説明

プリント配線板用基板、プリント配線板用基板の製造方法

【課題】製造に高価な真空設備を必要とせず、よってサイズ的な制限を受けることなく、また有機物接着剤を使用することなく、且つ基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いて、高密度、高性能、十分な薄肉化を可能とすると共に、酸化雰囲気(特に高温の酸化雰囲気)において絶縁性の基材と導電層との界面における酸化物の成長を抑制できることで、絶縁性の基材とめっき層との剥離を防止でき、更にエッチング性の良好なプリント配線板用基板及びその製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】絶縁性の基材10の表面にめっき層30を積層してなるプリント配線板用基板1であって、前記絶縁性の基材10とめっき層30との界面にめっき層30の酸化を抑制する金属粒子Lを分散付着させてあることを特徴とするプリント配線板用基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用基板、プリント配線板用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の基板、即ちプリント配線板用基板は、一般に、耐熱性高分子フィルムと銅箔とを有機物の接着剤で接合する方法や、銅箔面上に樹脂溶液をコート、乾燥等することにより耐熱高分子フィルム膜を積層する方法で作製されている。
また最近においては、ますますプリント配線板の高密度化、高性能化が要求されるようになってきている。
このような高密度化、高性能化の要求を満たすプリント配線板用基板として、有機物接着剤層がなく、しかも導電層(銅箔層)が十分に薄肉とされたプリント配線板用基板が求められている。
プリント配線板用基板に対する上記の要求に対して、例えば特開平9−136378号公報には、耐熱性高分子フィルムに接着剤を介することなく銅薄層を積層した銅薄膜基板が開示されている。この銅薄膜基板では、耐熱性絶縁基材の表面にスパッタリング法を用いて銅薄膜層を第一層として形成し、その上に電気めっき法を用いて銅厚膜層を第二層として形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−136378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の銅薄膜基板では、有機物の接着剤を使用しない点、導電層(銅箔層)を薄くできる点等において、高密度、高性能プリント配線の要求に沿う基板であると言える。
その一方、スパッタリング法を用いて第一層を形成するようにしているため、真空設備を必要とし、設備の建設、維持、運転等、設備コストが高くなる。また使用する基材の供給、薄膜形成、基材の収納等の全てを真空中で取り扱わなければならない。また設備面において、基板のサイズを大きくすることに限界がある等の問題がある。
また従来、耐熱性絶縁基材の表面にスパッタリング法を用いて導電層(銅薄膜層)を形成してなるプリント配線板用基板においては、高温の酸化雰囲気において耐熱性絶縁基材と導電層(銅薄膜層)との界面に酸化銅が均一に成長し、導電層(銅薄膜層)の剥離が生じ易いという問題がある。
このような問題に対して、耐熱性絶縁基材と導電層(銅薄膜層)との界面に、酸化防止効果の高い金属物質を付着させることでシード層(いわゆるバリア層)を形成するものがある。
しかしこのようなシード層を形成するものにおいては、スパッタリング法を用いて導電層(銅薄膜層)を形成する場合、耐熱性絶縁基材上に均一なシード層を付着させるためにはバリア効果の高い金属物質を均一に付着させる必要がある。このためバリア効果の高い金属物質が難エッチング層を形成することになり、エッチング時におけるシード層の除去に時間がかかると共に、製造工程が増えるなどの問題がある。
【0005】
そこで本発明は上記従来技術における問題点を解消し、製造に高価な真空設備を必要とせず、よってサイズ的な制限を受けることなく、また有機物接着剤を使用することなく、且つ基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いて、高密度、高性能、十分な薄肉化を可能とすると共に、酸化雰囲気(特に高温の酸化雰囲気)において絶縁性の基材と導電層との界面における酸化物の成長を抑制できることで、絶縁性の基材とめっき層との剥離を防止でき、更にエッチング性の良好なプリント配線板用基板及びその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリント配線板用基板は、絶縁性の基材の表面に銅を積層してなるプリント配線板用基板であって、前記絶縁性の基材と銅との界面に銅層の酸化を抑制する金属粒子を分散付着させてあることを第1の特徴としている。
【0007】
上記本発明の第1の特徴によれば、プリント配線板用基板は、絶縁性の基材の表面に銅を積層してなるプリント配線板用基板であって、前記絶縁性の基材と銅との界面に銅層の酸化を抑制する金属粒子を分散付着させてあることから、酸化雰囲気(特に高温の酸化雰囲気)において絶縁性の基材と銅との界面における銅層の酸化を抑制することができる。よって銅層の酸化に伴う絶縁性の基材と銅層との剥離を防止することができる。従って信頼性の高いプリント配線板用基板とすることができる。
【0008】
