説明

プロピレン−エチレンブロック共重合体

【課題】透明性が高く、低弾性率のプロピレン−エチレンブロック共重合体を提供する。
【解決手段】(1)特定の単架橋メタロセン触媒、(2)特定の二架橋メタロセン触媒、(3)多孔質担体、(4)アルミノキサン又は前記メタロセン触媒と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物、及び必要に応じて(5)有機アルミニウム化合物よりなる触媒系を用いて、第一工程としてプロピレンを重合し、第二工程としてプロピレンとエチレンとのランダム共重合を行うことにより得られる、プロピレン−エチレンブロック共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性が高く、低弾性率のプロピレン−エチレンブロック共重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンドクリン問題や焼却時のダイオキシン発生等の問題により、軟質ポリ塩化ビニル樹脂の軟質ポリオレフィン樹脂への代替が検討されている。
透明性が高い軟質ポリオレフィン材料をモルホロジーよく生産できる方法が公開されている(例えば、特許文献1)が、フィルムやラップに使用すると、軟質ポリ塩化ビニル並の透明性は得られていない。
また、メタロセン触媒を用いる透明性の高い軟質材料の製造方法が公開されている(例えば、特許文献2)が、製造時に用いる溶媒中に生成する重合体が完全に溶解するため、溶液粘度が上昇し、溶液中の重合体濃度を高くすることができず、生産性は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3240589号公報
【特許文献2】特開2000−95820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、透明性が高く、低弾性率のプロピレン−エチレンブロック共重合体に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、従来、低結晶性ポリプロピレンを与えるメタロセン触媒のみでは担体に担持してもパウダー粒子を維持したまま製造することは不可能であったが、低結晶性ポリプロピレンを与えるメタロセン触媒と高結晶性ポリプロピレンを与えるメタロセン触媒を組み合せて担体に担持することにより、パウダー粒子が固着せずに透明性が高いプロピレン−エチレンブロック共重合体が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、
1.(1)下記一般式(I)で表される単架橋メタロセン触媒、(2)下記一般式(III)で表される二架橋メタロセン触媒、(3)多孔質担体、(4)アルミノキサン又は前記メタロセン触媒と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物、及び必要に応じて(5)有機アルミニウム化合物よりなる触媒系を用いて、第一工程としてプロピレンを重合し、第二工程としてプロピレンとエチレンとのランダム共重合を行うことにより得られる、プロピレン−エチレンブロック共重合体、
【化1】

(式中、E1は二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示す。R1及びR2は、それぞれ炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示し、R3〜R6は、それぞれ水素、炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示す。M1は、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを示す。また、X1,Y1はそれぞれ共有結合性の配位子を示す。尚、X1及びY1は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【化2】

(式中、E2及びE3は二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示す。R11〜R18は、それぞれ水素、炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示し、R19及びR20は、それぞれi−プロピル基、n−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基又はトリメチルシリルメチル基を示す。M2は、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを示す。また、X2,Y2はそれぞれ共有結合性の配位子を示す。尚、X2及びY2は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
2.前記第一工程の前に、前記触媒系にオレフィンを接触させて予備重合を行う、上記1に記載のプロピレン−エチレンブロック共重合体、
3.前記予備重合による生成物の量が、前記触媒系中の遷移金属成分1ミリモル当たり1〜10000gである、上記2に記載のプロピレン−エチレンブロック共重合体、
4.弾性率Eが71MPa以上330MPa未満、且つ内部ヘイズHが25%以上55%未満である、上記1〜3のいずれかに記載のプロピレン−エチレンブロック共重合体、
5.エチレン含量が1.0モル%以上6.0モル%以下、極限粘度〔η〕が1.0dl/g以上4.1dl/g以下である、上記1〜4のいずれかに記載のプロピレン−エチレンブロック共重合体、
6.エチレン含量が1.0モル%以上6.0モル%以下、極限粘度〔η〕が1.0dl/g以上4.1dl/g以下、弾性率Eが71MPa以上330MPa未満、且つ内部ヘイズHが25%以上55%未満である、プロピレン−エチレンブロック共重合体
に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明について、詳細に説明する。
本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法に用いられる(1)下記一般式(I)で表される単架橋メタロセン触媒は、高結晶性ポリプロピレンを与える(以下、一般式(I)で表される単架橋メタロセン触媒を、「高結晶性ポリプロピレンを与えるメタロセン触媒」ともいう)。
【化3】

(式中、E1は二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示す。R1及びR2は、それぞれ炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示し、R3〜R6は、それぞれ水素、炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示す。M1は、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを示す。また、X1,Y1はそれぞれ共有結合性の配位子を示す。尚、X1及びY1は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0008】
1〜R6の炭化水素基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、特に炭素数1〜12のものが好ましい。
この炭化水素基は一価の基として、共役五員環基であるシクロペンタジエニル基と結合していてもよく、又、これが複数個存在する場合には、R1、R3、R4のうちの2個又はR2、R5、R6のうちの2個が結合していてもよい。
該共役五員環としては、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基及びフルオレニル基である。
【0009】
ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素原子が挙げられ、アルコキシ基としては、炭素数1〜12のものが好ましく挙げられる。
【0010】
1としては、(1)メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基、シクロアルキレン基又はその側鎖低級アルキル若しくはフェニル置換体、(2)シリレン基、ジメチルシリレン基、メチルフェニレン基、ジフェニルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基等のシリレン基、オリゴシリレン基又はその側鎖低級アルキル若しくはフェニル置換体、(3)ゲルマニウム、リン、窒素、硼素又はアルミニウムを含む炭化水素基[低級アルキル基、フェニル基、ヒドロカルビルオキシ基(好ましくは低級アルコキシ基)等]、具体的には(CH32Ge基、(C652Ge基、(CH3)P基、(C65)P基、(C49)N基、(C65)N基、(CH3)B基、(C49)B基、(C65)B基、(C65)Al基、(CH3O)Al基等が挙げられる。
これらの中で、アルキレン基、シリレン基が好ましい。
【0011】
1は、周期律表IV族の遷移金属を示し、具体的には、チタニウム、ジルコニウム、又はハフニウムであり、特にジルコニウムが好適である。
【0012】
1及びY1は、それぞれ共有結合性の配位子であり、具体的には、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20、好ましくは1〜12のリン含有炭化水素基(例えば、ジフェニルホスフィン基等)又は炭素数1〜20、好ましくは1〜12の珪素含有炭化水素基(例えば、トリメチルシリル基等)、炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基又はハロゲン含有硼素化合物(例えば、BF4,B(C654)を示す。
これらの中で、ハロゲン原子及び炭化水素基が好ましい。
このX1及びY1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0013】
一般式(I)で表わされる遷移金属化合物の具体例として、以下の化合物を挙げることができる。
<1>メチレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,エチレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,メチレンビス(インデニル)チタニウムクロロヒドリド,エチレンビス(インデニル)メチルチタニウムクロリド,エチレンビス(インデニル)メトキシクロロチタニウム,エチレンビス(インデニル)チタニウムジエトキシド,エチレンビス(インデニル)ジメチルチタニウム,エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)チタニウムジクロリド,エチレンビス(2−メチルインデニル)チタニウムジクロリド,エチレンビス(2,4,7−トリメチルインデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラメチルインデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−5、6−ジメチルインデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−4−(2−ナフチル)インデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−4−i−プロピルインデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−4−トルイルインデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2,4−ジメチルインデニル)チタニウムジクロリド,エチレンビス(2−メチル−4−トリメチルシリルインデニル)チタニウムジクロリド,エチレンビス(2,4−ジメチル−5,6,7−トリヒドロインデニル)チタニウムジクロリド,エチレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,エチレン(2−メチル−4−t−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,エチレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2’,4’,5’−トリメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,イソプロピリデンビス(2−メチルインデニル)チタニウムジクロリド,イソプロピリデンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,イソプロピリデンビス(2,4−ジメチルインデニル)チタニウムジクロリド,イソプロピリデン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,イソプロピリデン(2−メチル−4−t−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,エチレンビス(2−メチルベンゾインデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(ベンゾインデニル)チタニウムジクロリド等のアルキレン基で架橋した共役五員環配位子を2個有する遷移金属化合物,
