説明

プリントシステム

【課題】 第3者がネットワーク上のプリンタのインク種類を交換した場合、プリンタドライバはインク種類が変わったことがわからない、という課題を解決する。
【解決手段】 プリンタドライバの印刷実行ボタンを押下直後にプリンタからインク種類情報を取得し、保持してあるインク種類情報と適合しなかった場合にはその旨を通知するとともに取得しなおしたプリンタ情報に更新して、プリンタドライバによって更新したプリンタ情報に従って新たにデータの生成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類交換可能なインクを装着可能なプリンタにおいて、第3者が別の種類のインクに交換した場合でも、オペレータが特に意識することなく、交換されたインクの情報に合わせて適切な色味の印刷が行えるようにするプリントシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクの特性が異なるインクに交換可能なプリンタが存在する。
【0003】
通常、用紙の種類とインクとそれぞれの特性が合うようにプリンタドライバにおいて色変換テーブル等を用いた色処理を行うため、インクの種類が変更されると、プリンタドライバ内で変更されたインク特性に合わせた色変換テーブルを使用することになる。
【0004】
例えばプリンタのインクの種類が、フォトインクシステムからマットインクシステムに変更された場合、プリンタドライバはその交換されたインクが何なのかを知り、交換されたインクがマットインクシステムであればマットインク特性に合わせた色変換テーブルを使用することになるが、プリンタドライバが変更後のマットインクの種類を知る手段としては、(1)オペレータがプリンタドライバ上でマットインクを示す選択肢を選択する、(2)プリンタドライバ上でインクの種類を取得するための操作を行う、(3)プリンタドライバを開く直前にプリンタからインクの種類を自動的に取得する、(4)プリンタドライバとは別のアプリケーションがバックグラウンドでプリンタのインクシステム情報を定期的に取得しておき、インク情報を更新する、といったことが挙げられる。
【0005】
従来のインクチェンジシステムにおける発明には、上記(1)および(2)を施したものがある(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。また、上記(3)を施したものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2001−205831号公報
【特許文献2】特開2001−213032号公報
【特許文献3】特開2003−202971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インク種類交換可能なプリンタがネットワーク上に接続されている場合において、例えばホストAがネットワーク上のプリンタに対して印刷しようとする前に、ホストBから印刷しようとする第3者がプリンタのインクシステムを変更した場合には、ホストAからインクシステムが変更されたことはわからない。
【0007】
前記背景技術の(1)および(2)の場合において、そのままホストAがインクシステムの変更されたプリンタに対して印刷するとインク特性の異なる印刷ジョブによってプリンタ側でエラーとなるか、所望の色味でない印刷結果となってしまう。
【0008】
前記背景技術の(3)の場合においては、プリンタドライバを起動時にプリンタのインクシステム情報を取得する場合、プリンタドライバを開く直前のため、常に最新のプリンタの情報が得られる反面、取得時間がかかるため、これにより、プリンタドライバのプリントダイアログの表示も遅くなってしまうという欠点があった。
【0009】
前記背景技術の(4)の場合においては、別アプリケーションがバックグラウンドでプリンタのインクシステム情報を定期的に取得しておき、それをプリンタドライバで読み込んで、それに応じたプリントダイアログを表示するようにすることが可能であるが、この場合、ホストで常にこのアプリケーションを起動状態(常駐)にしている必要があり、ホストへの負荷や、ネットワークで使用している場合にはネットワークトラフィックの負荷にもつながることにもなる。また、プリンタが一定時間使用されない(アクセスがない)状態の場合に、省電力(スリープ)状態にすることがあるが、常に一定間隔でのポーリング等を行ってプリンタに対して通信パケットを投げると、プリンタが省電力モードに移行できないという弊害もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のプリントシステムは、複数種類の交換可能なインクがセット可能なプリンタと、プリンタを制御するホストとが、双方向で通信可能な状態で接続されている構成されているものであって、プリンタにはインクタンクもしくはインクカートリッジにある記憶媒体にインクの種類情報が記憶され、ホストにはプリンタの記憶媒体に記憶されたインク種類情報とプリンタにセットされている給紙情報や紙サイズ紙サイズ情報などの複合的なプリンタ情報を取得する手段と、このプリンタ情報の中のインク種類情報に基づいてプリンタドライバがインク種類情報に対応した用紙の種類表示を行う手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、用紙の種類と印刷品質の組み合わせによって色変換テーブルが用意されており、プリンタドライバのユーザーインターフェイス上で選択して印刷実行することによって適切な色変換テーブルが適用される手段を備える。
【0012】
上記手段を備えたプリントシステムにおいて、プリンタドライバの印刷実行ボタンを押下直後にプリンタからインク種類情報を取得し、保持してある前記プリンタ情報内のインク種類情報と適合するか比較する手段と、比較後適合しなかった場合にはその旨を通知する手段と、適合しなかった場合にはプリンタ情報をプリンタから取得しなおしてプリンタ情報を更新し、再度このプリンタ情報内のインク種類情報に基づいてプリンタドライバがインク種類情報に対応した用紙の種類表示および対応の色変換テーブルを行う手段を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ホストからネットワーク上に存在しているような、ホストの近くにないプリンタに対して印刷する前に、第3者が知らぬ間にインクを交換してしまった場合においても、自動的にホストが、インク種類が交換されたことを認識し、オペレータがホストからの印刷において所定の操作を行うことなくなる。
