説明

プロピレン系ランダム共重合体及びその用途

【課題】低融点、高分子量であり、かつ低ノルマルデカン可溶分量であるプロピレン系ランダム共重合体および該共重合体から得られるフィルム等の成形体を提供すること。
【解決手段】本発明は、下記[1]〜[4]の特性を同時に満たすプロピレン系ランダム共重合体、および該プロピレンランダム共重合体を成形して得られる各種の有用な成形体に関する。
[1] プロピレン系ランダム共重合体に含まれる、プロピレンに由来する骨格成分(a)の濃度(Pa, mol%)、並びにエチレン(b)および炭素数が4〜20であるα-オレフィン(c)から選ばれる1種以上のオレフィンに由来する骨格濃度(Px, mol%)が以下の関係式(Eq-1)〜(Eq-3)を満たす。


[2] プロピレン系ランダム共重合体に含まれる、プロピレンに由来する骨格成分(a)の濃度(Pa, ,mol%)と、示差走査熱量計によって測定した融点(Tm)が式(Eq-4)を満たす。


[3] 2,1-挿入および1,3-挿入の異種結合の合計量が0.2 mol%以下である。
[4] n-デカン(nC10)に可溶な成分量が2.0 wt%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロピレン系ランダム共重合体およびその用途に関し、さらに詳しくは低融点、高分子量であり、かつノルマルデカン可溶分量が少ない新規なプロピレン系ランダム共重合体およびこれから得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系ランダム共重合体は優れた物理的性質を有しているため、広範な用途において用いられている。例えば、プロピレン系ランダム共重合体は包装用フィルムとして広く使用されているが、包装フィルムの分野では低温ヒートシール性が要求される場合がある。低温ヒートシール性を改良させるためにはプロピレン系ランダム共重合体の低融点化が必要である。特開平2-173015号公報では、インデニル基、置換インデニル基及びその部分水素化物から選ばれた2個の基が低級アルキレン基を介して結合した多座配位化合物を配位子とするハフニウム化合物とアルミノオキサンとから調製されるプロピレン系ランダム共重合体が提案されている。前記公報のプロピレン系ランダム共重合体は確かに低融点ではあるが、低結晶性かつ低分子量成分が多く、フィルムの耐ブロッキング性に劣るという問題があった。
【0003】
特開平9-110934号公報においては、キラルなメタロセン化合物とアルミノキサンとからなるプロピレン系ランダム共重合体が開示されている。同公報に開示された方法に従えば、低融点プロピレン系ランダム共重合体の製造はできるが、キラルなメタロセン化合物調製時に副生する非キラルなメソ体メタロセンによりアタクチックポリマーが副生する結果、フィルムの耐ブロッキング性低下したり、加熱処理後にヘイズが低下するという問題があった。
【0004】
特表平8-504457号公報では、キシレン可溶分量の少ない低融点プロピレン単独重合体が提案されているが、プロピレン単独重合体である為、フィルムでの耐衝撃性に劣るという問題があった。
【特許文献1】特開平2-173015号公報
【特許文献2】特開平9-110934号公報
【特許文献2】特表平8-504457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような問題が解消されたプロピレン系ランダム共重合体およびこれから得られる成形体に関し、さらに詳しくは低融点、高分子量であり、かつ低ノルマルデカン可溶分量であるプロピレン系ランダム共重合体および該共重合体から得られるフィルム等の成形体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は
★プロピレン系ランダム共重合体(Z)、該共重合体(Z)の一形態である特異的なモルホロジーを有するプロピレン系ランダム共重合体粒子(Z’)及びこれらの製造方法、並びに
★前記プロピレン系ランダム共重合体(Z)ないしプロピレン系ランダム共重合体粒子(Z’)から得られるフィルム等の成形体に関する。
【0007】
本発明のプロピレン系ランダム共重合体(Z)は、下記[1]〜[4]の特性を同時に満たすプロピレン系ランダム共重合体、好ましくは[1]〜[5]の特性を同時に満たすプロピレン系ランダム共重合体である。
【0008】
[1] プロピレン系ランダム共重合体に含まれる、プロピレンに由来する骨格成分(a)の濃度(Pa, mol%)、並びにエチレン(b)および炭素数が4〜20であるα-オレフィン(c)から選ばれる1種以上のオレフィンに由来する骨格濃度(Px, mol%)が以下の関係式(Eq-1)〜(Eq-3)を満たす。
【0009】
【数1】

【0010】
[2] プロピレン系ランダム共重合体に含まれる、プロピレンに由来する骨格成分(a)の濃度(Pa, ,mol%)と、示差走査熱量計によって測定した融点(Tm)が式(Eq-4)を満たす。
【0011】
【数2】

【0012】
[3] 2,1-挿入および1,3-挿入の異種結合の合計量が0.2 mol%以下である。
[4] n-デカン(nC10)に可溶な成分量が2.0 wt%以下である。
【0013】
本発明のプロピレン系ランダム共重合体(Z)の好ましい態様は、前記[1]〜[4]の要件に加えて、下記要件[5]を満たすプロピレン系ランダム共重合体である。
[5] DSCで求められた融点(Tm)が140℃以下である。
【0014】
本発明のプロピレン系ランダム共重合体粒子(Z')は、前記プロピレン系共重合体の一形態であって、最外殻に存在する第1表皮層[L1]、第1表皮層に内接する第2表皮層[L2]、および第2表皮層内部の核部[L3]から構成される3層構造のプロピレン系重合体粒子であって、核部[L3]の、金属酸化物染色後超薄切片の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(倍率4000倍)において、粒子径が3μm以上の染色成分が観測されないことを特徴とするプロピレン系重合体粒子である。
【0015】
本発明のプロピレン系重合体粒子の好ましい態様は、第1表皮層[L1]がポリエチレンであり、第2表皮層[L2]の、DSCで測定される融点(Tm)が130℃以上を満たすポリプロピレンであり、核部[L3]が、プロピレン単独重合体又は、プロピレン並びに、エチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンから得られる共重合体であるプロピレン系重合体粒子(Z'')である。
【0016】
本発明のプロピレン系重合体粒子の更に好ましい態様は、第1表皮層のポリエチレンの極限粘度[η]が3(g/dl)以上、密度が910(kg/m3)以上であり、第2表皮層のポリプロピレンの極限粘度が[η]が0.5〜5(g/dl)の範囲にあるプロピレン系重合体粒子(Z''')である。
【0017】
前記プロピレン系ランダム共重合体粒子(Z')〜(Z''')は、次の三つの工程[P-1]、[P-2]および[P-3]を、メタロセン触媒存在下で順次実施することにより得られる。
工程[P-1]; エチレンを重合して前重合体[P1]を製造する工程。
工程[P-2]; 5〜40℃の温度にて前記の前重合体[P1]の存在下で、プロピレンを50〜20,000g/g-catとなる量を重合して予重合体[P2]を製造する工程。
【0018】
工程[P-3]; 予重合体[P2]の存在下でプロピレン単独重合するか、またはプロピレン並びに、エチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンを共重合してプロピレン系共重合体[P3]を製造する工程。
【0019】
上記の工程[P-1]で製造された前重合体[P1]は、炭素数5〜12の脂肪族または脂環族炭化水素で洗浄されていることが好ましく、また前記の工程[P-1]、工程[P-2]および工程[P-3]から選ばれる少なくても一つの工程が、下記一般式[I]で表わされるポリオキシアルキレン系化合物の共存下で行われることが好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
(上記一般式[I]において、R1、R2およびR3は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数1〜20のアシル基から選ばれ、相互に同一でも異なっていてもよい。kは平均繰り返し単位数を表わし、1〜100の範囲である。)
さらに、本発明に係わる工程[P-2]では、管状反応器が好んで採用される。
【0022】
本発明に係わる工程[P-1]、[P-2]および[P-3]で用いられるメタロセン触媒は、下記一般式[II]で表されるメタロセン化合物を必須成分として含むメタロセン触媒であることが好ましい。
【0023】
【化2】

【0024】
[上記一般式[II]において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子またはケイ素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。]
本発明は、前記プロピレン系ランダム共重合体から得られる成形体、とりわけシーラントフィルム、シュリンクフィルム、またはシュリンクラベルに関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、低融点かつn-デカン可溶分が少ない(すなわち、低結晶性成分量が少ない)高分子量のプロピレン系ランダム共重合体を得ることができ、このプロピレン系ランダム共重合体からは、耐ブロッキング性、加熱処理後の透明性低下が少ない各種フィルム、シートおよび高透明性の射出成形品、ブロー成形品、インジェクションブロー成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
プロピレン系ランダム共重合体(Z)
発明のプロピレン系ランダム共重合体(Z)は、下記要件[1]〜[4]を同時に満たすプロピレン系ランダム共重合体である。
【0027】
[1] プロピレン系ランダム共重合体に含まれる、プロピレンに由来する骨格成分(a)の濃度(Pa, mol%)、並びにエチレン(b)および炭素数が4〜20であるα-オレフィン(c)から選ばれる1種以上のオレフィンに由来する骨格濃度(Px, mol%)が以下の関係式(Eq-1)〜(Eq-3)を満たし、好ましくは以下の関係式(Eq-1')〜(Eq-3')を満たし、特に好ましくは以下の関係式(Eq-1'')〜(Eq-3'')を満たす。
【0028】
【数3】

