説明

プロセスカートリッジ、画像形成装置、及びシール方法

【課題】
シール部材を使用することなくブレードと枠体の隙間をシールする構造およびシール方法を提供する。
【解決手段】
枠体は外部から与えるエネルギビームを透過する樹脂材料から形成され該枠体と該枠体に取り付ける金属体との間に侵入する現像剤の移動を阻止する部分を有する。さらに、該枠体の現像剤移動阻止部分と前記金属体が密着する面に外部から与えるエネルギビームを吸収する媒体が設けられる。そして、外部からエネルギビームを照射することで、枠体の現像剤移動阻止部分が溶融温度を超える温度に加熱されるため、該樹脂の溶け出し又は/且つ流れ出しにより枠体と該枠体に取り付ける金属体の隙間を充填することで両者間を密着シールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真画像形成装置におけるプロセスカートリッジの現像剤シール構造及びシール方法に関するものである。
【0002】
ここで電子写真画像形成装置は、電子写真画像形成プロセスを用いて記録媒体に画像を形成するもので、例えば電子写真複写機、電子写真プリンタ、電子写真ファクシミリ装置、及び、電子写真ワードプロセッサ等が含まれる。電子写真プリンタとして、例えば、LEDプリンタ、レーザービームプリンタ等がある。
【0003】
また、プロセスカートリッジとしては、少なくとも現像手段と電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化して電子写真画像形成装置本体に着脱可能とするものをいう。
【背景技術】
【0004】
プリンタ等の電子写真画像形成装置は、一様に帯電させた像担持体に選択的な露光をして潜像を形成し、この潜像を現像剤で顕像化すると共に、該現像剤像を記録媒体に転写して画像記録を行う。このような装置にあっては、現像剤が無くなる都度補給しなければならないが、この現像剤の補給作業が煩わしいばかりか、汚れを伴うこともある。また各部材のメンテナンスは専門のサービスマンでなければ行うことが出来ず、ユーザには不便を伴うことが多かった。
【0005】
そこで、図17に示すように、像担持体101、帯電器102、現像器103、クリーニング器108等を一体構造にまとめてカートリッジ化している。このように、ユーザがカートリッジを装置本体に装填することによって、現像剤の補給や寿命に達した像担持体の部品交換可能とし、メンテナンスを容易にしたものが実用化されている。
【0006】
上述したプロセスカートリッジにあっては、例えば現像器103において、現像ブレード104と現像枠体105との隙間から現像剤106が漏れ出さないように発泡ゴムやフェルト等のシール部材107を設けている。またクリーニング器108にあっても、クリーニングブレード109とクリーニング枠体110の隙間から廃現像剤111が外部に漏れ出さないようにシール部材112を設けている。
【0007】
現像剤漏れを防止するためのシール部材の形態については、例えば特許文献1、特許文献2に開示されるように様々な構成および方法が提案されている。
【0008】
更に、本発明者らが現像剤シール構造およびシール方法の検討を進める過程において、例えば特許文献3、特許文献4などに開示されるレーザを用いた接合技術を注目するに至った。
【0009】
特許文献3では、異種の樹脂材料の接合において、下部にレーザ吸収性樹脂、上部にレーザ非吸収性樹脂(接合面である下面に突起物を形成)を配置している。そして、上方からレーザ光を照射してレーザ吸収性樹脂を加熱溶融させ、上部の樹脂の突起物を下部樹脂の溶融部に押し圧することで両者を接合している。
【0010】
特許文献4では、2つの樹脂材料の接合において、下部にレーザ吸収性樹脂、上部にレーザ非吸収性樹脂(接合面の下面に突起物、その周辺に掛止溝を形成)を配置している。そして、上方からレーザ光を照射してレーザ吸収性樹脂を加熱溶融させ、上部の樹脂の突起物を下部樹脂の溶融部に押し圧し、溶融物を掛止溝に隆起させることで両者を接合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平07−219295号公報
【特許文献2】特開2000−132040号公報
【特許文献3】特開昭62−071626号公報
【特許文献4】特開昭62−074631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した従来のプロセスカートリッジには、例えば現像ブレードと現像枠体との隙間やクリーニングブレードとクリーニング枠体との隙間など、現像剤または廃現像剤がカートリッジ外部に漏れ出さないように様々な構成のシール部材を多数用いている。特に現像ブレードやクリーニングブレードはブレード自体または支持基板が金属材であるために、樹脂材から形成される枠体との接合が困難で、ブレード長手に渡ってシール部材を設ける必要がある。しかしながらシール部材を使用すると材料コストが上昇することや、複雑な組み立て装置が必要になるなどの課題がある。
【0013】
本出願に係る発明の目的は前述した課題を解決するものであって、シール部材を使用することなく現像ブレードと枠体の隙間をシールする構造およびシール方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明における代表的な構成は、画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジであって、エネルギビームを透過可能な樹脂により形成された、現像剤を収納可能な枠体と、前記枠体の一部分と接するように取り付けられる金属体と、前記一部分に設けられ、前記エネルギビームを吸収するエネルギビーム吸収体とを具備し、前記エネルギビーム吸収体に外部から前記エネルギビームを照射して前記一部分を溶融させて前記枠体と前記金属体とを密着させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シール部材を必要とせず枠体と金属体などの構成部品との間を密着シールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態のプロセスカートリッジの構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の電子写真画像形成装置の構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の現像ユニットの構成を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態の現像ユニットの構成を示す概略断面図である。
