説明

プリンタの省電力制御方法

【課題】 機器が省電力状態である場合に誤って操作パネルの入力装置に触れてしまった場合でも、再度操作しなければ短時間の後に再び自動的に省電力状態に戻るため、省電力効率を上げることを可能とした。
【解決手段】 省電力モードにあるプリンタにおいて操作パネルのキー押下が行われた場合、省電力状態を全面的に解除せずに一部だけを解除する。その後、一定時間内に次のキー押下が行われない場合には再び省電力モードに遷移する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は省電力機能と操作パネルを備えたプリンタの省電力制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器における課題の一つとして、省資源化対策に伴う省電力化が求められている。省電力の基準としてはいくつかのガイドラインが設けられており、その規格に対応することにより省電力化が図られている。それらの規格にはハードウェアの基準値が定められており、それに法ったハードウェアの実装による対策が主として行われている。しかし基準の一部には一定時間内に一定以内の電力消費量となるような時間的な制約項目があり、これにはソフトウェアでの制御により対策が行われている。一般的には機器には処理動作中と指示待機中の状態があり、指示待機中の状態が一定時間継続した場合に処理動作中の場合と比べて電力消費を抑えるような電力制御方法に切り替えて低消費電力状態を実現し、使用者による機器の操作に応じてその状態を解除して通常電力状態に戻すように構成されている。機器を低消費電力状態に移行するタイミング及び低消費電力状態を解除するタイミングに関しては、それぞれの動作環境によってさまざまな従来技術がある。
【0003】
その中で低消費電力状態を解除するタイミングに関して、使用者が意図しないような動作を防止するための技術としては、省電力状態から復帰する際に時間がかかることを考慮してその間のキー入力を無効にするように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、誤って省電力状態から復帰しないようにするために異なる2つの入力手段からの入力を必要とするように構成したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また低消費電力状態から復帰した後の処理に関しては、必要なデバイスのみ省電力状態を解除するように構成したものがある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−272494号公報
【特許文献2】特開平9−282054号公報
【特許文献3】特開2000−125057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では機器の都合により使用者の入力を誤入力としないことを特徴としており、省電力状態から復帰することに関しては使用者により意識された操作である状態である。そのため使用者が誤ってボタンを押してしまった時などの意図しない省電力状態からの復帰動作を起動してしまう場合に関しては考慮されていない。
【0007】
この場合を考慮したのが特許文献2であるが、この例では意図しない省電力状態からの復帰動作を防止することは可能となるが、意図して省電力状態からの復帰をさせようとする場合には操作が煩雑となり、操作感が損なわれるという問題点がある。また一般的には誤って省電力状態から復帰させてしまった場合には直ちに再び省電力状態へ移行するようなボタン操作を行えば済む場合が多い。しかし、一部大型の機器においては復帰及び再移行に時間がかかる場合もあり、そのような場合は使用者は一定時間待たされることとなり、無駄な電力消費とともに無駄な時間を過ごさなくてはならない。
【0008】
そのため復帰及び再移行に時間がかかる機器の部分に関しては特許文献3に示すような処理を適用することが望まれるが、復帰が誤操作であるかそうでないかの判定を行った後でないとその処理の意義がなくなる。
【0009】
本発明では上記のような状況を鑑み、省電力状態にある機器に対して使用者による操作パネルからの入力が行われた場合に一部の機構のみを省電力状態から復帰した後、一定時間内に次の入力があった場合のみ全機構を省電力状態から復帰するようにし、一定時間内に次の入力がない場合は再び全機構を省電力状態に戻すように構成するプリンタの省電力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は下記の構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0011】
