説明

プリント基板積層体および接続端子連結体

【課題】端子支持台などの別部材を用いることなく、複数のプリント基板の各スルーホールに対して接続端子を確実に位置決め保持できると共に、半田付け部の高い接続信頼性を確保できる、新規な構造のプリント基板積層体を提供すること。
【解決手段】複数の接続端子16を、二枚のプリント基板12a,12bの間で、スルーホール18a,18bの整列方向に沿って整列配置すると共に、前記複数の接続端子16の中間部分に整列方向に屈曲された屈曲部24を形成し、整列方向で相互にずらされた前記スルーホール18a,18bに、前記接続端子16の端部22a,22bをそれぞれ挿通した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される電気接続箱に収容されて内部回路を構成する二枚のプリント基板間を接続端子で接続したプリント基板積層体に関する。また、本発明はそのようなプリント基板積層体の製造に用いられる接続端子連結体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に搭載される電気接続箱には、効率的な電力供給や信号授受を行うために、電気部品や電子部品を実装したプリント基板が収容されている。特に、近年では、車載電装品の急増に対応するために、二枚のプリント基板を絶縁セパレータを挟んで積層すると共に、それら基板間に挿通される複数の接続端子で夫々のプリント回路を接続したプリント基板積層体が収容されている。例えば、特開2009−26464号公報(特許文献1)に記載のものがそれである。これにより、より多くの電装品への電力や制御信号の分配を効率的に行えるようになっている。
【0003】
ところで、このようなプリント基板積層体においては、二枚のプリント基板の各スルーホールに対して複数の接続端子の両端部を安定して位置決め保持して半田付けすることが要求される。また、半田付けに際しては、プリント基板間に介在する絶縁セパレータの膨張により各接続端子の半田付け部に半田クラックが生じるおそれがあることから、その対策が必要となる。
【0004】
そこで、特許文献1の図1および図2に記載の如く、複数の接続端子を所定ピッチで整列保持する合成樹脂製の端子支持台を用いて、複数の接続端子を複数のプリント基板のスルーホールに対して確実に位置決め保持する構造が採用されている。また、各接続端子の中間位置に応力緩和用の屈曲部を設けて、半田クラックを防止することにより半田付け部の接続信頼性を確保することが行われている。
【0005】
ところが、特許文献1に記載の従来技術では、複数の接続端子を支持する端子支持台が別途必要となることから、部品点数が増加し、製造工程の複雑化やコスト高を招いていた。特に、端子支持台の長さ寸法が大きくなる程、半田付け時のプリント基板との熱膨張差による半田付け部への応力が大きくなって、端子支持台に起因した半田クラックが発生するおそれがあった。また、端子の中間部位に設けられた屈曲部がプリント基板の実装面上に大きく張り出して基板使用領域を占有してしまい、プリント基板の高密度化に対して改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−26464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、端子支持台を用いることなく複数のプリント基板の各スルーホールに対して接続端子を確実に位置決め保持できると共に、半田付け部の高い接続信頼性を確保できる、新規な構造のプリント基板積層体を提供することにある。
【0008】
また、本発明は、そのようなプリント基板積層体の製造に用いられる新規な接続端子連結体を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
プリント基板積層体に関する本発明の第一の態様は、非導電性の合成樹脂からなる絶縁セパレータを挟んで互いに離隔して平行に積層された二枚のプリント基板が、夫々に設けられた複数のスルーホールに対して両端部が挿通されて半田付けされた複数の接続端子により、相互に接続されているプリント基板積層体であって、前記複数の接続端子が前記複数のスルーホールの整列方向に沿って整列配置されていると共に、各前記複数の接続端子の中間部分に前記整列方向に屈曲された屈曲部が形成されており、各前記複数の接続端子の両端部が挿通される前記二枚のプリント基板のスルーホールが、前記整列方向で相互にずれていることを、特徴とする。
【0010】
