説明

ヘテロダイン干渉変位計測装置

【課題】小型かつ低価格で高効率なヘテロダイン干渉変位計測装置を提供する。
【解決手段】レーザ光束を一定速度で回転させる回折格子に照射し、互いに異なる次数を有し、かつ、第一の周波数差を有する2つの回折光束を生成し、得られた前記2つの回折光束を同一方向に同軸、かつ、偏光面が互いに直交するような合成光を生成し出力することで、所謂2周波レーザ光源に相当する機能を実現する部分と、前記合成光束を第一の周波数差のままで干渉させて第一の周波数差信号を生成する第1の干渉光学系と、光路長差が零近傍になるように構成された干渉光学系に入射させ、被計測物の変位量に応じて第二の周波数差を有する2つの光束を生成し、それらを干渉させることで第二の周波数差信号を生成し、第1周波数差信号と前記基準周波数差信号との差の情報から前記被計測物の前記変位に関する情報を算出し出力する手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに偏光状態と波長(周波数)が異なる2周波光源を用いたヘテロダイン干渉変位計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年機械ステージの相対変位をサブミクロンオーダーの分解能で計測する装置として、格子干渉型エンコーダを用いたヘテロダイン干渉変位計測装置が用いられている。特許文献1には、電気光学変調器(EOM)を用いたヘテロダイン干渉変位計測装置であって、段差計測に用いられる構成が開示されている。また特許文献2には、ヘテロダイン干渉計測装置を格子干渉計として適用した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01−156628号公報
【特許文献2】特許第3185373号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気光学変調器は高価であり、一定の割合で高精度に電圧を変化させる必要があり特殊な駆動回路が必要になる。また電気光学変調器に用いられる材料は、周囲の環境に敏感である。このため、安価なヘテロダイン型の干渉計測装置やエンコーダには適用困難である。
【0005】
本発明は、小型かつ低価格で高効率なヘテロダイン干渉変位計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのヘテロダイン干渉変位計測装置は、光束を射出する光源と、一定速度で回転可能な回転部材に形成された回折格子と、前記光源から前記回折格子に照射することで得られる互いに異なる次数を有し、かつ、第一の周波数差を有する2つの回折光束を生成する光学系と、前記2つの回折光束を同一方向に同軸、かつ、偏光面が互いに直交した合成光束を生成する偏光ビームスプリッタと、前記合成光束を第一の周波数差のままで干渉させて第一の周波数差信号を生成する第一の干渉光学系と、前記合成光束を入射させることで、被計測物の変位量に応じて第二の周波数差を有する2つの光束に変換し、該2つの光束を干渉させて第二の周波数差信号を生成する第二の干渉光学系と、前記第一の周波数差信号と前記第二の周波数差信号との差の情報から前記被計測物の前記変位量に関する情報を算出し出力する手段とを有する。
【0007】
本発明の他の側面としてのヘテロダイン干渉変位計測装置は、光束を射出する光源と、一定速度で回転可能な回転部材に形成された回折格子と、前記光源から前記回折格子に照射することで得られる互いに異なる次数を有し、かつ、第一の周波数差を有する2つの回折光束を生成する光学系と、前記2つの回折光束を同一方向に同軸、かつ、偏光面が互いに直交した合成光束を生成する偏光ビームスプリッタと、前記合成光束を入射させることで、被計測物の変位量に応じて第二の周波数差を有する2つの第一光束に変換し、該第一光束を干渉させて第二の周波数差信号を生成するとともに、第三の周波数差を有する2つの第二光束に変換し、該第二光束を干渉させて第三の周波数差信号を生成する第二の干渉光学系と、前記第二周波数差信号と前記第三周波数差信号との差の情報から前記被計測物の前記変位量に関する情報を算出し出力する手段とを有する。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型かつ低価格で高効率なヘテロダイン干渉変位計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1におけるヘテロダイン干渉変位計測装置の構成図である。
【図2】実施例2におけるヘテロダイン干渉変位計測装置の構成図である。
【図3】実施例3におけるヘテロダイン干渉変位計測装置の構成図である。
【図4】実施例4におけるヘテロダイン干渉変位計測装置の構成図である。
【図5】実施例5における2周波光源の構成図である。
【図6】実施例6における2周波光源の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0012】
