説明

プラズマ発生電極及びプラズマ反応器、並びに排気ガス浄化装置

本発明のプラズマ発生電極1は、複数の単位電極2が所定間隔を隔てて階層的に積層され、単位電極2が、導電膜4を欠落した部分を有する欠落単位電極2bと、欠落した部分を有しない通常単位電極2aとから構成されてなり、各単位電極2間に形成される空間Vが、導電膜4間の距離が単位電極2相互間の距離となるように形成された通常空間Vaと、通常単位電極2a相互間に、導電膜4間の距離が通常空間Vaにおける導電膜4間の距離よりも長くなるように形成された欠落空間Vbとから構成されている。本発明のプラズマ発生電極1は、被処理流体を一度流すだけで、含有される複数の所定成分を、それぞれの反応に適した複数の異なるプラズマにより、効率的に処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生電極及びプラズマ反応器、並びに排気ガス浄化装置に関する。さらに詳しくは、被処理流体をプラズマが発生する空間に流したときに、一度流すだけで、被処理流体に含有される複数の所定の成分を、それぞれの反応に適した複数の異なる大きさのプラズマにより、処理することができるプラズマ発生電極及びプラズマ反応器に関する。また、排気ガスを良好に浄化することが可能な排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二枚の電極間に誘電体を配置し高電圧の交流、あるいは周期パルス電圧をかけることにより、無声放電が発生し、これによりできるプラズマ場では活性種、ラジカル、イオンが生成され、気体の反応、分解を促進することが知られており、これをエンジン排気ガスや各種の焼却炉排気ガスに含まれる有害成分の除去に利用できることが知られている。
【0003】
例えば、エンジン排気ガスや各種の焼却炉排気ガスを、プラズマ場内を通過させることによって、このエンジン排気ガスや各種の焼却炉排気ガス中に含まれる、例えば、NO、カーボン微粒子、HC、CO等を処理する、プラズマ反応器等が開示されている(例えば、特開2001−164925号公報参照)。
【発明の開示】
【0004】
しかしながら、上記NO、カーボン微粒子等はそれぞれ、プラズマで処理するときの適した放電電圧の大きさが異なっているため、排気ガス中のこれらの成分を処理するときには、別々のプラズマ反応器を複数使用するか、最も放電電圧の大きな条件に合わせてプラズマを発生させる必要があった。プラズマ反応器を複数使用すると設備費がかかり、また放電電圧を大きく設定するとエネルギーロスが大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、被処理流体をプラズマが発生する空間に流したときに、一度流すだけで、被処理流体に含有される複数の所定の成分を、それぞれの反応に適した複数の異なる大きさのプラズマにより、効率的に処理することができるプラズマ発生電極及びプラズマ反応器を提供する。また、上述したプラズマ反応器と、触媒とを備え、排気ガスを良好に浄化することが可能な排気ガス浄化装置を提供する。
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明は、以下のプラズマ発生電極及びプラズマ反応器、並びに排気ガス浄化装置を提供するものである。
【0007】
[1]複数の単位電極が所定間隔を隔てて階層的に積層されてなるとともに、前記単位電極相互間に、一の方向の両端が開放されるとともに他の方向の両端が閉鎖された空間が形成されてなり、これらの単位電極間に電圧を印加することによって前記空間においてプラズマを発生させることが可能なプラズマ発生電極であって、前記単位電極が、誘電体となる板状のセラミック体と、前記セラミック体の内部に配設された導電膜から形成されるとともに、前記一の方向における一の端部から他の端部に至るまでの間に前記導電膜を欠落した部分を有する欠落単位電極と、欠落した部分を有しない通常単位電極とから構成されてなり、かつ前記空間が、それぞれ対向する前記通常単位電極と前記欠落単位電極との間又は前記欠落単位電極相互間に、前記導電膜間の距離が前記単位電極相互間の距離となるように形成された複数の通常空間と、前記欠落単位電極の欠落部分を挟んでそれぞれ対向することになる前記通常単位電極相互間に、前記導電膜間の距離が前記通常空間における導電膜間の距離よりも長くなるように形成された複数の欠落空間とから構成されてなり、前記通常空間と前記欠落空間とにおける、プラズマを発生させる前記単位電極を構成する前記導電膜間の距離が異なることにより、前記通常空間と前記欠落空間とにおいて発生するプラズマの大きさが異なるプラズマ発生電極。
【0008】
[2]前記欠落単位電極が、前記単位電極を構成する前記導電膜の一部のみが欠落して形成されてなる前記[1]に記載のプラズマ発生電極。
【0009】
[3]前記欠落単位電極が、前記単位電極を構成する前記セラミック体及び前記導電膜のそれぞれの一部が欠落して形成されてなる前記[1]に記載のプラズマ発生電極。
【0010】
[4]前記単位電極を構成する前記導電膜が、電圧が印加されたときに、それぞれ異なった電位となる複数の導電膜群から構成され、所定の電位となる前記導電膜群(第一の導電膜群)のそれぞれが、前記空間の前記他の方向の端部まで延設され、前記第一の導電膜群の場合とは異なる電位となる前記導電膜群(第二の導電膜群)のそれぞれが、前記空間の前記他の方向の端部まで延設され、前記第一の導電膜群が延設された端部側の面及び前記第二の導電膜群が延設された端部側の面のそれぞれに導電膜(第一の側端部導電膜及び第二の側端部導電膜)が配設され、前記第一の導電膜群と前記第一の側端部導電膜とが接触して電気的な導通が可能とされてなるとともに、前記第二の導電膜群と前記第二の側端部導電膜とが接触して電気的な導通が可能とされてなる前記[1]〜[3]のいずれかに記載のプラズマ発生電極。
【0011】
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載のプラズマ発生電極を備えてなり、前記プラズマ発生電極を構成する複数の前記単位電極相互間に形成された前記空間内に所定の成分を含有するガスが導入されたときに、前記空間内に発生させたプラズマにより前記ガス中の前記所定の成分を反応させることが可能なプラズマ反応器。
【0012】