【0014】
また、インク種類が正しいか否かの判別をプリンタ側ではなく、プリンタドライバ側で行うため、インクミスマッチ等によるプリンタオフライン状態になるようなプリンタ側への影響がなく、ミスマッチ状態解除のためのオペレータによるプリンタパネル上での操作も必要なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1について、本発明での実施例として、主にオペレータ自らインクが交換を行う場合のみならず、ネットワーク上での第3者によるインク交換が行われる場合を想定している。
【0017】
係るプリンタとホストとの関連についての概要を説明する。
【0018】
プリンタ2とホスト8とにおいて、ローカル接続もしくはネットワーク接続がなされている状態になっている。
【0019】
プリンタ内では、インクタンク(もしくはインクカートリッジの形態も可)が装着されており、インクタンクにはインク情報を保持している記録媒体4を備えている。インクが交換される際には、操作パネル部5の指示に従ってインク交換を行うが、物理的にインクがフォトインクシステムからマットインクシステムに交換された際にプリンタ内でマットインクシステムが装着されたことを記録媒体4から判断し、コントローラ部を通って、操作パネル部で表示される。オペレータは交換完了の確定を行う。
【0020】
ホスト内では、最初にインストールされるファイルセットとしてのプリンタドライバ9がある。また、オペレータがプリンタドライバを使用してプリンタ選択を行うと、プリンタドライバはI/F通信部を通り、プリンタに対してプリンタ情報の取得要求を行う。
【0021】
その結果得られたプリンタ情報を、プリンタドライバはプリンタ情報ファイル14として保持しておく。
【0022】
プリンタドライバは取得したプリンタ情報内にあるインク情報を元にユーザーインターフェイス表示部での用紙の種類表示に反映させ、インク情報に対応した用紙の種類を表示するようにする。用紙の種類を表示する場合、必ずしもインク情報に対応している用紙の種類だけを表示する必要はなく、プリンタドライバでサポートしているすべての用紙の種類を表示させることがある。この場合は、インク情報に対応していない場合には用紙の種類にアイコン等を付加して通常と異なる状態を表し、この状態がどういう意味かをオペレータに知らせるために、『この用紙の種類を選択するとインクに対応していないので対応のインクに交換する』ことを促すメッセージを表示する。
【0023】
プリンタドライバのユーザーインターフェイス表示部において、用紙の種類を選択し、印刷実行を行うと、用紙の種類と印刷品質に対応した色処理テーブルを使用してRBG→R’G’B’変換およびCMYK変換を行う。この色処理テーブルは、インク種類が固定なため、選択した用紙の種類&印刷品質とインク種類とで、1対1の対応となる。
【0024】
複数のインク種類が使用できる場合には、基本的にはその複数分の色処理テーブルセットが必要となる。
【0025】
図2は、プリンタドライバがプリンタから取得したプリンタ情報を保持しているファイルのフォーマットを表す。
【0026】
プリンタとホスト側とにおいて、プリンタ情報を取得/送信可能なようにコマンドおよびIDを使用できるよう実装してあり、ホスト側はコマンドおよびIDを設定してプリンタに情報取得要求を行うと、図のようなフォーマットのプリンタ情報が取得できる。
【0027】
取得できる項目は、(1)プリンタアドレス情報、(2)プリンタのプロダクト名、(3)プリンタに装着されているインク種類の情報、(4)インクの残量情報、(5)給紙部の情報、(6)給紙部に装着されている用紙サイズ情報、(7)給紙部に装着されている用紙種類情報、(8)給紙部に装着されている用紙残量情報、などがある。これら取得情報をまとめてプリンタ情報ファイルとして保持する。
【0028】
プリンタドライバでは必要に応じて、このプリンタ情報ファイルにアクセスし、ユーザーインターフェースで表示項目として使用することになる。
【0029】
図3は、プリンタドライバがプリンタのインク種類が交換されていた場合でも問題なく適切な印刷が行えるようなフローを表したものである。
【0030】
S1では使用するプリンタにおいて、例としてフォトインクシステムからマットインクシステムにインク種類を実際に変更している。
【0031】
この時点において、プリンタドライバが認識しているインク種類情報はまだフォトインクシステムになっている。
【0032】
S2においてプリンタドライバを開いているが、S1とS2とにおいて順番が逆でも構わない。その後S3でプリントボタンを押下し、内部的にはフォトインクシステムとしての印刷処理を行おうとする。
【0033】
S3の直後に、プリンタドライバはプリンタからインク種類情報のみを取得しにいく(S4)。インク種類情報のみの情報取得の場合は、情報取得にかかる時間は短くてすむ。S5において、取得したインク種類情報と、すでに保持しているプリンタ情報の中のインク種類情報とで一致するかどうかの比較を行う。一致すれば、プリンタドライバでの色処理が適切であるため、そのまま印刷処理が続行される。一致しない場合、プリンタ側でインク種類が変更になったことを表すが、このまま印刷処理を続行すると異なった色変換テーブルを使用することになり、不正な印字結果になるため、印刷続行をせずに、インク種類ミスマッチのメッセージを表示して、どういう状況になっているかをオペレータに知らせる(S6)。
【0034】
この後、S8において、プリンタ情報をプリンタから取得しにいき、プリンタ情報ファイルを更新する。このとき、プリンタ情報ファイル内のインク種類情報もフォトインクシステムからマットインクシステムに更新される。
