説明

プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法

【課題】プラズマ処理の面内均一性を向上させることが可能なプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置11は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置41と、処理容器12と、処理容器12の上部開口を閉鎖するように配置される誘電体窓16と、誘電体窓16の上方に配置されるスロットアンテナ板17と、スロットアンテナ板17の上方側に配置される誘電体部材18と、スロットアンテナ板17にマイクロ波を導入する導波部32とを備える。ここで、マイクロ波発生装置41は、搬送波を変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する変調装置61を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関するものであって、特に、マイクロ波を用いてプラズマを励起するプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSI(Large Scale Integrated circuit)やCCD(Charge Coupled Device)、MOS(Metal Oxide Semiconductor)等の半導体装置は、プラズマエッチングやプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等のプラズマ処理によって製造される。このような処理を行うプラズマ処理装置において、マイクロ波を用いてプラズマを励起するプラズマ処理装置が、従来から知られている。このような従来技術として、特開平6−73568号公報(特許文献1)が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−73568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなプラズマ処理装置においては、処理容器内に設けられた支持台上に円板状の被処理基板を載置し、上記したようなプラズマ処理を行う。被処理基板上には、複数個の半導体装置が形成されることとなるため、被処理基板の全面に亘って処理が均一に行われることが要求される。このようにプラズマ処理の面内均一性を向上させるためには、プラズマ処理が行われる処理容器内により均一なプラズマを安定して形成することが必要となる。
【0005】
特許文献1に記載のプラズマ処理装置は、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance:ECR)を利用したプラズマ装置である。図16に、特許文献1に記載のプラズマ処理装置を示す。このプラズマ処理装置においては、マイクロ波発生器5においてマイクロ波を生成し、導波管4を介してマイクロ波導入部1aからプラズマ発生室1に導入する。プラズマ発生室1の周囲には磁場印加手段としての磁気コイル6が設けられており、マイクロ波発生器5により発生させられたマイクロ波と磁気コイル6により印加された磁界との相互作用によって起きる電子サイクロトロン共鳴によりプラズマ発生室1内の電子が加速され、加速された電子によってプラズマを発生する。このように生成されたプラズマを用いて、試料台8上に載置された被処理基板9に対してプラズマ処理が行われる。
【0006】
ここで、上記プラズマ発生室1において生じる電子サイクロトロン共鳴のポイントは、導入されるマイクロ波の周波数と、磁気コイル6により形成される磁場の強度とによって、一義的に決定される。また、磁気コイル6によってプラズマ発生室1内に形成される磁場強度には分布(幅)が存在する。したがって、特許文献1に記載のプラズマ処理装置においては、プラズマ発生室1における共鳴ポイントをより増加させるために、変調器10を用いてマイクロ波を周波数変調することによって、マイクロ波に帯域幅を持たせている。これにより、プラズマ発生室1内に生成されるプラズマの均一性を向上させることができるとしている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のプラズマ処理装置は、上記したように電子サイクロトロン共鳴を利用したプラズマ装置である。このプラズマ処理装置は、プラズマを生成するために、磁気コイルによって形成される磁場を利用するため、制御が困難であることに加え、磁気装置を用いる必要があることから装置が大型化することも避けられない。また、この方法により生成されたプラズマの電子温度は、2.5〜10eV程度と比較的に大きくなってしまう。したがって、このプラズマによってプラズマ処理をした場合、被処理基板に対して、比較的に大きなプラズマダメージを与えてしまうこととなる。このようなプラズマダメージは、半導体装置の性能に悪影響を与えるものであり、近年、半導体製造分野において、プラズマダメージの低減に対する要求が非常に高くなってきている。
【0008】
特許文献1に記載のプラズマ処理装置に比べて、プラズマ生成に係る制御がより容易であることや、装置を比較的にコンパクトに構成することができること、さらには、より低電子温度且つ高電子密度のプラズマを生成可能であるといった利点を有するプラズマ処理装置として、複数のスロットが設けられたスロットアンテナ板(RLSA:Radial Line Slot Antenna)を備えるプラズマ処理装置が、開発されている。
【0009】
このプラズマ処理装置は、処理容器の上部に配置される誘電体窓と、誘電体窓の上方側に配置され、マイクロ波を誘電体窓へ放射するスロットアンテナ板とを備える。このスロットアンテナ板は、アンテナの中心側に位置する領域と、アンテナの周縁側に位置する領域において、周方向に略等間隔に配列するように設けられた複数のスロットを有している。スロットアンテナ板に導入されたマイクロ波は、このスロットを通過し、誘電体窓におけるスロット直下の領域に強い電界を形成する。そして、誘電体窓を介して処理容器内に放射されたマイクロ波によって、処理容器内にプラズマが生成される。
