説明

プラズマ電極

【課題】流体とプラズマの接触性とエネルギー消費の低減とを両立させることが困難であり、プラズマ生成の機械的構成も微細部材の複合化が必要であり、民生用用途向けなどでのプラズマ応用の大きな制約となっている。
【解決手段】金属板の対向する板面の少なくとも一方の表面は誘電体膜が形成されて、誘電体膜の表面は、5μm以上50μm以下の範囲の高低差と任意の平面パターン形状とをもった凹凸が形成された対向金属板の板面が相互に固設されて、両金属板間にマイクロプラズマ放電を生起させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
【0002】
本発明は、室内空気清浄、オゾン生成、除菌・殺菌、排ガス浄化、水浄化、水中の殺菌のためのプラズマ放電を生起せしめる電極の構成に関する。
【技術背景】
【0003】
産業分野から民生分野まで、さまざま適用分野が期待されるプラズマを生起させるための放電電極は、それぞれの用途に適応したものの研究開発が各方面で進められている。
【0004】
とりわけ、プラズマにより大気中の酸素からオゾンを生成せしめ、もって空気浄化を図ろうとする利用分野では、民生用需要に適応させるべくさまざまな放電電極が開発されてきている(特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭63−190702号公報
【特許文献2】特開2005−21319号公報
【0005】
しかし、従来技術では、空気などの流体をプラズマと接触させ処理するために十分な流通性を確保するがゆえに、放電電極間のギャップが数mm程度となり、そのためにプラズマを生起せしめるための印加電圧を数kV以上とすることが必要となり、消費電力の大きなものとなっている。
【0006】
また電極間のギャップをμmオーダーとし無声放電又は沿面放電を生起せしめ、低電圧で効率的なプラズマ生成を実現する技術(マイクロプラズマ技術)も開発が進められているが、反面そのプラズマ放電範囲が狭小化するために、空気などの流体を流通させるときに非常に大きな圧力差損が生じ、そのための特段の圧入手段等が必要とされている。また、電極がセラミック基材中に埋め込まれている為、長時間運転では熱を持ち、オゾン生成効率が低下する、表面電極に有害ガスなどによる塩基生成により放電持続が出来なくなるなどの問題点があり課題とされてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術では、流体とプラズマの接触性とエネルギー消費の低減とを両立させることが困難であり、また、マイクロプラズマ技術ではプラズマ生成の機械的構成も微細部材の複合化が必要となっているため、民生用用途向けなどでのプラズマ応用の大きな制約となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、前記従来発明の課題に鑑みて、μmオーダーでの電極間のギャップにより消費電力を低減するとともに、流体流通性を向上させることができ、かつ機械的構成も簡使かつ耐久性のあるプラズマ電極を発明するに至った。長時間運転でも影響を及ぼさないような冷却構造を持ち、電極表面が汚染されることによる放電持続低下を抑制したマイクロプラズマ・フィルタによる長時間運転を可能とする室内空気清浄化を提供することを目的とする。
本願請求項1の発明は板面に対して垂直方向に流体を流通させるための1つ以上の流通口が形成された一対の金属板からなるプラズマ電極であって、金属板の対向する板面の少なくとも一方の表面は誘電体膜が形成されて、誘電体膜の表面は、5μm以上50μm以下の範囲の高低差と任意の平面パターン形状とをもった凹凸が形成されて、対向する金属板の板面は、相互に面着固設されて、両金属板間に電圧が印加されてプラズマ放電を生起させることを特徴とするプラズマ電極である。
【0009】
本願請求項2の発明は、誘電体膜が形成されたプラズマ電極は、予め金属板表面に形成された誘電体膜の表面に、化学的或いは機械的な除去手段により、5μm以上50μm以下の範囲の高低差と任意の平面パターン形状とをもった凹凸を成形したものであることを特徴とする上記請求項1に記載のプラズマ電極である。
【0010】
本願請求項3の発明は、誘電体膜が形成されたプラズマ電極は、予め金属板表面に、化学的或いは機械的な除去手段により、55μm以上550μm以下の範囲の高低差と任意の平面パターン形状とをもった凹凸を成形し、そののち金属板表面に誘電体膜を形成したものであることを特徴とする上記請求項1又は請求項2に記載のプラズマ電極である。
【0011】
本願請求項4の発明は、誘電体膜は、チタン酸バリウム及びアルミナを主成分とする材料からなることを特徴とする上記請求項1から3のいずれかに記載のプラズマ電極である。
【0012】
本願請求項5の発明は、金属板表面に形成される誘電体膜の膜厚は、50μm以上500μm以下であることを特徴とする上記請求項1から4のいずれかに記載のプラズマ電極である。
【0013】
本願請求頂6の発明は、誘電体膜表面には、さらに四フッ化エチレン樹脂又はシリコーン樹脂による樹脂皮膜が形成されていることを特徴とする上記請求項1から5のいずれかに記載のプラズマ電極である。
【0014】
本願請求項7の発明は、流体を流通させるための流通ロは、誘電体膜が形成されたプラズマ電極表面上での横方向又は縦方向の口径が100μm以上10mm以下、望ましくは200μm以上400μm以下であることを特徴とする上記請求頂1から6のいずれかに記載のプラズマ電極である。
【0015】
本願請求頂8の発明は、誘電体膜が形成されたプラズマ電極面での流通口の開口部面積割合が電極面外周面積の2%以上60%以下、望ましくは20%以上40%以下となるように1つ以上の流通口が形成されていることを特徴とする上記請求項1から7のいずれかに記載のプラズマ電極である。