また本発明のプリント配線板用基板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記金属粒子は、少なくともNi粒子を含むものであることを第2の特徴としている。
【0009】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記金属粒子は、少なくともNi粒子を含むものであることから、不動態皮膜を生成しないNi粒子を金属粒子として用いることで、エッチング性の良好なプリント配線板用基板とすることができる。
【0010】
また本発明のプリント配線板用基板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記金属粒子は、Ni粒子とCu粒子とからなることを第3の特徴としている。
【0011】
上記本発明の第3の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記金属粒子は、Ni粒子とCu粒子とからなることから、Cu粒子を含ませることにより、絶縁性の基材と銅との界面にNi粒子を均一に分散付着させることができる。
【0012】
また本発明のプリント配線板用基板の製造方法は、絶縁性の基材の表面に金属粒子を含む導電性インクを塗布する導電性インク塗布工程と、該導電性インク塗布工程の後に、熱処理を行う熱処理工程と、該熱処理工程の後に、電解銅めっきを行う電解めっき工程とを少なくとも備えることを第4の特徴としている。
【0013】
上記本発明の第4の特徴によれば、プリント配線板用基板の製造方法は、絶縁性の基材の表面に金属粒子を含む導電性インクを塗布する導電性インク塗布工程と、該導電性インク塗布工程の後に、熱処理を行う熱処理工程と、該熱処理工程の後に、電解銅めっきを行う電解めっき工程とを少なくとも備えることから、導電性インク塗布工程により、絶縁性の基材の表面に金属粒子を含む導電性インクを塗布することができる。また熱処理工程により、導電性インク中の不要な有機物等を除去して金属粒子を確実に絶縁性の基材上に固着させることができる。また電解めっき工程により、厚み調整を正確に行うことができると共に、比較的短時間で所定の厚みとなるめっき層を形成することができる。またプリント配線板用基板は、導電性インクの塗布と熱処理とめっきによって製造がされるので、高価な真空設備を不要とし、また有機物接着剤を用いることなくプリント配線板用基板を製造することができる。また基材の材質に制限されることなく、種々の基材を用いることができる利点がある。勿論、ナノオーダーの金属粒子を用いることにより、十分に緻密で均一な導電性インクを塗布でき、その上にめっき層を形成することができ、欠陥のない緻密で均質なプリント配線板用基板を製造することができる。
また絶縁性の基材とめっき層との間に金属粒子を含む導電性インクを塗布することで、酸化雰囲気(特に高温の酸化雰囲気)においてめっき層の酸化を抑制することができる。よってめっき層の酸化に伴う絶縁性の基材とめっき層との剥離を防止することができる。従って信頼性の高いプリント配線板用基板とすることができる。
よって以上により、十分に薄い導電層を有する高密度、高性能、高信頼性のプリント配線の形成に適したプリント配線板用基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプリント配線板用基板及びその製造方法によれば、製造に高価な真空設備を必要とせず、よってサイズ的な制限を受けることなく、また有機物接着剤を使用することなく、且つ基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いて、高密度、高性能、十分な薄肉化を可能とすると共に、酸化雰囲気(特に高温の酸化雰囲気)において絶縁性の基材と導電層との界面における酸化物の成長を抑制できることで、絶縁性の基材とめっき層との剥離を防止でき、更にエッチング性の良好なプリント配線板用基板及びその製造方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板を説明する斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板の構造を簡略化して説明する断面図である。
【図3】従来のプリント配線板用基板の構造を簡略化して説明する断面図で、(a)はシード層を備えないプリント配線板用基板を示す図、(b)はシード層を備えるプリント配線板用基板を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板及び該プリント配線板用基板を用いたプリント配線板の製造方法を説明する断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板及び該プリント配線板用基板を用いたプリント配線板の製造方法を説明する断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板の変形例の構造を簡略化して説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の図面を参照して、本発明に係るプリント配線板用基板とその製造方法及び本発明に係るプリント配線板用基板を用いたプリント配線板とその製造方法についての実施形態を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
【0017】
まず図1〜図5を参照して、本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板とその製造方法及び本発明に係るプリント配線板用基板を用いたプリント配線板とその製造方法について説明する。
