説明

ヘッドランプの取付構造

【課題】車体前方からの入力荷重を受ける場合には、ヘッドランプが破損しにくくなり、リペア性が向上し、車体上方からの入力荷重を受ける場合には、上方からの荷重を吸収できるヘッドランプの取付構造を提供する。
【解決手段】本発明によるヘッドランプ2の取付構造は、複数の取付部9、11、13にて車体前部へ取付けられるヘッドランプの取付構造であって、複数の取付部は、第1取付部9を有し、この第1取付部は、車体前方からの入力荷重を受けるとヘッドランプの車体後方への移動を許容すると共に、車体上方からの入力荷重を受けると破断又は変形して上方からの荷重を吸収する。また、第1取付部以外の第2取付部11、13は、車体前方からの入力荷重を受ける場合及び車体上方からの入力荷重を受ける場合において、それぞれ、破断又は変形して前方及び上方からの荷重を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプの取付構造に係り、特に、複数の取付部にて車体前部に取付けられるヘッドランプの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部に取付けられるヘッドランプには、歩行者との衝突時、その上方から歩行者の大腿部や頭部などの衝撃荷重を受けることがあり、また、他車両との軽衝突時などに、その前方から衝撃荷重を受けることがある。
【0003】
これらの場合、ヘッドランプは、それらの入力荷重を吸収することが望まれるが、ヘッドランプそのものを壊して荷重を吸収する構造は、修理費用が嵩むので好ましくない。即ち、歩行者保護の観点と、他車両との軽衝突時などにおけるヘッドランプのリペア性との両立が近年の課題として生じてきている。
【0004】
従来、特許文献1には、ヘッドランプと車体との結合手段として上側結合部及び下側結合部を設け、ヘッドランプに車両上方からの衝突荷重が入力された際には、上側結合部に設けた脆弱部(結合解除手段)により上側結合部に設けた脆弱部(結合解除手段)により、ヘッドランプの上部がラジエータサポートから離脱すると共に下側結合部のバンパリインフォースメントとの結合を維持し、一方、車両前後方向からの衝突荷重が入力された際には、車体とヘッドランプの下部の結合状態を解除して、車体にかかる衝突荷重がヘッドランプへ伝達されることを抑制するようにしたヘッドランプの取付構造が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ヘッドランプの上部に、ヘッドランプの下方に設けられた回動支点を中心とした円弧の接線方向に沿った向きのブラケット及びそのブラケットを抑える細ピン(脆弱部)を設け、車両の軽衝突時に、細ピンがブラケットからのせん断力で破壊されるようにして、ヘッドランプ側を破壊させずに後方回動させることができるヘッドランプの取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−78689号公報
【特許文献2】特開2004−237795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたヘッドランプは、その構造上、上方からの入力荷重に対する衝撃吸収性が低く、また、その上側結合部はリペア可能に構成されていない。さらに、軽衝突時など、前方から荷重を受けたとき、ヘッドランプ自体が後退するような構造になっていないので、ヘッドランプ自体が破損する可能性がある。
【0008】
また、特許文献2に開示された構造では、ヘッドランプを後方へ回動させることで障害物へ与える衝撃を低減しつつ、ヘッドランプを破壊しないため、リペア性に優れるが、細ピン21が特定の方向に向いているので、特定の方向の入力荷重に対してしか対応出来ず、歩行者保護を十分に行えないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、従来からの問題点を解決するためになされたものであり、上方からの歩行者の衝撃吸収と前方からの軽衝突時のリペア性とを両立することが出来るヘッドランプの取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、複数の取付部にて車体前部へ取付けられるヘッドランプの取付構造であって、複数の取付部は、第1取付部を有し、この第1取付部は、車体前方からの入力荷重を受けると破断又は変形することなくヘッドランプの車体後方への移動を許容すると共に、車体上方からの入力荷重を受けると破断又は変形して上方からの荷重を吸収することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、ヘッドランプを車体前部へ取付ける複数の取付部のうちの少なくとも1つの取付部は、車体前方からの入力荷重を受けるとヘッドランプの車体後方への移動を許容するので、ヘッドランプが破損しにくくなり、リペア性を向上させることが出来る。また、第1取付部は、車体上方からの入力荷重を受けると破断又は変形して上方からの荷重を吸収するので、上方からの歩行者の大腿部や頭部などの衝突荷重を効果的に吸収することができる。これらの結果、ヘッドランプの上方からの歩行者の衝撃吸収と前方からの軽衝突時のリペア性とを両立することが出来る。
【0011】
本発明において、好ましくは、第1取付部以外の第2取付部は、車体前方からの入力荷重を受ける場合及び車体上方からの入力荷重を受ける場合において、それぞれ、破断又は変形して前方及び上方からの荷重を吸収する。
このように構成された本発明においては、第1取付部以外の第2取付部が、車体前方からの入力荷重を受ける場合及び車体上方からの入力荷重を受ける場合において、それぞれ、破断又は変形して前方及び上方からの荷重を吸収するので、上方からの歩行者の大腿部や頭部などの衝突荷重を効果的に吸収することが出来ると共に、他車両などとの軽衝突時にも前方からの衝突荷重を効果的に吸収することが出来る。
【0012】
