説明

プレガバリンの製造方法

【課題】プレガバリンの新規なエナンチオ選択的製造方法及びプレガバリンの製造に有用な新規キラル中間体を提供する。
【解決手段】a)特定のラクタム化合物を第三級アルコール中間体に転化させ、b)工程a)の生成物を脱水して(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オン及び/又は(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンを生成し、c)工程b)の生成物を(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)ピロリジン−2−オン及び/又は(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)ピロリジン−2−オンに転化させ、d)工程c)の生成物を水素化して(4S)−4−イソブチルピロリジン−2−オンを生成し、e)工程d)の生成物を加水分解してプレガバリンを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にプレガバリンとして知られている(S)−3−(アミノメチル)−5−メチルヘキサン酸のエナンチオ選択的製造方法に関する。また、本発明は、プレガバリンの製造に有用な新規キラル中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
プレガバリンは、化学的には3−(アミノメチル)−5−メチルヘキサン酸の(S)−異性体であり、また、β−イソブチル−γ−アミノ酪酸又はイソブチル−GABAとも呼ばれており、次の化学構造:
【0003】
【化1】

を有する。
【0004】
この化合物は、特許文献1に開示されており、リリカ(Lyrica、登録商標)という商品名で販売されている。プレガバリンは、疼痛、癲癇、痙攣、精神障害、注意欠陥、過敏性疾患、不安及び気分障害を治療するための治療薬として有用である。プレガバリンの抗痙攣効果はその立体化学に依存することが判明している。プレガバリンのラセミ体の抗痙攣効果は、主として(S)−鏡像体、すなわちプレガバリンに起因する。プレガバリンは、その(R)−立体異性体よりも良好な抗痙攣活性を示す(非特許文献1)。
【0005】
プレガバリンの製造について、幾つかの方法が報告されている。典型的なラセミプレガバリンが製造され、後に古典的方法を使用して(R)異性体と(S)異性体とに分割される。最初のラセミプレガバリンは、非特許文献2に記載されている。この方法は、ニトロメタンなどの有害な化学薬品を必要とし、不安定なニトロ中間体をもたらす。特許文献2には、アジド中間体を使用するラセミプレガバリンの合成方法が記載されている。特許文献3には、ラセミプレガバリンの合成、次いでマンデル酸を使用するS−異性体の分割について記載されている。特許文献4には、マロン酸塩を介したラセミプレガバリンの合成方法が記載されている。特許文献5には、ホフマン転移を介したラセミプレガバリンの合成及びキラルフェニルエチルアミンを使用する分割について記載されている。
【0006】
プレガバリンにおいて、そのカルボン酸部分又はアミン部分は、不斉炭素原子に直接結合されていない。このために、分割剤との塩形成は、選択的ではなく、効率的でない。所望の光学純度を得るためには数回結晶化を繰り返す必要がある。また、望まれないR−鏡像体は、効率的にラセミ化して再利用することができない。望まれないR−鏡像体は、最終的には費用をかけて廃棄物として廃棄しなければならない。
【0007】
特許文献6には、エバンス(Evans)のキラル助剤を使用するキラル的に純粋なS−プレガバリンの直接合成(スキーム1)について記載されている。前記キラル助剤の費用及びリサイクルは、前記方法を商業的に魅力のないものにしている。
【0008】
【化2】

