説明

プラント設備

【課題】各ロータの軸受や減速機に給油する潤滑油供給設備を省略することができるプラント設備を提供する。
【解決手段】作動流体の膨張仕事により駆動する原動機であるガスタービンのガスタービンロータ2と、このガスタービンロータ2からの回転動力により回転する負荷機器である発電機3の発電機ロータ4と、ガスタービンロータ3及び発電機ロータ4をそれぞれ支持する複数の磁気軸受5a〜5fと、ガスタービンロータ2と発電機ロータ4とを磁気的に接続し、供給電力に応じてガスタービンロータ2と発電機ロータ4との減速比を調整する電磁継手6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発電機やポンプ、ガス圧縮機といった負荷機器をタービンやエンジン等といった駆動ロータを有する原動機で駆動するプラント設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電設備では、一般にガスタービンや蒸気タービン等に備えられた駆動ロータであるタービンロータの回転動力が発電機ロータに伝達され発電される。この種のものとして、所定のギア比の減速機を介してガスタービンのタービンロータを発電機ロータに接続したものが知られている(特許文献1等参照)。通常、こうしたタービン発電設備では、回転体であるタービンロータや発電機ロータ等は多数のすべり軸受により支持され、減速機とともにそれらすべり軸受等にも潤滑油を供給する必要がある。そのため、潤滑油を貯留する潤滑油タンク、潤滑油タンクと各すべり軸受とを接続する配管、その他の補機等からなる潤滑油供給設備が配置される。
【0003】
【特許文献1】特開2003−106171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では潤滑油供給設備が必要なために全体の設備設置面積を広く確保せねばならず、また設備のコストも増大する。加えて、潤滑油供給設備の設置や配管の引き回しの作業があるために設備設置の工期も長期化する。また、すべり軸受や減速機の歯面の摩擦摺動部を潤滑し摩擦損失を低減するために潤滑油が供給されるが、摺動部と潤滑油膜との間にも少なからず摩擦損失が発生する。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、各ロータの軸受や減速機に給油する潤滑油供給設備を省略することができるプラント設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ロータの軸受を全て磁気軸受とし、電磁継手を介してロータ同士を接続する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各ロータの軸受や減速機に給油する潤滑油供給設備を省略することができる。よって、潤滑油供給設備に関わるコスト、設置スペース、据え付け工期、潤滑油供給系統のメンテナンス作業等を省略することができ、さらに給油される軸受や減速機における摩擦損失の低減、潤滑油供給系統のトラブルによる稼働率低下の防止という様々な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。
なお、本発明の各実施形態ではガスタービンを用いた発電設備を例に挙げて説明するが、蒸気タービンやディーゼルエンジン等を原動機として用い、それらの駆動ロータを発電機ロータに接続して発電する発電設備にも本発明の技術思想は適用可能である。また、原動機で発電機を駆動する場合に限らず、原動機が駆動する負荷機器としてポンプやガス圧縮機等を用いる場合にも適用可能である。また、ガスタービン自体も、各実施形態ではタービンロータが分割されていない一軸式のガスタービンを用いた場合を説明するが、圧縮機駆動用の高圧タービンロータと負荷機器駆動用の低圧タービンロータを有するいわゆる二軸式ガスタービンを用いた場合にも本発明は適用可能である。
【0009】
図1は本発明の第1実施形態に係るプラント設備の全体構成を示す概略図である。