まず図1を参照して、本発明に係るプリント配線板用基板1を説明する。
プリント配線板用基板1は、絶縁性の基材の表面に銅を積層してなるプリント配線板用の基板であり、フィルム若しくはシートからなる絶縁性の基材10と、第1導電層たる導電性インクからなる導電性インク層20と、第2導電層たる銅からなるめっき層30とから構成される。
【0018】
前記絶縁性の基材10は導電性インク層20を積層するための基台となるもので、薄いものはフィルムとして、また厚いものはシートとして使用される。
また絶縁性の基材10の材料としては、例えばポリイミド、ポリエステル等のフレキシブル材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、テフロン(登録商標)、ガラス基材等のリジッド材、硬質材料と軟質材用とを複合したリジッドフレキシブル材を用いることが可能である。
本実施形態では、絶縁性の基材10としてポリイミドフィルムを用いている。
【0019】
前記導電性インク層20は、銅からなるめっき層30の下地層を形成すると共に、酸化銅の成長を抑制させる効果を備える導電層であり、絶縁性の基材10の表面に金属粒子を含む導電性インクを塗布することで形成される。
なお本実施形態においては、金属粒子として、ニッケル(Ni)を用いている。
このように金属粒子としてニッケル(Ni)を用いる構成とすることで、ニッケル(Ni)は不動態皮膜を生成しないことから、図2上段に示すように、絶縁性の基材10と銅で形成されるめっき層30との界面Kに金属粒子L(ニッケル粒子)を分散付着させることができる。
よって酸化雰囲気(特に高温の酸化雰囲気)において、絶縁性の基材10とめっき層30との界面Kでのめっき層30の酸化を抑制することができる。
ここで「高温の酸化雰囲気において」とは、プリント配線板用基板1の製造段階、例えば乾燥或いは焼成等の熱処理工程や、プリント配線板用基板1の使用段階、例えばプリント配線板用基板1を用いたプリント配線板の製造段階等、プリント配線板用基板1が高温の酸化雰囲気におかれる様々な状況をさすものである。
【0020】
より具体的には、図2上段に示すように、絶縁性の基材10とめっき層30との界面Kに金属粒子L(ニッケル粒子)を分散付着させたプリント配線板用基板1を高温の酸化雰囲気においた場合、図2下段に示すように、界面Kにおいて金属粒子Lが存在しない部分のみに酸化銅層Mが成長する。つまり界面Kにおいて酸化銅層Mが均一に成長することを抑制できる。よってこの不均一な酸化銅層Mがアンカー効果となり、絶縁性の基材10とめっき層30との密着力の低下を防止することができる。
従って絶縁性の基材10とめっき層30との剥離を効果的に防止することができる。よって信頼性の高いプリント配線板用基板1とすることができる。
また図2に示すように、金属粒子たるニッケル(Ni)は粒子形状のまま界面Kに存在することから、単位体積あたりの表面積を大きくすることができ、プリント配線板用基板1を用いてプリント配線板を形成する際等には良好なエッチング性を実現することができる。
【0021】
つまり図3(a)の上段に示すように、従来、絶縁性の基材10の表面にスパッタリング法を用いて導電層たるめっき層30を銅で形成してなるプリント配線板用基板2においては、図3(a)の下段に示すように、高温の酸化雰囲気において絶縁性の基材10とめっき層30との界面Kに酸化銅層Mが均一な層状に成長し、酸化銅層Mが起点となり、めっき層30の剥離が生じ易いという問題があった。
このような問題に対して、図3(b)に示すように、絶縁性の基材10と導電層たるめっき層30との界面Kに、酸化防止効果の高い金属物質(例えばクロム(Cr)等)をスパッタリング法を用いて付着させることで、シード層N(いわゆるバリア層)を形成するものがあった。
しかしこのようなスパッタリング法を用いてシード層Nを形成する場合、絶縁性の基材10上に均一なシード層Nを形成するためにはバリア効果の高い金属物質を絶縁性の基材10上に均一に付着させる必要があった。このためバリア効果の高い金属物質が難エッチング層を形成することになり、プリント配線板用基板2を用いてプリント配線板を形成する際等のエッチング工程においてシード層Nの除去に時間がかかると共に、製造工程が増えるなどの問題があった。
これに対して本発明に係るプリント配線板用基板1によれば、高温の酸化雰囲気における酸化物の成長に伴うめっき層30の剥離防止と、エッチング工程における良好なエッチング性を同時に実現することができる。よって信頼性に優れると共に、加工性に富んだプリント配線板用基板1とすることができる。
また導電性インクの塗布層とすることで、絶縁性の基材10の表面に、真空設備を必要とすることなく、容易に導電性インク層20を形成することができる。よって導電性インク層20をめっき層30の下地層とすることができ、めっき層30の形成を容易なものとすることができる。
【0022】
なお導電性インク層20は、導電性インクの塗布後に、乾燥或いは焼成等の熱処理を施したものを含むものとする。
導電性インクは、要するに、それを絶縁性の基材10の表面に塗布することで、導電性物質を積層できるものであればよい。
本実施形態では、導電性インクとして、導電性をもたらす導電性物質としての金属粒子Lと、その金属粒子Lを分散させる分散剤と、分散媒とを含むものを用いる。このような導電性インクを用いて塗布することで、微細な金属粒子Lを含む皮膜が絶縁性の基材10の表面に形成される。