【0014】
<2>ジメチルシリレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス(インデニル)メチルチタニウムクロリド,ジメチルシリレンビス(インデニル)メトキシクロロチタニウム,ジメチルシリレンビス(インデニル)チタニウムジエトキシド,ジメチルシリレンビス(インデニル)ジメチルチタニウム,ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス(2,4,7−トリメチルインデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4、5−ベンゾインデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラメチルインデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−5,6−ジメチルインデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−(2−ナフチル)インデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−i−プロピルインデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−トルイルインデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルインデニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−トリメチルシリルインデニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチル−5,6,7−トリヒドロインデニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2’,4’,5’−トリメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,イソプロピリデンビス(2−メチルインデニル)チタニウムジクロリド,イソプロピリデンビス(インデニル)チタニウムジクロリド,イソプロピリデンビス(2,4−ジメチルインデニル)チタニウムジクロリド,イソプロピリデン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,イソプロピリデン(2−メチル−4−t−ブチルシクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(ベンゾインデニル)チタニウムジクロリド等のシリレン基架橋共役五員環配位子を2個有する遷移金属化合物、
【0015】
更には、上記<1>〜<2>の記載の化合物において、これらの化合物の塩素原子を臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、フェニル基等に置き換えたもの、又、上記遷移金属化合物の中心金属のチタニウムをジルコニウム又はハフニウムに置き換えたものを挙げることができる。
【0016】
本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法に用いられる(2)下記一般式(II)又は(III)で表される二架橋メタロセン触媒は、低結晶性ポリプロピレンを与える(以下、一般式(II)又は(III)で表される二架橋メタロセン触媒を、「低結晶性ポリプロピレンを与えるメタロセン触媒」ともいう)。
【化4】

【化5】

(式中、E2及びE3は二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示す。R9〜R18は、それぞれ水素、炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示し、R7、R8、R19及びR20は、それぞれi−プロピル基、n−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基又はトリメチルシリルメチル基を示す。M2は、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを示す。また、X2,Y2はそれぞれ共有結合性の配位子を示す。尚、X2及びY2は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0017】
9〜R18の炭化水素基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、特に炭素数1〜12のものが好ましい。R7、R8、R19及びR20は、それぞれi−プロピル基、n−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基又はトリメチルシリルメチル基を示す。
この炭化水素基は一価の基として、共役五員環基であるシクロペンタジエニル基と結合していてもよく、又、これが複数個存在する場合には、一般式(II)式においては、R7とR9が、又はR8とR10が結合していてもよく、一般式(III)においては、R11〜R14、R20が、又はR15〜R19のうちの2個が結合していてもよい。
該共役五員環としては、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基及びフルオレニル基である。
【0018】
ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素原子が挙げられ、アルコキシ基としては、炭素数1〜12のものが好ましく挙げられる。
【0019】
このE2及びE3としては、(1)メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、メチルフェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基、シクロアルキレン基又はその側鎖低級アルキル若しくはフェニル置換体、(2)シリレン基、ジメチルシリレン基、メチルフェニレン基、ジフェニルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基等のシリレン基、オリゴシリレン基又はその側鎖低級アルキル若しくはフェニル置換体、(3)ゲルマニウム、リン、窒素、硼素又はアルミニウムを含む炭化水素基[低級アルキル基、フェニル基、ヒドロカルビルオキシ基(好ましくは低級アルコキシ基)等]、具体的には、(CH32Ge基、(C652Ge基、(CH3)P基、(C65)P基、(C49)N基、(C65)N基、(CH3)B基、(C49)B基、(C65)B基、(C65)Al基、(CH3O)Al基等が挙げられる。
これらの中で、アルキレン基、シリレン基が好ましい。
2及びE3は互いに同じでも異なっていてもよい。
【0020】
2は、周期律表IV族の遷移金属を示し、具体的には、チタニウム、ジルコニウム、又はハフニウムであり、特にジルコニウムが好適である。
【0021】
2及びY2は、それぞれ共有結合性の配位子であり、具体的には、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20、好ましくは1〜12のリン含有炭化水素基(例えば、ジフェニルホスフィン基等)又は炭素数1〜20、好ましくは1〜12の珪素含有炭化水素基(例えば、トリメチルシリル基等)、炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基又はハロゲン含有硼素化合物(例えば、BF4,B(C654)を示す。
これらの中で、ハロゲン原子及び炭化水素基が好ましい。
このX2及びY2は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
一般式(II)で表される遷移金属化合物の具体例としては、(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−エチレン)(2,1’−エチレン)−ビス(3−トリメチルシリル−4−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリル−4−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド等が挙げられる。
上記の記載の化合物において、これらの化合物の塩素原子を臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、フェニル基等に置き換えたもの、又、上記遷移金属化合物の中心金属のチタニウムをジルコニウム又はハフニウムに置き換えたものを挙げることができる。
【0023】
一般式(III)で表される遷移金属化合物の具体例としては、
(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−フェニルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−イソプロピリデン)−ビス(3−フェニルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−i−プロピルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)チタニウムジクロリド,(1,2’−ジフェニルシリレン)(2,1’−メチレン)−ビス(3−トリメチルシリルインデニル)チタニウムジクロリド等が挙げられる。
上記の記載の化合物において、これらの化合物の塩素原子を臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、フェニル基等に置き換えたもの、又、上記遷移金属化合物の中心金属のチタニウムをジルコニウム又はハフニウムに置き換えたものを挙げることができる。
【0024】
高結晶性ポリプロピレンを与えるメタロセン触媒と低結晶性ポリプロピレンを与えるメタロセン触媒との混合比率(モル比)は、1/1000〜1000/1、好ましくは1/1000〜100/1、更に好ましくは、1/1000〜10/1である。
