説明

プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法

【解決手段】 本発明は、プラズマ処理室と、同プラズマ処理室の付近に近接する高周波誘導電界を提供するための少なくとも1つの誘導コイルとを備えたプラズマ処理装置を開示する。さらに、高周波電力源に接続している誘導コイルの端と、開放端とされた誘導コイルの端と、誘導コイルの実質的中心位置にある誘導コイルの接地端とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導性結合プラズマ源(ICP)は誘導性磁場を介して誘導性プラズマを生み出し、順次、プロセスガスのイオン化とプラズマ放電を維持させ、電子を加速させる環状(渦状)の電界を作り出す。
誘導性プラズマは、通常、中度〜高度な密度(電子および/またはイオン)で、かつ、低レベルの周波数変動特性をもつと特徴づけられている。誘導性プラズマで処理されるプラズマケミカルプロセスは速く、かつ、半導体ウエハと装置に対するイオン起因損傷が低い。良好な設計による誘導性放電は、静電容量性結合のプラズマ源と比較して、実質的により広範囲な放電状況(例えば、ガス圧力や電力)において機能する。
【0003】
この技術においては、より高い電力(数キロワットまで)のインダクタは約数十アンペアのレベルのRF電流を運用することがよく知られている。オームの法則によればこのような電流は、インダクタに沿って数キロボルトのRF電圧を起因させ、それはインダクタに対して静電容量性の特徴をも表見させ始める。したがって、インダクタは、プラズマに影響する静電容量性の電極とも考えることができる。必然的に、寄生的高周波静電容量性電流がそれらの高電圧インダクタから発生され、または、放電プラズマに照射され、その結果、それはプラズマ能力における高周波変動を生じさせる。高周波変動は、プロセス(処理)室内において、生産されるウエハーに対して電子損傷を与えること、寄生的高周波静電容量性プラズマまたは高周波シースを発生させることという点で特に有害である。インダクタからの寄生的静電容量性電流が、プラズマとプロセスの不統一、プロセス室(例えば、アーク)や生産ウエハーへの数種類の損傷、高周波電力損失の実質的増加に対する主要な原因である。
【0004】
米国の特許5,965,034は、自己バランス型のインダクタ、特に、同相および非同相の高周波電圧から成るプッシュプル電圧を発生させることができる螺旋形の共鳴器としてのインダクタを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国の特許5,965,034
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高周波プッシュプル構造によると、同相および非同相の静電容量性電流がプラズマ中に起因され、それらは互いにキャンセルし合い、静電容量性問題を取り除いてくれる。それにもかかわらず、共鳴器に対するインピーダンス整合要件のため、螺旋形の共鳴器は励起周波数における電子的波長に適合しなければならない。コンパクトな低アスペクト比(やや平らな)高密度プラズマ反応炉における限られたスペースで効率的な自己共鳴型のインダクタを作り上げることは難しい。したがって、共鳴時における励起を必要としない本質的(自己)バランス型の誘導性プラズマ源を開発することが切に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下から構成されるプラズマ処理装置を開示する。:
プラズマ処理室;
上記プラズマ処理室に隣接して高周波誘導電界を生成する少なくとも一つのインダクタ;
高周波電力源に接続している上記インダクタの一端;
開放端とされた上記インダクタの他端;
上記インダクタの実質的な中心位置における接地端とからなる。
【0008】
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
上記インダクタが、上記中心位置について静電容量的に対称形状である。
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
上記一端と接地端との間の上記インダクタによって起因されるプラズマに対する静電容量と、上記接地端と他の端との間における上記インダクタによるプラズマに対する静電容量とは、実質的に等しい。
【0009】
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
上記インダクタは、上記中心位置について幾何学的に対象系である。
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
上記インダクタは、円筒形の螺旋コイル(螺旋)である。