【0010】
このようなプラズマ処理装置においては、処理容器内により均一なプラズマを安定して生成するために、スロットアンテナ板の中心側の領域に設けられたスロットの直下、および周縁側の領域に設けられたスロットの直下の双方の領域において、偏差のない強い電界を形成することが望ましい。
【0011】
しかしながら、このようなスロットアンテナ板を備えるプラズマ処理装置においては、マイクロ波がスロットを介して誘電体窓へと導入されると、誘電体窓の内部において、各スロットから放射されるマイクロ波同士の干渉や、入射波と反射波との合成によって生じる定在波等の影響によって、誘電体窓の内部の電界強度分布に固有モードが生じる。すなわち、マイクロ波同士が強め合う領域と弱め合う領域とが形成され、誘電体窓内部に形成される電界に偏りが生じる恐れがある。このような誘電体窓内部に生じる電界強度分布のモードは、処理容器の容積、プラズマ処理装置を構成する部材の形状や材質、入力されるマイクロ波の周波数等に大きく依存する。
【0012】
ここで、従来のスロットアンテナ板を用いたプラズマ処理装置においては、周波数帯域の狭い略単一周波数からなるマイクロ波を用いてプラズマを励起していた。この場合、誘電体窓に形成される電界強度分布が、その周波数および構成部材に固有のモードとして固定されることとなる。このため、中心領域と周縁領域との間において、スロットの直下の領域に形成される電界に偏差が生じ易く、且つ、偏差が生じた場合にそれを是正するように調整することが非常に困難であった。
【0013】
また、例えば周波数ドリフト等によって、マイクロ波発生装置によって生成されるマイクロ波の周波数に変動が生じた場合に、上記のように誘電体窓内の電界強度分布のモードもそれに追随して大きく変化することとなるため、処理容器内の電界を大きく変動させてしまう。このような電界の変動は、モードジャンプ等のプラズマモードの不安定化をもたらし、プラズマ処理に大きく影響することとなるため、好ましくない。
【0014】
本発明の目的は、プラズマ処理の面内均一性を向上させることが可能なプラズマ処理装置を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、プラズマ処理の面内均一性を向上させることが可能なプラズマ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るプラズマ処理装置は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、内部においてプラズマ処理を行う上部開口の処理容器と、処理容器の上部開口を閉鎖するように配置される円形状の誘電体窓と、誘電体窓の上方に配置され、中心側に位置する第一領域において周方向に略等間隔に配列するように設けられた第一スロットと、周縁側に位置する第二領域において周方向に略等間隔に配列するように設けられた第二スロットとを有する円板状のスロットアンテナ板と、スロットアンテナ板の上方側に配置され、マイクロ波を径方向に伝搬させる誘電体部材と、スロットアンテナ板にマイクロ波を導入する導波部とを備える。ここで、上記マイクロ波発生装置は、搬送波を変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する変調装置を有する。
【0017】
この構成によれば、スロットアンテナ板を用いることによって、誘電体窓の中央領域および周縁領域にマイクロ波を効果的に供給することができ、処理容器内に低電子密度且つ高電子密度のプラズマを生成することが可能となる。ここで、マイクロ波発生装置には変調装置が備えられていることから、マイクロ波発生装置によって生成されるマイクロ波は、所定の周波数帯域に亘って拡散する周波数成分を有することとなる。したがって、誘電体窓内の中央領域および周縁領域において、マイクロ波の定在波や各スロットから放射されたマイクロ波同士の干渉等によって生じる電界の偏りを、緩和させることができる。これにより、処理容器内により均一なプラズマを安定して生成することができるため、プラズマ処理の面内均一性を向上させることができる。
【0018】
すなわち、上記特許文献1に記載のプラズマ処理装置は、磁気コイルを備え、電子サイクロトロン共鳴を利用してプラズマを生成する装置であって、電子サイクロトロン共鳴のポイントを増加させことにより結果的にプラズマの均一性を向上させているのに対し、本発明に係るプラズマ処理装置は、上記構成のスロットアンテナ板を備え、各スロットから放射されたマイクロ波同士の干渉等によって生じる電界の偏りを緩和させることによって均一なプラズマを生成する装置である。したがって、特許文献1に記載のプラズマ処理装置と、本発明とは、装置構成や装置構成に起因する均一なプラズマを生成するための手法が、大きく異なるものである。
【0019】
好ましくは、変調装置は、搬送波を周波数変調することよって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する。また、変調装置は、搬送波を位相変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成してもよい。この構成によれば、比較的容易な手段によって、マイクロ波の周波数成分を、搬送波周波数を基準として所定の周波数帯域に拡散させることができる。また、マイクロ波の基準周波数および周波数帯域幅を容易に制御可能であるため、用途に応じて適宜マイクロ波を容易に調整することができる。
【0020】
好ましくは、変調装置は、搬送波を生成する搬送波発振器と、搬送波を変調するための変調波を生成する変調波発振器と、搬送波を変調波によって変調する変調器と、所定の周波数帯域より低い周波数成分、および、所定の周波数帯域より高い周波数成分の少なくともいずれか一方を遮断するフィルターと、マイクロ波を導波部に送信する送信器とを有する。
【0021】
好ましくは、マイクロ波発生装置により生成されたマイクロ波は、所定の周波数帯域に亘って一定の振幅の周波数成分を有するように制御される。この構成によれば、当該周波数帯域内におけるマイクロ波の周波数成分が全て均一化されるため、誘電体窓内に生じる電界の偏りを、より効果的に緩和させることができる。
