構1の回転盤2に連結されている。
【0055】
前記排気管11に占める導電管部12aの長さを変える(つまり実効的に接地電極として機能する排気管11の長さを変える)ことにより、前述したペットボトルBが収納される外部電極27内面の面積(S1)と接地電極の面積(S2)との面積比(S2/S1)を制御でき、その面積比(S2/S1)を1以上にすることが好ましい。ただし、前述したように放電領域が広がり過ぎることによるペットボトル内面に形成されたバリヤ膜のバリヤ性の低下を考慮して、前記面積比(S2/S1)の上限を5にすることが好ましい。
【0056】
以上、第2実施形態によれば図1に示す回転式真空シール機構1の回転盤2に排気管11を通して複数連結された成膜チャンバ21内にペットボトルBを収納し、そのペットボトルBの内面にバリヤ膜を連続的に形成する際、排気管11を導電管部12aと絶縁管部12bとで構成し、前記導電管部12aを成膜チャンバ21のチャンバヘッド部材32の側面にその部材32の放電室33と連通するように連結し、導電材料からなるチャンバヘッド部材32のみならず前記排気管11の導電管部12aをも接地電極として機能させて放電領域をチャンバヘッド部材32からこれに連通する排気管11の導電管部12aまで広げることによって、大きなプラズマシース電圧を外部電極27とチャンバヘッド部材32および前記排気管11部分を含む接地電極との間に印加でき、プラズマ内で解離された媒質ガスのようなバリヤ膜生成ガスからの高エネルギーの正イオンを前記ペットボトルB内面に入射できるために、ペットボトルB内面に膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜を高速で形成できる。
【0057】
また、前記排気管11を導電管部12aと絶縁管部12bとで構成することによって、放電領域を排気管11の導電管部12a内に規制して回転式真空シール機構1にまで達するのを阻止できるため、放電不安定、電源異常の誘発を防ぐことができる。
【0058】
なお、前記排気管11に占める導電管部12aの長さを変える(つまり実効的に接地電極として機能する排気管11の長さを変える)ことにより、前述したペットボトルBが収納される外部電極27内面の面積(S1)と接地電極の面積(S2)との面積比(S2/S1)を1以上に制御することによって、ペットボトルB内面に膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜を高速で形成できる。
【0059】
したがって、第2実施形態によれば第1実施形態と同様、ペットボトルB内面に膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜を高速で形成することが可能な高信頼性のプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置を提供できる。
【0060】
また、外部からの酸素の透過、内部(例えば炭酸飲料水)からの二酸化炭素の透過を防止したバリヤ性の優れた内面バリヤ膜被覆ペットボトルを製造することができる。
【0061】
(実施例2)
前述した図1および図6に示すバリヤ膜形成装置を用い、ペットボトルBの口部上端を前記環状絶縁部材31の中空部内に、ペットボトルBの口部および肩部を前記スペーサ30の空洞部29内に、これ以外のペットボトルB部分を前記外部電極27内に収納し、アルミニウム製のガス供給管34を用い、かつ排気管11を構成する導電管部12aの長さを変えてペットボトルBが収納される外部電極27内面の面積(S1)と接地電極の面積(S2)との面積比(S2/S1)を制御し、下記条件で前記ペットボトルB内面に炭素膜を形成した。
【0062】
<炭素膜の形成条件>
・円柱状スペーサ30:ホトベール(商品名、住金セラミックス製)から製作、
・面積比(S2/S1)=1〜3.5、
・媒質:C22ガス、
・媒質のガス流量:124sccm、
・ペットボトルBおよびチャンバヘッド部材32内のガス圧力:0.3Torr、
・外部電極27に供給する高周波電力:13MHz、1600W、
・成膜時間:3秒間。
【0063】
実施例2において面積比(S2/S1)が異なる値で炭素膜を形成したペットボトルBの胴部から30cm2のサンプルをそれぞれ切り出し、酸素透過率測定装置(Modern Control社商品名:OXTRAN)を用いて酸素透過率を測定し、厚さ20nmの炭素膜に換算した酸素透過率から相対的な酸素バリヤ性を求めた。その結果、実施例1と同様、排気管11を放電領域として機能させない場合に比べてガスバリヤ性が良好、つまり膜質が良好な炭素膜をペットボトルB内面に形成できた。
