説明

プラズマエッチング方法

【課題】 テーパー角度を90度未満とするプラズマエッチング方法を提供する。
【解決手段】 反応性エッチングガスとしてフッ素と酸素とを真空容器1内に導入し、コイル6に高周波電力を供給して誘導結合型プラズマ7を発生し、このプラズマによって基板電極8上にエッチング部材10として配置されたシリコンをエッチングし、基板電極8に基板電極用交流電源11から供給する交流電力の周波数によってシリコンにエッチングされる形状を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の電子デバイスやマイクロマシンの製造、ナノインプリント技術で使用する金型の製造に利用されるプラズマエッチング方法及に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子デバイスやマイクロマシンの製造、ナノインプリント技術で使用する金型の製造において、近年、プラズマ処理によるドライエッチング加工技術の重要性は高まっている。従来のプラズマ処理によるドライエッチング方法の一例を、図1を参照して説明する。このエッチング方法では、誘導結合型プラズマ源を用いたプラズマ処理装置を使用する。このプラズマ処理装置は、例えば特許文献1に開示されているものと類似のものである。図1において、真空容器1内に、ガス供給装置2から反応性エッチングガスとして所定のガスを導入しつつ、排気装置としてのターボ分子ポンプシステム3により排気を行い、調圧弁4により真空容器1内を所定の圧力に保ちながら、コイル用高周波電源5により13.56MHzの高周波電力を、真空容器1の外周面に設けたコイル6に供給することにより、真空容器1内に誘導結合型プラズマ7が発生し、基板電極8上に載置された静電チャック9により、基板電極8に密着された基板10に対してプラズマ処理を行うことができる。また、基板電極8に電力を供給するための基板電極用交流電源11が設けられている。
【0003】
図2に、このプラズマ処理装置でエッチングによって作成された金型12の一部を示す。図2において符号13はエッチング用のマスクである。金型12は、シリコン製で、その上面にエッチング用のマスク13を配置して、静電チャック9により基板電極8に密着され、プラズマエッチングされる。この金型12におけるエッチングされずに残って傾斜面が、それが突出している面と成す角度αをテーパー角度とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-286536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2に示すようなナノインプリント技術で使われる金型12を作成する際、金型12のテーパー角度が例えば角度βで示すように90°以上であった場合、金型12を基板に押し当てた後、基板から離型する際に、アンカー効果により離型性が悪くなる。そこで、離型性を良くする方法の一つとして、アンカー効果対策として金型のテーパー角を角度αで示すように90°以下にする必要性が生じる。特に、金型材料をシリコンとした場合、上述した誘導結合型プラズマ源を用いたプラズマ処理が含まれるドライエッチングによって、シリコンをエッチングしたときのテーパー角度は90°以上となる。
【0006】
本発明は、テーパー角度を90度未満とするプラズマエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のプラズマエッチング方法は、反応性エッチングガスとしてフッ素と酸素とを用いたプラズマエッチング加工方法において、エッチング部材にエッチングされる形状を、前記エッチング部材に印加される交流電力の周波数によって、制御するものである。例えば真空槽を真空に排気した後、フッ素と酸素と反応性エッチングガスとして、導入し、真空槽に高周波電力を印加して、反応性ガスをプラズマ化する。エッチング部材は、例えば基板電極上に配置され、基板電極に交流電力を印加する。プラズマ化された反応性ガスがエッチング部材に向かい、エッチング部材をエッチングする。基板電極に印加される交流電力の周波数を、適切に選択することによって、エッチング部材のエッチング形状を制御する。エッチング部材としては、例えば、シリコンを使用することができる。
【発明の効果】
【0008】
このようにエッチング部材に印加される高電流の周波数を適切に選択することによってテーパー角度を90度未満とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の1実施形態のプラズマエッチング方法に使用する装置の概略構成図である。
【図2】テーパー角度の説明図である。
【図3】図1のエッチング方法によって作成したナノインプリント用の金型の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態のプラズマエッチング方法は、図1に示した誘導結合型プラズマ源を用いたプラズマ処理装置を使用するもので、真空容器1内の基板電極8に静電チャック9により、基板10として例えばシリコン部材を密着させる。なお、基板電極8は、冷却装置を備え、温度管理されている。真空容器1内にガス供給源2から処理ガスを供給しつつ真空容器1内をターボ分子式ポンプシステム3によって排気し、調圧弁4により真空容器1内を所定の圧力に制御しながら、高周波電力、例えば周波数13.56MHzのコイル用高周波電力を基板電極10の上部に設けられたコイル6の一端をなす給電点に供給する。これによって、真空容器1内に誘導結合型プラズマ7が発生する。基板電極10に基板電極用交流電源11から基板電極用交流電力を供給し、基板最表面を処理する。基板電極用交流電源11は、その周波数を可変することができるものである。