まず、本発明の実施例1におけるヘテロダイン干渉変位計測装置について説明する。図1は、本実施例におけるヘテロダイン干渉変位計測装置の構成図である。本実施例のヘテロダイン干渉変位計測装置は、2周波光源部LS1、格子干渉型エンコーダ光学系GI1、および、偏波面保持ファイバPMFを備えて構成される。2周波光源部LS1は、回転ディスク上の回折格子へ単色光の光束を照射し±1次回折させることで周波数ずれを付与し、2つの回折光の偏光面を互いに直交させる。格子干渉型エンコーダ光学系GI1は、2周波光源部LS1からの光束を偏波面保持ファイバPMFを介して入射し、2周波光源部LS1の周波数差にスケールの移動による周波数ずれ(位相ずれ)を付与された周期信号を得る。
【0013】
レーザ光源LASER(光源)から射出した(45°方位の直線偏光の)平行光束(周波数ν0)は、一定速度で回転している(回転可能な)回転部材としての回転ディスクDISK(回折格子ディスク)に入射する。回転ディスクDISKには、回折格子GT0が形成されている。不図示の光学系は、レーザ光源LASERから回折格子GT0に照射することで得られる互いに異なる次数を有し、かつ、所定の基準周波数差(第一の周波数差)を有する2つの回折光束(±1次回折光)を生成する。
【0014】
この2つの回折光束(±1次回折光)は、平行ミラーM01、M02にて反射され、偏光ビームスプリッタPBS0(偏光プリズム)に入射する。偏光ビームスプリッタPBS0からは2つの同軸に合成された合成光束が射出されるが、本実施例では、図1の上側に射出した光束を使用するものとする。図1の上側に射出した光束のうち、周波数ν1の+1次回折光は、偏光ビームスプリッタPBS0で反射された0度方位の直線偏光光束である。一方、周波数ν2の−1次回折光は、偏光ビームスプリッタPBS0を透過した90度方位の直線偏光光束である。このように、偏光ビームスプリッタPBS0は、2つの回折光束(±1次回折光)を同一方向に同軸、かつ、偏光面が互いに直交した合成光束を生成する。
【0015】
回転ディスクDISKが1秒間に格子線がN本移動するような回転速度であれば、元の光の周波数をν0とすると、+1次回折光ν1の周波数は ν0+N、−1次回折光の周波数ν2はν0−Nとなる。例えば、回転ディスクDISKの放射状回折格子トラックの半径を9.2mmとし、1周の格子本数を20250本、回転速度を10000RPMとすると、N=3375000となる。よって、+1次回折光の周波数ν1はν0+33.75MHz、−1次回折光の周波数ν2はν0−33.75MHzとなる。なお、周波数ν0は元のレーザ光源LASERの周波数であり、例えば波長850nmのレーザ光源LASERであれば、周波数ν0は以下の式(1)のように求められる。
【0016】
ν0=299792458/(850×10−9
=352.6THz … (1)
レーザ光源LASERの周波数ν0に揺らぎがあると、それに応じて2周波光束の周波数ν1、ν2も変動する。また、±1次回折光の周波数差67.5MHzは、回転ディスクの回転速度変動や回折格子の描画誤差の影響を受けて変動する。このため、2周波光源部LS1からの光束を光路長差のある干渉計(例えば、マイケルソン干渉測長装置)に適用する場合には、周波数ν0の変動の少ない光源(例えば、波長安定型HeNeレーザ)を使用することが望ましい。更に、回転ディスクの回転速度変動や回折格子の描画誤差の少ないものを使用することが望ましい。
【0017】
しかし、格子干渉型エンコーダの場合には、光学設計事項として±1次回折光の光路長差を零またはその付近に設定可能であるため、原理的に周波数ν0の変動の影響を受けない。また、回転ディスクの変動が生じて周波数ν1、ν2が変動した場合でも、常に周波数ν1、ν2の差を基準の周波数として使用するため、誤差にはならない(光路長差がある干渉計の場合には、周波数ν1、ν2の時間当たりの変動分が誤差になる。)。このように、回転ディスクDISKからの±1次回折光から2周波光束を得て、格子干渉型エンコーダに適用することが可能である。
【0018】
+1次回折光(周波数ν1)および−1次回折光(周波数ν2)の2光束は同軸に重なり合い、互いの偏光面が直交している。これらの光束はレンズLNS1にて集光され、偏波面保持ファイバPMFの偏光軸(f軸、s軸)に合わせて導光される。そして、偏波面保持ファイバPMFの反対の端面から同軸に重なり合い、互いの偏光面が直交した発散光束として射出される。なお、特に偏波面保持ファイバPMFを中継しなくてもエンコーダ光学系としては成立する。このため、偏波面保持ファイバPMFとその前後のレンズLNS1、LNS2を省略してもよい。図1では、一例として、周波数ν1の光束は偏波面保持ファイバPMFのf軸に合わせて伝送され、周波数ν2の光束は偏波面保持ファイバPMFのs軸に合わせて伝送されている。
【0019】