(1)機器の各種機能を実行するための入力操作を行う操作部と、機器の各種の状態を表示する表示部と、外部機器からの操作指示及び印刷データの通信を行う通信部と、印刷データの印刷を行う印刷部と、機器制御のための変数等を記憶する揮発性記憶部と、機器の動作の制御を行う制御部を備え、特定の遷移条件で機器の状態を通常電力状態から低消費電力状態へ遷移する省電力機能と、特定の復帰条件で低消費電力状態から通常電力状態へ復帰する省電力解除機能を有し、復帰条件が前記通信部からの操作指示である場合には全面的に通常電力状態へ復帰し、復帰条件が前記操作部からの入力操作である場合には部分的に通常電力状態へ復帰することを特徴とするプリンタの省電力制御方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機器が省電力状態である場合に誤って操作パネルの入力装置に触れてしまった場合でも、再度操作しなければ短時間の後に再び自動的に省電力状態に戻るため、省電力効率を上げることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
機器を構成する各機構の電力制御が個別に制御できるように構成し、一部の機構は単体の省電力機能により使用者の操作に応じて省電力状態から復帰するための信号を発生させることが可能なように構成する。これらの電気的特性を有する機器において、通常の電力状態と省電力状態の他に一部分の機構だけ省電力状態である半省電力状態を設け、省電力状態にある機器に対して使用者による操作パネルからの入力が行われた場合には半省電力状態に遷移し、一定時間内に次の入力があった場合のみ全機構を通常の電力状態へ復帰するようにし、一定時間内に次の入力がない場合は再び全機構を省電力状態に戻すように構成する。また省電力状態からの復帰及び再移行に時間がかかる機構は半省電力状態時には省電力状態にあるように設定することが望ましい。
【実施例】
【0014】
以下に図面に基づいて本発明の実施例を具体的に説明する。本実施例では対象とする機器をプリンタとして説明する。またプリンタの通常の電力状態を「通常電力モード」、省電力状態を「省電力モード」とし、省電力モードのうち全体的に省電力状態に移行する場合を「全省電力モード」、プリンタの印刷機構のみを省電力状態に移行する場合を「半省電力モード」と定義する。
【0015】
図1は本発明を実施する機器の基本的構成を示すブロック図である。1は印刷指示などの機器の各種の機能の実行指示を行うための操作部である。操作部1は複数個のキー、ボタン、スイッチなどから構成される。2は機器の状態や各種の操作結果を使用者に通知するための表示部である。表示部2は液晶パネル、LEDなどで構成される。
【0016】
3はホスト機器との通信を行う通信部である。通信部3はシリアルポート、LAN、USBなど各種のインタフェースの一つまたは複数から構成される。ホスト機器から送られてくる印刷データを周辺機器側に入力する場合や、ホスト機器からの問い合わせに対する応答を行う場合に使用する。4は機器の各機能の実行を行う制御部である。制御部4は操作部1や通信部3からの各種の入力動作に対応して各種の出力動作の制御や、機器の省電力のための各種の制御を行う。各種の制御の手順はROM5内に含まれる制御プログラムに記憶されている。
【0017】
5は記憶装置の一種であるROMである。ROM5は書きこみが不可能な読み出し専用記憶装置であり、制御部4を制御するプログラムなどが記憶されている。6は記憶装置の一種であるRAMである。RAM6は書き換えが可能な記憶装置であり、制御部4が各種制御を行う際に必要となる変数などで使用したり、ホスト機器から送られてくる印刷データを一時的に蓄えたりして使用する。
【0018】
7は経過時間を計測するタイマーである。タイマー7は機器の制御のタイミングの調整で使用されたり、各種の省電力モードと通常電力モードの切り替え時間の計測で使用されたりする。8は印刷を実行する印刷部である。印刷部8は印刷ヘッド、インク、紙送り装置などで構成され、ホスト機器から送られてくる印刷データなどの印刷処理を実施する。
【0019】
図2は本発明に係わる機器の全省電力モード時の状態の一例を示す図である。11〜18の各ブロックは図1の1〜8の各ブロックと同じものを意味しており、図1を通常電力モードの状態であるとした時に対して、全省電力モード時の状態を示す図である。各ブロックの背景色が省電力モード時の状態を示しており、背景が白色であるブロックは供給される電力のままのフルパワー状態、背景が薄い灰色であるブロックは一部もしくは全部が省電力状態である省電力状態、背景が濃い灰色であるブロックは電力が供給されていない状態である電力オフ状態をそれぞれ示している。
【0020】
通常電力モード時には図1に示すように全ブロックがフルパワー状態である。全省電力モード時には図2に示すように操作部11、タイマー17ではフルパワー状態、表示部12、通信部13、制御部14、RAM16では省電力状態、ROM15、印刷部18では電力オフ状態になっている。操作部11、タイマー17がフルパワー状態、及び通信部13が省電力状態であるのは、省電力モードを終了するイベントの発生を検知するためである。制御部14、RAM16が省電力状態なのは、省電力モードを終了した場合の通常電力モードへの復帰処理を速やかに実施するためである。表示部12が省電力状態なのは、使用者に対し現在の機器の状態を示すためである。ROM15、印刷部18が電力オフ状態になっているのは、全省電力モード時には使用されないためである。