【0011】
具体的には、基板10を基板電極8上に配置されている静電チャック9上に搭載する。そして、静電チャック9が発生させる静電気力により基板10を静電チャック9と密着させる。静電チャック9と基板10との間には小さな体積の空間が存在するが、ここにヘリウムを1000Pa以上の圧力になるまで充填する。これにより、基板10と基板電極9との熱伝導は上昇する。
【0012】
真空容器1内に反応性ガスとして、六フッ化硫黄と酸素を2:1〜1:1の割合でガス供給源2から流し、調圧弁4により処理圧力を例えば5Paに調整する。コイル用高周波電力を例えば100W〜2000Wの範囲でコイル6に印加することにより、誘導結合型プラズマ7が励起される。
【0013】
基板電極8に交流電力を、例えば0W〜500Wの範囲で基板電極8に印加することにより、基板10には誘導結合型プラズマ7中に存在するイオンを積極的に入射させ、基板10のエッチングを促進させる。この時、基板電極用交流電力の周波数を変化させることで、例えばナノインプリントで使用する金型のテーパー角度を制御することが可能となる。
【0014】
また、この時、基板電極を温度調整することにより、静電チャックにより熱伝導率を良く密着されている基板の温度を調整することができ、基板温度を変化させることでテーパー角度を制御することが可能となる。
【0015】
実施例として、反応性ガスとして六フッ化硫黄と酸素とをほぼ2:1の割合で真空容器1内に導入し、処理圧力を5Paに調整し、コイル用高周波電力(周波数:13.56MHz)400Wをコイルに印加し、基板電極用交流電力30Wを−15℃に温度調整された基板電極10に印加する。この時の基板電極用交流周波数を500kHz、13.56MHzそして27MHzとした場合のエッチング形状を図3に示す。エッチングテーパー角度は、500kHzで89.86度、13.56MHzで87.81度、27MHzで85.96度とそれぞれなり、基板電極用交流周波数が高くなると共に、テーパー角度は低くなっている。このように基板電極用交流周波数を高くすることによって、テーパー角度を低くできる
【0016】
それは、以下の理由と推測される。一般的に基板電極近傍のプラズマ密度nsは、基板電極用交流周波数をf、基板電極用交流電源の交流電圧をV、ωを2πfとすると、ns∝ω2Vで表される。この式から明らかなように、基板電極用交流周波数fが高いほど、基板電極近傍のプラズマ密度nsが高くなる。基板10として、シリコンを使用した場合、シリコンは四フッ化シリコンとして気化し、エッチングされる。そして、気化した四フッ化シリコンは、プラズマ中で再分解され、一部は酸化シリコンとして生成される。この生成された酸化シリコンは、固体となり、基板10上に付着し、そのうちエッチングされた側壁(図2に符号Aで示す)へ堆積した酸化シリコン膜が、側壁保護膜となる。このエッチング表面へ堆積した酸化シリコンにプラズマ7中のイオンがエネルギーを持って流入し、酸化シリコンはたたき出される。酸化シリコンの側壁保護膜の成長速度は、プラズマ密度が高まることにより増加する。つまり、交流電源周波数が高くなると、酸化シリコンの側壁保護膜の成長速度も大きくなる。そのため、順テーパー形状のシリコンのエッチングを交流電源周波数により制御することが可能となる。
【0017】
上記の実施形態では、反応性ガスとして六フッ化硫黄と酸素とを使用したが、これに代えて、例えばCF4やC4F8等を使用することもできる。コイル用高周波電力の周波数として13.56MHzを使用したが、これに限らず、例えば1MHz乃至100MHzの周波数を使用することができる。エッチング部材としてはシリコンを使用したが、これに代えて、例えば石英や窒化シリコン等を使用することもできる。上記の実施形態では、ナノインプリントで使用する金型を製作したが、これに限ったものではなく、例えば半導体等の電子デバイスやマイクロマシンの製造にも使用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 真空容器
2 ガス供給装置
3 ターボ分子ポンプシステム
4 調圧弁
5 コイル用高周波電源
6 コイル
7 誘導結合型プラズマ
8 基板電極
10 基板
11 基板電極用交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性エッチングガスとしてフッ素と酸素とを用いたプラズマエッチング加工方法において、エッチング部材にエッチングされる形状を、前記エッチング部材に印加される交流電力の周波数によって、制御するプラズマエッチング方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマエッチング方法において、前記エッチング部材がシリコンであるプラズマエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−93517(P2013−93517A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236038(P2011−236038)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000192567)神港精機株式会社 (54)
【Fターム(参考)】