[6]前記空間内に前記所定の成分を含有するガスが導入されたときに、前記所定成分のなかで、前記通常空間内で発生するプラズマにより反応される成分の種類と、前記欠落空間内で発生するプラズマにより反応される成分の種類とが異なる前記[5]に記載のプラズマ反応器。
【0013】
[7]前記[5]又は[6]に記載のプラズマ反応器と、触媒とを備え、前記プラズマ反応器と前記触媒とが、内燃機関の排気系の内部に配設された排気ガス浄化装置。
【0014】
このように、本発明のプラズマ発生電極は、単位電極が、通常単位電極と欠落単位電極とから構成され、それにより導電膜間の距離がそれぞれ異なる通常空間と欠落空間とが形成されることにより、通常空間と欠落空間のそれぞれに発生するプラズマの大きさを異ならせることができる。そして、本発明のプラズマ反応器は、このようなプラズマ発生電極を有するものとしたため、反応器内に、所定の成分を含有するガスが導入されたときに、その所定成分のなかで、通常空間内で発生するプラズマにより反応される成分の種類と、欠落空間内で発生するプラズマにより反応される成分の種類とを異ならせることが可能となり、それぞれの成分を最適な大きさのプラズマにより効率的に反応させることができる。さらに、本発明の排気ガス浄化装置は、上述したプラズマ反応器と、触媒とを備えていることから、排気ガスを良好に浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1(a)】図1(a)は、本発明のプラズマ発生電極の一の実施の形態を模式的に示すものであり、一の方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【図1(b)】図1(b)は、図1(a)のA−A’断面図である。
【図2】図2は、本発明のプラズマ発生電極を構成する単位電極の断面図である。
【図3】図3は、本発明のプラズマ発生電極を構成する導電膜を模式的に示した平面図である。
【図4(a)】図4(a)は、本発明のプラズマ発生電極の他の実施の形態を模式的に示すものであり、一の方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【図4(b)】図4(b)は、図4(a)のB−B’断面図である。
【図5】図5は、本発明のプラズマ発生電極の他の実施の形態に側端部導電膜を配設したものを第一側端部側からみた側面図である。
【図6】図6は、本発明のプラズマ発生電極の一の実施の形態を構成する突条配設セラミック体を模式的に示した斜視図である。
【図7】図7は、本発明のプラズマ発生電極の一の実施の形態を構成する導電膜配設セラミック体を模式的に示した斜視図である。
【図8】図8は、本発明のプラズマ反応器の一の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の排気ガス浄化装置の一の実施の形態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明のプラズマ発生電極及びプラズマ反応器、並びに排気ガス浄化装置の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0017】
図1(a)、図1(b)は、本発明のプラズマ発生電極の一の実施の形態を模式的に示すものであり、図1(a)は、一の方向に垂直な平面で切断した断面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A’断面図である。図2は、本発明のプラズマ発生電極を構成する単位電極の断面図である。
【0018】
本実施の形態のプラズマ発生電極1は、図1(a)、図1(b)に示すように、複数の単位電極2が所定間隔を隔てて階層的に積層されてなるとともに、単位電極2相互間に、一の方向Pの両端が開放されるとともに他の方向Qの両端が閉鎖された空間Vが形成されてなり、これらの単位電極2間に電圧を印加することによって空間Vにおいてプラズマを発生させることが可能なプラズマ発生電極1である。
【0019】
本実施の形態のプラズマ発生電極1を構成する単位電極2は、図2に示すように、誘電体となる板状のセラミック体3と、セラミック体3の内部に配設された、導電膜4からそれぞれ形成される。そして、図1(a)、図1(b)に示すように、単位電極2は、一の方向Pにおける一の端部から他の端部に至るまでの間に導電膜4を欠落した部分を有する欠落単位電極2bと、欠落した部分を有しない通常単位電極2aとから構成されている。そして、空間Vが、それぞれ対向する通常単位電極2aと欠落単位電極2bとの間又は欠落単位電極2b相互間に、導電膜4間の距離が単位電極2相互間の距離となるように形成された複数の通常空間Vaと、欠落単位電極2bの欠落部分を挟んでそれぞれ対向することになる通常単位電極2a相互間に、導電膜4間の距離が通常空間Vaにおける導電膜4間の距離よりも長くなるように形成された複数の欠落空間Vbとから構成される。
【0020】
上記欠落部とは、単位電極2の導電膜4が、一の方向Pの一方の端部側から一定長さだけ欠落して存在しない部分を有するときの、その欠落した部分をいう。上記一定長さは、特に限定されるものではないが、欠落空間Vbを形成して、下記のプラズマ反応器に使用したときに、所定の成分を反応させることができるだけの長さであればよい。例えば、プラズマ反応器の空間Vの全体に対して、欠落空間Vbが20−80%であることが好ましい。電圧を印加するときには、各単位電極2が交互に電源側と接地側に接続される。そして、通常単位電極2a及び欠落単位電極2bは、いずれも、電源側にも接地側にも接続されることができる。また、通常単位電極2aの中の電源側に接続するものの一部又は全部が、複数に分割され(図1(b)では通常単位電極2aの一部が2つに分割されている)、複数の異なる電位となるように形成されてもよい。複数に分割された状態で、同一の電源で同一の電位としてもよい。
【0021】
このように、本実施の形態のプラズマ発生電極1は、上述のように構成されるため、通常空間Vaと欠落空間Vbとにおける、プラズマを発生させる単位電極2を構成する導電膜4間の距離が異なり、通常空間Vaと欠落空間Vbとにおいて発生するプラズマの強さが異なるものとなる。そのため、本実施の形態のプラズマ発生電極1を下記のプラズマ反応器に使用したときには、排気ガス等を処理するとき、被処理流体をプラズマが発生する空間に流したときに、一度流すだけで、被処理流体に含有される複数の所定の成分を、それぞれの反応に適した複数の異なる強さのプラズマにより、処理することができる。
