説明

プロスタグランジン含有眼科用カチオン性水中油型エマルジョン

【課題】高眼圧症及び/又は緑内障を治療用の化学的安定性が高い眼科用プロスタグランジン製品を提供すること。
【解決手段】上記課題は、界面フィルムによって取り囲まれた油性の核を有するコロイド粒子を含むカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョンであって、前記エマルジョンは、少なくとも1種のカチオン剤、並びにポロキサマー、チロキサポール、ポリソルベート、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ソルビタンエステル、ポリオキシステアレート及びその2つ以上の混合物から成る群から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含み、前記油性の核は、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、トラボプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、8−イソプロスタグランジンE又はその2つ以上の混合物から成る群から選択される薬剤を含むカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョンにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロスタグランジンを含有する眼科用のカチオン性の水中油型エマルジョンに関する。本発明では、用語「プロスタグランジン」は、プロスタグランジン、その前駆体又は類縁体に対して差別なく使用される。
【0002】
本発明は、たとえば、特に、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、トラボプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、8−イソプロスタグランジンE2のようなプロスタグランジンE類縁体又はその2以上の混合物に特に関する。
【0003】
「眼科用」なる用語によって、眼に投与することが意図され、医薬効果を提示するエマルジョンを意味し;特にそれは、局所に適用される。
【背景技術】
【0004】
緑内障を治療するために眼科用製剤にてプロスタグランジンを使用することが知られている。プロスタグランジン、特にラタノプロストで遭遇する問題は、規定時間を超えた製剤でそれらの濃度が低下することである。
【0005】
米国特許第6,011,062号、同第5,688,819号、同第5,849,792号及び同第4,599,353号は、緑内障及び高眼圧症を治療するのに数種のプロスタグランジン類縁体を使用することを記載している。米国特許第5,849,792号は、プロスタグランジンの化学的安定性を高めるために非イオン性の界面活性剤(ポリエトキシ化ヒマシ油)を使用することを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プロスタグランジンの安定性を高めるために提案された解決法は、完全に満足が行くわけではない。さらに、DebbaschらがInvestigative Ophthalmology & Visual Science, March 2001, Vol42 n°3においてBAK及び/又はそのほかの四級アンモニウムの長期間使用の重大な毒性を実証して以来、眼科用製剤におけるプロスタグランジンの保存剤としてのBAK又はそのほかの四級アンモニウムの使用は難題となっている。
【0007】
ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、イソプロピルウノプロストン、タフルプロスト、8−イソプロスタグランジンE2など、ほとんどのプロスタグランジン類縁体は水に難溶性である。よって、疎水性薬剤を送達するのに好適な眼科用ビヒクルを提供することは興味深い。近年、水中油型のエマルジョン、特に、サブミクロンの大きさの液滴を有するエマルジョン(以後、「サブミクロンエマルジョン」)が重要性を増している。これらのエマルジョンは一般にアニオン性エマルジョンである。エマルジョンのような局所に適用する眼科用薬剤の送達システムを開発することにおける主なハードルは、薬剤の生物学的利用率が相対的に低いことである。この問題点に対処するために、局所眼科用ビヒクルとしてカチオン性エマルジョンを開発したが、それらは、エマルジョンの正の電荷と眼の表面で保持される負の電荷との間の静電気引力によって薬剤の生物学的利用率を高めるという利点を有する。しかしながら、サブミクロンのエマルジョンを含むエマルジョンを安定化することが当業者にとって関心事ともいえる。エマルジョンを安定化する既知の試みの1つは、液滴表面に静電荷を付与し、それが結果として液滴の反発力を生じ、液滴の融合を減らすことである。溶液中に分散されたコロイド状粒子は、それらのイオン性の特徴及び双極子の属性のために電気的に荷電される。結果としてアニオン性エマルジョンを生じることに否定的で、カチオン性エマルジョンを生成することに肯定的でありうるこの電荷(Klang et al., Pharm.Dev.Technology 2000, 5, 521−532)は、当該技術では、「ゼータ電位」として知られる。ゼータ電位は、粒子間の反発力又は引力の大きさの尺度である(Washington, Adv.Drug Deliv.Reviews 1996, 20:131−145)。
【0008】
特に関心があるのは、眼の局所投与用のカチオン性エマルジョンを扱っている以下の特許である。
【0009】