本発明において、好ましくは、第2取付部は、ヘッドランプを車体に取り付けるためのヘッドランプとは別体の第2取付部材を有し、車体前方からの入力荷重を受ける場合及び車体上方からの入力荷重を受ける場合において、それぞれ、この第2取付部材自身が破断又は変形して前方及び上方からの荷重を吸収する。
このように構成された本発明においては、ヘッドランプを車体に取り付けるための第2取付部材はヘッドランプとは別体であるので、それ自身が破断又は変形しても、第2取付部材のみを交換すれば良く、リペア性に優れる。
【0013】
本発明において、好ましくは、第1取付部は、ヘッドランプを車体に取り付けるための車幅方向に延びる第1取付部材を有し、第2取付部は、ヘッドランプを車体に取り付けるための車幅方向に延びる第2取付部材を有する。
このように構成された本発明においては、第1取付部材及び第2取付部材が、それぞれ、車幅方向に延びるので、第1取付部材については、他車両との衝突時における車体前方からの荷重入力時には、より確実にヘッドランプの車体後方への移動を許容することが出来ると共に歩行者との衝突時における上方からの荷重入力時には、より確実にその荷重を受け止めることが出来る。また、第2取付部材については、他車両との衝突時における前方からの荷重入力時及び歩行者との衝突時における上方からの荷重入力時には、より確実にそれらの荷重を受け止めることが出来る。このように、ヘッドランプを車体に取り付けるための取付部材を車幅方向に延びるように設けることにより、車体前方及び車体上方からの広い範囲にわたる衝撃に対して荷重を受け止めることが出来、それにより、歩行者の衝突時の上方からの衝撃荷重も、他車両との軽衝突時の車体前方からの衝撃荷重も吸収することが出来る。
【0014】
本発明において、好ましくは、第1取付部には、車体前方向きに開放され、第1取付部材が車幅方向から挿入される第1取付スリット部と、その上部近傍に形成され車体上方からの入力荷重を受けると第1取付部材からの反作用力を受けて破断又は変形する第1破断変形部と、が形成されている。
このように構成された本発明においては、第1取付部材が車幅方向から挿入される第1取付スリット部が車体前方向きに開放されているので、車体前方からの荷重入力時にヘッドランプの車体後方への移動を許容することが出来る。一方、第1取付スリット部の上部近傍には、第1取付部材からの反作用力を受けて破断又は変形する第1破断変形部が形成されているので、ヘッドランプが車体上方からの入力荷重を受けると、この第1変形判断部が破断又は変形して上方からの荷重を吸収できる。これらの結果、上方からの歩行者の衝撃吸収と前方からの軽衝突時のリペア性とを両立することが出来る。
【0015】
本発明において、好ましくは、第2取付部の第2取付部材は、車体に設けられ車体前方向きに開放された車体側スリット部に車体前方から挿入され且つ係合されると共に車体前方からの入力荷重又は車体上方からの入力荷重を受けると車体側スリット部から反作用力を受けて破断又は変形するような第2破断変形部を有する。
このように構成された本発明においては、第2取付部の第2取付部材は、車体前方からの入力荷重又は車体上方からの入力荷重を受けると車体側スリット部から反作用力を受けて破断又は変形するような第2破断変形部を有するので、歩行者との衝突時や他車両との軽衝突時など、車体前方からの入力荷重又は車体上方からの入力荷重を受けると、この第2取付部材の第2変形部が変形して荷重を吸収することが出来る。そして、その変形は、第2取付部の第2取付部材のみであるので、衝突後はこの第2取付部材のみ交換すればよくいので、リペア性が向上する。また、第2取付部の第2取付部材は、車体に設けられ車体前方向きに開放された車体側スリット部に車体前方から挿入され且つ係合されるようになっているので、ヘッドランプの車体への取り付けが容易である。
【0016】
本発明において、好ましくは、第1取付部がヘッドランプの前側に設けられると共に、第2取付部が第1取付部より後側且つ外側に設けられる。
このように構成された本発明においては、車体上方からの入力荷重を受けると変形し、また、車体前方からの入力荷重を受けるとヘッドランプの車体後退への移動を許容する第1取付部がヘッドランプ前側にあるので、荷重吸収力に優れると共にヘッドランプのリペア性を確実なものとすることが出来る。一方、第2取付部が、その第1取付部より後側且つ外側に設けられるので、第1取付部と第2取付部とで協働して、ヘッドランプを安定して支持することが出来ると共に歩行者の衝撃荷重や他車両の衝撃荷重の荷重を安定して吸収することが出来る。
【0017】
本発明において、好ましくは、ヘッドランプは、第1取付部にて車体の前側に位置するシュラウドに取付けられ、第2取付部にて車体の側方のフェンダーに取付けられる。
このように構成された本発明においては、第1取付部を車体の前側に位置するシュラウドに取付け、第2取付部を車体の側方のフェンダーに取付けることで、ヘッドランプの取付スペースを効率的に確保することが出来る。
【0018】
本発明において、好ましくは、第1取付部は、ヘッドランプに設けられた板状のブラケットと第1取付部材とを有し、第1取付部の第1取付スリット部及び第1破断変形部は、板状のブラケットに形成され、第1取付部の第1取付部材は、車体に締結される締結部材である。
このように構成された本発明においては、第1取付スリット部及び第1破断変形部は、第1取付部の板状のブラケットに形成されているので、簡易な構成で荷重吸収及びヘッドランプの車体への取付を行うことが出来る。また、第1取付部の第1取付部材は、車体に締結される締結部材であるので、ヘッドランプを確実に車体に固定することが出来る。
【0019】
本発明において、好ましくは、第1取付部の第1破断変形部は、板状のブラケットに形成された切れ込み部を有する。
このように構成された本発明においては、第1破断変形部は、板状のブラケットに形成された切れ込み部を有するので、荷重入力時、この切れ込み部に応力を集中させて、第1破断変形部をより確実に破断又は変形させることが出来、その結果、より確実に荷重を吸収することが出来る。