【0022】
好ましくは、マイクロ波の周波数帯域幅は、2.35GHz〜2.55GHzの範囲内に設定される。
【0023】
本発明の他の局面において、プラズマ処理方法は、内部においてプラズマ処理が行われる処理容器内にプロセスガスを供給する工程と、搬送波を変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する工程と、生成されたマイクロ波によって処理容器内にプラズマを励起する工程と、処理容器内において被処理基板をプラズマ処理する工程とを備える。
【0024】
この構成によれば、生成されるマイクロ波は、所定の周波数帯域に亘って拡散する周波数成分を有することとなる。したがって、処理容器内の中央領域および周縁領域において生じる電界の偏りを、より緩和させることができる。これにより、処理容器内により均一なプラズマを安定して生成することができるため、プラズマ処理の面内均一性を向上させることができる。
【0025】
好ましくは、上記マイクロ波を生成する工程は、搬送波を周波数変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する工程である。また、上記マイクロ波を生成する工程は、搬送波を位相変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する工程であってもよい。この構成によれば、比較的容易な手段によって、マイクロ波の周波数成分を、搬送波周波数を基準として所定の周波数帯域に拡散させることができる。また、マイクロ波の基準周波数および周波数帯域幅を容易に制御可能であるため、用途に応じて適宜マイクロ波を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、誘電体窓内の中央領域および周縁領域において、マイクロ波の定在波や各スロットから放射されたマイクロ波同士の干渉等によって生じる電界の偏りを、緩和させることができる。これにより、処理容器内により均一なプラズマを安定して生成することができるため、プラズマ処理の面内均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の要部を示す概略断面図である。
【図2】図1に示すプラズマ処理装置に含まれるスロットアンテナ板を図1中の矢印IIの方向から見た図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る変調装置のブロック図である。
【図4】周波数変調の例を示すグラフであって、搬送波、変調波、変調により生成された信号の時間波形および変調により生成された信号の周波数スペクトルをそれぞれ示す。
【図5】本発明の一実施形態に係る変調器において周波数変調を行った場合のマイクロ波信号の周波数スペクトルを示す。
【図6】図5に示すマイクロ波信号のフィルター通過後の周波数スペクトルを示す。
【図7】プラズマ処理装置において2.45GHzのマイクロ波を誘電体窓に導入した場合に、誘電体窓の下面に形成された電界分布のシミュレーション結果を示す。
【図8】図7に示す電圧分布を線図で示した概略図と、図中のO−E領域における中心からの距離と電界強度との関係を示すグラフを示す。
【図9】2.55GHzのマイクロ波を誘電体窓に導入した場合の電界分布のシミュレーション結果を示す図であって、図7に対応する。
【図10】図9に示す電圧分布を線図で示した概略図と、図中のO−E領域における中心からの距離と電界強度との関係を示すグラフを示す。
【図11】2.65GHzのマイクロ波を誘電体窓に導入した場合の電界分布のシミュレーション結果を示す図であって、図7に対応する。
【図12】図11に示す電圧分布を線図で示した概略図と、図中のO−E領域における中心からの距離と電界強度との関係を示すグラフを示す。
【図13】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置により生成した2.55GHz±200MHzの周波数帯域幅を有するマイクロ波を誘電体窓に導入した場合の電界分布のシミュレーション結果を示す図であって、図7に対応する。
【図14】図13に示す電圧分布を線図で示した概略図と、図中のO−E領域における中心からの距離と電界強度との関係を示すグラフを示す。
【図15】誘電体窓の中心からの距離と、電界強度との関係を示すグラフである。
【図16】従来のプラズマ処理装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。まず、図1および図2を用いて、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置11の構成および動作について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置11の要部を示す概略断面図である。図2は、図1に示すプラズマ処理装置11に含まれるスロットアンテナ板17を下方側、すなわち、図1中の矢印IIの方向から見た図である。なお、図1においては、理解の容易の観点から、部材の一部のハッチングを省略している。
【0029】
図1および図2を参照して、プラズマ処理装置11は、その内部で被処理基板Wにプラズマ処理を行う処理容器12と、処理容器12内にプラズマ処理用のガスを供給するプラズマ処理用ガス供給部13と、その上に被処理基板Wを保持する円板状の支持台14と、処理容器12内にプラズマを発生させるプラズマ発生機構19と、プラズマ処理装置11全体を制御する制御部(図示せず)とを備える。制御部は、プラズマ処理用ガス供給部13におけるガス流量、処理容器12内の圧力等、プラズマ処理装置11全体の制御を行う。
【0030】
処理容器12は、支持台14の下方側に位置する底部21と、底部21の外周から上方向に延びる側壁22とを含む。側壁22は、略円筒状である。処理容器12の底部21には、その一部を貫通するように排気用の排気孔23が設けられている。処理容器12の上部側は開口しており、処理容器12の上部側に配置される環状部24、後述する誘電体窓16、および誘電体窓16と環状部24との間に介在するシール部材としてのOリング25によって、処理容器12は密封可能に構成されている。