米国特許第6,007,826号は、正に荷電した界面フィルムと共にコロイド粒子を含むカチオン性の水中油型エマルジョンを開示している。界面フィルムは、たとえば、C10〜C14の一級アルキルアミン類(開示されているのは、ステアリルアミン又はオレイルアミン)、C10〜C24の一級アルカノールアミン又はコレステロールベタイナートのようなカチオン性脂質(0.05〜3質量%);リン脂質(0.5〜3%)、並びにポロキサマー、チロキサポール、ポリソルベート及びポリオキシエチレン脂肪酸エステル(0.05〜3%)から成る群からの非イオン性界面活性剤によって形成される。油性の核の濃度は、3〜20%の範囲内で維持される。
【0010】
米国特許第6,007,826号のゼータ電位エマルジョンは、熱応力に対して安定ではない(Tamilvanan et al., STP Pharma Sciences 2001, 11: 421−426及び実施例12を参照のこと)。
【0011】
従って、少なくとも市販品ほどの有効性があり、プロスタグランジンの化学的安定性が高められており、毒性が低く、従来製品より物理的に且つ化学的に安定であり、すなわち、規定時間を超えて安定であり、及び患者に対して良好な認容性を呈する眼科用プロスタグランジン製品へのニーズが依然として存在する。
【0012】
本発明の意味において、規定時間を超えて、1年を超える、好ましくは2年を超える、さらに好ましくは3年を超える持続期間を意味する。
【0013】
本発明における「良好な認容性」によって、治療上の利益と眼の不快感の比が患者によって受入可能であり、好ましくは偽薬又は0.9%NaCl溶液に類似することが理解される。良好な認容性を示すためには、製剤中のカチオン含量は、0.1%を超えるべきではなく、好ましくは0.05%を超えず、一層さらに好ましくは0.03%を超えるべきではないことが一般に受け入れられている。たとえば、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンゾドデシニウム及び塩化ベンズエトニウムのような四級アミンは、およそ0.03%までの濃度で、眼科用投与について保健機関によって認められている(Furrer et al., Eur.J.Pharm.Biopharm.2002, 53:263−280).)。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明は、界面フィルムによって取り囲まれた油性の核を有するコロイド粒子を含むカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョンに関するものであり、前記エマルジョンは、少なくとも1種のカチオン剤、並びにポロキサマー、チロキサポール、ポリソルベート、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ソルビタンエステル、ポリオキシステアレート及びその2つ以上の混合物から成る群から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含み、前記油性の核は、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、トラボプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、8−イソプロスタグランジンE2又はその2つ以上の混合物から成る群から選択される薬剤を含み、前記エマルジョンは、ポリビニル化合物、水溶性セルロース化合物及び多糖類から選択される水溶性ポリマーを含まない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
好ましい実施態様では、本発明のエマルジョンは、唯一の薬剤として又は、イソプロピルウノプロストン、トラボプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト及び8−イソプロスタグランジンE2から成る群から選択される1以上のプロスタグランジンと併用することにより、ラタノプロストを含む。
【0016】
好ましい実施態様によれば、本発明のエマルジョンは、(1)ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンのようなポリビニル化合物、(2)メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はナトリウムセルロースのような水溶性セルロース化合物、並びに(3)アルギン酸、キサンタンゴム、カラーギーナン及びキトサンから選択される多糖類、から選択される水溶性ポリマーを含まない。
【0017】
ある実施態様によれば、上記エマルジョンは、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、特に、たとえば、PEG、PEG−30、PEG−35、PEG−50ヒマシ油のようなポリエトキシ化ヒマシ油を包含する。
【0018】
別の実施態様によれば、エマルジョンは、いかなるポリオキシエチレンヒマシ油誘導体も含まない。
【0019】
化合物又は化合物の列記と組み合わせた用語「含まない」は、エマルジョンがその種の化合物を含有しないことを意味する。
【0020】
本発明の特定の実施態様によれば、エマルジョンはさらに、抗炎症性化合物、好ましくは、非ステロイド性の抗炎症性化合物又はオメガ−3脂肪酸を含んでもよい。抗炎症剤は、COX−2阻害剤、サリチレート、2−アリールプロピオン酸、N−アリールアントラニル酸、オキシカム、スルホンアニリド、ピラゾリジン誘導体、アリールアルカン酸、3−ベンゾフェニル酢酸及びその誘導体;たとえば、コルチゾン、ハイドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、フルオロメタロン、メドリソン、ベタメタゾン、ロテプレドノル、フルメタゾン、モメタゾン、テストステロン、メチルテストステロン、ダナゾール、ベクロメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンパルミテート、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、ジフルオウレドナート、リメキソロンのようなステロイドを含む群から選択されてもよい。