【図5】図4の現像ユニットの一部を詳細に説明する概略断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態のエネルギビーム吸収体を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態の現像剤移動阻止部分を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の現像剤移動阻止部分を示す概略断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態の現像剤移動阻止部分を示す概略断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態の現像剤移動阻止部分を示す概略断面図である。
【図11】図3に示す現像ユニットの一部を拡大した概略斜視図である。
【図12】本発明の第1実施形態の現像剤移動阻止部分の構成を示す概略断面図である。
【図13】本発明の第1実施形態の現像剤移動阻止部分の構成を示す概略断面図である。
【図14】本発明の第1実施形態の現像剤移動阻止部分の構成を示す概略断面図である。
【図15】本発明の第2実施形態のプロセスカートリッジの一部分を示す概略断面図である。
【図16】本発明の第2実施形態の現像剤移動阻止部分を示す概略断面図であり、(a)は現像ブレードの取り付前、(b)は取り付後を示している。
【図17】従来のプロセスカートリッジの構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る電子写真画像形成装置におけるプロセスカートリッジの一例を説明する断面模式図であり、図2は電子写真画像形成装置の一例を説明する断面模式図である。
【0019】
[画像形成装置の全体構成]
図1に示すようにプロセスカートリッジ1は、像担持体である感光体ドラム11の周囲に帯電手段である帯電ローラ12が設けられている。さらに、プロセスカートリッジ1は、現像ユニットとして現像ローラ13、現像ブレード14、画像形成前の現像剤15を収納可能な現像枠体16が設けられている。さらに、プロセスカートリッジ1は、クリーニングユニットとしてクリーニングブレード17及び画像形成後の廃現像剤18を収納するクリーニング枠体(枠体)19が設けられている。そして、これらの部品は、図示しないハウジング等で覆って一体的にプロセスカートリッジとして、図2に示すように電子写真画像形成装置(画像形成装置)2に対して着脱自在となるように構成している。
【0020】
このように、プロセスカートリッジ1は、電子写真画像形成装置2に装着されて画像形成に用いられる。画像形成は装置下部に装着されたシートカセット20から搬送ローラ21によって記録シート3を搬送する。このシート搬送と同期して、感光体ドラム11に露光装置22から選択的な露光をして潜像を形成する。その後、現像枠体(枠体)16に収納した現像剤15が現像ブレード14により現像ローラ13表面に薄層担持させる。そして現像剤担持体である感光体ドラム11に現像バイアスを印加する事によって、潜像に応じて現像剤15が供給される。この現像剤像を転写ローラ23へのバイアス電圧印加によって、記録シート3に転写し、記録シート3を定着装置24へ搬送して画像定着する。そして排出ローラ25によって装置上部の排出部26に排出される。
【0021】
[プロセスカートリッジの構成]
図3、図4、図5を用いて本実施形態のプロセスカートリッジにかかるシール構造及びシール方法を説明する。図3は本実施形態のクリーニングユニットの概略を説明する斜視摸式図であって、図4はクリーニングユニットの断面模式図、図5は図4中のクリーニング枠体とクリーニングブレードの密着を詳細に説明する断面摸式図である。なお、図3においては説明し易いようクリーニング枠体19とクリーニングブレード17を分離した状態で図示する。
【0022】
図3乃至5に示すように、クリーニングブレード17は金属体17aと、該金属体先端のゴム部17bから構成されている。金属体17aはクリーニングブレード17のゴム部17bを支持する。クリーニング枠体19は、クリーニングブレード17を受ける座面27と、クリーニング枠体と金属体17aが密着する現像剤移動阻止部分(一部分、凸形状、リブ形状)28が設けられている。現像剤移動阻止部分28の凸形状の先端部分が金属体17aと接している。クリーニング枠体の現像剤移動阻止部分28にはエネルギビーム吸収体29が配置されている。クリーニングブレード17を座面27に合わせて配置し、エネルギビーム30をクリーニング枠体19の側から照射することで現像剤移動阻止部分28が溶融し金属体(構成部品)17aと密着する。その後、クリーニングブレード17の両端部は図示しないビス等を用いて座面27に固定する。
【0023】
プロセスカートリッジ1は、現像手段と電子写真感光体などを一体的にカートリッジ化して電子写真画像形成装置2の本体に着脱可能とするものであって、少なくとも像担持体と像担持体に作用するプロセス手段を備えたものである。即ち、プロセスカートリッジ1は、感光層を有する感光体ドラム11を回転させる。そして、その表面を帯電手段である帯電ローラ12への電圧印加によって一様に帯電した後に、光学系からの画像情報に応じたレーザビーム光を、露光開口部を介して感光体ドラム11へ照射して潜像を形成する。さらに、感光体ドラム11の現像領域へ現像剤15を供給して、感光体ドラム11に形成された潜像を現像するものである。
【0024】
ここでプロセス手段としては、例えば像担持体の表面を帯電させる帯電手段、像担持体に像を形成する現像手段、像担持体表面に残留した現像剤を除去するためのクリーニング手段などが挙げられる。帯電手段、現像手段、クリーニング手段などを構成する部品群は、プロセスカートリッジを構成する枠体に結合、または例えば帯電枠体、現像枠体、クリーニング枠体などの各プロセスを構成する枠体に結合されている。
【0025】
帯電手段は、例えば帯電ローラ12を感光体ドラム11に接触して帯電させても良く、また、例えばコロナ放電等の公知の帯電手段を用いて帯電させても良い。また、感光体ドラム11はその感光電位によって画像濃度等の画質への影響があることや、帯電ローラ12の電気抵抗値により帯電性能が異なる。このため、感光体ドラム11の耐久性にも影響する場合があるため、感光体の帯電特性に合わせて帯電バイアスを好適に変更することもできる。
【0026】