【0064】
なお、前述した実施例1、2ではガス供給管34をアルミニウムで製作したものを用いたが、アルミナのようなセラミックから製作したガス供給管に代えてもガスバリヤ性が若干下がるものの、遜色のない良好な膜質を有する炭素膜をペットボトルB内面に形成できた。これは、セラミックから製作したガス供給管は接地電極として機能せず、前記面積比(S2/S1)が若干下がることに起因する。
【0065】
前述した第1、第2の実施形態では、電界付与手段として外部電極に接続される高周波電源を用いたが、例えば外部電極に接続されたバイアス電源とガス供給管(内部電極)に接続された高高周波電源とにより電界付与手段を構成し、ガス排気管を接地電位としてもよい。このような構成によれば、バリヤ膜である炭素膜の形成速度を向上することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上詳述したように本発明によれば、回転式真空シール機構との関係で放電不安定、電源異常の誘発を防止できると共に、回転式真空シール機構に排気管を通して連通された複数の成膜チャンバにおいて、プラスチック容器内面に膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜を高速度で形成することが可能な量産性に優れたプラスチック容器の内面へのバリヤ膜形成装置を提供することができる。
【0067】
また、本発明によれば回転式真空シール機構との関係で放電不安定、電源異常の誘発を防止できると共に、回転式真空シール機構に排気管を通して連通された複数の成膜チャンバにおいて、膜質が良好な炭素膜のようなバリヤ膜が内面に形成され、酸素および二酸化炭素に対するバリヤ性が優れた飲料用ペットボトルなどに有用なプラスチック容器を製造し得る方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラスチック容器の内面へのバリヤ膜形成装置を示す平面図。
【図2】図1の成膜チャンバを含む要部断面図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る別の形態のプラスチック容器の内面へのバリヤ膜形成装置を示す要部断面図。
【図4】本発明の第1実施形態に係るさらに別の形態のプラスチック容器の内面へのバリヤ膜形成装置を示す要部断面図。
【図5】本発明の実施例1および比較例1におけるガスバリヤ性を示す特性図。
【図6】本発明の第2実施形態に係るプラスチック容器の内面へのバリヤ膜形成装置を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0069】
1 回転式真空シール機構
2 回転盤
11 排気管
12a 導電材料からなる管部(導電管部)
12b 絶縁材料からなる管部(絶縁管部)
21 成膜チャンバ
27 外部電極
30 円柱状スペーサ
32 チャンバヘッド部材
34 ガス供給管
35 高周波電源
39 ハニカム導体(通気性で導電性を有する電界遮蔽部材)
40 積層金属メッシュ(通気性で導電性を有する電界遮蔽部材)
41 バッフル(通気性で導電性を有する電界遮蔽部材)
B ペットボトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式真空シール機構と、この回転式真空シール機構に排気管を通して連通され、被処理物であるプラスチック容器の内面にバリヤ膜を成膜するための複数の成膜チャンバとを具備し、
前記排気管は、導電材料からなり、前記成膜チャンバから所望距離離れた内部に通気性で導電性を有する電界遮蔽部材が配置され、かつ
前記成膜チャンバは、前記プラスチック容器が挿入された時にその容器を取り囲む大きさの空洞を有する外部電極と、この容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられ、前記排気管が連結されると共に接地される導電性のチャンバヘッダ部材と、前記外部電極内の前記プラスチック容器内に前記チャンバヘッダ部材側から挿入され、バリヤ膜生成ガスを吹き出すためのガス吹き出し部材と、前記外部電極と接地された前記チャンバヘッダ部材および排気管との間に電界を付与するための電界付与手段とを備えることを特徴とするプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置。
【請求項2】
前記電界遮蔽部材は、ハニカム構造またはメッシュ形状を有することを特徴とする請求項1記載のプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のバリヤ膜形成装置を用いて内面バリヤ膜被覆プラスチック容器を製造するにあたり、