本態様に従う構造とされたプリント基板積層体によれば、整列配置された複数の接続端子のそれぞれの中間部分に屈曲部が形成されており、二枚のプリント基板の各スルーホールに挿通される両端部が、互いに異なる直線上で延び出されている。これにより、各接続端子の両端部が、二枚のプリント基板の積層方向で非同一直線上に配設された各スルーホールにそれぞれ挿通されて半田付けされる。その結果、二枚のプリント基板のスルーホールへの挿通状態で、接続端子の両端部の回転中心軸が互いに異ならされることから、接続端子の回転を防止することが出来る。従って、端子支持台などの別部材を用いることなく、各接続端子の両端部を二枚のプリント基板の各スルーホールに対して確実に位置決め保持することが出来る。
【0011】
さらに、本態様によれば、接続端子の屈曲部が、複数の接続端子の整列方向に屈曲されている。これにより、両端部を含む接続端子の全体が、スルーホールの配列方向に延びる直線と二枚のプリント基板の積層方向に延びる直線とを含む単一の配列平面内に配設される。その結果、屈曲部がスルーホールの形成部分から大きく突出することを避けることが出来て、プリント基板の有効活用が可能となる。
【0012】
また、各接続端子の中間部分に屈曲部が形成されていることから、半田付け等の高温環境下で、絶縁セパレータの熱膨張によって二枚のプリント基板が相互に離隔される等した場合でも、接続端子に及ぼされる外力を屈曲部で吸収することが出来る。これにより、接続端子の半田付け部における半田クラックの発生を有利に防止することが出来て、半田付け部の高い接続信頼性を確保することが出来る。
【0013】
プリント基板積層体に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、各前記複数の接続端子の一端部に、一方の前記プリント基板のスルーホールへの挿入位置を規定する係止突部が設けられているものである。
【0014】
本態様によれば、各接続端子の縦アライメントを精度良く設定することが出来る。これにより、複数の接続端子の縦アライメントを容易に精度良く揃えることが出来る。なお、本態様において、より好ましくは、係止突部がスルーホールの外方開口縁部に係止されて非圧入で係止される。このようにすれば、接続端子をスルーホールに容易に挿入することが出来ると共に、スルーホールへの挿入に際してスルーホールを傷つけるおそれを軽減することが出来る。
【0015】
プリント基板積層体に関する本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記複数の接続端子の前記屈曲部が、各端子の長さ方向で同じ位置に設けられていると共に、前記端部の延出方向に対して30〜60°傾斜しているものである。
【0016】
本態様によれば、複数の接続端子の屈曲部が、二枚のプリント基板間において、プリント基板の積層方向で互いに等しい位置に配設されている。そして、端部の延出方向に対して屈曲部を鋭角に傾斜させたことによって、屈曲部を直角に屈曲させる場合に比して、隣接する接続端子をより接近させて配設することが出来る。その結果、複数の接続端子をより挟ピッチで整列配置することが出来て、多数の接続端子をスペース効率良く整列配置することが出来る。
【0017】
そして、屈曲部の端部の延出方向に対する傾斜角度を30〜60°の範囲内に設定したことによって、半田クラックの抑制効果と、挟ピッチの配列を高度に両立することが出来る。即ち、傾斜角度を30°以上に設定することによって、端部の延出方向に対する屈曲部の傾斜角度を適度に確保して、屈曲部における外力吸収効果を有効に発揮することが出来る。それと共に、傾斜角度を60°以下に設定することによって、配列方向で隣接する接続端子同士の接触のおそれを回避しつつ、挟ピッチの配列を可能とすることが出来る。
【0018】
接続端子連結体に関する本発明は、帯状の金属製キャリアに対して、複数の接続端子がその中心軸を前記キャリアの幅方向に向けた状態で前記キャリアの長さ方向に所定間隔を隔てて並列的に係止固定された接続端子連結体において、前記接続端子として前記第一〜第三の何れか1つの態様に記載の接続端子が用いられている一方、前記キャリアの幅方向一方側から各前記接続端子の屈曲部と一方の端部が突出されていると共に、前記キャリアの幅方向他方側から各前記接続端子の他方の端部が突出されており、前記複数の接続端子の各前記屈曲部が前記キャリアの長さ方向に屈曲するように配置されることにより、各前記複数の接続端子において、前記一方の端部と前記他方の端部が前記キャリアの長さ方向で相互にずらされていることを、特徴とする。
【0019】