【0016】
本願請求項9の発明は、対向する板面の裏面も更に誘電体膜又は樹脂皮膜が形成されていることを特徴とする上記請求項1から8のいずれかに記載のプラズマ電極である。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本願発明のプラズマ電極は、消費電力を低減して効率的にプラズマを生起せしめるとともに、流体とプラズマの接触流通性を向上させることができるため、民生用用途などでのプラズマ利用を容易化することができる。また、請求項1から請求項9のプラズマ電極は対を為して配置されるが、複数個のプラズマ電極を流体が流通ロを通過するように配置して全体で一つのプラズマ電極として構成することで、室内空気清浄化の効率向上や、オゾン発生濃度の向上を図ることが出来る。さらにこのような用途では、複数個のプラズマ電極の奇数番目同士と偶数番目同士が各々電気的に接続されて電力が供給される構成により各電極が密接して対向する構成も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本願発明の実施の形態を説明する。
図1は、本願発明のプラズマ電極の断面図及び平面図を模式的に示したものである。開口部の形状は円形、三角形、方形、多角形など任意の形状が可能であり、その他の星型などデザイン性の形状も用いることができる。
【0019】
図1のごとく、一対の金属板の対向してなるプラズマ電極は、少なくとも一方の表面に誘電体膜が形成され、当該誘電体膜の表面には5μm以上50μm以下の高低差と任意の平面パターン形状とをもった凹凸が形成されて、対向する金属板の複面は、相互に面着固設されている。
【0020】
また、図2のごとく、プラズマ電極には誘電体膜に任意のパターンで凹凸が形成されている。
【0021】
図3のごとく任意の高低差が低い場合には低電圧でオゾン生成が行われることが認められる。
【0022】
図4のごとく誘電体コーティング膜厚は最適値が認められる。本実施例の場合は400μmである。
【0023】
図5のごとく沿面放電と比べて、相対湿度が高い場合でも高いオゾン濃度が得られることが認められる。
【0024】
図6のごとくホルムアルデヒドを低消費電力で除去することが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】プラズマ電極を模式的に示した図
【図2】誘電体膜により任意の高低差を表面上に作成した写真
【図3】電極間距離を変化させてオゾン生成濃度と放電電圧との関係を示す特性図
【図4】誘電体膜厚によるオゾン生成濃度と放電電圧との関係を示す図
【図5】相対湿度と生成オゾン濃度との関係を示す図
【図6】ホルムアルデヒドの除去特性を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の流通口が形成された金属板が相対してして配置されたプラズマ電極であって、金属板の対向する板面の少なくとも一方の表面は誘電体膜が形成され、誘電体膜の表面は5μm以上で50μm以下の高低差と任意の平面パターン形状とをもった凹凸が形成され、対向する金属板の板面は、相互に面着固設されるか、あるいは、5μm以上で100μm以下の間隔を保持すべく固設されて、両金属板間にプラズマ放電を生起させる電力が印加される構造を特徴とするプラズマ電極。
【請求項2】
誘電体膜が形成されたプラズマ電極は、予め金属板表面に形成された誘電体膜の表面に、化学的或いは機械的な除去手段により、5μm以上50μm以下の範囲の高低差と任意の平面パターン形状とをもった凹凸を成形したものであることを特徴とする上記請求項1に記載のプラズマ電極。
【請求項3】
誘電体膜が形成されたプラズマ電極は、予め金属板表面に、化学的或いは機械的な除去手段により、55μm以上550μm以下の範囲の高低差と任意の平面パターン形状とをもった凹凸を成形し、該金属板表面に誘電体膜を形成したものであることを特徴とする上記請求項1又は請求項2に記載のプラズマ電極。
【請求項4】
誘電体膜は、チタン酸バリウム及びアルミナを主成分とする材料からなることを特徴とする上記請求項1から3のいずれかに記載のプラズマ電極。
【請求項5】
金属板表面に形成される誘電体膜の膜厚は、50μm以上500μm以下であることを特徴とする上記請求項1から4のいずれかに記載のプラズマ電極。
【請求項6】
誘電体膜表面には、さらに四フッ化エチレン樹脂又はシリコーン樹脂による樹脂皮膜が形成されていることを特徴とする上記請求項1から5のいずれかに記載のプラズマ電極。
【請求項7】
流体を流通させるための流通ロは、誘電体膜が形成されたプラズマ電極表面上での横方向又は縦方向の口径が100μm以上10mm以下、望ましくは200μm以上400μm以下であることを特徴とする上記請求頂1から6のいずれかに記載のプラズマ電極。
【請求項8】
誘電体膜が形成されたプラズマ電極面での流通口の開口部面積割合が電極面外周面積の2%以上60%以下、望ましくは20%以上40%以下となるように1つ以上の流通口が形成されていることを特徴とする上記請求項1から7のいずれかに記載のプラズマ電極。
【請求項9】
対向する板面の裏面も更に誘電体膜又は樹脂皮膜が形成されていることを特徴とする上記請求項1から8のいずれかに記載のプラズマ電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−250284(P2007−250284A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70045(P2006−70045)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】