【0031】
プラズマ処理用ガス供給部13は、被処理基板Wの中央に向かってガスを供給する第一のプラズマ処理用ガス供給部26と、被処理基板Wの外側からガスを供給する第二のプラズマ処理用ガス供給部27とを含む。第一のプラズマ処理用ガス供給部26は、誘電体窓16の径方向中央部に設けられたプラズマ処理用ガス供給孔30aを介して、処理容器12内にガスを供給している。第一のプラズマ処理用ガス供給部26は、第一のプラズマ処理用ガス供給部26に接続されたガス供給系29により流量等を調整しながらプラズマ処理用ガスを供給する。第二のプラズマ処理用ガス供給部27は、側壁22の上部側の一部に設けられた複数のプラズマ処理用ガス供給孔30bを介して、処理容器12内にプラズマ処理用ガスを供給している。複数のプラズマ処理用ガス供給孔30bは、周方向に等配に設けられている。
【0032】
支持台14は、静電チャック(図示せず)によりその上に被処理基板Wを保持可能である。なお、この静電チャックは、省略してもよい。支持台14は、内部に設けられた温度調整機構(図示せず)により所望の温度に設定可能である。支持台14は、底部21の下方側から垂直上方に延びる絶縁性の筒状支持部31に支持されている。上記した排気孔23は、処理容器12の底部21の一部を貫通するように設けられている。環状の排気孔23の下方側には排気管(図示せず)を介して排気装置(図示せず)が接続されている。排気装置は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有している。排気装置により、処理容器12内を所定の圧力まで減圧することができる。
【0033】
プラズマ発生機構19は、処理容器12外に設けられるプラズマ励起用のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置41と、支持台14と対向する位置に配置され、マイクロ波発生装置41により発生させたマイクロ波を処理容器12内に導入する誘電体窓16と、複数のスロット20が設けられており、誘電体窓16の上方側に配置され、マイクロ波を誘電体窓16に放射するスロットアンテナ板17と、スロットアンテナ板17の上方側に配置され、導入されたマイクロ波を径方向に伝播する誘電体部材18と、マイクロ波発生装置41によって送信されたマイクロ波を誘電体部材18に導入する導波部32とを含む。
【0034】
誘電体窓16は、略円板状の誘電体から構成されており、処理容器12の上部開口を閉鎖するように上記環状部24上に配置される。誘電体窓16の下面28の一部には、テーパ状に凹んだ環状の凹部37が設けられている。この凹部37により、誘電体窓16の下部側にマイクロ波によるプラズマを効率的に生成することができる。なお、誘電体窓16の具体的な材質としては、石英やアルミナ等が挙げられる。
【0035】
本実施形態に係るスロットアンテナ板17は、薄板状であって、円板状である。スロットアンテナ板17には、複数の長孔状のスロット20が設けられている。これら複数のスロット20においては、図2に示すように、一対のスロット20が、略ハの字状に直交するように設けられており、一対のスロット20が、周方向に所定の間隔を開けて設けられている。より具体的には、スロット20は、スロットアンテナ板17の中心側に位置する第一領域38において周方向に等間隔に配列するように設けられた第一スロット対20aと、第一領域38よりも径方向外側、すなわちスロットアンテナ板17の周縁側に位置する第二領域39において周方向に等間隔に配列するように設けられた第二スロット対20bとから構成されている。
【0036】
第一スロット対20aは、径方向内側に位置する第一内スロット20aと、第一内スロット20aと径方向外側において隣り合う第一外スロット20aとが、一対となることによって構成されている。本実施形態においては、第一スロット対20aは、周方向に約60°の間隔を空けて配列するように計六個設けられている。また、一対となる第一内スロット20aと第一外スロット20aとは、互いに略直交するように配置され、図2に示す方向から見た場合に、時計回り方向側に向けて略ハの字に開口するように設けられている。また、第一内スロット20aおよび第一外スロット20aの長手方向の幅は、互いに略等しくなっている。
【0037】
同様に、第二スロット対20bは、径方向内側に位置する第二内スロット20bと、第二内スロット20bと径方向外側において隣り合う第二外スロット20bとが、一対となることによって構成されている。本実施形態においては、第二スロット対20bは、径方向内側と径方向外側の二列に分かれ、周方向に略等間隔に配列している。径方向内側において配列する第二スロット対20bは、約15°の間隔毎に計24個設けられている。これに対し、径方向外側において配列する第二スロット対20bは、約10°の間隔毎に計36個設けられている。
【0038】
誘電体部材18は、円形状の薄板状部材であって、誘電体窓16と同心に配置されている。また、誘電体部材18は、誘電体部材18の下端面と誘電体窓16の上端面とが対面するように配置されている。この誘電体部材18は、導波部32から導入されたマイクロ波を、外径方向に伝搬させ、スロットアンテナ板17のスロット20を通して誘電体窓16へ導入する。
【0039】
上記マイクロ波発生装置41によって送信されたマイクロ波は、導波部32内を伝搬し、誘電体部材18に導入される。導波部32は、マイクロ波発生器41に接続される導波管35と、誘電体部材18に接続される同軸導波管33と、導波部32および同軸導波管33の連結部に設けられたモード変換器34とを含む。
【0040】
導波管35は、断面円形状または矩形状の導電体から構成されており、一端がマイクロ波発生器41に接続され、マイクロ波発生器41から横方向に延在するように設けられている。なお、導波管35の経路途中には、マッチング機構36が設けられている。このマッチング機構36によって、導波管35内をマイクロ波発生装置41に向かって進行する反射波が吸収される。これにより、導波管35内において進行波と反射波とによって形成される定在波が、マイクロ波発生装置41に影響を及ぼすことを防止することができる。同軸導波管33は、円筒状の外部導体および内部導体から構成されており、内部導体の下端がスロットアンテナ板17の中心部に接続されている。モード変換器34は、マイクロ波発生装置41により生成されて導波部32内を伝搬してきたTEモードのマイクロ波をTEMモードへ変換し、同軸導波管33へと伝搬させる。