【0020】
本発明において、好ましくは、第2取付部は、ヘッドランプに設けられたブロック状のブラケットと第2取付部材とを有し、第2取付部の第2破断変形部は、第2取付部材に形成され、第2取付部の第2取付部材は、ブロック状のブラケットに形成された孔部に係合されるピン部材である。
このように構成された本発明においては、第2取付部材は、第2取付部のブロック状のブラケットに形成された孔部に係合されるピン部材であるので、破断又は変形しても容易に取り替え可能であり、リペア性に優れると共に、ブラケットの孔部に係合させるだけで良いので組み付け性も優れる。また、ブラケットはブロック状に形成されているので、ピンの保持性にも優れている。
【0021】
本発明において、好ましくは、第2破断変形部は、ピン部材に形成された溝部である。
このように構成された本発明においては、第2取付部の第2破断変形部は、ピン部材に形成された溝部を有するので、荷重入力時、この溝部に応力を集中させて、第2破断変形部をより確実に破断又は変形させることが出来、その結果、より確実に荷重を吸収することが出来る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるヘッドランプの取付構造によれば、上方からの歩行者の衝撃吸収と前方からの軽衝突時のリペア性とを両立することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態によるヘッドランプの取付構造が適用された車体前部を斜め前方から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるヘッドランプの取付構造をシュラウド及びフェンダと共に示す斜め前方から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるヘッドランプの取付構造の前方内側取付部を車体斜め前方から見た要部拡大斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるヘッドランプの取付構造の後方外側取付部を車体斜め前方から見た要部拡大斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるヘッドランプの取付構造の後方内側取付部を車体内側斜め前方から見た要部拡大斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体前方からの入力荷重を受けて後方に移動した状態Aを示す概念図である。
【図7】本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプの通常時の前方内側取付部の一部断面側面図である。
【図8】本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体前方からの入力荷重を受けたときの前方内側取付部の状態を説明するための一部断面側面図である。
【図9】本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプの通常時の後方外側取付部の一部断面平面図である。
【図10】本発明の第1実施形態におけるヘッドランプが車体前方から入力荷重を受けたときの後方外側取付部の状態を説明するための一部断面平面図である。
【図11】本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体上方からの入力荷重を受けて下方に移動した状態Bを示す概念図である。
【図12】本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体上方からの入力荷重を受けて下方に移動した状態Cを示す概念図である。
【図13】本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプの通常時の前方内側取付部の一部断面側面図である。
【図14】本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体上方からの入力荷重を受けたときの前方内側取付部の状態を説明するための一部断面側面図である。
【図15】本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプの通常時の後方外側取付部の一部断面正面図である。
【図16】本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体上方から入力荷重を受けたときの後方外側取付部の状態を説明するための一部断面正面図である。
【図17】本発明の第2実施形態によるヘッドランプの取付構造を車体上方から見た平面図である。
【図18】本発明の第2実施形態の変形例によるヘッドランプの取付構造を示す一部断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるヘッドランプの取付構造を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるヘッドランプの取付構造が適用された車体前部を斜め前方から見た斜視図であり、図2は、本発明の第1実施形態によるヘッドランプの取付構造をシュラウド及びフェンダと共に示す斜め前方から見た斜視図である。
図1に示すように、車体1の前部に本発明の実施形態であるヘッドランプ2が設置され、図2に示すように、車体1は、内部にラジエタ(図示せず)を収容するロ字状に延びる樹脂製のシュラウド4とフェンダー6とを備えている。
【0025】
図2に示すように、本実施形態のヘッドランプ2は、樹脂製のヘッドランプ本体8を備え、このヘッドランプ本体8は、前方内側取付部9(第1取付部)、後方外側取付部11(第2取付部)及び後方内側取付部13(図5参照)(第2取付部)の3つの取付部9、11、13により車体1に取り付けられる。
【0026】
以下に、図3乃至5により、本実施形態のヘッドランプ2の取付構造を詳細に説明する。