【0021】
図3は本発明に係わる機器の半省電力モード時の状態の一例を示す図である。図2と同様に各ブロックの背景色が省電力モード時の状態を示しており、19に示す印刷部以外の状態は図1の通常電力モードと同様な状態になっている。印刷部19だけが電力オフ状態になっているのは、機器の各機構の中で印刷部の電力消費が最も高いことと、その起動時間に最も時間がかかることが原因となっている。
【0022】
図4は本発明に係わる機器の操作パネルの一例を示す図である。操作パネルは21〜23からなる表示部2と、24〜28からなる操作部1から構成されている。21は機器の現在の状態やメニューなどを文字や記号で表示する液晶パネルである。22は使用者に対する警告が表示されている時に点滅するメッセージ用のLEDである。このLEDは機器が省電力モードである時には点灯し、省電力モードであることを示す役割も持っている。23は印刷データの受信中に点滅するデータ用のLEDである。24は印刷を強制的に中止したり、メニュー操作を途中で中止する時に押下する中止ボタンである。25はメニュー操作を行う時に項目選択を切り替えるために押下する四方向ボタンである。
【0023】
26はメニュー操作を行う時に項目や設定を決定するために押下する決定ボタンである。27はデータの受信待ち状態であるオンライン状態とそれ以外の操作を行うオフライン状態の切り替えを行う時に押下するオンラインボタンである。オンラインボタンにはLEDが備えられており、オンライン時には点灯し、オフライン時には消灯する。28は機器の電源をオンする時に押下する電源ボタンである。電源オン状態で通常電力モードの時にこのボタンを押下すると強制的に全省電力モードへと移行する。機器を省電力モードでない完全な電源オフ状態にするにはこの電源ボタンを数秒間押しつづけることにより電源オフ状態へ移行するとする。また、全省電力モードから通常電力モードに復帰しようとする場合は電源ボタン28だけでなく24〜27のいずれのボタンを押下しても半省電力モードを経由して通常電力モードに復帰することとする。
【0024】
図5は本発明に係わる機器の制御手順の概略を示すフローチャートである。使用者がプリンタ機器の電源スイッチをオンにした場合に図5のフローチャートの処理が開始する。ステップS101では機器の各種の初期化を実施する。初期化処理は制御プログラムなどのソフトウェア的な処理や、機器内の各種の装置のハードウェア的な処理からなり、通信部3や印刷部8などの機構を使用可能になるように処理する。同時にタイマー7におけるカウンタの値を初期設定した後にカウントを開始する。ステップS102では使用者の設定に従い通信部3においてホスト機器との通信回線を接続しようとする。ここでホスト機器側が応答しない場合にはオフライン状態のまま次の処理を続ける。
【0025】
ステップS103では機器に対する使用者からの指示があるかどうかを調べる。具体的には通信部3においてホスト機器との通信回線にデータが着信しているかを調べたり、操作部1から入力操作が行われているかを調べたりする。調べた結果、受信したデータ情報や押下されているボタン情報はその内容をRAM6内のバッファに保持する。ステップS104ではステップS103での処理結果を調べ、使用者からの指示があったならばステップS105へ進み、そうでなかったならばステップS109へ進む。ステップS105ではステップS103での処理結果を調べ、使用者からの指示が電源ボタンの押下であったならばステップS110へ進み、そうでなかったならばステップS106へ進む。使用者からの指示が電源ボタンの押下である場合は強制的に全省電力モードへと移行する。
【0026】
ステップS106ではステップS103でRAM6内のバッファに保持したデータもしくはボタン入力を調べ、その要求内容に従ってプリンタの各種の処理を実行する。ステップS107ではステップS106での処理内容を調べ、印刷処理を行うものであった場合にはステップS108へ進み、そうでなかったならばステップS109へ進む。ステップS108ではタイマー7におけるカウンタの値を初期値0に設定し、その後ステップS103へ戻り処理を繰り返す。このカウンタはプリンタの印刷処理が停止してからの時間を計測していることから、ステップS106及びステップS107で印刷処理が実施されたと判定されたためにその値をリセットする。ステップS109ではタイマー7におけるカウンタの値が一定の値を超えているかどうかを調べ、超えている場合はステップS110へ進み、そうでなかったならばステップS103へ戻り処理を繰り返す。
【0027】