【0022】
プラズマの強さが異なるとは、プラズマのエネルギーの大きさが異なることであり、単位電極間の電位差が同じときには、単位電極間の距離が小さいほうがプラズマのエネルギーは大きくなる。
【0023】
本実施の形態のプラズマ発生電極1を構成する欠落電極2bは、単位電極2を構成するセラミック体3及び導電膜4のそれぞれの、一の方向Pの一方の端部側から一部が欠落して形成されている。そのため、欠落単位電極2bの欠落部分は、空間となり(導電膜4だけでなくセラミック体3も存在しない)、欠落空間Vbは、通常単位電極2aに挟まれた、通常空間Vaより大きい空間となっている。
【0024】
通常単位電極2a相互間の距離W2(欠落空間Vbの幅)は、0.5〜5mmであることが好ましい。また、欠落単位電極2b相互間の距離W1(通常空間Vaの幅)は、0.1〜3mmであることが好ましい。本実施の形態では、欠落単位電極2bは一種類であるが、二種類以上の長さの異なる欠落単位電極2bを使用し、さらに幅の異なる空間を形成するようにしてもよい。この場合には、三番目以降の空間(図示せず)は、欠落単位電極相互間又は欠落単位電極と通常単位電極との間に形成されることになる。それにより、さらに異なる大きさのプラズマを発生させることができる。
【0025】
図1(a)、図1(b)に示す、単位電極2を構成する導電膜4の厚さとしては、プラズマ発生電極1の小型化及び、排気ガス等を処理する場合に単位電極2間を通過させる被処理流体の抵抗を低減させる等の理由から、0.001〜0.1mmであることが好ましく、さらに、0.005〜0.05mmであることが好ましい。
【0026】
また、本実施の形態に用いられる導電膜4は、導電性に優れた金属を主成分とすることが好ましく、例えば、導電膜4の主成分としては、タングステン、モリブデン、マンガン、クロム、チタン、ジルコニウム、ニッケル、鉄、銀、銅、白金、及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を好適例として挙げることができる。なお、本実施の形態において、主成分とは、成分の60質量%以上を占めるものをいう。なお、導電膜4が、上述した群のうち二種類以上の金属を主成分として含む場合には、それら金属の総和が、成分の60質量%以上を占めるものとする。
【0027】
単位電極2において、導電膜4は、テープ状のセラミック体3に塗工されて配設されたものであることが好ましく、具体的な塗工の方法としては、例えば、印刷、ローラ、スプレー、静電塗装、ディップ、ナイフコータ等を好適例としてあげることができる。このような方法によれば、塗工後の表面の平滑性に優れ、且つ厚さの薄い導電膜4を容易に形成することができる。
【0028】
導電膜4をテープ状のセラミック体に塗工する際には、導電膜4の主成分として挙げた金属の粉末と、有機バインダーと、テルピネオール等の溶剤とを混合して導体ペーストを形成し、上述した方法でテープ状のセラミック体3に塗工することで形成することができる。また、テープ状のセラミック体3との密着性及び焼結性を向上させるべく、必要に応じて上述した導体ペーストに添加剤を加えてもよい。
【0029】
導電膜4の金属成分にセラミック体3と同じ成分を添加することにより、導電膜4とセラミック体3との密着性を良くすることが可能となる。また、金属成分に添加するセラミック体成分にガラス成分を加えることもできる。ガラス成分の添加により、導電膜4の焼結性を向上し、密着性に加え緻密性が向上する。金属成分以外のセラミック体3の成分及び/又はガラス成分の総和は、30質量%以下が好ましい。30質量%を超えると、抵抗値が下がり、導電膜4としての機能が得られないことがある。
【0030】
また、単位電極2を構成する板状のセラミック体3(テープ状のセラミック体)は、上述したように誘電体としての機能を有するものであり、導電膜4が板状のセラミック体3の内部に配設された状態で用いられることにより、導電膜4単独で放電を行う場合と比較して、スパーク等の片寄った放電を減少させ、小さな放電を複数の箇所で生じさせることが可能となる。このような複数の小さな放電は、スパーク等の放電に比して流れる電流が少ないために、消費電力を削減することができ、さらに、誘電体が存在することにより、単位電極2間に流れる電流が制限されて、温度上昇を伴わない消費エネルギーの少ないノンサーマルプラズマを発生させることができる。
【0031】
単位電極2のうちの少なくとも一つが、誘電体となる板状のセラミック体3と、板状のセラミック体3の内部に配設された、図3に示すその膜厚方向に貫通した膜厚方向に垂直な方向の平面で切断した断面の形状が一部に円弧を含む形状の貫通孔5が複数形成された導電膜4とを有してなることが好ましい。貫通孔5は、図3ではそれぞれが正方形の頂点に位置するように配置されているが、それぞれが正三角形の頂点に位置するように配置されるとより好ましい。このように、導電膜4に貫通孔5を形成すると、さらに均一な放電を、低電圧で得ることができるため、好ましい。
【0032】
上述した貫通孔5の大きさについては、特に限定されることはないが、例えば、それぞれの貫通孔5の直径が1〜10mmであることが好ましい。このように構成することによって、貫通孔5の外周上での電界集中が、放電に適した条件となり、一対の単位電極2間に印加する電圧がさほど高くなくとも放電を良好に開始させることができる。貫通孔5の直径が1mm未満であると、貫通孔5の大きさが小さくなり過ぎて、貫通孔5の外周上に生ずる放電が、上述した点を起点とした局所的な放電と似た状態となり、不均一なプラズマが発生する恐れがある。また、貫通孔5の直径が10mmを超えると、貫通孔5の内部には放電が生じにくいため、一対の単位電極2間に生じるプラズマの密度が低下する恐れがある。
【0033】
また、本実施の形態においては、貫通孔5の、隣接するそれぞれの中心間の距離は、貫通孔5の直径に応じて、均一かつ高密度なプラズマを発生させることができるような長さとなるように適宜決定されていることが好ましく、例えば、特に限定されることはないが、隣接するそれぞれの中心間の距離が、1.5〜20mmであることが好ましい。
【0034】