図3は、本発明の第1実施形態におけるヘッドランプの取付構造の前方内側取付部を車体斜め前方から見た要部拡大斜視図であり、図4は、本発明の第1実施形態におけるヘッドランプの取付構造の後方外側取付部を車体斜め前方から見た要部拡大斜視図であり、図5は、本発明の第1実施形態におけるヘッドランプの取付構造の後方内側取付部を車体内側斜め前方から見た要部拡大斜視図である。
【0027】
先ず、図3により、前方内側取付部9について説明する。
この前方内側取付部9は、ヘッドランプ2をシュラウド4に取り付ける取付部となっている。
図3に示すように、前方内側取付部9は、ヘッドランプ本体8の前方内側に設けられ、内側前方取付ブラケット(第1取付ブラケット)10とボルト18(第1取付部材)と、を有する。取付ブラケット10は樹脂製であり、ヘッドランプ本体8と一体成型により形成されている。
【0028】
取付ブラケット10は、複数の面を有する板状に形成され、上面部10a、下面部10b、後面部10c、内面部10dを有し、その内面部10dには、車体前方向きに開放された取付スリット部(第1取付スリット部)16が形成されている。このスリット部16には、ブラケット10のシュラウド4のボルト孔4aへの位置決め後、ボルト18が、車幅方向外方から挿入されて、取付ブラケット10がシュラウド4(又は車体の他の部材)に締結されている。そして、この締結状態で、ボルト18は、車幅方向に延びている。なお、取付ブラケット10は、ボルト18により、車体の他の部材に取付けられてもよい。
【0029】
また、このスリット部16の上部近傍には、ブラケット破断変形部(ブラケット変形部、第1破断変形部)20が設けられ、このブラケット破断変形部20には、上方に向かって延びる切れ込み部21が形成されている。この切れ込み部21は、ボルト18が位置する部分より車体後方に形成される。
【0030】
ヘッドランプ2が車体上方からの入力荷重を受けると、この入力荷重が取付ブラケット10に伝達され、ブラケット破断変形部20は、ボルト18から反作用力を受けて破断又は変形するようになっている。つまり、ヘッドランプ2が車体上方からの入力荷重を受けると、ブラケット破断変形部20には、ボルト18から反作用力を受けると共に切れ込み部21に応力が集中して、ブラケット破断変形部20が破断又は変形(図は破断を示す)するようになっている。
【0031】
次に、図4により、後方外側取付部11について説明する。
この後方外側取付部11は、ヘッドランプ2をフェンダー6に取り付ける取付部となっている。この後方外側取付部11は、上述した前方内側取付部9より、後方且つ外側に設けられている。
図4に示すように、後方外側取付部11は、ヘッドランプ本体8の外側の前方側に設けられ、外側後方取付ブラケット(第2取付ブラケット)12と、ピン部材24(第2取付部材)と、を有する。
取付ブラケット12は、断面ほぼ矩形状に形成されたブロック状であり、樹脂製で、ヘッドランプ本体8と一体成型により形成されている。この取付ブラケット12には、車幅方向に貫通した、ピン部材24を挿入するための孔部12aが形成されている。
【0032】
ピン部材24は、取付ブラケット12とは別体の部材であり、取付ブラケット12の孔部12aに係合自在となっている。ピン部材24は、ヘッドランプ2の車体1への組み付け前に、予め、車幅方向内方から孔部12aに挿入される。より詳細には、孔部12aには、ピン部材24のブラケット12と係合する部分に、ねじ加工がされ、ピン部材24は、ブラケット12にねじ込まれるようになっている。ピン部材24は、この挿入された状態で、車幅方向に延びている。
【0033】
一方、フェンダー6には、車体前後方向の前方に向かって開口し、ピン部材24が前方から挿入され且つ係合するフェンダースリット22が形成されている。ヘッドランプ2の車体1への取付時には、ピン部材24を取付ブラケット12に取り付けた状態で、図4に矢印で示すように後方に移動させて、ピン部材24をフェンダースリット22にはめる。
【0034】
ピン部材24には、車体前方からの入力荷重を受ける場合、又は、車体上方からの入力荷重を受ける場合に、それぞれ、破断又は変形するピン溝部(ピン変形部、第2破断変形部)25が形成されている。このピン溝部25は、ピン部材24がピン溝部25で変形しやすくなるように、その断面積或いは径を小さくしたものである。このピン溝部25は、後述する図9に示すように、ピン部材24を取付ブラケット12に挿入した状態で、且つ、ピン部材24をフェンダースリット22にはめた状態で、フェンダースリット22とピン部材24の係合部分よりヘッドランプ本体8側に位置する部分に形成されている。
なお、後方外側取付部11は、ヘッドランプ2の車体外方側に設けられているので作業性が良く、そのため、ブラケット12及びピン部材24の代わりに、前方内側取付部9のブラケット10及びボルト18のような構造を採用して、ボルト18をフェンダー6に車幅方向内方から固定するようにしても良い。
【0035】
次に、図5により、後方内側取付部13について説明する。
この後方内側取付部13は、ヘッドランプ2をフェンダー6に取り付ける取付部となっている。その基本構造は、上述した後方外側取付部11と同様であるので、ここでは、異なる構造についてのみ説明する。
この後方内側取付部13は、ヘッドランプ2の車体内方側に設けられ、また、上述した前方内側取付部9より、後方に設けられている。
図5に示すように、後方内側取付部13は、ヘッドランプ本体8の内側の後方側に設けられ、取付ブラケット12と、ピン部材24(第2取付部材)と、を有する。
ピン部材24は、ヘッドランプ2の車体1への組み付け前に、予め、車幅方向外方からブラケット12の孔部12aに挿入される。ピン部材24は、この挿入された状態で、車幅方向に延びている。
【0036】
この後方内側取付部13では、フェンダー6に、車体前後方向の前方に向かって開口し、ピン部材24が前方から挿入され且つ係合するフェンダースリット23が形成されている。ヘッドランプ2の車体1への取付時には、ピン部材24を取付ブラケット12に取り付けた状態で、図5に矢印で示すように後方に移動させて、ピン部材24をフェンダースリット23にはめる。なお、この後方内側取付部13では、シュラウド4に、同様の構造で取付けてもよい。