本実施形態のプラント設備は、作動流体の膨張仕事により回転する原動機であるガスタービン1に設けられたガスタービンロータ(駆動ロータ)2と、このガスタービンロータ2からの回転動力により回転する負荷機器である発電機3の発電機ロータ(負荷機器ロータ)4と、ガスタービンロータ2及び発電機ロータ4をそれぞれ支持する複数の磁気軸受5a〜5fと、ガスタービンロータ2と発電機ロータ4とを磁気的に接続し、供給電力に応じてガスタービンロータ2と発電機ロータ4との減速比を調整する電磁継手(例えば渦電流継手)6とを備えている。
【0010】
ガスタービン1は、圧縮機7とタービン8と燃焼器(図示せず)を備えており、圧縮機7からの圧縮空気を燃料器において燃料とともに燃焼し、その燃焼ガスをタービン8に導くことで燃焼ガスの膨張仕事によりタービン8で回転動力が得られるようになっている。ガスタービンロータ2は、圧縮機7の圧縮機ロータ9とタービン8の駆動ロータであるタービンロータ10とが同軸に連結された1軸式のものであり、一体となって回転する圧縮機ロータ9とタービンロータ10の回転軸11の両端が磁気軸受5a,5bにより回転可能に軸支されている。但し、軸受箇所は回転軸11の両端に限らず他の箇所で支持される場合もあり、また2箇所のみならず3箇所以上で軸受支持される場合もある。
【0011】
電磁継手6は、図示しない電磁コイル12が巻線された一方側の継手部材13と、この継手部材13に対向する他方側の継手部材14とを備えている。継手部材13,14のそれぞれの回転軸15,16は、磁気軸受5c,5dにより回転可能に支持されている。電磁継手6においても、軸受箇所は図示した態様に限らず他の箇所で支持される場合もあり、またさらに多数箇所で軸受支持される場合もある。
【0012】
一方側の継手部材13に巻線された電磁コイル12には図示しない電源が接続されており、電磁コイル12に電力供給(通電)されると磁界が生じる。この磁界の作用によって一方側の継手部材13と他方側の継手部材14とが非接触状態で磁気的に接続され、一方側の継手部材13の回転が他方側の継手部材14に伝達される。一方側の継手部材13の周囲に形成される磁界の強さは電磁コイル12への供給電力(通電量)に依存するものであり、継手部材13,14間の回転動力の伝達効率は電磁コイル12への通電量に伴って高くなる。
【0013】
一方側の継手部材13の回転軸15とガスタービンロータ2の回転軸11とはカップリング17を介して連結されて一体となって回転する。また、他方側の継手部材14の回転軸16と発電機ロータ4の回転軸18とはカップリング19を介して連結されて一体となって回転する。発電機ロータ4の回転軸18は、その両端が磁気軸受5e,5fにより回転可能に軸支されている。但し、発電機ロータ4においても、軸受箇所は回転軸18の両端に限らず他の箇所で支持される場合もあり、また2箇所のみならず3箇所以上で軸受支持される場合もある。
【0014】
このような構成とすることにより、ガスタービンロータ2の回転動力が電磁継手6を介して発電機ロータ4に伝達され、発電機3にて発電される。
【0015】
図2は磁気軸受5a〜5fの構成を表す図である。
なお、磁気軸受5a〜5fはそれぞれ同様の構成であり、図2に示す磁気軸受5は磁気軸受5a〜5fの共通の構成を表している。また、図2に示した回転軸20は図1中の回転軸11,15,16,18のいずれかに該当するものである。
【0016】
図2において、磁気軸受5は、回転軸20の周囲を取り囲むようにして配設された複数個(図2では4個)の電磁石22を備えている。各電磁石22には、電源23に接続された電磁コイル21が巻線されている。電磁コイル23に通電されると電磁石22の周囲に磁界が形成され、回転軸20と各電磁石22との間に磁気的な吸引力又は反発力が作用し、回転軸20が浮上して回転可能な状態で支持される。特に図示していないが、磁気軸受5は、回転軸20とのギャップを検出するギャップセンサを備えており、ギャップセンサの検出したギャップの変位量が制御装置に出力される。制御装置はギャップセンサの検出信号を基に、電源23による電磁コイル21への通電量を制御し磁気的な吸引力又は反発力を制御することにより、浮上時の回転軸20の回転中心位置を適正位置に調整する。
【0017】
ここで、本発明のプラント設備の比較例として従来のガスタービン発電設備の全体構成を示す概略図を図3に示す。但し、図3において図1と同様の部分に相当する部分には同符号を付し説明を省略する。