【0023】
前記導電性インクを構成する金属粒子Lとしては、本実施形態においては、ニッケル(Ni)用いる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、ニッケル(Ni)の他、銅(Cu)、チタン(Ti)、バナジウム(V)の何れか1又は2以上の元素及びその酸化物を用いる構成とすることができる。
【0024】
前記導電性インクに含まれる金属粒子Lの大きさは、粒子径が1〜500nmのものを用いる。この粒子径は通常の塗装用のものに比べて著しく小さく、緻密な導電薄膜を得るのに適したものとされている。粒子径が1nm未満の場合は、インク中での分散性、安定性が必ずしも良くないのと、粒子が小さすぎて積層に係る塗装に手間がかかる。また500nmを超える場合は、沈殿し易く、また塗布した際にムラが出易くなる。分散性、安定性、ムラ防止等を考慮して、好ましくは30〜100nmがよい。
【0025】
また金属粒子Lの単位面積あたり(1mmあたり)の粒子数としては、金属粒子Lの粒子径を10nmとする場合は、1×10個〜1×1011個とすることが望ましい。また金属粒子Lの粒子径を50nmとする場合は、5×10個〜4.6×10個とすることが望ましい。また金属粒子Lの粒子径を100nmとする場合は、1×10個〜1×1010個とすることが望ましい。
つまり金属粒子Lが球形であると仮定した場合、被覆率が0.1〜10%となることが望ましい。更に好適には被覆率が0.2〜3%となることが望ましい。
【0026】
導電性インクに含まれる金属粒子Lは、チタンレドックス法で得ることができる。ここで、チタンレドックス法とは「金属元素のイオンを、3価のTiイオンが4価に酸化する際の酸化還元作用によって還元し、金属粒子を析出させる方法である」と定義する。チタンレドックス法で得られる金属粒子は、粒径が小さく、揃っており、また形状を球形又は粒状にすることができるので、導電性インク層20を薄くて緻密な層に形成することができる。
【0027】
前記めっき層30は、絶縁性の基材10の表面に導電性インク層20を介して積層される導電層であり、銅を用いた電解めっき工程(いわゆる電気めっき法)により形成される。本実施形態では、第1導電層たる導電性インク層20が予め下層に形成されているので、第2導電層たるめっき層30を電気めっき法で容易に形成することができる。
電解めっき工程を用いることで、所定の積層厚まで速やかに積層することができる。また厚みを正確に調整して積層することができるメリットがある。また得られるめっき層30を欠陥のない均質な層とすることができる。
【0028】
めっき層30の厚みは、どのようなプリント配線回路を作製するかによって設定されるもので、その厚みが特に限定されるものではない。しかし高密度、高性能のプリント配線の形成を目的にする限りにおいて、そのような高密度配線の形成を可能とする厚みとして、例えば1〜数十ミクロンの導電層とすることができる。
なお電解めっき工程(いわゆる電気めっき法)は、従来公知の電気めっき浴を用いて、且つ適切な条件を選んで、所定厚の電気めっき層が欠陥なく速やかに形成されるように行うことができる。
【0029】
次に図4、図5を参照して、本発明の実施形態に係るプリント配線板用基板の製造方法を、該プリント配線板用基板を用いたプリント配線板の製造方法を用いて説明する。
本発明に係るプリント配線板用基板1を用いたプリント配線板3は、導電性インク層20を第1導電層とし、めっき層30を第2導電層としてなるプリント配線板である。
このプリント配線板3は、本発明のプリント配線板用基板1を用いて、いわゆるサブトラクティブ法により製造される。
【0030】
より具体的には、前処理工程100と、絶縁性の基材10に溶媒に分散した導電性インクを塗布する導電性インク塗布工程200と、導電性インク塗布工程200の後に熱処理を行う図示していない熱処理工程と、熱処理工程の後に電解銅めっきを行うめっき工程300と、めっき工程300の後にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程400と、レジストパターン形成工程400の後に配線回路を形成する配線回路形成工程500とを経て製造される。
【0031】
まず図4を参照して、前処理工程100により、絶縁性の基材10の表面にアルカリ処理を施す。
より具体的には、絶縁性の基材10を水酸化ナトリウム水溶液に浸した後、水洗し、酸洗し、水洗し、乾燥させる。この前処理工程100により、ポリイミドフィルムからなる絶縁性の基材10のイミド結合が分解し、カルボキシル基、カルボニル基が生成する。
なお本実施形態においては、前処理工程100としてアルカリ処理を用いる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。例えばプラズマ処理を用いる構成としてもよい。
【0032】
次に図4を参照して、導電性インク塗布工程200により、絶縁性の基材10の表面に金属粒子Lたるニッケル(Ni)を含む導電性インクを塗布する。
その後、図示しない熱処理工程により、塗布させた導電性インク中の金属粒子Lを金属層として絶縁性の基材10上に固着させる。これにより絶縁性の基材10の表面に、導電層となる金属粒子Lを含む導電性インク層20が形成される。
【0033】
次に図4に示すように、めっき工程300により、導電性インク層20を介して絶縁性の基材10の表面にめっき層30を形成する。