この範囲であると、十分な軟質性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体を得ることができる。
【0025】
次に、(4)触媒成分のうちの(4−1)触媒成分としては、上記(1)触媒成分及び(2)触媒成分の遷移金属化合物と反応して、イオン性の錯体を形成しうる化合物であれば、いずれのものでも使用できるが、次の一般式(IV)又は(V)
(〔L1−R21k+a(〔Z〕-b ・・・(IV)
(〔L2k+a(〔Z〕-b ・・・(V)
(但し、L2は、M3、R22234、R243C又はR255である。)
〔(IV),(V)式中、L1はルイス塩基、〔Z〕-は、非配位性アニオン〔Z1-及び〔Z2-、ここで〔Z1-は複数の基が元素に結合したアニオン、即ち〔M312・・・Gf-(ここで、M3は周期律表第5〜15族元素、好ましくは周期律表第13〜15族元素を示す。G1〜Gfはそれぞれ水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数2〜40のジアルキルアミノ基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数7〜40のアルキルアリール基,炭素数7〜40のアリールアルキル基,炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,有機メタロイド基、又は炭素数2〜20のヘテロ原子含有炭化水素基を示す。G1〜Gfのうち2つ以上が環を形成していてもよい。fは〔(中心金属M3の原子価)+1〕の整数を示す。)、
〔Z2-は、酸解離定数の逆数の対数(pKa)が−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基、又は一般的に超強酸と定義される酸の共役塩基を示す。また、ルイス塩基が配位していてもよい。
また、R21は、水素原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、R22及びR23はそれぞれシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基又はフルオレニル基、R24は炭素数1〜20のアルキル基,アリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。
25は、テトラフェニルポルフィリン,フタロシアニン等の大環状配位子を示す。
kは、〔L1−R21〕,〔L2〕のイオン価数で1〜3の整数、aは1以上の整数、b=(k×a)である。
4は、周期律表第1〜3、11〜13、17族元素を含むものであり、M5は、周期律表第7〜12族元素を示す。〕
で表されるものを好適に使用することができる。
【0026】
ここで、L1の具体例としては、アンモニア,メチルアミン,アニリン,ジメチルアミン,ジエチルアミン,N−メチルアニリン,ジフェニルアミン,N,N−ジメチルアニリン,トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリ−n−ブチルアミン,メチルジフェニルアミン,ピリジン,p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン,p−ニトロ−N,N−ジメチルアニリン等のアミン類、トリエチルホスフィン,トリフェニルホスフィン,ジフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラヒドロチオフェン等のチオエーテル類、安息香酸エチル等のエステル類、アセトニトリル,ベンゾニトリル等のニトリル類等を挙げることができる。
【0027】
21の具体例としては水素,メチル基,エチル基,ベンジル基,トリチル基等を挙げることができ、R22,R23の具体例としては、シクロペンタジエニル基,メチルシクロペンタジエニル基,エチルシクロペンタジエニル基,ペンタメチルシクロペンタジエニル基等を挙げることができる。
【0028】
24の具体例としては、フェニル基,p−トリル基,p−メトキシフェニル基等を挙げることができ、R25の具体例としてはテトラフェニルポルフィン,フタロシアニン,アリル,メタリル等を挙げることができる。
【0029】
また、M4の具体例としては、Li,Na,K,Ag,Cu,Br,I,I3等を挙げることができ、M5の具体例としては、Mn,Fe,Co,Ni,Zn等を挙げることができる。
【0030】
また、〔Z1-、即ち〔M312・・・Gf〕において、M3の具体例としてはB,Al,Si,P,As,Sb等、好ましくはB及びAlが挙げられる。
【0031】
また、G1,G2〜Gfの具体例としては、ジアルキルアミノ基として、ジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基等、アルコキシ基又はアリールオキシ基としてメトキシ基,エトキシ基,n−ブトキシ基,フェノキシ基等、炭化水素基としてメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,n−オクチル基,n−エイコシル基,フェニル基,p−トリル基,ベンジル基,4−t−ブチルフェニル基,3,5−ジメチルフェニル基等、ハロゲン原子としてフッ素,塩素,臭素,ヨウ素,ヘテロ原子含有炭化水素基としてp−フルオロフェニル基,3,5−ジフルオロフェニル基,ペンタクロロフェニル基,3,4,5−トリフルオロフェニル基,ペンタフルオロフェニル基,3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基,ビス(トリメチルシリル)メチル基等、有機メタロイド基としてペンタメチルアンチモン基、トリメチルシリル基,トリメチルゲルミル基,ジフェニルアルシン基,ジシクロヘキシルアンチモン基,ジフェニル硼素等が挙げられる。
【0032】
また、非配位性のアニオン、即ちpKaが−10以下のブレンステッド酸単独又はブレンステッド酸及びルイス酸の組合わせの共役塩基〔Z2-の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン(CF3SO3-,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ベンジルアニオン,ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド,過塩素酸アニオン(ClO4-,トリフルオロ酢酸アニオン(CF3CO2-,ヘキサフルオロアンチモンアニオン(SbF6-,フルオロスルホン酸アニオン(FSO3-,クロロスルホン酸アニオン(ClSO3-,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化アンチモン(FSO3/SbF5-,フルオロスルホン酸アニオン/5−フッ化砒素(FSO3/AsF5-,トリフルオロメタンスルホン酸/5−フッ化アンチモン(CF3SO3/SbF5-等を挙げることができる。
【0033】
このような前記(1)触媒成分及び(2)触媒成分の遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成するイオン性化合物、即ち(4−1)触媒成分化合物の具体例としては、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラフェニル硼酸メチル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム,テトラフェニル硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム,テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム,テトラフェニル硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラ−n−ブチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラエチルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(トリ−n−ブチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニル(メチル)アンモニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルピリジニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジル(2−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチル(4−シアノピリジニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム,テトラキス〔ビス(3,5−ジトリフルオロメチル)フェニル〕硼酸ジメチルアニリニウム,テトラフェニル硼酸フェロセニウム,テトラフェニル硼酸銀,テトラフェニル硼酸トリチル,テトラフェニル硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’−ジメチルフェロセニウム),テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラフェニルポルフィリンマンガン,テトラフルオロ硼酸銀,ヘキサフルオロ燐酸銀,ヘキサフルオロ砒素酸銀,過塩素酸銀,トリフルオロ酢酸銀,トリフルオロメタンスルホン酸銀等を挙げることができる。
(4−1)触媒成分は一種用いてもよく、又二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
一方、(4−2)触媒成分のアルミノキサンとしては、一般式(VI)
【化6】

(式中、R26は、炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基,アルケニル基,アリール基,アリールアルキル基等の炭化水素基又はハロゲン原子を示し、wは平均重合度を示し、通常2〜50、好ましくは2〜40の整数である。
尚、各R26は同じでも異なっていてもよい。)
で示される鎖状アルミノキサン、及び一般式(VII)
【化7】

(式中、R26及びwは前記一般式(VI)におけるものと同じである。)
で示される環状アルミノキサンを挙げることができる。
【0035】
前記アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水等の縮合剤とを接触させる方法が挙げられるが、その手段については特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。
例えば、<1>有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させる方法、<2>重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、<3>金属塩等に含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、<4>テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、更に水を反応させる方法等がある。
尚、アルミノキサンとしては、トルエン不溶性のものであってもよい。
これらのアルミノキサンは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(1)触媒成分と(2)触媒成分の合計量と(4)触媒成分との使用割合は、(4)触媒成分として(4−1)触媒成分化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは10:1〜1:100、より好ましくは2:1〜1:10の範囲が望ましく、上記範囲内であると、単位質量ポリマー当りの触媒コストが安価で、実用的である。