図3に示したガスタービン発電設備は、ガスタービン1と、発電機3と、これらガスタービン1及び発電機3を接続する減速機30とからなる。減速機30は、大きさ及び歯数の異なり互いに噛合する歯車31,32を備えている。歯車31の回転軸33は、カップリング17を介して圧縮機ロータ9及びタービンロータ10の回転軸11に連結しており、歯車32の回転軸34は、カップリング19を介して発電機ロータ4の回転軸18に連結している。各回転軸11,33,34,18はすべり軸受35a〜35hにより支持されている。
【0018】
このようなすべり軸受35a〜35hを用いた設備では、すべり軸受35a〜35hに対して潤滑油を供給するための潤滑油供給設備36が必要となる。この潤滑油供給設備36は、潤滑油を貯留する潤滑油のタンク37、潤滑油タンク37からの潤滑油を吐出するポンプ38、潤滑油を冷却する冷却器39、潤滑油から異物を除去するフィルタ40、すべり軸受35a〜35hに潤滑油を供給する給油配管41、すべり軸受35a〜35hから潤滑油を排出する排油配管42等からなる。
【0019】
このように、従来構造のガスタービン発電設備ではすべり軸受35a〜35hに潤滑油を供給しなければならないため、潤滑油供給設備36が必要となる。前述したように、潤滑油供給設備36を設置するためには、潤滑油タンク37、潤滑油ポンプ38、潤滑油冷却器39、潤滑油フィルタ40等といった多くの補機を必要とし、また給油配管41や排油配管42を複雑に引き回さなければならない。その結果、設備そのもののコストに加えて設備の設置に要する作業工数も増大する。また、すべり軸受35a〜35hでは、潤滑油を供給したとしても、回転軸と潤滑油膜との間に少なからず摩擦損失が発生し軸受損失が比較的大きくなるので、十分な発電効率が得られ難い。また、ギア式の減速機30にも、やはり歯車31,32の歯面に潤滑油を供給する必要がある。
【0020】
それに対し、本実施形態においては、先に説明したように、電磁継手6の継手部材13,14も含めたプラント設備の各ロータを全て磁気軸受で支持し、なおかつ電磁継手6への通電量によってガスタービンロータ2と発電機ロータ4との間の回転動力の伝達効率を調整する。したがって、軸受や減速機に潤滑油を供給する潤滑油供給設備を設ける必要性がなくなり、これにより設備コストや設備の設置に要する作業コストも大幅に低減することができる。また、潤滑油供給設備の不要化により、潤滑油の供給系統のトラブルによる稼働率低下を防止することもでき、さらに潤滑油供給系統のメンテナンス作業も不要となるといった利点も得られる。
【0021】
また、本実施形態では、回転体との間に摩擦損失がほとんど生じない磁気軸受を用いることによって軸受損失を極めて低く抑えることができ、発電効率を向上させることもできる。
【0022】
また、本実施形態においては、ガスタービンロータ2の回転数を変速させて発電機ロータ4に伝達する電磁継手6を備えている。ガスタービンロータ2と発電機ロータ4の回転数が同じであれば、ガスタービンロータ2と発電機ロータ4のそれぞれの回転軸11,18を直結すれば足りるが、一般的には発電機ロータ4よりもガスタービンロータ2の回転数の方が大きい。そのため、ガスタービンロータ2の回転数を減速させて発電機ロータ4に伝達する減速機が必要となる。
【0023】
図3に示したような従来のガスタービン発電設備では、複数の歯車を噛合させた歯車式の減速機が用いられてきた。しかし、歯車式の減速機では、使用する各歯車の歯数によって一意的に減速比が決まり、減速比を自由に変えることができない。また、減速機の他の例としては、歯車式減速機の他にも流体継手が挙げられる。流体継手は、例えばガスタービンの回転軸にポンプ羽根車を、発電機等の負荷機器の回転軸にタービン羽根車を結合させて対向させたものである。ポンプ羽根車及びタービン羽根車を収容したケーシング内には流体(油等)が導かれる。そして、ガスタービンの回転に伴ってポンプ羽根車が回転すると、回転エネルギーを付与された流体を介しタービン羽根車に回転動力が伝達されて負荷機器が駆動する。この流体継手ではケーシング内の流体の量で減速比を調整することができる。しかしながら、流体継手を採用したとしても多量の油を要するために、潤滑油供給設備が必要となる。加えて、流体継手では減速比が大きくなると動力の伝達効率が低下する傾向がある(図4参照)。
【0024】