【0037】
次に、上述した本発明の第1実施形態によるヘッドランプの取付構造の衝突時の動作を説明する。
先ず、ヘッドランプ2が車体前方から入力荷重を受ける場合について説明する。
図6は、本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体前方からの入力荷重を受けて後方に移動した状態Aを示す概念図であり、図7は、本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプの通常時の前方内側取付部の一部断面側面図であり、図8は、本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体前方からの入力荷重を受けたときの前方内側取付部の状態を説明するための一部断面側面図であり、図9は、本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプの通常時の後方外側取付部の一部断面平面図であり、図10は、本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体前方から入力荷重を受けたときの後方外側取付部の状態を説明するための一部断面平面図である。
【0038】
ここでは、車両が他車両と軽衝突し、車体前方から荷重が入力されたと仮定する。
先ず、前方内側取付部9では、図6に示すようにヘッドランプ2が車体前方からの入力荷重を受ける場合、その取付ブラケット10には、車体1側に締結されたボルト18及びシュラウド4に対して後方に移動しようとする力が加わる。本実施形態では、図3及び図7に示すように、取付ブラケット10には、車体前方向きに開放されたスリット部16が形成されているので、図8に示すように、荷重を受けた取付ブラケット10は、ボルト18及びシュラウド4に対して相対的に後方に移動することが許容される。
【0039】
次に、後方外側取付部11では、図6に示すように、ヘッドランプ2が車体前方からの入力荷重を受ける場合、その取付ブラケット12及びそのブラケット12を介してピン部材24に力が加わる。そして、ピン部材24はフェンダー6に対して後方に移動しようとするが、ピン部材24は、フェンダー6のフェンダースリット22から反作用力を受けて破断又は変形して、その結果、車体前方からの入力荷重を吸収する。本実施形態では、図4及び図9に示すように、ピン部材24にピン溝部25が形成されているので、図10に示すように、そのピン溝部25が破断又は変形して荷重を吸収しながら、荷重を受けた取付ブラケット12及びピン部材24の一部がフェンダー6に対して相対的に後方に移動する。なお、図10は、ピン部材24が破断した様子を示す。
【0040】
次に、後方内側取付部13も同様に、ヘッドランプ2が車体前方からの入力荷重を受ける場合、取付ブラケット12及びピン部材24がフェンダー6に対して相対的に後方に移動しようとし、フェンダースリット23から反作用力を受けてピン部材24のピン溝部25が破断又は変形して荷重を吸収しながら、フェンダー6に対して後方に移動する。
これらのような動作をする前方内側取付部9、後方外側取付部11及び後方内側取付部13によって、ヘッドランプ2が車体前方からの入力荷重を受ける場合、ヘッドランプ2は、図6の2点鎖線Aに示すように、車体後方に移動する。
【0041】
次に、ヘッドランプ2が車体上方から入力荷重を受ける場合について説明する。
図11は、本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体上方からの入力荷重を受けて下方に移動した状態Bを示す概念図であり、図12は、本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体上方からの入力荷重を受けて下方に移動した状態Cを示す概念図であり、図13は、本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプの通常時の前方内側取付部の一部断面側面図であり、図14は、本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体上方からの入力荷重を受けたときの前方内側取付部の状態を説明するための一部断面側面図であり、図15は、本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプの通常時の後方外側取付部の一部断面正面図であり、図16は、本発明の第1実施形態により取り付けられたヘッドランプが車体上方から入力荷重を受けたときの後方外側取付部の状態を説明するための一部断面正面図である。
【0042】
ここでは、車体が時速20キロ前後の遅い速度で歩行者に衝突する場合、歩行者の大腿部や頭部などが、上方からヘッドランプ2に当たり、ヘッドランプ2に上方からの入力荷重を生じさせると仮定する。
先ず、前方内側取付部9では、図11に示すようにヘッドランプ2が車体上方からの入力荷重を受ける場合、その取付ブラケット10には、車体1側に締結されたボルト18及びシュラウド4に対して下方に移動しようとする力が加わる。そして、取付ブラケット10には、ボルト18から反作用力が加わる。本実施形態では、図3及び図13に示すように、取付ブラケット10には、ブラケット破断変形部20に切れ込み部21が形成されているので、図14に示すように、車体上方からの荷重を受けた場合、取付ブラケット10のブラケット破断変形部20がボルト18から上方向きの反作用力を受け、その結果、切れ込み部21に応力が集中し、この応力集中によりブラケット破断変形部20が変形或いは破損して、車体上方からの荷重を吸収する。そして、取付ブラケット10は、ボルト18及びシュラウド4に対して相対的に下方に移動する。なお、図14は、ブラケット破断変形部20が破断した様子を示す。