【0021】
本発明のエマルジョンでは、プロスタグランジンの化学的安定性が高められる。いかなる理論にも拘束されないが、プロスタグランジンはエマルジョンの油性の核に可溶化されるので、その分解を高める作用剤と接触させることはあまり利用できないと考えられる。前記安定性は、特定された限定の範囲内で、並びにその保存及び使用の期間全体(すなわち、その製品寿命)を通して製品が、製造時それが持っていたのと同一の特性及び特徴を保持する程度として定義される。安定性試験の目的は、たとえば、温度、湿度及び光のような種々の環境要因のもとで、薬剤物質又は薬剤製品が規定時間を超えてどのように変化するのか、並びに推奨される保存条件、再試験期間及び確立されるべき寿命をどのように可能にするのかに関する証拠を提供することである。
【0022】
リアルタイムの安定性試験は、最終的に薬剤の有効期間に影響を及ぼすそれらの因子を評価することを含むが、それには時間とコストがかかる。従来、医薬品の寿命を予測するには安定性加速試験が使用される。そのような加速試験では、40℃の温度に6ヵ月間、システムが供される。
【0023】
分解経路を確立し、有望な分解産物を同定することによって分子に固有の安定性メカニズムを理解し、そのようにして使用されるべき分析手順を調整するために、本出願者は、エマルジョンを特定の期間、80℃の温度である極端な条件にさらすストレス安定性試験を開発した。本発明に係るエマルジョンの油性の核に存在するプロスタグランジンの量は、プロスタグランジンの性質及び用途に依存する。ある実施態様によれば、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、トラボプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、8−イソプロスタグランジンE2又はその2以上の混合物を含む群又はそれらから成る群から選択される薬剤の量は、0.001〜1%w/w、好ましくは0.002〜0.3%w/w、一層さらに好ましくは0.004〜0.15%w/wである。
【0024】
本出願では、比率は、エマルジョンの総重量に対する重量で表現される(%w/w)。
【0025】
カチオン剤の濃度は、0.001〜0.1%w/wの間、好ましくは0.002〜0.05%w/wの間、一層さらに好ましくは0.003〜0.03%w/wの間で構成される。
【0026】
油性の核の濃度は、7%w/w以下であり、好ましくは0.5〜5%w/wの間であり、一層さらに好ましくは1〜3%w/wの間である。
【0027】
非イオン剤の濃度は、1%w/wより低く、好ましくは0.01〜0.6%w/wの間で構成される。カチオン剤は、C10〜C24の一級アルキルアミン類、三級脂肪族アミン類;ベンザルコニウムハロゲン化合物、ラウラルコニウムハロゲン化合物、セトリミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化合物、テトラデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化合物、ドデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化合物、セトリモニウムハロゲン化合物、ベンゼトニウムハロゲン化合物、ベヘナルコニウムハロゲン化合物、セタルコニウムハロゲン化合物、セテチルジモニウムハロゲン化合物、セチルピリジニウムハロゲン化合物、クロロアリルメタンアミンハロゲン化合物、ミリスタルコニウムハロゲン化合物、ステアラルコニウムハロゲン化合物からなる群、又はその2以上の混合物を含む群から選択される四級アンモニウム化合物;好ましくは塩化物又は臭化物であるハロゲン化合物、カチオン性脂質、アミノアルコール類;クロロヘキシジン及びその塩、ポリアミノプロピルビグアニド、フェンフォルミン、アルキルビグアニド、又はその2以上の化合物を含む又はそれらから成る群から選択されるビグアニド塩;1,2−ジオレイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−ホスファチジルエタノールアミン、カチオン性グリコスフィンゴ−脂質又はカチオン性コレステロール誘導体からなる群から選ばれるカチオン性化合物、又はその2以上の混合物からなる群から選択される。本発明の特定の実施態様によれば、エマルジョンは、クロロヘキシジン及びその塩を含有しない。好ましい実施態様によれば、カチオン剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ラウラルコニウム、臭化ベンゾドデシニウム、塩化ベンゼテニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム又はその2以上の混合物を含む群から選択される。最も好ましい実施態様によれば、本発明のエマルジョンに包含されるカチオン剤は、少なくとも14の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル基で窒素原子が置換される少なくとも1つの四級アンモニウムハロゲン化合物から選択される。本発明の特定の実施態様によれば、エマルジョンは、唯一のカチオン剤としてベンザルコニウムハロゲン化合物を含有する。
【0028】
エマルジョンの油性相は、植物油(すなわち、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、ヒマシ油、スイートアーモンド油)、鉱物油(すなわち、ワセリン及び流動パラフィン)、中鎖トリグリセリド(MCT)(すなわち、炭水化物鎖が約8〜12の炭素原子を有するトリグリセリド油)、油性脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピル、油性脂肪アルコール、ソルビトールと脂肪酸のエステル類、油性スクロースエステル類、及び一般に生理的に認容される任意の油性物質を含む又はそれらから成る群から選択される1以上の成分を含んでもよい。