ヤコブセン(Jacobsen)のグループは、キラルアルミニウムサレン触媒及びトリメチルシリルシアニドを使用するプレガバリンのキラル合成について報告している(非特許文献3)。この方法は、高いエナンチオ純度を有するプレガバリンを提供するが、アルミニウムサレン触媒やトリメチルシリルシアニドなどの試薬の費用が高いために、大規模な工業的合成には適していない。
【0009】
触媒としてサマリウム(III)イソプロポキシドを使用するプレガバリンの別のキラル合成が報告されている(非特許文献4)。この方法もまた、高価な試薬のために、工業規模の合成には適していない。特許文献7には、シアノ置換オレフィンの不斉水素化を使用するプレガバリンの製造方法が開示されている。これは、(R,R)−Me−DUPHOSなどのビスホスフィンリガンドを使用する。この方法はまた、高い圧力下で発癌性アクリロニトリル及び毒性の高い一酸化炭素の使用を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第641330号明細書
【特許文献2】米国特許第5563175号明細書
【特許文献3】米国特許第5637767号明細書
【特許文献4】米国特許第6046353号明細書
【特許文献5】米国特許第5616793号明細書
【特許文献6】米国特許第5599973号明細書
【特許文献7】欧州特許第1250311号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Yuenら、Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters,1994,4,823
【非特許文献2】Synthesis,1989,953
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.,2003,125,4442−4443
【非特許文献4】A.Armstrongら、Synlett 2006,10,1589−1591
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、工業規模に適し、上述の従来技術において記載した欠点のうちの幾つかを有さず、かつ費用効率の良いエナンチオ選択的方法の開発に対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、中間体I〔式中、Rはアルキル基又は置換アルキル基であり、ピロリジノンの不斉炭素C−4は(S)配置を有する〕から3−(アミノメチル)−5−メチルヘキサン酸の(S)−異性体(プレガバリン)を製造する方法を提供する。前記中間体Iは、公知のアルコールからスキーム2のように製造することができる(Tetrahedron asymmetry,1997,8,133−138、米国特許第7381747号明細書)。
【0014】
別の実施形態において、本発明はまた、これまで文献に報告されていない新規な中間体II、IIIa及びIIIb、並びにIVa及びIVbを提供する。
前記のプレガバリンの製造方法は、中間体Iをアルキル化して第三級アルコールIIを得る工程を含む。
【0015】
【化3】

前記第三級アルコールIIを脱水すると、(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンIIIa及び/又は(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンIIIb:
【0016】
【化4】

が得られる。
【0017】
IIIa及び/又はIIIbのアミド窒素を脱保護すると、(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)ピロリジン−2−オンIVa及び/又は(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)ピロリジン−2−オンIVb:
【0018】
【化5】

が得られる。
【0019】
前記ラクタムIVa及び/又はIVbの水素化により、プレガバリンラクタムVがもたらされる。
両方の異性体IVa及びIVbは、同じラクタムVを提供することから、これらの比率は、4位におけるラクタムVの立体化学に影響を及ぼさないであろう。
【0020】
【化6】

前記ラクタムVを加水分解すると、高いエナンチオ純度を有するプレガバリンがもたらされる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の方法の利点は、必要な(S)−異性体が得られることにある。ラセミ混合物からの分割によって(S)−異性体を得ることは困難かつ厄介であり、必要なエナンチオ純度を得るために結晶化を繰り返す必要がある。また、本発明の方法は、ニトロメタンなどの有害化合物又は高価なキラル助剤を必要としない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によれば、(S)−3−(アミノメチル)−5−メチルヘキサン酸(プレガバリン)のエナンチオ選択的製造方法であって、
a)式(I):
【0023】
【化7】

〔式中、Rはアルキル基又は置換アルキル基であり、ピロリジノンの不斉炭素C−4は(S)配置を有する〕
の化合物を、式(II):
【0024】
【化8】

の第三級アルコール中間体に転化させる工程と、
b)前記式(II)の第三級アルコール中間体を脱水して、アルケン中間体(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンIIIa及び/又は(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンIIIb
【0025】
【化9】

を生成する工程と、
c)前記式IIIa及び/又はIIIbのアルケン中間体を、(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)ピロリジン−2−オンIVa及び/又は(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)ピロリジン−2−オンIVb
【0026】
【化10】

に転化させる工程と、
d)前記式IVa及び/又はIVbのラクタムを水素化して式(V):
【0027】
【化11】

のプレガバリンラクタムを生成する工程と、
e)前記式Vのラクタムを加水分解してプレガバリンを生成する工程と、
を含む方法が提供される。
【0028】
前記の式Iのエステルは、ピロリジノン環の炭素(4)及び窒素に結合する不斉炭素の両方において(S)−配置を有するジアステレオ異性体である。この式(I)のエステルは、スキーム2のように製造することができる。スキーム2の出発アルコールである(S)−4−(ヒドロキシメチル)−1−((S)−1−フェニルエチル)ピロリジン−2−オンは、例えばTetrahedron asymmetry,1997,8,133−138、米国特許第7381747号明細書に記載のような公知の方法のいずれかで製造され得る。
【0029】
【化12】

