説明

プラズマを形成するための装置および方法

【課題】マイクロ波プラズマを信頼性高く起動できるようにすること。
【解決手段】半導体製造プロセスツールからの排ガス流を処理するための装置が開示されている。この装置は不活性のイオン化可能なガスからグロー放電を発生させるためのプラズマトーチを含み、ガス流はプラズマを点弧するためのガス放電へ送られる。プラズマを持続させるよう、排ガス流に電磁波ソースによって電磁波が印加される。この装置は特に排ガス流内の過フッ素化化合物およびハイドロフルオロカーボン化合物を処理するのに特に適す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマソースに関し、特に本発明はプラズマ低減システムで使用できる実施例を提供するものであるが、かかるシステムだけに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
安定なプラズマが形成されるには所定の物理条件が存在しなければならない。しかしながら、これら条件が存在していても、プラズマは瞬間的に点弧しないことがある。この現象の例は周知であり、例えば大気圧アーク溶接器はRF起動を必要とする。別の公知のプラズマ点弧技術はテスラーコイルを使用してスパーク点弧を誘導する。しかしながら、これら技術のいずれも、プラズマ反応チャンバ内で金属部品を使用しているので不利となり得る。マイクロ波ポンピングシステムの場合、かかる金属部品はプラズマをアースすることが判っており、これによってプラズマは不安定となる。
【0003】
プラズマを点弧するのに使用されるその他の公知の方法は、プラズマを形成すべきガスの圧力を下げ、基本的なプラズマガスよりもより容易にイオン化されるアルゴン、ヘリウムまたはその他のガスを導入している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特にマイクロ波プラズマでは信頼性のある点弧を行うことが重要である。かかるプラズマを形成する際にマグネトロンによって一般にマイクロ波を発生され、マイクロ波は導波管を通してプラズマへ送信され、プラズマによってマイクロ波のエネルギーは一般に定在波状態で吸収される。しかしながら、プラズマが点弧されない場合(すなわちプラズマがなく、ガスしか存在しない場合)、ほとんどのエネルギーが吸収されず、定在波状態ではかなりの量の入射エネルギーが反射され、マグネトロンへ戻され、深刻なことにマグネトロンの寿命が短くなり得る。かかるバック反射はマイクロ波送信ライン内に一方向サーキュレータ、すなわちバルブを設けることによって低減できるが、かかる装置はデバイスのコストを増す。従って、マイクロ波プラズマを信頼できる状態で点弧する方法が望ましい。
【0005】
プラズマ低減方法は製造プロセスから排ガスを除去する、広く使用されている方法となっており、過ハロゲン化化合物、特に過フッ素化化合物(PFC)を減成することに特定の用途がある。
【0006】
PFCは半導体製造業界、例えば絶縁膜エッチングで広く使用されており、製造プロセス後には排ガス内に残留PFC成分が一般に存在する。このPFCは排ガスから除去することが困難であり、環境にこれらPFCが放出されることは望ましくない。その理由は、これらPFCは比較的高い温室効果があることが判っているからである。これまでに種々の低減方法、例えば燃焼、反応吸着および触媒酸化が使用されてきた。低減の目的はPFCを、例えば従来のスクラビングにより、より都合よく廃棄できる1つ以上の化合物に変換することである。
【0007】
このプラズマ低減方法はPFCをあまり害のない種に減成するための有効な方法であることが証明されている。このプラズマ低減方法では、減成すべきこれら種を含む排ガスが高密度プラズマ内に流入させられ、プラズマ内の集中的条件下でPFCはエネルギーの高い電子による衝撃を受け、反応性種に分解され、これら種は酸素または水素と結合し、比較的安定な底分子量の副生成物、例えばCO、CO2およびHFとなるが、これらは別の処理ステップで除去できる。
【0008】
これまで公知のある種のプラズマ低減方法では、プラズマはマイクロ波プラズマとなっている。高周波プラズマを使用することも知られている。
【0009】
英国特許明細書第GB2273027A号には、マイクロ波プラズマ低減方法で使用するのに適したある種のデバイスが記載されている。このデバイスでは、密に対向する関係にある2つの電極の間でマイクロ波プラズマが発生される。上記英国特許第GB2273027A号に示された装置では、自動起動式である。英国特許第GB2273027A号の装置は反応生成物による電極の、比較的程度の高い腐食があるという問題がある。
【0010】