【0029】
【数4】

【0030】
【数5】

【0031】
Pxが15mol%を超えるとプロピレン系ランダム共重合体の剛性が低下する傾向を示すため好ましくない。
【0032】
本発明で用いられる炭素数4〜20のα-オレフィン(c)としては、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらの中では、1-ブテン、1-ヘキセン、および4-メチル-1-ペンテンから選ばれる少なくても1種以上であることが好ましい。
【0033】
[2] 本発明のプロピレン系ランダム共重合体に含まれる、プロピレンに由来する骨格成分(a)の濃度(Pa, ,mol%)と、示差走査熱量計(DSC)によって測定した融点(Tm)は下記関係式(Eq-4)を満たし、好ましくは下記関係式(Eq-4')を満たす。
【0034】
【数6】

【0035】
【数7】

【0036】
[3] 本発明のプロピレン系ランダム共重合体中の2,1-挿入および1,3-挿入に起因する異種結合の合計量が0.2 mol%以下、好ましくは0.1mol%以下、更に好ましくは0.08mol%以下である。異種結合量が0.2mol%を超えるとプロピレン系ランダム共重合体中の低結晶成分が多くなる。重合時、プロピレンは、通常1,2-挿入(メチレン側が触媒と結合する)して頭−尾結合したプロピレン連鎖を形成するが、稀に2,1-挿入あるいは1,3-挿入することがある。2,1-挿入および1,3-挿入したプロピレンは、ポリマー中で、位置不規則単位を形成する。ポリマー構成単位中のプロピレンの2,1-挿入および1,3-挿入の濃度は、13C-NMRスペクトルを利用して、Polymer,30,1350(1989) や特開平7-145212号公報に開示された情報を参考にして容易に算出することができる。
【0037】
[4] 本発明のプロピレン系ランダム共重合体に占めるn-デカン(nC10)に可溶な成分量は2.0 wt%以下、好ましくは1.0wt%以下、更に好ましくは0.5wt%以下である。このn-デカン可溶部量はプロピレン系ランダム共重合体乃至これから得られる成形体のブロッキング特性に密接した指標であり、通常n-デカン可溶部量が少ないということは低結晶性成分量が少ないことを意味する。上記のように、本発明のプロピレン系ランダム共重合体は極めて良好な耐ブロッキング特性を備えるものである。また、クロスクロマト分別によっても本発明のプロピレン系ランダム共重合体中の低結晶性成分が少ないことを確認できる。具体的には、クロスクロマト分別測定(CFC)でo-ジクロルベンゼン(ODCB)40℃以下の溶出成分量が2.0wt%以下、好ましくは1.0wt%以下、更に好ましくは0.5wt%以下である。ODCB 40℃以下の溶出成分量が2.0wt%を超えると、プロピレン系ランダム共重合体中の低結晶成分が多くなるため、フィルムの耐ブロッキング性、加熱処理後フィルムの透明性低下等の問題が発生することが多いのである。
【0038】
本発明のプロピレン系ランダム共重合体(Z)は、前記要件[1]〜[4]に加えて、下記要件[5]を満たすことが好ましい。
【0039】
[5] 本発明のプロピレン系ランダム共重合体(Z)の、DSCで求められた融点(Tm)が140℃以下、好ましくは95〜140℃、更に好ましくは100〜130℃、特に好ましくは100〜120℃である。融点が140℃を超えると、本プロピレン系ランダム共重合体(Z)をフィルム等の成形体に応用した場合のヒートシール温度の上昇をもたらす場合があるので好ましくない。なお、本発明のプロピレン系ランダム共重合体(Z)の、230℃、2.16kg荷重時のメルトフローレート(MFR)は、用途に応じて最適のMFRを示すプロピレン系ランダム共重合体(Z)が制限なく用いられる。総じて言うならば、MFRが30(g/10min)以下であれば各種の成形用途に問題なく使用が可能であるので好ましい。しかし、より詳細に述べるならば、射出成形用途ではMFRが40(g/10min)以下であることが望ましく、またフィルム用途ではMFRが20(g/10min)以下、更にブロー成形、シート用途ではMFRが2(g/10min)以下であることが望ましい。
【0040】
また、本発明のプロピレン系ランダム共重合体(Z)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)から求められる分子量分布(Mw/Mn)については、該共重合体(Z)を特にシーラントフィルムやシュリンクフィルム等の透明性が要求されるフィルム成形体に応用する場合は、通常Mw/Mnが1.0〜4.0、好ましくは1.0〜3.0のものが好ましく採用されるが、透明性が要求されないフィルム用途やフィルム以外の成形体の分野ではMw/Mnが4.0を超える重合体も好んで採用される。
【0041】
プロピレン系ランダム共重合体粒子「(Z')〜(Z''')」
本発明のプロピレン系ランダム共重合体粒子(Z’)は、前記プロピレン系共重合体(Z)の一形態であって、最外殻に存在する第1表皮層[L1]、第1表皮層に内接する第2表皮層[L2]、および第2表皮層内部の核部[L3]から構成される3層構造のプロピレン系重合体粒子であって、核部[L3]の、金属酸化物染色後超薄切片の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(倍率4000倍)において、粒子径が3μm以上の染色成分が観測されないことを特徴とするプロピレン系ランダム共重合体粒子である。本願明細書に一例として添付された第4図および第5図によって、本発明のプロピレン系ランダム共重合体粒子(Z')の層状構造および核部[L3]の均質性が容易に理解される。
【0042】
本発明のプロピレン系重合体粒子の好ましい態様は、第1表皮層[L1]がポリエチレンであり、第2表皮層[L2]の、DSCで測定される融点(Tm)が130℃以上を満たすポリプロピレンであり、核部[L3]が、プロピレン並びに、エチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンから得られる共重合体であるプロピレン系重合体粒子(Z'')である。
【0043】
本発明のプロピレン系重合体粒子の更に好ましい態様は、第1表皮層のポリエチレンの極限粘度[η]が3(g/dl)以上、密度が910(kg/m3)以上であり、第2表皮層のポリプロピレンの極限粘度が[η]が0.5〜5(g/dl)の範囲にあるプロピレン系重合体粒子(Z''')である。
本発明のプロピレン系重合体粒子(Z')〜(Z''')は、以下に述べる第1表皮層[L1]、第2表皮層[L2]および核部[L3]の三層構造を有するプロピレン系重合体粒子である。
【0044】
(i) 第1表皮層[L1];第1表皮層[L1]を構成するポリエチレンの極限粘度[η]は3(g/dl)以上が好ましく、さらに好ましくは5(dl/g)以上である。[η]を3(g/dl)以上にすることにより、ポリエチレン分子鎖の絡み合いが強固になり、予重合時(および本重合時)の粒子の破壊を防止する。[η]が3(g/dl)以上とするためには、粒子の形態から、ポリエチレンが最適である。 また、密度については高密度領域が好ましいが、エチレン共重合体のような低密度領域であってもよい。なお、密度を910(kg/m3)未満とするためは共重合させるモノマー量を増加する必要がありコスト的な問題が発生する。この第1表皮層[L1]は後述する工程[P-1]において形成される。
【0045】
(ii) 第2表皮層[L2];第1表皮層に内接する第2表皮層[L2]を構成するポリプロピレンの極限粘度[η]は0.5〜5 (g/dl)、好ましくは、1〜3.0 (g/dl)の範囲にある。極限粘度[η]が5 (g/dl)より大では、後述する工程[P-2]における重合時に無水素に近い状態になり、粒子の形態が悪くなる。また、0.5 (g/dl)未満では、粒子の発熱が大きく、微粉を生じ易い。DSCで測定される第2表皮層[L2]の融点Tmは130℃以上、好ましくは145℃以上である。130℃未満では立体規則性が低く、重合溶媒にポリマーが溶解し易く、重合体粒子のブロッキングが発生し易い。また、エチレン等α-オレフィンの共重合により、Tmが130℃未満の重合体を得ようとする場合、一般的にメタロセン化合物が触媒から脱離し易くなり、その結果ファウリングが増大するという製造面での弊害がある。この第2表皮層[L2]は後述する工程[P-2]において形成される。
【0046】
(iii) 核部[L3];最内層である核部[L3]を構成する成分は、プロピレン並びに、エチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンから得られる共重合体である。なお、核部[L3]は後述する工程[P-3]において形成され、本発明のプロピレン系ランダム共重合体の主要部を成す層である。
【0047】
本発明は、次の三つの工程[P-1]、[P-2]および[P-3]を、メタロセン触媒存在下で順次実施することを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法も包含するものである。プロピレン系重合体としては、前述のプロピレン系ランダム共重合体粒子(Z')〜(Z''')のみならず、プロピレン由来の骨格を主成分として含む全てのプロピレン系重合体に適用可能な製造方法である。以下、前述のプロピレン系ランダム共重合体粒子(Z'')〜(Z''')の製造を例にとって本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0048】
工程[P-1]は、エチレンを重合して前重合体[P1]を製造する工程である。触媒単位重量当たりのエチレン重合量については、プロピレン系ランダム共重合体の性能(例えば、フィルムとした場合の特性)面からは特に最適範囲がある訳ではない。しかし、生産性の視点から、触媒単位重量当たりのエチレン重合量通常1〜50g/g-cat、好ましくは、1〜20g/g-cat、さらに好ましくは、1〜10g/g-catである。重合量が50g/g-cat以上とするためは、多大な反応時間を要すため生産性の視点から好ましくない。(以下の説明では、工程[P-1]で実施される重合を『前重合』、この前重合で得られた重合体[P1]を『前重合体』と呼ぶ場合がある。)
【0049】
工程[P-2]は、5〜40℃の温度にて前記の前重合体[P1]の存在下で、プロピレンを50〜20,000g/g-catとなる量を重合して予重合体[P2]を製造する工程である。工程[P-2]では通常管状反応器が好んで用いられるが、工程[P-2]が具備すべき前記条件が満たされる限り何ら管状反応器に限定されるものではない。管状反応器とは、管状反応器とは、温度調節媒体中に浸漬された円筒状流路からなり、反応体は管状反応器の一端から供給され、管状反応器の内部で重合され、ポリマーが管状反応器の他端から取り出される構造を持つ。管状反応器においては、温度調節媒体と反応体との間で良好な熱交換を行う必要があるため、円筒状流路は狭くなければならず、典型的には直径は1cm〜15cmの範囲である。さらに、流量については、詰まりの発生を防止するためバランスがとられ、また重合をさせるために十分な熱交換が行われる。このような管状反応器が本発明のプロピレン系ランダム共重合体を製造するために好ましく採用されるが、滞留部分が無く且つ滞留部によるファウリングを防止でき、低温でマイルドな重合を行うことが可能であれば、管状反応器以外の他の反応器も使用可能であることは前述の通りである。
【0050】
予重合ポリプロピレン量は、通常50〜20,000g/g-catであるが、好ましくは、100〜500 g/g-catである。50g/g-cat以上で初めて本重合時の粒子破壊を防止することができるのであり、これ以下の重合量では粒子破壊し易いのである。20,000g/g-cat以上のものは設備上好ましくない。(以下の説明では、工程[P-2]で実施される重合を『予重合』、この予重合で得られた重合体[P2]を『予重合体』と呼ぶ場合がある。)
【0051】
工程[P-3]は、1) 予重合体[P2]の存在下でプロピレン単独重合するか、または2) プロピレン並びに、エチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンを共重合してプロピレン系共重合体[P3]を製造する工程である。触媒単位重量当たりの重合量は、3,000〜50,000(g/g-cat)が好ましい。(以下の説明では、工程[P-3]で実施される重合を『本重合』、この本重合で得られた重合体[P3]を『本重合体』と呼ぶ場合がある。)
【0052】
なお、工程[P-3]を、重合条件の異なる二種以上の重合を順次実施することによって行ってもよい。このような重合方法の一例として、一つの重合層でプロピレンの単独重合を行い、他の重合層でプロピレンの共重合を実施する方法が挙げられる。(以下の説明では、この重合を「段差重合」と呼ぶ場合がある。)
【0053】
フィルム用途に好適に使用されるランダム共重合体を得るための段差重合例について以下具体的に述べる。この段差重合においては、工程[P-3]を重合条件の異なる二つの工程に分割し、最初のリアクターで工程[P-3a]、すなわちプロピレンのホモ重合を実施し、次いで直列に連結された次段のリアクターにおいて工程[P-3b]、すなわちプロピレンと、エチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンとの共重合を実施する。この段差重合によって得られるプロピレン系ランダム共重合体粒子は、 [i] GPC分子量分布が4.0以下であり、[ii]DSCで測定した融点ピーク(Tm)が、130℃以上、好ましくは135℃以上の高温側と125℃以下、好ましくは120℃以下の低温側にそれぞれ1つ以上存在し、[iii]金属酸化物染色後の超薄切片の倍率4000倍の透過型電子顕微鏡(TEM)写真で、粒子径が3μm以上の染色成分が観測されず、[iv]n-デカンに可溶な部分が5.0wt%以下という特徴を持つプロピレン系ランダム共重合体粒子であり、透明性、低温におけるヒートシール性、耐ブロッキング性に優れ、さらに、成形時のロール付着マークが少ない、優れたヒートシール材として用いることができるのである。なお、段差重合を採用して得られたプロピレン系ランダム共重合体粒子の核部[L3]の、金属酸化物染色後超薄切片の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(倍率4000倍)においても、粒子径が3μm以上の染色成分が観測されないという特徴が維持されていることに注目すべきである。
【0054】
本発明のプロピレン系ランダム共重合体粒子は、(X)メタロセン触媒存在下で得られるプロピレンホモポリマー並びに、(Y)メタロセン触媒存在下でプロピレンとエチレンから得られる共重合体、(Z)メタロセン触媒存在下でプロピレンと炭素数4以上のα-オレフィンから得られる共重体および(W)メタロセン触媒存在下でプロピレンとエチレンと炭素数4以上のα-オレフィンから得られる共重体から選ばれる少なくても1種の共重合体が均一に分散されたポリプロピレン共重合体であるともいえる。
【0055】
本発明においては、上記工程[P-1]で製造された前重合体[P1]は、炭素数5〜12の脂肪族炭化水素または炭素数5〜12の脂環族炭化水素化合物(Sol)で洗浄されていることが好ましい。炭素数5〜12の脂肪族炭化水素としては、n-ペンタン、2-メチルブタン、n-ヘキサン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘプタン、2,3-ジメチルペンタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカンを例示できる。一方で、炭素数5〜12の脂環族炭化水素としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン等を例示できる。これらの中では入手容易性、洗浄操作のし易さ、および使用後の回収容易性等の点で、n-ヘプタン、n-ヘキサン又はこれらの混合溶媒が好んで使用される。前重合体[P1]中の脱離メタロセン化合物が95重量%以上洗浄除去できさえすれば洗浄方法や洗浄条件は特に限定されるものではない。通常は、前重合体[P1]に対して1(g/L-Sol)になるように、前記炭化水素溶媒(Sol)を加え、常圧、30℃以下で、15分間、撹拌後、上澄み液を除去する方法によって行われる。通常、この操作を1〜5回繰り返すことによって、前重合体[P1]中の脱離メタロセン化合物の95重量%以上が洗浄除去される。なお、前記炭化水素溶媒(Sol)の共存下で工程[P-1]を実施して前重合体[P1]を調製してもよい。
【0056】
また本発明においては、前記工程[P-1]、工程[P-2]および工程[P-3]から選ばれる少なくても一つの工程が、下記一般式[I]で表わされるポリオキシアルキレン系化合物の共存下で行われることが好ましい。
【0057】
【化3】