また、(4−2)触媒成分化合物を用いた場合には、モル比で好ましくは1:1〜1:1000000、より好ましくは1:10〜1:10000の範囲が望ましい。
この範囲内であると、単位質量ポリマーあたりの触媒コストが安価で、実用的である。
また、(4)触媒成分としては(4−1)触媒成分,(4−2)触媒成分を単独又は二種以上組み合わせて用いることもできる。
【0037】
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する際の重合用触媒は、上記(1)触媒成分及び(2)触媒成分並びに(4)触媒成分に加えて(5)触媒成分として有機アルミニウム化合物を用いることができる。
ここで、(5)触媒成分の有機アルミニウム化合物としては、一般式(VIII)
27vAlJ3-v ・・・(VIII)
〔式中、R27は炭素数1〜10のアルキル基、Jは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基又はハロゲン原子を示し、vは1〜3の整数である〕
で示される化合物が用いられる。
【0038】
前記一般式(VIII)で示される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,ジメチルアルミニウムクロリド,ジエチルアルミニウムクロリド,メチルアルミニウムジクロリド,エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムヒドリド,ジエチルアルミニウムヒドリド,エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。
これらの有機アルミニウム化合物は一種用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0039】
プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法においては、上述した(1)触媒成分+(2)触媒成分、(4)触媒成分及び(5)触媒成分を用いて予備接触を行なうこともできる。
予備接触は、(1)触媒成分+(2)触媒成分に、例えば、(4)触媒成分を接触させることにより行なうことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
これら予備接触により触媒活性の向上や、助触媒である(4)触媒成分の使用割合の低減等、触媒コストの低減に効果的である。
また、予備接触温度は、通常−20℃〜200℃、好ましくは−10℃〜150℃、より好ましくは、0℃〜80℃である。
予備接触においては、溶媒の不活性炭化水素として、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等を用いることができる。
これらの中で特に好ましいものは、脂肪族炭化水素である。
【0040】
前記(1)触媒成分と(2)触媒成分の合計量と(5)触媒成分との使用割合は、モル比で好ましくは1:1〜1:10000、より好ましくは1:5〜1:2000、更に好ましくは1:10〜1:1000の範囲が望ましい。
該(5)触媒成分を用いることにより、遷移金属当たりの重合活性を向上させることができるが、あまり多いと有機アルミニウム化合物が無駄になると共に、重合体中に多量に残存し、好ましくない。
【0041】
多孔質担体としては、具体的には、SiO2,Al23,MgO,ZrO2,TiO2,Fe23,B23,CaO,ZnO,BaO,ThO2やこれらの混合物、例えば、シリカアルミナ,ゼオライト,フェライト,グラスファイバー等が挙げられる。
これらの中では、特にSiO2,Al23が好ましい。
尚、上記多孔質担体は、少量の炭酸塩,硝酸塩,硫酸塩等を含有してもよい。
【0042】
一方、上記以外の担体として、MgCl2,Mg(OC252等で代表される一般式MgR28x1yで表されるマグネシウム化合物やその錯塩等を挙げることができる。
ここで、R28は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基、X1はハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示し、xは0〜2、yは0〜2であり、かつx+y=2である。
各R28及び各X1はそれぞれ同一でもよく、又、異なってもいてもよい。
【0043】
また、有機担体としては、ポリスチレン,スチレン−ジビニルベンゼン共重合体,ポリエチレン,ポリ1−ブテン,置換ポリスチレン,ポリアリレート等の重合体やスターチ,カーボン等を挙げることができる。
【0044】
プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造に用いられる触媒の担体としては、MgCl2,MgCl(OC25),Mg(OC252等も好ましい。
【0045】
また、担体の性状は、その種類及び製法により異なるが、平均粒径は通常1〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmである。
粒径が小さいと重合体中の微粉が増大し、粒径が大きいと重合体中の粗大粒子が増大し嵩密度の低下やホッパーの詰まりの原因になる。
【0046】
また、担体の比表面積は、通常1〜1000m2/g、好ましくは50〜500m2/g、細孔容積は通常0.1〜5cm3/g、好ましくは0.3〜3cm3/gである。
比表面積又は細孔容積が上記範囲であると、触媒活性が上昇する。
尚、比表面積及び細孔容積は、例えば、BET法に従って吸着された窒素ガスの体積から求めることができる。
【0047】
更に、上記担体が無機酸化物担体である場合には、通常150〜1000℃、好ましくは200〜800℃で焼成して用いることが望ましい。
【0048】
触媒成分の少なくとも一種を前記担体に担持させる場合、(1)触媒成分+(2)触媒成分及び(4)触媒成分の少なくとも一方を、好ましくは(1)触媒成分+(2)触媒成分及び(4)触媒成分の両方を担持させるのが望ましい。
該担体に、(1)触媒成分+(2)触媒成分及び(4)触媒成分の少なくとも一方を担持させる方法については、特に制限されないが、例えば<1>(1)触媒成分+(2)触媒成分及び(4)触媒成分の少なくとも一方と担体とを混合する方法、<2>担体を有機アルミニウム化合物又はハロゲン含有ケイ素化合物で処理した後、不活性溶媒中で(1)触媒成分+(2)触媒成分及び(4)触媒成分の少なくとも一方と混合する方法、<3>担体と(1)触媒成分+(2)触媒成分、及び/又は(4)触媒成分と有機アルミニウム化合物又はハロゲン含有ケイ素化合物とを反応させる方法、<4>(1)触媒成分+(2)触媒成分又は(4)触媒成分を担体に担持させた後、(4)触媒成分又は(1)触媒成分+(2)触媒成分と混合する方法、<5>(1)触媒成分+(2)触媒成分と(4)触媒成分との接触反応物を担体と混合する方法、<6>(1)触媒成分+(2)触媒成分と(4)触媒成分との接触反応に際して、担体を共存させる方法等を用いることができる。
尚、上記<4>、<5>及び<6>の方法において、(5)触媒成分の有機アルミニウム化合物を添加することもできる。
【0049】
プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造に用いられる触媒の製造においては、前記(1)触媒成分+(2)触媒成分,(4)触媒成分,(5)触媒成分を接触させる際に、弾性波を照射させて触媒を調製してもよい。
弾性波としては、通常音波、特に好ましくは超音波が挙げられる。
具体的には、周波数が1〜1000kHzの超音波、好ましくは10〜500kHzの超音波が挙げられる。
このようにして得られた触媒は、一旦、溶媒留去を行って固体として取り出してから重合に用いてもよいし、そのまま重合に用いてもよい。
【0050】
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造においては、(1)触媒成分+(2)触媒成分及び(4)触媒成分の少なくとも一方の担体への担持操作を重合系内で行うことにより触媒を生成させることができる。
例えば、(1)触媒成分+(2)触媒成分及び(4)触媒成分の少なくとも一方と担体と更に必要により前記(5)触媒成分の有機アルミニウム化合物を加え、エチレン等のオレフィンを常圧〜2MPa加えて、−20〜200℃で1分〜2時間程度予備重合を行い触媒粒子を生成させる方法を用いることができる。
このプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造に用いられる触媒における(4−1)触媒成分と担体との使用割合は、質量比で好ましくは1:5〜1:10000、より好ましくは1:10〜1:500とするのが望ましく、(4−2)成分と担体との使用割合は、質量比で好ましくは1:0.5〜1:1000、より好ましくは1:1〜1:50とするのが望ましい。
【0051】
(4)触媒成分として二種以上を混合して用いる場合は、各(4)触媒成分と担体との使用割合が質量比で上記範囲内にあることが望ましい。
また、(1)触媒成分+(2)触媒成分と担体との使用割合は、質量比で、好ましくは1:5〜1:10000、より好ましくは1:10〜1:500とするのが望ましい。
(4)触媒成分〔(4−1)触媒成分又は(4−2)触媒成分〕と担体との使用割合、又は(1)触媒成分+(2)触媒成分と担体との使用割合が上記範囲内であると、活性が上昇したり、パウダーモルホロジーも向上する。
【0052】
このようにして調製された重合用触媒の平均粒径は、通常2〜200μm、好ましくは10〜150μm、特に好ましくは20〜100μmであり、比表面積は、通常20〜1000m2/g、好ましくは50〜500m2/gである。
平均粒径が2μm以上であると重合体中の微粉が減少し、200μm以下であると重合体中の粗大粒子が減少する。
比表面積が20m2/g以上であると活性が上昇し、1000m2/g以下であると重合体の嵩密度が上昇する。
【0053】
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造に用いられる触媒において、担体100g中の遷移金属量は、通常0.05〜10g、特に0.1〜2gであることが好ましい。
遷移金属量が上記範囲内であると、活性が上昇する。
【0054】
第一工程のプロピレンの重合は、スラリー重合又は塊状重合より選択することができる。
第二工程のプロピレンとエチレンの共重合は、スラリー、塊状、気相重合より選択することができる。
第一工程及び第二工程は、多段重合にすることもできる。
【0055】
プロピレン単独重合における重合条件としては、その重合圧は、特に制限はなく、通常、大気圧〜8MPa、好ましくは0.2〜5MPa、重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは、30〜100℃の範囲で適宜選ばれる。
重合時間は、通常、5分〜20時間、好ましくは、10分〜10時間程度である。
共重合部の重合条件としては、その重合圧は、特に制限はなく、通常、大気圧〜8MPa、好ましくは0.2〜5MPa、重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは、20〜100℃の範囲で適宜選ばれる。
重合時間は、通常、1分〜20時間、好ましくは、1分〜10時間程度である。
供給するプロピレンとエチレンの比率はモル比で、0.01〜9、好ましくは0.05〜2.3である。
プロピレン単独重合部及び共重合部における重合体の分子量は、連鎖移動剤の添加、好ましくは水素の添加を行うことで調節することができる。
また、窒素等の不活性ガスを存在させてもよい。
【0056】
