説明

プレハブ式建築物の壁構造

【課題】従来のプレハブ式建築物用の断熱パネルは耐火性に欠け、火災による高熱が表面鉄板から熱伝導して金属枠が変形溶解し、プラスチック枠、木質材枠が燃焼し、発泡プラスチック充填材が溶融、膨張或いは燃焼し、表裏面鉄板が熱で反曲し、枠から外れ剥がれはじける等で耐火建築物用の耐火建材として法的基準不適合が課題とされていた。
【解決手段】プレハブ式建築物の柱8、胴縁9等の骨組みに各種断熱パネル3を張設して周壁を形成し、その断熱パネル周壁の外側に耐火ボード2、外壁板1を積層配置し、ねじ7を外壁板、耐火ボード、断熱パネルの表面鉄板4aを通し、表面鉄板内面の固定用鉄板5に螺合し前記3者をねじ止め一体結着して設けた、耐風水性・耐火性・断熱性の壁構造Cよって課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁パネル、床パネル、天井パネル、屋根パネル等の各種パネルを用いて建築するプレハブ式建築物において、該建築物の周壁(壁・床・天井・屋根等)の全部若しくは一部を形成する壁構造に係り、
該壁構造は、外壁板、耐火ボード、及び、断熱パネルからなり、前記外壁板は、一般的な建築外装用の角波鉄板(折板(セッパン))、波鉄板・(なまこ板)、若しくは、カラー鉄板、装飾鉄板等の鉄板であり、波鉄板、若しくは鉄板であり、耐火ボードは、石膏、珪酸カルシウム、珪藻土、若しくは、ロックウール等の耐火材製の一般的な建築用ボードであり、断熱パネルは、金属製、硬質プラスチック製、若しくは、木質材製の枠材で形成した長方形枠の表裏両面に長方形鉄板を張設し、予め表面鉄板の内面に平行等間隔に狭長な固定用鉄板を接着しておき、長方形枠と表裏面鉄板により形成した枠内空間に発泡プラスチックを注入して設けた、プレハブ式建築物用の壁パネル、床パネル、天井パネル、若しくは、屋根パネル等の各種パネルであって、
前記外壁板、耐火ボード、断熱パネルの3者を積層配置し、外壁板の外側から、外壁板、耐火ボード、及び、断熱パネルの表面鉄板を通したねじを、表面鉄板内面の固定用鉄板に螺合して前記外壁板、耐火ボード、断熱パネルの3者をねじ止め一体結着して、外壁板による耐風水層、耐火ボードによる耐火層、断熱パネルによる断熱層の3重層に備えた壁構造を設けるようにし、もって、耐風水・耐火・断熱の3要素を兼備したプレハブ式建築物の壁構造を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
プレハブ式建築物用の各種断熱パネルは、金属製、硬質プラスチック製、若しくは、木質材製の枠材で形成した長方形枠の表裏両面に長方形鉄板を張設し、予め表面鉄板の内面に平行等間隔に狭長な固定用鉄板を接着しておき、長方形枠と表裏面鉄板により形成した枠内空間に発泡プラスチックを注入して設けた、プレハブ式建築物用の壁パネル、床パネル、天井パネル、若しくは、屋根パネル等の各種パネルであって、特に建物内外の温度差を遮断する断熱性に優れる他、耐久性、耐外圧衝撃性、水気密性、遮音性等に優れるため、冷凍・冷蔵庫、冷凍・冷蔵倉庫、クリーンルーム、各種倉庫、作業場等のプレハブ式建築物に広く使用されている。
【0003】
ところが、前記従来の断熱パネルは、著しく耐火性に欠ける難点があり、火災等によって高熱が加わると表面鉄板から熱伝導してアルミ製枠が比較的低温で変形溶解し、硬質プラスチック枠、木質材枠は燃焼し、発泡プラスチック充填材は溶融、膨張して外部へ洩出し或いは燃焼し、更に表裏面鉄板が熱で反曲し、枠から外れ剥がれはじける等で、パネルが損傷、破壊、燃焼する恐れがあるなど、耐火建築物用の耐火建材として使用できない(法的基準不適合)ことが大きな課題とされてきた。
【0004】
そのため、従来、断熱性が要求されるため断熱パネルを使用して、法的基準に適合する耐火性を備えた建築物を建築しようとする場合は、例えば、図4に示すように、該建築物の外周壁を耐火性に優れた耐火ボード102により形成し、該耐火ボード102に欠けた耐風水性を補うために、耐火ボードの外面を耐風水性に優れた角波鉄板等の外壁板101で覆い、前記耐火ボード102・外壁板101で形成した耐火・耐風水壁の内側に、火災による外壁板101、耐火ボード102からの伝導熱を遮断するための設定空間105を隔てて、内周壁を断熱パネル103で形成して、法定基準を満たした耐火・耐風水性と優れた断熱性を兼備した壁構造100Cのプレハブ式建築物を設けるようにしている。