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
上記インダクタは、平らな螺旋コイルである。
【0010】
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
上記プラズマ処理室はドーム形状で、上記インダクタは上記ドーム形状の螺旋コイルである。
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
複数の上記インダクタが備えられる。
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
上記プラズマ処理室は、誘電体または半導体材からなる平屋根から成る。
【0011】
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
上記平屋根は、少なくとも一組の、内側のリング状溝と、このリング溝に隣接して同軸の関係にある外側のリング状溝からなる組を有している。
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
上記インダクタの各々は、上記外側のリング状溝に挿入されている。
【0012】
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
高周波電力源の各々は、別々の独立して制御された高周波発振器の各々によって供給される。
本発明の随意の態様では、複数のガス導入口が溝の中における上部の奥を貫通しており、プロセスガスを上記溝内に供給するプラズマ処理装置を提供する:
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
【0013】
高周波電力源の各々は、電力分配機を備える一つの高周波発振器から供給される。
本発明の随意の態様では以下のプラズマ処理装置を提供する:
プラズマ処理のための円筒室;
プロセスガスを上記円筒室に導入するためのガス導入口;
上記円筒室の一部に近接して囲み、円筒形状で螺旋形状をなす、高周波誘導電界(フィールド)を提供するための少なくとも1つの誘導コイル;
【0014】
上記高周波電力源に接続している上記誘導コイルの一端;
開放端とされた上記誘導コイルにおける他の端;
そして、上記誘導コイルの幾何学的に中心位置にある接地された一端。
本発明では以下からなるプラズマ処理方法を提供する:
以下からなる装置でプラズマを生み出す:
プラズマ処理室;
上記プラズマ処理室に隣接して高周波誘導電界を生成する少なくとも一つのインダクタ;
【0015】
高周波電力源に接続している上記インダクタの一端;
開放端とされた上記インダクタの他端;
上記インダクタの実質的な中心位置における接地端;
そして、プラズマ処理室内のプラズマを用いて加工品を処理する。
これらと他の特徴、視点、発明の長所は、以下の好ましい非限定的な一例としての実施例についての詳しい説明と、図面と特許請求の範囲とにより、当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一の実施例におけるプラズマ処理装置の例示的な断面図である。
【図2】誘導コイルと誘導室の例示的な側面図である。
【図3】誘導コイルと誘導室の例示的な上面図である。
【図4】平坦な螺旋誘導コイルを備えたプラズマ処理装置の例示的な斜視図である。
【図5】ドーム形状の誘導コイルを備えたプラズマ処理装置の例示的な断面図である。
【図6】リング状溝を備えた平屋根の例示的な断面斜視図である。
【図7】複数誘導コイルの例示的な回路図である。
【図8】複数誘導コイルの例示的な回路図である。
【図9】安定した誘導性結合プラズマ放電の圧力範囲を示す例示的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記の図面は、具体的な例示の目的だけにあり、発明の限定の定義として使われるべきではないことを理解すべきである。
この開示を通して、例示の語は、例、インスタンス、イラストを提供することを意味するためだけに使われている。例として開示されている全ての実施例は、他の実施例との対比で好ましいあるいは有利なものとして解釈されるべきではない。
【0018】
図の参照において、全体を通して符号は対応するパーツを参照する。
添付の図面に関連する以下に示す詳細な説明は、本発明の好ましい実施例の説明を意図しているものであり、本発明を実施し、利用しえる唯一の形式を意図するものではない。
(a)第一の実施例
図1は、本発明におけるプラズマ処理装置の簡略化した断面表示の例示的な図である。プラズマ処理装置100はプロセス(処理)室104に結合する誘導室101を備えており、プロセスガスはガス導入口108から加工品106に供給されることができる。プロセス室104は、温度安定化されたサセプターまたは静電チャック(ESC)からなる台105を備えており、自動制御されたバイアス用高周波(RF)電力源107と接続されている。