また、この貫通孔5は、単位面積当りの貫通孔5の外周の長さが長くなるように形成されていることが好ましい。このように構成することによって、単位面積当たりに電界不均一な領域の長さ、即ち、プラズマの発生起点となる外周の長さを長くすることができ、単位面積当たりに多くの放電を起こさせて高密度のプラズマを発生させることができる。具体的な単位面積当りの貫通孔5の外周の長さ(mm/(mm))としては、発生させるプラズマの強度等によって適宜設定することができるが、例えば、自動車の排気ガスを処理する場合には、0.05〜1.7mm/(mm)であることが好ましい。単位面積当りの貫通孔5の外周の長さが0.05より小さいと局所的な放電が起こり、安定な放電空間が得にくくなることがある。1.7より大きいと、導電膜4の抵抗値が高くなり放電効率が低下することがある。
【0035】
また、本実施の形態においては、単位面積当たりの導電膜4の面積は0.1〜0.98(mm)/(mm)であることが、好ましい。0.1より小さいと誘電体電極の静電容量が小さすぎて、排ガス浄化に必要な放電を得ることが難しくなることがある。0.98より大きいと、貫通孔による均一な放電効果が得にくくなり、局所的な放電が起こりやすくなることがある。
【0036】
図3に示す導電膜4に形成される貫通孔5は、図1(a)に示すプラズマ発生器1に形成したときに、単位電極2間に空間Vを形成するためのスペーサー部分に重ならないようにすることが好ましい。スペーサー部分に重ならないようにすることで異常放電することを抑制することができる。
【0037】
板状のセラミック体3は、誘電率の高い材料を主成分とすることが好ましく、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化珪素、ムライト、コージェライト、チタン−バリウム系酸化物、マグネシウム−カルシウム−チタン系酸化物、バリウム−チタン−亜鉛系酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム等を好適に用いることができる。耐熱衝撃性にも優れた材料を主成分とすることによって、プラズマ発生電極を高温条件下においても運用することが可能となる。
【0038】
例えば、酸化アルミニウム(Al)にガラス成分を添加した低温焼成基板材料(LTCC)に導体として銅メタライズを用いることができる。銅メタライズを用いるため、抵抗が低く、放電効率の高い電極が造られるため、電極の大きさが小さくできる。そして、熱応力を回避した設計が可能となり、強度が低い問題が解消される。また、チタン酸バリウム、マグネシウム−カルシウム−チタン系酸化物、バリウム−チタン−亜鉛系酸化物等の誘電率の高い材料で電極を造る場合、放電効率が高いため、電極の大きさを小さくできるため、熱膨脹が高いことによる熱応力の発生を、小さくできる構造体設計が可能である。
【0039】
また、板状のセラミック体3をテープ状のセラミック体から形成するときには、テープ状のセラミック体の厚さについては、特に限定されることはないが、0.1〜3mmであることが好ましい。テープ状のセラミック体の厚さが、0.1mm未満であると、隣接する一対の単位電極2間の電気絶縁性を確保することができないことがある。また、テープ状のセラミック体の厚さが3mmを超えると、排ガス浄化システムとして省スペース化の妨げになるとともに、電極間距離が長くなることによる負荷電圧の増大につながり効率が低下することがある。
【0040】
テープ状のセラミック体は、セラミック基板用のセラミックグリーンシートを好適に用いることができる。このセラミックグリーンシートは、グリーンシート製作用のスラリー又はペーストを、ドクターブレード法、カレンダー法、印刷法、リバースロールコータ法等の従来公知の手法に従って、所定の厚さとなるように成形して形成することができる。このようにして形成されたセラミックグリーンシートは、切断、切削、打ち抜き、連通孔の形成等の加工を施したり、複数枚のグリーンシートを積層した状態で熱圧着等によって一体的な積層物として用いてもよい。
【0041】
上述したグリーンシート製作用のスラリー又はペーストは、所定のセラミック粉末に適当なバインダ、焼結助剤、可塑剤、分散剤、有機溶媒等を配合して調製したものを好適に用いることができ、例えば、このセラミック粉末としては、アルミナ、ムライト、コージェライト、ジルコニア、シリカ、窒化珪素、窒化アルミニウム、セラミックガラス、ガラス等の粉末を好適例として挙げることができる。また、焼結助剤としては、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等を好適例として挙げることができる。なお、焼結助剤は、セラミック粉末100質量部に対して、3〜10質量部加えることが好ましい。可塑剤、分散剤及び有機溶媒については、従来公知の方法に用いられている可塑剤、分散剤及び有機溶媒を好適に用いることができる。
【0042】
また、板状のセラミック体3の気孔率は、0.1〜35%であることが好ましく、さらに0.1〜10%であることが好ましい。このように構成することによって、板状のセラミック体3を備えた単位電極2間に効率よくプラズマを発生させることが可能となり、省エネルギー化を実現することができる。
【0043】
図2に示す単位電極2を構成する板状のセラミック体3は、上述のようにテープ状のセラミック体の表面に導電膜4が配設され、さらにその上から、二枚のテープ状のセラミック体で導電膜4を挟持するようにテープ状のセラミック体を配設して形成されたものである。
【0044】
次に、本発明のプラズマ発生電極の他の実施の形態について説明する。図4(a)、図4(b)は、本発明のプラズマ発生電極の他の実施の形態を模式的に示したものであり、図4(a)は、一の方向に垂直な平面で切断した断面図であり、図4(b)は、図4(a)のB−B’断面図である。
【0045】