より具体的には、銅を用いた電解めっき工程(いわゆる電気めっき法)によりめっき層30を形成する。
これにより、導電性インク層20を第1導電層とし、めっき層30を第2導電層とする導電層が形成される。つまり図1に示すプリント配線板用基板1が製造される。
【0034】
その後図4、図5に示すように、レジストパターン形成工程400により、めっき層30にレジスト40を積層した状態で、パターンマスク41を用いて露光し、現像を行うことでレジストパターン42を形成し、配線パターンとなるべき部分を被覆する。
その後図5に示すように、配線回路形成工程500のエッチング工程510により、配線パターンとなるべき部分以外の不要な導電層を除去する。
その後、図5に示すように、配線回路形成工程500のレジストパターン剥離工程520により、レジストパターン42を剥離する。
以上の工程を経ることで、本発明に係るプリント配線板用基板1を用いたプリント配線板3が製造される。
【0035】
なお本発明のプリント配線板用基板1を用いたプリント配線板3の製造方法は、上記したサブトラクティブ法に限定されるものではない。他の種々のサブトラクティブ法、セミアディティブ法、その他の製法によるものを含む。
【0036】
以下、プリント配線板用基板1及びプリント配線板1を用いたプリント配線板3の構成、製造方法について更に詳細に説明する。
【0037】
(絶縁性の基材の構成)
絶縁性の基材10としては、一方向に連続する連続材を用いることができる。連続材を用いて、プリント配線板用基板1を連続工程で製造することができる。絶縁性の基材10は所定寸法の独立片を用いることができる。
絶縁性の基材10として用いる材料は、ポリイミドの他、絶縁性のリジッド材料、フレキシブル材料等、既に上述した通りである。
導電性インクとしては、導電性物質として微細な金属粒子Lを含み、またその金属粒子Lを分散させる分散剤、及び分散媒とを含むものを用いる。
【0038】
前記導電性インクに分散させる金属粒子Lの種類や大きさは、1〜500nmのニッケル(Ni)粒子を用いる他、既に上述した通りである。
また金属粒子Lの製造方法は、既述したチタンレドックス法を含み、次のような製造方法が可能である。
【0039】
(金属粒子の製造方法)
金属粒子Lは、含浸法と呼ばれる高温処理法や、液相還元法、気相法等の従来公知の方法で製造することができる。
液相還元法によって金属粒子Lを製造するためには、例えば水に、金属粒子Lを形成する金属のイオンのもとになる水溶性の金属化合物と分散剤とを溶解すると共に、還元剤を加えて、好ましくは、攪拌下、一定時間、金属イオンを還元反応させればよい。勿論、合金からなる金属粒子Lを液相還元法で製造する場合は、2種以上の水溶性の金属化合物を用いることになる。
液相還元法の場合、製造される金属粒子Lは、形状が球状ないし粒状で揃っており、粒度分布がシャープで、しかも微細な粒子とすることができる。
前記金属イオンのもとになる水溶性の金属化合物として、例えばNiの場合は塩化ニッケル(II)六水和物[NiCl・6HO]、硝酸ニッケル(II)六水和物[Ni(NO・6HO]をあげることができる。またCuの場合は、硝酸銅(II)[Cu(NO]、硫酸銅(II)五水和物[CuSO・5HO]をあげることができる。他の金属粒子Lについても、塩化物、硝酸化合物、硫酸化合物等の水溶性の化合物を用いることができる。
【0040】
(還元剤)
酸化還元法によって金属粒子Lを製造する場合の還元剤としては、液相(水溶液)の反応系において、金属イオンを還元、析出させることができる種々の還元剤を用いることができる。例えば水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、3価のチタンイオンや2価のコバルトイオン等の遷移金属のイオン、アスコルビン酸、グルコースやフルクトース等の還元性糖類、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールをあげることができる。このうち、3価のチタンイオンが4価に酸化する際の酸化還元作用によって金属イオンを還元し、析出させる方法が既述したチタンレドックス法である。
【0041】
(導電性インクの分散剤)
導電性インクに含まれる分散剤としては、分子量が2000〜30000で、分散媒中で析出した金属粒子Lを良好に分散させることができる種々の分散剤を用いることができる。分子量が2000〜30000の分散剤を用いることで、金属粒子Lを分散媒中に良好に分散させることができ、得られる第1導電層たる導電性インク層20の膜質を緻密で且つ欠陥のないものにすることができる。分散剤の分子量が2000未満では、金属粒子Lの凝集を防止して分散を維持する効果が十分に得られないおそれがあり、結果として絶縁性の基材10の上に積層される導電層を緻密で欠陥の少ないものにできないおそれがある。また分子量が30000を超える場合は、嵩が大きすぎ、導電性インクの塗布後に行う熱処理において、金属粒子L同士の焼結を阻害してボイドを生じさせたり、導電性インク層20の膜質の緻密さを低下させたり、また分散剤の分解残渣が導電性を低下させるおそれがある。
なお分散剤は、硫黄、リン、ホウ素、ハロゲン、アルカリを含まないものが、部品劣化の防止から好ましい。