それに対し、本実施形態においては、ガスタービン1の回転軸11の回転動力は電磁継手6を介して発電機3の回転軸18に伝達される。電磁継手6は、直流電流により磁界を発生する電磁コイル12を一方側の継手部材13に備え、他方側の継手部材14がその磁界に結合し両継手部材13,14の相対的な回転速度差によって生じる渦電流によってトルクを伝達する。したがって、電磁コイル12への通電量を調整し磁界の強さを制御することで減速比を自由に変更することができる。また、前述したように、潤滑油の供給が一切不要であるために潤滑油供給設備も不要である。
【0025】
しかしながら、こうした渦電流継手等といった非接触型の電磁継手は、流体継手と同様に減速比が大きくなるに従ってトルク伝達効率が低下する傾向がある。そのため、効率の観点からガスタービン発電設備等に代表される各種プラント設備に電磁継手が用いられることはなかった。
【0026】
そこで、本実施形態においては、回転体を支持する軸受を全ての磁気軸受とし軸受損失を飛躍的に減少させたことにより、減速比が大きい運転時のトルク伝達効率の低下分を補い、これにより効率の観点からも十分に実施に耐え得るプラント設備を実現することができる。
【0027】
さらには、発電機が短絡した場合、発電機からタービン側に過大なトルクが伝達される。従来のように歯車式の減速機を用いた場合、過大トルクが歯車の噛み合わせ部に作用し、過大な力の作用により歯車が損傷する恐れがあった。また、歯車式の減速機を用いた場合、発電機短絡時の過大トルクは機械的にタービンに伝達され、タービンにも大きな力が加わりタービンが損傷する恐れもあった。
【0028】
それに対しても、本実施形態では、発電機ロータ4とガスタービンロータ2との間を非接触型の電磁継手6で接続しているため、発電機3が短絡し過大なトルクが発生したとしても、過大トルクは電磁継手6で遮断される。したがって、過大トルクにより、電磁継手6やガスタービン1が損傷することはなく、その点でも発電設備としての高い信頼性を確保することができる。
【0029】
続いて本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、負荷機器である発電機3の両側に原動機としてのガスタービンと蒸気タービンをそれぞれ配置し、ガスタービンと蒸気タービンのいずれかで発電機を駆動するようになっている。但し、本実施形態では、ガスタービンと蒸気タービンとの間に発電機を配置した場合を例にとって説明するが、2つのガスタービンの間に発電機を配置していずれかのガスタービンで発電機を駆動するようにしても良いし、2つの蒸気タービンの間に発電機を配置していずれかのガスタービンで発電機を駆動するようにしても良い。勿論、2つの原動機のいずれか(又は両方)にディーゼルエンジン等のエンジンを用いても成立する。また、負荷機器も発電機に限らずポンプやガス圧縮機等に代えても良い。
【0030】
図5は本発明の第2実施形態に係るプラント設備の全体構成を示す概略図である。この図において、先の各図と同様の部分には同符号を付し説明を省略する。
図5において、本実施形態のプラント設備は、複数の原動機としてのガスタービン1及び蒸気タービン50にそれぞれ設けられた駆動ロータ2,51と、これら複数の駆動ロータ2,51の間に位置し、両側に位置する駆動ロータ2,51の少なくとも一方の回転動力により回転する負荷機器である発電機3の負荷機器ロータ(発電機ロータ)4と、駆動ロータ2,51及び発電機ロータ4をそれぞれ支持する複数の磁気軸受5a〜5jと、複数の駆動ロータ2,51と発電機ロータ4とを磁気的に接続し、供給電力に応じて駆動ロータ2,51と発電機ロータ4との減速比を調整する電磁継手6,6’とを備えている。
【0031】
蒸気タービン50は、例えばボイラ(図示せず)等からの蒸気を導くことで蒸気の膨張仕事により回転動力を得るようになっている。駆動ロータ(蒸気タービンロータ)51は、その回転軸52の両端が磁気軸受5i,5jにより回転可能に軸支されている。但し軸受箇所は回転軸52の両端に限らず他の箇所で支持される場合もあり、また2箇所のみならず3箇所以上で軸受支持される場合もある。
【0032】
電磁継手6’は、電磁継手6と同様の構成であり、図示しない電磁コイル12’が巻線された一方側の継手部材13’と、この継手部材13’に対向する他方側の継手部材14’とを備えている。継手部材13’,14’のそれぞれの回転軸15’,16’は、磁気軸受5h,5gにより回転可能に支持されている。電磁継手6’においても、軸受箇所は図示した態様に限らず他の箇所で支持される場合もあり、またさらに多数箇所で軸受支持される場合もある。