図4(a)、図4(b)に示すように、本実施の実施の形態のプラズマ発生電極31は、上述した図1(a)、図1(b)に示す本発明のプラズマ発生電極の一の実施の形態の場合と同様に、複数の単位電極32が所定間隔を隔てて階層的に積層されてなるとともに、単位電極32相互間に、一の方向Sの両端が開放されるとともに他の方向Tの両端が閉鎖された空間Xが形成されてなり、これらの単位電極32間に電圧を印加することによって空間Xにおいてプラズマを発生させることが可能なプラズマ発生電極31である。上述した図1(a)、図1(b)に示す本発明のプラズマ発生電極の一の実施の形態の場合と異なる点は、本実施の形態のプラズマ発生電極31を構成する欠落電極32bが、単位電極32を構成する導電膜34のみが一部欠落して形成されていることである。そのため、欠落単位電極32bの欠落部分は、導電膜34は存在しないが板状のセラミック体33が存在する。そして、欠落空間Xbは、通常単位電極32aと欠落単位電極32bの欠落部分(板状のセラミック体33が存在する部分)とに挟まれた空間、及び欠落単位電極32bの欠落部分相互間に挟まれた空間とから構成される。従って、欠落空間Xbは、上述した本発明のプラズマ発生電極の一の実施の形態の場合と異なり、通常空間Xaと同じ幅の空間となっている。一方、通常空間Xaにプラズマを発生させる単位電極32の導電膜34相互間の距離は、通常空間Xaを形成する単位電極32相互間の距離W3と略同じである(テープ状のセラミック体33の厚さ分だけ異なる)が、欠落空間Xbにプラズマを発生させる導電膜34相互間の距離は、欠落空間Xbを形成する欠落単位電極32bには導電膜34が存在していないため、その欠落単位電極32bを挟んでそれぞれ対向する通常単位電極32a相互間の距離W4と略同じとなる。このように、本実施の形態においては、通常空間Xaの幅と欠落空間Xbとの幅は同じであるが、それぞれの空間にプラズマを発生させる導電膜34間の距離が異なるため、欠落空間Xbに発生するプラズマと通常空間Xaに発生するプラズマの大きさが異なるものとなる。
【0046】
本実施の形態のプラズマ発生電極の上記以外の構成は、上述した本発明のプラズマ発生電極の一の実施の形態の場合と同様とすることができる。
【0047】
また、図5に示すように、上述の本発明のプラズマ発生電極の他の実施の形態において、単位電極32を構成する導電膜34が、電圧が印加されたときに、それぞれ異なった電位となる複数の導電膜群から構成され、所定の電位となる導電膜群(第一の導電膜群)11のそれぞれが、空間Xの他の方向T(図4(a)参照)の端部(第一側端部)14(図4(a)参照)まで延設され、第一の導電膜群11の場合とは異なる電位となる導電膜群(第二の導電膜群)12のそれぞれが、空間Xの他の方向T(図4(a)参照)の端部(第二側端部)15(図4(a)参照)まで延設されていることが好ましい。ここで、図5は、図4に示す本発明のプラズマ発生電極の他の実施の形態に側端部導電膜を配設したものを第一側端部側からみた側面図である。そして、第一の導電膜群11が延設された端部(第一側端部)14側の面及び第二の導電膜群が延設された端部側の面のそれぞれに導電膜(第一の側端部導電膜18及び第二の側端部導電膜19)が配設され、第一の導電膜群11と第一の側端部導電膜18とが接触して電気的な導通が可能とされてなるとともに、第二の導電膜群12と第二の側端部導電膜19とが接触して電気的な導通が可能とされることが好ましい。また、本実施の形態においては、第一の導電膜群11を含む複数の単位電極32のなかの一部が通常単位電極32a(図4(b)参照)であり、その通常単位電極32a(図4(b)参照)の導電膜34(図4(b)参照)が中間部分で途切れて、第一の導電膜群11とは電気的に導通しない第三の導電膜群13を形成している。そして、第三の導電膜群13と接触して電気的な導通を可能とする第三の側端部導電膜20が第一側端部14側の面に形成されている。また、第一の導電膜群11と第二の導電膜群12のそれぞれが、空間Xの他の方向T(図4(a)参照)の同一側の端部に延設されていてもよい。そして、同じ側の端部で、第一の導電膜群11と第二の導電膜群12のそれぞれが、第一の側端部導電膜18及び第二の側端部導電膜19により電気的に接続されてもよい。
【0048】
上述の側端部導電膜は、図1(a)、図1(b)に示す、本発明のプラズマ発生電極の一の実施の形態においても、導電膜4を集電するときに同様に使用することができる。
【0049】
以下、本発明のプラズマ発生電極の一の実施の形態の製造方法について具体的に説明する。
【0050】
まず、上述したセラミック体となるセラミックグリーンシートを成形する。例えば、アルミナ、ムライト、コージェライト、ムライト、窒化珪素、窒化アルミニウム、セラミックガラス、及びガラス群から選ばれる少なくとも一種の材料に、上述した焼結助剤や、ブチラール系樹脂やセルロース系樹脂等のバインダ、DOPやDBP等の可塑剤、トルエンやブタジエン等の有機溶媒等を加え、アルミナ製ポット及びアルミナ玉石を用いて十分に混合してグリーンシート製作用のスラリーを作製する。また、これらの材料を、モノボールによりボールミル混合して作製してもよい。
【0051】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリーを、減圧下で撹拌して脱泡し、さらに所定の粘度となるように調整する。このように調整したグリーンシート製作用のスラリーをドクターブレード法等のテープ成形法によってテープ状に成形して未焼成セラミック体を形成する。
【0052】
一方、得られた未焼成セラミック体の一方の表面に配設する導電膜を形成するための導体ペーストを形成する。この導体ペーストは、例えば、銀粉末にバインダ及びテルピネオール等の溶剤を加え、トリロールミルを用いて十分に混錬して形成することができる。
【0053】
このようにして形成した導体ペーストを、未焼成セラミック体の表面にスクリーン印刷等を用いて印刷して、所定の形状の導電膜を形成し、導電膜配設未焼成セラミック体を作製する。このとき、導電膜をセラミック体で挟持して単位電極を形成した後に、単位電極の外部から導電膜に電気を供給することができるように、導電膜が未焼成セラミック体の外周部にまで延設するように印刷することが好ましい。
【0054】
未焼成セラミック体の大きさとしては、通常単位電極に相当する長いものと、欠落単位電極に相当する短いものを形成する。そして、通常単位電極のなかで、電気的に導通しない複数種の導電膜を形成する場合には、導電ペーストを印刷するときに、所定の形状に印刷すればよい。
【0055】
次に、導電膜を印刷した未焼成セラミック体と、他の未焼成セラミック体とを、印刷した導電膜を覆うようにして積層する。未焼成セラミック体を積層する際には、温度100℃、圧力10MPaで押圧しながら積層することが好ましい。次に、導電膜を挟持した状態で積層した未焼成セラミック体を焼成して、誘電体となる板状のセラミック体と、導電膜とを有してなる単位電極を形成する。
【0056】