【0029】
本発明の実施態様によれば、油性相は、50未満の、好ましくは15以下の、さらに好ましくは5以下の、一層さらに好ましくは1以下のヨウ素価を有する。本実施態様では、油性相は、たとえば、ワセリン及び流動パラフィンのような鉱物油、並びに軽質鉱物油、炭水化物鎖が約8〜12の炭素原子を有する一般にトリグリセリド油として定義される中鎖トリグリセリド(MCT)、ココナッツ油;水素添加綿実油、水素添加ヤシ油、水素添加ヒマシ油、水素添加大豆油を含む水素添加油;ポリオキシル−40水素添加ヒマシ油、ポリオキシル−60水素添加ヒマシ油又はポリオキシル−100水素添加ヒマシ油を含むポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油誘導体を含む群又はそれらから成る群から選択される1以上の成分を含む。
【0030】
本発明の好ましい実施態様によれば、油性相の主成分は、好ましくは50未満のヨウ素価を持つ植物油、及び/又はMCTのいずれかであろう。脂肪酸又は脂肪アルコールは、エマルジョンが運ぶ疎水性物質が油性相に十分に可溶性でない場合、包含されてもよい。
【0031】
本発明のエマルジョンで使用されてもよいMCT油の例は、TCM(商標)(フランス、Societe des Oleagineux)、ミグリオール812(商標)(スウェーデン、Dynamit Novel)である。
【0032】
非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー、チロキサポール、ポリソルベート、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ソルビタンエステル、ポリオキシステアレート及びその2以上の混合物を含む又はそれらから成る群から選択される。
【0033】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、カチオン性の眼科用エマルジョンは、カチオン剤として塩化ベンザルコニウム及び非イオン性界面活性剤としてチロキサポールを含む。
【0034】
さらに別の好ましい実施態様によれば、カチオン剤として塩化ベンザルコニウム及び非イオン性界面活性剤としてチロキサポールとポロキサマーの組み合わせを含有する。
【0035】
エマルジョンはまた、ビタミンEのような抗酸化剤、等張剤、緩衝剤、保存剤などを含有してもよい。本発明の実施態様によれば、エマルジョンは少なくとも1種の保存剤を包含する。本発明の別の実施態様によれば、エマルジョンはいかなる保存剤も含有しない。本発明に係るエマルジョンのコロイド状粒子は、1μm以下の、有利には300nm以下の、さらに有利には100〜250nmの範囲内の平均粒度を有する。本発明のエマルジョンは、単用量容器又は複数用量容器で調整されてもよい。実施態様によれば、本発明のエマルジョンを運ぶための容器は、ガラス、プラスチック材料、樹脂などから形成される。
【0036】
本発明の別の実施態様によれば、カチオン性の眼科用エマルジョンは、エマルジョンの油性の核または水性部分のいずれかに、さらなる薬学上活性のある物質を含んでもよい。この薬学上活性のある物質は、レボブノロール、ベフンドール、メチプラノロール、フォルスコリン、カートロロール、チモロールのようなβ−遮断剤;ブリンゾラミド、ドルゾラミド、アセタゾラミド、メタゾラミド、ジクロロフェナミドのような炭酸脱水酵素阻害剤;ブリモニジン、アプラクロニジン、ジピベフリン、エピネフリンのような交感神経様作用剤;ピロカルピンのような副交感神経様作用剤;フィソスチグミン、エコチオフェートのようなコリンエステラーゼ阻害剤及び/又はそれらの誘導体;及び/又は光学的に許容できるその塩を含む群から選択されてもよい緑内障予防の活性物質であってもよい。
【0037】
本発明に係るエマルジョンは、上記で定義されたように規定時間を超えて物理的に安定であり、試験A、B、C及び/又はDに記載されるように特定の測定条件で正のゼータ電位を保持する。本発明によれば、エマルジョンには、規定時間を超えてゼータ電位に影響を及ぼすことができる物質は十分量含有されない。有利には、本発明のエマルジョンはリン脂質を含有しない。
【0038】
ゼータ電位に影響を及ぼすことができる物質はリン脂質であってもよく、保存の際、負に荷電するようになるいかなる物質であってもよい。
【0039】
規定時間を超えてゼータ電位に影響を及ぼす物質の量は、いつでも正の電荷量が負の電荷量を上回るようでなければならない。
【0040】
ゼータ電位ゼータ電位は、懸濁液における任意の粒子によって呈示される物性を測定する。ゼータ電位を用いて、異なった環境における懸濁液の挙動を予測することができ、懸濁液及びエマルジョンの処方を最適化することができると共に規定時間を超えた安定性を予測することができる。
【0041】
エマルジョンの液滴が互いに付着して連続的にサイズが大きくなる凝集を形成するのを回避するために、粒子に反発力を付与することが必要である。コロイド状システムに反発力を付与する手段の1つは、静電気安定化又は電荷安定化によるものである。静電気安定化又は電荷安定化は、システムにおけるイオンの濃度を単に変えることによってシステムを安定化する利点を有する。これは、可逆的で、安価な方法である。
【0042】
粒子及びそれを取り囲む媒体の性質に依存するこの表面電荷には多数の起源があるだろうが、最も重要なメカニズムは、表面基のイオン化又は荷電したイオンの吸着である。
【0043】