【0019】
図2は、誘導室101と誘導コイル102(図1に図示される)の側面視の例示的な図である。図において、誘導室101は、例示的に円筒形状とされている。この意味で、誘導室101は円筒室を構成し、当該誘導室101はプラズマ処理室である。誘導室101は、他の形状またはジオメトリー、あるいは、2、3の、非限定的な例、例えば平らな形状や、切りつめられたピラミッド、長方形など、と形成されることも可能である。プラズマ処理の施行によっては、処理室の形状は台105の上に均一な密度のエンティティを生成するように選択され、均一処理性能のために、高密度エンティティ(すなわち、エッチングスピーシーズのような)を提供する。誘導室101は、誘電体または半導体材(例えばクォーツ、セラミック、シリコンまたは他の適切な材料)でできている。室101と104も、焦点リング、カバー(図示せず)と、他の要素を備えたプロセスキット(図示せず)を含んでいる。
【0020】
室101の形状に対応して、誘導コイル102は、誘導室101に近接して囲む円筒形状の螺旋形状のコイルから構成されており、コイル、アンテナ、伝送線、その他といったものを含む非限定的な例の形状で構成されることもできる。誘導コイル102は、高周波電力源103に接続された一端102aと、開放端とされたもう一つの他端102bとを備えている。さらに、誘導コイル102は、誘導コイル102における長さの観点での実質的な中央に位置する接地端102cを備え、同接地端102cは両端102a,102bの高さの観点での中間に位置する。
【0021】
図3は、両端102aと102bと、接地端102cとを含む誘導コイル102の上面視の例示的な図である。図示されるように、(ターミナル)端102aと102bは、接地端の102cと誘導コイル102の中心軸をとを含む面に関して対称的に配置されている。したがって、下側のコイル部W1の長さは、上側のコイル部W2の長さと、実質的に同じである。そのうえ、下側のコイル部W1の捲回回数と直径は、上側のコイル部W2のものと、実質的に同じである。言い換えると、接地端の102cは誘導コイル102の中心に位置し、幾何学的に誘導コイル102を接地端102cに関して対称形状にしている。それにもかかわらず、接地端102cは正確な中心であることが必須なわけではなく、むしろ、いくつかのバリエーションにおける実質的な中心であればよい。なぜなら、誘導室101には電気誘導性あるいは静電容量性における変形例を有するものだからである。
【0022】
高周波電力が誘導コイル102へ供給されると、磁場が生成される。その磁場は、順次、環状(渦状)の(高周波誘導)電界を生成して電子を加速させる。同加速電子がプロセスガスをイオン化して、プラズマ放電を継続させる。誘導コイル102は、おおよそ同じ相(P1)と反転した相(P2)からなる静電容量性ポテンシャル(例えば、電圧)を生成する。一端102bは、反対側の一端102aにおける高周波電圧に対して、等しくて逆極性の電圧を励起させる。これは、共通の高周波誘導電界をもつ誘導コイル102における上方側の部位と下方側の部位という性質に起因する。
【0023】
あるいは、誘導コイル102は二つ実質的に同一のコイルから成る一つのコイルとして考えられることができる。一つのコイル(下側のコイル部W1)はプラズマ放電における円形の高周波誘導電界を生み出すために高い誘導性電流をもたらす。その一方で、もう一つのコイル(上側のコイル部W2)は、最初のコイル(下側のコイル部W1)で発生される静電容量性電流の静電容量補正器として作用する。
【0024】
下側のコイル部W1と上側のコイル部W2は、両者が接地端102cに関して幾何学的に対称形状であるという事実により、互いに実質的にバランスをとる。したがって、不可避的な寄生的静電容量性電流の誘導性プラズマグランドは仮想的にキャンセルされ、誘導性プラズマによる静電容量性の相互作用はバランスが取れることになる。この静電容量性のバランスは、不可避的な静電容量性電圧、誘導性プラズマの静電容量性相互作用の対象性の度合いによって決まる。対象性が高まるにつれ、上端側と下端側のコイルにおける電圧がよりレシプロカルに釣り合いを取ることになり、最小化された誘導性プラズマにおける静電容量性電流のより良い静電容量性バランスが得られることになる。静電容量的にバランスの取れた誘導性プラズマ源は、特に半導体プラズマ処理において有用である。
【0025】
