説明

プリント基板積層体およびその製造方法

【課題】一方のプリント基板に半田付けされた基板間端子のアライメント精度を確保することが出来ると共に、該基板間端子の半田付け工程の簡素化を図ることの出来る、新規な構造のプリント基板積層体を提供すること。
【解決手段】第一のプリント基板12に複数のスルーホール18aが整列されたスルーホール列20を形成すると共に、該スルーホール列20内に圧入固定孔28を形成して、該圧入固定孔20に基板間端子の一方の端部を圧入固定すると共に、他の基板間端子の一方の端部を前記第一のプリント基板12の前記スルーホール18aに挿通してフロー半田付けするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二枚のプリント基板が積層されて複数の基板間端子で接続された、プリント基板積層体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に搭載されるジャンクションボックス等の電気接続箱の内部回路として、例えば、特開2009−26464号公報(特許文献1)に記載されているような、二枚のプリント基板が積層されて、複数の基板間端子で相互に接続されたプリント基板積層体が用いられている。
【0003】
ところで、このようなプリント基板積層体は、複数の基板間端子の一方の端部が、一方の第一のプリント基板のスルーホールにそれぞれ挿通して半田付けされると共に、他方の端部が、他方の第二のプリント基板のスルーホールにそれぞれ挿通して半田付けされる。それ故、複数の基板間端子が、第一のプリント基板に半田付けされた段階で精度良く位置決めされていないと、第二のプリント基板のスルーホールへの挿通が困難となるおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1に記載のプリント基板積層体においては、複数の基板間端子を合成樹脂製の台座で支持することが提案されている。しかし、このような構造では、別部材の台座を必要とすることから部品点数の増加を招く。また、半田付けの熱等で台座が熱膨張して基板間端子を引っ張って位置ずれを生じることにより、必ずしも良好なアライメント精度を確保出来なかったり、基板間端子の半田付け部にクラックを生じるおそれがあった。
【0005】
また、基板間端子の二枚のプリント基板への半田付けは、先ず基板間端子の一方の端部を第一のプリント基板のスルーホールに挿通した状態でプリント基板の下面をはんだ槽に浸してフロー半田付けした後に、他方の端部を第二のプリント基板のスルーホールに挿通して組立体を形成し、該組立体を反転して他方の端部が突出する第二のプリント基板の下面をはんだ槽に浸して再びフロー半田付けしなければならず、工程が煩雑となって手間を要するものであった。特にプリント基板に実装される電気部品が表面実装タイプのみである場合には、表面実装部品のリフロー半田工程とは別途に、基板間端子を半田付けするためだけにフロー半田付け工程を実施しなければならず、製造効率の低下を招くおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−26464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、部品点数の増加を招くことなく、一方のプリント基板に半田付けされた基板間端子のアライメント精度を確保することが出来ると共に、基板間端子の半田付け工程の簡素化を図ることの出来る、新規な構造のプリント基板積層体を提供すること、およびそのようなプリント基板積層体を製造するために好適に用いられる、プリント基板積層体の新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