なお、104aは断熱パネル103の表面鉄板、104bは裏面鉄板、106は発泡プラスチック、また、107はねじ、くぎ等、109は胴縁である。
【0005】
ところが、前記従来の耐火・耐風水性及び断熱性を兼備したプレハブ式建築物は、建物の周壁を2重にし、その上相互周壁間に設定空間を隔てて形成せねばならぬため、周壁建築に2重の手間とコストを要し、設定空間を隔てたため周壁が極めて厚くなり、そのため建築面積に対する内部面積の割合が小さくなる等の課題があった。
【0006】
また、出願人は先に特願2002−257035号(特開2004−092265号)をもって、厚手狭長な鋼板を横断面複数直角に折曲げて設けた枠材で同形同代の長方形等に形成した内フレーム及び外フレームの各片面に薄手の面鋼板を、その周縁部を各フレームの周縁の直角部に沿って2直角に折曲げ固着して張設し、内外フレームの相対する左側枠の中間に介在した狭長な中間板と内外左側枠をボルト・ナットで連結すると共にその連結位置が内外フレームで互い違いになるように連結して、内外フレームの左側が外方へ拡開しないように備え、上記の面鋼板を張設した内外フレームの間にロックウール等の充填材を充填し、また、隣接パネルの接続時に、一方パネルの左側枠の直角突設部を他方パネルの右側枠の直角凹部に嵌合することにより、内外フレームの右側が外方へ拡開しないように備えたものである、「プレハブ式建築物構築物等用の耐火パネル」を特許出願したが、該耐火パネルは、長時間の耐火性能において、パネルの表面鉄板が反曲する等の点で未解決な部分があり、更なる改良が必要とされていた。
【特許文献1】特開2004−092265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、従来の課題が、プレハブ式建築物において、耐火性を要求される場合に、該建築物の周壁(壁・床・天井・屋根等)の全部若しくは一部を形成する壁構造に、極めて優れた断熱性を有する断熱パネルを、有効に使用できない点にあったことに着目して、
前記壁構造を、外壁板、耐火ボード、断熱パネルの3者を積層配置し、外壁板の外側から、外壁板、耐火ボード、及び、断熱パネルの表面鉄板を通したねじを、表面鉄板内面の固定用鉄板に螺合して前記外壁板、耐火ボード、断熱パネルの3者をねじ止め一体結着して、外壁板による耐風水層、耐火ボードによる耐火層、断熱パネルによる断熱層の3重層に備えた壁構造を設けるようにし、もって、耐風水・耐火・断熱の3要素を兼備したプレハブ式建築物の壁構造を発明開発して、従来の課題を解決したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、プレハブ式建築物の周壁の全部若しくは一部を形成する壁構造であり、該壁構造は、外壁板、耐火ボード、及び、断熱パネルからなり、前記外壁板は、建築外装用の角波鉄板、波鉄板、若しくは鉄板であり、耐火ボードは、耐火材製の建築用ボードであり、断熱パネルは、金属製、硬質プラスチック製、若しくは、木質材製の枠材で形成した長方形枠の表裏両面に長方形鉄板を張設し、予め表面鉄板の内面に平行等間隔に狭長な固定用鉄板を接着しておき、長方形枠と表裏面鉄板により形成した枠内空間に発泡プラスチックを注入して設けた、プレハブ式建築物用の壁パネル、床パネル、天井パネル、若しくは、屋根パネルであって、
前記外壁板、耐火ボード、断熱パネルの3者を積層配置し、ねじを外壁板、耐火ボード、断熱パネルの表面鉄板を通し、表面鉄板内面の固定用鉄板に螺合して前記3者をねじ止め一体結着して、外壁板による耐風水層、耐火ボードによる耐火層、断熱パネルによる断熱層の3重層に備えた壁構造であり、もって、耐風水・耐火・断熱の3要素を兼備した壁構造を設けたものである、プレハブ式建築物の壁構造によって課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、プレハブ式建築物の柱、梁、胴縁等の骨組みに各種断熱パネルを使用して周壁を形成し、その断熱パネルの外側に外壁板、耐火ボードを積層配置し、ねじを外壁板、耐火ボード、断熱パネルの表面鉄板を通し、表面鉄板内面の固定用鉄板に螺合して前記3者をねじ止め一体結着するだけで、極めて簡単かつ極めて低コストで、外壁板による耐風水層、耐火ボードによる耐火層、断熱パネルによる断熱層の3重層に備えた壁構造をもうけることができ、もって、耐風水・耐火・断熱の3大要素を兼備した壁構造を提供することができる画期的な効果がある。