前記アルコール、すなわち(S)−4−(ヒドロキシメチル)−1−((S)−1−フェニルエチル)ピロリジン−2−オンを、塩化チオニルなどの塩素化剤で処理してクロロ化合物を得、次いでシアン化アルカリで処理してニトリル誘導体を得る。前記ニトリル誘導体をアルコール中において塩化アセチルで処理すると、式Iのエステルがもたらされる。窒素に結合する不斉炭素においてR−配置を有するエステルIは、米国特許第7192969号明細書に記載されている。前記エステルIは、メチルマグネシウムハライドとのグリニャール反応により化合物IIを提供する。前記ハライドは、クロロ又はブロモ、好ましくはクロロであり、前記反応に使用する溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフランなどの無水溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。またこれらの溶媒は、単独であるいは2種以上の組み合わせで使用してもよく、さらにトルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの他の溶媒と共に使用してもよい。反応温度は、溶媒に応じて−70℃から100℃までの範囲で変化させてもよく、好ましくは30℃であり得る。反応時間もまた、反応温度及び使用する溶媒に応じて、1〜18時間の範囲で変化させ得る。さらに、メチルマグネシウムハライドは、2〜10モル当量で使用するのが好ましい。当業者は、任意の銅化合物、例えば式CuY(式中、YはCl、Br、I、及びCNのいずれであってもよく、好ましくはIであり得る)の銅化合物の存在下で反応を行い得る。当業者は、その他の金属系試薬、例えばメチルリチウム、ジメチル亜鉛、ジメチルカドミウムなどを利用して化合物IIを製造することができる。当業者はまた、別法としてニトリル誘導体から、グリニャール型の反応においてメチルマグネシウムハライドで処理することによって化合物IIを製造することもできる。
【0030】
その後の化合物IIの脱水により、化合物IIIa及び/又はIIIbあるいはこれらの混合物がもたらされる。使用できる脱水試薬の非限定的な例としては、パラ−トリルスルホン酸、濃HSO、五酸化リン、トリフルオロ酢酸が挙げられ、好ましくはパラ−トリルスルホン酸である。また、脱水に使用する溶媒の非限定的な例としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、アセトン、酢酸エチル、メチルt−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルが挙げられ、好ましくはトルエン又はキシレン、さらに好ましくはトルエンである。
【0031】
バーチ(Birch)型反応を使用する化合物IIIa及びIIIbの還元脱保護により、化合物IVa及びIVbがもたらされる。この反応は、アルカリ金属及び液体アンモニアで処理することによって行う。アルカリ金属としては、ナトリウム又はリチウム、好ましくは金属ナトリウムが挙げられる。別法として、当業者は、脱保護のために硝酸セリウムアンモニウム又は文献に記載の他の方法も使用し得る。
【0032】
前記式Vのプレガバリンラクタムは、前記化合物IVa及びIVbから当業者に知られている適当な触媒を使用して水素化することによって容易に製造できる。水素化反応に使用する溶媒としては、アルコールのような極性プロトン性溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなど、又はエステル類、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチルなど、あるいは脂肪族酸、例えばギ酸、酢酸などが挙げられる。溶媒としてはまた、非極性溶媒、例えば脂肪族又は芳香族炭化水素、例えばヘプタン、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど、極性非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド又はN−メチルピロリドン、あるいはこれらの混合物も挙げられる。水素化反応に適した温度は、約0℃から溶媒還流温度までの範囲、好ましくは約10℃から50℃までの範囲、さらに好ましくは約25℃であり得る。
【0033】
前記式(V)のプレガバリンラクタムは、文献で知られているように、例えばTetrahedron Letters 2007,48,4305−4308又は国際公開第2009/053446号に記載のように、容易に水素化することができる。
【0034】
本発明の方法の利点は、必要な(S)−異性体だけを得て、ラセミ混合物を分割する困難かつ厄介な方法(これもまた、必要なエナンチオ純度を得るために結晶化を繰り返す必要がある)を避けることにある。また、本発明の方法は、ニトロメタンなどの有害化合物又は高価なキラル助剤を必要としない。
【0035】
従って、本発明は経済的であり、環境に優しく、工業規模に非常に適している。
本発明の詳細を以下の実施例に示す。実施例は、発明を例証するために提供するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0036】
(実施例)
エステルIの合成:
A.[(3S)−5−オキソ−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−3−イル]アセトニトリルの製造
【0037】
【化13】