次に、偏光ビームスプリッタPBS0にて下側に射出した光束を考える。図1の下側に射出した光束のうち、+1次回折光ν1は、偏光ビームスプリッタPBS0を透過しているため90度方位の直線偏光光束である。一方、−1次回折光ν2は、偏光ビームスプリッタPBS0を反射しているため90度方位の直線偏光光束である。これらの2光束は同軸に重なり合い、互いの偏光面が直交している。また、これらの2光束は、45°方位の偏光板POL0を透過し45°方位の偏光成分を選択することで、両者の偏光面が一致して干渉現象を起こす。なお、これらの2光束の光路長は互いに等しくなるように設定されている。干渉光の周波数はν1−ν2(2つの回折光束の第一の周波数差)であり、周波数ν1−ν2は2周波光源の基準周波数信号(第一の周波数差信号)として利用される。このように本実施例では、合成光束を第一の周波数差のままで干渉させて第一の周波数差信号を生成する第一の干渉光学系が設けられている。
【0020】
2周波光源部LS1から出力された同軸2光束は、偏波面保持ファイバPMFから発散光束として射出される。この発散光束は、コリメータレンズLNS2にて平行光束に変換され、スケール上の回折格子GT(格子ピッチP1)に照明される。回折格子GT(スケール)は、被計測物の変位量に応じて移動する。回折格子GTで発生した周波数ν1(+1)、ν2(+1)の+1次回折光は平行ミラーM1にて反射され、更に偏光ビームスプリッタPBSで0度方位直線の偏光成分のみ反射されるとき周波数ν1(+1)の光束のみになっている。一方、回折格子GTで発生した周波数ν1(−1)、ν2(−1)の−1次回折光は平行ミラーM2にて反射され、更に偏光ビームスプリッタPBSで90度直線の偏光成分のみ透過されるとき周波数ν2(−1)の光束のみになっている。これらの2光束は、互いに偏光方位が直交し、同軸で進行する。
【0021】
更に、偏光板POL1によって45°方位の偏光成分を選択することで、両者の偏光面が一致して干渉現象を生じさせる。この干渉信号は、周波数ν1(+1)−ν2(−1)(被計測物の変位に応じた第二の周波数差)を有する変調周波数信号(第二の周波数差信号)である。すなわち、スケール上の回折格子GTからの+1次回折光の周波数ν1(+1)=ν1+Δν、−1次回折光の周波数ν2(−1)=ν2−Δνとなる。ここでΔνは、1秒間にスケールがM本移動したとき、Δν=Mで表される。このため、45°の偏光板を介して受光素子PD1で受光すると、以下の式(2)で表される周波数を有する正弦波状の周期信号が得られる。
【0022】
ν1(+1)−ν2(−1)=ν1−ν2+2Δν … (2)
2周波光源部LS1の構成例において、上記の周波数は、以下の式(3)のように求められる。
【0023】
ν1(+1)−ν2(−1)=(ν0+33.75MHz)−(ν0−33.75MHz)+2Δf
=67.5MHz+2Δν … (3)
なお、前述の基準周波数信号(基準周波数差)は、以下の式(4)のように求められる。
【0024】
ν1−ν2=(ν0+33.75MHz)−(ν0−33.75MHz)
=67.5MHz … (4)
なお、光学系の受光素子PD0までの光路長は、格子干渉計の受光部PD1までの光路長と揃える必要がある。
【0025】
本実施例において、格子干渉型エンコーダ光学系GI1は、合成光束を入射させることで、被計測物の変位に応じて第二の周波数差を有する2つの光束に変換し、これら2つの光束を干渉させて第二の周波数差信号を生成する第二の干渉光学系である。また本実施例では、第一の周波数差信号と第二の周波数差信号との差の情報から被計測物の変位量に関する情報を算出し出力する手段(不図示)を備える。この手段(算出手段)により、これら2つの周期信号の周波数を比較または差分(2Δν)を演算し、位相変化(2M)に変換すれば、被計測物(回折格子GT)の変位量と方位に関する情報が得られる。すなわち、位相が+4π変化していれば、スケール上の格子が+側へ1本分移動したことになる。本実施例のヘテロダイン干渉変位計測装置によれば、通常の(ホモダイン型)格子干渉型エンコーダの場合と同様に、符号を得ることが可能であり、かつ、内挿して高分解能な計測も可能となる。
【0026】
以上のとおり、回転ディスクDISKを用いた2周波光源部LS1と光路長差が零の格子干渉型エンコーダ光学系GI1とを組み合わせることで、高精度なヘテロダイン干渉変位計測装置を実現することができる。本実施例のヘテロダイン干渉変位計測装置には、特別な電気回路や材料やモジュールが必要とされず、小型かつ安価である。そして、光路長差が零付近で使用されるため、2周波光源の周波数安定性を特に必要としなくても十分な精度と安定性を備える。
【0027】
一般的に、音響光学変調器において、入力光に対する出力光は、630nm帯域のInP等の材料を用いたもので50%程度である。これに対して、本実施例では、回転回折格子の断面形状が凹凸状であるラメラ位相格子を利用するため、±1次回折光はそれぞれ40%程度確保でき、合計で80%の効率となる。よって、音響光学変調器や電気光学変調器を用いた2周波光源と比較して、2周波光束を生成する光学系に起因する損失が少なく効果的である。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明の実施例2におけるヘテロダイン干渉変位計測装置について説明する。図2は、本実施例におけるヘテロダイン干渉変位計測装置の構成図である。本実施例では、2周波光源部LS2および格子干渉型エンコーダ光学系GI2が用いられている点で、実施例1の構成とは異なる。