米国特許出願第2002/0101162号は、テスラーコイルからのスパークによって点弧されるマイクロ波プラズマ発生器について述べている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、プラズマにより処理すべきガスと異なる流体からプラズマを点弧するためのイオン化された流体流を発生させるための手段と、前記プラズマを持続させるようになっている構造体とを備えた、前記ガスを処理するためのプラズマを形成するための装置が提供される。
【0012】
本発明者達は、イオン化された流体流を設けることにより、例えばグロー放電ソースを設けることにより、プラズマが信頼できる状態で自動起動できないような、プラズマ持続構造体内の電界条件となっている場合に、プラズマの効果的な点弧を可能にできることを実証した。
【0013】
この装置はプラズマ低減システム内に設けることができる。従って、本発明は、排ガス流と異なる流体からイオン化された流体流を発生するための手段と、前記排ガス流をイオン化された流体流まで運び、プラズマを点弧するための手段と、 前記排ガス流に電磁波を印加し、プラズマを持続させるための手段とを備えた、半導体製造プロセスツールからの排ガス流を処理するための装置も提供するものである。
【0014】
上記のように、プラズマ持続構造体はプラズマを持続させる際に電磁波を利用するようにできる。従って、このプラズマ持続構造体は電磁波ソースを含んでもよいし、または電磁波ソースに接続できるようにしてもよい。この電磁波はマイクロ波でもよいし、または無線周波数電磁波でもよい。マイクロ波および無線周波数プラズマは特に上記のようにプラズマ低減システムにおいて重要である。電磁波の周波数は、例えば約580kHz、13.56MHz、27MHz、915MHzまたは2.45GHz(従来の装置はほぼこれら周波数で作動する)である。このプラズマ持続構造体は電磁波の周波数で共振するチャンバを含むことができる。共振キャビティを使用する結果、電磁定在波を形成でき、この定在波は特に定在波の波腹(単数または複数)の近くで電磁波強度を集中的に強化できる。
【0015】
このプラズマ持続構造体はプラズマによって処理すべきガス流に接続できるチャンバを含むことができる。
【0016】
このプラズマ持続構造体は少なくとも1つのプラズマ集中化電極を含むことができる。プラズマをプラズマ持続構造体内の比較的制限された領域に集中化することにより、プラズマの点弧および持続をより容易に達成できるようにする圧力低下を得ることができる。プラズマ集中化電極は先の尖ったものでよく。この先の尖った電極はその近くの電界強度を増す。プラズマ集中化電極は電磁定在波の波腹またはその近くに配置できる。プラズマ持続構造体は2つのプラズマ集中化電極を含むことができる。
【0017】
上記のように、例えば英国特許第GB2273027A号に記載されている公知の所定のプラズマ反応器では、対向する電極の間にプラズマが集中化される。このプラズマは入射電磁波に寄与できる部品とプラズマに寄与できる部品とを備えた電極間の電界によって持続される。上記公知の装置では、電極を例えば0.1〜0.5mmの距離に密に対向させると有利であると考えられた。現在では、電極間の間隔を広くすることによって低減されるプラズマ反応の腐食性副生成物によりプラズマの安定性が高められ、電極が腐食されることが判っている。従って、例えば一部の実施例ではプラズマ集中化電極は互いに対向し、少なくとも1mm、例えば2mm〜8mmの間隔だけ離間した第1電極と第2電極とを含むことができる。
【0018】
電極間の間隔を広くした結果、所定の印加電圧に対して電極間の電磁界強度を小さくできる。この結果、プラズマを最初に信頼できる状態で形成するための条件をなくすことができる。
【0019】
上記装置はプラズマの安定性および腐食を低減するという点で望ましい条件で作動できる可能性を提供するものであり、かつプラズマの有効な点弧を行うことができる。このような効果的な点弧は作動条件ではこれまで本発明でなければ達成できないか、または信頼できる状態で達成できなかったことである。別の利点は、電極を密に接近させなくてもよいようにすることにより、より高いガス流量を取り扱いできる大きなプラズマソースを提供できるということである。
【0020】
プラズマ集中化電極はアース電位とすることができる。従って、プラズマおよび入射電磁波は、プラズマ集中化電極と大幅に異なる電位とすることができる。
【0021】
プラズマ持続構造体はプラズマ形成中は実質的に大気圧に置くことができる。装置を大幅に簡略化した結果、プラズマ持続構造体を大気圧以外の圧力に維持しなくてもよいようになった。
【0022】