150mLのクロロホルム中の(4S)−4−(ヒドロキシメチル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オン(Tetrahedron asymmetry,1997,8,133−138、米国特許第7381747号明細書)(25g、0.114モル)に、塩化チオニル(37.2g)を滴加して処理し、約3時間還流させた。反応の完結後に、溶媒を真空下で蒸発させた。暗褐色の油状クロロ誘導体が、収率100%で単離された。
【0038】
前記のようにして得られたクロロ化合物を、DMSO(25mL)に溶解し、DMSO(100mL)中のシアン化ナトリウム(9g、0.18モル)の溶液に加えた。反応混合物を約150℃に加熱し、約6時間保持した。反応の完結後に、反応混合物を25℃に冷却して700gの砕氷の中に注ぎ、ジクロロメタン(4×100mL)で抽出した。有機層を希HCl溶液で洗浄し、次いでブライン溶液で洗浄した。有機相をNaSO上で乾燥させ、溶媒を除去した。暗褐色の低融点固形ニトリルが、22.5gの収量(93%)で単離された。HNMR(300MHz,CDCl)δ7.2−7.3(m,5H)、5.39−5.46(q,1H)、3.02−3.16(m,2H)、2.49−2.65(m,2H)、2.37−2.42(m,2H)、2.18−2.37(dd,1H)、1.45−1.47(d,3H)。C13NMR(75MHz,CDCl)δ16.05,21.80、28.5、36.95、46.88、49.14、60.4、117.48、126.04、127.88、128.7、139.45、172.1。
B.
【0039】
【化14】

メタノール(150mL)中の[(3S)−5−オキソ−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−3−イル]アセトニトリル(25g、0.109モル)を、約−10〜5℃に冷却し、塩化アセチル(182.9g、2.33モル)で処理し、放置して25℃まで暖めた。反応混合物を25℃で約3日間攪拌した。反応の完結後に、溶媒を真空下で蒸発させ、残留物に200mLの水を加え、飽和NaHCO溶液を使用して中性にpH調節し、ジクロロメタン(4×100mL)で抽出した。有機相をNaSO上で乾燥させ、溶媒を除去した。油状エステルIが、24.5gの収量(86%)で単離された。HNMR(300MHz,CDCl)δ7.2−7.3(m,5H)、5.41−5.48(q,1H)、3.62(s,3H)、3.13−3.19(m,1H)、2.94−3.0(m,1H)、2.54−22.1(m,2H)、2.36−2.48(m,2H)、2.08−2.18(q,1H)、1.45−1.50(d,3H)。C13NMR(75MHz,CDCl)δ16.11、28.3、37.6、38.36、47.57、48.79、51.72、127.01、127.57、128.54、139.97、172.02、172.98。
【0040】
(実施例1)
(4S)−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンIIの合成:
【0041】
【化15】