(a)被処理物であるプラスチック容器を複数の成膜チャンバの各外部電極内にそれぞれ挿入する工程と、
(b)ガス吹き出し部材を前記容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられた導電性のチャンバヘッダ部材から前記プラスチック容器の内部に挿入する工程と、
(c)回転式真空シール機構により前記容器内外および前記チャンバヘッダ部材のガスを内部の所望位置に通気性で導電性を有する電界遮蔽部材が配置された排気管を通して排気しつつ、前記ガス吹き出し部材からバリヤ膜生成ガスを前記プラスチック容器内に吹き出して前記プラスチック容器内を含む前記チャンバヘッダ部材および排気管内を所定のガス圧力に設定する工程と、
(d)電界付与手段により前記外部電極と前記チャンバヘッダ部材および電界遮蔽部材位置から前記チャンバヘッダ部材に位置する前記排気管部分を含む接地電極との間に電界を付与し、前記プラスチック容器内を含む前記チャンバヘッダ部材および前記排気管部分にプラズマを生成させ、このプラズマにより前記バリヤ膜生成ガスを解離させて前記プラスチック容器内面にバリヤ膜を形成する工程と
を含むことを特徴とする内面バリヤ膜被覆プラスチック容器の製造方法。
【請求項4】
回転式真空シール機構と、この回転式真空シール機構に排気管を通して連通され、被処理物であるプラスチック容器の内面にバリヤ膜を成膜するための複数の成膜チャンバとを具備し、
前記排気管は、導電材料からなる管部と絶縁材料からなる管部とから構成され、導電材料からなる管部は前記各成膜チャンバに連結され、かつ
前記成膜チャンバは、前記プラスチック容器が挿入された時にその容器を取り囲む大きさの空洞を有する外部電極と、この容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられ、前記導電材料からなる管部が連結されると共に接地される導電性のチャンバヘッダ部材と、前記外部電極内の前記プラスチック容器内に前記チャンバヘッダ部材側から挿入され、バリヤ膜生成ガスを吹き出すためのガス吹き出し部材と、前記外部電極と接地された前記チャンバヘッダ部材および前記導電材料からなる管部との間に電界を付与するための電界付与手段とを備えることを特徴とするプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置。
【請求項5】
請求項4記載のバリヤ膜形成装置を用いて内面バリヤ膜被覆プラスチック容器を製造するにあたり、
(a)被処理物であるプラスチック容器を複数の成膜チャンバの各外部電極内にそれぞれ挿入する工程と、
(b)ガス吹き出し部材を前記容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられた導電性のチャンバヘッダ部材から前記プラスチック容器の内部に挿入する工程と、
(c)回転式真空シール機構により前記容器内外および前記チャンバヘッダ部材のガスを導電材料からなる管部と絶縁材料からなる管部とから構成された排気管を通して排気しつつ、前記ガス吹き出し部材からバリヤ膜生成ガスを前記プラスチック容器内に吹き出して前記プラスチック容器内を含む前記チャンバヘッダ部材および排気管内を所定のガス圧力に設定する工程と、
(d)電界付与手段により前記外部電極と前記チャンバヘッダ部材および前記導電材料からなる管部を含む接地電極との間に電界を付与し、前記プラスチック容器内を含む前記チャンバヘッダ部材および前記導電材料からなる管部にプラズマを生成させ、このプラズマにより前記バリヤ膜生成ガスを解離させて前記プラスチック容器内面にバリヤ膜を形成する工程と
を含むことを特徴とする内面バリヤ膜被覆プラスチック容器の製造方法。
【請求項6】
誘電体材料からなるスペーサは、前記プラスチック容器が挿入された時に少なくともその容器の口部および肩部と前記外部電極との間に介在されることを特徴とする請求項1または4記載のプラスチック容器内面へのバリヤ膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−131955(P2007−131955A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18275(P2007−18275)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【分割の表示】特願2004−9548(P2004−9548)の分割
【原出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】