上記のように、イオン化された流体流はグロー放電とすることが好ましい。周知のように、グロー放電は明るい熱プラズマである。このグロー放電はガスのブレークダウン電圧よりも高い電圧をガスに印加することによって形成される。一旦グロー放電が達成されると、これを持続するのに必要な電圧はブレークダウン電圧よりも一般に低くなる。グロー放電ソースはグロー放電を形成するためのグロー放電電極を含むことができる。グロー放電ソースはグロー放電ガス(すなわちグロー放電が形成されるガス)のソースを含んでもよいし、またはこれに接続できるようになっていてもよい。グロー放電ガスは窒素または貴ガス、もしくはその他の実質的に不活性のイオン化可能なガスでよい。プラズマを形成するためのガスは、例えば製造プロセスからの排ガスを含んでもよい。
【0023】
前記グロー放電電極は、細長くてよい。
【0024】
前記グロー放電を発生するための前記手段は、前記グロー放電を開始するのに十分高い電圧を発生するための回路と、少なくとも0.1秒の間、グロー放電を持続するのに十分な電流を発生するための回路を含むことができる。前記グロー放電ソースは、プラズマを点弧した後にグロー放電の発生を終了するようになっている。従って、前記グロー放電ソースは、10秒までの間、例えば、5秒までの間、例えば1〜5秒の間、グロー放電を発生することができる。
【0025】
グロー放電電極はアース電位とすることができるプラズマ持続構造体に放電するようにできる。
【0026】
グロー放電電極は使用時にプラズマ持続構造体の上流におけるグロー放電ガス流内に位置し、よってグロー放電ガスによりグロー放電をプラズマ持続構造体まで運ぶことができる。かかる構造の特定の利点は極めて高温であり、潜在的に反応性がある装置の領域からグロー放電電極を離間させることができるということである。かかる領域から電極を離すことにより、電極の寿命を大幅に延ばすことができる。
【0027】
前記グロー放電ソースは、実質的に円筒形のチャンバを備え、該チャンバは、前記イオン化された流体流を前記チャンバ内に実質的に接線方向に導入するようになっている入口を含むことができる。
【0028】
上記のように、グロー放電によってプラズマを点弧することが好ましい。しかしながらプラズマを点弧するのに任意の適当なイオン化された流体流を使用できる。一部の実施例では、グロー放電以外の放電、例えばコロナ放電またはアーク放電により、イオン化されたガス流を発生してもよい。グロー放電に基づく装置に関連してこれまで説明した特徴事項の少なくとも一部は、別の適当なイオン化されたガス流を利用するシステムで使用するのにも適す。
【0029】
本発明は、プラズマにより処理すべきガスと異なる流体からプラズマを点弧するためのイオン化された流体流を発生するステップと、前記プラズマを持続させるための電磁波を供給するためのステップとを備えた、ガスを処理するためのプラズマを形成する方法も提供する。
【0030】
この方法は、第1ロケーションにおいてイオン化されたプラズマ流を発生するステップと、プラズマを点弧する第2ロケーションへ前記イオン化した流体流を運搬するステップとを備えることができる。前記電磁波の周波数で共振するチャンバ内で前記プラズマを発生することが好ましい。実質的に大気圧で前記プラズマを形成することが好ましい。前記流体は、前記プラズマによって処理すべきガスと異なる組成であることが好ましい。イオン化された流体流は、グロー放電であることが好ましい。
【0031】
本発明は、排ガス流と異なる流体からイオン化された流体流を発生するステップと、前記イオン化された流体流を前記排ガス流に加え、プラズマを点弧するステップと、前記排ガス流に電磁波を供給し、前記プラズマを持続させるステップとを備えた、半導体製造プロセスツールからの排ガス流を処理する方法もさらに提供する。
【0032】
前記排ガス流は、過フッ素化化合物またはハイドロフルオロカーボン化合物、例えばCF4,C26、CHF3、C38、C48、NF3およびSF6のうちの1つを含むことができる。
【0033】
以下添付図面を参照して、単なる例により発明に実施例について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1を参照すると、低減システムは導波管3を介してマイクロ波供給装置2が接続されたマイクロ波プラズマ反応器1と電源4とを備える。ペルフルオロカーボンおよびオプションとしての追加不活性ガスを含む排ガスを備えた、処理すべきガスが、矢印Aで示すように反応器1へ送られる。分解生成物を含む処理されたガスは、矢印Bで示されるように反応器1を離間し、その後、例えばスクラビングによる処理を受ける。
【0035】
図2を参照すると、反応器1は導電性ハウジング5を有し、このハウジングの内部にチャンバ6を構成するマイクロ波を透過する材料から製造された円筒形の壁(図には示されず)が設けられている。この導電性のハウジング5はマイクロ波3(図には示されず)に接続されており、底部壁7を有し、この壁内には開口部8が設けられ、この開口部は処理されたガスのための出口チューブ9と連通している。開口部8内には第1プラズマ集中化電極10が収納され、この電極は上端部に導電性フランジ11を有する管状部材から成り、フランジ11は底部壁7内のリセス内に電極10を位置決めしている。電極10は電極10の下端部に螺合によって係合可能なナット12により所定位置に固定されている。