【0029】
レーザ光源LASER(光源)からの45°偏光方位の直線偏光平行光束を、回転ディスクDISKの放射状の回折格子GT0の点P1に照明し、2つの回折光(周波数ν1、ν2)を発生させる。周波数ν1の+1次回折光は−22.5度だけ光学軸をずらした1/2波長板HWP1を透過し、0度方位の直線偏光光束に変換され、平行ミラーM01にて反射される。一方、周波数ν2の−1次回折光は+22.5度だけ光学軸をずらした1/2波長板HWP2を透過し、90度方位の直線偏光光束に変換され、平行ミラーM02にて反射される。これらの回折光は、最終的に、互いに直交した直線偏光光束の状態にされ、偏光ビームスプリッタPBS0に入射する。偏光ビームスプリッタPBS0において、90度方位の直線偏光光束は透過し、0度方位の直線偏光光束は反射するため、同軸に合成された光束を100%上側から射出させることができる。ただし、本実施例では、実施例1のような基準周波数信号はこのままでは得られない。
【0030】
周波数ν1、ν2を有する同軸の2周波光束(合成光束)は、実施例1と同様に、偏波面保持ファイバPMFを経由してスケール上の回折格子GTに照明される。回折格子GTにて発生した周波数ν1(+1)、ν2(+1)の+1次回折光は、平行ミラーM1にて反射される。更に、+1次回折光が偏光ビームスプリッタPBSで0度直線の偏光光束として反射されるとき、周波数ν1(+1)のみの光束となっている。回折格子GTにて発生した周波数ν1(−1)、ν2(−1)の−1次回折光は、平行ミラーM2にて反射される。更に、−1次回折光が偏光ビームスプリッタPBSで90度直線の偏光光束として透過するとき、周波数ν2(−1)のみの光束となっている。これら2光束(第二の周波数差を有する2つの第一光束)は互いに偏光方位が直交し、同軸で進行する。
【0031】
更に、偏光板POL1によって45°方位の偏光成分を選択することで、両者の偏光面が一致し干渉現象を生じさせる。これにより得られる信号が周波数ν1(+1)−ν2(−1)(第二の周波数差)を有する第一ヘテロダイン周波数信号である。この信号は受光素子PD1から出力され、回折格子GTを有するスケールが図2中の矢印方向(上方向)に移動したとき周波数が上昇する。このように、格子干渉型エンコーダ光学系GI2は、合成光束を入射させることで、被計測物の変位に応じて第二の周波数差を有する2つの第一光束に変換し、これらの第一光束を干渉させて第二の周波数差信号を生成する第二の干渉光学系である。
【0032】
また、回折格子GTにて発生した周波数ν1(+1)、ν2(+1)の+1次回折光は、平行ミラーM1にて反射される。更に、+1次回折光が偏光ビームスプリッタPBSで90度直の線偏光成分として透過されるとき、周波数ν2(+1)の光束のみになっている。一方、回折格子GTにて発生した周波数ν1(−1)、ν2(−1)の−1次回折光は平行ミラーM2にて反射される。更に、−1次回折光が偏光ビームスプリッタPBSで0度直線の偏光成分として反射されるとき、周波数ν1(+1)の光束のみになっている。これら2光束(第三の周波数差を有する2つの第二光束)は互いに偏光方位が直交し、同軸で進行する。
【0033】
更に、偏光板POL2によって45°方位の偏光成分を選択することで、両者の偏光面が一致し干渉現象を生じさせる。この干渉信号は、周波数ν1(−1)−ν2(+1)(第三の周波数差)の第二ヘテロダイン周波数信号である。この信号は受光素子PD2から出力され、回折格子GTを有するスケールが図2中の矢印方向(上方向)に移動したとき周波数が下がる。このように、格子干渉型エンコーダ光学系GI2は、合成光束を入射させることで、被計測物の変位に応じて第三の周波数差を有する2つの第二光束に変換し、これらの第二光束を干渉させて第三の周波数差信号を生成する第二の干渉光学系である。
【0034】
受光素子PD1、PD2から出力される信号は、仮想としてのν1−ν2の基準信号周波数を中心に逆向きに周波数(または位相)がずれたものと解釈できる。このため、不図示の算出手段により、これら2つのヘテロダイン信号の差分を取り位相変化に変換すれば、変位量と方位の情報が得られる。すなわち算出段は、第二の周波数差信号と第三の周波数信号との差の情報から被計測物の変位量に関する情報を算出し出力する手段である。但し、実施例1とは異なり、スケール上の格子が+側へ1本分移動すれば位相差が8π変化するため、分解能が2倍になる。符号も求まり内挿も可能であることは、ヘテロダインでない通常(ホモダイン)の格子干渉型エンコーダの場合と同じである。また、受光素子PD2で得られた第二ヘテロダイン干渉光束は、実施例1では使用していないため、格子干渉型エンコーダ光学系GI2の光の利用効率は2倍となり優れている。
【0035】