プリント基板積層体に関する本発明の第一の態様は、第一のプリント基板と第二のプリント基板が隙間を隔てて配設されていると共に、前記第一のプリント基板と前記第二のプリント基板が、夫々に設けられた複数のスルーホールに両端部が挿通されて半田付けされた複数の基板間端子で相互に接続されているプリント基板積層体において、前記第一のプリント基板には前記複数のスルーホールが整列して形成されていると共に、該スルーホールの列内には前記第一のプリント基板を貫通する少なくとも1つの圧入固定孔が形成されており、前記複数の基板間端子のうち、一つの前記基板間端子の一方の端部が前記圧入固定孔に圧入固定されていると共に、他の前記基板間端子の一方の端部が前記第一のプリント基板の前記スルーホールに挿通されてリフロー半田付けされている一方、前記複数の基板間端子の他方の端部が前記第二のプリント基板の前記スルーホールに挿通されてフロー半田付けされていることを、特徴とする。
【0009】
本態様に従う構造とされたプリント基板積層体によれば、第一のプリント基板のスルーホールの列中に、基板間端子を圧入固定することの出来る圧入固定孔を設けた。これにより、複数の基板間端子を帯状のキャリアで並列的に連結された連鎖状端子として用意して、連鎖状端子の基板間端子の1つを圧入固定孔に圧入固定することにより、キャリアで連結された他の基板間端子を、第一のプリント基板のスルーホールへの挿通状態で保持することが出来る。その結果、台座等の特別な部品を要することなく、複数の基板間端子を第一のプリント基板に対して位置決め固定して、リフロー半田付けで半田付けすることが出来る。特に、第一のプリント基板に表面実装部品がリフロー半田付けされる場合には、表面実装部品のリフロー半田付け工程で基板間端子を同時に半田付けすることが出来る。これにより、従来の如き表面実装部費のリフロー半田付け工程の後、基板間端子の一方の端部を第一のプリント基板に対してフロー半田付けし、さらに他方の端部を第二のプリント基板のスルーホールに挿通して得られた組立体を反転して、第二のプリント祈願の下面を再度はんだ槽に浸すような煩雑な手間を要することなく、簡易な工程で基板間端子の半田付けを行うことが出来る。また、基板間端子を支持する台座が不要となることから、部品点数の増加を招くこともない。さらに、台座が熱膨張することにより基板間端子のアライメント精度が損なわれて、第二のプリント基板のスルーホールへの挿通作業が困難となったり、半田クラックを生じるようなおそれも軽減されて、より優れた製造品質を得ることが出来る。
【0010】
なお、圧入固定孔は、スルーホールの列中に1つ形成しても良いし、複数形成しても良い。更に、スルーホールの列中における圧入固定孔の形成位置は特に限定されるものではなく、例えばスルーホールの列の中央部分に1つの圧入固定孔を形成しても良いし、2つの圧入固定孔をスルーホールの列の両端部分に形成する等しても良い。
【0011】
プリント基板積層体に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記圧入固定孔において、前記基板間端子の前記他方の端部が突出される側の開口周縁部にはランドが形成されており、前記圧入固定孔に圧入された前記基板間端子が前記ランドにリフロー半田付けされているものである。
【0012】
本態様によれば、圧入固定孔にランドを形成したことによって、圧入固定孔に圧入固定された基板間端子を、他の基板間端子と共にリフロー半田付けして、第一のプリント基板に半田固定することが出来る。これにより、圧入固定孔に圧入された基板間端子をより強固に固定することが出来る。その結果、他の基板間端子を第一のプリント基板に対してより安定的に位置決め保持することが出来ると共に、圧入固定孔に圧入された基板間端子が脱落することにより製造設備や他の部品に悪影響を与えるおそれを軽減することが出来る。
【0013】
プリント基板積層体に関する本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記圧入固定孔が、前記第一のプリント基板における前記スルーホールの列の中央部分に形成されているものである。
【0014】
本態様によれば、例えば複数の基板間端子が帯状のキャリアで並列的に連結された連鎖状端子を第一のプリント基板のスルーホールに挿通する際に、並列された複数の基板間端子の中央部分に位置する基板間端子を圧入固定孔に圧入固定することが出来る。これにより、帯状のキャリアで連結された複数の基板間端子を、中央部分に位置する基板間端子でバランス良く保持することが出来る。
【0015】