本発明に従う構造とされた接続端子連結体は、多数の接続端子が係止固定された帯状の金属製キャリアがその長さ方向でリールに巻き取られると共に、リールから任意の数の接続端子が巻き出されて、金属製キャリアが切断されることで任意の数の接続端子が切り出される。そして、本発明によれば、金属製キャリアの長さ方向で各接続端子の屈曲部の曲げ方向が整列するように、各接続端子が金属製キャリアに係止固定されている。これにより、屈曲部が帯状の金属製キャリアが広がる平面に対して直交する高さ方向に突出することが回避されて、複数の接続端子と金属製キャリアを含む接続端子連結体が、全体として平坦な形状とされる。その結果、リールへの巻き取りや巻き出しに際して屈曲部の引っ掛かりを回避することが出来て、多数の接続端子を効率的且つコンパクトに保管することが出来る。
【0020】
そして、本態様に従う構造とされた接続端子連結体を用いて、前記の本発明に係るプリント基板積層体を製造するに際しては、接続端子の両端部が金属製キャリアの長さ方向で相互にずらされた状態で、複数の接続端子が連なって係止固定されている。従って、接続端子連結体を任意の端子数で切り出して、互いに離隔して平行に配置された二枚のプリント基板の夫々のスルーホールに挿通するだけで、各接続端子の両端部を、整列方向で位置がずらされたそれぞれのスルーホールに容易に挿通することが出来る。これにより、二枚のプリント基板間での接続端子の回転を有利に防止することが出来て、半田の接続信頼性を確保することが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明に従う構造とされたプリント基板積層体においては、接続端子の両端部が、整列方向で互いにずらされた二枚のプリント基板の各スルーホールにそれぞれ挿通されている。これにより、端子支持台等の別部材を用いることなく接続端子の回転を抑えて、スルーホールに対して確実に位置決めすることが出来、安定的な半田付けを行なうことが出来る。更に、絶縁セパレータの熱膨張等により二枚のプリント基板が互いに離隔される等した場合には、接続端子に形成された屈曲部で二枚のプリント基板の相対変位を吸収出来ることから、接続端子の半田付け部分における半田クラックの発生を抑えることが出来る。これにより、半田付け部の高い接続信頼性を確保することが出来る。また、屈曲部が複数の接続端子の整列方向に屈曲されていることにより、屈曲部が接続端子の整列方向から突出することが回避されており、優れたスペース効率をもって複数の接続端子を整列配置することが出来る。
【0022】
そして、本発明に従う構造とされた接続端子連結体によれば、キャリアに係止固定された接続端子の屈曲部が、キャリアの長さ方向に屈曲されている。これにより、リールへの巻き取りや巻き出しに際する屈曲部の引っ掛かりを抑えることが出来て、多数の接続端子を効率的且つコンパクトに保管することが出来る。更に、キャリアに係止固定された接続端子の両端部がキャリアの長さ方向で互いにずらされていることから、整列方向で互いにずらされた二枚のプリント基板のスルーホールへの挿通を容易に行なうことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態としてのプリント基板積層体を示す側面図。
【図2】図1に示したプリント基板積層体の要部拡大側面図。
【図3】図1に示したプリント基板積層体において、一方のプリント基板を取り外した状態の上面の要部拡大図。
【図4】図1に示したプリント基板積層体に用いられる接続端子の側面図。
【図5】図4に示した接続端子の図4におけるA矢視図。
【図6】本発明の一実施形態としての接続端子連結体を部分的に示す斜視図。
【図7】本発明のプリント基板積層体に用いられる異なる態様の接続端子を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
先ず、図1に、本発明の一実施形態としてのプリント基板積層体10を示すと共に、図2に、プリント基板積層体10の要部を拡大して示す。プリント基板積層体10は、例えば自動車の電気接続箱に収容されて、電気接続箱の内部回路を構成するものであり、一対のプリント基板12a,12bが絶縁セパレータ14を挟んで積層されていると共に、複数の接続端子16で互いに電気的に接続された構造とされている。
【0026】