【0058】
上記一般式[I]において、R1、R2およびR3は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数1〜20のアシル基から選ばれる。kは平均繰り返し単位数を表わし、1〜100の範囲である。このようなポリオキシアルキレン化合物として具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエートなどが挙げられる。また、これらの非イオン界面活性剤は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。このような化合物の中では、R1およびR2が共に水素原子であるか、又はR1およびR2の一つ以上が炭素数12〜18の脂肪族アシル基であり、且つR3が水素原子又はメチル基であるポリオキシアルキレン化合物を用いた方が一般的にはファウリング防止効果は高い。なお、R1およびR2の一つ以上がアシル基である化合物は、重合時の環境雰囲気がアルカリ性である場合その使用が制限される。
【0059】
前記一般式[I]で表わされるポリオキシアルキレン化合物の中で、特に下記一般式[I’]で表わされるポリオキシアルキレングリコールが優れたファウリング防止効果を示すことから好んで使用される。
【0060】
【化4】

【0061】
上記一般式[I’]において、m,n及びpは平均繰返し単位数を表し、m=1〜20、n=2〜50、p=1〜20の範囲である。上記一般式[I’]中、(CH2CH2O)で表されるオキシエチレン単位の繰返し単位数を示すm及びpの合計(m+p)は、2〜40、好ましくは4〜20、更に好ましくは4〜15の範囲である。繰り返し単位数の比(m/p)は0.1〜10であり、0.5〜5が好ましい。一方、[CH2CH(CH3)O]で表されるオキシプロピレン単位の繰返し単位数を示すnは、2〜50、好ましくは10〜50、より好ましくは20〜50の範囲である。
【0062】
前記ポリオキシアルキレン系化合物は、前記の工程[P-1]、工程[P-2]および工程[P-3]から選ばれる少なくても一つの工程において添加されるが、通常は、工程[P-2]および工程[P-3]の両工程において添加される。ポリオキシアルキレン系化合物の添加量はメタロセン触媒(後述するように、「メタロセン触媒」は通常はシリカ等の担体成分、メチルアルミノキサン等の助触媒成分およびメタロセン化合物から構成される。)に対して3から300wt%であり、好ましくは5から100wt%、さらに好ましくは10から50wt%である。添加形態は、通常炭化水素溶媒(Sol)に希釈し、流量計を通して加圧装入で、一括、間欠または連続的に添加される。希釈なしで、ポンプフィードすることも可能である。
【0063】
本発明に係わる工程[P-1]、[P-2]および[P-3]で用いられるメタロセン触媒は、(A)メタロセン化合物、並びに、(B)有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物から選ばれる少なくても1種以上の化合物、さらに必要に応じて粒子状担体とからなるメタロセン触媒であり、好ましくはアイソタクチックまたはシンジオタクチック構造等の立体規則性重合をすることのできるメタロセン触媒を挙げることができる。前記のメタロセン化合物の中では、本願出願人による国際出願によって既に公開(WO01/27124)されている、下記一般式[II]で表わされる架橋性メタロセン化合物が好適に用いられる。
【0064】
【化5】