次に、形成された複数の単位電極を積層する。このとき、各単位電極間に所定の間隔を開けるために、上記セラミック体と同様の原料により四角柱状のセラミック棒を形成し、各単位電極の間に挟むようにする。このときの、セラミック棒の厚さが各単位電極間の距離となる。セラミック棒を各単位電極の間に挟むときには、それぞれが略平行になるようにし、排ガス等を処理するときのガスの流路を確保する。セラミック棒は四角柱状である必要はなく、円柱状、多角柱状、その他の柱状であってもよい。また、上記セラミック体の一の面に複数の突条を形成し、この突条を挟んで単位電極を挟むことにより空間を形成してもよい。さらに、セラミック体に凹凸を形成し、それを重ね合わせることにより空間を形成してもよい。このように、複数の単位電極を、上記セラミック棒を介して階層的に積層することにより、本実施の形態のプラズマ発生電極を得ることができる。
【0057】
本実施の形態のプラズマ発生電極は以下に示す他の方法により製造してもよい。まず、図6に示す、板状のセラミック体42に複数本の突条43を略平行に配設した、突条配設セラミック体41を押出成形により形成し、端面部分に端面導電膜47を配設する。そして、図7に示す、導電膜配設セラミック体46を構成する板状のセラミック体44を押出成形により形成する。突条配設セラミック体41及び板状のセラミック体44の原料等の条件は、上述の本実施の形態のプラズマ発生電極の製造方法の場合と同様にすることが好ましい。
【0058】
次に、図7示すように、導電膜45を板状のセラミック体44に配設する。導電膜45の材質、導電膜45をセラミック体44に配設する方法等の条件は、上述の本実施の形態のプラズマ発生電極の製造方法の場合と同様にすることが好ましい。
【0059】
次に、突条配設セラミック体41の突条43が配設されていない側の面に、導電膜配設セラミック体46を、導電膜45が配設されている側の面を当接させるようにして配設させて積層体とする。そして、このような積層体を所定の段数積層することにより焼成前のプラズマ発生電極とし、これを焼成することにより、本実施の形態のプラズマ発生電極とすることができる。
【0060】
次に、本発明のプラズマ反応器の一の実施の形態について説明する。図8は、本発明のプラズマ反応器の一の実施の形態を模式的に示す断面図である。図8に示すように、本実施の形態のプラズマ反応器21は、図4に示したような本発明のプラズマ発生電極の他の実施の形態(プラズマ発生電極31)を備えてなるものである。具体的には、本実施の形態のプラズマ反応器21は、プラズマ発生電極31と、プラズマ発生電極31を、それを構成する複数の単位電極32間に立体的に配列された空間X内に所定の成分を含有するガス(被処理流体)が導入され得る状態で収納したケース体22とを備えている。このケース体22は、被処理流体が流入する流入口23と、流入した被処理流体が単位電極32間を通過して処理された処理流体を流出する流出口24とを有している。このように構成された本実施の形態のプラズマ反応器21は、空間X内に所定の成分を含有するガスが導入されたときに、空間X内に発生させたプラズマによりガス中の所定の成分を反応させることができる。
【0061】
本実施の形態のプラズマ反応器21は、図4に示したプラズマ発生電極31を備えてなることから、被処理流体が流入口23から流入し、通常空間Xaを通るときには間隔の狭い導電膜34により発生するプラズマにより、粒状物等の反応にエネルギーの大きなプラズマを必要とする物質が分解される。そして、欠落空間Xbを通るときには間隔の広い導電膜34により発生するプラズマにより、NO等のエネルギーの小さなプラズマで反応する物質が分解される。このように、本実施の形態のプラズマ反応器によると、被処理流体をプラズマが発生する空間に流したときに、一度流すだけで、被処理流体に含有される複数の所定の成分を、それぞれの反応に適した複数の異なる大きさのプラズマにより、効率的に処理することができる。
【0062】
本実施の形態のプラズマ反応器21において、プラズマ発生電極31を配設するときには、破損を防止するため、ケース体22とプラズマ発生電極31との間に絶縁性で耐熱性の緩衝剤を介在させることが好ましい。
【0063】
本実施の形態に用いられるケース体22の材料としては、特に制限はないが、例えば、優れた導電性を有するとともに、軽量かつ安価であり、熱膨張による変形の少ないフェライト系ステンレス等であることが好ましい。
【0064】
このように構成されたプラズマ反応器21は、例えば、自動車の排気系中に設置して用いることができ、排気ガスを単位電極32間に形成される空間X内に発生させたプラズマの中を通過させて、排気ガスに含まれる上記所定の成分である煤や窒素酸化物等の有害物質を反応させて無害な気体として外部に排出することができる。
【0065】
また、図示は省略するが、本実施の形態のプラズマ反応器においては、プラズマ発生電極に電圧を印加するための電源をさらに備えていもよい。この電源については、プラズマを有効に発生させることができるような電気を供給することができるものであれば従来公知の電源を用いることができる。
【0066】
また、本実施の形態のプラズマ反応器においては、上述したように電源を備えた構成とせずに、外部の電源から電流を供給するような構成としてもよい。
【0067】
本実施の形態に用いられるプラズマ発生電極に供給する電流については、発生させるプラズマの強度によって適宜選択して決定することができる。例えば、プラズマ反応器を自動車の排気系中に設置する場合には、プラズマ発生電極に供給する電流が、電圧が1kV以上の直流電流、ピーク電圧が1kV以上かつ1秒あたりのパルス数が100以上(100Hz以上)であるパルス電流、ピーク電圧が1kV以上かつ周波数が100以上(100Hz以上)である交流電流、又はこれらのいずれか二つを重畳してなる電流であることが好ましい。このように構成することによって、効率よくプラズマを発生させることができる。
【0068】
次に、本発明の排気ガス浄化装置の一の実施の形態について具体的に説明する。図9は、本実施の形態の排気ガス浄化装置を模式的に示す説明図である。図9に示すように、本実施の形態の排気ガス浄化装置51は、上述した本発明の実施の形態であるプラズマ反応器21と、触媒54とを備え、このプラズマ反応器21と触媒54とが、内燃機関の排気系の内部に配設された排気ガス浄化装置51である。なお、プラズマ反応器21は、排気系の排気ガス発生側(上流側)に配設され、触媒54は、その排気側(下流側)に配設されており、プラズマ反応器21と触媒54とは配管52を介して接続されている。