プリント基板積層体に関する本発明の第四の態様は、前記第一〜第三の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記圧入固定孔が、前記第一のプリント基板のプリント配線と電気的に接続された前記複数のスルーホールの1つとされているものである。
【0016】
本態様によれば、圧入固定孔も第一のプリント基板上の電気回路を構成するスルーホールとして有効に用いることが出来る。その結果、第一のプリント基板上のスペースをより有効に利用することが出来ると共に、圧入固定孔に圧入固定された基板間端子も、第一のプリント基板と第二のプリント基板を電気的に接続する導電路として、より有効に利用することが出来る。
【0017】
プリント基板積層体の製造方法に関する本発明は、第一のプリント基板と第二のプリント基板が隙間を隔てて配設されていると共に、前記第一のプリント基板と前記第二のプリント基板が、夫々に設けられた複数のスルーホールに両端部が挿通されて半田付けされた複数の基板間端子で相互に接続されているプリント基板積層体の製造方法において、前記第一のプリント基板に、前記複数のスルーホールを整列して形成する工程と、該スルーホールの列内に前記第一のプリント基板を貫通する少なくとも1つの圧入固定孔を形成する工程と、前記複数の基板間端子が帯状のキャリアで分離可能に並列的に連結された連鎖状端子を準備する工程と、該連鎖状端子における前記基板間端子の一つの一方の端部を前記圧入固定孔に圧入固定すると共に、前記キャリアで連結された他の前記基板間端子の一方の端部を前記第一のプリント基板の前記スルーホールに挿通してリフロー半田付けする工程と、前記連鎖状端子における前記複数の基板間端子の他方の端部を前記第二のプリント基板の前記スルーホールに挿通してフロー半田付けする工程とを、含むことを特徴とする。
【0018】
本発明に従う製造方法においては、帯状のキャリアで連結された複数の基板間端子を第一のプリント基板のスルーホールに挿通すると共に、それらの基板間端子の少なくとも1つを、第一のプリント基板に形成された圧入固定孔に圧入固定するようにした。これにより、半田付け前の複数の基板間端子を、台座等の特別な部材を要することなく、第一のプリント基板のスルーホールへの挿通状態で位置決め保持することが出来る。その結果、部品点数の増加を回避して製造コストの低減を図ることが出来ると共に、台座の熱膨張に起因する基板間端子の位置ずれによるアライメント精度の低下や、半田クラックの発生を抑えて、製造品質の向上を図ることもできる。
【0019】
そして、基板間端子の一方の端部は、第一のプリント基板のスルーホールに挿通されてリフロー半田付けされる。従って、基板間端子の両方の端部をフロー半田付けする場合のように、基板間端子の一方の端部を第一のプリント基板に対してフロー半田付けした後に、基板間端子の他方の端部に第二のプリント基板を組み付けたものを反転して、再度はんだ槽に第二のプリント基板の下面を浸してフロー半田付けを行う手間を要することなく、半田付け工程を簡素化することが出来る。特に、第一のプリント基板に表面実装部品がリフロー半田付けされる場合には、表面実装部品のリフロー半田付け工程と同工程で基板用端子を第一のプリント基板のスルーホールにリフロー半田付けすることが出来、より優れた製造効率を得ることが出来る。
【発明の効果】
【0020】
プリント基板積層体に関する本発明においては、第一のプリント基板のスルーホールの列内に圧入固定孔を形成し、該圧入固定孔に基板間端子の一方の端部を圧入固定すると共に、他の基板間端子の一方の端部を第一のプリント基板のスルーホールに挿通してリフロー半田付けする一方、前記基板間端子の他方の端部を第二のプリント基板のスルーホールに挿通してフロー半田付けした。これにより、帯状のキャリアで複数の基板間端子が並列に連結された連鎖状端子の1つの基板間端子を圧入固定孔に圧入固定することで、キャリアを介して、半田付けの前に、他の基板間端子を第一のプリント基板のスルーホールへ挿通した状態で位置決め保持することが出来る。その結果、台座等の特別な部品を必要とすることなく、第一のプリント基板に半田付けされた複数の基板間端子のアライメント精度を確保して、第二のプリント基板のスルーホールへの挿通をより容易且つ確実に行なうことが出来る。また、基板間端子の一方の端部が第一のプリント基板のスルーホールにリフロー半田付けされていることから、両方の端部をフロー半田付けする場合に比して、半田付け工程をより簡素化することが出来る。