【0065】
上記一般式[II]において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。このような炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、アリル(allyl)基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、tert-ブチル基、アミル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基;ベンジル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基などの環状不飽和炭化水素基の置換した飽和炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、フリル基、N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N-フェニルアミノ基、ピリル基、チエニル基などのヘテロ原子含有炭化水素基等を挙げることができる。ケイ素含有基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基などを挙げることができる。また、R5からR12の隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。このような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基などを挙げることができる。
【0066】
前記一般式[II]において、シクロペンタジエニル環に置換するR1、R2、R3、R4は水素、または炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、R1、R3が水素であり、R2、R4が炭素数1〜20の炭化水素基であることがより好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前述の炭化水素基を例示することができる。中でも、R2はtert-ブチル基、アダマンチル基、トリフェニルメチル基のような嵩高い置換基であることがより好ましく、R4はメチル基、エチル基、n-プロピル基のようにR2より立体的に小さい置換基であることがより好ましい。ここでいう立体的に小さいとは、その置換基が占有する体積が小さいことを指す。
【0067】
前記一般式[II]において、フルオレン環に置換するR5からR12は水素又は炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前述の炭化水素基を例示することができる。R5からR12の隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0068】
前記一般式[II]において、シクロペンタジエニル環とフルオレニル環を架橋するYは炭素原子またはケイ素原子であり、好ましくは炭素原子である。このYに置換するR13、R14は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。これらは相互に同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。炭素数1〜20の炭化水素基としては、前述の炭化水素基を例示することができる。さらに好ましくはR14は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数6〜20のアリール(aryl)基である。また、R13、R14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。このような置換基としては、フルオレニリデン基、10-ヒドロアントラセニリデン基、ジベンゾシクロヘプタジエニリデン基などが好ましい。
【0069】
前記一般式[II]において、Mは第4族遷移金属であり、好ましくはTi、Zr、Hf等が挙げられる。また、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれる。jは1〜4の整数であり、jが2以上の時は、Qは互いに同一でも異なっていてもよい。ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、炭化水素基の具体例としては前述と同様のものなどが挙げられる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert-ブトキシ、フェノキシなどのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類等が挙げられる。Qは少なくとも1つがハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
【0070】
このような架橋メタロセン化合物としては、イソプロピリデン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチル-シクロペンタジエニル)(3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが好ましく用いられる。
【0071】
本発明に係わるメタロセン触媒は、
(A)前記一般式[II]で表わされるメタロセン化合物、
(B)有機金属化合物(B-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)、およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物(B-3)、から選ばれる少なくとも1種の化合物、さらに必要に応じて、
(C)粒子状担体
から構成される。
【0072】
以下、各成分について具体的に説明する。
(B-1)有機金属化合物
本発明で用いられる有機金属化合物(B-1)として、具体的には下記のような第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が用いられる。
【0073】
(B-1a)一般式:RamAl(ORb)nHpXq
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である)で表される有機アルミニウム化合物。このような化合物の具体例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどを例示することができる。
【0074】
(B-1b)一般式:M2AlRa4
(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す)で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。このような化合物としては、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4などを例示することができる。
【0075】
(B-1c)一般式:RaRbM3
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである)で表される第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
【0076】
上記の有機金属化合物(B-1)のなかでは、有機アルミニウム化合物が好ましい。また、このような有機金属化合物(B-1)は、1種単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0077】
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0078】
従来公知のアルミノキサンは、吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類の炭化水素媒体懸濁液にトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法や、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法などにより製造される。
【0079】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同一の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。なお、トリメチルアルミニウムから調製されるアルミノキサンは、メチルアルミノキサンあるいはMAOと呼ばれ、特に好ましく用いられる化合物である。
【0080】
これらの有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0081】
(B-3)メタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物
本発明で用いられるメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物(B-3)(以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、US5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。このようなイオン化イオン性化合物(B-3)は、1種単独または2種以上組み合せて用いられる。
【0082】
(C)粒子状担体
本発明で必要に応じて用いられる粒子状担体(C)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましく、多孔質酸化物が特に好ましい。
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物を使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl2O3を主成分とするものが好ましい。このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が5〜300μm、より好ましくは10〜100μmであって、比表面積が50〜1000m2/g、より好ましくは200〜900m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
なお、成分(A)、成分(B)および成分(C)としては上記以外にも、本出願人によって既に公開されているWO01/27124公報に記載された化合物を制限無く使用できる。
【0083】
前記工程[P-1]、[P-2]および[P-3]を実施した後、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行うことにより、プロピレン系ランダム共重合体がパウダー(粒子)として得られる。得られたプロピレン系ランダム共重合体粒子に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、造核剤、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、着色剤、無機質または有機質の充填剤、種々の合成樹脂等の各種添加剤を必要に応じて配合し、溶融混練し、さらにペレタイズしてペレットとし、各種成形品の製造用に供することが可能である。
【0084】
本発明のプロピレン系ランダム共重合体粒子に、前記各種添加剤の所定量を配合するには、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサーなどの通常の混練装置を用いることができる。溶融混練およびペレタイズは、通常の単軸押出機あるいは2軸押出機、ブラベンダー又はロールを使用して、170〜300℃、好ましくは190〜250℃で溶融混練し、ペレタイズする。得られたプロピレン系ランダム共重合体組成物は、射出成形法、押出成形法、射出延伸ブロー成形法、ブロー成形法などの各種成形法により、目的とする成形品、たとえばフィルム、シート、OPPシーラント、ブロー成形体、射出延伸ブロー成形体、射出成形体に加工することができる。
【0085】
特に、本発明のプロピレン系ランダム共重合体は低融点でも耐ブロッキング性が良好であることからシーラント用途に好適に使用することができる。
【0086】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例で提供された各種物性の測定は、特に断らない限りは下記の分析方法[m1]〜[m16]、および下記の成形・加工方法[a1]〜[a2]で行った。
【0087】
[m1] プロピレン系ランダム共重合体中のPx(mol%)
プロピレン系ランダム共重合体中のエチレンおよび炭素数が4〜20であるα-オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンに由来する骨格濃度Px(mol%)を測定するために、サンプル20〜30mgを1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(2:1)溶液0.6mlに溶解後、炭素核磁気共鳴分析(13C-NMR)を行った。プロピレン、エチレン、α-オレフィンの定量はダイアッド連鎖分布より求めた。例えば、プロピレン−エチレン共重合体の場合、PP=Sαα、EP=Sαγ+Sαβ、EE=1/2(Sβδ+Sδδ)+1/4Sγδを用い、以下の計算式(Eq-7)および(Eq-8)により求めた。
【0088】
【数8】