【0069】
本実施の形態の排気ガス浄化装置51は、例えば、酸素過剰雰囲気下における排気ガス中のNOを浄化する装置である。即ち、プラズマ反応器21で発生したプラズマによって、NOを下流側の触媒54で浄化しやすいように改質、又はNOと反応しやすいように排気ガス中のHC(ハイドロカーボン)等を改質して、触媒54によってNOを浄化する。
【0070】
本実施の形態の排気ガス浄化装置51に用いられるプラズマ反応器21は、プラズマにより、リーンバーン、ガソリン直噴エンジン又はディーゼルエンジン等の酸素過剰雰囲気下での燃焼による排気ガス中のNOをNOに変換するものである。また、プラズマ反応器21は、排気ガス中のHC等から活性種を生成するものであり、図8に示したプラズマ反応器21と同様に構成されたものを好適に用いることができる。
【0071】
触媒54は、その内部に排気ガスが流通する複数の細孔が形成された支持体を含む触媒部材を備えた触媒ユニット55として、排気系におけるプラズマ反応器21の下流側に配設されている。触媒部材は、支持体と、支持体の複数の細孔を取り囲む内壁面を覆うように形成された触媒層を有している。
【0072】
触媒層は、一般に、後記するように支持体をスラリー状の触媒(触媒スラリー)に含浸して製造されるため、「ウォッシュコート(層)」と呼ばれることもある。
【0073】
支持体の形状は、排気ガスが流通する空間を有していれば本発明では特に制限されず、本実施の形態では、複数の細孔が形成されたハニカム状のものを使用している。
【0074】
支持体は、耐熱性を有する材料から形成されることが好ましい。このような材料としては、例えば、コージェライト、ムライト、シリコンカーバイド(SiC)、シリコンナイトライド(Si)等の多孔質(セラミック)や、メタル(例えば、ステンレス)等が挙げられる。
【0075】
触媒層は、多孔質担体と、多孔質担体の表面に担持したPt、Pd、Rh、Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Ir、Ga等から選択される一種又は二種以上の組合せを主要部として形成されている。触媒層の内部には支持体の細孔に連続する複数の連続細孔が形成されている。
【0076】
多孔質担体は、例えば、アルミナ、ゼオライト、シリカ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナ、セリア等から適宜選択して使用し、形成することができる。なお、触媒54は、NOの分解反応を促進する触媒を用いる。
【0077】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0078】
図1に示すような構成のプラズマ発生電極1を製造し、これをプラズマ反応器として用いて排気ガスの処理を行い、処理後のガスに含まれる煤、一酸化窒素(NO)、及び炭化水素(HC)の量と、アルデヒドの有無を測定した。
【0079】
本実施例のプラズマ反応器に用いられるプラズマ発生電極は、以下のようにして作製した。まず、二枚積層して焼成後の厚さが0.5mmとなる未焼成のアルミナテープ基板の内側に、タングステンペーストを用いて、直径5mm、隣接相互の間隔が6mmとなるような配列パターンで貫通孔が形成された導電膜を、その厚さが10μmとなるようにスクリーン印刷した。この際、100×100mmの基板には、ガス入口側(通常空間Va(図1(b)参照))に80×40mmの導電膜とガス出口側(欠落空間Vb(図1(b)参照))に80×40mmの二つの導電膜を持つ電極Aと、同じ100×100mm基板に80×90mmの導電膜を持つ電極B、100×50mmの基板に80×40mmの導電膜を持ち互いに異なる端面側に端子を持つ電極C、Dの四種類の電極を、電極間隔0.5mmで、A、C、D、B、C、Dの順で積み重ねた一体型電極ユニットを作製した。6段一体型電極ユニット2個を金属枠で固定し、耐熱マットで外周を保持した後、SUS430で作製した円筒容器に納めた。また、電気的接続は、電極A入口側、電極D及び電極A出口側はパルス電源に、電極B、Cは接地側に各々接続した。電極A入口側(入り口側電極)と電極C、電極Dと電極Bは各々電極間距離が0.5mmであるが、電極A出口側(出口側電極)と電極Bは電極間距離が2.5mmとなっている。
【0080】
このプラズマ反応器に、エンジンから排出される排気ガス状熊を模擬した排気ガスを通気した。この排気ガスとしては、酸素10体積%、CO10体積%、プロピレン200ppmC、NOガス200ppm、残りが窒素となるように混合された混合ガスに、煤を1000mg/hrで混合したものを用いた。プラズマを通過したガスに含まれる各成分の濃度(PM量)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0081】

【実施例2】
【0082】
実施例1のプラズマ反応器と同様に構成されたプラズマ反応器に、入口側電極と、出口側電極で加える電圧を4kVと6kVに分配してパルス電流を通電して同様の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【実施例3】
【0083】
実施例1のプラズマ反応器と同様に構成されたプラズマ反応器で、入口側電極と出口側電極を別々のパルス電源に接続し、異なる周波数及び異なる電圧を負荷して、同様の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0084】
(比較例1)
電極ユニットを構成する平板電極が、電極間距離が0.5mmの入口側の電極部分だけで構成された以外は、実施例1のプラズマ反応器と同様に構成されたプラズマ反応器に、パルス数が100回/秒となるように4kVのパルス電流を通電して同様の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0085】
(比較例2)
電極ユニットを構成する平板電極が、電極間距離が2.5mmの出口側の電極部分だけで構成された以外は、実施例1のプラズマ反応器と同様に構成されたプラズマ反応器に、パルス数が1000回/秒となるように6kVのパルス電流を通電して同様の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【実施例4】