重合溶媒を用いる場合、例えば、ベンゼン,トルエン,キシレン,エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、シクロペンタン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,オクタン等の脂肪族炭化水素、クロロホルム,ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等を用いることができる。
これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組み合わせてもよい。
尚、重合方法によっては無溶媒で行うことができる。
【0057】
重合に際しては、前記重合用触媒を用いて予備重合を行うことができる。
予備重合は、固体触媒成分に、例えば、少量のオレフィンを接触させることにより行うことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
予備重合に用いるオレフィンについては特に制限はなく、前記に例示したものと同様のもの、例えば、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、又はこれらの混合物等を挙げることができるが、該重合において用いるエチレン又はプロピレンを用いることが有利である。
また、予備重合温度は、通常−20〜200℃、好ましくは−10〜130℃、より好ましくは0〜80℃である。
予備重合においては、溶媒として、脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素等を用いることができる。
これらの中で、特に好ましいのは脂肪族炭化水素である。
また、予備重合は無溶媒で行ってもよい。
予備重合においては、予備重合生成物の極限粘度〔η〕(135℃デカリン中で測定)が0.2dl/g以上、特に0.5dl/g以上、触媒中の遷移金属成分1ミリモル当たりに対する予備重合生成物の量が1〜10000g、特に10〜1000gとなるように条件を調整することが望ましい。
【0058】
本発明の触媒系を用いて得られるプロピレン(P)−エチレン(E)ブロック共重合体の〔EEE〕のトリアド(triad)連鎖分率fEEE≦0.1(モル%)であり、好ましくは0.08モル%以下であり、更に好ましくは0.05モル%以下である。
0.1モル%以下であると、透明性が向上する。
【0059】
トリアド(triad)連鎖分率fEEEは、Mg/Ti系触媒を用いると大きくなるから、0.1以下にするには、本願発明の触媒系を用いる必要がある。
また、本発明の触媒系を用いて得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレンの反応性比をr1、エチレンの反応性比をr2とした場合、r1・r2≧0.5、好ましくは1.0以上であり、更に好ましくは1.1以上である。
0.5以上を満たさないと、耐熱性が不十分となることがある。
尚、r1・r2は、ホモ重合量とランダム共重合量との割合により制御することができる。
エチレン含量は、1.0モル%以上、好ましくは2.0モル%以上であり、これを満たさないと軟質性が十分でないことがある。
従って、r1・r2を0.5以上にするには、例えば、ホモ重合量を5質量%以上とすればよい。
【0060】
EEE、r1・r2及び共重合体中のエチレン含量は、下記のようにして求めることができる。
本発明のプロピレン(P)−エチレン(E)ブロック共重合体において、以下の三連鎖は、A.Zambelliらにより「Macromolecules,8,687(1975)」で提案された13C−NMRのピークの帰属に従い、次式で計算することができる。
EPE=I8
PPE=I9+(I10/2)+I11
EEE=(EEE/2)+(PEE/4)=(I12/2)+(I13/4)
PPP=I14+(I10/2)
PEE=I15
PEP=I16+(I17+I18)/4
ここで、I8=33.3ppmの強度、I9=31.1ppmの強度、I10=31.2ppmの強度、I11=34.1ppmの強度、I12=30.0ppmの強度、I13=30.4ppmの強度、I14=29.2ppmの強度、I15=27.3ppmの強度、I16=24.7ppmの強度、I17=34.9ppmの強度,I18=34.6ppmの強度である。
【0061】
T=EPE+PPE+EEE+PPP+PEE+PEPとおくと
各トリアド連鎖分率(モル%)は次式で計算できる。
EPE=(EPE/T)×100
PPE=(PPE/T)×100
EEE=(EEE/T)×100
PPP=(PPP/T)×100
PEE=(PEE/T)×100
PEP=(PEP/T)×100
【0062】
ジアド(dyad)連鎖分率は、上記トリアド連鎖分率から次式で計算することができる。
PP=fPPP+〔fPPE/2〕
PE=fEPE+fPEP+〔(fPPE+fPEE)/2〕
EE=fEEE+〔fPEE/2〕
【0063】
また、r1・r2(プロピレンとエチレンの反応性比の積)は、ジアド連鎖分率から次式で計算できる。
r1・r2=(4fEE・fPP)/(fEP・fEP
【0064】
更に、エチレン含量(モル%)は、次式で計算することができる。
エチレン含量(モル%)=fEE+(fPE/2)
【0065】
13C−NMRの測定]
試料220mgを10mm径NMR試料管に採取し、1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(90/10容量%)混合溶媒3mLを添加する。
アルミブロックヒーターを用いて、140℃で均一に溶解後、13CNMRスペクトルを測定する。
NMR測定条件は、次の通り。
NMR装置 日本電子製 EX400(400MHzNMR装置)
パルス幅 7.5μs(45度パルス)
パルス繰り返し時間 4秒
積算回数 1,000回
測定温度 130℃
【0066】
本発明の触媒系を用いて得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体の極限粘度〔η〕は、1.0dl/g以上であり、好ましくは1.5dl/g以上であり、更に好ましくは1.7dl/g以上である。
極限粘度〔η〕が1.0dl/g未満であると、共重合体パウダーのブロッキング性が十分でないことがある。
極限粘度〔η〕を、1.0dl/g以上にするには、例えば、重合時に用いる水素の量を少なくすればよい。
【0067】
本発明の触媒系を用いて得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体のキシレン可溶部の極限粘度〔η〕は、1.0dl/g以上であり、好ましくは1.5dl/g以上であり、更に好ましくは2.0dl/g以上である。
キシレン可溶部の極限粘度〔η〕が1.0dl/g未満であると、共重合体パウダーのブロッキング性が十分でないことがある。
キシレン可溶部の極限粘度〔η〕を、1.0dl/g以上にするには、例えば、重合時に用いる水素の量を少なくすればよい。
【0068】
プロピレン−エチレンブロック共重合体のキシレン可溶部の測定法は、以下の通りである。
試料5±0.05gを精秤して1000ミリリットルナス型フラスコに入れ、更に、BHT(酸化防止剤)1±0.05gを添加した後、回転子及びパラキシレン700±10ミリリットルを投入した。
次いで、ナス型フラスコに冷却器を取り付け、回転子を作動させながら、140±5℃の油浴でフラスコを120±30分間加熱して、試料をパラキシレンに溶解させる。
次に、1000ミリリットルビーカーにフラスコの内容物を注いだ後、ビーカー内の溶液を回転子で攪拌しながら、室温(25℃)になるまで放冷(8時間以上)後、析出物を金網でろ取する。
ロ液は、更にろ紙にてろ過した後、ロ液を3000ミリリットルビーカーに収容されたメタノール2000±100ミリリットル中に注ぎ、この液を室温(25℃)にて回転子で攪拌しながら、2時間以上放置する。
次いで、析出物を金網でろ取した後。5時間以上風乾後、真空乾燥器にて100±5℃で、240〜270分間乾燥して、25℃キシレン可溶成分を回収する。
【0069】
極限粘度〔η〕の測定は、以下のようにして行なった。
[極限粘度〔η〕の測定]
(株)離合社製VMR−053型自動粘度計を用い、デカリン溶媒中、温度135℃において測定した。
【0070】
本発明の触媒を用いて得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、昇温分別クロマトグラフ(TREF)における0℃の溶出成分が、50重量%以下、好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは35重量%以下である。
0℃の溶出成分が50重量%を超えると、共重合パウダーのブロッキング性が十分でない。
昇温分別クロマトグラフの測定は、以下のようにして行った。
[昇温分別クロマトグラフの測定]
140℃のオルトジクロロベンゼンに完全に溶解させた試料溶液を、温度135℃に調節した昇温分別クロマトグラフ(TREF)カラムに導入し、次いで速度5℃/hrにて徐々に0℃まで降温し、試料を充填剤に吸着させた。
0℃にて30分間保持した後、カラムにオルトジクロロベンゼンを流通させ、0℃のまま10分間保持して充填剤に吸着されない成分を溶出させた。
その後、オルトジクロロベンゼンを流通させながら速度40℃/hrにて135℃まで昇温し、順次ポリマー成分を溶出させた。
このとき、溶出ポリマーの濃度を測定することによって溶出曲線を得た。
(測定装置)
TREFカラム:GLサイエンス社製、ステンレスカラム
(4.6mmφ×150mm)
フローセル:GLサイエンス社製、KBrセル、光路長1mm
送液ポンプ:センシュウ科学社製、SSC−3100
バルブオープン:GLサイエンス社製、MODEL554
TREFオープン:GLサイエンス社製
二系列温調機:理学工業社製、REX−C100
濃度検出器:液体クロマトグラフィー用赤外検出器、
FOXBORO社製 MIRAN 1A CVF
(測定条件)
溶媒:オルトジクロロベンゼン
試料濃度:7.5g/リットル
注入量:500μリットル
流速:2.0ミリリットル/min
カラム充填剤:クロモソルブP(30/60メッシュ)
【0071】
本発明の触媒を用いて得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体の弾性率Eは、330(MPa)未満で、且つ内部ヘイズHが55(%)未満である。
用いる(低結晶性ポリプロピレンを与えるメタロセン触媒/高結晶性ポリプロピレンを与えるメタロセン触媒)の割合が高いほど、用いるエチレン量が多いほど、柔軟なプロピレン−エチレンブロック共重合体が得られる。
また、メタロセン触媒を用いるとヘイズは55%未満に制御することができる。
【0072】
本発明の触媒を用いて得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体(パウダー)は、過酸化物等の分解剤を使用して適当な分子量に調整し、所望の用途(射出やフィルム)に用いることが好ましい。
【0073】
本発明の触媒を用いて得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体には、所望に応じて各種添加剤が添加されていてもよい。
所望に応じて用いられる各種添加剤としては、酸化防止剤、中和剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、又は帯電防止剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
例えば、酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0075】