本実施例では、実施例1と比較して、更に以下の優れた性能が得られる。一般的に、偏波面保持ファイバPMFをf軸とs軸にそれぞれ直線偏光光束を全般させる場合、偏波面保持ファイバPMFに曲げや振動等の外乱を印加すると、f軸とs軸の光学的光路長(実際の長さを屈折率で割った値)が不安定に変動する。このため、伝送後の光束(周波数ν1、ν2)は、入射時の周波数からずれる。そこで、実施例1のエンコーダの光束伝送部に偏波面保持ファイバPMFを適用する場合には、外乱を印加しないような工夫が必要となる。従って、実施例1では伝送路にミラーを用いる。それに対して、本実施例では、偏波面保持ファイバPMFの伝播後の2周波光束(周波数ν1’、ν2’)とすると、受光素子PD1、PD2にて最終的に得られる周波数成分は共通のν1’−ν2’であるため、その差分は影響しない。すなわち、偏波面保持ファイバPMFへの揺動等の外乱印加があっても測定誤差にならない。また、初期の2周波光源周波数が回転ディスクを原因として変動しても影響を受けることはない。
【0036】
このように本実施例によれば、高精度で安価なヘテロダイン干渉変位計測装置を提供することができる。
【実施例3】
【0037】
次に、本発明の実施例3におけるヘテロダイン干渉変位計測装置について説明する。図3は、本実施例におけるヘテロダイン干渉変位計測装置の構成図である。本実施例は、格子干渉型エンコーダ光学系を変更し、ヘテロダイン信号受光部(受光素子PD1)を光源側に設けたものである。本実施例では、2周波光源部LS3からの光束を格子干渉型エンコーダ光学系GI3に入射させる際に偏波面保持ファイバで往復伝送させる。
【0038】
レーザ光源LASERからの45°偏光方位の直線偏光平行光束を、回転ディスクDISKの放射状の回折格子GT0の点P1に照明し、2つの回折光(周波数ν1、ν2)を発生させる。周波数ν1の+1次回折光は−22.5度だけ光学軸をずらした1/2波長板HWP1を透過し、0度方位の直線偏光光束となって平行ミラーM01にて反射される。一方、周波数ν2の−1次回折光は+22.5度だけ光学軸をずらした1/2波長板HWP2を透過し、90度方位の直線偏光光束となって平行ミラーM02にて反射される。これらの光束は、最終的に互いに直交した直線偏光光束となって偏光ビームスプリッタPBS0に入射する。
【0039】
偏光ビームスプリッタPBS0では、P偏光は透過し、S偏光は反射するため、同軸に合成される光束を100%上側のみから射出させることができる。一旦、これらは非偏光ビームスプリッタNBS0を透過する。反射光束は、45°方位の偏光板POL00を透過し、受光素子PD0にて基準周波数信号として検出される。
【0040】
同軸の2周波光束のうち、周波数ν1の光束は偏波面保持ファイバPMFのf軸に合わせて伝送され、周波数ν1の光束は偏波面保持ファイバPMFのs軸に合わせて伝送される。偏波面保持ファイバPMFを伝送した2光束は、レンズLNS2にて平行光束にされる。そして、22.5°方位の1/2波長板HWPにてそれぞれ直線偏光方位を−45°回し、ファラデー素子FRにて偏光方位を更に+45°回転させ、スケール上の回折格子GTに照明される。なお、ファラデー素子FRは、結晶光学素子の一種であり、磁場を印加するとその磁場の向きと量に比例して光の偏光面を回転させること可能な光学素子である。
【0041】
回折格子GTにて発生した周波数ν1(+1)の+1次回折光は0度方位の直線偏光光束として、周波数ν2(+1)の+1次回折光は90度方位の直線偏光光束としてそれぞれ平行ミラーM1にて反射される。更に、偏光ビームスプリッタPBSで0度方位の直線偏光成分として反射されるとき、周波数ν1(+1)の光束のみになっている。回折格子GTにて発生した周波数ν1(−1)、ν2(−1)の−1次回折光は平行ミラーM2にて反射される。更に、−1次回折光が偏光ビームスプリッタPBSで90度方位の直線偏光成分として透過されると、周波数ν2(−1)の光束のみになっている。これら2光束は互いに偏光方位が直交し、同軸で進行し折り返しミラーRMにて元の光路を戻される。
【0042】
偏光ビームスプリッタPBSで反射した周波数ν1(+1)の光束は、ミラーM1を経由して、回折格子GTにて更に+1次回折すると、周波数ν1(+1+1)の光束となりファラデー素子FRを透過する。偏光ビームスプリッタPBSで透過した周波数ν2(−1)の光束は、ミラーM2を経由して、回折格子GTにて更に−1次回折すると、光束ν2(−1−1)となってファラデー素子FRを透過する。ファラデー素子FRとは磁場を印加することで偏光方位を回転させる効果がある結晶光学素子で、いずれの方向に透過させても偏光方位が同じ向きに回転する性質がある。例えば、ガーネット系の材料等に永久磁石で一定の磁場を印加させて偏光方位を45°回転させるように設定されたファラデー素子が市販されている。
【0043】