【0089】
その他、α-オレフィンとの帰属については、Macromolecules1982,15,1150、Macromolecules1991,24,4813、J.Appl.Polym.Sci.,1991,42,399等の公開情報を参照した。
【0090】
[m2] 融点(Tm)
示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)を用いて測定を行った。ここで、第3stepにおける吸熱ピークを融点(Tm)と定義した。
(測定条件)
第1step : 10℃/minで240℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step : 10℃/minで60℃まで降温する。
第3step : 10℃/minで240℃まで昇温する。
【0091】
[m3] 2,1-挿入、1,3-挿入の測定
13C-NMRを用いて、特開平7-145212号公報に記載された方法に従って、2,1-挿入、1,3-挿入を測定した。
【0092】
[m4] 分子量分布(Mw/Mn)[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)]
ウォーターズ社製GPC150C Plusを用い以下の様にして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6-HT及びTSKgel GMH6-HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(和光純薬工業)0.025重量%を用い、1.0ml/minで移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0093】
[m5] n-デカン可溶部量(nC10可溶部量)
プロピレン系ランダム共重合体のサンプル5gにn-デカン200mlを加え、145℃で30分間加熱溶解した。約3時間かけて、20℃まで冷却させ、30分間放置した。その後、析出物(n-デカン不溶部)をろ別した。ろ液を約3倍量のアセトン中に入れ、n-デカン中に溶解していた成分を析出させた。析出物をアセトンからろ別し、その後乾燥した。なお、ろ液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。n-デカン可溶部量は、以下の式によって求めた。
n-デカン可溶部量(wt%)=[析出物重量/サンプル重量]×100
【0094】
[m6] クロスクロマト分別測定(CFC測定)
CFCは組成分別を行う温度上昇溶離分別(TREF)部と、分子量分別を行うGPC部とを備えた下記装置を用いて、下記条件で測定し、40℃以下溶出成分の量を算出した。
測定装置 : CFC T-150A型、三菱油化(株)製、商標
カラム : Shodex AT-806MS(3本)
溶解液 : o-ジクロロベンゼン
流速 : 1.0 ml/min
試料濃度 : 0.3 wt/vol%(0.1%BHT入り)
注入量 : 0.5 ml
溶解性 : 完全溶解
検出器 : 赤外吸光検出法、3.42μ(2924cm-1)、NaCl板
溶出温度 :0〜135℃、28フラクション[0, 10, 20, 30, 40, 45, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80, 85, 90, 94, 97, 100, 103, 106, 109, 112, 115, 118, 121, 124, 127, 135 ℃]
【0095】
[m7] メルトフローレート(MFR
ASTM D-1238の方法により230℃、荷重2.16kgで測定した。
【0096】
[m8] 極限粘度[η]
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。
[η]= lim(ηsp/C) (C→0)
【0097】
[m9] 密度ρ
ASTM D-1505の密度勾配管により測定した。
【0098】
[m10] 透過型電子顕微鏡(TEM)写真
観察装置 :(株)日立製作所H-7100FA
加速電圧 :100kV
切片作製装置 :ライカ(株)製 ウルトラミクロトーム
ナイフ :DIATOME社製 DIATOME ULTRA DRY
試料を樹脂包離埋し、トリミングして、ダイアモンドナイフ装着のウルトラミクロトームで面出し、金属酸化物による染色を実施し、超薄切片を作製後、TEM観察を実施し、4000倍で撮影を実施した。
【0099】
[m11] パウダー(粒子)性状
重合中のパウダーをサンプリングして目視で判断した。
【0100】
[m12] 重合槽ファウリング
重合完了後、重合槽を開放し、目視により判断した。
【0101】
[m13] 半結晶化時間(T1/2)
DSC測定器:(株)パーキンエルマー DSC-7
サンプリング:ペレットを230℃で加熱プレスし薄いシートを作成し、所定の大きさにカットして所定の容器に挿入する。
測定条件: 40℃/minで230℃まで昇温し、230℃雰囲気下で10分間予熱する。その後、320℃/minで105℃まで降温し、105℃雰囲気下で保持する。そのとき得られる全結晶化熱量の1/2に達するまでの時間を半結晶化時間(T1/2)とする。
【0102】
[m14] フィルムのヘイズ(HAZE)
ASTM D-1003に準拠して測定した。
【0103】
[m15] フィルムの曲げ弾性率
ASTM D-790に準拠して測定した。
【0104】
[m16] フィルムのヒートシール強度
フィルムを5mm巾にサンプリングし、シール時間が1秒、圧力が0.2MPaでシールした。シールしたフィルムの両端を300mm/minで引張り、剥離する最大強度を測定した。なお、シールバーの上部は 115〜130℃の指定温度に設定し、下部は70℃で行った。 なお、シール強度に及ぼすシール温度の影響を調べるため、シール温度を変更する場合は、シールバー上部の温度のみを変更した。
【0105】
[a1] プロピレン系ランダム共重合体粒子のペレット化法
プロピレン系ランダム共重合体100重量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.1重量部、2,4-ビス(1,1-ジメチル)-フォスフェイトフェノールを0.1重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.1重量部、合成シリカを0.15重量部、エルカ酸アミドを0.1重量部 配合し、KTX-30二軸押出機を用いて、樹脂温度250℃で溶融混練してプロピレン系ランダム共重合体のペレット化を行った。
【0106】
[a2] フィルムの成形方法
前記[a1]の方法で得られたペレットを65mmφ押出機で250℃で溶融し、Tダイから押出し、厚さ30μmのフィルムを得た。フィルム成形条件の詳細は次の通りである。
成形装置:東芝機械(株)製 SE-65
成形温度:ダイス温度=250℃
ダイスリップ幅:600mm
チルロール温度:15℃
引取速度:14m/min
チルロール径:300mm
【実施例1】
【0107】
(1) 固体触媒担体の製造
1L枝付フラスコにSiO2(洞海化学社製)300gをサンプリングし、トルエン800mLを入れスラリー化した。次に5L四つ口フラスコへ移液し、トルエン260mLを加えた。メチルアルミノキサン(以下、MAO)トルエン溶液(アルベマール社製10wt%溶液)を2830mL導入し、室温下で30分間攪拌した。1時間かけて110℃まで昇温し、同温度で4時間撹拌処理を行った。撹拌終了後、室温まで冷却した。冷却後、上澄みトルエンを抜き出し、フレッシュなトルエンで置換し、置換率が95%になるまで置換を行った。
【0108】
(2) 固体触媒成分の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、5L四つ口フラスコにイソプロピリデン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを2.0g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.46Lと前記(1)で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー1.4Lを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。得られたイソプロピリデン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5Lとした。この操作は、室温で行った。
【0109】
(3)前重合[P-1]
前記(2)で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109mL、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを2020g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびn-ヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合体を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/Lとなるよう、n-ヘプタンにより調整を行った。この前重合体[P1](すなわち、予備重合触媒)は固体触媒成分1g当りポリエチレンを10g含んでいた。
【0110】
(4) 予重合[P-2]
内容量58L、直径2.5cmの管状重合器(以下述べる全ての実施例および比較例で述べる予重合で使用)にプロピレンを45kg/hr、水素を9NL/hr、前記(3)で調製した触媒スラリーを固体触媒成分として4.2g/hr、トリエチルアルミニウムを3.5mL/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.0MPa・Gであった。
【0111】
(5) 本重合[P-3]
得られた予重合体スラリーを内容量1000Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを72kg/hr、水素を15NL/hr、エチレンを0.75kg/hrで供給した。重合温度70℃、圧力2.9MPa・Gで重合を行った。得られたスラリーは更に内容量500Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを16kg/hr、水素を10NL/hr、エチレンを0.5kg/hrで供給した。重合温度69℃、圧力2.8MPa・Gで重合を行った。
【0112】
(6) ペレット化
得られたポリプロピレン系ランダム共重合体を、前記の成形・加工方法[a1]ペレット化法に準拠してペレット化を行った。
【0113】
(7) フィルム成形
前記(6)で得られたペレットを、前記の成形・加工方法[a2]フィルムの成形方法に準拠してフィルムを作成した。
得られた重合体の一次性状値およびフィルムとしての物性を表1に示した。
【実施例2】
【0114】
本重合工程[P-3]の重合方法を以下の様に変えた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
(1) 本重合[P-3]
実施例1の工程[P-1]および[P-2]と同様な方法で、予重合体スラリーを得た。得られたスラリーを内容量1000Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを72kg/hr、水素を15NL/hr、エチレンを0.75kg/hrで供給した。重合温度70℃、圧力2.9MPa・Gで重合を行った。
【0115】
得られたスラリーを、更に内容量500Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを16kg/hr、水素を10NL/hr、エチレンを0.6kg/hr、1-ブテンを2.5kg/hrで供給した。重合温度69℃、圧力2.8MPa・Gで重合を行った。
【0116】
(2) ペレット化とフィルム作成
上記により得られたプロピレン系ランダム共重合体100重量部について前記の成形・加工方法[a1]ペレット化法に準拠してペレット化し、更に前記の成形・加工方法[a2]フィルムの成形方法に準拠してフィルムを作成した。
得られた重合体の一次性状値およびフィルムとしての物性を表1に示した。
【0117】
[比較例1]
予重合工程[P-2]および本重合工程[P-3]を以下の様に変えた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
(1) 予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを45kg/hr、水素を9NL/hr、実施例1の前重合工程[P-1] に記載した方法と同様な方法によって得られた触媒スラリーを固体触媒成分として4.2g/hr、トリエチルアルミニウムを3.5mL/hr、エチレンを0.08kg/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.0MPa・Gであった。
【0118】
(2) 本重合[P-3]
得られたスラリーは内容量1000Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを72kg/hr、水素を15NL/hr、エチレンを0.75kg/hrで供給した。重合温度70℃、圧力2.9MPa・Gで重合を行った。
得られたスラリーを更に内容量500Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを16kg/hr、水素を10NL/hr、エチレンを0.5kg/hrで供給した。重合温度69℃、圧力2.8MPa・Gで重合を行った。
【0119】
(3) ペレット化とフィルム作成
上記により得られたプロピレン系ランダム共重合体100重量部について前記の成形・加工方法[a1]ペレット化法に準拠してペレット化し、更に前記の成形・加工方法[a2]フィルムの成形方法に準拠してフィルムを作成した。
得られた重合体の一次性状値およびフィルムとしての物性を表1に示した。
【0120】
[比較例2]
予重合工程[P-2]および本重合工程[P-3]を以下の様に変えた以外は、実施例1と同様の方法で行い、以下の重合方法によりポリプロピレンホモポリマーを製造した。
(1) 予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを45kg/hr、水素を9NL/hr、実施例1の前重合工程[P-1] に記載した方法と同様な方法によって得られた触媒スラリーを固体触媒成分として4.2g/hr、トリエチルアルミニウムを3.5mL/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は3.0MPa・Gであった。
【0121】
(2) 本重合[P-3]
得られたスラリーを内容量1000Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを72kg/hr、水素を15NL/hrで供給した。重合温度70℃、圧力2.9MPa・Gで重合を行った。
得られたスラリーを更に内容量500Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを16kg/hr、水素を10NL/hrで供給した。重合温度69℃、圧力2.8MPa・Gで重合を行った。
【0122】
(3) ペレット化とフィルム作成
上記により得られたポリプロピレンホモポリマー6重量部と比較例1で製造したプロピレン系共重合体94重量部を合わせたポリプロピレン樹脂100重量部について前記の成形・加工方法[a1]ペレット化法に準拠してペレット化し、更に前記の成形・加工方法[a2]フィルムの成形方法に準拠してフィルムを作成した。
得られた重合体の一次性状値およびフィルムとしての物性を表1に示した。
【0123】
[比較例3]
(1) 固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム952g、n-デカン4420mLおよび2-エチルヘキシルアルコール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解させた。
【0124】
このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却した後、この均一溶液の750mLを、-20℃に保持された四塩化チタン2000mL中に1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで熱時濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mLの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。
【0125】
加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のn-デカンおよびn-ヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。
【0126】
上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを3重量%、塩素を58重量%、マグネシウムを18重量%およびDIBPを21重量%の量で含有していた。
【0127】
(2) 前重合
10Lの攪拌機付きオートクレーブ中に、窒素雰囲気下、精製ヘプタン7L、トルエチルアルミニウム0.16mol、および上記で得られた固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で0.053mol装入した後、プロピレンを900g導入し、温度5℃以下に保ちながら、1時間反応させた。
【0128】
重合終了後、反応器内を窒素で置換し、上澄液の除去および精製ヘプタンによる洗浄を3回行った。得られた予備重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して触媒供給槽に移し、固体状チタン触媒成分濃度で1g/Lとなるよう、精製ヘプタンにより調整を行った。このようにして得られた前重合体(予備重合触媒)は固体状チタン触媒成分1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。
【0129】
(3) 重 合
内容積100Lの攪拌機付き重合槽1に液化プロピレンを66L装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン110kg/hr、前重合体(予備重合触媒)1.2g/hr、トリエチルアルミニウム5.4mL/hr、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン9.9mL/hr、エチレン0.09kg/hrを連続的に供給し、温度66℃で重合した。また水素は重合槽1の気相部の濃度を0.7mol%に保つように連続的に供給した。得られた重合体を内容積1000Lの攪拌機付き重合槽2にスラリー状のまま送液した。
【0130】
重合槽2では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン20kg/hr、エチレン2.1kg/hr、1-ブテン11.2kg/hrを連続的に供給し、温度67℃で重合した。また、水素も重合槽2の気相部の濃度を2.2mol%に保つように連続的に供給し、重合を行った。得られたプロピレン系ランダム共重合体粒子について、前述の分析法[m11]に準拠して測定したTEM写真像を第2図および第3図に示した。
【0131】
実施例1と同様の方法で、プロピレン系ランダム共重合体粒子をペレット化し、フィルムを作成した。
得られた重合体の一次性状値およびフィルムとしての物性を表1に示した。
【0132】
【表1】