一対のプリント基板12a,12bは従来公知のものであり、絶縁板にプリント配線が形成されたものである。図3にも示すように、プリント基板12a,12bには、それぞれ、複数のスルーホール18a,18bが所定の等間隔を隔てて、一直線上に整列して形成されている。これらスルーホール18a,18bは、プリント基板12a,12bの周端部において、プリント基板12a,12bの端縁部20の延出方向に沿って整列されている。また、プリント基板12aにおけるスルーホール18aの配列ピッチと、プリント基板12bにおけるスルーホール18bの配列ピッチは互いに等しくされている。これにより、プリント基板12a,12bの積層状態において、各スルーホール18aと各スルーホール18bが一対ずつ、プリント基板12a,12bの積層方向(図2における上下方向)に延びる同一直線上に位置されるようになっている。なお、本実施形態におけるスルーホール18a,18bの内径寸法は、それぞれ1mmに設定されている。また、各スルーホール18a,18bの配列ピッチは2.2mmに設定されている。
【0027】
一方、絶縁セパレータ14は、非導電性の合成樹脂から形成されており、所定の厚さ寸法(図1および図2中、上下方向寸法)を有する略矩形ブロック形状とされている。絶縁セパレータ14は、一対のプリント基板12a,12bのそれぞれにおける他方への対向面に重ね合わされて、必要に応じて接着等で固定されることにより、両プリント基板12a,12bの間に介在される。これにより、両プリント基板12a,12bの積層方向の離隔距離が絶縁セパレータ14で規定されて、両プリント基板12a,12bが互いに離隔して平行に積層される。また、プリント基板12a,12bに積層方向の外側から電気部品が接続されるに際して、絶縁セパレータ14がプリント基板12a,12bを支持することによって、プリント基板12a,12bの撓み変形が防止されるようになっている。
【0028】
これら一対のプリント基板12a,12bは、複数の接続端子16で互いに電気的に接続されている。複数の接続端子16は、何れも同形状とされている。図4および図5に、接続端子16を示す。接続端子16は、銅や鉄等の導電性金属材料からなる母材の全表面に亘って、錫や金等の導電性金属材料からなるめっき層が被着された金属線材が、所定長さで切断されて形成されている。接続端子16の断面形状は、正方形や長方形等の矩形状や多角形状、楕円を含む円形状や、その他任意の形状が適宜に採用可能である。本実施形態における接続端子16は、先細テーパ形状とされた長さ方向(図4および図5中、上下方向)の両端縁部や後述する係止突部26の形成部分を除く略全長に亘って、一辺が0.64mmの略一定の正方形断面形状とされている。
【0029】
接続端子16の長さ方向において、両端部22a,22bの間で、一方の端部22b側にやや偏倚した位置には、屈曲部24が形成されている。屈曲部24は接続端子16を構成する切断線材がプレス加工等で屈曲されることにより、接続端子16に一体形成されている。屈曲部24はクランク状の屈曲部とされており、端部22aと端部22bは、屈曲部24の両端部から互いに反対方向に、且つ平行に延び出されている。また、屈曲部24は、複数の接続端子16の整列方向(図4中、左右方向)に延びる直線と、接続端子16の軸方向(図4中、上下方向)に延びる直線とを含む平面内で屈曲されている。これにより、両端部22a,22bは、図4に示すように、接続端子16の整列方向(図4中、左右方向)において互いにずれた異なる直線上に延び出されている一方、図5に示すように、整列方向視において、同一直線上に延び出されている。本実施形態において、端部22a,22bは、接続端子16の整列方向での離隔距離がスルーホール18a,18bの配列ピッチの1つ分と等しくされている。
【0030】
互いに平行に延び出された両端部22a,22bのそれぞれの延出方向に対する屈曲部24の傾斜角度は、平行線の錯角にあたり、互いに等しい。両端部22a,22bのそれぞれの延出方向に対する屈曲部24の傾斜角度:αは、90°未満の鋭角に設定されており、好適には、30°〜60°の範囲内、より好適には、45°程度に設定されている。傾斜角度:αを30°以上に設定することによって、端部22a,22bに対する屈曲部24の屈曲量を適度に確保して、後述する応力吸収効果を有効に得ることが出来ると共に、傾斜角度:αを60°以内に設定することによって、複数の接続端子16の挟ピッチの配列を可能とすることが出来る。
【0031】