自動制御型バイアス用高周波電力源107を備えられた台105を備えた処理室104内では、静電容量的にバランスのとれた誘導性プラズマ源が高電圧シースを生成し、正イオンを加工品106の表面上に加速させる。イニシャルプロセスガスが誘導室101に入り、イオン化工程と解離工程とを経る。台105上の加工品106は、静電容量的にバランスの取れた誘導プラズマ源によって生成される放電プラズマから供給された少なくとも一種の粒子によって加工される。
【0026】
高周波電力源107は、プラズマ面の相互作用の率と特性を調節するため、台105の高周波バイアス電力を独自に調節でき、プラズマ処理自体を調整できる。したがって、非結合プラズマ処理が起きる。プロセス技術者は、最も広い範囲の条件や、レシピ、すなわち、放電力、ガス圧、流れ率、その他にわたり、半導体製造プロセスを準備し、制御することができる。非結合プラズマ処理は、低、中、高密度プラズマガス放出レジメとして認識される。
【0027】
上述した処理の2、3の典型的な応用としての非限定的な例は、金属、誘電体、半導体、またはこれらに類するものに対するエッチング;窒化、酸化、プラズマ充填といった表面処理;そして、プラズマによる強化化学的蒸着処理(CVD)による薄膜堆積処理などを含んでいる。上述した処理の2、3の典型的な応用としての他の非限定的な例は、上述したプラズマ源とプロセスを使用したガラスやプラスチック代替物の製造、およびまたはそれらの修正を含んでいる。したがって、本発明は半導体処理に限られず、マスク製造、光学製品、ミクロ電子機械(MEMSテクノロジー)、医学、および他の装置の処理といった他の例示的処理にも適用可能であると見なされるべきである。特に、本実施例で開示されたような円筒形状のプラズマ源は、プラズマエッチング、CVDあるいは選択的露光による硬化済みレジストの除去のためのレジストアッシング(ストリッピング)というようなダウンストリーム(ダウンフローあるいはリモート)アプリケーションなどのケースに利用することができる。
【0028】
自己バランス型インダクタは、バランスのためのさらなる追加要素を必要としない点に留意すべきである。本質的な静電容量性構造それ自身が、広い範囲のガス放出プロセス条件(例えば励起周波数を含む)化において、高い程度の静電容量的対称性を有している。したがって、本発明によるプラズマ処理装置は、単純で、安価で、運用も容易である。
【0029】
(b)他の実施例
図4はパンケーキ構造の静電容量的に対称形状なインダクタの例示的な図であり、相似的に形成された平屋根をもつ誘導室を示している。誘導コイル202は、平屋根201cに隣接した平らな螺旋コイルである。平屋根201cは誘電体あるいは半導体で形成されており、この結果、誘導コイル202が平屋根201cを通過してプラズマ放電体とコミュニケーション可能としている。
【0030】
図5は、ドーム形状室301に対応する静電容量的に対称形状のインダクタの例示的な図である。同室301はドーム形状であり(半球)、対応するようにドーム形状の螺旋コイルとして形成された誘導コイル302を備えている。誘導コイル302は、同室301に近接して(一部を)取り囲んでいる。同室301は誘電体あるいは半導体材料で形成されており、同室301を介して誘導コイル302がプラズマ放電体とコミュニケーション可能としている。
【0031】
本実施例では、誘導コイル202と302の形状は、幾何学的には対称形状ではない。しかし、誘導コイル202と302は幾何学的に対称形状であることは必要ではなく、むしろ本発明を適用するためには静電容量的に対称形状であることが必要である。誘導コイル202と302は、高周波電力源203と303に接続されている一対の端202aと302aと、開放端とされた一対の端202bと302bとを有しており、さらに接地された端202cと302cを有している。誘導コイル202と302は、接地端202cと302cに関して、静電容量的に対称形状でなければならないが、それにもかかわらず、それらは実質的に不等価で、それぞれ直径およびインダクタンスの異なる外側および内側の捲回部を有している。インダクタからプラズマを介してグランドへ流れる静電容量電流は環境的要因の相互干渉に依存するため、誘導コイル202と302における静電容量的バランス位置の形成は困難である。従って、接地端202cと302cの位置は、インダクタからプラズマを介してグランドへ流れる総静電容量電流を最小にするように実験的に発見されることになる。
【0032】
図6は平屋根301cの断面斜視図を例示的に示す図であり、それは、たとえば、シリコン、セラミック、サファイヤ、クォーツまたは他の誘電体あるいは半導体材料など形成されている。その屋根301cは、互いに、内側のリング状溝301dと外側のリング状溝301fからなる三対を備えており、それらはリング形状で、同軸の関係で、相互に近接し合っている。なお、内側のリング状溝301dと外側のリング状溝301fからなる対を一組のリング状溝301d,301fと呼ぶ。内側のリング状溝301dの(上部の)底部(奥)には、プロセスガスを同内側のリング状溝301dに導入させるように貫通するガス導入口308が設けられており、外側のリング状溝301fの各々には3つの(複数の)誘導コイル302の各々が挿入されている。プラズマにおける高い方位角均一性を達成するためには、誘導コイル302の捲回数を増やしてもよい(例えば、4ターン)。