現像手段は、現像枠体内の現像剤を、現像剤送り部材の回転などによって現像ローラ13へ送り出し、固定磁石を内蔵した現像ローラ13を回転させる。さらに、現像ブレード14などによって摩擦帯電電荷を付与した現像剤層を現像ローラ13の表面に形成し、その現像剤15を感光体ドラム11の現像領域へ供給する。そして、現像剤15を潜像に応じて感光体ドラム11へ転移させることによって現像剤像を形成して可視像化する。ここで現像ブレード14は、現像ローラ13の周面の現像剤量を規定すると共に摩擦帯電電荷を付与するものである。また、この現像ローラ13の近傍には現像室内の現像剤を循環させる現像剤撹拌部材を回動可能に取り付けても良い。
【0027】
転写ローラに現像剤像と逆極性の電圧を印加して、感光体ドラム11に形成された現像剤像を記録媒体に転写した後に、クリーニング手段によって感光体ドラム上の残留現像剤を除去する。ここで、感光体ドラムに当接して設けられた弾性を有するクリーニングブレード17によって感光体ドラムに残留した現像剤を掻き落として廃現像剤溜めへ集める。
【0028】
[枠体の構成]
本実施形態にかかる枠体としては、例えば感光体ドラム、帯電ローラ、現像ローラ、クリーニングブレード等の各部品を配置しつつ、現像剤が漏れることなく、且つ、良好な画像を得るために剛性を向上し振動を抑える構造及び材料であることが求められる。また、難燃性、絶縁性、リサイクル性に優れた材料であって、低コストで成形性に優れたものが求められる。例えばポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリフェニレンサルファィド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、PC/ABS等が好適に使用できる。PC/ABSはポリカーボネート(PC)にABSを混ぜ合わせたものである。
【0029】
特に、本実施形態の枠体は外部から照射するエネルギビームを透過する材料であることが求められており、エネルギビームの種類によって、例えばゴム状重合体の粒径、量、更には難燃剤の種類、着色材料など、材料、処方などが好適に選択される。
【0030】
枠体の加工方法においては、射出成形、切削などの樹脂材料における公知の加工方法が好適に使用できるが、特に射出成形は量産性が良く低コストでの成形が期待できる。
【0031】
プロセスカートリッジの枠体に好適に用いることのできるスチレン系樹脂組成物としては、ゴム変性スチレン系材料であるハイインパクトポリスチレン(HIPS)が挙げられる。本材料は、安価でかつ流動性が良いポリスチレン(PS)に、耐衝撃性を向上するため、ゴム状重合体、またはゴム状共重合体を混合したものである。ゴム状重合体或いはゴム状共重合体としては、平均粒子径が0.5〜3.0μmのゴム状重合体或いはゴム状共重合体を混合したものを用いることが好ましい。これは、混合するゴム状重合体或いは共重合体の平均粒子径が小さいと、成形する際に、成形時の外観不良(たとえば、スリキズ)が発生しやすくなり、逆に平均粒子径が大きいと加工時の溶着性が低下してしまう傾向にある。また、ゴム状重合体或いはゴム状共重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、天然ゴム及びエチレン−プロピレン共重合体からなるグループから選択される重合体が好ましく用いられる。
【0032】
更に、枠体材料には、火災に対する安全性を有す難燃性が求められる。そのために、スチレン系樹脂組成物には、第1の難燃剤として臭素系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤が添加される。臭素系難燃剤としては、例えば、エチレンビスペンタブロモベンゼン、テトラブロモビスフェノールA誘導体、ポリ臭化脂肪族エーテル誘導体などがある。リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、レゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)などがある。更に、第2の難燃剤を添加することで第1の難燃剤の添加量を減らすことが可能となり、ベースポリマーとなるスチレン系樹脂組成物の耐熱性の低下を防ぐこともできる。しかしながら、第1の難燃剤として臭素系難燃剤を用いる場合には、通常、第2の難燃剤としては、三酸化アンチモンが最も効果が高いため好ましく用いられる。しかし、レーザ光透過側に三酸化アンチモンを用いると、レーザ光の透過率が下がるため、レーザ溶着を行うにあたっては好ましくない。第1の難燃剤としてリン酸エステル系難燃剤を用いる場合において、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂を含有させることも、難燃性を高める上で好ましい方法である。この場合、PPE樹脂は、スチレン系樹脂の100質量部に対して、9〜17質量部添加される。
【0033】
[エネルギビームの構成]
本実施形態にかかるエネルギビーム30は現像剤移動阻止部分(枠体の一部分)28と金属体17aが密着する部分に設けたエネルギビーム吸収体29に対してエネルギを照射するものであって、光、電子、電磁波などの公知のエネルギビームが適宜使用可能である。
【0034】
光としては、レーザ光、ハロゲン光又は遠赤外ランプ等の光照射による加熱等が挙げられる。レーザ光としては、固体レーザや気体レーザが挙げられる。固体レーザとしては、半導体、ルビー(Cr:Al2O3)、YAG(Nd:YAG)、Yb:YAG、Cr:YAGリン酸ガラス、ケイ酸ガラス、YLF(Nd:YLF)、YVO4(Nd:YVO4)、チタンサファイア(Ti:Al2O3)等がある。気体レーザとしてはCO2レーザ励起遠赤外、放電励起遠赤外、希ガスイオン等が挙げられる。加熱加工においては波長が0.4〜3.0μmのレーザ光が好適に用いられる。特に樹脂の接合においては近赤外の波長域(0.75〜3.0μm)のレーザ光を好適に用いることができる。
【0035】
この中でも特に固体レーザは気体レーザと比べて高効率で高出力のレーザが得られ易くメンテナンスが容易という利点があり、装置を小型化することができるという利点も有する。さらに、その中でもとりわけ半導体レーザは、光ファイバーによってレーザ光の伝達ができ、レーザ発信器から離れたところでの加熱処理を行うことが可能であり、メンテナンスが容易、加工条件が安定しているといった優れた特性を有する。また、光ファイバーと出射ユニットの選択によって照射するエネルギ密度、焦点位置などの加工状態を変更することも可能であり、更には、レーザ光を2〜10程度に分岐することも可能であるため好適に使用できる。