【0036】
ハウジング5の上部部分は閉鎖手段13によって閉じられており、閉鎖手段は中心ボア14を構成し、このボア内に円筒形ハウジング18が収納されている。ハウジング18の端部17には第2プラズマ集中化電極16が収納されており、この電極は電極16と同心状に配置されている。電極アセンブリ16は中空シリンダであり、このシリンダは電極10に対向するように配置されており、これら電極10と16とは一対のプラズマ集中化電極を構成している。
【0037】
グロー放電電極アセンブリ15のフランジ24はハウジング18にグロー放電電極アセンブリ15が載るようにハウジング18に嵌合している。アセンブリ15とハウジング18と電極16は、電極16を介してチャンバ6に連通する第2チャンバ19を構成している。ハウジング18内にはプラズマ点弧用グロー放電電極20が同心状に配置されており、このグロー放電電極20は電極16および10に向いているが、これら電極から離間する先の尖った端部21を有する公電圧電極の形態となっている。点弧電極はイオン化された流体流を形成する。この流体流はこの実施例ではグロー放電の形態となっている。チャンバ19の上部領域にはグロー放電ガスを流すための入口22がある。この入口22はチャンバ19に対して接線方向に配置され、電極20を中心とし、電極16に全体が下方に向いた螺旋状の流れ経路の形成を促進するようになっている。電極アセンブリ15はコネクタ23を介して電源に接続されている。
【0038】
図3にはアセンブリ15がより詳細に示されており、このアセンブリ15はハウジング27を含む。ハウジング27は下端部に開口部を有する円筒形の壁であり、図2の構造では、ハウジング27がハウジング18に置換されており、ハウジング18がプラズマ反応器の一部を形成すると共に、反応器の電極16を含む。この反応電極16に対し、電極20が放電するようになっている。本発明の別の実施例では、従来の反応器またはその他のプラズマ持続構造体内にアセンブリ15が挿入されている。このような場合、ハウジング17は放電ガスの流れを流すか、または電極20が放電できる表面を提供しなければならない。
【0039】
図2の反応器を通常に使用する間、処理すべきガスは入口(図示せず)を介してチャンバ6にポンピングされ、電極10と16の間を通過し、出口チューブ9を通ってチャンバ6を離れる。
【0040】
マイクロ波周波数の電磁波は、マグネトロンから導波管を介してチャンバ6へ入力される。導波管はチャンバ6の第1の側面に当接している。チャンバ6の反対側において導波管の連続部は移動可能なエンドプレートを有し、このエンドプレートは入射マイクロ波が定在波を形成するように調節される。このプレートは定在波が電極10および16における波腹と共に定在波が形成されるように調節される。このように、チャンバにマイクロ波を送る方法は、当業者には周知である。
【0041】
電極10、16は電気的にはアース電位にある。これら電位は5mmだけ離間しており、通常の使用時には、これら電位10、16は処理すべきガスから形成されたプラズマを集中化するよう、すなわち閉じこめるように働く。マイクロ波定在波の波腹にてプラズマは集中化されるので、マイクロ波電磁界からプラズマへ電力が効率的に結合される。
【0042】
毎分20リットルの流量で流れる(処理のための4フッ化炭素を含む)窒素内で安定なプラズマを形成するには、10kWから2kWのマイクロ波電力が必要である。しかしながら、入射マイクロ波電力だけでガスをプラズマに点弧するには、これら電極10と16の間の間隔は大きすぎる。グロー放電ソース15は下記のようにプラズマを点弧するためのグロー放電を発生するプラズマトーチとして働く。プラズマが一旦点弧されると、このプラズマはハウジング5内、特に電極10、16の近くの電磁波条件によって持続される。
【0043】
アセンブリ15の入口25を通ってチャンバ19内に不活性のイオン化可能なガス(本例では窒素)が流れるようになっている。このガスにおいて、グロー放電は次のように形成される。
【0044】
電極22は低電圧大電流ソース(本例では図4に示されているコンデンサ64)が永続的に接続されている。しかしながら、アースまでの導電性パスが存在しない場合、この電流源から大きな電流は流れることができない。プラズマの点弧中、一時的に電極20へ高電圧が印加される。この高電圧の結果、電極20の端部21から窒素ガスを通って近接部分の電極16へコロナ放電が生じる。このコロナ放電によって停電圧源からの大電流がアースまで流れるときに通過するパスが生じる。この大電流の流れによって窒素内にグロー放電が形成される。
【0045】