【0035】
S9では、プリンタドライバのユーザインターフェースにおいて、サポートしているすべての用紙の種類を表示させるにあたって、インク情報に対応していない場合には用紙の種類にアイコン等を付加して通常と異なる状態を表すようなフィルター処理を行う。このアイコンが付加されている用紙の種類を選択すると、選択された用紙の種類が、これから印刷しようとするインク種類に不適切であることをメッセージ表示する。これにより、プリンタドライバ(プリンタ)がサポートしている用紙の種類がどれだけあって、どれがどのインクに適応した用紙の種類なのかが、プリンタに装着されているインク種類が異なっていてもオペレータは容易に知りうることが可能になるのである。
【0036】
上記S9で更新されたプリンタ情報に基づいてユーザインターフェイス情報も更新を行い、プリントダイアログに戻る。
【0037】
この時点で、プリンタに装着されたインク種類に適切な用紙の種類を、プリントダイアログ上で正しく表示しているので、オペレータは再度必要項目を指定して印刷実行を行うことによって適切な印刷処理を行うことができる。
【0038】
なお、プリンタに対してインク種類情報もしくはプリンタ情報を取得する際、プリンタが省電力状態にある場合には、ターゲットのプリンタに対してコネクション開始のパケットを送信するが、プリンタが省電力状態から通常状態に復帰して、応答パケットを返すまでにプリンタのアドレス解決処理などに数秒かかると思われる。この後にホスト側は印刷ジョブをプリンタに送信する処理を開始する。
【0039】
情報取得をプリントボタン押下後に行う場合は、オペレータの操作自体は終了しているので上記処理にかかる時間はそれほど気にならないと考えられるが、プリントダイアログオープン時にプリンタからの情報取得を行うと、プリントダイアログオープンまでに上記プリンタ復帰までの時間分待たされることになり、オペレータに不快感を与えることになるため、プリンタドライバの処理としては望ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を適用可能な、プリンタとホストからなるプリントシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明における、プリンタから取得されるプリンタ情報のフォーマットの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施例における処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1 ホストとプリンタとを接続する信号線
2 プリンタ
3 インクタンク、またはインクカートリッジ
4 記憶媒体
5 操作パネル部
6 コントローラ部
7 インターフェイス部
8 ホスト
9 プリンタドライバ
10 ユーザーインターフェイス部
11 色変換テーブル
12 印刷ジョブを生成する箇所
13 インターフェイス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の交換可能なインクがセット可能なプリンタと、該プリンタを制御するホストとが、双方向で通信可能な状態で接続されている構成されているプリントシステムにおいて、前記プリンタにはインクタンクもしくはインクカートリッジにある記憶媒体にインクの種類情報が記憶され、前記ホストには前記プリンタの記憶媒体に記憶されたインク種類情報とプリンタにセットされている給紙情報や紙サイズ紙サイズ情報などの複合的なプリンタ情報を取得する手段と、このプリンタ情報の中のインク種類情報に基づいてプリンタドライバがインク種類情報に対応した用紙の種類表示を行う手段とを備えたプリントシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のプリントシステムにおいて、前記プリンタは前記ホストとローカル接続されているだけでなく、ネットワーク媒体を通して通信可能であり、前記プリンタに対して一定時間前記ホストからのアクセスがない場合に省電力状態に移行する手段を備えたプリントシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のプリントシステムにおいて、前記プリンタドライバは最初にプリンタドライバを選択し、使用する時点でプリンタから前記プリンタ情報を取得し、保持しておく手段を備えたプリントシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のプリントシステムにおいて、前記プリンタドライバは用紙の種類の下にRGB→R’G’B’やR’G’B’→CMYKといったインク色への色変換テーブルが従属し、用紙の種類と印刷品質の組み合わせによって色変換テーブルが用意されており、プリンタドライバのユーザーインターフェイス上で選択して印刷実行することによって適切な色変換テーブルが適用される手段を備えたプリントシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のプリントシステムにおいて、前記プリンタドライバは印刷実行ボタンを押下直後にプリンタからインク種類情報を取得し、保持してある前記プリンタ情報内のインク種類情報と適合するか比較する手段と、比較後適合しなかった場合にはその旨を通知する手段と、適合しなかった場合にはプリンタ情報をプリンタから取得しなおしてプリンタ情報の中のインク種類情報を更新し、再度このインク種類情報に基づいてプリンタドライバがインク種類情報に対応した用紙の種類表示を行う手段とを備えたプリントシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−221247(P2006−221247A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31736(P2005−31736)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】