【0036】
エネルギビームの現像剤移動阻止部分に対する角度などの加工条件は、被照射材である枠体の現像剤移動阻止部分及びエネルギビーム吸収体の材質や形状、要求する溶融状態などによって適宜に選択できる。レーザ光照射の現像剤移動阻止部分に対する角度は、垂直に近い程反射ロスが少なくエネルギ効率が高まるが、現像剤移動阻止部分の材料や厚み、要求される条件によって適宜選択される。垂直から0〜50°程度でレーザ光を照射するのが望ましく、汎用の接合では垂直から1〜20°程度傾斜させると良好な密着状態が得られ易い。
【0037】
[エネルギビーム吸収体の構成]
本実施形態にかかるエネルギビーム吸収体29は、上述したエネルギビームの照射を吸収又は/且つ反応することでエネルギビーム吸収体29が加熱し、枠体の現像剤移動阻止部分28を溶融温度以上にせしめるために配置するものである。配置方法としては、枠体の現像剤移動阻止部分28に印刷、塗布など公知の方法で付着させる方法と、フィルム状の形態で供給する方法があり適宜選択できる。
【0038】
エネルギビームが光などである際は、絶縁性材料、導電性材料や、有機材料、無機材料を問わず公知の光吸収材料が適宜使用でき、少なくとも照射するエネルギビームを30%以上吸収することが望ましい。即ち、エネルギビーム吸収体の吸収率が高い場合は、照射エネルギの熱への変換が効率良く行われるために外部から供給するエネルギビームの出力が小さくできる。しかし、エネルギビーム吸収体の吸収率が高過ぎると照射エネルギによる急激な加熱が発生し、枠体の現像剤移動阻止部分に多数の気泡が発生する場合や、樹脂の分解、変形または劣化が起こる場合もある。このため、エネルギビーム吸収体は、外部から照射するエネルギビームに合わせて、吸収率30%以上で適宜選択できる。
【0039】
エネルギビームが光である際のエネルギビーム吸収体29としては、フェルトペンなどやインクジェットにより色をつけた程度で機能的には十分だが、エネルギビームに対する光吸収係数が固定された吸収材料であることが望ましい。例えばカーボンブラック、グラファイト、酸化チタン、硫酸バリウム、硫化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二硫化タングステン、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、二硫化錫、二硫化珪素、酸化クロム、アルミナ、炭化珪素、酸化セリウム、コランダム、人造ダイヤモンド、酸化鉄、ザクロ石、ガーネット、ケイ石、窒化珪素、炭化モリブデン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン、ケイソウ土、ドロマイト、樹脂性の粉末などの潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤、分散剤、顔料、及び/或いは併用してフタロシアニン染料、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、ニトロおよびニトロソ染料、キノリン染料、メチン染料、チアゾール染料、キノンイミン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、アゾイツク染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、酸化染料、硫化染料、フタレイン染料、アミノケトン染料、オキシケトン染料等が好適に使用できる。安定的に加工を行うためにはインク塗布方法の色むらをなくすことが必要であり、例えばノズル式コーターにて塗布する方法や、シルク印刷したインクを熱風乾燥炉で硬化させるなどの公知の様々な方法が適宜選択できる。また塗布や印刷以外に、図6に示すように、例えば樹脂材や高分子フィルムにカーボンブラックや顔料等の上述した吸収材料を練り込んでも良い。さらに、吸収材料を塗布又は蒸着した樹脂材やフィルムなどを別体で供給してエネルギビーム吸収体29とし、該エネルギビーム吸収体29を枠体の現像剤移動阻止部分と金属体の間に挟持密着させて樹脂材やフィルム共に溶融させる方法もある。図6においては、クリーニングブレード17とクリーニング枠体19、エネルギビーム吸収体29を分離した状態で図示する。更に、図9及び図10に示すように、枠体を成形する際に、現像剤移動阻止部分に上述したエネルギ吸収材料を練り込んだ樹脂を、2色成形法などの手段を用いて一体的に成形しても良い。上述した方法は主にエネルギビーム吸収体を枠体に設ける系を説明したが、現像ブレードやクリーニングブレード等の金属体にエネルギビーム吸収体を設けても良い。
【0040】
また、エネルギビームが電子、電磁波などである際は、例えば酸化クロム、コバルト、フェライト等の磁性体材料や、アルミニウム、鉄等の金属材料等公知の電子・電磁波吸収材料が適宜使用できる。電子・電磁波吸収材料の作用効果としては、エネルギビーム30が光などである際の吸収材料の効果と同じであって、エネルギビーム30の照射を吸収又は/且つ反応することでエネルギビーム吸収体が加熱し、枠体の現像剤移動阻止部分28を溶融温度以上にする。更に、吸収材料を枠体の現像剤移動阻止部分28に配置する方法は、上述したエネルギビーム30が光などである際の吸収材料と同様の手段など公知の方法が好適に使用できる。
【0041】
[現像剤移動阻止部分の構成]
図7乃至図10は本実施形態の現像剤移動阻止部分の一例を説明する断面模式図である。
【0042】
本実施形態にかかる現像剤移動阻止部分は、プロセスカートリッジ1の枠体に一体的に成形され、外部からエネルギビーム30を照射することで溶融されて、該枠体に取り付けられる金属体17aと密着するものである。
【0043】
即ち、本実施形態の枠体は外部から照射するエネルギビーム30を透過可能な樹脂材料から構成されるため、該現像剤移動阻止部分28近辺に前述したエネルギビーム吸収体29を設ける。そして、エネルギビーム吸収体29に外部からエネルギビーム30を照射することで該媒体を加熱し、エネルギビーム30を透過する樹脂材料から構成する現像剤移動阻止部分28が溶融される。また、若干ではあるが、溶融した現像剤移動阻止部分28に、エネルギビーム吸収体29が拡散すること等により、現像剤移動阻止部分28の溶融が進行することもある。
【0044】
現像剤移動阻止部分28は枠体の金属体17aを取り付ける座面27に渡って設けられ、枠体の両座面間と金属体17aの隙間から現像剤が漏れ出さないようシールするためのものである。
【0045】