好ましい分散剤としては、分子量が2000〜30000の範囲にあるもので、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等のアミン系の高分子分散剤、またポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等の分子中にカルボン酸基を有する炭化水素系の高分子分散剤、ポバール(ポリビニルアルコール)、スチレン−マレイン酸共重合体、オレフィン−マレイン酸共重合体、或いは1分子中にポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体等の極性基を有する高分子分散剤、をあげることができる。
分散剤は水、又は水溶性有機溶媒に溶解した溶液の状態で、反応系に添加することもできる。
分散剤の含有割合は、金属粒子100重量部あたり1〜60重量部であるのが好ましい。分散剤の含有割合が前記範囲未満では、水を含む導電性インク中において、分散剤が金属粒子Lを取り囲むことで凝集を防止して良好に分散させる効果が不十分となるおそれがある。また前記範囲を超える場合には、導電性インクの塗装後の焼成熱処理時に、過剰の分散剤が金属粒子Lの焼結を含む焼成を阻害してボイドを生じさせたり、膜質の緻密さを低下させたりするおそれがあると共に、高分子分散剤の分解残渣が不純物として導電層中に残存して、プリント配線の導電性を低下させるおそれがある。
【0042】
(金属粒子の粒径調整)
金属粒子Lの粒径を調整するには、金属化合物、分散剤、還元剤の種類と配合割合を調整すると共に、金属化合物を還元反応させる際に、攪拌速度、温度、時間、pH等を調整すればよい。
例えば反応系のpHは、本発明の如き微小な粒径の粒子を得るには、pHを7〜13とするのが好ましい。
反応系のpHを7〜13に調整するためには、pH調整剤を用いることができる。このpH調整剤としては、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど、一般的な酸、アルカリが使用されるが、特に周辺部材の劣化を防止するために、アルカリ金属やアルカリ土類金属、塩素等のハロゲン元素、硫黄、リン、ホウ素等の不純物元素を含まない、硝酸やアンモニアが好ましい。
本発明の実施形態においては、金属粒子Lの粒子径は30〜100nmの範囲にあるものを用いるが、許容範囲として粒子径が1〜500nmの範囲にあるものを用いることが可能である。
ここで粒子径は分散液中の粒度分布の中心径D50で表され、日機装社製マイクロトラック粒度分布計(UPA−150EX)を用いて測定した。
【0043】
(導電性インクの調整)
液相の反応系において析出させた金属粒子Lは、ロ別、洗浄、乾燥、解砕等の工程を経て、一旦、粉末状としたものを用いて導電性インクを調整することができる。この場合は、粉末状の金属粒子Lと、分散媒である水と、分散剤と、必要に応じて水溶性の有機溶媒とを、所定の割合で配合して、金属粒子Lを含む導電性インクとすることができる。
好ましくは、金属粒子Lを析出させた液相(水溶液)の反応系を出発原料として、導電性インクを調整する。
即ち、析出した金属粒子Lを含む反応系の液相(水溶液)を、限外ろ過、遠心分離、水洗、電気透析等の処理に供して不純物を除去し、必要に応じて濃縮して水を除去するか、逆に水を加えて金属粒子Lの濃度を調整した後、更に必要に応じて、水溶性の有機溶媒を所定の割合で配合することによって、金属粒子Lを含む導電性インクを調整する。この方法では、金属粒子Lの乾燥時の凝集による粗大で不定形な粒子の発生を防止することができ、緻密で均一な第1導電層たる導電性インク層20を得ることが可能となる。
【0044】
(分散媒)
導電性インクにおける分散媒となる水の割合は、金属粒子100重量部あたり20〜1900重量部であるのが好ましい。水の含有割合が前記範囲未満では、水による分散剤を十分に膨潤させて、分散剤で囲まれた金属粒子Lを良好に分散させる効果が不十分となるおそれがある。また水の含有割合が前記範囲を超える場合は、導電性インク中の金属粒子Lの割合が少なくなり、絶縁性の基材10の表面に必要な厚みと密度とを有する良好な塗布層を形成できないおそれがある。
【0045】
導電性インクに必要に応じて配合する有機溶媒は、水溶性である種々の有機溶媒が可能である。その具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールやその他のエステル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類をあげることができる。
水溶性の有機溶媒の含有割合は、金属粒子100重量部あたり30〜900重量部であるのが好ましい。水溶性の有機溶媒の含有割合が、前記範囲未満では、前記有機溶媒を含有させたことによる分散液の粘度や蒸気圧を調整する効果が十分に得られないおそれがある。また前記範囲を超える場合には、水により分散剤を十分に膨潤させて、分散剤により導電性インク中に金属粒子Lを、凝集を生じることなく良好に分散させる効果が阻害されるおそれがある。
【0046】
(導電性インクによる絶縁性の基材上への塗布)
金属粒子Lを分散させた導電性インクを絶縁性の基材10上に塗布する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等の従来公知の塗布法を用いることが可能である。またスクリーン印刷、ディスペンサ等により絶縁性の基材10上の一部のみに塗布するようにしてもよい。
塗布後には乾燥を行う。その後、後述する熱処理に移行する。
【0047】
(塗布層の熱処理)
絶縁性の基材10上に塗布された導電性インクを熱処理することで、焼成された塗布層として基材上に固着された導電性インク層20を得る。導電性インク層20の厚みは0.05〜2μmが好ましい。