【0021】
プリント基板積層体の製造方法に関する本発明においては、第一のプリント基板のスルーホールの列内に圧入固定孔を形成して、複数の基板間端子が帯状のキャリアで連結された連鎖状端子の1つの基板間端子を、圧入固定孔に圧入固定するようにした。これにより、台座等の特別な部材を用いることなく、圧入固定孔に固定された基板間端子とキャリアを介して連結された複数の基板間端子を、第一のプリント基板のスルーホールへ挿通した状態で位置決め保持して半田付けすることが出来る。これにより、部品点数の削減によって製造コストの向上を図ることが出来ると共に、台座等の膨張に起因する基板間端子の位置ずれを回避して、基板間端子のアライメント精度をより精度良く確保して、第二のプリント基板のスルーホールへの挿通作業もより容易に行うことが出来る。また、基板間端子の一方の端部がリフロー半田付けされることから、両端部をフロー半田付けする場合に比して、半田付け工程をより簡略化することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態としてのプリント基板積層体の斜視図。
【図2】第一のプリント基板の平面図。
【図3】図2における要部拡大図。
【図4】連鎖状端子の一部を示す側面図。
【図5】図4におけるV−V断面の拡大図。
【図6】第一のプリント基板への基板間端子の挿通状態を説明するための断面説明図。
【図7】第一のプリント基板への基板間端子の半田付け工程を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
先ず、図1に、本発明の一実施形態としてのプリント基板積層体10を示す。プリント基板積層体10は、図示しない電気接続箱のケース内に収容されて、電気接続箱の内部回路を構成する。プリント基板積層体10は、第一のプリント基板12と、第二のプリント基板14が互いに隙間を隔てて対向された積層状態で配設されて、複数の基板間端子16で相互に接続された構造とされている。
【0025】
図2に、第一のプリント基板12を示す。本実施形態における第一のプリント基板12は、1枚の基板17に複数(図2においては、4枚)の第一のプリント基板12が連結状態で形成されて、1枚ずつ切り離されて成形されるようになっている。第一のプリント基板12は略長手矩形状とされている。第一のプリント基板12の外周部分において、一つの長辺部分と一対の短辺部分には、複数のスルーホール18aが第一のプリント基板12の外周縁部に沿って整列して形成された、スルーホール列20a,20b,20cがそれぞれ形成されている。各スルーホール列20a,20b,20cは互いに略同様の構造とされていることから、以下、スルーホール列20aを例に説明する。
【0026】
スルーホール列20aには、複数のスルーホール18aが、一列に並んで形成されている。図3に示すように、スルーホール18aは、従来公知のように、第一のプリント基板12を貫通する円形の貫通孔とされている。スルーホール18aには、第一のプリント基板12において、第二のプリント基板14と対向する表面22上の開口周縁部にランド24が形成されていると共に、内周面にはメッキが施されている。そして、各スルーホール18aが、第一のプリント基板12に形成されたプリント配線26と接続されている。
【0027】
また、第一のプリント基板12において、各スルーホール列20a,20b,20cの中央部分には、それぞれ1つの圧入固定孔28が形成されている。圧入固定孔28は、第一のプリント基板12を貫通する円形の貫通孔形状とされている。圧入固定孔28の内径寸法:φは、スルーホール18aの内径寸法:φ’に比して小さくされており、圧入固定孔28に挿通された基板間端子16が圧入固定孔28の内周面に接触して圧入される大きさに設定されている。
【0028】
特に本実施形態における圧入固定孔28は、他のスルーホール列20aに形成された複数のスルーホール18aと同様に、基板間端子16を介して第一のプリント基板12と第二のプリント基板14を電気的に接続するスルーホールとされている。従って、圧入固定孔28において、表面22側の開口周縁部にはランド24が形成されていると共に、内周面にはメッキが施されて、第一のプリント基板12に形成されたプリント配線26と接続されている。