リン系酸化防止剤の具体例としては、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、アデカスタブ1178(旭電化(株)製)、スミライザーTNP(住友化学(株)製)、JP−135(城北化学(株)製)、アデカスタブ2112(旭電化(株)製)、JPP−2000(城北化学(株)製)、Weston 618(GE社製)、アデカスタブPEP−24G(旭電化(株)製)、アデカスタブPEP−36(旭電化(株)製)、アデカスタブHP−10(旭電化(株)製)、SandstabP−EPQ(サンド(株)製)、フォスファイト168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
【0076】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、スミライザーBHT(住友化学(株)製)、ヨシノックスBHT(吉富製薬(株)製)、アンテージBHT(川口化学(株)製)、イルガノックス1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、アデカスタブAO−60(旭電化(株)製)、スミライザーBP−101(住友化学(株)製)、トミノックスTT(吉富製薬(株)製)、TTHP(東レ(株)製)、イルガノックス3114(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、アデカスタブAO−20(旭電化(株)製)、アデカスタブAO−40(旭電化(株)製)、スミライザーBBM−S(住友化学(株)製)、ヨシノックスBB(吉富製薬(株)製)、アンテージW−300(川口化学(株)製)、イルガノックス245(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、アデカスタブAO−70(旭電化(株)製)、トミノックス917(吉富製薬(株)製)、アデカスタブAO−80(旭電化(株)製)、スミライザーGA−80(住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0077】
イオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、スミライザーTPL(住友化学(株)製)、ヨシノックスDLTP(吉富製薬(株)製)、アンチオックスL(日本油脂(株)製)、スミライザーTPM(住友化学(株)製)、ヨシノックスDMTP(吉富製薬(株)製)、アンチオックスM(日本油脂(株)製)、スミライザーTPS(住友化学(株)製)、ヨシノックスDSTP(吉富製薬(株)製)、アンチオックスS(日本油脂(株)製)、アデカスタブAO−412S(旭電化(株)製)、SEENOX 412S(シプロ化成(株)製)、スミライザーTDP(住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0078】
本発明の触媒系を用いて得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体をフィルム、シート用途に供する場合の酸化防止剤としては、イルガノックス1010:物質名:ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、イルガフォス168:物質名:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、イルガノックス1076:物質名:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イルガノックス1330:物質名:1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、イルガノックス3114:物質名:トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト、P−EPQ:物質名:テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスファイト、が特に好ましい。
本発明において酸化防止剤を用いる場合は、プロピレン−エチレンブロック共重合体100質量部に対し酸化防止剤を0.001〜1質量部程度添加すればよい。
これにより、黄変等を防ぐことができて好ましい。
【0079】
上記の酸化防止剤の具体的な使用例を挙げれば、
例1
イルガノックス1010 1000ppm
PEP−Q 1000ppm
例2
イルガノックス1076 1200ppm
PEP−Q 600ppm
イルガフォス168 800ppm
例3
イルガノックス1010 400〜1000ppm
イルガフォス168 750〜1500ppm
等が挙げられる。
【0080】
フィルム、シート用途の中和剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト(DHT−4A):組成式:Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O等が特に好ましい。
【0081】
フィルム、シート用途のアンチブロッキング剤としては、富士シリシア(株)製の「サイリシア」:合成シリカ系や、水澤化学工業(株)製の「ミズカシル」:合成シリカ系等が特に好ましい。
【0082】
フィルム、シート用途のスリップ剤としては、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリルエルカアミド、オレイルパルミトアミドが特に好ましい。
本発明において造核剤を用いる場合、造核剤の添加量は、通常、プロピレン−エチレンブロック共重合体に対して10ppm以上であり、好ましくは10〜10000ppmの範囲であり、より好ましくは10〜5000ppmの範囲であり、更に好ましくは10〜2500ppmである。
10ppm以上では、低温ヒートシール性が改善され、一方、10000ppmを超えるとコストが上昇する。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0084】
本発明の触媒を用いて得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体のエチレン含量、fEEE、r1・r2、極限粘度〔η〕、キシレン可溶部の極限粘度〔η〕等の樹脂特性は、明細書本文中に記載した方法により測定した。
【0085】
プロピレン−エチレンブロック共重合体の引張弾性率は、プロピレン−エチレンブロック共重合体をプレス成形して試験片を作成し、JIS K−7113に準拠し、測定した。
試験片(2号ダンベル)厚み:1mm
クロスヘッド速度:50mm/min
ロードセル:100kg
【0086】
プロピレン−エチレンブロック共重合体の内部ヘイズは、プロピレン系ブロック重合体をプレス成形して厚さ1mmの試験片を作製し、表面の散乱を除去するために、試験片表面にシリコーンオイル(信越シリコーン社製,KF56)を塗布した後、JIS K7105に準拠し、測定を行った。
【0087】
プロピレン−エチレンブロック共重合体の透明性は、上記と同様の試験片について目視にて測定した。
透明性の評価基準は透明性が良好であるものを○、劣るものを×とした。
【0088】
プロピレン−エチレンブロック共重合体のモルホロジーは、一辺が5cm以上の塊が発生した場合を×、一辺が1cm以上5cm未満の塊が発生した場合を○、一辺が1cm未満の塊であった場合を◎とした。
【0089】
実施例1
(1)(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチル−インデニル)ジルコニウムジクロリドの合成
[1](1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)の合成
窒素気流下、1L三つ口フラスコに、THF100mLとMg5.0g(206mmol)を加えた。
次に、1,2−ジブロモエタン0.1mLを加え、攪拌し、Mgを活性化した。
30分間攪拌後、溶媒を抜き出し、新たにTHF100mLを添加した。
更に、2−ブロモインデン10.0g(51.3mmol)のTHF溶液250mLを2時間かけて滴下した。
滴下終了後、室温で2時間攪拌した後、−78℃に冷却し、ジクロロジメチルシラン6.2mL(51.3mmol)のTHF100mL溶液を1時間で滴下した。
15時間攪拌後、溶媒を留去し、残渣をヘキサン300mLで抽出し、溶媒を留去することにより、2−クロロメチルシリルインデン9.6g(46.2mmol)を得た。(収率90%)
【0090】
次に、窒素気流下、1L三つ口フラスコに、THF400mLと2−クロロメチルシリルインデン9.6gを加え−78℃に冷却し、LiN(トリメチルシリル)2のTHF溶液(1.0M)を46.2mL(46.2mmol)滴下した。
室温で15時間攪拌後、溶媒を留去し、ヘキサン300mLで抽出し、溶媒を留去することにより、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)2.5g(7.2mmol)を得た。(収率31%)
【0091】
1H−NMR(90MHz,CDCl3)の測定値
δ:−0.69,0.73(12H,ジメチルシリレン),3.66(4H,−CH2−),7.17(8H,Ar−H)
【0092】
[2](1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの合成
シュレンク瓶に、前記(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)2.5g(7.2mmol)とエーテル100mLを添加した。
−78℃に冷却し、n−BuLi(ヘキサン溶液1.6M)9.0mL(14.8mmol)を添加した後、室温で12時間攪拌した。
溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン20mLで洗浄することにより、リチウム塩を定量的に得た。
シュレンク瓶に、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)のリチウム塩(6.97mmol)をTHF50mLに溶解し、−78℃に冷却した。
【0093】
次に、ヨードメチルトリメチルシラン2.1mL(14.2mmol)をゆっくりと滴下し、室温で12時間攪拌した。
溶媒を留去し、エーテル50mLを添加して、飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄した。
分液後、有機相を乾燥し、溶媒を除去し、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)3.04g(5.9mmol)を得た。(収率84%)
【0094】
窒素気流下において、シュレンク瓶に、前記の(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデン)を3.04g(5.9mmol)とエーテル50mLを添加した。
−78℃に冷却し、n−BuLi(ヘキサン溶液1.54M)7.6mL(11.8mmol)を添加した後、室温で12時間攪拌した。
溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン40mLで洗浄することにより、リチウム塩のエーテル付加体3.06g(5.1mmol)を得た。(収率86%)
【0095】
1H−NMR(90MHz,THF−d8)の測定値
δ:0.04(s,18H,トリメチルシリル),0.48(s,12H,ジメチルシリレン),1.10(t,6H,メチル),2.59(s,4H,メチレン),3.38(q,4H,メチレン),6.2〜7.7(m,8H,Ar−H)
【0096】
窒素気流下で、前記のリチウム塩のエーテル付加体をトルエン50mLに溶解した。