【0086】
実施例3のプラズマ反応器の下流側に触媒を配置して排気ガス浄化装置を製造し、そのNO浄化性能を評価した。触媒は、市販のγ−AlにPtを5質量%含浸した触媒粉末をコージェライト製セラミックスハニカムに担持したものである。ハニカム触媒のサイズは、直径105.7mm、長さ114.3mmの筒状で、400セル、セルを区画する隔壁の厚さ(リブ厚)が4ミル(約0.1mm)である。プラズマの発生条件及びガス条件は、実施例3と同じである。
【0087】
その結果、200ppmのNOがプラズマ反応器及び触媒を通過した後にはNOとして120ppmまで低減していた。
【0088】
(比較例3)
比較例1のプラズマ反応器の下流側に実施例4に用いた触媒と同様の触媒を配置して排気ガス浄化装置を製造し、そのNO浄化性能を評価した。プラズマ発生条件及びガス条件は、比較例1と同じである。
【0089】
その結果、200ppmのNOがプラズマ反応器及び触媒を通過した後にはNOとして170ppmまでしか低減していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明のプラズマ発生電極によれば、単位電極が、通常単位電極と欠落単位電極とから構成され、それにより導電膜間の距離がそれぞれ異なる通常空間と欠落空間とが形成されることにより、通常空間と欠落空間のそれぞれに発生するプラズマの大きさを異ならせることができる。そして、本発明のプラズマ反応器によれば、このようなプラズマ発生電極を有するものとしたため、反応器内に、所定の成分を含有するガスが導入されたときに、その所定成分のなかで、通常空間内で発生するプラズマにより反応される成分の種類と、欠落空間内で発生するプラズマにより反応される成分の種類とを異ならせることが可能となり、それぞれの成分を最適な大きさのプラズマにより効率的に反応させることができる。また、本発明の排気ガス浄化装置は、このようなプラズマ反応器と触媒とを備えていることから、例えば、自動車等の内燃機関から排出される排気ガスを良好に浄化することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位電極が所定間隔を隔てて階層的に積層されてなるとともに、前記単位電極相互間に、一の方向の両端が開放されるとともに他の方向の両端が閉鎖された空間が形成されてなり、これらの単位電極間に電圧を印加することによって前記空間においてプラズマを発生させることが可能なプラズマ発生電極であって、
前記単位電極が、誘電体となる板状のセラミック体と、前記セラミック体の内部に配設された導電膜から形成されるとともに、前記一の方向における一の端部から他の端部に至るまでの間に前記導電膜を欠落した部分を有する欠落単位電極と、欠落した部分を有しない通常単位電極とから構成されてなり、かつ
前記空間が、それぞれ対向する前記通常単位電極と前記欠落単位電極との間又は前記欠落単位電極相互間に、前記導電膜間の距離が前記単位電極相互間の距離となるように形成された複数の通常空間と、前記欠落単位電極の欠落部分を挟んでそれぞれ対向することになる前記通常単位電極相互間に、前記導電膜間の距離が前記通常空間における導電膜間の距離よりも長くなるように形成された複数の欠落空間とから構成されてなり、
前記通常空間と前記欠落空間とにおける、プラズマを発生させる前記単位電極を構成する前記導電膜間の距離が異なることにより、前記通常空間と前記欠落空間とにおいて発生するプラズマの大きさが異なるプラズマ発生電極。
【請求項2】
前記欠落単位電極が、前記単位電極を構成する前記導電膜の一部のみが欠落して形成されてなる請求項1に記載のプラズマ発生電極。
【請求項3】
前記欠落単位電極が、前記単位電極を構成する前記セラミック体及び前記導電膜のそれぞれの一部が欠落して形成されてなる請求項1に記載のプラズマ発生電極。
【請求項4】
前記単位電極を構成する前記導電膜が、電圧が印加されたときに、それぞれ異なった電位となる複数の導電膜群から構成され、所定の電位となる前記導電膜群(第一の導電膜群)のそれぞれが、前記空間の前記他の方向の端部まで延設され、前記第一の導電膜群の場合とは異なる電位となる前記導電膜群(第二の導電膜群)のそれぞれが、前記空間の前記他の方向の端部まで延設され、
前記第一の導電膜群が延設された端部側の面及び前記第二の導電膜群が延設された端部側の面のそれぞれに導電膜(第一の側端部導電膜及び第二の側端部導電膜)が配設され、
前記第一の導電膜群と前記第一の側端部導電膜とが接触して電気的な導通が可能とされてなるとともに、前記第二の導電膜群と前記第二の側端部導電膜とが接触して電気的な導通が可能とされてなる請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ発生電極。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ発生電極を備えてなり、前記プラズマ発生電極を構成する複数の前記単位電極相互間に形成された前記空間内に所定の成分を含有するガスが導入されたときに、前記空間内に発生させたプラズマにより前記ガス中の前記所定の成分を反応させることが可能なプラズマ反応器。
【請求項6】
前記空間内に前記所定の成分を含有するガスが導入されたときに、前記所定成分のなかで、前記通常空間内で発生するプラズマにより反応される成分の種類と、前記欠落空間内で発生するプラズマにより反応される成分の種類とが異なる請求項5に記載のプラズマ反応器。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のプラズマ反応器と、触媒とを備え、前記プラズマ反応器と前記触媒とが、内燃機関の排気系の内部に配設された排気ガス浄化装置。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【国際公開番号】WO2005/001249
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511056(P2005−511056)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009013
【国際出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】