【0041】
マイクロ波発生装置41により送信されたマイクロ波は、上記同軸導波管33内を伝搬し、誘電体部材18に導入される。そして、誘電体部材18の内部を外径方向に伝搬し、スロットアンテナ板17に設けられた複数のスロット20から誘電体窓16に放射される。誘電体窓16に導入されたマイクロ波は、誘電体窓16の内部に電界を形成する。そして、誘電体窓16を透過したマイクロ波が、誘電体窓16の直下に電界を生じさせ、処理容器12内にプラズマを生成する。すなわち、本実施形態に係るプラズマ処理装置11においては、プラズマ処理に供されるマイクロ波プラズマが、上記した構成のスロットアンテナ板17および誘電体部材18を含むラジアルラインスロットアンテナ(RLSA:Radial Line Slot Antenna)により生成される。
【0042】
次に、本発明の一実施形態に係るマイクロ波発生装置41について、図1および図3を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る変調装置61のブロック図である。
【0043】
図1および図3を参照して、本発明の一実施形態に係るマイクロ波発生装置41は、搬送波を変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する変調装置61を有する。変調装置61は、所定の周波数の搬送波を生成する搬送波発振器42と、単一周波数または周波数帯域幅を有する変調波を生成する変調波発振器43と、変調波によって上記搬送波を変調する変調器44と、所定の周波数より低い周波数成分および所定の周波数より高い周波数成分を遮断するフィルター45と、フィルター45から出力されたマイクロ波を上記導波管35に送信する送信器46とから構成されている。
【0044】
本実施形態に係る変調装置61においては、まず、搬送波発振器42によって基準となる搬送波が生成される。また、変調波発振器43によって、単一周波数または周波数帯域幅を有する変調波が生成される。搬送波の周波数、および変調波の周波数または周波数帯域幅は、処理容器12内において行われるプラズマ処理に応じて適宜設定される。そして、変調器44において、搬送波が変調波により変調される。これにより、搬送波周波数を基準として上下側波帯に周波数スペクトルを拡散させる。次いで、この信号をフィルター45に入力し、所定の周波数帯域のみを通過させるように信号処理を行う。その結果、所定の周波数帯域に亘ってスペクトルが拡散したマイクロ波信号が生成される。このように、搬送波周波数を基準として周波数スペクトルを拡散させる変調としては、例えば、周波数変調、位相変調等が典型例として挙げられる。
【0045】
ここで、図4に周波数変調の一例を示す。図4は、上から搬送波の時間波形、変調波の時間波形、変調により生成された信号の時間波形、変調により生成された信号の周波数スペクトルをそれぞれ示す。なお、図4においては、理解の容易の観点から、変調波として単一周波数の正弦波を用いている。図4に示すように、線54に示す搬送波を線55に示す変調波によって周波数変調することによって、線56に示すマイクロ波信号が形成される。このマイクロ波信号は、線57に示すように、搬送波周波数fを基準として、上下側波帯に無限に拡散する周波数スペクトルを有している。このように、搬送波を周波数変調することによって、広域な周波数帯域に亘ってスペクトルが拡散したマイクロ波信号を、容易に生成することが可能である。
【0046】
本実施形態に係る変調装置61に周波数変調を適用する場合は、上記したように、搬送波および変調波の周波数を、プラズマ処理に応じて適宜選択する。その一例としては、例えば搬送波周波数を、f=2.45GHzの周波数に設定し、任意の周波数帯域幅を有する変調波によって周波数変調する。そして、生成されたマイクロ波信号を、f=2.35GHz〜f=2.55GHzの帯域通過特性を有するフィルター45に入力し、2.35GHzより低い周波数成分、および、2.55GHzより高い周波数成分を遮断する。図5および図6に、その場合における周波数スペクトルを概略的に示す。図5は、変調器44から出力されたマイクロ波信号の周波数スペクトルを示す。図6は、フィルター45から出力されたマイクロ波信号の周波数スペクトルを示す。
【0047】
図5および図6を参照して、変調器44から出力されたマイクロ波信号は、搬送波周波数fを基準として、上下側波帯に無限に拡散する周波数スペクトルを有している。このような周波数帯域を有するマイクロ波信号に対して、フィルター45によって、低域遮断周波数fから高域遮断周波数fまでの帯域の周波数成分のみ通過するように信号処理される。こうして、図6に示すように、f〜fまでに亘る所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波信号が生成される。
【0048】
次に、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理方法について説明する。本発明の一実施形態に係るプラズマ処理方法は、処理容器12内にプロセスガスを供給する工程と、所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する工程と、生成されたマイクロ波を用いて処理容器12内にプラズマを励起する工程と、励起されたプラズマによって被処理基板Wをプラズマ処理する工程とを備える。
【0049】
以下、各工程について、説明する。処理容器12内にプロセスガスを供給する工程において、ガス供給系29から、プラズマ処理用ガス供給部13を介して、処理容器12内にプラズマ処理用のプロセスガス等が供給される。このとき、上記の制御部によって、第一のプラズマ処理用ガス供給部26、および、第二のプラズマ処理用ガス供給部27から供給されるプロセスガスの種類や流量比が、行われるプラズマ処理に応じて適宜制御される。
【0050】