極性の液体における粒子の相互作用は、粒子の表面での電位によって支配されるのではなく、粒子とそれに関連するイオンの有効電位によって支配される。分散液の静電気的制御を利用するには、それは、その表面電荷ではなく測定されなければならない粒子のゼータ電位である。荷電した粒子は、分散剤において反対の電荷のイオンを引き付けるだろう。表面に近いイオンは強く結合し、さらに離れたものは、さらに拡散性の領域を形成する。滑り面として知られる概念的な境界はこの領域の範囲内であり、その範囲内では、粒子とイオンは単一体として作用する。滑り面での電位がゼータ電位として知られる。ゼータ電位は、コロイド状粒子間の相互作用の大きさの非常に良好な指標であり、ゼータ電位の測定を用いて一般にコロイド状システムの安定性を評価することは長く認められている。特定のシステムで測定されるゼータ電位は、表面の化学的性質、及びその周辺環境と相互作用する方法の化学的性質に依存する。従って、ゼータ電位は常に、洗練された環境(特にpH及びイオン強度)で検討されなければならない。
【0044】
電気泳動の易動度粒子の表面における電荷の存在の重要な帰結は、適用される電場とそれらが相互作用するということである。これらの効果はまとめて動電効果として定義される。適用された電場の影響下で液体に懸濁された粒子に動きが誘導されると、それはさらに具体的に電気泳動と称される。電場が電解質を横切って適用されると、電解質に懸濁された荷電した粒子は反対の電荷の電極の方に引き付けられる。粒子に作用する粘性力はこの動きに対抗する傾向がある。2つの対抗する力の間で平衡に達すると、粒子は一定の速度で移動する。速度は、電場又は電圧勾配の強度、媒体の誘電定数、媒体の粘度及びゼータ電位に依存する。単位電場における粒子の速度をその電気泳動易動度と呼ぶ。ゼータ電位は、ヘンリーの方程式によって電気泳動易動度に関連する。
【0045】
【数1】

式中、UE=電気泳動易動度、z=ゼータ電位、ε=誘電定数、η=粘度、及びf(ka)=ヘンリーの関数
【0046】
ゼータ電位の電気泳動的測定は、水性媒体及び中程度の電解質濃度で最も一般的に行われる。この場合、f(ka)は1.5であり、これは、スモルコフスキーの近似(Smoluchowski approximation)と呼ばれる。従って、易動度からゼータ電位を計算することは、スモルコフスキーモデルに適合するシステム、すなわち、10〜3モルを超える塩を含有する電解質に分散された約0.2ミクロンより大きな粒子について容易である。誘電定数の低い媒体(たとえば、非水性媒体)における小型粒子については、f(ka)は1.0になり、同様に簡単な計算が可能である。これは、ヒュッケルの近似(Huckel approximation)と呼ばれる。
【0047】
試験A、B、C及びD
試験Aは、熱ストレス条件下でエマルジョンのゼータ電位の安定性を測定することにある。
【0048】
エマルジョンのゼータ電位は、T=0にて、すなわち、エマルジョンを調製するや否や測定され、得られた値を、有効容量10mLで5〜10mLの間のエマルジョンを含有するZ0ガラスバイアル(I型)と名付け、窒素雰囲気のもと(泡立てずに)密封されたガラスバイアルを80℃にて保存する。
【0049】
次いで、T=15時間にて、ゼータ電位Z15hを測定する。
【0050】
次いで、値δA=Z15h−Z0を算出する。
【0051】
ゼータ電位の各測定について、以下のように操作する。
【0052】
エマルジョン液滴表面のゼータ電位は、たとえば、マルヴァーンデータサイザー2000(英国、マルヴァーンインスツルメンツ)のような好適なソフトウエアを備え、供給された標準物で較正された装置にて電気泳動の易動度によって決定される。
【0053】
最適な粒子の検出を可能にする散乱強度を得るために、必要に応じて2回蒸留した水にてエマルジョンを希釈する。ホモダイン検出では、試料の計数速度は100〜1000KCpsの間にあるべきである(ヘテロダイン検出が使用されるのであれば、参照ビームの寄与が演繹されるべきである)。150mVの一定のセル駆動を用いて25℃にて連続した測定を3回行う。誘電定数及び水の粘度を用いて、スモルコフスキー(Smoluchowsky)の方程式を介して、電気泳動の易動度をゼータ電位の値に変換する。測定値は、3つの得られた値の平均に相当する。
【0054】
δAが測定値の標準誤差よりも小さければ、好ましくは10mV未満、一層さらに好ましくは5mV未満であれば、エマルジョンはゼータ電位の安定性を満たしているとみなされる。
【0055】
有利な実施態様によれば、本発明に係る眼科用エマルジョンはゼータ電位安定性試験Bを満たす。
【0056】
エマルジョンが80℃で48時間保存され、ゼータ電位Z2が2日目に測定され、δB=Z2−Z0が算出されることを除いて、試験Bは試験Aに類似する。δBが、測定値の標準誤差よりも小さければ、好ましくは10mV未満、一層さらに好ましくは5mV未満であれば、エマルジョンはゼータ電位の安定性試験Bの要件を満たしているとみなされる。
【0057】
本発明のさらに有利な実施態様によれば、本発明に係る眼科用エマルジョンはゼータ電位安定性試験Cを満たす。
【0058】
エマルジョンが80℃で7日間保存され、ゼータ電位Z7が7日目に測定され、δC=Z7−Z0が算出されることを除いて、試験Cは試験Aに類似する。δCが、測定値の標準誤差よりも小さければ、好ましくは10mV未満、一層さらに好ましくは5mV未満であれば、エマルジョンはゼータ電位の安定性試験Cの要件を満たしているとみなされる。
【0059】
本発明の一層さらに有利な実施態様によれば、本発明に係る眼科用エマルジョンはゼータ電位安定性試験Dを満たす。
【0060】
エマルジョンが80℃で14日間保存され、ゼータ電位Z14が14日目に測定され、δC=Z14−Z0が算出されることを除いて、試験Dは試験Aに類似する。δDが、測定値の標準誤差よりも小さければ、好ましくは10mV未満、一層さらに好ましくは5mV未満であれば、エマルジョンはゼータ電位の安定性試験Dの要件を満たしているとみなされる。