こうして形成されたグロー放電はチャンバ19から電極16を通ってチャンバ6までガス流によって移動させられる。(電源2から受信された)矢印Cによって表示されるマイクロ波は効率的にグロー放電に結合でき、一般に1秒未満の時間でプラズマの点弧が生じ、安定したマイクロ波プラズマが生じる。この安定したマイクロ波プラズマは(一般に3秒後に)電極20への電源をオフにした後でもマイクロ波ソースおよび電極10および16によって維持できる。
【0046】
プラズマを点弧するためにグロー放電の瞬間電力はプラズマを維持するのに必要な電力に等しくすべきであること、すなわちチャンバ6内において、窒素の流量が毎分20リットルである場合、1kWから2kWのレンジ内の電力とすべきであることを発見した。
【0047】
従って、電磁界によって維持されるガス放電からマイクロ波プラズマが生じる。これを維持するための条件は、帯電粒子の特性およびエネルギー損失機構によって決定される。
【0048】
図4には電極20へ高電圧および低電圧DC電流を供給するための適当なコンデンサ放電回路が示されている。
【0049】
電極20と電極16とを備えた点弧器70には高電圧(5kV)トランス50が接続されている。電極20への接続は半波整流器ダイオード51を介して行われ、ダイオード52は電流が電極20を通る放電に対して逆方向にあるときに、トランス50のACサイクルの一部の間で放電のための電流ルートを形成する。
【0050】
点弧器70には低電圧(240V)トランス60も接続されている。このトランス60は全波整流ブリッジ61および330Ωの抵抗器62と4.7kΩの抵抗器63に接続されている。抵抗器63は10000μFのコンデンサ64に並列に接続されており、ダイオード65のバンクを介して電極20に接続されている。ダイオード65の各々は330Ωの保護用抵抗器66に関連している。この330Ωの抵抗器62はコンデンサ64の放電中のトランス60およびブリッジ整流器61からの電流の引出しを制限するものである。4.7kΩの抵抗器63はコンデンサ64に対するトリクル放電を行うものである。抵抗器63、コンデンサ64およびダイオード62の各々は、トランス50の0V端子および点弧器70の電極16に接続されており、これら端子および電極のいずれもアースされている。
【0051】
電極20と16とが接続されていないときに、点弧器70を介して放電できなかったような大きな電荷が点弧前にコンデンサ64に蓄積する。点弧中、高電圧トランス50は電極20へ5kVの全波整流されたAC電圧を供給する。この5Vの電圧によって上記のように電極20から電極12へ低電流のコロナ放電が生じる。このコロナ放電は電極20と電極16の間に導電路を生じさせる。高電圧放電によって一旦この電流路が確立されると、低電圧コンデンサ64は同じ電流路を使ってアースまで放電できる。こうしてコンデンサ64から大電流が流れ、処理すべきガス内にグロー放電が形成される。
【0052】
この例では、プラズマは約90%の時間存在し、数日毎に点弧が行われる。しかしながら、信頼できる起動機構を設けることにより、より頻繁に、例えば毎時間プラズマを点弧するような装置を可能にできる。
【0053】
要約すれば、半導体製造プロセスツールからの排ガス流を処理するための装置について説明した。この装置は不活性のイオン化可能なガスからグロー放電を発生させるためのプラズマトーチを含み、ガス流はプラズマを点弧するためのガス放電へ送られる。プラズマを持続させるよう、排ガス流に電磁波ソースによって電磁波が印加される。この装置は特に排ガス流内の過フッ素化化合物およびハイドロフルオロカーボン化合物を処理するのに特に適す。
【0054】
本明細書に記載した実施例はプラズマ低減反応器1に関するものであるが、グロー放電を発生させ、プラズマ持続構造体、例えばこの構造体を挿入し、放電できるチャンバを構成する構造体を有する他のシステム内でプラズマを点弧するのに、グロー放電電極アセンブリ15(図3)のような要素を使用することも可能である。これとは異なり、別個の挿入可能なユニットではなく、基本プラズマを持続するようになっている構造体内に補助プラズマソースをより密に組み込んでもよい。
【0055】
上記のように、グロー放電によってプラズマを点弧することが好ましい。しかしながら、プラズマを点弧するのに任意の適当なイオン化した流体流を使用してもよい。グロー放電以外の放電、例えばコロナ放電またはアーク放電により、イオン化したガス流を発生させてもよい。グロー放電に基づく装置に関連してこれまで説明した特徴の少なくとも一部は、別の適当なイオン化ガス流を利用するシステム内で使用するのにも適す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係わるマイクロ波プラズマ反応器を内蔵した低減システムのフロー図である。
【図2】図1の反応器を通る垂直断面図である。