【実施例3】
【0133】
(1) 固体触媒成分の製造(担体への金属触媒成分の担持
グローブボックス内にて、5L四つ口フラスコにジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを2.0g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.46リットルと実施例1の(1)と同様な方法で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー1.4リットルを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。得られたジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO2トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5リットルとした。この操作は、室温で行った。
【0134】
(2) 前重合[P-1]
前記(1)で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109mL、n-ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを2020g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびn-ヘプタンによる洗浄を2回行った。[投入した溶媒(n-ヘプタン)量および回収された溶媒量から計算される触媒洗浄率は99%であった。] 得られた前重合体を精製n-ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/Lとなるよう、n-ヘプタンにより調整を行った。一部、サンプリングを行い、前重合体の分析を行った。この前重合体は固体触媒成分1g当りポリエチレンを10g含んでいた。
【0135】
(3) 予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを57kg/hr、水素を4NL/hr、前記(2)で調製した前重合体の触媒スラリーを固体触媒成分として7.1g/hr、トリエチルアルミニウム4.0mL/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.6MPa・Gであった。
【0136】
(4) 本重合[P-3]
前記の(3)予重合で得られたスラリーを内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを50kg/hr、エチレンを1.7kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.16mol%になるように供給した。重合温度60℃、圧力2.5MPa・Gで重合を行った。
【0137】
得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを11kg/hr、エチレンを1.2kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.16mol%になるように供給した。重合温度59℃、圧力2.4MPa・Gで重合を行った。
【0138】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン系共重合体を得た。得られたプロピレン共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。結果を表2に示した。
【実施例4】
【0139】
予重合、本重合を以下の様に変えた以外は実施例3と同様の方法で行った。
(1) 予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを57kg/hr、水素を4NL/hr、前記実施例3の(2)前重合に記載した方法と同様な方法で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として6.5g/hr、トリエチルアルミニウム3.6mL/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.6MPa・Gであった。
【0140】
(2) 本重合[P-3]
予重合で得られたスラリーを内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを50kg/hr、エチレンを1.5kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.33mol%になるように供給した。重合温度60℃、圧力2.5MPa・Gで重合を行った。
【0141】
得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを11kg/hr、エチレンを1.0kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.33mol%になるように供給した。重合温度59℃、圧力2.4MPa・Gで重合を行った。
【0142】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン共重合体を得た。得られたプロピレン共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。結果を表2に示した。
【実施例5】
【0143】
予重合、本重合を以下の様に変えた以外は実施例3と同様の方法で行った。
(1) 予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを57kg/hr、水素を4NL/hr、前記実施例3の(2)前重合に記載した方法と同様な方法によって調製した触媒スラリーを固体触媒成分として4.9g/hr、トリエチルアルミニウム2.7mL/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.6MPa・Gであった。
【0144】
(2) 本重合[P-3]
前記の予重合で得られたスラリーを内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを50kg/hr、エチレンを1.5kg/hr、1-ブテンを2.7kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.33mol%になるように供給した。重合温度60℃、圧力2.5MPa・Gで重合を行った。
【0145】
得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを11kg/hr、エチレンを1.0kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.33mol%になるように供給した。重合温度59℃、圧力2.4MPa・Gで重合を行った。
【0146】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン系ランダム共重合体を得た。得られたプロピレン系ランダム共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。結果を表2に示した。
【0147】
[比較例4]
(1) 固体触媒の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、5L四つ口フラスコにジメチルシリレンビス-(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを2.0g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.46Lと実施例1の(1)に記載した方法と同様な方法で調製した固体触媒担体であるMAO/SiO2/トルエンスラリー 1.4Lを窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。得られたジメチルシリレンビス-(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5Lとした。この操作は、室温で行った。
【0148】
(2) 前重合[P-1]
前記固体触媒の製造の項で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109mL、n-ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを2020g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびn-ヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/Lとなるよう、n-ヘプタンにより調整を行った。一部、サンプリングを行い、前重合体の分析を行った。この前重合体は固体触媒成分1g当りポリエチレンを10g含んでいた。
【0149】
(3) 予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを57kg/hr、水素を4NL/hr、前重合で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として4.7g/hr、トリエチルアルミニウム3.1mL/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.6MPa・Gであった。
【0150】
(4) 本重合[P-3]
前記の(3)予重合で得られたスラリーを内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを50kg/hr、エチレンを2.2kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.15mol%になるように供給した。重合温度60℃、圧力2.5MPa・Gで重合を行った。
【0151】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを11kg/hr、エチレンを1.5kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.15mol%になるように供給した。重合温度59℃、圧力2.4MPa・Gで重合を行った。
【0152】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン系ランダム共重合体を得た。得られたプロピレン系ランダム共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。結果を表2に示した。
【0153】
[比較例5]
本重合を以下の様に変えた以外は比較例4と同様の方法で行った。
(1) 本重合[P-3]
比較例4の(4)予重合に記載した方法と同様な方法で得られたスラリーを内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを50kg/hr、エチレンを1.6kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.09mol%になるように供給した。重合温度60℃、圧力2.5MPa・Gで重合を行った。
【0154】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを11kg/hr、エチレンを1.1kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.09mol%になるように供給した。重合温度59℃、圧力2.4MPa・Gで重合を行った。
【0155】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン系ランダム共重合体を得た。得られたプロピレン系ランダム共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。結果を表2に示した。
【0156】
【表2】