次に、マイクロ波発生装置41において、上記したような所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する。マイクロ波生成工程においては、上記したように、まず、所定の周波数の搬送波が、搬送波発振器42によって生成される。また、単一周波数または周波数帯域幅を有する変調波が、変調波発振器43において生成される。そして、変調器44において、上記搬送波が変調波によって変調される。これにより、搬送波周波数を基準として上下側波帯に周波数スペクトルを拡散させる。変調方式としては、上記のように、周波数変調、または位相変調を適用可能である。このようにして生成されたマイクロ波信号をフィルター45に入力し、所定の周波数より低い周波数成分および所定の周波数より高い周波数成分が遮断され、所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波信号が生成される。そして、フィルター45から出力されたマイクロ波信号を、送信器46によって上記導波管35に送信する。
【0051】
送信器46から導波管35に送信されたマイクロ波は、導波部32、誘電体部材18、スロットアンテナ板17、および誘電体窓16を経て、処理容器12内に伝搬される。そして、処理容器12内にプラズマが励起される。
【0052】
次いで、処理容器12内に励起されたプラズマを用いて、支持台14上に保持された被処理基板Wに対して、プラズマエッチングや、プラズマCVD((Chemical Vapor Deposition)、プラズマスパッタリング等のプラズマ処理を行う。
【0053】
上記したように、本発明においては、プラズマ励起のために、所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波が用いられる。これにより、誘電体窓16の内部において生じる電界の偏りを、相対的に緩和させることができるため、誘電体窓の直下により均一な電界を形成することができる。
【0054】
次に、上記した本発明の効果について、本願発明者によって行われた誘電体窓に生じる電界強度に関するシミュレーション結果に基づいて、以下に説明する。
【0055】
まず、図7〜図12を用いて、単一周波数のマイクロ波を適用した場合に誘電体窓に形成される電界強度について説明する。図7は、プラズマ処理装置において2.45GHzの単一周波数のマイクロ波を誘電体窓に導入した場合に、誘電体窓の下面に形成された電界分布のシミュレーション結果を示す。図8は、図7に示す電圧分布を線図で示した概略図と、図中のO−E領域における中心からの距離と電界強度との関係を示すグラフを示す。図9は、2.55GHzの単一周波数のマイクロ波を誘電体窓に導入した場合の電界分布のシミュレーション結果を示す図であって、図7に対応する。図10は、図9に示す電圧分布を線図で示した概略図と、図中のO−E領域における中心からの距離と電界強度との関係を示すグラフを示す。図11は、2.65GHzの単一周波数のマイクロ波を誘電体窓に導入した場合の電界分布のシミュレーション結果を示す図であって、図7に対応する。図12は、図11に示す電圧分布を線図で示した概略図と、図中のO−E領域における中心からの距離と電界強度との関係を示すグラフを示す。なお、図8、図10、および図12中の領域47〜49は、電界強度の等高線によって画定された領域を示しており、電界の強さに関して、領域47、領域48、領域49の順に強い電界が形成されていることを示すものである(電界強度:領域47>領域48>領域49)。また、点線領域38a、39aは、上記スロットアンテナ板17の第一領域38および第二領域39に相当する誘電体窓の領域をそれぞれ示す。
【0056】
図7および図8を参照して、2.45GHzの単一周波数マイクロ波を誘電体窓に導入した場合は、中心側に位置する領域38aにおいて強い電界領域47、48が形成されており、周縁側に位置する領域39aには強い電界領域が形成されていないことが分かる。すなわち、この場合においては、スロットアンテナ板17の中心側に位置する第一領域38に設けられた第一スロット対20aの直下に強い電界が形成され、スロットアンテナ板17の周縁側に位置する第二領域39に設けられた第二スロット対20bの直下の電界が弱まっていることが分かる。
【0057】
図9および図10を参照して、導入するマイクロ波周波数を2.55GHzに変化させると、電界分布が大きく変化し、領域38aに形成されていた電界の強度が弱まり、領域39aの電界が、やや強まっていることが分かる。
【0058】
図11および図12を参照して、導入するマイクロ波周波数を2.65GHzに変化させると、領域38aに形成されていた電界の強度が大幅に弱まり、領域39aにおいて強い電界領域47、48が広く形成されていることが分かる。すなわち、この場合においては、スロットアンテナ板17の第一領域38に設けられた第一スロット対20aの直下の電界が大幅に弱まった一方、スロットアンテナ板17の第二領域39に設けられた第二スロット対20bの直下の電界が大幅に強まったことが分かる。
【0059】
このように、プラズマ処理装置において単一周波数のマイクロ波を適用した場合においては、スロットアンテナ板のスロットの直下に形成される電界の強度が、マイクロ波周波数に依存して大きく変動することが明らかである。
【0060】
次に、図13〜図15を用いて、プラズマ処理装置において所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を導入した場合に誘電体窓に形成される電界強度について説明する。図13は、本実施形態に係るプラズマ処理装置により生成した2.55GHz±200MHz(2.35GHz〜2.75GHz)の周波数帯域幅を有するマイクロ波を誘電体窓に導入した場合の電界分布のシミュレーション結果を示す図である。図14は、図13に示す電圧分布を線図で示した概略図と、図中のO−E領域における中心からの距離と電界強度との関係を示すグラフを示す。図15は、図8、図12、図14に示すグラフを一つのグラフに統合したものであって、線51は2.55GHz±200MHzの周波数帯域幅を有するマイクロ波を導入した場合、線52は2.45GHzの単一周波数のマイクロ波を導入した場合、線53は2.55GHzの単一周波数のマイクロ波を導入した場合、線54は2.65GHzの単一周波数のマイクロ波を導入した場合をそれぞれ示す。