【図3】図2の反応器が組み込まれたグロー放電点弧電極アセンブリを通る垂直断面図である。
【図4】図2の反応器の点弧電極と共に使用すべき回路の回路図である。
【符号の説明】
【0057】
1 マイクロプラズマ反応器
2 マイクロ波供給器
3 導波管
4 電源
5 導電性ハウジング
6 チャンバ
7 底部壁
8 開口部
9 出口チューブ
10 第1プラズマ集中化電極
11 導電性フランジ
12 ナット
13 密閉手段
14 中心ボア
16 電極
17 端部
18 ハウジング
19 第2チャンバ
20 グロー放電電極
21 尖った端部
22 入口
24 フランジ
27 ハウジング
50 高電圧トランス
60 低電圧トランス
61 整流ブリッジ
62、63 抵抗器
64 コンデンサ
65 ダイオード
70 点弧器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマにより処理すべきガスと異なる流体からプラズマを点弧するためのイオン化された流体流を発生させるための手段と、
前記プラズマを持続させるようになっている構造体とを備えた、前記ガスを処理するためのプラズマを形成するための装置。
【請求項2】
前記プラズマ持続構造体が、プラズマを持続させる際に電磁波を利用するようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記プラズマ持続構造体が、電磁波ソースを含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記プラズマ持続構造体が、電磁波ソースに接続するようになっている、請求項2記載の装置。
【請求項5】
前記電磁波が、マイクロ波または無線周波数電磁波である、請求項2〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記プラズマ持続構造体が、前記電磁波の周波数で共振するチャンバを含む、請求項2〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記プラズマ持続構造体が、前記プラズマによって処理すべきガスの流れに接続可能なチャンバを含む、前のいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記プラズマ持続構造体が、少なくとも1つのプラズマ集中化電極を含む、前のいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記プラズマ集中化電極が、電磁定在波の波腹またはその近くに配置されている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記プラズマ持続構造体が、2つのプラズマ集中化電極を含む、請求項8または9記載の装置。
【請求項11】
前記プラズマ集中化電極が、互いに対向し、少なくとも1mmの間隔だけ互いに離間した第1電極と第2電極とを含む、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記間隔が、2〜8mmの間である、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのプラズマ集中化電極が、アース電位にある、請求項8〜12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
プラズマ形成中、前記プラズマ持続構造体が、実質的に大気圧に配置されるようになっている、前のいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項15】
前記流体が、プラズマによって処理すべきガスとは異なる組成となっている前のいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項16】
前記イオン化された流体流を発生するための前記手段が、グロー放電を発生させるための手段を含む、前のいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項17】
前記グロー放電を発生させるための手段が、グロー放電を形成するためのグロー放電電極を備え、更に前記グロー放電ガスソースを含むか、またはこのグロー放電ガスソースに接続できるようになっている、請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記グロー放電電極が、細長くなっている、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記グロー放電電極が、前記プラズマ持続構造体に放電するようになっている、請求項17または18記載の装置。
【請求項20】