また、接続端子16において、一方の端部22bには、一対の係止突部26,26が形成されている。これら係止突部26、26は互いに同形状とされている。係止突部26は、端部22bの軸直角方向(図4中、左右方向)の外方に突出する突部とされている。特に本実施形態における係止突部26は、端部22bのスルーホール18bへの挿通方向の前方(図4中、下方)から後方(図4中、上方)に向かって、次第に突出高さが大きくなるテーパ形状とされている。係止突部26,26において、最も突出高さが大きくされた挿通方向の後端縁部(図4中、上端縁部)によって形成される幅寸法:wは、スルーホール18bの内径寸法よりも僅かに大きくされており、より好適には、スルーホール18bにおけるランド28(図3参照)の径方向外方に突出することの無いように、ランド28の外径寸法よりも小さくされる。
【0032】
なお、係止突部26,26は、好適には、接続端子16を形成する切断線材に対して、長さ方向で部分的に一度のプレス或いは複数回のタタキ加工等の鍛圧加工が施されて切断線材が塑性変形されることによって形成される。このようにすれば、切断線材の全周面に被着されためっき層を係止突部26に残すことが出来て、半田濡れ性を確保することが出来る。これにより、係止突部26は端部22bにおいて窪んで形成されており、係止突部26において突出方向に直交する両側(図5における左右両側)には、窪み部30,30がそれぞれ形成されている。これら窪み部30,30は端部22bのスルーホール18bへの挿通状態で、スルーホール18b内に位置されるようになっており、窪み部30,30に半田が入り込むことによって、より安定的な半田付けが行なえるようになっている。
【0033】
このような接続端子16の複数を用いたプリント基板積層体10は、以下のようにして組み付けられる。先ず、プリント基板12bの各スルーホール18bに対して、プリント基板12aへの対向面側から接続端子16の端部22bが挿通される。端部22bは、スルーホール18bの内周面に対して非接触状態で遊挿される。そして、係止突部26,26がスルーホール18bの外方開口縁部を形成するランド28に係止されることによって、接続端子16のスルーホール18bへの挿入端位置が規定される。
【0034】
また、プリント基板12bにおけるプリント基板12aとの対向面上には、接続端子16の挿通の前或いは後に、絶縁セパレータ14が載置されて、必要に応じて接着等でプリント基板12bに固定される。
【0035】
次に、プリント基板12bに対して、他方のプリント基板12aが重ね合わされる。これにより、プリント基板12bの各スルーホール18bにそれぞれ挿通された複数の接続端子16における端部22aが、プリント基板12aの各スルーホール18aに挿通される。端部22aは、各スルーホール18aの内周面に対して非接触状態で遊挿される。また、プリント基板12aのプリント基板12bへの対向面が、絶縁セパレータ14に重ね合わされて、必要に応じて接着等で固定される。
【0036】
そして、プリント基板12aにおいて積層方向の外方に突出された接続端子16の端部22aがプリント基板12aに半田付けされることにより、プリント基板12aに設けられた図示しないプリント配線と接続端子16が電気的に接続される。同様に、プリント基板12bにおいて積層方向の外方に突出された接続端子16の端部22bがプリント基板12bに半田付けされることにより、プリント基板12bに設けられた図示しないプリント配線と接続端子16が電気的に接続される。これにより、両プリント基板12a,12bが複数の接続端子16で互いに電気的に接続されて、プリント基板積層体10が形成される。
【0037】
このようなプリント基板積層体10においては、図2にも示したように、複数の接続端子16が、スルーホール18a,18bの整列方向に沿って整列配置される。そして、各接続端子16において、屈曲部24が形成されていることにより、端部22a,22bが、整列方向で互いにずれて位置するスルーホール18a,18bにそれぞれ挿通されている。特に本実施形態においては、端部22a,22bの接続端子16の整列方向での離隔距離が、プリント基板12a,12b上にそれぞれ整列して形成された複数のスルーホール18a,18bの整列間隔と等しくされており、端部22aが挿通されるスルーホール18aと、端部22bが挿通されるスルーホール18bは、整列方向で互いに1ピッチ分だけずらされている。
【0038】
これにより、接続端子16における両端部22a,22bの中心軸が互いに異ならされることから、別体の端子支持台などを用いることなく、プリント基板12a,12bへの組み付け状態における接続端子16の回転を抑えて、各スルーホール18a,18bに対して確実に位置決めすることが出来る。その結果、接続端子16の半田付けをより安定的に行なうことが出来る。特に本実施形態においては、両端部22a,22bを各スルーホール18a,18bに遊挿することによって、スルーホール18a,18bやプリント基板12a,12bの損傷のおそれを軽減しつつ、遊挿される接続端子16をスルーホール18a,18bに確実に位置決めすることが出来る。