現像剤移動阻止部分28を金属体17aに密着させるために、現像剤移動阻止部分28を確実に溶融させることが大切であるため、現像剤移動阻止部分28の側面まで、あるいは枠体に設ける座面と座面の間の凹部にまでエネルギビーム吸収体29を設けても良い。また、例えば図7に示す如く外部から供給されるエネルギビーム30は少なくとも現像剤移動阻止部分28とエネルギビーム吸収体29に渡って照射する必要があるため、加工精度を考慮し幅広状に照射される。
【0046】
また、現像ブレード14またはクリーニングブレードなどを構成する金属体17aは枠体の両方の座面(一対の座面)27に密着させることが必要である。即ち、金属体17aを枠体の両方の座面27に密着させることで、金属体17aと座面27から現像剤15の漏れ出しがないようなシールが可能である。また両方の座面27に密着させることで枠体を介して感光体ドラム11に対する相対位置を決めることができる。
【0047】
現像剤移動阻止部分28の金属体17aとの接触面がエネルギビーム30の照射による溶融再凝固後、両方の座面27と略面一である必要(現像剤移動阻止部分28の金属体17aとの接触面が両方の座面27と同一平面上となる必要)がある。
【0048】
すなわち、現像剤移動阻止部分28の高さと座面27の高さが略同一となる必要がある。これは、枠体の金属体17aを受ける両方の座面27に設けた現像剤移動阻止部分28と金属体17aを長手方向(感光体ドラム11と平行な方向)全域に渡って密着シールするためである。
【0049】
また、枠体は樹脂材料から成形するため、その加工精度からは予め枠体の両方の座面27と現像剤移動阻止部分28を略面一成形することが難しい。この為、エネルギビーム照射前の枠体においては、現像剤移動阻止部分28を金属体17aを受ける両方の座面27の高さよりも若干高く成形しておおく。そして、金属体17aを配置し、現像剤移動阻止部分28に外部からエネルギビーム30を照射することで現像剤移動阻止部分28を溶融させた際に、金属体17aを枠体の両方の座面27に押し付ける(押圧する)。そして金属体17aを両方の座面27に押し付けた状態で現像剤移動阻止部分28が再凝固することによって両方の座面27の間に渡り枠体と金属体17aを密着シールすることができる。
【0050】
枠体の両方の座面27に対する現像剤移動阻止部分28の高さは、該枠体の成形精度、金属体加工精度と共に、金属体17aの枠体量座面への押し付け力、外部からエネルギビームを与える際の現像剤移動阻止部分の溶融高さ等によって好適に決めることができる。特に、現像剤移動阻止部分28の溶融高さは、現像剤移動阻止部分28の形状及びエネルギビーム吸収体29の配置方法によって異なるので注意する必要がある。
【0051】
即ち、本実施形態の枠体は外部から照射するエネルギビーム30を透過する樹脂材料から構成されるため現像剤移動阻止部分28においても外部から照射するエネルギビーム30を透過する。このため、現像剤移動阻止部分28を溶融する熱の伝達はエネルギビーム吸収体29の近辺に限られる。本発明者らの検討において、エネルギ密度を低く、照射時間を長くする方が現像剤移動阻止部分28の良好な溶融が得られることが判っている。しかし、その場合であっても、例えば塗布等や別部材を用いる方法で、現像剤移動阻止部分の表面にのみエネルギビーム吸収体を設ける系は、溶融高さは限られる。
【0052】
そこで、現像剤移動阻止部分28をリブ形状とし、リブ幅を1mm以下とし、エネルギビーム吸収体を該リブの金属体密着面、リブ側面に設けることで、外部からのエネルギビーム照射でリブの溶け出しによるリブ高さの低減が期待できる。即ち、まず、エネルギビーム照射前のリブ高さを枠体の座面高さより高く成形する。そしてエネルギビーム照射によってリブを座面高さと略面一にすることで、リブや座面を含む枠体の成形精度に左右されることなく金属体両端部座面間に渡ってリブと金属体を密着シールすることができる。
【0053】
即ち、図8に示すように、クリーニング枠体19に現像剤移動阻止部分28として1列のリブ幅が1mm以下のリブを長手方向に渡って1列以上配置し、エネルギビーム吸収体29を該リブの金属体17aの密着面、リブ側面に設ける。クリーニングブレード17をクリーニング枠体19に押し付けながら、外部からエネルギビーム30を照射することでリブの溶け出しによるリブ高さの低減が起き、図示しない枠体の両方の座面27にクリーニングブレード17を密着することができる。
【0054】
よってリブ幅を1mm以下で成形する場合は、リブ自体を枠体と同材料のエネルギビーム30を透過する樹脂材料で成形する場合においても、該リブの表面にエネルギビーム吸収体29を設ける。エネルギビーム30の照射によりリブが溶け出すことによるリブ高さ低減が起き、図示しない枠体の両座面に金属対を密着することができる。
【0055】
上記説明では、現像剤移動阻止部分28の金属体17aとの密着面やその側面にエネルギビーム吸収体29を印刷や塗布の手段を用いて薄状供給する形態を説明した。しかし、例えば現像剤移動阻止部分28の全体または一部をエネルギビーム吸収樹脂で成形してもよい。即ち、例えばエネルギビーム吸収材料を練り込んだ樹脂を、例えば2色成形などの手段を用いて成形することで、例えば現像剤移動阻止部分28の全体または金属体17aとの密着面近傍にエネルギビーム吸収体29を具備する枠体が一体成形できる。
【0056】
即ち、図9に示すように、クリーニング枠体19に例えば2色成形法を用いて上述した現像剤移動阻止部分28の全体がエネルギビーム吸収材料を含有した樹脂28aで一体成形される。現像剤移動阻止部分28に、外部からエネルギビーム30を照射することで現像剤移動阻止部分28の溶け出しによるリブ高さの低減が図れ、図示しない枠体の両座面にクリーニングブレード17を密着することができる。
【0057】
また、図10に示すように、クリーニング枠体19に枠体と同時に成形した現像剤移動阻止部分28bに例えば2色成形法を用いてエネルギビーム吸収材料を含有した樹脂28aと成形し現像剤移動阻止部分28とすることもできる。現像剤移動阻止部分28に、外部からエネルギビーム30を照射することで現像剤移動阻止部分28の溶け出しによるリブ高さの低減が図れ、図示しない枠体の両座面にクリーニングブレード17を密着することができる。
【0058】
このように、現像剤移動阻止部分28をエネルギビーム吸収体29を含有した樹脂材で成形する場合には、リブ幅を1mmより大きくしてもエネルギビーム照射により現像剤移動阻止部分28が溶け出すことによるリブ高さ低減が期待できる。
【0059】
[金属体の構成]
前述した金属体は、プロセスカートリッジの現像ブレード14及びクリーニングブレード17等に使用される公知の金属体が使用できる。