熱処理により、塗布された導電性インクに含まれる分散剤やその他の有機物を、熱により揮発、分解させて塗布層から除去すると共に、残る金属粒子Lを焼結状態或いは焼結に至る前段階にあって相互に密着して固体接合したような状態として絶縁性の基材10上に強固に固着させる。
熱処理は、大気中で行ってもよい。また金属粒子Lの酸化を防止するために、大気中で焼成後に、還元雰囲気中で更に焼成してもよい。焼成の温度は、前記焼成によって形成される導電性インク層20の金属の結晶粒径が大きくなりすぎたり、ボイドが発生したりするのを抑制する観点から、700度以下とすることができる。
勿論、前記熱処理は、絶縁性の基材10がポリイミド等の有機樹脂の場合は、絶縁性の基材10の耐熱性を考慮して500℃以下の温度で行う。熱処理温度の下限は、導電性インクに含有される金属粒子L以外の有機物を塗布層から除去する目的を考慮して、150℃以上が好ましい。
また熱処理雰囲気としては、特に積層される金属粒子Lが極微細であることを考慮して、その酸化を良好に防止するため、例えばO濃度を1000ppm以下とするなど、O濃度を減少させた非酸化性の雰囲気とすることができる。更に、例えば水素を爆発下限濃度(3%)未満で含有させる等により還元性雰囲気とすることができる。
以上で、導電性インクによる絶縁性の基材10上への塗布と、塗布層の熱処理によって導電性インク層20を形成する工程が完了する。
【0048】
(めっき工程によるめっき層の積層)
絶縁性の基材10の表面に導電性インク層20を介して積層するめっき層30は、めっき工程300により積層を行う。実際には銅(Cu)を用いた電解めっき工程(いわゆる電気めっき法)により行う。
第1導電層たる導電性インク層20と第2導電層たるめっき層30との厚みの関係は、第1導電層たる導電性インク層20は、絶縁性の基材10の表面を導電性にすることで、第2導電層たるめっき層30の形成に必要な下地形成の役割をなすもので、絶縁性の基材10の表裏表面を確実に被覆する限りにおいて、その厚みは薄くても十分である。これに対して、めっき層30はプリント配線を形成するのに必要な厚みを要する。よって実質的には、めっき層30の厚みが導電層全体としての厚みと考えることができる。
本実施形態では、プリント配線板用基板1の導電層として、ニッケル(Ni)で第1導電層たる導電性インク層20を構成している。第2導電層たるめっき層30を銅(Cu)で構成した場合、導電性インク層20としては、ニッケル(Ni)以外の銅(Cu)との密着性のよい金属を採用することも可能であるが、ニッケル(Ni)を用いることが望ましい。
なお本実施形態においては、電解めっき工程のみでめっき工程300を構成するものとしたが、電解めっき工程の前に絶縁性の基材10の表面を無電解めっき層で被覆する無電解めっき工程を備える構成としてもよい。
このような構成とすることで、第1導電層たる導電性インク層20の厚みを薄肉なものとすることができる。よってインク量を節約することができ、コスト削減を図ることができるプリント配線板用基板1及びプリント配線板3とすることができる。
【0049】
以上のように本発明に係るプリント配線板用基板1及びその製造方法、プリント配線板用基板1を用いたプリント配線板3及びその製造方法によれば、従来のスパッタリング法により導電層を形成してなるプリント配線板用基板及び該プリント配線板用基板を用いたプリント配線板に比べて、製造に高価な真空設備を必要とせず、設備コストを抑えることができると共に、製造効率が良く、サイズ的な制限を受けることがない。また有機物接着剤を使用することなく、且つ基材の材質に制限されることなく種々の基材を用いて、高密度、高性能、導電層の十分な薄肉化を可能とすることができる。また酸化雰囲気(特に高温の酸化雰囲気)において絶縁性の基材10とめっき層30との界面Kにおける酸化物の成長を抑制できることで、絶縁性の基材10とめっき層30との剥離を防止でき、更にエッチング性の良好なプリント配線板用基板1及びプリント配線板3とすることができる。また高密度、高性能なプリント配線板3の大量生産化を実現できる。
【0050】
次に図6を参照して、本発明に係るプリント配線板用基板の変形例を説明する。
本変形例は、導電性インク層を形成する金属粒子を変化させたものである。その他の構成については、既述した本発明の実施形態と同一である。同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号を付し、以下の説明を省略する。
【0051】
図6を参照して、本変形例においては、導電性インク層20をニッケル(Ni)からなる金属粒子Lと、銅(Cu)からなる金属粒子Oとの2種類の金属粒子で形成してある。
このような構成とすることで、絶縁性の基材10とめっき層30との界面Kに分散付着させるニッケル(Ni)からなる金属粒子Lの単位面積あたりの粒子数を調整し易く、より均一に分散付着させることができる。
またこのような構成からなるプリント配線板用基板1を高温の酸化雰囲気においた場合、図6下段に示すように、界面Kにおいて銅(Cu)からなる金属粒子Oが存在する部分のみに酸化銅層Mが成長する。つまり界面Kにおいて酸化銅層Mが均一な層状に成長することを抑制できる。よってこの不均一な酸化銅層Mがアンカー効果となり、絶縁性の基材10とめっき層30との密着力の低下を防止することができる。