【0010】
断熱パネルは、断熱パネルの正面鉄板の内面に予め固定用鉄板を埋設するだけで、その他は従来の断熱パネルと同じであり、外壁板は市販の角波鉄板等を使用し、また、耐火ボードも市販の石膏ボート等を使用するので、余計な手数、時間、コスト等を要することなく、優れた耐風水・耐火・断熱の3大性能を兼備したプレハブ式建築物を建築提供することができる効果がある。
【0011】
また、建築面積における壁の厚さの点でも、通常の断熱パネル製のプレハブ式建築物と殆ど変わらない利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
プレハブ式建築物の柱、梁、胴縁等の骨組みに各種断熱パネルを張設して周壁を形成し、その断熱パネル周壁の外側に耐火ボード、外壁板を積層配置し、ねじを外壁板、耐火ボード、断熱パネルの表面鉄板を通し、表面鉄板内面の固定用鉄板に螺合し前記3者をねじ止め一体結着して、耐風水性・耐火性・断熱性の周壁を備えた各種のプレハブ式建築物を建築する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明実施例壁構造の一部の一部切欠正面図、図2は図1のA-A線断面矢視一部拡大図、図3は図1のB-B線断面矢視一部拡大図である。
【0014】
本発明は、プレハブ式建築物の周壁の全部若しくは一部を形成する壁構造であり、該壁構造Cは、外壁板1、耐火ボード2、及び、断熱パネル3からなり、前記外壁板1は、建築外装用の角波鉄板、波鉄板、若しくは鉄板であり、耐火ボード2は、耐火材製の建築用ボードであり、断熱パネル3は、金属製、硬質プラスチック製、若しくは、木質材製の枠材で形成した長方形枠の表裏両面に長方形鉄板4a、4bを張設し、予め表面鉄板4aの内面に平行等間隔に狭長な短冊板状の固定用鉄板5を接着しておき、長方形枠と表裏面鉄板4a、4bにより形成した枠内空間に発泡プラスチック6を注入して設けた、プレハブ式建築物用の壁パネル、床パネル、天井パネル、若しくは、屋根パネルであって、
前記外壁板1、耐火ボード2、断熱パネル3の3者を積層配置し、ねじ7を外壁板1、耐火ボード2、断熱パネル3の表面鉄板4aを通し、表面鉄板4a内面の固定用鉄板5に螺合して前記3者をねじ止め一体結着して、外壁板1による耐風水層、耐火ボード2による耐火層、断熱パネル3による断熱層の3重層に備えた壁構造であり、もって、耐風水・耐火・断熱の3要素を兼備した壁構造Cを設けたものである。
【0015】
なお、上記において、前記外壁板1は、建築外装用の角波鉄板(図示例)、波鉄板、若しくは鉄板であり、前記耐火ボード2は、耐火材製の建築用ボードであり、前記耐火材は石膏(図示例、石膏ボード)、珪酸カルシウム、珪藻土、若しくは、ロックウールであり、前記断熱パネル3は、金属製、硬質プラスチック製、若しくは、木質材製の枠材で形成した長方形枠の表裏両面に長方形鉄板4a、4bを張設し、予め表面鉄板4aの内面に平行等間隔に狭長な固定用鉄板5を接着しておき、長方形枠と表裏面鉄板により形成した枠内空間に発泡プラスチック6を注入して設けた、プレハブ式建築物用の壁パネル(図示例)、床パネル、天井パネル、若しくは、屋根パネルである。
【0016】
而して、本発明壁構造Cは、具体的には、プレハブ式建築物の骨組みを構成する柱8、胴縁9、梁、桟、若しくは、土台に前記断熱パネルを連結(連結金具10で)すると共に断熱パネル3相互を連結して壁面を形成し、該壁面の断熱パネル3に前記耐火ボード2を仮止め支持し、耐火ボード2に前記外壁板1を当接したのち、タップねじ8を外壁板の外側から外壁板、耐火ボード、断熱パネルの表面鉄板4aを通して固定用鉄板5に螺合して、外壁板1、耐火ボード2、断熱パネル3の3者をねじ止め一体結着し、もって、プレハブ式建築物に耐風水・耐火・断熱の3要素を兼備した壁構造Cを設けたものである。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明壁構造は、熟練不要で、簡単迅速に、かつ低コストに構築することができるため、断熱性と同時に耐火性が必要とされる各種のプレハブ式建築物若しくは壁構造を、断熱パネルを使用して建築する場合に汎用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明実施例壁構造の一部の一部切欠正面図。