【0029】
なお、圧入固定孔28の内径寸法:φは、他のスルーホール18aの内径寸法:φ’よりも小さくされているが、圧入固定孔28の内径寸法:φは、例えば第一のプリント基板12にスルーホール18aを貫設する際のドリル等による穿孔径をスルーホール18aよりも小さくすることで内径寸法を小さくしても良い。或いは、本実施形態のように圧入固定孔28もスルーホールとして用いるような場合には、穿孔径はスルーホール18aと等しくしつつ、内周面に被着するメッキの厚さ寸法をスルーホール18aよりも厚くすることによって、圧入固定孔28の内径寸法:φをスルーホール18aの内径寸法:φ’よりも小さくする等しても良い。このようにすれば、圧入固定孔28もドリルの交換を要することなくスルーホール18aと同一のドリルで穿孔することが出来ると共に、めっき厚を確保して、基板間端子16の圧入に際するメッキの剥離のおそれも軽減することが出来る。
【0030】
一方、第二のプリント基板14は、従来公知のものであり、第一のプリント基板12よりも大きな長手矩形状とされている。詳細な図示は省略するが、第二のプリント基板14において、第一のプリント基板12の圧入固定孔28を含む各スルーホール18aと対応する位置には、それぞれ、スルーホール18bが貫設されている。
【0031】
これら第一のプリント基板12と第二のプリント基板14は、複数の基板間端子16で相互に接続されている。基板間端子16として、好適には、図4に示すように、複数の基板間端子16が帯状のキャリア30で並列的に連結された連鎖状端子32が用いられる。各基板間端子16は、略正方形断面を有する金属線材が所定長さで切断されて形成されたストレート形状とされている。基板間端子16の長さ方向の両端部分には、両外側に突出する突起状の一対の当て止め部34,34が潰し加工等によりそれぞれ形成されている。
【0032】
このような基板間端子16の複数が、互いに平行に延びる並列状態で、キャリア30に連結されている。キャリア30は、薄肉の金属板から形成されており、複数の単位部36が連続的に形成されていると共に、各単位部36間で容易に切断可能とされている。図5にも示すように、各単位部36の両端縁部には、垂直に立ち上がる係止部38,38が屈曲形成されており、これら係止部38,38に形成された切欠40,40内に基板間端子16を嵌め入れて保持するようにされている。また、各単位部36における係止部38,38の間には、略L字状断面の押え片42が切り起こされて形成されており、この押え片42で基板間端子16を押さえて保持するようにされている。なお、押え片42は、基板間端子16に部分的に重ね合わされており、キャリア30を図5中の下方に引き離すことによって、基板間端子16と押え片42との係合状態は容易に解除されて、基板間端子16がキャリア30から容易に離脱可能とされている。そして、各単位部36で基板間端子16が保持されることによって、複数の基板間端子16がキャリア30で並列的に連結された連鎖状端子32が構成されている。なお、キャリア30への連結状態で、各基板間端子16の配列間隔:Pcが、第一のプリント基板12および第二のプリント基板14の、圧入固定孔28を含むスルーホール18a,18bの配列間隔:Pt(図3参照)と等しくされている。
【0033】
そして、このような連鎖状端子32のキャリア30が切断されることによって、第一のプリント基板12のスルーホール列20a,20b,20cの圧入固定孔28を含むスルーホール18aと同数の基板間端子16がキャリア30への連結状態で切り出されて、各基板間端子16の一方の端部が各スルーホール列20a,20b,20cの圧入固定孔28を含むスルーホール18aに挿通されている。なお、基板間端子16のスルーホール18aへの挿通量は、当て止め部34が第一のプリント基板12に接触することで規定されている。図6に示すように、圧入固定孔28に挿通される基板間端子16は、圧入固定孔28に対して圧入されることにより、半田付けを要することなく、第一のプリント基板12からの突出状態で固定されるようになっている。