【実施例6】
【0157】
予重合および本重合を以下の様に変えた以外は実施例3と同様の方法で行った。
(1) 予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを50kg/hr、水素を4NL/hr、実施例3の(2)項に記載した方法と同様な方法で調製した前重合体の触媒スラリーを固体触媒成分として5.0g/hr、トリエチルアルミニウム2.4g/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.6MPa・Gであった。予重合時にファウリング現象は認められなかったが、重合槽には10メッシュスクリーンを通過しない凝集パウダーが極めて微量(全予重合体の約2wt%)認められた。
【0158】
(2) 本重合[P-3]
前記の予重合で得られたスラリーは内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に本重合を行った。重合器へは、プロピレンを40kg/hr、エチレンを1.8kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.16mol%になるように供給した。重合温度60℃、圧力2.5MPa・Gで重合を行った。なお、この第1の本重合時にファウリング現象は認められなかったが、重合槽には10メッシュスクリーンを通過しない凝集パウダーが極めて微量(全重合体の0.5wt%以下)認められた。
【0159】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に本重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/hr、エチレンを0.6kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.16mol%になるように供給した。重合温度59℃、圧力2.4MPa・Gで重合を行った。なお、この第2の本重合時にファウリング現象は認められなかったが、重合槽には10メッシュスクリーンを通過しない凝集パウダーが極めて微量(全重合体の0.5wt%以下)認められた。
【0160】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン系重合体粒子を得た。得られたプロピレン系重合体粒子は、80℃で真空乾燥を行った。結果を表3および表4にまとめた。また、得られたプロピレン系ランダム共重合体粒子について前述の分析法[m11]に準拠して測定したTEM写真像を第4図および第5図に示した。
【0161】
[比較例6]
前重合を以下の様に変えた以外は、実施例6と同様の方法で行った。
(1) 前重合[P-1]
実施例3の(1)項に記載した方法と同様な方法で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109mL、n-ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ち、プロピレン2020gを序々に挿入し、5時間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/Lとなるよう、n-ヘプタンにより調整を行った。一部、サンプリングを行い、前重合体の分析を行った。この前重合体は固体触媒成分1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。
この前重合体を実施例6の(1)予重合で記載した方法と同様な方法によって予重合体スラリーを得た。
【0162】
(2) 本重合[P-3]
前記予重合で得られたスラリーを用いて、実施例6の(2)本重合と同様な方法で本重合を試みたが、ファウリングが激しく重合が安定しなかったため、重合途中で停止した。
結果を表3に示した。
【0163】
[比較例7]
予重合および本重合を以下の様に変えた以外は、実施例6と同様の方法で行った。
(1) 予重合[P-2]
予重合は実施しなかった。
(2) 本重合[P-3]
内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器にプロピレンを90kg/hr、エチレンを1.8kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.16mol%になるように供給した。また、前重合で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として5.0g/hr、トリエチルアルミニウム2.4g/hrを供給し、重合温度60℃、圧力2.5MPa・Gで重合を行った。
【0164】
得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/hr、エチレンを0.6kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.16mol%になるように供給した。重合温度59℃、圧力2.4MPa・Gで重合を行った。
【0165】
上記のように本重合を試みたが、第1の本重合時にもファウリングが認められ、さらに第2本重合時のファウリングが激しく重合が安定しなかったため、重合途中で停止した。結果を表3に示した。
【0166】
[比較例8]
前重合は実施せず、予重合および本重合を実施例6と同様の方法で行った。
(1) 予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを50kg/hr、水素を4NL/hr、前記実施例6の(2)固体触媒成分に記載した方法と同様な方法で調製した触媒スラリーを固体触媒成分として5.0g/hr、トリエチルアルミニウム2.4g/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.6MPa・Gであった。
【0167】
(2) 本重合[P-3]
上記(1)の予重合で得られたスラリーを用いて、実施例6の本重合と同様の方法で本重合を試みたが、重合が安定しなかったため、重合途中で停止した。結果を表3に示した。
【0168】
[比較例9]
予重合および本重合を以下の様に変えた以外は、実施例6と同様の方法で行った。
(1) 予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを48kg/hr、エチレンを2.2kg/hr、水素を4NL/hr、実施例3の(2)項に記載した方法と同様な方法で調製した前重合体の触媒スラリーを固体触媒成分として5.0g/hr、トリエチルアルミニウム2.4g/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.6MPa・Gであった。
【0169】
(2) 本重合[P-3]
上記(1)の予重合で得られたスラリーを用いて、実施例6の本重合と同等の方法で本重合を試みたが、ファウリングが激しく重合が安定しなかったため、重合途中で停止した。結果を表3に示した。
【0170】
[比較例10]
前重合を以下の様に変えた以外は、実施例6と同様の方法で行った。
(1) 前重合[P-1]
実施例3の(1)項に記載した方法と同様な方法で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109mL、n-ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレン2020g、水素0.66NLを挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびn-ヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合体を精製n-ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/Lとなるよう、n-ヘプタンにより調整を行った。一部、サンプリングを行い、前重合触媒の分析を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを10g含んでいた。この前重合体を用いて、実施例6と同様にして予重合と本重合を実施した。その結果、予重合時と本重合時に僅かにファウリング現象が認められた。結果を表3に示した。
【0171】
[比較例11]
予重合を以下の様に変えた以外は、実施例6と同様の方法で行った。
(1) 予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを50kg/hr、実施例3の(2)項に記載した方法と同様な方法で調製した前重合体の触媒スラリーを固体触媒成分として5.0g/hr、トリエチルアルミニウム2.4g/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.6MPa・Gであった。この予重合体を用いて、実施例6と同様にして本重合を実施した。その結果、本重合時に僅かにファウリング現象が認められた。結果を表3に示した。
【0172】
[比較例12]
前重合体の製造法を以下の様に変えた以外は、実施例6と同様の方法で行った。
(1) 前重合[P-1]
実施例3の(1)項に記載した方法と同様な方法で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109mL、n-ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレン1943g、1-ヘキセンを97g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。一部、サンプリングを行い、前重合触媒の分析を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りエチレン/1-ヘキセン共重合物を10g含んでいた。この前重合体を用いて、実施例6と同様にして予重合および本重合を実施した。その結果、予重合時、本重合時に僅かにファウリング現象が認められた。結果を表3に示した。
【実施例7】
【0173】
前重合法を以下の様に変えた以外は、実施例6と同様の方法で行った。
(1) 前重合[P-1]
実施例3の(1)項に記載した方法と同様な方法で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109mL、n-ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを505g挿入し、60分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびn-ヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/Lとなるよう、n-ヘプタンにより調整を行った。一部、サンプリングを行い、前重合体の分析を行った。この前重合体は固体触媒成分1g当りポリエチレンを2.5g含んでいた。予重合時および本重合時にはファウリング現象は認められなかった。結果を表4に示した。
【実施例8】
【0174】
本重合を以下の様に変えた以外は、実施例6と同様の方法で行った。
(1) 本重合[P-3]
予重合で得られたスラリーを内容量2.4Lの挟み込み管に移送し、スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、480Lの気相重合器にポリプロピレンパウダーを送り、エチレン/プロピレン共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.1(モル比)、水素/(エチレン+プロピレン)=0.005(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.3MPa・Gで重合を行った。得られたプロピレン共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。本重合時にはファウリング現象は認められなかった。結果を表4に示した。
【実施例9】
【0175】
前重合法を以下の様に変えた以外は、実施例6と同様の方法で行った。
(1) 前重合[P-1]
実施例3の(1)項に記載した方法と同様な方法で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109mL、n-ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ち、エチレン20200gを序々に挿入し、25時間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびn-ヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。一部、サンプリングを行い、前重合触媒の分析を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを100g含んでいた。結果を表4に示した。
【0176】
【表3】

【0177】
【表4】

【実施例10】
【0178】
予重合時に、ポリオキシアルキレングリコール(商品名:プルロニックL-72、旭電化工業(株)製、前記一般式[I’]において、n=35、m+p=12)を、固体触媒成分に対して10重量%添加した以外は実施例6と同様に行った。その結果、予重合時も、本重合時もファウリング現象は認められず、またいずれの重合時においても10メッシュスクリーンを通過しない凝集パウダーは生成しなかった。実施例6の結果と併せて表5に結果を示した。
【0179】
[比較例13]
実施例6の前重合(これは実施例3の前重合と同一の重合である。)において、n-ヘプタンによる洗浄時にn-ヘプタン使用量を減ずると同時に洗浄回数を1回(触媒洗浄率=90%)にした以外は実施例3の前重合と同様に行った。この前重合体を使用して、実施例6に記載された予重合と本重合と全く同様な方法で予重合、続いて本重合を実施することを試みた。その結果、予重合時のファウリングは極めて多量であったため途中で予重合を停止せざるを得なかった。途中停止の段階で、予重合槽において生成した、10メッシュスクリーンを通過しない凝集パウダー量は全体ポリマーの20重量%を優に越えていた。実施例6の結果と併せて表5に結果を示した。
【0180】
[比較例14]
実施例6の前重合において、n-ヘプタンによる洗浄時にn-ヘプタン使用量を減ずると同時に洗浄回数を1回とし(触媒洗浄率=90%)、予重合時に、ポリオキシアルキレングリコール(商品名:プルロニックL-72、旭電化工業(株)製、前記一般式[I’]において、n=35、m+p=12)を、固体触媒成分に対して10重量%添加した以外は実施例6に記載された予重合と本重合と全く同様な方法で予重合、続いて本重合を実施した。その結果、予重合時のファウリングはある程度認められたが予重合を停止する事態までには陥らなかった(予重合時の10メッシュスクリーンを通過しない凝集パウダー量は全ポリマーの20重量%程度であった)。続いて、本重合を実施したがファウリングが極めて多量認められたため、重合を停止せざるを得なかった。なお途中停止の段階で、本重合槽において生成した、10メッシュスクリーンを通過しない凝集パウダー量は全体ポリマーの20重量%を優に越えていた。実施例6の結果と併せて表5に結果を示した。
【0181】
【表5】