【0060】
上述した金属体は、表面に例えば亜鉛めっき、ニッケルめっき等のめっき処理が施された鋼板、合金等である。金属体の、枠体の現像剤移動阻止部分が密着する部分は上述しためっき処理のままでも良いが、例えばブラスト処理等でめっき材を除去しても良く。更にブラスト処理、ローレット加工により密着面を例えばRz=20μm程度の凹凸を設ける場合は、密着する表面積が1.5〜2倍程度に拡大するために密着具合が良くなるため、これらの処理を好適に使用できる。
【0061】
[クリーニングブレードの組み立て]
図11、図12、図13、図14は本実施形態にかかるクリーニング枠体とクリーニングブレードの組み立てを説明する模式図である。これらの図と、図1とを参照にしてクリーニングブレードの詳細について説明する。
【0062】
図11は図1の座面27とリブ状の現像剤移動阻止部分28を詳細に示す概略図であり、図12は図11の断面を示す概略図である。図13は、図12に示すリブ状の現像剤移動阻止部分28にエネルギビーム吸収体29を配置した後の状態を説明する概略図であり、図14はクリーニングブレード17を密着した状態を示す概略図である。
【0063】
クリーニング枠体19は、ゴム量がスチレン系樹脂組成物の100質量部あたり8質量部で、ゴム粒径が1.8μm個数平均粒径のハイインパクトポリスチレン(HIPS)にリン酸エステルル系難燃剤を処方する。そして、クリーニング枠体19は、厚さ2mmで波長が840nmのレーザ光を50%以上透過し該レーザ光の照射によって加熱溶融が起こらないレーザ光透過材料から成形される。そして、座面27、リブ状の現像剤移動阻止部分28を射出成形で一体的に成形される。座面27はクリーニングブレード17の金属体17aを受ける座面であって200mm離れた両座面が略面一となるように成形されており、座面と座面の間は0.2mm低い凹部31となっている。リブ状の現像剤移動阻止部分28は、上面の幅Aが0.3mmで底面の幅Bが0.6mmの台形状の形状を2列有し、上面は座面27より0.2mm高く成形している。クリーニングブレード17は、長さ220mm、厚さ2mmの亜鉛めっき鋼板を板金加工などにより成形し金属体17aとし、該金属体17a先端にシリコーンゴムからなるゴム部17bを成形して作製している。
【0064】
次に、図13に示すように座面27間に渡って、リブ状の現像剤移動阻止部分28、凹部31のリブ周辺部分にブラックカーボンと黒色染料を混合したエネルギビーム吸収体29を、フェルトを使用して均一に塗布する。
【0065】
その後、クリーニングブレード17の金属体17aの端部が両方の座面27の位置に配置し、クリーニングブレード17全体を均一に押し圧200Nで座面27に押し付けつつ、クリーニング枠体19側からレーザ光30aを照射する。リブ状の現像剤移動阻止部分28が溶融し、クリーニングブレード17の両端部が、座面27に密着すると共にクリーニングブレード17がリブ状の現像剤移動阻止部分28とも密着する。照射するレーザ光としては、波長が840nm、エネルギ24Wの半導体レーザをCW発振させて速度50mm/sで座面と座面間を走査させる。クリーニング枠体19とクリーニングブレード17を密着させた後の状態を図14に示す。なお、32は、レーザ光30aの照射によって溶融し、エネルギ透過材料である枠体、リブ部などとエネルギビーム吸収体が混在している部分を示している。
【0066】
更に、レーザ光30aの照射によりリブ状の現像剤移動阻止部分28が溶融している状態で、クリーニングブレード17を座面27にビスで固定する。(図示せず)
上述の構成及び方法で、クリーニングブレードをクリーニング枠体に密着固定するので、別途シール材などを設けることなく、クリーニング枠体の座面と座面間における現像剤のシールが可能となる。
【0067】
[本実施形態の効果]
このため、本実施形態によれば、エネルギビームの照射により、樹脂性枠体の現像剤移動阻止部分と金属体が密着する部分に設けたエネルギビーム吸収体がエネルギを受けることで枠体の現像剤移動阻止部分が溶融温度を超える温度に加熱される。このため、該樹脂の溶け出し、あるいは流れ出しにより枠体と該枠体に取り付ける金属体の隙間を充填することで両者間を密着シールすることができる。
【0068】
したがって、枠体及び金属体以外に例えばシール部材を別途供給する必要がないため部品点数を減らすことが可能でコスト削減が図れる。また加工が非接触のエネルギビーム照射によって行われるため、装置構造が簡素化でき装置コスト低減できることと、タクトタイムが早く量産性向上が期待できる。
【0069】
さらに、エネルギビームの照射により、樹脂性枠体の凸状リブ部分が溶融温度を超える温度に加熱される。このため、凸状リブの溶け出し、又は流れ出し、あるいは押し潰しにより枠体と該枠体に取り付ける金属体の隙間を充填することで両者間を密着シールすることができる。さらに、枠体に金属体の両端部を受ける座面を設けたために枠体に対する金属体の相対位置を容易に決めることができる。
【0070】
凸状リブの周辺は枠体に設けた座面に対し凹となっており、該凹部に凸状リブを設けている。このため、凸状リブにエネルギビームを照射した際の余分な溶融樹脂や樹脂昇温による気化ガス等を枠体と金属体の密着部分外へ抜くことができ枠体と金属体の良好な密着を得ることができる。
【0071】
枠体の一部に凸状のリブ形状を設けることは、枠体をモールド加工で成形する際には容易に作製可能であってコストアップ及び工程の変更もほとんど必要なく加工できる。
【0072】
枠体の金属体両端部を受ける座面に渡って設ける凸状のリブは1本でも良いが、複数本設けることでシール性が向上することが期待できる。
【0073】
枠体の金属体両端部を受ける座面に渡って設けるリブがエネルギビーム照射による溶融後エネルギ金属体の両端部を受ける座面と略面一である。このため、金属体を枠体の座面に容易に密着させることが可能になり、枠体を介して像担持体である感光体ドラムに対する金属体の相対位置を容易に決めることができ、更に、金属体と枠体の座面の密着シールを容易に得ることができる。
【0074】
リブ幅が1mm以下である場合に、外部からのエネルギビーム照射でリブの溶け出しによるリブ高さの低減が期待できる。即ち、まず、エネルギビーム照射前のリブ高さを枠体の座面高さより高く成形する。そして、エネルギビーム照射によってリブを座面高さと略面一にすることで、リブや座面を含む枠体の成形精度に左右されることなく金属体両端部座面間に渡ってリブと金属体を密着シールすることができる。
【0075】