【0039】
また、複数の接続端子16の屈曲部24は、それら接続端子16の整列方向に屈曲されている。これにより、図3に示したように、屈曲部24を含む接続端子16の全体が、接続端子16の整列方向に延びる直線とプリント基板12a,12bの積層方向に延びる直線とを含む単一の配列平面内に配設される。その結果、複数の接続端子16をスペース効率良く整列配置することが出来る。特に本実施形態においては、各スルーホール18a,18bがプリント基板12a,12bの周端部でプリント基板12a,12bの端縁部20に沿って整列されていることから、プリント基板12a,12bの中央部分の配設領域をより有効に確保することが出来る。
【0040】
さらに、屈曲部24の傾斜角度:αが鋭角に設定されていると共に、複数の接続端子16の各屈曲部24が接続端子16の長さ方向(図2中、上下方向)で互いに等しい位置に設けられている。これにより、各接続端子16の屈曲部24が接続端子16の整列方向で互いに平行に、プリント基板12a,12bの積層方向に対して傾斜して延び出される。その結果、屈曲部24が直角に屈曲される場合に比して、整列方向で隣接する接続端子16,16をより接近して配設することが出来る。これにより、より挟ピッチで複数の接続端子16を整列配置することが出来て、多数の接続端子16を、よりスペース効率良く整列配置することが出来る。また、接続端子16に形成された係止突部26,26で挿入端位置を規定することによって、各屈曲部24をそれぞれ精度良く位置決めすることが出来る。
【0041】
そして、接続端子16の中間部分に屈曲部24が形成されていることによって、プリント基板積層体10が半田付け等の高温環境に晒されて、絶縁セパレータ14の熱膨張等の変形によって両プリント基板12a,12bの離隔距離が変化した場合でも、屈曲部24で両端部22a,22bの半田付け部に及ぼされる外力を吸収することが出来る。これにより、両端部22a,22bの半田付け部における半田クラックの発生を軽減することが出来、半田付け部における高い接続信頼性を確保することが出来る。
【0042】
次に、図6に、前記プリント基板積層体10を製造するに際して好適に用いられる、本発明の一実施形態としての接続端子連結体40を示す。接続端子連結体40は、金属製のキャリア42に、複数の前記接続端子16が係止固定された構造とされている。
【0043】
キャリア42は、黄銅等からなる薄肉の金属板にプレス打ち抜き加工や屈曲加工等が施されて形成された、帯状の一体成形品とされている。キャリア42には、複数の端子連結部44がキャリア42の長さ方向(図6中、左右方向)に連結状態で並設されている。端子連結部44においてキャリア42の長さ方向に直交する幅方向両端縁部には、一対の把持片46,46がそれぞれ一体形成されている。把持片46は、帯状のキャリア42が広がる平面に対して直交する高さ方向に立ち上がり、高さ方向の外方に開口する開口部48が形成されたコの字形状の突片とされている。そして、両把持片46,46の開口部48が、端子連結部44の幅方向で同一直線上に位置されている。これら把持片46,46は、キャリア42を形成する金属板において幅方向両側に突出するコの字形状の突片が屈曲されて立ち上げられることにより、キャリア42に一体成形されている。
【0044】
さらに、端子連結部44には、幅方向で一方の把持片46側にやや偏倚した位置に、係止片50が一体形成されている。係止片50は、把持片46,46における開口部48,48を結んで端子連結部44の幅方向に延びる配列直線から外れた位置で、把持片46,46の立ち上がり方向と同じ高さ方向に突出すると共に、その突出端縁部が開口部48,48の配列直線側に向けて突出された逆L字形状とされている。係止片50は、キャリア42を形成する金属板が切り起こされることによって、キャリア42に一体形成されている。
【0045】
また、キャリア42の幅方向中間部分には、パイロット穴52が貫設されている。パイロット穴52は、キャリア42の長さ方向で隣接する一対の端子連結部44,44の間で、これら一対の端子連結部44,44に跨って形成されている。このパイロット穴52に図示しない送り歯車の歯などが係合されることによって、キャリア42の長さ方向での送り出しが可能とされている。
【0046】