−78℃に冷却し、予め−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム1.2g(5.1mmol)のトルエン懸濁液20mLを滴下した。
滴下後、室温で6時間攪拌し、反応溶液の溶媒を留去した。
得られた残渣をジクロロメタンにより再結晶化したところ、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド0.9g(1.33mmol)を得た。(収率26%)
【0097】
1H−NMR(90MHz,CDCl3)の測定値
δ:0.0(s,18H,トリメチルシリル),1.02,1.12(s,12H,ジメチルシリレン),2.51(dd,4H,メチレン),7.1−7.6(m,8H,Ar−H)
【0098】
(2)共重合
1Lのオートクレーブに、液体プロピレン500mLを投入し、室温下でトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、1.0mmol、0.5mL)を触媒投入管よりヘプタン5mLと共に投入した。
一方、50mLのシュレンク瓶に窒素気流下、脱気ヘプタン5mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、0.5mmol、0.25mL)、ウィトコ(Witco)社製シリカ担持メチルアルミノキサン(MAO)のヘプタンスラリー(Al担持量:22.8質量%、0.3mmol,0.78mL、0.38mmol/mL)、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド(0.2μmol,0.01mL)及び(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド(0.4μmol、0.02mL)を投入し、室温で3分間攪拌した。
攪拌終了後、触媒スラリーを触媒投入管より高圧窒素を用いて攪拌下(400rpm)、35℃で投入した。
投入管の洗浄を目的にヘプタン10mLを、投入管に仕込み、高圧窒素でプロピレン中に投入した。
その後、5分間かけて40℃まで昇温し、そのまま10分間プロピレンの重合を行った。
次に、エチレン分圧が0.25MPaとなるようにエチレンを投入した。
重合温度が40℃になるように重合温度を維持した。
15分後、メタノール3mLを投入管より投入し、ゆっくりと未反応ガスを抜き、得られたパウダーを加熱乾燥することによりプロピレン−エチレンブロック共重合体を得た。
得られた重合体の樹脂特性評価結果を表1に示す。
【0099】
実施例2
1Lのオートクレーブに、液体プロピレン500mLを投入し、室温下でトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、1.0mmol、0.5mL)を触媒投入管よりヘプタン5mLと共に投入した。次に、水素を0.01MPa投入した。
一方、50mLのシュレンク瓶に窒素気流下、脱気ヘプタン5mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、0.5mmol、0.25mL)、ウィトコ(Witco)社製シリカ担持メチルアルミノキサン(MAO)のヘプタンスラリー(Al担持量:22.8質量%、0.5mmol,1.25mL、0.38mmol/mL)、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド(0.2μmol、0.01mL)及び(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド(0.8μmol、0.08mL)を投入し、室温で3分間攪拌した。
攪拌終了後、触媒スラリー2.8mLを触媒投入管より高圧窒素を用いて攪拌下(400rpm)、45℃で投入した。
投入管の洗浄を目的にヘプタン10mLを、投入管に仕込み、高圧窒素でプロピレン中に投入した。
その後、5分間かけて55℃まで昇温し、そのまま20分間プロピレンの重合を行った。
そして、5分間かけて55℃まで昇温した。
次に、エチレン分圧が0.25MPaとなるようにエチレンを投入した。
重合温度が55℃になるように重合温度を維持した。
15分後、メタノール3mLを投入管より投入し、ゆっくりと未反応ガスを抜き、得られたパウダーを加熱乾燥することによりプロピレン−エチレンブロック共重合体を得た。
得られた重合体の樹脂特性評価結果を表1に示す。
【0100】
実施例3
1Lのオートクレーブに、液体プロピレン500mLを投入し、室温下でトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、1.0mmol、0.5mL)を触媒投入管よりヘプタン5mLと共に投入した。次に、水素を0.03MPa投入した。
一方、50mLのシュレンク瓶に窒素気流下、脱気ヘプタン5mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、0.5mmol、0.25mL)、ウィトコ(Witco)社製シリカ担持メチルアルミノキサン(MAO)のヘプタンスラリー(Al担持量:22.8質量%、0.9mmol,2.4mL、0.38mmol/mL)、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド(0.2μmol、0.01mL)及び(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド(1.6μmol、0.16mL)を投入し、室温で3分間攪拌した。
攪拌終了後、触媒スラリー2.5mLを触媒投入管より高圧窒素を用いて攪拌下(400rpm)、35℃で投入した。
投入管の洗浄を目的にヘプタン10mLを、投入管に仕込み、高圧窒素でプロピレン中に投入した。
その後、5分間かけて40℃まで昇温し、そのまま22分間プロピレンの重合を行った。
そして、5分間かけて55℃まで昇温した。
次に、エチレン分圧が0.2MPaとなるようにエチレンを投入した。
重合温度が55℃になるように重合温度を維持した。
10分後、メタノール3mLを投入管より投入し、ゆっくりと未反応ガスを抜き、得られたパウダーを加熱乾燥することによりプロピレン−エチレンブロック共重合体を得た。
得られた重合体の樹脂特性評価結果を表1に示す。
【0101】
実施例4
(1)(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロライドの合成
シュレンク瓶に、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(インデン)0.83g(2.4mmol)とエーテル50mLを投入した。
−78℃に冷却し、n−BuLi(ヘキサン溶液1.6M)を3.1mL(5.0mmol)投入した後、室温で12時間攪拌した。
溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン20mLで洗浄することにより、リチウム塩のエーテル付加体1.1g(2.3mmol)を得た。
このリチウム塩のエーテル付加体を、THF50mLに溶解し、−78℃に冷却した。
臭化n−ブチル0.57mL(5.3mmol)をゆっくりと滴下し、室温で12時間攪拌した。
溶媒を留去し、ヘキサン50mLで抽出後、溶媒を除去し、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−n−ブチルインデン)0.81g(1.77mmol)を得た。(収率74%)
【0102】
次に、窒素気流下において、シュレンク瓶に前記の(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−n−ブチルインデン)0.81g(1.77mmol)とエーテル100mLを投入した。
−78℃に冷却し、n−BuLi(ヘキサン溶液1.54M)を2.7mL(4.15mmol)投入した後、室温で12時間攪拌した。
溶媒を留去し、得られた固体をヘキサンで洗浄することにより、リチウム塩のエーテル付加体0.28g(1.43mmol)を得た。
窒素気流下で前記のリチウム塩のエーテル付加体を、トルエン50mLに溶解した。
−78℃に冷却し、予め、−78℃に冷却した四塩化ジルコニウム0.33g(1.42mmol)のトルエン懸濁液50mLを滴下した。
滴下後、室温で6時間攪拌した。
次に、ろ過後、溶媒を留去し、ジクロロメタンより再結晶することにより、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロライド0.2g(0.32mmol)を得た。(収率22%)
【0103】
1H−NMR(90MHz,CDCl3)の測定値
δ:0.88,0.99(12H,ジメチルシリレン),0.7−1.0,1.1−1.5(18H,n−Bu),7.0−7.6(8H,ベンゼン環プロトン)
【0104】
(2)共重合
1Lのオートクレーブに、液体プロピレン500mLを投入し、室温下でトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、1.0mmol、0.5mL)を触媒投入管よりヘプタン5mLと共に投入した。次に、水素を0.03MPa投入した。
一方、50mLのシュレンク瓶に窒素気流下、脱気ヘプタン5mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、0.5mmol、0.25mL)、ウィトコ(Witco)社製シリカ担持メチルアルミノキサン(MAO)のヘプタンスラリー(Al担持量:22.8質量%、1.6mmol、4.2mL、0.38mmol/mL)、ジメチルシリレンビス(2−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド(0.2μmol、0.01mL)及び(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−n−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロライド(3.0μmol、0.30mL)を投入し、室温で3分間攪拌した。
攪拌終了後、触媒スラリー4.9mLを触媒投入管より高圧窒素を用いて攪拌下(400rpm)、35℃で投入した。
投入管の洗浄を目的にヘプタン10mLを、投入管に仕込み、高圧窒素でプロピレン中に投入した。
その後、5分間かけて40℃まで昇温し、そのまま20分間プロピレンの重合を行った。
そして、5分間かけて55℃まで昇温した。
次に、エチレン分圧が0.1MPaとなるようにエチレンを投入した。
重合温度が55℃になるように重合温度を維持した。
40分後、メタノール3mLを投入管より投入し、ゆっくりと未反応ガスを抜き、得られたパウダーを加熱乾燥することによりプロピレン−エチレンブロック共重合体を得た。
得られた重合体の樹脂特性評価結果を表1に示す。
尚、ジメチルシリレンビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドは、特開平6−100579号公報に従って合成した。
【0105】
実施例5
(予備重合)
攪拌翼付きの500mLのシュレンク瓶を10℃の水浴に浸し、窒素気流下、ウィトコ(Witco)社製シリカ担持メチルアルミノキサン(MAO)2.0g(Al担持量:22.8質量%)、脱水トルエン40mLを投入し、しばらく攪拌した。
攪拌下、ジメチルシリレンビス(ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド(9.0μmol)及び(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド(13.5μmol)を順に投入し、25分間攪拌した。
そして、プロピレン0.16MPaを投入し、2時間プロピレンの圧力を保持した。
脱圧後、窒素置換を行い、容器全体の質量を測定したところ、質量が2.5g増加していた。