【実施例11】
【0182】

(1) 前重合[P-1]
実施例1の固体触媒成分の製造欄に記載した方法と全く同様な方法で調製した固体触媒成分220g、トリエチルアルミニウム202mL、n-ヘプタン110Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを3080g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびn-ヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた予備重合触媒を精製n-ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/Lとなるよう、n-ヘプタンにより調整を行った。この前重合体は固体触媒成分1g当りポリエチレンを10g含んでいた。
【0183】
(2) 予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを28kg/hr、水素を3NL/hr、前記(1)で調整した前重合体の触媒スラリーを固体触媒成分として4.4g/hr、トリエチルアルミニウム2.4mL/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.8MPa・Gであった。
【0184】
(3) 本重合[P-3a]
得られたスラリーは内容量1000Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを65kg/hr、水素を10NL/hrで供給した。重合温度66℃、圧力2.6MPa・Gで重合を行った。
【0185】
(4) 本重合[P-3b]
更に、得られたスラリーは内容量500Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを16kg/hr、水素を7NL/hr、エチレンを1.5kg/hrで供給した。重合温度60℃、圧力2.5MPa・Gで重合を行った。
【0186】
(5) ペレット化
得られたポリプロピレン系ランダム共重合体を、前記の成形・加工方法[a1]ペレット化法に準拠してペレット化を行った。
(6) フィルム成形
前記(5)で得られたペレットを、前記の成形・加工方法[a2]フィルムの成形方法に準拠してフィルムを作成した。
得られた重合体の一次性状値およびフィルムとしての物性を表6に示した。
【0187】
[比較例15]
重合方法を以下の様に変えた以外は、実施例11と同様の方法で行った。実施例11と根本的に異なる点は、本重合[P-3a]を省略して予重合[P-2])から本重合[P-3b])に移行したことである。
1)予重合[P-2]
内容量58Lの管状重合器にプロピレンを28kg/hr、水素を3NL/時間、触媒スラリーを固体触媒成分として4.4g/hr、トリエチルアルミニウム2.4mL/hrを連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.7MPa・GGであった。
【0188】
(2)本重合[P-3b]
得られたスラリーを内容量1000Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを69kg/hr、水素を10NL/hr、エチレンを1.6kg/hrで供給した。重合温度60℃、圧力2.6MPa・Gで重合を行った。
【0189】
更に、得られたスラリーは内容量500Lの攪拌器付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを10kg/hr、水素を7NL/hr、エチレンを0.6kg/hrで供給した。重合温度50℃、圧力2.5MPa・Gで重合を行った。
【0190】
このようにして得られたプロピレン系ランダム共重合体について、実施例11に記載した方法と同様にしてペレット化およびフィルム成形した。
得られた重合体の一次性状値およびフィルムとしての物性を表6に示した。
【0191】
[比較例16]
(1) 前重合[P-1]
10Lの攪拌機付きオートクレーブ中に、窒素雰囲気下、精製n-ヘプタン7L、トルエチルアルミニウム68mL、および比較例3に記載した方法と同様にして得た固体状チタン触媒成分を170g装入した後、プロピレンを260g導入し、温度5℃以下に保ちながら、1時間反応させた。
【0192】
重合終了後、反応器内を窒素で置換し、上澄液の除去および精製n-ヘプタンによる洗浄を3回行った。得られた前重合体を精製n-ヘプタンに再懸濁して触媒供給槽に移し、固体状チタン触媒成分濃度で1g/Lとなるよう、精製n-ヘプタンにより調整を行った。この前重合体は固体状チタン触媒成分1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。
【0193】
(2) 本重合[P-3b]
内容積500Lの攪拌機付き重合槽1に液化プロピレンを300Lを装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン137kg/hr、前記(1)で調製した前重合体1.9g/hr、トリエチルアルミニウム5.0mL、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン7.1mL/hr、エチレン2.8kg/hrを連続的に供給し、温度65℃で重合した。また水素は重合槽1の気相部の濃度を4.0mol%に保つように連続的に供給した。
【0194】
このようにして得られたプロピレン系ランダム共重合体について、実施例11に記載した方法と同様にしてペレット化およびフィルム成形した。
得られた重合体の一次性状値およびフィルムとしての物性を表6に示した。
【0195】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明のプロピレン系ランダム共重合体は、低融点かつn-デカン可溶分が少ない(すなわち、低結晶性成分量が少ない)という特徴を有し、このプロピレン系ランダム共重合体からは、耐ブロッキング性、加熱処理後の透明性低下が少ない各種フィルム、シートおよび高透明性の射出成形品、ブロー成形品、インジェクションブロー成形品など各種の有用な成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】本発明実施例3〜5および比較例4〜5で得られたプロピレン系ランダム共重合体について、Px(プロピレン系ランダム共重合体に含まれる、エチレン(b)および炭素数が4〜20であるα-オレフィン(c)から選ばれる1種以上のオレフィンに由来する骨格濃度)と融点(Tm)の関係をプロットした図である。
【図2】既存のチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン系ランダム共重合体粒子(比較例3)の核部[L3]の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図3】既存のチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン系ランダム共重合体粒子(比較例3)の第1表皮層[L1]近傍の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図4】実施例6で得られたプロピレン系ランダム共重合体粒子の核部[L3]の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図5】実施例6で得られたプロピレン系ランダム共重合体粒子の第1表皮層[L1]近傍の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[1]〜[4]の特性を同時に満たすプロピレン系ランダム共重合体。
[1] プロピレン系ランダム共重合体に含まれる、プロピレンに由来する骨格成分(a)の濃度(Pa, mol%)、並びにエチレン(b)および炭素数が4〜20であるα-オレフィン(c)から選ばれる1種以上のオレフィンに由来する骨格濃度(Px, mol%)が以下の関係式(Eq-1)〜(Eq-3)を満たす。
【数1】

[2] プロピレン系ランダム共重合体に含まれる、プロピレンに由来する骨格成分(a)の濃度(Pa, ,mol%)と、示差走査熱量計によって測定した融点(Tm)式(Eq-4)を満たす。
【数2】

[3] 2,1-挿入および1,3-挿入の異種結合の合計量が0.2 mol%以下である。
[4] n-デカン(nC10)に可溶な成分量が2.0 wt%以下である。
【請求項2】
融点(Tm)が140℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系ランダム共重合体。
【請求項3】
前記プロピレン系ランダム共重合体が、最外殻に存在する第1表皮層[L1]、第1表皮層に内接する第2表皮層[L2]、および第2表皮層内部の核部[L3]から構成される 、3層構造のプロピレン系重合体粒子であって、
核部[L3]の、金属酸化物染色後超薄切片の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(倍率4000倍)において、粒子径が3μm以上の染色成分が観測されないことを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン系ランダム共重合体。
【請求項4】
前記のプロピレン系重合体粒子の、
第1表皮層[L1]がポリエチレンであり、
第2表皮層[L2]の、DSCで測定される融点(Tm)が130℃以上を満たすポリプロピレンであり、
核部[L3]は、プロピレン単独重合体、又はプロピレン並びに、エチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンから得られる共重合体
であることを特徴とする請求項3に記載のプロピレン系重合体粒子。
【請求項5】
第1表皮層のポリエチレンの極限粘度[η]が3(g/dl)以上、密度が910(kg/m3)以上であり、第2表皮層のポリプロピレンの極限粘度が[η]が0.5〜5(g/dl)範囲にあるプロピレン系重合体粒子であることを特徴とする請求項4に記載のプロピレン系重合体粒子。
【請求項6】
次の三つの工程[P-1]、[P-2]および[P-3]を、メタロセン触媒存在下で順次実施することを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法。
工程[P-1]; エチレンを重合して前重合体[P1]を製造する工程。
工程[P-2]; 5〜40℃の温度にて前記の前重合体[P1]の存在下で、プロピレンを
50〜20,000g/g-catとなる量を重合して予重合体[P2]製造する工程。
工程[P-3]; 予重合体[B]の存在下でプロピレン単独重合するか、またはプロピレン、並びにエチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンから選ばれる一種以上のオレフィンを共重合してプロピレン系共重合体[P3]を製造する工程。
【請求項7】
前記の工程[P-1]で製造された前重合体[P1]が、炭素数5〜12の脂肪族炭化水素、または炭素数5〜12の脂環族炭化水素で洗浄されていることを特徴とする請求項6に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記の工程[P-1]、工程[P-2]および工程[P-3]から選ばれる少なくても一つの工程が、下記一般式[I]で表わされるポリオキシアルキレン系化合物が共存下で行われることを特徴とする請求項6に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【化1】

(上記一般式[I]において、R1、R2およびR3は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基および炭素数1〜20のアシル基から選ばれ、相互に同一でも異なっていてもよい。kは平均繰り返し単位数を表わし、1〜100の範囲である。)
【請求項9】
前記の工程[P-2]が、管状反応器で実施されることを特徴とする請求項6に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項10】
メタロセン触媒が、下記一般式[II]で表されるメタロセン化合物を必須成分として含むことを特徴とする請求項6に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【化2】


[上記一般式[II]において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14は水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子またはケイ素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。]
【請求項11】
プロピレン系重合体が、請求項1〜5のいずれかに記載のプロピレン系ランダム共重合体であることを特徴とする請求項6に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロピレンランダム共重合体を成形して得られる成形体。
【請求項13】
成形体が、シーラントフィルム、シュリンクフィルム、または金属蒸着フィルムであることを特徴とする請求項11に記載の成形体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−57010(P2006−57010A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241066(P2004−241066)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】