【図2】図1のA-A線断面矢視一部拡大図。
【図3】図1のB-B線断面矢視一部拡大図。
【図4】従来の耐風水性・耐火性・断熱性の壁構造の一例の横断面一部拡大説明図。
【符号の説明】
【0019】
C 本発明実施例の耐風水性・耐火性・断熱性の壁構造
1 外壁板
2 耐火ボート
3 断熱パネル
4a 表面鉄板
4b 裏面鉄板
5 固定用鉄板
6 発泡プラスチック
8 柱
9 胴縁
10 連結金具
100C 従来の耐風水性・耐火性・断熱性の壁構造
101 外壁板
102 耐火ボート
103 断熱パネル
104a 表面鉄板
104b 裏面鉄板
105 設定空間
106 発泡プラスチック
107 ねじ、タップねじ
109 胴縁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレハブ式建築物の周壁の全部若しくは一部を形成する壁構造であり、該壁構造は、外壁板、耐火ボード、及び、断熱パネルからなり、前記外壁板は、建築外装用の角波鉄板、波鉄板、若しくは鉄板であり、耐火ボードは、耐火材製の建築用ボードであり、断熱パネルは、金属製、硬質プラスチック製、若しくは、木質材製の枠材で形成した長方形枠の表裏両面に長方形鉄板を張設し、予め表面鉄板の内面に平行等間隔に狭長な固定用鉄板を接着しておき、長方形枠と表裏面鉄板により形成した枠内空間に発泡プラスチックを注入して設けた、プレハブ式建築物用の壁パネル、床パネル、天井パネル、若しくは、屋根パネルであって、
前記外壁板、耐火ボード、断熱パネルの3者を積層配置し、ねじを外壁板、耐火ボード、断熱パネルの表面鉄板を通し、表面鉄板内面の固定用鉄板に螺合して前記3者をねじ止め一体結着して、外壁板による耐風水層、耐火ボードによる耐火層、断熱パネルによる断熱層の3重層に備えた壁構造であり、もって、耐風水・耐火・断熱の3要素を兼備した壁構造を設けたものである、
プレハブ式建築物の壁構造。
【請求項2】
前記外壁板は、建築外装用の角波鉄板、波鉄板、若しくは鉄板であり、前記耐火ボードは、耐火材製の建築用ボードであり、前記耐火材は石膏、珪酸カルシウム、珪藻土、若しくは、ロックウールであり、前記断熱パネルは、金属製、硬質プラスチック製、若しくは、木質材製の枠材で形成した長方形枠の表裏両面に長方形鉄板を張設し、予め表面鉄板の内面に平行等間隔に狭長な固定用鉄板を接着しておき、長方形枠と表裏面鉄板により形成した枠内空間に発泡プラスチックを注入して設けた、プレハブ式建築物用の壁パネル、床パネル、天井パネル、若しくは、屋根パネルである、
請求項1のプレハブ式建築物の壁構造。
【請求項3】
プレハブ式建築物の骨組みを構成する柱、胴縁、梁、桟、若しくは、土台に前記断熱パネルを連結すると共に断熱パネル相互を連結して壁面を形成し、該壁面の断熱パネルに前記耐火ボードを仮止め支持し、耐火ボードに前記外壁板を当接したのち、ねじを外壁板の外側から外壁板、耐火ボード、断熱パネルの表面鉄板を通して固定用鉄板に螺合して、外壁板、耐火ボード、断熱パネルの3者をねじ止め一体結着し、もって、プレハブ式建築物に耐風水・耐火・断熱の3要素を兼備した壁構造を設けるようにしたことを特徴とする、
請求項1のプレハブ式建築物の壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−59700(P2010−59700A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226833(P2008−226833)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(598145381)ビーエスドアー 株式会社 (6)
【Fターム(参考)】