【0061】
別の側面によれば、本発明は、上述のエマルジョンの製造方法に関する。
【0062】
エマルジョンは以下のように調製される。−プロスタグランジンを油性相に溶解するが、それは、任意で、別の疎水性の眼科用有効成分と共に加えられる。
−任意で、別の疎水性の眼科用有効成分を加えた水性相を迅速に油性相に加える。
−得られた粗いエマルジョンを、好ましくは75℃にて迅速に加熱する。
−次いで、当業者に既知の好適な手段、たとえば、剪断混合によってエマルジョンの液滴サイズを小さくする。
−氷水槽を用いてエマルジョンの温度を20℃まで冷却し、次いでホモジネートする。
−pHを7〜8に調整する。
−エマルジョンを滅菌する。
【0063】
本発明はまた、高眼圧症を治療するために及び/又は緑内障を治療するために眼科用組成物を調製するための上述のようなカチオン性の眼科用水中油型エマルジョンの使用にも関する。
【0064】
別の側面によれば、本発明は、任意で眼科的に許容可能なキャリアと組み合わせた点眼薬、眼軟膏剤、眼科用ジェルの形態での、上述のようなエマルジョンを含む眼科用製剤に関する。前記眼科用製剤では、眼科的に許容可能なキャリア中に又はその範囲内に薬学上有効量の有効成分があってもよい。
【0065】
本発明はまた、レンズ、眼帯、埋め込み具、挿入具を含む群から選択される送達用具も指向し、前記用具は、上述のエマルジョンを含有する。
【0066】
以下の実施例によって本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0067】
以下の実施例では以下の略記を使用する。中鎖トリグリセリド、MCT:TCM(商標)(Societe des Oleagineux)BAK:塩化ベンザルコニウム(デンマーク、FeFケミカルズ)ルトロール:ルトロールF68(商標)(BASF)チロキサポール:トリトンWR1339(USA、ルーガーケミカルズ)Z29:ラタノプロスト
【0068】
実施例1
【0069】
【表1】

【0070】
0.005%のラタノプロスト(表中でZ29と称される)を含む油性相を同一ビーカーにて連続して秤量し、次いで、軽く粘性のある相が得られるまで軽度の加熱(40℃)のもとで磁気によって撹拌した。水性相の成分を同一ビーカーにて連続して秤量し、次いで、透明の、澄んだ、流体の相が得られるまで軽度の加熱(40℃)のもとで磁気によって撹拌した。双方の相を65℃に加熱した。油性相に水性相を迅速に加えることによって粗いエマルジョンを形成し、次いで迅速に75℃に加熱した。水性相及び粗いエマルジョンのビーカーをフィルムで保護し、いかなる水の蒸発も回避した。エマルジョンは白色で、やや透明だった。次いで、ポリトロンPT6100による5分間の高速剪断混合によってエマルジョンの液滴サイズを小さくした。エマルジョンは乳状になった。氷水槽を用いてエマルジョンの温度を20℃に冷却した。10,000psiの圧力で5分間連続サイクルを用いたミクロ流動化装置(C5、アベスチン)における均質化によって最終的なエマルジョンを得た。エマルジョンは、乳状で、流動性が高く、ガラスに付着しなかった。エマルジョンの温度を25℃に下げた。そのpHを測定し、次いで0.1MのHCl又は0.1MのNaOHの溶液を用いて7.0に調整した。ガラス製のバイアルにて窒素通気によってエマルジョンの調子を整え、次いで、121℃にて20分間のオートクレーブにて滅菌した。高速粒子寸法測定器(英国、マルヴァーンインスツルメンツ)を用いて、水で希釈した後の準弾性光散乱によって、エマルジョン液滴の平均粒度を決定した。上述のような2回蒸留の水での1:200の希釈の後、マルヴァーンゼータサイザー2000(英国、マルヴァーンインスツルメンツ)において25℃にて電気泳動の易動度を測定し、スモルコフスキーの方程式を介してゼータ電位に変換した。
【0071】
実施例2
市販品(キサラタン(登録商標))と比べたエマルジョンにおけるラタノプロストの安定性の改善14日間、80℃にて、エマルジョン中のラタノプロストの化学的安定性を市販品、キサラタン(登録商標)と比較した(図1)。HPLC−UV法によってプロスタグランジンの含量を分析した。本発明に係るエマルジョンでは、ラタノプロストは化学的に安定化される。
【0072】
実施例3
IOP(眼内圧)を低下させることにおいて市販品(キサラタン(登録済み))とラタノプロストエマルジョンが同じくらい有効であることを実証する生体内試験方法:中央小柱網のダイオードレーザー光凝固によって緑内障を誘発したそれぞれ体重3〜6kgのメスの成熟カニクイザル8匹をこの試験に使用した。0時間(薬剤投与前)及び次いで30μLのZ29EM007(実施例1で記載されたエマルジョンに類似)又は0.005%ラタノプロスト(キサラタン、ミシガン州、カラマズーのファルマシア&アップジョン)による薬剤投与後、1日目ベースライン及び1日目ビヒクルについて1時間ごとに6時間まで、及び治療日1、3及び5日に眼内圧(IOP)を測定した。2つの薬剤の間で少なくとも2週間の洗い流し期間を置いた交差設計で5日連続して1日1回、製品を緑内障の眼に局所的に適用した。結果:Z29EM007及びキサラタン双方の5日間の1日1回投与は、ビヒクル処置日に比べて最初の投与後1〜5時間でIOPを有意に低下させた(p<0.005)(図2)。Z29EM007及びキサラタン双方について反復投与によって眼の降圧効果は高められた。Z29EM007とキサラタンを比べた場合、5日間の処置では、IOPの低下に有意差は認められなかった(p>0.80)。ベースライン日及びビヒクル処置日のIOPには2つの薬剤の間で有意差はなかった(p>0.90)。本発明に係るエマルジョンにおけるラタノプロストは、市販のキサラタン(登録商標)と同じくらい有効である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明のエマルジョン中のラタノプロストの化学的安定性を市販品、キサラタン(登録商標)との比較を示す図である。