【0033】
一方側の継手部材13’に巻線された電磁コイル12’には図示しない電源が接続されており、電磁コイル12’に通電されると磁界が生じる。この磁界の作用によって一方側の継手部材13’と他方側の継手部材14’とが磁気的に接続され、非接触状態で一方側の継手部材13’の回転が他方側の継手部材14’に伝達される。一方側の継手部材13’の周囲に形成される磁界の強さは電磁コイル12’への通電量に依存するものであり、継手部材13’,14’間の回転動力の伝達効率は電磁コイル12’への通電量に伴って高くなる。
【0034】
一方側の継手部材13’の回転軸15’と蒸気タービンロータ51の回転軸52とはカップリング17’を介して連結されて一体となって回転する。また、他方側の継手部材14’の回転軸16’と発電機ロータ4の回転軸18とはカップリング19’を介して連結されて一体となって回転する。
【0035】
このような構成とすることにより、ガスタービンロータ2、蒸気タービンロータ51の少なくとも一方の回転動力が電磁継手6,6’の少なくとも一方を介して発電機ロータ4に伝達され、発電機3にて発電される。その他の構成については第1実施形態と同様であり、本実施形態においても、回転体を全て磁気軸受で支持し、かつ各回転体を電磁継手で接続する構成としたことにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
ここで、本実施形態のプラント設備の比較例として従来の一軸コンバインドサイクルの発電設備の全体構成を示す概略図を図6に示す。但し、図6において図5と同様の部分に相当する部分には同符号を付し説明を省略する。
図6に示した発電設備は、ガスタービン1と、蒸気タービン50と、これらガスタービン1及び蒸気タービン50の間に配置された発電機3とからなる。ガスタービン1の回転軸11と発電機ロータ4の回転軸18とはカップリング60を介して連結されている。発電機ロータ3の回転軸18と蒸気タービン50の回転軸52とはクラッチ61を介して接続される。このクラッチ61が接続することによって発電機3の回転軸18と蒸気タービン50の回転軸52とが連結され回転軸18,52間の回転動力が伝達され、クラッチ61が切り離されることにより回転軸18,52間の回転伝達が遮断される。クラッチ61は、いわゆるヘリカルスプライン嵌合構造を用いたものである。各回転軸11,18,52はすべり軸受35a〜35fにより支持されている。
【0037】
図6の構成の一軸コンバインドサイクル発電設備では、ガスタービン1を起動して発電機ロータ4を回転させ、その後、発電機ロータ4と蒸気タービンロータ51の回転数差が所定のしきい値を下回ったところでクラッチ61を接続して蒸気タービンロータ51を発電機ロータ4に接続する。つまり、まずガスタービン1で発電機ロータ4に回転動力を与え、その後蒸気タービン50の回転動力を付加するようになっている。発電設備を停止させるときは逆の手順を行う。このように、一軸コンバインドサイクル発電設備においては、一般にガスタービンがメンテナンスや故障等で作動できない場合には、蒸気タービンのみを発電機に連結して発電することはできない。
【0038】
それに対し、図5に示した本実施形態における一軸コンバインドサイクル発電設備の場合、ガスタービン1と蒸気タービン50のいずれでかのみで発電機3を駆動して発電することが可能である。つまり、電磁継手6によってガスタービンロータ2と発電機ロータ4を接続しガスタービン1のみで発電機3を駆動することも勿論可能であるが、電磁継手6’によって蒸気タービンロータ51と発電機ロータ4を接続し蒸気タービン50のみで発電機3を駆動することも可能である。したがって、ガスタービン1(又は蒸気タービン50)がメンテナンスや故障等で作動できない場合でも、蒸気タービン50(又はガスタービン1)のみを発電機4に繋げて発電することができる。さらには、2つの電磁継手6,6’に流す電流を同時に制御することにより、ガスタービン1及び蒸気タービン50の回転動力を同時に発電機ロータ4に伝達することも可能である。
【0039】