THF(200mL)中の化合物I(25g、0.0956モル)の溶液に、メチルマグネシウムクロリド(THF中の3モル溶液、21.4g、0.2868モル)を、窒素雰囲気下で、−10〜5℃で滴加した。得られた反応混合物を、約60〜70℃で約2〜8時間還流させた。次いで40mLの希HCl溶液及び砕氷の混合物中に注ぎ、そのpHを2に調節した。さらに酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、ブライン溶液で洗浄してから乾燥させて溶媒を蒸発させた。化合物(II)を暗褐色の油状物質として21.6gの収量(87%)で得た。これを精製せずに次の工程に使用した。HNMR(300MHz,CDCl)δ7.2−7.35(m,5H)、5.42−5.49(q,1H)、3.11−3.20(t,1H)、2.97−3.08(t,1H)、2.36−2.61(m,3H)、2.14−2.25(m,2H)、1.60−1.67(d,2H)、1.48−1.55(d,3H)、1.15−1.26(d,4H)。C13NMR(75MHz,CDCl)δ16.20、28.7、30.13、31.39、39.61、47.83、48.74、49.24、70.55、126.90、127.53、128.51、140.37、174.01。
【0042】
(実施例2)
(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンIIIa及び/又は(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンIIIbの合成:
【0043】
【化16】

150mLのトルエン中の化合物II(25g、0.0956モル)の溶液に、2.5gのパラ−トルエンスルホン酸を加えた。この反応混合物を、ディーン・スターク装置を使用して120℃で還流させ、捕集された水を除去した。反応の完結後に、反応混合物を、水及びNaHCO飽和溶液で洗浄した。トルエン層をブライン溶液で洗浄し、乾燥させ、溶媒を蒸発させて式IIIa及びIIIbの化合物の混合物を暗褐色の油状物質として20.0gの収量(86%)で得た。これを精製せずに次の工程に使用した。HNMR(300MHz,CDCl)δ7.24−7.30(m,5H)、5.40−5.43(q,1H)、[5.0−5.05(d)、4.7−4.73(d)、4.6(s)(アルケン異性体Hの混合物)]、2.89−3.03(m,3H)、2.45−2.54(m,2H)、2.03−2.16(m,2H)、[1.61(s)、1.51(s)(アルケン異性体Hの混合物)]、1.43−1.50(d,3H)。C13NMR(75MHz,CDCl)δ16.97、21.16、24.58、28.22、30.1、36.63、37.73、41.84、46.43、47.37、47.79、111.24、124.24、124.62、125.98、126.38、127.16、127.48、127.97、133.00、139.13、141.80、172.68、172.80。
【0044】
(実施例3)
(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)ピロリジン−2−オンIVa及び/又は(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)ピロリジン−2−オンIVbの合成:
【0045】
【化17】

100mLのTHF中の化合物IIIa及びIIIbの混合物(25g、0.1026モル)の溶液を、凝縮アンモニア(150mL)中のナトリウム(8.7g)の藍色溶液に−76℃で滴加した。反応混合物を、−76℃で約4時間攪拌し、その後にメタノール(60mL)を加えた。反応混合物を室温(RT)まで暖めることによってアンモニアを蒸発させた。この反応混合物を、希HCl溶液で中和し、酢酸エチルで抽出し、NaSO上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。残留物を、高真空蒸留で精製して、IVa及びIVbの混合物を低融点固体として9.7g(67%)の収量で得た。HNMR(300MHz,CDCl)δ[5.15−5.12(d)、4.79(S)、4.70(S)、(アルケン異性体Hの混合物)]、3.45−3.51(t,1H)、3.25−3.33(m,1H)、3.02−3.07(t,1H)、2.4−2.48(m,1H)、1.98−2.17(m,3H)、1.64−1.71(d、アルケン異性体の混合物)。C13NMR(75MHz,CDCl)式IVaの化合物に対応するピーク:δ18.01、25.61、34.17、37.59、48.53、125.57、133.91、178.77、及び式IVbの化合物に対応するピーク:δ22.26、32.33、36.68、42.89、47.78、112.17、142.89、及び178.67。
【0046】
(実施例4)
(4S)−4−イソブチルピロリジン−2−オンVの合成:
【0047】
【化18】

