説明

プレコート鋼板およびその製造方法

【課題】塗膜の密着性を低下することなしに、クロムフリー化を実現したプレコート鋼板を提供する。
【解決手段】ステンレス鋼板または亜鉛系めっき鋼板の表面上に、クロムとシランカップリング剤を含まず、シリカを含む化成処理層を有し、該化成処理層上に、ポリエーテルサルフォン樹脂および4フッ化エチレン樹脂を主成分とし、シリカを含有する下塗り層と、ポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂を含有する上塗り層と、を順に積層配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動販売機のシューターおよびラック等の缶との潤滑が問題となる部分への使用に適した、特に潤滑性に優れたプレコート鋼板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記使途のプレコート鋼板は、被膜の密着性や耐食性のほか、缶をシューター上で円滑に移動するために、潤滑性に優れている必要がある。
ここで、一般的なプレコート鋼板は、下塗り層にエポキシ樹脂等を、上塗り層にアクリル樹脂やポリエステル樹脂等を使用するため、その塗膜の潤滑性に劣る点、上記の用途には適していないものであった。
【0003】
そこで、このような用途に向けて、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)を主成分として含む塗料、あるいは前記樹脂を主成分として、更にポリエーテルサルフォン樹脂(PES)等の耐熱樹脂を配合した塗料を使用して、塗装ラインで塗装、焼付けて製造したプレコート鋼板が、特許文献1に提案されている。
【特許文献1】特開平9−52070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、環境保全の立場から、クロムなどの有害な重金属の使用が禁止されつつあり、家電製品は勿論、屋外用途の自動販売機についてもクロムを含まない、いわゆるクロムフリーのプレコート鋼板の適用が望まれている。
【0005】
このプレコート鋼板では、4フッ化エチレン樹脂を主成分として含む塗料を塗布、焼付ける際に、その下地として鋼板表面に化成処理層を形成する。この化成処理層は、クロメート処理にて形成するのが一般的である。従って、プレコート鋼板をクロムフリー化するには、クロムを含まない化成処理層を用いる必要がある。
【0006】
しかしながら、クロムを含まない化成処理層を用いると、塗膜の密着性が低下するため、プレコート鋼板としての基本性能を維持するのが難しくなることが、クロムフリー化を阻む障害となっていた。
【0007】
また、自動販売機のシューターなどの用途では、潤滑性能の確保が重要であるところ、上記の技術では、塗装密着性能が不十分であるため、塗膜が剥がれて塗膜の潤滑性能を発揮することができないという問題点がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、塗膜の密着性を低下することなしにクロムフリー化を実現した、潤滑性に優れたプレコート鋼板を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、クロムフリーとしたプレコート鋼板における塗膜の密着性が低下する原因について鋭意究明した。すなわち、クロメート処理の代替として一般的である、りん酸系化成処理に用いる化成処理液にはスラッジの発生を抑制するためのシランカップリング剤の含有が通例であるところ、このシランカップリング剤が4フッ化エチレン樹脂を主成分として含む塗料の焼付け温度が高温であることから、この焼付け時に分解して塗膜の密着性を阻害していたこと、そしてこのシランカップリング剤に代えて高温でも安定したシリカを用いることが有効であること、を新たに知見した。
【0010】
また、塗膜の密着性の改善には、化成処理層上に形成する下塗り層にもシリカを含有させることが極めて有効であることを見出した。
さらに、塗膜の密着性の改善には、最表層の上塗り層にテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂を含有させることが極めて有効であることも見出した。
【0011】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は次の通りである。