エネルギビームの照射により、樹脂性枠体の現像剤移動阻止部分と金属体が密着する部分に設けたエネルギビーム吸収体がエネルギを受ける。枠体の現像剤移動阻止部分が溶融温度を超える温度に加熱する際に、枠体と前記金属体が密着する面に外部から与えるエネルギビームを吸収する媒体を設ける工程において、エネルギビーム吸収体の材料及び媒体を設ける方法等が好適に選択できる。また、エネルギビームに対して特定の吸収特性を有する媒体を設けることが容易で該エネルギビームの照射により枠体の現像剤移動阻止部分の温度制御や溶け出し管理が容易にできる。また、枠体と金属体を密着配置する工程において両者を密着しつつ、枠体と金属体が密着する面に外部からエネルギビームを照射する工程において、外部からエネルギビームを照射する。このため、エネルギビームの過度の集中による昇温なく枠体の現像剤移動阻止部分全体にわたって温度制御や溶け出し管理が容易にできる。したがって、該樹脂の溶け出し、あるいは流れ出しにより枠体と該枠体に取り付ける金属体の隙間を充填することで両者間を密着シールすることができる。
【0076】
エネルギビームの照射により、樹脂性枠体の凸状リブ部分が溶融温度を超える温度に加熱される際に、枠体の凸状リブ部分に外部から与えるエネルギビームを吸収する媒体を設ける。このため、エネルギビーム吸収体の材料及び媒体を設ける方法等が好適に選択でき、エネルギビームに対して特定の吸収特性を有する媒体を設けることが容易で該エネルギビームの照射によりリブ部分の温度制御や溶け出し管理が容易にできる。また、枠体に金属体の両端部を受ける座面に金属体を配置する工程で、枠体と金属体の相対位置を決めた状態で、枠体と金属体が密着するリブに外部からエネルギビームを照射する工程において枠体と金属体を密着させる。枠体と金属体の相対位置を決めた状態で枠体と金属体の隙間を密着シールすることができる。
【0077】
枠体と金属体を密着配置する工程において両者を密着しつつ、枠体と金属体が密着する面に外部からエネルギビームを照射する工程において、外部からエネルギビームを照射する。このため、エネルギビームの過度の集中による昇温なく枠体の現像剤移動阻止部分全体にわたって温度制御や溶け出し管理が容易にできる。このため、該樹脂の溶け出し、あるいは流れ出しにより枠体と該枠体に取り付ける金属体の隙間を充填することで両者間を密着シールすることができる。
【0078】
枠体の金属体両端部を受ける座面に対して凹部分の一部に設けた凸状リブの高さが該座面よりも高い形状を有し、エネルギビームを照射する工程において該リブを溶融させて座面と略面一の高さにする。このため、リブや座面を含む枠体の成形精度に左右される現像剤金属体両端部座面間に渡ってリブと金属体を密着シールすることができる。
【0079】
外部からエネルギビームを照射してリブを溶融させる際に、金属体を枠体の金属体を受ける座面及び溶融状態のリブに対して押し圧する。このため、金属体を枠体の座面に配置することができ枠体を介して像担持体との相対位置合せができる。更に溶融したリブを押し潰すことになるので金属体とリブの密着度も向上する。
【0080】
枠体のリブと金属体の密着だけでは長期使用状況において、枠体と金属体を固定することができないため、枠体の座面と金属体を機械的に固定することで品質の安定が図れる。
【0081】
なお、以上の実施形態では、クリーニング枠体19とクリーニングブレード17とのシールについて説明したが、現像枠体16と現像ブレード14とのシールについても同様にすることができる。
【0082】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0083】
図15、は本実施形態にかかる現像枠体と現像ブレードの組み立てを説明する模式図である。図15は、現像枠体16、現像ブレード14と現像枠体16に設けた現像剤移動阻止部分となるリブの断面を示す概略図である。図16(a)は図15のリブを詳細に説明する概略図で、現像ブレード14を現像枠体16に密着する前状態を示し、図16(b)は現像ブレード14を現像枠体16に密着させた状態を説明する概略図である。なお、これらの図に示す構成以外の部分については、第1実施形態と同様であるので重複する説明を省略する。
【0084】
現像枠体16は、ゴム量がスチレン系樹脂組成物の100質量部あたり8質量部で、ゴム粒径が1.8μm個数平均粒径のハイインパクトポリスチレン(HIPS)にリン酸エステルル系難燃剤、着色剤としてブラック系の染料を処方する。そして、現像枠体16は、厚さ2mmで波長が840nmのレーザ光を50%以上透過し該レーザ光の照射によって加熱溶融が起こらないレーザ光透過材料から成形され、リブ状の現像剤移動阻止部分28cを射出成形で一体的に成形される。座面27aは現像ブレード14の両端を受ける座面であって180mm離れた両座面が略面一となるように成形されており、座面と座面の間は0.1mm低い凹部31aとなっている。リブ状の現像剤移動阻止部分28cは、幅が0.8mmで座面27より0.2mm高く成形している。現像ブレード14は、長さ200mm、厚さ2mmの亜鉛めっき鋼板を板金加工などにより成形した金属ブレード先端にシリコーンゴムからなるゴムブレードを成形して作製し、リブとの密着面にサンドブラスト処理によりRz=25μmの凹凸加工を施している。
【0085】
次に、座面27a間に渡って、リブ状の現像剤移動阻止部分28、凹部31aのリブ周辺部分にエネルギビーム吸収体29をインクジェットプリンタを使用して均一に塗布する。
【0086】
その後、現像ブレード14を座面27に配置し、現像ブレード14全体を均一に押し圧400Nで座面27aに押し付けつつ、現像枠体16側からレーザ光30aを照射する。これによりリブ状の現像剤移動阻止部分28cが溶融し、現像ブレード14の両端部が、座面27aに密着すると共に現像ブレード14がリブ状の現像剤移動阻止部分28cとも密着する。照射するレーザ光としては、波長が940nm、エネルギ35Wの半導体レーザをCW発振させて速度40mm/sで座面と座面間を走査させる。更に、レーザ光30aの照射によりリブ状の現像剤移動阻止部分28cが溶融している状態で、現像ブレード14を座面27aに図示しないビスで固定する。
【0087】
上述の構成及び方法で、現像ブレードを現像枠体に密着固定するので、別途シール材などを設けることなく、現像枠体の座面と座面間における現像剤のシールが可能となる。
【0088】
なお、上述した第2実施形態では、現像ブレード14に凹凸加工を施すことを説明したが、クリーニングブレード17に凹凸加工を施すようにしても良い。
【0089】