【0043】
次に、後方外側取付部11では、図11に示すようにヘッドランプ2が車体上方からの入力荷重を受ける場合、その取付ブラケット12及びそのブラケット12を介してピン部材24に力が加わる。そして、フェンダー6のフェンダースリット22に対して下方に移動しようとする力が加わり、ピン部材24は、フェンダースリット22から反作用力を受ける。本実施形態では、図4及び図15に示すように、ピン部材24にピン溝部25が形成されているので、図16に示すように、そのピン溝部25が、フェンダースリット22から反作用力を受けて破断又は変形して荷重を吸収する。そして、荷重を受けた取付ブラケット12及びピン部材24の一部がフェンダー6に対して相対的に下方に移動する。なお、図16は、ピン部材24が破断した様子を示す。
【0044】
次に、後方内側取付部13も同様に、ピン部材24のピン溝部25が破断又は変形して荷重を吸収しながら、取付ブラケット12及びピン部材24の一部がフェンダー6(フェンダースリット22)に対して相対的に下方に移動する。
これらのような動作をする前方内側取付部9、後方外側取付部11及び後方内側取付部13によって、ヘッドランプ2が車体上方からの入力荷重を受ける場合、ヘッドランプ2は、図11の2点鎖線の状態Bに示すように、車体下方に移動する。
【0045】
次に、ヘッドランプへの衝突箇所及び角度によっては、前方内側取付部9、後方外側取付部11及び後方内側取付部13の変形量が異なり、図12の2点鎖線の状態Cのようにヘッドランプの移動の仕方が異なる場合もある。
【0046】
次に、上述した本発明の第1実施形態によるヘッドランプの取付構造の作用効果を説明する。
先ず、本実施形態では、前方内側取付部9の取付ブラケット10は、車体前方からの入力荷重を受けるとボルト18及びシュラウド4に対して相対的に後方への移動を許容されるので、取付ブラケット10と一体成形されたヘッドランプ2の後方への移動が許容され、ヘッドランプ2が破損しにくくなり、前方内側取付部9ひいてはヘッドランプ2のリペア性を向上させることが出来る。また、前方内側取付部9は、車体上方からの入力荷重を受けるとその取付ブラケット10自身が変形して上方からの荷重を吸収するので、上方からの歩行者の大腿部や頭部などの衝突荷重を効果的に吸収することができる。これらの結果、ヘッドランプ2の上方からの歩行者の衝撃吸収と前方からの軽衝突時のヘッドランプ2ひいては前方内側取付部9のリペア性とを両立することが出来る。
【0047】
次に、取付ブラケット10には車体前方向きに開放されたスリット部16が設けられ、ボルト18は、このスリット部16に車幅方向から挿入されて取付ブラケット10をシュラウド4に取付けるようになっているので、ヘッドランプ2が車体前方からの入力荷重を受けると、取付ブラケット10のスリット部16がボルト18をすり抜けて、取付ブラケット10及びヘッドランプ2の後方への移動を許容することが出来る。
【0048】
次に、前方内側取付部9では、ボルト18が車幅方向から挿入されるスリット部16が車体前方向きに開放されているので、車体前方からの荷重入力時にヘッドランプ2の車体後方への移動を許容することが出来る。一方、スリット部16の上部近傍には、ボルト18からの反作用力を受けて破断又は変形するブラケット破断変形部20が形成されているので、ヘッドランプ2が車体上方からの入力荷重を受けると、このブラケット破断変形部20が破断又は変形して上方からの荷重を吸収できる。
【0049】
次に、前方内側取付部9は、ヘッドランプ2を車体に取り付けるための車幅方向に延びるボルト18を有するので、ボルト18については、他車両との衝突時における前方からの荷重入力時には、スリット部16と協働してより確実に取付ブラケット10の後方への移動を許容することが出来ると共に、歩行者との衝突時における上方からの荷重入力時にはブラケット破断変形部20と協働してより確実にその荷重を受け止めることが出来る。
【0050】
次に、前方内側取付部9は、主に、ヘッドランプ2に設けられた板状の取付ブラケット10とボルト18とで構成され、スリット部16及びブラケット破断変形部20は、前方内側取付部9の板状の取付ブラケット10に形成されているので、簡易な構成で荷重吸収及び前方内側取付部9のシュラウド4への取付を行うことが出来る。
【0051】
次に、前方内側取付部9では、スリット部16及びブラケット破断変形部20は、板状のブラケット10に形成されているので、簡易な構成で荷重吸収及びヘッドランプ2の車体への取付を行うことが出来る。また、ブラケット10は、ボルト18により車体に締結されるので、ヘッドランプ2を確実に車体に固定することが出来る。
【0052】
なお、前方内側取付部9では、ヘッドランプ2が車体前方からの入力荷重を受ける場合、取付ブラケット10は、スリット部16によりボルト18及びシュラウド4に対して相対的に後方に移動するように構成されており、このとき、取付ブラケット10は、スリット部16により変形せずに後退するように構成されている。しかしながら、車体前方からの荷重が多少斜めから入力されるなどして、万が一取付ブラケット10が多少変形しても、この前方内側取付部9では、ボルト18で取付ブラケット10を車体側に締結するようにしているので、次回のヘッドランプ2の取り付けが可能であり、リペア性を確保することが出来る。また、取付ブラケット10は樹脂製であるので、多少の変形であれば、元の状態に戻すことも可能である。
【0053】
次に、後方外側取付部11及び後方内側取付部13は、ヘッドランプ2を車体に取り付けるための車幅方向に延びるピン部材24を有するので、ピン部材24については、他車両との衝突時における前方からの荷重入力時及び歩行者との衝突時における上方からの荷重入力時にはより確実にそれらの荷重を受け止めることが出来る。
【0054】