また、電磁継手6,6’は回転軸同士の着脱の役割のみならず回転数を変速することもできる。したがって、図6に示した構成では発電機ロータと駆動ロータの回転数が異なる場合には、それら両回転軸の間に変速機とクラッチとを設置する必要があったが、本実施形態では電磁継手のみで足りることも大きなメリットである。また、図6に示したクラッチ61はヘリカルスプライン嵌合構造であるため、嵌合部には給油が必要となるが本実施形態では給油は不要であり、潤滑油供給設備をやはり必要としない。
【0040】
また、一般にタービン起動時には別途起動装置が必要であるが、発電機ロータ4を有する発電機であるとともに電動機としても使用可能なサイリスタ発電機を発電機3に用いることにより、起動装置を省略又は台数低減することも考えられる。これを本実施形態に適用した場合、その起動方法は、例えばまず電磁継手6のみ繋げた状態で発電機3を駆動し、ガスタービンを起動させる。ガスタービン1の回転数が所定値に達したら、電磁継手6’を繋げて蒸気タービン50の回転動力を発電機3に伝達する。勿論その逆の手順でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラント設備の全体構成を示す概略図である。
【図2】磁気軸受の概略構成図である。
【図3】本発明のプラント設備の比較例として従来のガスタービン発電設備の全体構成を示す概略図である。
【図4】流体継手における減速比と効率の関係を表す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るプラント設備の全体構成を示す概略図である。
【図6】本実施形態のプラント設備の比較例として従来の一軸コンバインドサイクルの発電設備の全体構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ガスタービン
2 ガスタービンロータ
3 発電機
4 発電機ロータ
5a〜j 磁気軸受
6,6’ 電磁継手
8 タービン
10 タービンロータ
50 蒸気タービン
51 蒸気タービンロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機に設けられた駆動ロータと、
この駆動ロータの回転動力により回転する負荷機器の負荷機器ロータと、
前記駆動ロータ及び前記負荷機器ロータをそれぞれ支持する複数の磁気軸受と、
前記駆動ロータと前記負荷機器ロータとを磁気的に接続し、供給電力に応じて前記駆動ロータと前記負荷機器ロータとの減速比を調整する電磁継手と
を備えたことを特徴とするプラント設備。
【請求項2】
作動流体の膨張仕事により駆動する原動機であるタービンの駆動ロータと、
この駆動ロータからの回転動力により回転する負荷機器である発電機の負荷機器ロータと、
前記駆動ロータ及び前記負荷機器ロータをそれぞれ支持する複数の磁気軸受と、
前記駆動ロータと前記負荷機器ロータとを磁気的に接続し、供給電力に応じて前記駆動ロータと前記負荷機器ロータとの減速比を調整する電磁継手と
を備えたことを特徴とするプラント設備。
【請求項3】
複数の原動機にそれぞれ設けられた駆動ロータと、
これら複数の駆動ロータの間に位置し、両側に位置する前記駆動ロータの少なくとも一方の回転動力により回転する負荷機器の負荷機器ロータと、
前記駆動ロータ及び前記負荷機器ロータをそれぞれ支持する複数の磁気軸受と、
前記複数の駆動ロータと前記負荷機器ロータとを磁気的に接続し、供給電力に応じて前記駆動ロータと前記負荷機器ロータとの減速比を調整する電磁継手と
を備えたことを特徴とするプラント設備。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のプラント設備において、前記負荷機器は、前記負荷機器ロータを有する発電機であるとともに電動機としても使用可能であることを特徴とするプラント設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−211837(P2006−211837A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21492(P2005−21492)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】