なお、本実施形態においては、圧入固定孔28の内径寸法:φは、内周面のめっきの厚さが大きくされることによりスルーホール18aの内径寸法:φ’よりも小さくされていると共に、圧入固定孔28に挿通される基板間端子16の端部における軸直断面の最大外形寸法よりも小さくされている。これにより、圧入高圧入固定孔28に挿通される基板間端子16は、圧入固定孔28の内周面のめっきを削りながら圧入固定される。そして、その他の基板間端子16は、圧入固定孔28に圧入固定された基板間端子16とキャリア30で連結されていることにより、一方の端部が各スルーホール18aに特別な圧入力を要すること無しに挿通された状態で位置決め保持される。この状態で、各基板間端子16が、圧入固定孔28を含む各スルーホール18aへの挿通状態でリフロー半田付けされることにより、圧入固定孔28を含む各スルーホール18aと電気的に接続されて、第一のプリント基板12に突設されている。
【0034】
また、基板間端子16が突設された第一のプリント基板12が第二のプリント基板14に重ね合わされることによって、第一のプリント基板12から突出された基板間端子16の他方の端部が、第二のプリント基板14の各スルーホール18bに挿通される。なお、基板間端子16のスルーホール18bへの挿通量は、当て止め部34が第二のプリント基板14に接触することで規定されている。また、第二のプリント基板14には、ヒューズやコネクタ等と接続する複数の接続端子44やリレー46等が、図示しないスルーホールに挿通されている。そして、これら接続端子44やリレー46と共に、スルーホール18bに挿通された基板間端子16の端部がフロー半田付けされている。これにより、第一のプリント基板12と第二のプリント基板14が複数の基板間端子16で相互に接続されたプリント基板積層体10が構成されている。
【0035】
なお、このようなプリント基板積層体10は、例えば、以下のようにして好適に製造される。先ず、前記第一のプリント基板12と第二のプリント基板14を用意する。第一のプリント基板12には、従来公知の手法により、複数のスルーホール18aが並んで形成されることにより、スルーホール列20a,20b,20cが形成される。また、各スルーホール列20a,20b,20c内に、圧入固定孔28を、前述のように、例えばドリルの穿孔径をスルーホール18aよりも小さくしたり、めっきの厚さ寸法をスルーホール18aよりも大きくすることで形成する。そして、前記連鎖状端子32を用意して、連鎖状端子32のキャリア30を切断することにより、第一のプリント基板12のスルーホール列20a,20b,20cの圧入固定孔28を含むスルーホール18aと同数の基板間端子16を、キャリア30への連結状態を維持した状態で切り出して用意する。
【0036】
次に、図7に示すように、第一のプリント基板12のスルーホール列20a,20b,20cの圧入固定孔28を含む各スルーホール18aに、各基板間端子16の一方の端部を挿通する。なお、図示は省略するが、第一のプリント基板12には、リフロー半田のためのペースト状のクリームはんだが印刷されている。また、第一のプリント基板12の表面22には、必要に応じて、LSI等の表面実装部品が配設されている。更に、図7においては、基板17から切り離される前の4つの第一のプリント基板12の各スルーホール18aに、各基板間端子16が挿通されることにより、4つの第一のプリント基板12への基板間端子16の半田付けが同時に行なわれるようにされている。この挿通に際して、圧入固定孔28に挿通される基板間端子16は、圧入固定孔28に圧入状態で固定される。これにより、その他の基板間端子16は、圧入固定孔28に圧入固定された基板間端子16とキャリア30を介して連結されて、各スルーホール18aへの挿通状態で保持される。そして、基板間端子16がスルーホール18aに挿通された第一のプリント基板12をリフロー炉に投入して半田を溶かすことにより、各基板間端子16が、表面実装部品と共に第一のプリント基板12にリフロー半田付けされる。前述のように、本実施形態においては、4枚の第一のプリント基板12のリフロー半田付けが同時に行われることから、基板間端子16のリフロー半田付けが完了した後に、各第一のプリント基板12が基板17から個別に切り離される。