【図2】Z29EM007及びキサラタン双方を用いた場合の眼圧を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面フィルムによって取り囲まれた油性の核を有するコロイド粒子を含むカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョンであって、前記エマルジョンは、少なくとも1種のカチオン剤、並びにポロキサマー、チロキサポール、ポリソルベート、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ソルビタンエステル、ポリオキシステアレート及びその2つ以上の混合物から成る群から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含み、前記油性の核は、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、トラボプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、8−イソプロスタグランジンE2又はその2つ以上の混合物から成る群から選択される薬剤を含み、前記エマルジョンは、ポリビニル化合物、水溶性セルロース化合物及び多糖類から選択される水溶性ポリマーを含まない、カチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項2】
前記薬剤はラタノプロストである、請求項1に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項3】
前記エマルジョンは、(1)ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンのようなポリビニル化合物、(2)メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はナトリウムセルロースのような水溶性セルロース化合物、並びに(3)アルギン酸、キサンタンゴム、カラーギーナン及びキトサンから選択される多糖類、から選択される水溶性ポリマーを含まない、請求項1又は2に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項4】
さらに、エマルジョンの油性の核または水性部分のいずれかに、さらなる薬学上活性のある物質を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項5】
さらに、抗炎症性化合物、好ましくは、抗炎症性化合物又はオメガ−3脂肪酸を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項6】
前記エマルジョンは、レボブノロール、ベフンドール、フォルスコリン、メチプラノロール、カートロロール、チモロールのようなβ−遮断剤;ブリンゾラミド、ドルゾラミド、アセタゾラミド、メタゾラミド、ジクロロフェナミドのような炭酸脱水酵素阻害剤;ブリモニジン、アプラクロニジン、ジピベフリン、エピネフリンのような交感神経様作用剤;ピロカルピンのような副交感神経様作用剤;フィソスチグミン、エコチオフェートのようなコリンエステラーゼ阻害剤及び/又はそれらの誘導体;及び/又は光学的に許容できるその塩を含む群から選択される緑内障予防の活性物質を少なくとも更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項7】
油性の核中の、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、トラボプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、8−イソプロスタグランジンE2又はその2以上の混合物を含む群又はそれらから成る群から選択される薬剤の量は、0.001〜1%w/w、好ましくは0.002〜0.3%w/w、一層さらに好ましくは0.004〜0.15%w/wである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項8】
前記カチオン剤の濃度は、0.001〜0.1%w/wの間、好ましくは0.002〜0.05%w/wの間、一層さらに好ましくは0.003〜0.03%w/wである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項9】
前記油性の核の濃度は、7%w/w以下であり、好ましくは0.5〜5%w/wの間であり、一層さらに好ましくは1〜3%w/wの間である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項10】
前記非イオン剤の濃度は、1%w/wより低く、好ましくは0.01〜0.6%w/wの間である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項11】
前記カチオン剤は、C10〜C24の一級アルキルアミン類、三級脂肪族アミン類、四級アンモニウム化合物、カチオン性脂質、アミノアルコール類、ビグアニド塩、カチオン性化合物からなる群から選ばれるか、又はその2以上の混合物から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項12】
前記ビグアニド塩は、クロロヘキシジン及びその塩、ポリアミノプロピルビグアニド、フェンフォルミン、アルキルビグアニドからなる群から選ばれるかそれらの2以上の化合物を含む混合物から選択される、請求項11に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項13】