【0033】
図7は、誘導コイル302の回路図を例示的に示す図であり、それぞれの誘導コイル302は、独立した高周波電力源303に接続された端302aと、開放端とされた端302bと、接地端302cとを有する縦横比の小さい円筒形のインダクタである。誘導コイル302は、接地端302cに関して幾何学的に対称形状である。誘導コイル302は独立した電力制御を受ける別々の高周波電力源303から電気的に付勢されることができる。あるいは、その代わりに、誘導コイル302は、全てのコイルにおける放電パワーを制御する電力分配機(電力スプリッタ)を備えた1つまたは2つの高周波発振器から供給されるようにしてもよい。なお、高周波発振器と高周波電力源とは同義である。図8は、1つの電力スプリッタ309を備えた場合の回路図を例示的に示す図である。電力スプリッタ309は一つの高周波電力源303から供給され、高周波電力を3つの誘導コイル302に分裂し(または分配し)、それぞれの誘導コイル302によって内側のリング状溝301dで独立したリング放電を生成させている。
【0034】
図9は、誘導コイル302による安定したICP放電の圧力範囲を示す例示的な図である。最高およそ3000ワットまでの高周波放電が、ただ一つのバランスの取れたコイルを(リング状)溝付き屋根に納めた300mmの工業向けウエハーエッチング装置(日本のFOI社製造)によって生成されている。処理圧力範囲は、1ミリトールから100トールまでの5桁に及んでいる。このような放電能力により、本発明の自己バランス型インダクタによって得られる並外れたメリットを証明している。この実験例においては、コイル電流が実質的に全圧力範囲にわたって一定(6アンペアから8アンペア(平方二乗平均))であることに留意すべきである。それゆえに、本当の放電パワーもまた、5桁というような広いプロセス範囲においてほぼ同様に一定となる。(リング状)溝付き屋根を備えない他のプラズマエッチング装置では、決してこのような広いプロセス範囲でのパフォーマンスを成し遂げなかった。
【0035】
本発明は、構造特徴または方法行為について、これまで文言上からも極めて詳細に記述されてきたが、添付の特許請求の範囲にて定義される本発明は、開示された特定の特徴または行為に対して必ずしも限定される必要はない、ということを理解すべきである。
むしろ、特定の特徴や行為は、請求範囲に記載されたクレーム発明を実現化するための好ましい一例として記述されているにすぎない。
【0036】
したがって、発明の例示的な実施例が記述されている一方で、当業者においては、多数のバリエーションや他の具体化も起こりえる。たとえば、インダクタは中空管状コイルとすることもできる。発明の精神および範囲から逸脱しない範囲で、このようなバリエーションや他の実施例が実現が可能である。
ここにおいて使用されている文言遣いと用語は、要約と同様に、説明の目的のためであり、限定的に見なされるべきではない。
【0037】
全体の開示を通して、ラベル(例えば左、右、正面、背面、上面、底面、前進、後進、時計回り、反時計回り、上、下、他の同様な用語、例えば上方、下方、後方、前方、垂直、水平、最も近い、遠い、など)は、利便の目的だけに使われており、特定の固定的方向や方針を意図するものではないことにも考慮されるべきである。むしろ、それらは対象物における各部の間での相対的な場所や方向/方針を反映するために利用されている。
【0038】
さらに、“第一”、“第二”、“第三”部材などは、全開示を通して、連続物または数的な制限を示すために使用されているものではなく、そのグループ内におけるいくつかのメンバーを区別し、特定させるために使用されていることを、追加しておく。
以上では、本発明のプラズマ処理装置について説明したが、このプラズマ処理装置にて実施するプラズマ処理方法が、本発明におけるプラズマ処理方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理室と、
上記プラズマ処理室に隣接して高周波誘導電界を生成する少なくとも一つのインダクタと、
高周波電力源に接続している上記インダクタの一端と、
開放端とされた上記インダクタの他端と、
上記インダクタの実質的な中心位置における接地端とからなることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