ここで、ピン部材24は取付ブラケット12に車幅方向から挿入されているので、車体前方からの入力荷重方向に対して略直交しており、車体前方からの入力荷重を吸収しながら破断又は変形し易くなっている。また、ピン部材24はフェンダースリット22に車幅方向から挿入されているので、車体上方からの入力荷重方向に対して略直交しており、車体上方からの入力荷重を吸収しながら破断又は変形し易くなっている。
【0055】
このように、前方内側取付部9、後方外側取付部11及び後方内側取付部13において、ヘッドランプ2を車体に取り付けるためのボルト18及びピン部材24を車幅方向に延びるように設けることにより、車両前方及び上方からの広い範囲にわたる衝撃に対して荷重を受け止めることが出来る。それにより、歩行者の衝突時の上方からの衝撃荷重も、他車両との軽衝突時の前方からの衝撃荷重も吸収することが出来る。
【0056】
次に、後方外側取付部11及び後方内側取付部13では、ピン部材24が、車体前方からの入力荷重又は車体上方からの入力荷重を受けるとフェンダースリット22、23から反作用力を受けて破断又は変形するようなピン溝部25を有するので、歩行者との衝突時や他車両との軽衝突時など、車体前方からの入力荷重又は車体上方からの入力荷重を受けると、このピン溝部25が変形して荷重を吸収することが出来る。また、ピン部材24は、車体に設けられ車体前方向きに開放されたフェンダースリット22、23に車体前方から挿入され且つ係合されるようになっているので、ヘッドランプ2の車体への取り付けが容易である。
【0057】
次に、後方外側取付部11及び後方内側取付部13では、ピン部材24にピン溝部25が形成されているので、車体前方及び車体上方からの入力荷重を受けた場合にはそのピン溝部25が変形して荷重を吸収するようになっている。よって、上方からの歩行者の大腿部や頭部などの衝突荷重を効果的に吸収することが出来ると共に他車両などとの軽衝突時にも前方からの衝突荷重を効果的に吸収することが出来る。
【0058】
次に、後方外側取付部11及び後方内側取付部13は、ヘッドランプ2をシュラウド4又はフェンダー6に取り付けるための取付ブラケット12とは別体のピン部材24を有し、車体前方からの入力荷重及び車体上方からの入力荷重を受けると、このピン部材24のピン溝部25が変形して前方及び上方からの荷重を吸収するので、衝突後はピン部材24のみを交換すれば良く、リペア性に優れる。言い換えると、荷重を受けたときの変形は、ピン部材24のみであるので、衝突後はこのピン部材24のみ交換すればよいので、リペア性が向上する。
【0059】
また、ピン部材24は、フェンダー6に設けられ車体前方向きに開放されたフェンダースリット22、23に車体前方から挿入且つ係合されて後方外側取付部11及び後方内側取付部13をフェンダー6に取付けるようになっているので、ヘッドランプ2のフェンダー6又はシュラウド4への取り付けが容易である。
【0060】
次に、取付部の位置関係の作用としては、前方内側取付部9はヘッドランプ前側に設けられ、この前方内側取付部9は、車体上方からの入力荷重を受けると変形し、また、車体前方からの入力荷重を受けるので、荷重吸収力に優れると共にヘッドランプ2のリペア性を確実なものとすることが出来る。一方、後方外側取付部11及び後方内側取付部13は、その前方内側取付部9より後側且つ外側に設けられるので、前方内側取付部9と後方外側取付部11及び後方内側取付部13とで協働して、ヘッドランプ2を安定して支持することが出来ると共に歩行者の衝撃荷重や他車両の衝撃荷重の荷重を安定して吸収することが出来る。
【0061】
次に、前方内側取付部9は、車体の前側に位置するシュラウド4に取付けられ、後方外側取付部11及び後方内側取付部13は、車体のフェンダー6に取付けられることでヘッドランプ2の取付スペースを効率的に確保することができる。
【0062】
次に、後方外側取付部11及び後方内側取付部13は、ピン部材24が、ブロック状のブラケット12に形成された孔部12aに係合されるので、リペア性に優れると共に組み付け性も優れる。また、ブラケット12はブロック状に形成されているので、ピン部材24の保持性にも優れている。
【0063】
次に、図17により、本発明の第2実施形態によるヘッドランプの取付構造を説明する。図17は、本発明の第2実施形態によるヘッドランプの取付構造を車体上方から見た平面図である。第2実施形態によるヘッドランプの取付構造は、上述した第1実施形態とほぼ同じであるため、ここでは、第2実施形態の第1実施形態とは異なる部分のみを説明する。
【0064】
図17に示すように、第2実施形態によるヘッドランプ26は、ヘッドランプの形状が異なり、前方の一箇所に第1前方内側取付部28が設けられ、この第1前方内側取付部28より後方且つ車幅方向外側2箇所に並んで第2後方外側取付部29及び第3後方外側取付部30が設けられている。このような第2実施形態によるヘッドランプの形状では、第1実施形態の後方内側取付部13に相当する取付部が存在しないため、ヘッドランプ26の取り付けが不安定となる。そこで、第2実施形態では、以下のような取付構造を採用することで、ヘッドランプ26を安定して取り付けるようにしている。
【0065】
第1前方内側取付部28、第2後方外側取付部29及び第3後方外側取付部30は、いずれも第1実施形態の前方内側取付部9と同様の構造を有し(詳細は図示せず)、ブラケット破断変形部を有する取付スリット部(図3の符号20、26など参照)へ車幅方向外方からボルトが挿入されて、取付ブラケットがシュラウド或いはフェンダーに締結される。
このように、3箇所の取付部をいずれもボルトで締結することにより、ヘッドランプ26を安定して取り付けることが出来る。この第2実施形態のヘッドランプの取付構造の衝突時(車体上方からの荷重入力時及び前方からの車体荷重入力時)の動作は、上述した第1実施形態の前方内側取付部9の動作と同様である。
【0066】
次に、第2後方外側取付部29及び第3後方外側取付部30において、第1実施形態と同様の前方内側取付部9と同様のボルト固定が組付け上困難な場合は、図18に示す変形例の構造を採用することが好ましい。図18は、本発明の第2実施形態の変形例によるヘッドランプの取付構造を示す一部断面平面図である。