前記四級アンモニウム化合物は、ベンザルコニウムハロゲン化合物、ラウラルコニウムハロゲン化合物、セトリミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化合物、テトラデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化合物、ドデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化合物、セトリモニウムハロゲン化合物、ベンゼトニウムハロゲン化合物、ベヘナルコニウムハロゲン化合物、セタルコニウムハロゲン化合物、セテチルジモニウムハロゲン化合物、セチルピリジニウムハロゲン化合物、クロロアリルメタンアミンハロゲン化合物、ミリスタルコニウムハロゲン化合物、ステアラルコニウムハロゲン化合物からなる群、又はその2以上の混合物を含む群から選択される、請求項11に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項14】
前記カチオン剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ラウラルコニウム、臭化ベンゾドデシニウム、塩化ベンゼテニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウムからなる群又はその2以上の混合物を含む群から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項15】
前記カチオン剤は、少なくとも14の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル基で窒素原子が置換される少なくとも1つの四級アンモニウムハロゲン化合物から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項16】
前記油性相は、50未満の、好ましくは15以下の、さらに好ましくは5以下の、一層さらに好ましくは1以下のヨウ素価を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項17】
前記油性相は、鉱物油、並びに軽質鉱物油、中鎖トリグリセリド(MCT)、ココナッツ油;水素添加綿実油、水素添加ヤシ油、水素添加ヒマシ油、水素添加大豆油を含む水素添加油;ポリオキシル−40水素添加ヒマシ油、ポリオキシル−60水素添加ヒマシ油又はポリオキシル−100水素添加ヒマシ油を含むポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油誘導体を含む群又はそれらから成る群から選択される1以上の成分を含む、請求項16に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項18】
油がMCTである、請求項1〜17のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項19】
カチオン剤として塩化ベンザルコニウムを、非イオン性界面活性剤としてチロキサポールを含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項20】
カチオン剤として塩化ベンザルコニウムと、チロキサポールとポロキサマーとの組み合わせと、を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項21】
コロイド状粒子は、1μm以下、有利には300nm以下、さらに有利には100〜250nmの範囲内の平均粒度を有する、請求項1〜20のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項22】
前記エマルジョンは、試験Aに規定されるゼータ電位安定性を有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項23】
前記エマルジョンは、試験Bに規定されるゼータ電位安定性を有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項24】
前記エマルジョンは、試験Cに規定されるゼータ電位安定性を有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項25】
前記エマルジョンは、試験Dに規定されるゼータ電位安定性を有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョン。
【請求項26】
高眼圧症及び/又は緑内障を治療するための眼科用組成物を調製するための、請求項1〜25のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョンの使用。
【請求項27】
任意で眼科的に許容可能なキャリアと組み合わせた点眼薬、眼軟膏剤、眼科用ジェルの形態での、請求項1〜25のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョンを含む眼科用製剤。
【請求項28】
請求項1〜25のいずれか1項に記載のカチオン性の眼科用水中油型のエマルジョンを含む、レンズ、眼帯、埋め込み具、挿入具を含む群から選択される送達用具。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−511442(P2009−511442A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533955(P2008−533955)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009783
【国際公開番号】WO2007/042262
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(507149785)
【Fターム(参考)】