さらに、上述した第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせることも可能である。
【0090】
本実施形態では、樹脂性の枠体と密着する金属体の少なくとも枠体と密着する部分が凹凸形状を有するため、金属体と溶融樹脂との密着面積が増え密着強度、シール性が向上する。
【符号の説明】
【0091】
1 …プロセスカートリッジ
2 …電子写真画像形成装置本体
11 …感光体ドラム
1 …現像ローラ
14 …現像ブレード
15 …現像剤
16 …現像枠体
17 …現像ブレード
17a …金属体
17b …ゴム部
18 …廃現像剤
19 …現像枠体
27 …座面
28,28c,28b,28c …現像剤移動阻止部分
29,29a …エネルギビーム吸収
30 …エネルギビーム
30a …レーザ光
31,31a …凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジであって、
エネルギビームを透過可能な樹脂により形成された、現像剤を収納可能な枠体と、
前記枠体の一部分と接するように取り付けられる金属体と、
前記一部分に設けられ、前記エネルギビームを吸収するエネルギビーム吸収体と
を具備し、
前記エネルギビーム吸収体に外部から前記エネルギビームを照射して前記一部分を溶融させて前記枠体と前記金属体とを密着させたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項2】
前記枠体の前記一部分は、凸形状であり、前記凸形状の先端部分で前記金属体と接していることを特徴とする請求項1記載のプロセスカートリッジ。
【請求項3】
前記プロセスカートリッジは、
感光体ドラムに現像剤を供給する現像ローラを具備し、
前記枠体は前記現像ローラに供給する現像剤を収納する現像枠体であり、
前記金属体は、前記現像ローラに現像剤を担持させる現像ブレードを支持する部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項4】
前記プロセスカートリッジは、
現像剤の画像が形成される感光体ドラムを具備し、
前記金属体は、画像形成後に前記感光体ドラムの表面から現像剤を除去するクリーニングブレードを支持する部材であり、
前記枠体は、前記クリーニングブレードによって除去された現像剤を収納するクリーニング枠体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項5】
前記枠体は前記金属体の両端部を取り付けるための一対の座面を有し、
前記一部分は前記一対の座面の間に位置するリブ形状であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項6】
前記エネルギビームを照射して溶融した前記一部分と前記金属体との接触面は前記座面と略同一の平面上にあることを特徴とする請求項5記載のプロセスカートリッジ。
【請求項7】
前記接触面の幅は1mm以下であることを特徴とする請求項6に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項8】
前記枠体と密着する前記金属体の表面に凹凸形状を有することを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジを装着し、記録媒体に画像を形成する画像形成装置。
【請求項10】
画像形成装置に着脱可能で、エネルギビームを透過可能な樹脂により形成され、現像剤を収納可能な枠体と、前記枠体の一部分と接するように取り付けられる金属体とを具備するプロセスカートリッジの前記枠体と前記金属体とを隙間なく密着させるシール方法であって、
前記一部分にエネルギビームを吸収するエネルギビーム吸収体を設ける工程と、
前記枠体と前記金属体とを接触させて配置する工程と、
前記エネルギビーム吸収体にエネルギビームを照射させて前記一部分を溶融させて前記枠体と前記金属体とを密着させる工程と
を具備することを特徴とするシール方法。
【請求項11】
前記プロセスカートリッジは、
感光体ドラムに現像剤を供給する現像ローラと
を具備し、
前記枠体は、画像形成前の現像剤を収納する現像枠体であり、
前記金属体は、前記現像ローラに現像剤を担持させる現像ブレードを支持する部材であることを特徴とする請求項10に記載のシール方法。
【請求項12】
前記プロセスカートリッジは、
現像剤の画像が形成される感光体ドラムを具備し、
前記金属体は、画像形成後に前記感光体ドラムの表面から現像剤を除去するクリーニングブレードを支持する部材であり、
前記枠体は、前記クリーニングブレードによって除去された現像剤を収納するクリーニング枠体であることを特徴とする請求項10に記載のシール方法。
【請求項13】
前記一部分は、リブ形状であることを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載のシール方法。
【請求項14】
前記枠体は、前記金属体の両端部を取り付けるための一対の座面を有し、
前記エネルギビームを前記エネルギビーム吸収体に照射する前に、前記金属体を前記一対の座面に配置する工程をさらに具備することを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載のシール方法。
【請求項15】
前記一部分は前記一対の座面の間に設けられており、前記エネルギビームを照射前の前記一部分の高さは、前記座面の高さよりも高く、
前記エネルギビームを照射して前記一部分を溶融させた後に、前記一部分の高さが前記座面の高さと略同じとなることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載のシール方法。
【請求項16】
前記エネルギビームを照射して前記一部分を溶融させる際に、前記金属体を前記一部分の方向に押圧することを特徴とする請求項13乃至請求項15のいずれか1項に記載のシール方法。
【請求項17】
前記エネルギビームを照射して前記一部分が溶融している状態で、前記金属体を前記一対の座面に固定する工程をさらに具備することを特徴とする請求項14乃至請求項16のいずれか1項に記載のシール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−204153(P2010−204153A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46385(P2009−46385)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】