メタノール(100mL)中の化合物IVa及びIVbの混合物(5g、0.0352モル)に、10%パラジウム担持炭素(0.5g)を加え、水素化装置中で約12時間攪拌した。パラジウム担持炭素を、セライト下で濾過することによって除去し、溶媒を減圧下で除去して、化合物Vを低融点固体として収率99%で得た。HNMR(300MHz,CDCl)δ3.48−3.53(dd,1H)、3.02(t,1H)、2.37−2.57(m,2H)、1.97−2.02(m,1H)、1.53−1.60(m,1H)、1.33−1.38(t,2H)、0.9−0.92(dd,6H)。C13NMR(75MHz,CDCl)δ22.48、22.67、26.14、32.93、37.5、43.86、48.4、179.0。
【0048】
(実施例5)
プレガバリンの合成:
【0049】
【化19】

化合物V(12.0g、0.086モル)を、80mLの6N HClに溶解し、15時間還流させ、次いで室温まで冷却した。水を真空下で除去し、得られた固体生成物をイソプロピルアルコール(50mL)及び水(25mL)の溶液に溶解した。上記混合物にトリブチルアミン(22.3g)を加え、−10〜5℃で5時間攪拌した。形成された固体物質を濾過し、乾燥させて、単離プレガバリンを無色固体として10g(73%)の収量で得た。HNMR(300MHz,DO)δ3.07−3.09(d,2H)、2.51−2.54(t,2H)、2.28−2.34(m,1H)、1.66−1.73(m,1H)、1.28−1.33(t,2H)、0.92−0.97(dd,6H)。C13NMR(75MHz,DO)δ21.35、21.98、24.38、30.89、36.23、40.18、43.06、176.71。化学的HPLC純度:99.7%、キラルHPLC純度:99.99%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレガバリンの製造方法であって、
a)式(I):
【化1】

〔式中、Rはアルキル基又は置換アルキル基であり、ピロリジノンの不斉炭素C−4は(S)配置を有する〕
の化合物を、式(II):
【化2】

の第三級アルコール中間体に転化させる工程と、
b)式(II)の第三級アルコール中間体を脱水して、アルケン中間体(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンIIIa及び(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンIIIb
【化3】

の少なくともいずれか一方あるいはこれらの混合物を生成する工程と、
c)式IIIa及びIIIbの少なくともいずれか一方のアルケン中間体を、(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)ピロリジン−2−オンIVa及び(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)ピロリジン−2−オンIVb
【化4】

の少なくともいずれか一方あるいはこれらの混合物に転化させる工程と、
d)式IVa及びIVbの少なくともいずれか一方のラクタムあるいはこれらの混合物を水素化して式(V):
【化5】

のプレガバリンラクタムを生成する工程と、
e)式(V)のラクタムを加水分解してプレガバリン:
【化6】

を生成する工程と
からなる方法。
【請求項2】
工程(a)において、化合物(I)は溶媒中においてメチルマグネシウムハライドで処理され、前記溶媒はジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル又はテトラヒドロフラン、あるいはこれらの2種以上の組み合わせ、もしくは式(II)の第三級アルコールを得るためのグリニャール反応に適したその他の溶媒である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)において、前記脱水は、アルケン(IIIa)及び(IIIb)の少なくともいずれか一方あるいはこれらの混合物を得るために、第三級アルコール中間体(II)を酸で処理する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
使用する酸がパラ−トリルスルホン酸である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において、化合物(IIIa)及び(IIIb)の少なくともいずれか一方あるいはこれらの混合物は、ラクタム(IVa)及び(IVb)の少なくともいずれか一方あるいはこれらの混合物を得るために、アンモニア中で金属ナトリウム又は金属リチウム、好ましくは金属ナトリウムを用いて還元される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式(II)
【化7】

の化合物。
【請求項7】
化合物(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンIIIa及び(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)−1−[(1S)−1−フェニルエチル]ピロリジン−2−オンIIIb。
【化8】

【請求項8】
化合物(4S)−4−(2−メチルプロパ−1−エニル)ピロリジン−2−オンIVa及び(4R)−4−(2−メチルプロパ−2−エニル)ピロリジン−2−オンIVb。
【化9】


【公開番号】特開2012−41339(P2012−41339A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167134(P2011−167134)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(511185634)ディヴィズ ラボラトリーズ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】DIVI’S LABORATORIES LIMITED
【Fターム(参考)】