前記グロー放電電極が、使用時に前記プラズマ持続構造体の上流のグロー放電ガス流内に位置するように、前記グロー放電電極が、配置されており、よってグロー放電ガスによって前記プラズマ持続構造体に前記グロー放電が、移動されるようになっている、請求項17〜19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記グロー放電を発生するための前記手段が、前記グロー放電を開始するのに十分高い電圧を発生するための回路と、少なくとも0.1秒の間、グロー放電を持続するのに十分な電流を発生するための回路を含む、請求項16〜20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
前記グロー放電を発生するための前記手段が、プラズマを点弧した後にグロー放電の発生を終了するようになっている、請求項21記載の装置。
【請求項23】
前記グロー放電を発生するための前記手段が、10秒までの間、グロー放電を発生するようになっている、請求項21または22記載の装置。
【請求項24】
前記グロー放電を発生するための前記手段が、5秒までの間、グロー放電を発生するようになっている、請求項23記載の装置。
【請求項25】
前記グロー放電を発生するための前記手段が、1〜5秒までの間、グロー放電を発生するようになっている、請求項24記載の装置。
【請求項26】
前記イオン化された流体流を発生するための前記手段が、実質的に円筒形のチャンバを備え、該チャンバが前記イオン化された流体流を前記チャンバ内に実質的に接線方向に導入するようになっている入口を含む、前のいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項27】
排ガス流と異なる流体からイオン化された流体流を発生するための手段と、
前記排ガス流をイオン化された流体流まで運び、プラズマを点弧するための手段と、
前記排ガス流に電磁波を印加し、プラズマを持続させるための手段とを備えた、半導体製造プロセスツールからの排ガス流を処理するための装置。
【請求項28】
プラズマにより処理すべきガスと異なる流体からプラズマを点弧するためのイオン化された流体流を発生するステップと、
前記プラズマを持続させるための電磁波を供給するためのステップとを備えた、ガスを処理するためのプラズマを形成する方法。
【請求項29】
第1ロケーションにおいてイオン化されたプラズマ流を発生するステップと、
プラズマを点弧する第2ロケーションへ前記イオン化した流体流を移動させるステップとを備えた、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記電磁波がマイクロ波または無線周波数電磁波である、請求項28または29記載の方法。
【請求項31】
前記電磁波の周波数で共振するチャンバ内で前記プラズマを発生する、請求項28〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
実質的に大気圧で前記プラズマを形成する、請求項28〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記流体が、前記プラズマによって処理すべきガスと異なる組成である、請求項28〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
イオン化された流体流が、グロー放電である、請求項28〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
排ガス流と異なる流体からイオン化された流体流を発生するステップと、前記イオン化された流体流を前記排ガス流に加え、プラズマを点弧するステップと、前記排ガス流に電磁波を供給し、前記プラズマを持続させるステップとを備えた、半導体製造プロセスツールからの排ガス流を処理する方法。
【請求項36】
前記排流体流が、過フッ素化合物またはハイドロフルオロカーボン化合物を含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記化合物が、CF4、C2F6、CHF3、C38、C48、NF3およびSF6のうちの1つを含む、請求項36記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−525111(P2006−525111A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506158(P2006−506158)
【出願日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001718
【国際公開番号】WO2004/098246
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(591004445)ザ ビーオーシー グループ ピーエルシー (59)
【Fターム(参考)】