ファラデー素子FRでは、直線偏光の向きが+45°回転させられ、更に1/2波長板HWPで+45°回転させられる。このため、周波数ν1(+1+1)の光束の直線偏光の方位は90度となり、周波数ν2(−1−1)の光束の直線偏光の方位は0°となる。1/2波長板HWPを左から右に透過したとき偏光方位は−45°回転するため、逆向きに透過させると+45°の回転になる。よって、周波数ν1(+1+1)の光束の直線偏光の方位は偏波面保持ファイバPMFのs軸に平行であり、周波数ν2(−1−1)の光束の直線偏光の方位は偏波面保持ファイバPMFのf軸に平行である。往路では、周波数ν1の光束はf軸と平行で、周波数ν2の光束はs軸と平行であるため、これらは互いに入れ替わっていることになる。
【0044】
偏波面保持ファイバPMFを戻された2光束は、非偏光ビームスプリッタNBS0まで戻され、その一部が反射され45°方位の偏光板POL01を通過して受光素子PD1に入射する。受光素子PD1からは、周波数ν1(+1+1)の光束と周波数ν2(−1−1)の光束の差分であるヘテロダイン信号が得られる。このヘテロダイン信号と受光素子PD0からの基準周波数信号とを比較して位相信号に変換し、回折格子GTの移動量と方位を計算し出力することができる。
【0045】
また、本実施例では、実施例2と比較して、以下の優れた効果を得ることができる。一般的に偏波面保持ファイバPMFをf軸とs軸にそれぞれ直線偏光光束を全般させる場合、偏波面保持ファイバPMFに曲げや振動等の外乱を印加すると、f軸とs軸の光学的光路長(実際の長さを屈折率で割った値)が不安定に変動する。このため、伝送後の光束の周波数ν1、ν2は、入射時の周波数からずれてしまう。
【0046】
しかし、図3のエンコーダに光ファイバを適用する場合、偏波面保持ファイバPMFを往復でかつ2光束の偏波面を互いに入れ替えて伝送している。このため、光学的光路長が等しくなり外乱による誤差は発生しない。すなわち、偏波面保持ファイバPMFへの揺動等の外乱印加があっても測定誤差にならない。また、2周波光源部の周波数が回転ディスクの要因で変動した場合でも影響を受けない。
【0047】
このように本実施例によれば、高精度で安価なヘテロダイン干渉変位計測装置を提供することができる。
【実施例4】
【0048】
次に、本発明の実施例4におけるヘテロダイン干渉変位計測装置について説明する。図4は、本実施例におけるヘテロダイン干渉変位計測装置の構成図である。本実施例は、光ファイバ伝送の方式と格子干渉型エンコーダ光学系の構成を変更したものである。すなわち、2周波光源部LS4からの光束を格子干渉型エンコーダ光学系GI4に入射させる際に、往路は2周波光束として偏波面保持ファイバPMFで伝送させ、復路は2つの干渉光束として伝送させる。
【0049】
レーザ光源LASERからの45°偏光方位の直線偏光の平行光束を、回転ディスクDISKの放射状の回折格子GT0の点P1に照明し、2つの回折光(周波数ν1、ν2)を発生させる。周波数ν1の+1次回折光は−22.5度光学軸をずらした1/2波長板HWP1を透過させて、0度方位の直線偏光光束に変換し、平行ミラーM01にて反射される。一方、周波数ν2の−1次回折光は+22.5度光学軸をずらした1/2波長板HWP2を透過させて、90度方位の直線偏光光束に変換し、平行ミラーM02にて反射される。これらの回折光は、最終的に互いに直交した直線偏光光束の状態になって偏光ビームスプリッタPBS0に入射する。
【0050】
偏光ビームスプリッタPBS0では、90度方位の直線偏光は透過し、0度方位の直線偏光光束は反射する。このため、同軸に合成される光束を100%上側から射出させることができる。一旦これらの光束は非偏光ビームスプリッタNBS0を透過する。反射光束は45°方位の偏光板POL00を透過し、受光素子PD0にて基準周波数信号として検出可能であるが、必ずしも使用しなくても良い。
【0051】
同軸の2周波光束(周波数ν1、ν2)は、実施例3と同様に、偏波面保持ファイバPMFを経由してスケール上の回折格子GTに照明される。その際、偏波面保持ファイバPMFのf軸に周波数ν1の光束の直線偏光光束が合わされており、偏波面保持ファイバPMFのs軸に周波数ν2の光束の直線偏光光束が合わされている。
【0052】
回折格子GTにて発生した+1次回折光(周波数ν1(+1)、ν2(+1))は、キャッツアイCEY1にて反射され、元の光路に戻される。一方、回折格子GTにて発生した−1次回折光(周波数ν1(−1)、ν2(−1))は、1/4波長板QWPを透過後、キャッツアイCEY2にて反射され、元の光路を戻される。−1次回折光は、復路でも1/4波長板QWPを透過するため、それぞれの光束の偏光方位が90度回転している。このため、復路で偏波面保持ファイバPMFに再入射する際に、周波数ν1(+1+1)の光束と周波数ν2(−1−1)の光束は、偏波面保持ファイバPMFのf軸に合わされて伝送される。また、周波数ν1(−1−1)の光束と周波数ν2(+1+1)の光束は、偏波面保持ファイバPMFのs軸に合わされて伝送される。このとき、これらの光束は、f軸、s軸のそれぞれで干渉光として強度変調された状態で伝送される。
【0053】