【0037】
次に、図1に示したように、第二のプリント基板14のスルーホール(図示省略)に、接続端子44やリレー46を挿通すると共に、先に得られた第一のプリント基板12を第二のプリント基板14に重ね合わせて、第一のプリント基板12から突出された基板間端子16の他方の端部を、対応する第二のプリント基板14のスルーホール18bにそれぞれ挿通する。なお、この状態で、各基板間端子16は、キャリア30への連結状態が維持されていることが好ましい。そして、第二のプリント基板14の裏面を液体状のはんだで満たされたはんだ槽に浸すことにより、基板間端子16を、接続端子44やリレー46等と共に第二のプリント基板14にフロー半田付けする。その後、基板間端子16を連結するキャリア30を引き剥がすことにより、プリント基板積層体10を得ることが出来る。
【0038】
このような構造とされたプリント基板積層体10によれば、第一のプリント基板12のスルーホール列20a,20b,20cのそれぞれに、基板間端子16を圧入固定可能な圧入固定孔28が形成されている。これにより、複数の基板間端子16をキャリア30に連結した状態で、一つの基板間端子16を圧入固定孔28に圧入固定することによって、キャリア30を介して、他の基板間端子16を各スルーホール18aへの挿通状態で保持することが出来る。その結果、複数の基板間端子16を、台座等の特別な部材を必要とすること無しにスルーホール18aへの挿通状態で保持することが出来る。そして、複数の基板間端子16が、スルーホール18aへの挿通状態で第一のプリント基板12にリフロー半田付けされている。これにより、例えば基板間端子16を第一のプリント基板12と第二のプリント基板14の両方にフロー半田付けする場合のように、基板間端子16の一方の端部が突出された第一のプリント基板12の裏面をはんだ槽に浸した後に、他方の端部が突出された第二のプリント基板14の裏面を再びはんだ槽に浸すような手間も不要となり、はんだ工程の簡素化を図ることが出来る。特に、第一のプリント基板12の表面22に表面実装部品が設けられる場合には、それら表面実装部品のリフロー半田付け工程で基板間端子16を第一のプリント基板12に半田付けすることが可能であり、製造工程の更なる効率化を図ることが出来る。
【0039】
特に本実施形態においては、圧入固定孔28にもランド24が形成されており、圧入固定孔28に圧入固定された基板間端子16も、ランド24に半田付けされて固定される。これにより、基板間端子16を圧入固定孔28により強固に固定することが出来て、圧入固定孔28に挿通された基板間端子16が脱落して、製造設備に対する異物となって悪影響を与えたりするおそれを軽減することが出来る。また、圧入固定孔28もプリント配線26と接続されることにより、圧入固定孔28も電気的な導電路を構成するスルーホールとして用いることが可能とされており、第一のプリント基板12の更なる有効利用を図ることが出来る。
【0040】
また、圧入固定孔28が、スルーホール列20a,20b,20cのそれぞれにおける中央部分に形成されている。これにより、キャリア30で連結された複数の基板間端子16の中央部分を圧入固定孔28に固定することにより、圧入固定孔28に固定された基板間端子16の両側の複数の基板間端子16を、バランス良く支持することが出来る。更に、圧入固定孔28が、各スルーホール列20a,20b,20cのそれぞれに1つのみ形成されており、複数の基板間端子16をスルーホール18aに挿通するに際して、1つの基板間端子16のみが圧入固定孔28に圧入されることから、過大な圧入力を要することなく、第一のプリント基板12に容易に組み付けることが出来る。
【0041】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、圧入固定孔は、導電路を構成するスルーホールとされている必要はなく、第一のプリント基板を貫通する単なる貫通孔でも良い。このようにすれば、基板間端子の圧入に際して圧入固定孔が損傷するおそれがあったとしても、電気的な接続信頼性の低下を考慮することが不要となる。また、圧入固定孔に形成されるランドも必ずしも必要ではないが、プリント配線と接続することなく、ランドのみを形成しても良い。このようにすれば、圧入固定孔に圧入固定した基板間端子をランドに半田付けして、強固な固定力を確保することが出来る。