図18に示すように、第2実施形態の変形例では、第2後方外側取付部29のピン32の先端部は、ねじ加工されている。このピン32は、フェンダー6に形成されたスリット(フェンダースリット22(図4参照))に挿入され且つ係合された後、フェンダー6の外方からナット34によって固定される。さらに、このピン32には、車体前方及び上方からの荷重入力を受ける場合に破断又は変形するピン溝部が形成されている。なお、第3後方外側取付部30の構造も同じである。
【0067】
このように第2後方外側取付部29及び第3後方外側取付部30をナット34によって取付を強化することにより、第2後方外側取付部29及び第3後方外側取付部30が両方とも車幅方向外側に設けられていても、ヘッドランプ2の安定性を良くすることができる。
この変形例によるヘッドランプの取付構造の衝突時(車体上方からの荷重入力時及び車体前方からの荷重入力時)の動作は、上述した第1実施形態の後方外側取付部11及び後方内側取付部13と同様であり、ピン溝部が破断して(図4の符号25など参照)、ヘッドランプの後方或いは下方への移動を許容する。
【符号の説明】
【0068】
2、26 ヘッドランプ
4 シュラウド
6 フェンダー
8 ヘッドランプ本体
9 前方内側取付部(第1取付部)
10 内側前方取付ブラケット(第1取付ブラケット、板状ブラケット)
11 後方外側取付部(第2取付部)
12 外側取付ブラケット(ブロック状ブラケット)
13 後方内側取付部(第2取付部)
16 取付スリット部(第1取付スリット部)
18 ボルト(第1取付部材、締結部材)
20 ブラケット破断変形部(ブラケット変形部、第1破断変形部)
22 フェンダースリット(車体側スリット部)
24 ピン部材(第1取付部材)
25 ピン溝部(ピン変形部、第2破断変形部)
28 第2前方外側取付部
29 第2後方外側取付部
30 第3後方外側取付部
34 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の取付部にて車体前部へ取付けられるヘッドランプの取付構造であって、
上記複数の取付部は、第1取付部を有し、この第1取付部は、
車体前方からの入力荷重を受けると上記ヘッドランプの車体後方への移動を許容すると共に、
車体上方からの入力荷重を受けると破断又は変形して上方からの荷重を吸収することを特徴とするヘッドランプの取付構造。
【請求項2】
上記第1取付部以外の第2取付部は、車体前方からの入力荷重を受ける場合及び車体上方からの入力荷重を受ける場合において、それぞれ、破断又は変形して前方及び上方からの荷重を吸収する請求項1に記載のヘッドランプの取付構造。
【請求項3】
上記第2取付部は、ヘッドランプを車体に取り付けるためのヘッドランプとは別体の第2取付部材を有し、車体前方からの入力荷重を受ける場合及び車体上方からの入力荷重を受ける場合において、それぞれ、この第2取付部材自身が破断又は変形して前方及び上方からの荷重を吸収する請求項2に記載のヘッドランプの取付構造。
【請求項4】
上記第1取付部は、ヘッドランプを車体に取り付けるための車幅方向に延びる第1取付部材を有し、
上記第2取付部は、ヘッドランプを車体に取り付けるための車幅方向に延びる第2取付部材を有する請求項1又は請求項2に記載のヘッドランプの取付構造。
【請求項5】
上記第1取付部には、車体前方向きに開放され、上記第1取付部材が車幅方向から挿入される第1取付スリット部と、その上部近傍に形成され車体上方からの入力荷重を受けると上記第1取付部材からの反作用力を受けて破断又は変形する第1破断変形部と、が形成されている請求項4に記載のヘッドランプの取付構造。
【請求項6】
上記第2取付部の第2取付部材は、車体に設けられ車体前方向きに開放された車体側スリット部に車体前方から挿入され且つ係合されると共に車体前方からの入力荷重又は車体上方からの入力荷重を受けると上記車体側スリット部から反作用力を受けて破断又は変形するような第2破断変形部を有する請求項4又は請求項5に記載のヘッドランプの取付構造。
【請求項7】
上記第1取付部がヘッドランプの前側に設けられると共に、上記第2取付部が上記第1取付部より後側且つ外側に設けられる請求項1乃至6に記載のヘッドランプの取付構造。
【請求項8】
上記ヘッドランプは、上記第1取付部にて車体の前側に位置するシュラウドに取付けられ、上記第2取付部にて車体の側方のフェンダーに取付けられる請求項1乃至7に記載のヘッドランプの取付構造。
【請求項9】
上記第1取付部は、ヘッドランプに設けられた板状のブラケットと上記第1取付部材とを有し、
上記第1取付部の第1取付スリット部及び第1破断変形部は、上記板状のブラケットに形成され、
上記第1取付部の第1取付部材は、車体に締結される締結部材である請求項4乃至8のいずれか1項に記載のヘッドランプの取付構造。
【請求項10】
上記第1取付部の第1破断変形部は、上記板状のブラケットに形成された切れ込み部を有する請求項9に記載のヘッドランプの取付構造。
【請求項11】
上記第2取付部は、ヘッドランプに設けられたブロック状のブラケットと上記第2取付部材とを有し、
上記第2取付部の第2破断変形部は、上記第2取付部材に形成され、
上記第2取付部の第2取付部材は、上記ブロック状のブラケットに形成された孔部に係合されるピン部材である請求項3乃至10のいずれか1項に記載のヘッドランプの取付構造。
【請求項12】
上記第2取付部の第2破断変形部は、上記ピン部材に形成された溝部を有する請求項11に記載のヘッドランプの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−121399(P2011−121399A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278663(P2009−278663)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】