そして、これら把持片46,46、係止片50、パイロット穴52が、キャリア42の長さ方向で所定間隔毎に複数形成されることによって、キャリア42は、複数の端子連結部44が連結状態で長さ方向に並設された一体成形品とされている。なお、把持片46,46および係止片50は、キャリア42の長さ方向で、プリント基板12a,12bにおける複数の各スルーホール18a,18bの整列間隔と等しい間隔毎に形成されている。また、キャリア42は薄肉の金属板から形成されており、キャリア42は、長さ方向で隣接する各端子連結部44,44の連結部分において、幅方向に延びる直線:l上で屈曲および切断が可能とされている。
【0047】
このような構造とされたキャリア42の各端子連結部44には、前記接続端子16が係止固定される。接続端子16は、屈曲部24から端部22aの間の直線状部分が、把持片46,46の開口部48,48に嵌め入れられると共に、把持片46,46の間で、開口部48,48の開口方向と反対側から係止片50で係止される。これにより、複数の接続端子16が、把持片46,46と係止片50で挟まれて各端子連結部44にそれぞれ係止固定される。
【0048】
接続端子16は、把持片46,46が端子連結部44の幅方向に延びる直線上に配設されていることによって、その中心軸をキャリア42の幅方向に向けた状態でキャリア42に係止固定されている。そして、複数の各端子連結部44の把持片46,46がキャリア42の長さ方向で、プリント基板12a,12bにおける各スルーホール18a,18bの配列間隔と等しい間隔毎に形成されていることから、各端子連結部44のそれぞれに係止固定された複数の接続端子16は、キャリア42の長さ方向で、各スルーホール18a,18bの配列間隔と等しい間隔をもって並列的に配設されている。
【0049】
そして、端子連結部44への係止固定状態において、接続端子16は、一方の端部22aが、係止片50に近位の把持片46からキャリア42の幅方向外方に突出されていると共に、他方の端部22bと屈曲部24が、係止片50に遠位の把持片46からキャリア42の幅方向外方に突出されている。更に、接続端子16は、屈曲部24が、キャリア42の広がる平面内でキャリア42の長さ方向に屈曲するように端子連結部44に係止固定されている。即ち、複数の接続端子16は、プリント基板12a,12bへの組付状態における整列状態でキャリア42の長さ方向に整列されて係止固定されている。これにより、屈曲部24を挟んで形成された一対の端部22a,22bは、キャリア42の長さ方向で相互にずらされて位置されている。前述のように、一対の端部22a,22bは、接続端子16の整列方向での離隔距離が、スルーホール18a,18bの1ピッチ分とされていることから、端部22a,22bは、キャリア42の長さ方向でスルーホール18a,18bの1ピッチ分だけずらされている。
【0050】
このような構造とされた接続端子連結体40は、長さ方向で隣接する各端子連結部44、44の連結部分が幅方向に延びる直線:l上で屈曲されて、図示しないリール等に巻き取られて保管される。また、所望する本数の接続端子16をリールから巻き出して、端子連結部44,44の連結部分で切断することによって、任意の数の接続端子16が切り出される。そして、本実施形態によれば、屈曲部24がキャリア42の長さ方向で屈曲されていることにより、キャリア42の広がる平面からの屈曲部24の突出が回避されており、接続端子16を含む接続端子連結体40の全体が、単一平面内で広がる略平坦形状とされる。これにより、リールへの巻き取りや巻き出しに際して屈曲部24の引っ掛かりを回避することが出来て、複数の接続端子16を効率的且つコンパクトに保管することが出来る。
【0051】
このような接続端子連結体40を用いて前記プリント基板積層体10を製造する際には、接続端子16をキャリア42から一つずつ取り外して各別にプリント基板12bのスルーホール18bに挿通しても良いが、各接続端子16のキャリア42上での配列ピッチがスルーホール18bの配列ピッチと等しくされており、両端部22a,22bがキャリア42の長さ方向で相互にずらされていることから、所望の本数だけリールから巻き出し、キャリア42の幅方向外側に突出された複数の接続端子16の端部22aを纏めて冶具で挟んで、キャリア42上での配列ピッチを維持しつつキャリア42から取り外すことによって、複数の接続端子16を各スルーホール18bに一度に挿通することが出来る。これにより、組付効率の向上を図ることが出来る。また、キャリア42を所望の本数分で切断して、キャリア42への連結状態を維持しつつ複数の接続端子16を各スルーホール18bに一度に挿通した後に、キャリア42を取り外すことも可能である。このようにすれば、キャリア42で各接続端子16の配列ピッチが維持されることから、各スルーホール18bへの挿通をより安定的に行なうことが出来る。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、接続端子における両端部の整列方向での離隔距離は、前記実施形態の如きスルーホールの1ピッチ分に限定されず、屈曲部の傾斜角度や長さ寸法等を調節することによって、2ピッチ分以上の離隔距離を設定することも可能である。また、両端部の間で屈曲部を複数箇所に形成する等しても良い。