(1)ステンレス鋼板または亜鉛系めっき鋼板の表面上に、クロムとシランカップリング剤を含まずシリカを含む化成処理層を有し、該化成処理層上に、ポリエーテルサルフォン樹脂および4フッ化エチレン樹脂を主成分とし、シリカを含有する下塗り層と、ポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂を含有する上塗り層と、を順に積層配置してなるプレコート鋼板。
【0012】
(2)前記上塗り層におけるポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂の含有比率が、ポリエーテルサルフォン樹脂100質量部に対して、4フッ化エチレン樹脂20〜40質量部および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂55〜75質量部である前記(1)に記載のプレコート鋼板。
【0013】
(3)前記下塗り層におけるシリカの含有量がSi付着量で10mg/m以上15mg/m以下である前記(1)または(2)に記載のプレコート鋼板。
【0014】
(4)前記下塗り層の厚さが3μm以上10μm以下および前記上塗り層の厚さが3μm以上20μm以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のプレコート鋼板。
【0015】
(5)ステンレス鋼板または亜鉛系めっき鋼板の表面上に、クロムおよびシランカップリング剤を含まないシリカ系の化成処理層を形成したのち、該化成処理層上に、ポリエーテルサルフォン樹脂および4フッ化エチレン樹脂を主成分とし、シリカを含有する塗料を塗布し、260〜300℃の温度で焼付けて下塗り層を形成し、次いで前記下塗り層上に、ポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂を含有する塗料を塗布し、310〜350℃の温度で焼付けて上塗り層を形成することを特徴とするプレコート鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塗膜の密着性および耐食性に優れ、かつ潤滑性にも優れる、クロムフリーのプレコート鋼板を提供することができる。また、本発明の方法によれば、高温焼付けが必要とされるフッ素樹脂塗装鋼板のクロメートフリー化において、塗膜性能の低下なしに製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のプレコート鋼板及びその製造方法について説明する。
まず、下地となる鋼板には、ステンレス鋼板または亜鉛系めっき鋼板を用いる。亜鉛系めっき鋼板としては、溶融めっきもしくは電気めっきにより鋼板に純亜鉛または亜鉛−アルミニウム合金のめっき層を形成した亜鉛系めっき鋼板が適合する。
【0018】
すなわち、自動販売機のシューターおよびラック等に使用するプレコート鋼板は、まず、耐食性に優れていることが望ましいことから、耐食性に優れるステンレス鋼板または亜鉛系めっき鋼板を使用する。両者は、用途や要求される耐食性等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0019】
なお、亜鉛系めっき鋼板のめっき付着量は、耐食性と加工性を考慮すると、片面当り15〜90g/m2の範囲内にあることが望ましい。めっき付着量が片面当り15g/m2未満の場合は耐食性が不十分であり、一方片面当り90g/m2を超えると、成型加工時にめっき層からの剥離が生じやすくなる。
【0020】
次に、ステンレス鋼板または亜鉛系めっき鋼板を下地鋼板として塗膜層を形成する場合、この下地鋼板と塗膜層との密着性を確保して、優れた加工性、耐食性および2次密着性を得るために、下地鋼板の表面に化成処理層を形成する必要がある。
【0021】
この化成処理層は、クロムとシランカップリング剤を含まず、シリカを含む化成処理にて形成することが肝要である。すなわち、クロムフリー化に当ってクロムを含まないことは勿論であるが、後述のように、本発明での塗膜層の焼付け温度が高温であるところから、高温で分解しやすいシランカップリング剤を含まず、シリカを含む化成処理液にて化成処理層を形成することが重要である。
【0022】
ここに、シリカを含む化成処理層とは、塗膜密着性および耐食性を確保するためにシリカを25〜50質量%含むことが好ましい。さらに、他にリン、マグネシウム、ジルコニウム等を含むことが好ましい。この化成処理液はロールコーターにて30mg/m2〜70mg/m2の付着量となる様に塗布され、80〜120℃の温度で焼き付けることが好ましく、化成処理層中のシリカ含有量をSi付着量で10〜20mg/m2とすることが好ましい。