これらの2光束は、偏波面保持ファイバPMF内では独立に伝送され外部に射出し、非偏光ビームスプリッタNBS0にて反射され、更に偏光ビームスプリッタPBS0にて偏光成分ごとに分割される。偏光ビームスプリッタPBS0の透過光は、偏波面保持ファイバPMFのs軸を伝送してきた干渉信号である。この干渉信号の周波数は、ν1(−1−1)−ν2(+1+1)で表される第一のヘテロダイン信号である。第一のヘテロダイン信号は、受光素子PD1から出力され、スケールが図4中の矢印方向(上方向)に移動したときその周波数は下がる。
【0054】
一方、偏光ビームスプリッタPBS0の反射光は、偏波面保持ファイバPMFのf軸を伝送してきた干渉信号である。この干渉信号の周波数は、ν1(+1+1)−ν2(−1−1)で表される第二のヘテロダイン信号である。第二のヘテロダイン信号は、受光素子PD2から出力され、スケールが図4中の矢印方向(上方向)に移動したときその周波数は上昇する。
【0055】
このように、受光素子PD1、PD2の出力信号は、仮想としてのν1−ν2の基準信号周波数を中心に逆向きに周波数(または位相)がずれた信号であると解釈できる。このため、これら2つのヘテロダイン信号の差分を取り位相変化に変換すれば、変位量と方位の情報が得られる。スケール上の回折格子GTが図4中の矢印方向(上方向)へ1本分移動すれば、位相差が16πだけ変化するため、8周期分の正弦波信号が発生する。このとき、位相ずれの符号が求まり、内挿も可能であることは、ヘテロダインでない通常(ホモダイン)の格子干渉型エンコーダの場合と同じである。また、受光素子PD0で得られた基準周波数信号は、図4の実施例では特に使用されない。
【0056】
さらに、本実施例は、実施例3と比較して、以下の優れた効果が得られる。一般的に偏波面保持ファイバPMFをf軸とs軸にそれぞれ直線偏光光束を全般させる場合、偏波面保持ファイバPMFに曲げや振動等の外乱を印加すると、f軸とs軸の光学的光路長(実際の長さを屈折率で割った値)が不安定に変動する。このため、伝送後の光束の周波数ν1、ν2は、入射時の周波数からずれる。よって、図1のエンコーダに光ファイバを適用する場合には偏波面保持ファイバPMFに外乱を印加しないような工夫を必要とする。
【0057】
本実施例では、偏波面保持ファイバPMF伝播後の2周波光束の周波数をν1’、ν2’として置き換えて考える。このとき、復路の偏波面保持ファイバPMFに再入射する時点では、2つの干渉信号成分共に周波数成分は共通のν1’−ν2’であるため、その差分は影響しない。即ち、偏波面保持ファイバPMFへの揺動等の外乱印加があっても測定誤差にはならない。2周波光源の周波数が回転ディスクの要因で変動した場合でも影響しない。
【0058】
このように本実施例によれば、高精度で安価なヘテロダイン干渉変位計測装置を提供することができる。
【実施例5】
【0059】
次に、本発明の実施例5における2周波光源について説明する。図5は、本実施例における2周波光源部LS5の構成図である。本実施例の2周波光源部LS5は、円筒面にリニア格子を記録したものを回転させて±1次回折させることで周波数ずれを付与する。
【0060】
レーザ光源LASERからの平行光束を回転円筒体の側面の回折格子GT1(反射リニア回折格子部)に照明し、2つの回折光を発生させる。+1次回折光は平行ミラーM1にて反射され、22.5度光学軸をずらした1/2波長板HWP1を透過させて、0度方位の直線偏光光束とする。一方、−1次回折光は平行ミラーM2にて反射され、−22.5度光学軸をずらした1/2波長板HWP2を透過させて、90度方位の直線偏光光束とする。最終的に、これらの回折光は、偏光ビームスプリッタPBS0にて2つの同軸に合成された光束として射出する。なお、射出光束は円筒面反射による歪みがあるため、光ファイバに入射させて使用する場合には、トーリックレンズ等を用いて補正することが望ましい。
【0061】
なお、実施例1〜4のように、放射状の回折格子GT0をディスク上に記録したものを採用し、放射格子のパターン中心と回転中心にずれ(偏芯)がある状態で回転させた場合、光束を照射している箇所の格子ピッチが変動する。このとき、回折光の射出方位が変動するため、偏芯を小さくする必要がある。しかし本実施例のように、円筒面上の回折格子GT1を使用すれば、回転中心と円筒中心にずれ(偏芯)があっても、格子ピッチは変動しないため、安定した光学系を構成することができる。
【実施例6】
【0062】
次に、本発明の実施例6における2周波光源について説明する。図6は、本実施例における2周波光源部LS6の構成図である。本実施例の2周波光源部LS6は、円筒面にリニア格子を記録したものを回転させて往復で±1次回折させることで周波数ずれを付与する。
【0063】