【0061】
図13および図14を参照して、誘電体窓に2.55GHz±200MHz(2.35GHz〜2.75GHz)の周波数帯域幅を有するマイクロ波を導入した場合は、領域38aおよび領域39aの双方において、強い電界領域47,48が形成されていることが分かる。すなわち、上記図7〜図12と比較すると明らかなように、所定の周波数帯域に拡散する周波数成分を包含するマイクロ波を用いることによって、スロットアンテナ板17の中央側に位置する第一領域38に設けられた第一スロット対20aの直下と、周縁側に位置する第二領域39に設けられた第二スロット対20bの直下の双方の領域において、強い電界を形成することができることが分かる。
【0062】
また、図15を参照して、2.55GHz±200MHzの周波数帯域幅を有するマイクロ波を導入した場合は、単一周波数マイクロ波を用いた場合に比べて、誘電体窓の中心からいずれの距離の位置においても、より強い電界が形成されていることが分かる。より具体的には、2.45GHzの単一周波数のマイクロ波を導入した場合(線52)は、誘電体窓の中心側に位置する上記領域38a(中心からの距離が0.04〜0.08m付近の領域)において電界強度のピークが表れている。2.55GHzの単一周波数のマイクロ波を導入した場合(線53)は、領域38aにおける電界強度のピークが下がる一方、上記領域39a(中心からの距離が0.13〜0.16m付近の領域)における電界強度が強まってきていることが分かる。そして、2.65GHzの単一周波数のマイクロ波を導入した場合(線54)は、誘電体窓の周縁側に位置する領域39aにおいて大きな電界強度のピークが表れている。これに対して、2.55GHz±200MHzの周波数帯域幅を有するマイクロ波を導入した場合(線51)は、領域38aおよび領域39aの双方において、同程度の電界強度のピークが表れていることが分かる。
【0063】
このように、本実施形態によれば、スロットアンテナ板の中央領域の直下、および周縁領域の直下の双方の領域において、強い電界を偏差なく形成することが可能となる。このような結果となることについて、以下に簡単に考察する。
【0064】
図13および図14に示すシミュレーションに用いられたマイクロ波は、2.45GHz〜2.65GHzの周波数帯域に亘って拡散する周波数成分を有している。すなわち、このマイクロ波は、2.45GHz〜2.65GHzの帯域内において、異なる周波数のマイクロ波を無数に包含するものである。ここで、上記したように、誘電体窓の内部に生じるマイクロ波の定在波、および、スロットアンテナ板の各スロットから放射されたマイクロ波同士の干渉等によって生じる電界の偏り、すなわち電界分布モードは、周波数に大きく依存して変化する。図7〜図12に示したように、2.45GHzの単一周波数マイクロ波を誘電体窓に導入した場合は、スロットアンテナ板17の中心側に位置する第一領域38に設けられた第一スロット対20aの直下に強い電界が形成され、2.55GHz、2.65GHzへとマイクロ波周波数を変化させていくと、今度はスロットアンテナ板17の周縁側に位置する第二領域39に設けられた第二スロット対20bの直下に強い電界が形成されるようになった。一方、本実施形態のように2.45GHz〜2.65GHzの帯域幅を有するマイクロ波を用いた場合は、第一スロット対20aの直下の領域に強い電界を形成する2.55GHzの周波数成分、および第二スロット対20bの直下の領域に強い電界を形成する2.65GHzの周波数成分をはじめ、上記周波数帯域内の無数の周波数成分を包含するために、図13〜図15に示すように誘電体窓の中央領域および周縁領域のいずれの領域においても図7〜図12よりも強い電界を形成することができたものと考えられる。
【0065】
このように、本実施形態によれば、所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を用いることによって、単一周波数のマイクロ波を用いた場合に比べて、スロットアンテナ板の中央領域の直下、および周縁領域の直下の双方の領域において、強い電界を偏差なく形成することが可能となる。これにより、処理用容器内により均一なプラズマを生成することが可能となるため、プラズマ処理の面内均一性を向上させることができる。
【0066】
さらに、このマイクロ波は、上記のように無数の周波数成分を包含することから、例えば周波数ドリフト等によって、マイクロ波発生装置によって生成されるマイクロ波の周波数に変動が生じた場合においても、誘電体窓内に生じる電界分布への影響を相対的に小さくすることができる。すなわち、周波数ドリフト等によるプラズマ処理の面内均一性への影響を抑えることができる。また、モードジャンプのようなプラズマモードの不安定化を抑制することができる。
【0067】
なお、上記実施形態においては、所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波信号を生成するための変調方式として、周波数変調を適用した場合について説明した。しかしながら、これに限らず、例えば位相変調等によっても搬送波周波数を基準として周波数スペクトルを拡散させることが可能であるため、本発明に適用することが可能である。また、このような変調を実行する変調器は、比較的容易に構築することが可能である。したがって、比較的に容易な手段によって、マイクロ波の周波数成分を、搬送波周波数を基準として所定の周波数帯域に拡散させることができる。また、マイクロ波の基準周波数および周波数帯域幅を容易に制御可能であるため、行われるプラズマ処理に応じて適宜マイクロ波を調整することができる。
【0068】