【0023】
以上の化成処理層を形成したのち、該化成処理層上に、ポリエーテルサルフォン樹脂および4フッ化エチレン樹脂を主成分とし、さらにシリカを含有する塗料を、塗布そして焼付けて、下塗り層を形成する。
【0024】
ここで、塗膜の下層を構成する下塗り層は、とりわけシリカを含有することが重要であり、このシリカは、防錆剤として機能させることのほか、上記化成処理層との間の密着性を向上するのに寄与させるものである。すなわち、本発明での塗膜層の焼付け温度は高温であるため、化成処理層上に形成する下塗り層にシリカが含まれていると、高温時における安定性に優れているため、シリカ自体が有している密着機能を十分に発揮することができる。
【0025】
前記下塗り層におけるシリカの含有量はSi付着量で10mg/m2以上15mg/m2以下であることが好ましい。すなわち、シリカの含有量がSi付着量で10mg/m2未満では、耐食性および塗膜密着性が低下しやすく、一方15mg/m2を超えると、塗膜密着性が低下しやすい。
【0026】
また、前記下塗り層の塗料中のポリエーテルサルフォン樹脂および4フッ化エチレン樹脂の配合割合は、ポリエーテルサルフォン樹脂100質量部に対して、4フッ化エチレン樹脂20ないし40質量部とすることが好ましい。なぜなら、4フッ化エチレン樹脂の配合割合が、ポリエーテルサルフォン樹脂100質量部に対し、40質量部を超えると、粘着性、耐熱性の向上効果が飽和し、逆に塗料の流動性が悪くなり、外観不良になり、また20質量部を下回ると、非粘着性、耐熱性が劣るようになり、また摩擦係数が高くなり潤滑性も劣るようになる。
【0027】
なお、上記ポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂およびシリカに加えて、着色顔料を着色ならびに意匠性を持たせる目的で、1〜10質量%の範囲で含有させることも可能である。
【0028】
上記下塗り層の厚さは、3μm以上10μm以下とすることが好ましい。なぜなら、厚さが3μm未満では、耐食性が不十分であり、一方10μmを超えると、加工性が低下し塗料コストも上昇する。
【0029】
さらに、下塗り層の塗料を塗布後の焼付け処理は、鋼板温度として260〜300℃の温度で行う。すなわち、焼付け温度が260℃未満では、加工性および塗膜密着性が不十分になり、一方300℃を超えると、加工性および塗膜密着性に加えて塗膜外観も劣化する。
【0030】
なお、塗料の塗布は、ロールコータ、カーテンフロー等公知の塗布方法によって行うことができる。また、前記で塗布した塗料の焼付は、熱風乾燥法式、誘導加熱方式、赤外線加熱方式などの公知の焼付方法によって行うことができる。
【0031】
さらに、上記の下塗り層の上に、ポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂を含有する塗料を塗布し、鋼板温度として310〜350℃の温度で焼付けて上塗り層を形成する。
【0032】
すなわち、塗膜の表層を構成する上塗り層は、とりわけテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂(FEP)を含有することが重要である。このテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂は、4フッ化エチレン樹脂と比べて約30℃焼付温度が低いにもかかわらず、耐摩耗性および非粘着性に優れており潤滑塗装鋼板に適した性能を有している。
【0033】
ここで、前記上塗り層の塗料中のポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂の配合割合は、ポリエーテルサルフォン樹脂100質量部に対して、4フッ化エチレン樹脂20〜40質量部およびテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂55〜75質量部とすることが好ましい。
【0034】
なぜなら、4フッ化エチレン樹脂の配合割合が、ポリエーテルサルフォン樹脂100質量部に対し、40質量部を超えると、粘着性、耐熱性の向上効果が飽和し、逆に塗料の流れ性が悪くなり、外観不良になり、一方20質量部を下回ると、非粘着性、耐熱性が劣るようになり、また摩擦係数が高くなり潤滑性も劣るようになる。