【0053】
さらに、前記接続端子16における係止突部26は必ずしも必要ではないが、
その具体的形状も限定されることはなく、前記実施形態の如きテーパ形状ではなく、例えば、接続端子16の軸直角方向に突出する矩形板形状等でも良い。
【0054】
また、図7に示すように、導電性金属板60をプレス打ち抜き加工等することによって、接続端子62を形成することも可能である。なお、図7において、前記実施形態と同様の構造とされた部位については、図中に前記実施形態と同一の符号を付する。このようにして形成された接続端子62は、長方形等の扁平断面形状を有している。このことから明らかなように、本発明における接続端子の断面形状は、扁平断面形状等であっても良い。なお、金属板60を打ち抜いて接続端子62を形成する場合には、屈曲部24は、金属板60の平面上で屈曲されている。そして、複数の接続端子62が、扁平断面の長辺方向(図7中、左右方向)で所定間隔毎に整列配置されて、図示しないプリント基板のスルーホールに挿通されて半田付けされることとなる。
【0055】
また、複数の接続端子を係止固定するキャリアの具体的形状も、前記実施形態の形状に限定されるものではなく、例えば前記把持片46,46を、キャリア42を形成する金属板から切り起こして形成しても良いし、パイロット穴52を、把持片46,46や係止片50の配列ピッチよりも大きな配列ピッチで形成する等しても良い。
【符号の説明】
【0056】
10:プリント基板積層体、12a,b:プリント基板、14:絶縁セパレータ、16,62:接続端子、18a,b:スルーホール、22a,b:端部、24:屈曲部、26:係止突部、40:接続端子連結体、42:キャリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の合成樹脂からなる絶縁セパレータを挟んで互いに離隔して平行に積層された二枚のプリント基板が、夫々に設けられた複数のスルーホールに対して両端部が挿通されて半田付けされた複数の接続端子により、相互に接続されているプリント基板積層体であって、
前記複数の接続端子が前記複数のスルーホールの整列方向に沿って整列配置されていると共に、各前記複数の接続端子の中間部分に前記整列方向に屈曲された屈曲部が形成されており、各前記複数の接続端子の両端部が挿通される前記二枚のプリント基板のスルーホールが、前記整列方向で相互にずれていることを特徴とするプリント基板積層体。
【請求項2】
各前記複数の接続端子の一端部に、一方の前記プリント基板のスルーホールへの挿入位置を規定する係止突部が設けられている請求項1に記載のプリント基板積層体。
【請求項3】
前記複数の接続端子の前記屈曲部が、各端子の長さ方向で同じ位置に設けられていると共に、前記端部の延出方向に対して30〜60°傾斜している請求項1又は2に記載のプリント基板積層体。
【請求項4】
帯状の金属製キャリアに対して、複数の接続端子がその中心軸を前記キャリアの幅方向に向けた状態で前記キャリアの長さ方向に所定間隔を隔てて並列的に係止固定された接続端子連結体において、
前記接続端子として請求項1〜3の何れか1項に記載の接続端子が用いられている一方、前記キャリアの幅方向一方側から各前記接続端子の屈曲部と一方の端部が突出されていると共に、前記キャリアの幅方向他方側から各前記接続端子の他方の端部が突出されており、前記複数の接続端子の各前記屈曲部が前記キャリアの長さ方向に屈曲するように配置されることにより、各前記複数の接続端子において、前記一方の端部と前記他方の端部が前記キャリアの長さ方向で相互にずらされていることを特徴とする接続端子連結体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−114159(P2011−114159A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269294(P2009−269294)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】