上記インダクタが、上記中心位置について静電容量的に対称形状であることを特徴とする上記請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
上記一端と接地端との間の上記インダクタによって起因されるプラズマに対する静電容量と、上記接地端と他の端との間における上記インダクタによるプラズマに対する静電容量とは、実質的に等しいことを特徴とする上記請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
上記インダクタは、上記中心位置について幾何学的に対称形状であることを特徴とする上記請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
上記インダクタは、円筒形の螺旋コイルであることを特徴とする上記請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
上記インダクタは、平らな螺旋コイルであることを特徴とする上記請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
上記プラズマ処理室はドーム形状で、上記インダクタは上記ドーム形状の螺旋コイルであることを特徴とする上記請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
複数の上記インダクタが備えられていることを特徴とする上記請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
上記プラズマ処理室は、誘電体または半導体材からなる平屋根から成ることを特徴とする上記請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
上記平屋根は、少なくとも一組の、内側のリング状溝と、このリング状溝に隣接して同軸の関係にある外側のリング状溝からなる組を有していることを特徴とする上記請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
上記インダクタの各々は、上記外側のリング状溝に挿入されていることを特徴とする上記請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
高周波電力源の各々は、別々の独立して制御された高周波発振器の各々によって供給されていることを特徴とする上記請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
複数のガス導入口が上記リング状溝の中における上部の奥を貫通しており、プロセスガスを上記リング状溝内に供給することを特徴とする上記請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
上記高周波電力源の各々は、電力分配機を備える一つの高周波発振器から供給されることを特徴とする上記請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
プラズマ処理のための円筒室と、
プロセスガスを上記円筒室に導入するためのガス導入口と、
上記円筒室の一部に近接して囲み、円筒形状で螺旋形状をなす、高周波誘導電界を提供するための少なくとも1つの誘導コイルと、
上記高周波電力源に接続している上記誘導コイルの一端と、
開放端とされた上記誘導コイルにおける他の端と、
上記誘導コイルの幾何学的に中心位置にある接地された一端とを具備することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項16】
プラズマ処理方法であって、
プラズマ処理室と、
上記プラズマ処理室に隣接して高周波誘導電界を生成する少なくとも一つのインダクタと、
高周波電力源に接続している上記インダクタの一端と、開放端とされた上記インダクタの他端と、上記インダクタの実質的な中心位置における接地端とを備える装置によってプラズマを生成し、
上記プラズマ処理室内のプラズマを用いて加工品を処理することを特徴とするプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−507878(P2010−507878A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518657(P2009−518657)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【国際出願番号】PCT/JP2007/073270
【国際公開番号】WO2008/069157
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(596064444)株式会社エフオーアイ (15)
【Fターム(参考)】