従って高温の酸化雰囲気における酸化物の成長に伴う絶縁性の基材10とめっき層30との剥離を効果的に防止することができる。よって信頼性の高いプリント配線板用基板1とすることができる。
【0052】
また図6に示すように、金属粒子たるニッケル(Ni)及び銅(Cu)は粒子形状のまま界面Kに存在する。よってプリント配線板用基板1を用いてプリント配線板を形成する際等、エッチング工程においては、銅(Cu)からなる金属粒子Oのエッチングに伴い、ニッケル(Ni)からなる金属粒子Lもエッチングさせることができる。よって一段と良好なエッチング性を実現することができる。
なお導電性インク層20におけるニッケル(Ni)と銅(Cu)との混合比は、Ni/(Ni+Cu)で0.05〜0.9とすることが望ましく、より好適には0.2〜0.8とすることが望ましい。
【0053】
(実施例1)
溶媒を水として、粒子径40nmのニッケル粒子を分散させた、ニッケルの濃度5重量%の導電性インクを用意し、これを絶縁性の基材であるポリイミドフィルム(カプトンEN)の表面に塗布し、60℃で、10分間、大気中にて乾燥した。更に300℃で30分間、窒素雰囲気中(酸素濃度100ppm)で熱処理を実施した。更に導電性インク層の表面に銅の無電解めっきを0.3μm行い、更に銅の電気めっきを行うことにより、12μmの厚みのプリント配線板用基板を得た。
【0054】
(実施例2)
熱処理の雰囲気を3%水素、97%窒素にした以外は実施例1と同様に行った。更に導電性インク層の上に銅の無電解めっきを0.3μm行い、更に銅の電気めっき行うことにより、12μmの銅の厚みのプリント配線板用基板を得た。
【0055】
(実施例3)
次のような試料及び試験方法を用いて剥離強度試験及びエッチング性試験を行い、以下の基準で剥離強度の評価及びエッチング性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0056】
(試料)
めっき層(銅からなる)の厚み及び形状を同一条件とした以下の3種類の試料を用いた。
めっき層の厚み:18μm
形状:幅1cmの短冊形状
試料1:本発明に係るプリント配線板用基板
試料2:スパッタ法によりCuのみを使用し、シード層を備えないプリント配線板用基板
試料3:スパッタ法によりシード層(NiとCr)を備えるプリント配線板用基板
【0057】
(剥離強度の評価)
試験方法
各試料を150℃の大気中に168時間放置させた後、ポリイミドフィルム面を両面接着剤により剛性のある板に貼りつける。次に導電層とポリイミド間をカーターナイフ等で口出し、導電層側を引っ張り速度50mm/minの速度で180度剥離により、剥離強度(密着強度)を測定した。
6N/cm以上のものを○、6N/cm未満のものを×として評価した。
【0058】
(エッチング性の評価)
各試料を40℃の10%過硫酸ソーダ水溶液に、120秒間浸し、金属顕微鏡で残渣の有無を確認した。
残渣が残らなかったものを○、残渣が残ったものを×として評価した。
【0059】
【表1】

【0060】
表1の結果より、本発明に係るプリント配線板用基板においては、高温の酸化雰囲気における導電層の剥離防止と、良好なエッチング性を同時に実現できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、高密度、高性能、高信頼性のプリント配線板用基板、プリント配線板を、真空設備を必要とすることなく、低コストで、良好に提供することができ、プリント配線の分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0062】
1 プリント配線板用基板
2 プリント配線板用基板
3 プリント配線板
10 基材
20 導電性インク層
30 めっき層
40 レジスト
41 パターンマスク
42 レジストパターン
100 前処理工程
200 導電性インク塗布工程
300 めっき工程
400 レジストパターン形成工程
500 配線回路形成工程
510 エッチング工程
520 レジストパターン剥離工程
K 界面
L 金属粒子
M 酸化銅層
N シード層
O 金属粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基材の表面に銅を積層してなるプリント配線板用基板であって、前記絶縁性の基材と銅との界面に銅層の酸化を抑制する金属粒子を分散付着させてあることを特徴とするプリント配線板用基板。
【請求項2】
前記金属粒子は、少なくともNi粒子を含むものであることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板用基板。
【請求項3】
前記金属粒子は、Ni粒子とCu粒子とからなることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板用基板。
【請求項4】
絶縁性の基材の表面に金属粒子を含む導電性インクを塗布する導電性インク塗布工程と、該導電性インク塗布工程の後に、熱処理を行う熱処理工程と、該熱処理工程の後に、電解銅めっきを行う電解めっき工程とを少なくとも備えることを特徴とするプリント配線板用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−187765(P2011−187765A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52570(P2010−52570)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】