レーザ光源LASERからの平行光束を非偏光ビームスプリッタNBS0を透過させ、回転ディスクの回折格子GT1(反射回折格子部)に照明させる。そして、回折格子GT1にて分離回折した±1次回折光を、キャッツアイCEY01、CEY02にて反射させ元の光路を戻し、再度回転ディスクの回折格子GT1に照明する。更に、回折格子GT1にて合波回折した±1次回折光を元の光源側に導光し、±1次回折光を非偏光ビームスプリッタNBS0を用いて外部に取り出す。本実施例では、回転ディスクによる回折が2回行われる。このため、2周波の周波数差を2倍にすることができ、光学系全体も小さく構成できるが、光量損失が増加してしまうため、目的に応じて使用することが望ましい。
【0064】
また、上記各実施例に関しては、以下の変形が可能である。回転ディスク、円筒状回折格子以外に直線状の回折格子を往復運動させる方式で2周波光源を実現してもよい。また、回折格子から±1次回折光を得て1つの同軸光束に合成する光学系として別の構成を採用することや、回折次数として±1次以外の回折光を用いることもできる。また、元の光源としてレーザ以外にスーパールミネセントダイオード(SLD)や発光ダイオード(LED)を使用してもよい。また、格子干渉計エンコーダ光学系として別の光学構成を採用することもできる。また、2周波光源と格子干渉型エンコーダ光学系の中継に光ファイバを用いないように構成してもよい。また、格子干渉型エンコーダ光学系として、リニアエンコーダではなくロータリーエンコーダを用いることもできる。また、格子干渉型エンコーダを他の干渉計測装置(光路長差が零近傍である干渉光学系)に適用してもよい。
【0065】
上記各実施例によれば、高精度で安価なヘテロダイン干渉変位計測装置を提供することができる。また、光源にスーパールミネッセンスダイオード(SLD)を用いて格子干渉型エンコーダや微小変位干渉測長装置を構成することで、ゴースト光による干渉信号の劣化(歪の増大)を抑制することが可能になり、高精度な計測が可能になる。
【0066】
上記各実施例のヘテロダイン干渉変位計測装置(2周波光源)は、ナノメートル以下の機械ステージの変位を測定する装置(産業用機械ステージ、高精度形状測定装置、顕微鏡ステージ、高精度機械加工装置、半導体露光装置、半導体製造装置等)に利用可能である。また、2周波光源は、マイケルソン干渉計やマッハツェンダー干渉計と組み合わせて、微小変位や屈折率測定等に利用可能である。
【0067】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
LASER:レーザ光源
GT、GT0、GT1:回折格子
PBS0:偏光ビームスプリッタ
GI1、GI2、GI3、GI4:格子干渉型エンコーダ光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を射出する光源と、
一定速度で回転可能な回転部材に形成された回折格子と、
前記光源から前記回折格子に照射することで得られる互いに異なる次数を有し、かつ、第一の周波数差を有する2つの回折光束を生成する光学系と、
前記2つの回折光束を同一方向に同軸、かつ、偏光面が互いに直交した合成光束を生成する偏光ビームスプリッタと、
前記合成光束を第一の周波数差のままで干渉させて第一の周波数差信号を生成する第一の干渉光学系と、
前記合成光束を入射させることで、被計測物の変位量に応じて第二の周波数差を有する2つの光束に変換し、該2つの光束を干渉させて第二の周波数差信号を生成する第二の干渉光学系と、
前記第一の周波数差信号と前記第二の周波数差信号との差の情報から前記被計測物の前記変位量に関する情報を算出し出力する手段と、
を有することを特徴とするヘテロダイン干渉変位計測装置。
【請求項2】
光束を射出する光源と、
一定速度で回転可能な回転部材に形成された回折格子と、
前記光源から前記回折格子に照射することで得られる互いに異なる次数を有し、かつ、第一の周波数差を有する2つの回折光束を生成する光学系と、
前記2つの回折光束を同一方向に同軸、かつ、偏光面が互いに直交した合成光束を生成する偏光ビームスプリッタと、
前記合成光束を入射させることで、被計測物の変位量に応じて第二の周波数差を有する2つの第一光束に変換し、該第一光束を干渉させて第二の周波数差信号を生成するとともに、第三の周波数差を有する2つの第二光束に変換し、該第二光束を干渉させて第三の周波数差信号を生成する第二の干渉光学系と、
前記第二の周波数差信号と前記第三の周波数差信号との差の情報から前記被計測物の前記変位量に関する情報を算出し出力する手段と、
を有することを特徴とするヘテロダイン干渉変位計測装置。
【請求項3】
前記第二の干渉光学系は、格子干渉型エンコーダ光学系であることを特徴とする請求項1または2に記載のヘテロダイン干渉変位計測装置。
【請求項4】
前記第二の干渉光学系は、マイケルソン干渉計であることを特徴とする請求項1または2に記載のヘテロダイン干渉変位計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−220890(P2011−220890A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91515(P2010−91515)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】