また、上記した実施形態においては、周波数変調によって生成された上記図6に示す周波数スペクトルを有するマイクロ波を用いた場合について説明した。しかしながら、これに限らず、例えば所定の周波数帯域に亘って一定の振幅の周波数成分を有するように制御されたマイクロ波を用いてもよい。この構成によれば、当該周波数帯域内におけるマイクロ波の周波数成分の振幅が全て均一化されるため、誘電体窓に生じる電界分布の均一性を、より効果的に向上させることができる。このようなマイクロ波の生成手段としては、例えばホワイトノイズや周期インパルスのように、広帯域に亘って一定の振幅スペクトルを有する信号を、フィルター等によって所定の周波数帯域の周波数成分のみを取り出すように制御する方法が考えられる。
【0069】
また、上記実施形態においては、2.45GHz〜2.65GHzの周波数帯域幅を有するマイクロ波を用いた場合について説明したが、これに限らず、マイクロ波の周波数帯域幅は、行われるプラズマ処理に応じて最適となるように適宜設定されるものである。
【0070】
また、本発明に係るマイクロ波発生装置における変調は、アナログ回路またはデジタル回路のいずれによって構成されてもよい。デジタル変調方式としては、例えばASKやPSK等のいずれの変調方式を適用してもよい。また、周波数ホッピング等のスペクトラム拡散方式を適用することも可能である。
【0071】
また、上記実施形態においては、スロットアンテナ板の第一領域に周方向に配列する第一スロット対が一列設けられ、第二領域に周方向に配列する第二スロット対が二列設けられている場合について説明したが、これに限らず、第一領域に二列以上の第一スロット対が設けられていてもよく、また、第二領域に一列もしくは三列以上の第二スロット対が設けられていてもよい。
【0072】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
11 プラズマ処理装置、12 処理容器、13,26,27 ガス供給部、14 支持台、16 誘電体窓、17 スロットアンテナ板、18 誘電体部材、19 プラズマ発生機構、20,20a,20a,20a,20b,20b,20b スロット、21 底部、22 側壁、23 排気孔、24 環状部、25 Oリング、28 下面、29 ガス供給系、30a,30b ガス供給孔、31 筒状支持部、32 導波部、33 同軸導波管、34 モード変換器、35 導波管、36 マッチング機構、41 マイクロ波発生装置、42,43 発振器、44 変調器、45 フィルター、46 送信器、38,38a,39,39a,47,48,49,50 領域、51,52,53,54,55,56,57 線、61 変調装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、
内部においてプラズマ処理を行う上部開口の処理容器と、
前記処理容器の上部開口を閉鎖するように配置される円形状の誘電体窓と、
前記誘電体窓の上方側に配置され、中心側に位置する第一領域において周方向に略等間隔に配列するように設けられた第一スロットと、周縁側に位置する第二領域において周方向に略等間隔に配列するように設けられた第二スロットとを有する円板状のスロットアンテナ板と、
前記スロットアンテナ板の上方側に配置され、マイクロ波を径方向に伝搬させる誘電体部材と、
前記スロットアンテナ板にマイクロ波を導入する導波部と、を備え、
前記マイクロ波発生装置は、搬送波を変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する変調装置を有する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記変調装置は、前記搬送波を周波数変調することよって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記変調装置は、前記搬送波を位相変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する、請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記変調装置は、
前記搬送波を生成する搬送波発振器と、
前記搬送波を変調するための変調波を生成する変調波発振器と、
前記搬送波を前記変調波によって変調する変調器と、
前記所定の周波数帯域より低い周波数成分、および、前記所定の周波数帯域より高い周波数成分の少なくともいずれか一方を遮断するフィルターと、
マイクロ波を前記導波部に送信する送信器と、を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記マイクロ波発生装置により生成されたマイクロ波は、前記所定の周波数帯域に亘って一定の振幅の周波数成分を有するように制御される、請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
マイクロ波の周波数帯域幅は、2.35GHz〜2.55GHzの範囲内に設定される、請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
内部においてプラズマ処理が行われる処理容器内にプロセスガスを供給する工程と、
搬送波を変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する工程と、
生成されたマイクロ波によって処理容器内にプラズマを励起する工程と、
前記処理容器内において被処理基板をプラズマ処理する工程と、を備える、プラズマ処理方法。
【請求項8】
前記マイクロ波を生成する工程は、搬送波を周波数変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する工程である、請求項7に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記マイクロ波を生成する工程は、搬送波を位相変調することによって所定の周波数帯域幅を有するマイクロ波を生成する工程である、請求項7に記載のプラズマ処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−109080(P2012−109080A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255961(P2010−255961)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】