本実施例の機器では通常電力モードにおいて印刷処理がある一定時間ない場合に全省電力モードに移行するとする。この一定時間の単位は数十分単位である場合が多く、その値は機器により固定の値であったり、使用者により任意の値に設定されていたりする。ステップS110では印刷部8への電源供給を遮断し、停止処理をする。本機器では省電力効率を上げるために最も電力消費の高い印刷部への電力供給を停止することとする。状態としてはこの段階で図3に示す半省電力モードの状態になる。
【0028】
ステップS111では機器の状態を通常電力モードから全省電力モードへ移行するように制御する。内容的には図3の状態から図2の状態になるように制御する。この結果、制御部4もスリープ状態となるため、CPUによる制御は停止する。通信部3を介してのホスト機器側からのデータの受信や、使用者による操作部1の操作などのイベントが発生すると、割り込み信号が発生してステップS112以降の処理へ遷移する。ステップS112では機器の状態を全省電力モードから半省電力モードへ移行するように制御する。内容的には図2の状態から図3の状態になるように制御する。
【0029】
ステップS113ではステップS111で発生した割り込み信号から発生したイベントの内容を調べ、その要求内容に従ってプリンタの各種の処理を実行する。ステップS114ではステップS111で発生した割り込み信号から発生したイベントの内容を調べ、それが使用者による操作部1の操作であればステップS115へ進み、それ例外であったならばステップS117へ進む。ステップS115では通信部3あるいは操作部1からの次のイベントの発生を一定時間待つ。この一定時間の単位は数秒単位で、その値は機器により固定の値であったり、使用者により任意の値に設定されていたりする。
【0030】
ステップS116ではステップS115で次のイベントが発生したかどうかを調べ、発生したならばステップS117へ進み、そうでなかったならばステップS111へ戻る。ステップS117では印刷部8への電力供給を開始し、起動する。この結果、機器の状態が半省電力モードから通常電力モードへ移行する。内容的には図3の状態から図1の状態になる。ステップS118ではタイマー7におけるカウンタの値を初期値0に設定し、その後ステップS103へ戻り処理を繰り返す。カウンタの値を初期設定し、再び省電力モードへ移行するまでの時間計測を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係わる機器の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係わる機器の全省電力モード時の状態の一例を示す図である。
【図3】本発明に係わる機器の半省電力モード時の状態の一例を示す図である。
【図4】本発明に係わる機器の操作パネルの一例を示す図である。
【図5】本発明に係わる機器の制御手順の概略を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1 操作部
2 表示部
3 通信部
4 制御部
5 ROM
6 RAM
7 タイマー
8 印刷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の各種機能を実行するための入力操作を行う操作部と、機器の各種の状態を表示する表示部と、外部機器からの操作指示及び印刷データの通信を行う通信部と、印刷データの印刷を行う印刷部と、機器制御のための変数等を記憶する揮発性記憶部と、機器の動作の制御を行う制御部を備え、特定の遷移条件で機器の状態を通常電力状態から低消費電力状態へ遷移する省電力機能と、特定の復帰条件で低消費電力状態から通常電力状態へ復帰する省電力解除機能を有し、復帰条件が前記通信部からの操作指示である場合には全面的に通常電力状態へ復帰し、復帰条件が前記操作部からの入力操作である場合には部分的に通常電力状態へ復帰することを特徴とするプリンタの省電力制御方法。
【請求項2】
前記復帰条件が前記操作部からの入力操作である場合に部分的に通常電力状態へ復帰した後、一定時間内に再度の入力操作が行われた場合は全面的に通常電力状態へ復帰し、再度の入力操作が行われない場合は再び低消費電力状態へ遷移することを特徴とする請求項1記載のプリンタの省電力制御方法。
【請求項3】
前記復帰条件が前記操作部からの入力操作である場合に部分的に通常電力状態へ復帰処理する際は、復帰に時間を要さない機構だけを復帰させることを特徴とする請求項1記載のプリンタの省電力制御方法。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−159808(P2006−159808A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357695(P2004−357695)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】