【0042】
また、圧入固定孔の開口形状は、挿通される基板間端子が圧入固定可能なものであれば何等限定されるものではない。従って、例えば基板間端子が扁平断面形状を有する等の場合には、圧入固定孔を長穴形状とする等しても良い。更に、圧入固定孔は、スルーホール列に複数形成されていても良いし、必ずしもスルーホール列の中央部分に限定して形成されるものではない。従って、例えば2つの圧入固定孔を、スルーホール列の両端部に形成する等しても良い。
【符号の説明】
【0043】
10:プリント基板積層体、12:第一のプリント基板、14:第二のプリント基板、16:基板間端子、18a,b:スルーホール、20a〜d:スルーホール列、24:ランド、26:プリント配線、28:圧入固定孔、30:キャリア、32:連鎖状端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のプリント基板と第二のプリント基板が隙間を隔てて配設されていると共に、
前記第一のプリント基板と前記第二のプリント基板が、夫々に設けられた複数のスルーホールに両端部が挿通されて半田付けされた複数の基板間端子で相互に接続されているプリント基板積層体において、
前記第一のプリント基板には前記複数のスルーホールが整列して形成されていると共に、該スルーホールの列内には前記第一のプリント基板を貫通する少なくとも1つの圧入固定孔が形成されており、
前記複数の基板間端子のうち、一つの前記基板間端子の一方の端部が前記圧入固定孔に圧入固定されていると共に、他の前記基板間端子の一方の端部が前記第一のプリント基板の前記スルーホールに挿通されてリフロー半田付けされている一方、
前記複数の基板間端子の他方の端部が前記第二のプリント基板の前記スルーホールに挿通されてフロー半田付けされている
ことを特徴とするプリント基板積層体。
【請求項2】
前記圧入固定孔において、前記基板間端子の前記他方の端部が突出される側の開口周縁部にはランドが形成されており、前記圧入固定孔に圧入された前記基板間端子が前記ランドにリフロー半田付けされている
請求項1に記載のプリント基板積層体。
【請求項3】
前記圧入固定孔が、前記第一のプリント基板における前記スルーホールの列の中央部分に形成されている
請求項1又は2に記載のプリント基板積層体。
【請求項4】
前記圧入固定孔が、前記第一のプリント基板のプリント配線と電気的に接続された前記複数のスルーホールの1つとされている
請求項1〜3の何れか1項に記載のプリント基板積層体。
【請求項5】
第一のプリント基板と第二のプリント基板が隙間を隔てて配設されていると共に、
前記第一のプリント基板と前記第二のプリント基板が、夫々に設けられた複数のスルーホールに両端部が挿通されて半田付けされた複数の基板間端子で相互に接続されているプリント基板積層体の製造方法において、
前記第一のプリント基板に、前記複数のスルーホールを整列して形成する工程と、
該スルーホールの列内に前記第一のプリント基板を貫通する少なくとも1つの圧入固定孔を形成する工程と、
前記複数の基板間端子が帯状のキャリアで分離可能に並列的に連結された連鎖状端子を準備する工程と、
該連鎖状端子における前記基板間端子の一つの一方の端部を前記圧入固定孔に圧入固定すると共に、前記キャリアで連結された他の前記基板間端子の一方の端部を前記第一のプリント基板の前記スルーホールに挿通してリフロー半田付けする工程と、
前記連鎖状端子における前記複数の基板間端子の他方の端部を前記第二のプリント基板の前記スルーホールに挿通してフロー半田付けする工程と
を、含むことを特徴とするプリント基板積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−48139(P2013−48139A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185598(P2011−185598)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】