【0035】
また、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂の配合割合が、ポリエーテルサルフォン樹脂100質量部に対し、75質量部を超えると、塗料の流動性が悪化することにより外観不良となり、一方55質量部を下回ると、非粘着性および耐熱性がともに劣化し、また摩擦係数が高くなって潤滑性も劣化する上、焼付温度が高くなる問題も発生する。
【0036】
上塗り層の厚さは、3μm以上20μm以下とすることが好ましい。なぜなら、厚さが3μm未満では、耐食性が不十分であり、一方20μmを超えると、膜厚が20μmを超えると塗装後の外観不良になり、また加工性、2次密着性が劣化するからである。
【0037】
さらに、上塗り層の塗料を塗布後の焼付け処理は、310〜350℃の温度で行う。すなわち、焼付け温度が310℃未満では、加工性および塗膜密着性が不十分になり、一方350℃を超えると、加工性および塗膜密着性に加えて塗膜外観も劣化してしまう。
【0038】
なお、上塗り層において、上記ポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂に加えて、着色顔料を着色ならびに意匠性を持たせる目的で、1〜10質量%の範囲で含有させることも可能である。
【0039】
また、上塗り層の塗料の塗布は、下塗り層と同様に、ロールコータ、カーテンフロー等公知の塗布方法によって行うことができる。また、前記で塗布した塗料の焼付は、熱風乾燥法式、誘導加熱方式、赤外線加熱方式などの公知の焼付方法によって行うことができる。
【実施例】
【0040】
板厚が各々0.5mmの、電気亜鉛めっき鋼板(めっき付着量片面当り20g/m2)、溶融亜鉛めっき鋼板(めっき付着量片面当り30g/m2)およびステンレス鋼板を準備し、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板およびステンレス鋼板に、シリカを35質量%含む化成処理液を50mg/m2の付着量となる様に塗布し、100℃の温度で焼き付けるシリカを含む化成処理液による化成処理を施し、シリカ含有量をSi付着量で15mg/m2とする化成処理層Aを形成した。
【0041】
なお、化成処理層のSi付着量は、化成処理層を形成した鋼板について蛍光X線でSiカウント量を求め、予め作成したSiカウント量とSi付着量の検量線からSi付着量を求めたものである。また比較としてシリカに代えてシランカップリング剤を含む化成処理液についてもSi付着量で15mg/m2とする化成処理層Bを形成した。
【0042】
次いで、化成処理層を形成した各々の鋼板に、表1に示す配合になる下塗り塗料をロールコーターで塗布したのち、表1に示す条件で熱風乾燥炉により焼付けて下塗り層を形成し、次いで表1に示す配合になる上塗り塗料をロールコーターで塗布したのち、表1に示す条件で熱風乾燥炉により焼付けて上塗り層を形成し、表1に示すプレコート鋼板No.1〜20を作製した。
【0043】
また、比較のために、本発明で規定する条件の少なくとも1つが外れた条件にて、表2に示すプレコート鋼板No.21〜24も作製した。
【0044】
なおここで、下塗り層のシリカ含有量は得られたプレコート鋼板について蛍光X線でSiカウント量を求め、ここから化成処理層を形成した鋼板について求めていたSiカウント量を差し引いて下塗り層中のシリカに基づくSiカウント量を求め、予め作成したSiカウント量とSi付着量の検量線からSi付着量を求めたものである。
【0045】
かくして得られたプレコート鋼板の各々について、塗膜外観、非粘着性、摩擦係数、加工性、2次密着性および耐食性を、以下に述べる性能試験によって評価した。その評価結果を表1および表2に併記する。
【0046】
[塗膜外観]
プレコート鋼板(長さ30m)の塗膜を目視で観察し、観察結果を下記によって評価した。

◎:ワキ、膨れなどが全くない場合
○:ワキ、膨れなどが5m未満で確認された場合
△:ワキ、膨れなどが5m以上15m未満で確認された場合
×:ワキ、膨れなどが15m以上で確認された場合
【0047】
[摩擦係数]
摩擦係数測定装置「HEIDON 10」を使用し、傾斜させた供試体の上に載せた重量150gのステンレス鋼ボードが滑り始めるときの傾斜角度θから静摩擦係数μ(=tanθ)を求め、下記によって評価した。

◎:μが0.12未満の場合