次に、デカンテーションにより上澄みの溶媒を除いた後、脱水ヘプタン50mLで3回予備重合触媒を洗浄し、最後にもう一度脱水ヘプタンを最初にデカンテーションした際に除いた量投入し、予備重合触媒のヘプタンスラリーを得た。
【0106】
(共重合)
5Lのオートクレーブに液体プロピレン(2L)を投入後、室温下でトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、5.0mmol、2.5mL)を触媒投入管よりヘプタン(5mL)と共に投入し、55℃に昇温した。
次に、上記触媒スラリー(1.9mL)を触媒投入管より高圧窒素(3.0MPa)を用いて、400rpmで攪拌しながら投入した。
更に、投入管の洗浄を目的に脱水ヘプタン(5mL)を触媒投入管に仕込み、高圧窒素でオートクレーブに投入した。
次に、55℃で、30分間重合を行った後、エチレン分圧が0.2MPaとなるようにエチレンを投入した。
60分間、エチレン分圧が0.2MPaを維持するように投入し続けた。
重合反応終了後、メタノール(5mL)を投入管より投入し、ゆっくりと未反応ガスを抜き、得られたパウダーを加熱乾燥することによりプロピレン−エチレンブロック共重合体を得た。
得られた重合体の樹脂特性評価結果を表1に示す。
【0107】
実施例6
実施例5の共重合において、エチレン分圧を0.1MPaとした以外は、実施例5と同様に反応及び操作を行なった。
得られた重合体の樹脂特性評価結果を表1に示す。
【0108】
実施例7
(予備重合)
攪拌翼付きの500mLのシュレンク瓶を10℃の水浴に浸し、窒素気流下、ウィトコ(Witco)社製シリカ担持メチルアルミノキサン(MAO)2.4g(Al担持量:22.8質量%)、脱水トルエン(40mL)を投入し、しばらく攪拌した。
攪拌下、ジメチルシリレンビス(ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド(14.0μmol)及び(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライド(14.0μmol)を順に投入し、25分間攪拌した。
そして、プロピレン0.14MPaを投入し、1時間プロピレンの圧力を保持した。
脱圧後、窒素置換を行い、容器全体の質量を測定したところ、質量が4.0g増加していた。
次に、デカンテーションにより上澄みの溶媒を除いた後、脱水ヘプタン50mLで3回予備重合触媒を洗浄し、最後にもう一度脱水ヘプタンを最初にデカンテーションした際に除いた量投入し、予備重合触媒のヘプタンスラリーを得た。
【0109】
(共重合)
5Lのオートクレーブに液体プロピレン(2L)を投入後、室温下でトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、5.0mmol、2.5mL)を触媒投入管よりヘプタン(5mL)と共に投入し、55℃に昇温した。
次に、上記触媒スラリー(3.0mL)を触媒投入管より高圧窒素(3.0MPa)を用いて、400rpmで攪拌しながら投入した。
更に、投入管の洗浄を目的に脱水ヘプタン(5mL)を触媒投入管に仕込み、高圧窒素でオートクレーブに投入した。
次に、55℃で、30分間重合を行った後、エチレン分圧が0.25MPaとなるようにエチレンを投入した。
60分間、エチレン分圧が0.2MPaを維持するように投入し続けた。
重合反応終了後、メタノール(5mL)を投入管より投入し、ゆっくりと未反応ガスを抜き、得られたパウダーを加熱乾燥することによりプロピレン−エチレンブロック共重合体を得た。
得られた重合体の樹脂特性評価結果を表1に示す。
【0110】
比較例1
(予備重合)
攪拌機を備えた内容積1Lのガラス製オートクレーブ反応器を窒素ガスで十分に置換した後、ヘプタン400mLを投入した。
反応器内の温度を20℃に保ち、トリエチルアルミニウム28mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン2.8mmol及び三塩化チタン触媒(丸紅ソルベイ化学社製「XP−40」)5gを投入した後、プロピレンを触媒1g当たり3gとなるように、連続的に1時間反応器に導入した。
尚、この間、温度は20℃に保持した。
プロピレンの供給を停止した後、反応器内を窒素ガスで十分に置換し、得られたチタン含有ポリプロピレンを精製ヘプタンで4回洗浄した。
分析の結果、触媒1g当たり2.9gのプロピレンが重合していた。
【0111】
(共重合)
攪拌機を備えた内容積300Lのステンレス製オートクレーブ反応器を窒素ガスで十分に置換した後、液体プロピレンを200リットル、水素1mol%、トリエチルアルミニウムを120mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン29.5mmolを加え、反応器内温度を70℃に昇温した後、予備重合で得られたチタン含有ポリプロピレンを触媒として2.6g、窒素ガス雰囲気下に加えた。
次に、55℃で20分間プロピレンの重合を行った。
その後、エチレンを供給し、エチレンガス濃度が13mol%とした。
エチレンガス濃度を13mol%となるように連続的に供給を続け、55℃で120分間プロピレンとエチレンの共重合を行った。
重合体スラリ−を液体サイクロンに通し、液体プロピレンを重合槽へ戻し、共重合体粒子をフラッシュタンクへ送り液体プロピレンを蒸発させ、共重合体粒子を得た。
得られた重合体の樹脂特性評価結果を表1に示す。
【0112】
比較例2
1Lのオートクレーブに、液体プロピレン500mLを投入し、室温下でトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、1.0mmol、0.5mL)を触媒投入管よりヘプタン5mLと共に投入した。
一方、50mLのシュレンク瓶に窒素気流下、脱気ヘプタン5mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(2M、0.5mmol、0.25mL)、ウィトコ(Witco)社製シリカ担持メチルアルミノキサン(MAO)のヘプタンスラリー(Al担持量:22.8質量%、0.1mmol、0.26mL、0.38mmol/mL)、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド(0.2μmol、0.01mL)を投入し、室温で3分間攪拌した。
攪拌終了後、触媒スラリー5.0mLを触媒投入管より高圧窒素を用いて攪拌下(400rpm)、35℃で投入した。
投入管の洗浄を目的にヘプタン10mLを、投入管に仕込み、高圧窒素でプロピレン中に投入した。
その後、5分間かけて40℃まで昇温し、そのまま10分間プロピレンの重合を行った。
次に、エチレン分圧が0.35MPaとなるようにエチレンを投入した。
重合温度が40℃になるように重合温度を維持した。
15分後、メタノール3mLを投入管より投入し、ゆっくりと未反応ガスを抜き、得られたパウダーを加熱乾燥することによりプロピレン−エチレンブロック共重合体を得た。
得られた重合体の樹脂特性評価結果を表1に示す。
【0113】
比較例3
(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)−ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを用いた他は、比較例2と同様に反応及び操作を行なった。
【0114】
得られた重合体の樹脂特性評価結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の低結晶性ポリプロピレンを与えるメタロセン触媒と高結晶性ポリプロピレンを与えるメタロセン触媒を組み合せた担持触媒により、パウダー粒子が固着せず、透明性が高いプロピレン−エチレンブロック共重合体が製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記一般式(I)で表される単架橋メタロセン触媒、(2)下記一般式(III)で表される二架橋メタロセン触媒、(3)多孔質担体、(4)アルミノキサン又は前記メタロセン触媒と反応してイオン性の錯体を形成しうる化合物、及び必要に応じて(5)有機アルミニウム化合物よりなる触媒系を用いて、第一工程としてプロピレンを重合し、第二工程としてプロピレンとエチレンとのランダム共重合を行うことにより得られる、プロピレン−エチレンブロック共重合体。
【化1】

(式中、E1は二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示す。R1及びR2は、それぞれ炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示し、R3〜R6は、それぞれ水素、炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示す。M1は、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを示す。また、X1,Y1はそれぞれ共有結合性の配位子を示す。尚、X1及びY1は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【化2】

(式中、E2及びE3は二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示す。R11〜R18は、それぞれ水素、炭化水素基、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示し、R19及びR20は、それぞれi−プロピル基、n−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基又はトリメチルシリルメチル基を示す。M2は、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを示す。また、X2,Y2はそれぞれ共有結合性の配位子を示す。尚、X2及びY2は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
前記第一工程の前に、前記触媒系にオレフィンを接触させて予備重合を行う、請求項1に記載のプロピレン−エチレンブロック共重合体。
【請求項3】
前記予備重合による生成物の量が、前記触媒系中の遷移金属成分1ミリモル当たり1〜10000gである、請求項2に記載のプロピレン−エチレンブロック共重合体。
【請求項4】
弾性率Eが71MPa以上330MPa未満、且つ内部ヘイズHが25%以上55%未満である、請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン−エチレンブロック共重合体。
【請求項5】
エチレン含量が1.0モル%以上6.0モル%以下、極限粘度〔η〕が1.0dl/g以上4.1dl/g以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のプロピレン−エチレンブロック共重合体。
【請求項6】
エチレン含量が1.0モル%以上6.0モル%以下、極限粘度〔η〕が1.0dl/g以上4.1dl/g以下、弾性率Eが71MPa以上330MPa未満、且つ内部ヘイズHが25%以上55%未満である、プロピレン−エチレンブロック共重合体。

【公開番号】特開2011−38117(P2011−38117A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259952(P2010−259952)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【分割の表示】特願2004−551215(P2004−551215)の分割
【原出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】