○:μが0.12〜0.18未満の場合
△:μが0.18〜0.22未満の場合
×:μが0.22以上の場合
【0048】
[加工性]
供試体(幅100mm)をJIS Z 2248-1996に準拠した180°に折曲げる0T曲げを実施した後、曲げ部外側にセロテープ(登録商標)を貼り、次いでこれを剥がし、曲げ部の塗膜の剥離面積により下記によって評価した。

◎:剥離がない場合
○:剥離面積が1〜5%未満の場合
△:剥離面積が5〜30%未満の場合
×:剥離面積が30%以上の場合
【0049】
[2次密着性]
供試体の塗膜にカッターナイフで鋼素地まで達する1mm間隔の碁盤目状の刻み目を10×10の100桝となるように入れた後、供試体をエリクセン試験機で9mmの押出しを施し、次いで沸騰水に3時間した後、24時間放置し、次いで刻み目部分にセロテープ(登録商標)を貼りそしてこれを剥がした時の、供試体に生じた剥離面積に基づき、下記により評価した。

◎:剥離面積が5%未満の場合
○:剥離面積が5〜10%未満の場合
△:剥離面積が10〜30%未満の場合
×:剥離面積が30%以上の場合
【0050】
[耐食性]
供試体に対し、その塗膜に鋼素地まで達するクロス状の刻み目を入れ、このようなクロス上の刻み目の入った供試体について、JIS Z 2371−2000に準拠した240時間の塩水噴霧試験を施し、生じた発錆部面積の全体面積に対する比率を発錆率として下記により評価した。

◎:発錆率が10%未満の場合
○:発錆率が10〜25%未満の場合
△:発錆率が25〜50%未満の場合
×:発錆率が50%以上の場合
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
表1および表2から、以下のことが明らかである。
本発明例は比較例に比べ塗膜性能が良好である。特に、本発明例では、摩擦係数が小さく、潤滑性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼板または亜鉛系めっき鋼板の表面上に、クロムとシランカップリング剤を含まずシリカを含む化成処理層を有し、該化成処理層上に、ポリエーテルサルフォン樹脂および4フッ化エチレン樹脂を主成分とし、シリカを含有する下塗り層と、ポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂を含有する上塗り層と、を順に積層配置してなるプレコート鋼板。
【請求項2】
前記上塗り層におけるポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂
の含有比率が、ポリエーテルサルフォン樹脂100質量部に対して、4フッ化エチレン樹脂20〜40質量部および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂55〜75質量部である請求項1に記載のプレコート鋼板。
【請求項3】
前記下塗り層におけるシリカの含有量がSi付着量で10mg/m以上15mg/m以下である請求項1または2に記載のプレコート鋼板。
【請求項4】
前記下塗り層の厚さが3μm以上10μm以下および前記上塗り層の厚さが3μm以上20μm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のプレコート鋼板。
【請求項5】
ステンレス鋼板または亜鉛系めっき鋼板の表面上に、クロムおよびシランカップリング剤を含まないシリカ系の化成処理層を形成したのち、該化成処理層上に、ポリエーテルサルフォン樹脂および4フッ化エチレン樹脂を主成分とし、シリカを含有する塗料を塗布し、260〜300℃の温度で焼付けて下塗り層を形成し、次いで前記下塗り層上に、ポリエーテルサルフォン樹脂、4フッ化エチレン樹脂および、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合樹脂を含有する塗料を塗布し、310〜350℃の温度で焼付けて上塗り層を形成することを特徴とするプレコート鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2008−163422(P2008−163422A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356305(P2006−356305)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】