説明

ベバシズマブ併用治療のための腫瘍組織に基づくバイオマーカー

本発明は、胃腸癌、特に転移性結腸直腸癌(mCRC)と診断された患者におけるコントロールレベルと比較した一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定することにより、化学療法レジメンを併用したベバシズマブ(Avastin(登録商標))を用いた治療によって、胃腸癌、特に転移性結腸直腸癌(mCRC)を患う患者の無進行生存を改善する方法を提供する。本発明は、胃腸癌、特に転移性結腸直腸癌(mCRC)と診断された患者におけるコントロールレベルと比較した一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定することにより、化学療法レジメンを併用したベバシズマブ(Avastin(登録商標))に対する患者の感受性又は応答性を評価する方法を更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃腸癌、特に転移性結腸直腸癌(mCRC)と診断された患者におけるコントロールレベルと比較した一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定することにより、化学療法レジメンを併用したベバシズマブ(Avastin(登録商標))を用いた治療によって胃腸癌、特に転移性結腸直腸癌(mCRC)を患う患者の無進行生存を改善する方法を提供する。本発明は、胃腸癌、特に転移性結腸直腸癌(mCRC)と診断された患者におけるコントロールレベルと比較した一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定することにより、化学療法レジメンを併用したベバシズマブ(Avastin(登録商標))に対する患者の感受性又は応答性を評価する方法を更に提供する。
【0002】
このように、本発明は、オキサリプラチンベースの化学療法等の化学療法レジメンを併用した、血管新生阻害剤、例えばベバシズマブ(Avastin(登録商標))に対する感受性又は応答性に相関する、胃腸癌、特に転移性結腸直腸癌(mCRC)のバイオマーカーの同定及び選択に関する。この点において、本発明は、標準的化学療法への、血管新生阻害剤、例えばベバシズマブ(Avastin(登録商標))の追加に対し感受性又は応答性である患者を識別するための、胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において確立されたコントロールに対する、一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの腫瘍特異的発現プロファイル(一又は複数)の使用に関する。本発明は、胃腸癌、特に転移性結腸直腸癌と診断された患者におけるコントロールに対する一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの(一又は複数の)腫瘍特異的発現レベルを決定することにより、標準的化学療法、例えばオキサリプラチンベースの化学療法への、血管新生阻害剤、例えばベバシズマブ(Avastin(登録商標))の追加によって胃腸癌、特にmCRCを患う患者の無進行生存を改善する方法に更に関する。ここに記載の方法による一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルの決定の代わりとして又は加えて、胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において確立されたコントロールレベル(一又は複数)と比較した腫瘍サンプルにおける血管数は、標準的化学療法への血管新生阻害剤、例えばベバシズマブ(Avastin(登録商標))の追加に対して感受性又は応答性である患者の指標としてバイオマーカーとして決定されることができる。発明はまた、本発明の方法により決定され定められる、血管新生阻害剤、特にベバシズマブ(Avastin(登録商標))に対し感受性又は応答性である患者の識別のためのキット及び組成物を提供する。
【0003】
血管新生は癌の発生に必要であり、原発腫瘍サイズ及び増殖を制御するだけでなく、浸潤及び転移能にも影響する。従って、血管新生プロセスを媒介する機構が、標的化抗癌療法の潜在標的として調査されてきた。血管新生モジュレーターの研究初期に、血管内皮増殖因子(VEGF)シグナル伝達経路が多くの癌タイプにおいて血管新生活性を選択的に制御することが発見され、様々なポイントでこの経路を調節するために多くの療法が開発された。これらの療法は、とりわけ、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ及びバタラニブを含む。臨床における血管新生阻害剤の使用は成功を示したが、全ての患者が血管新生阻害剤療法に応答する又は完全に応答しないわけではない。このような不完全な応答の根底にある機構は未知である。そのために、抗血管新生癌療法に感受性又は応答性である患者サブグループの識別に対するニーズが増加している。
【0004】
多くの血管新生阻害剤が知られているが、最も顕著な血管新生阻害剤はベバシズマブ(Avastin(登録商標))である。ベバシズマブは、VEGF(血管内皮増殖因子)に特異的に結合し、VEGFの生物学的効果を遮断する組換えヒト化モノクローナルIgG1抗体である。VEGFは、腫瘍血管新生−腫瘍増殖及び転移、すなわち体の他の部分への播種に必須なプロセス−の主要推進力である。Avastin(登録商標)は、毎年合計で250万を超える死をもたらす4つの一般的な癌のタイプ:結腸直腸癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)及び腎癌の進行期の治療のためにヨーロッパにおいて承認されている。米国では、Avastin(登録商標)はFDAにより承認された最初の抗血管新生療法であり、現在5つの腫瘍タイプ:結腸直腸癌、非小細胞肺癌、乳癌、脳(グリオブラストーマ)及び腎臓(腎細胞癌)の治療のために承認されている。これまで50万を超す患者がアバスチンで治療されており、450を超す臨床治験を含む総合的臨床プログラムが、異なる条件(例えば進行期又は早期疾患)における多数の癌タイプ(結腸直腸、胸、非小細胞肺、脳、胃、卵巣及び前立腺)の治療におけるアバスチンの更なる使用を調査している。重要なことには、Avastin(登録商標)は広範囲の化学療法及び他の抗癌治療と併用した場合に効果を示し、併用療法としての有望性を示した。第III相試験が公開されており、ベバシズマブの標準的化学療法との併用の有益な効果を示している(例えば、Saltz等, 2008, J. Clin. Oncol., 26:2013-2019; Yang等, 2008, Clin. Cancer Res., 14:5893-5899; Hurwitz等, 2004, N. Engl. J. Med., 350:2335-2342を参照のこと)。しかしながら、血管新生阻害剤の過去の研究において見られるように、これらの第III相試験のいくつかは、一部の患者が彼らの化学療法レジメンへのベバシズマブ(Avastin(登録商標))の追加に対し不完全な応答を経験することを示した。
【0005】
これにより、血管新生阻害剤、特にベバシズマブ(Avastin(登録商標))を含んでなる併用療法に応答する又は応答しそうであるそれらの患者を決定する方法への需要がある。このように、本発明の基礎をなす技術的問題は、化学療法レジメン、例えばオキサリプラチンベース阻害剤への血管新生阻害剤、特にベバシズマブ(Avastin(登録商標))の追加から利益を得うる、胃腸癌、特にmCRCを患っている又は患い易い患者(一又は複数)の識別のための方法および手段を提供する。
【0006】
技術的問題は、請求の範囲に特徴付けられる実施態様の提供によって解消される。
【0007】
本発明は従って、胃腸癌、特にmCRCを患っている患者の化学療法レジメンの治療効果を、前記化学療法レジメンにベバシズマブを加えることによって改善する方法であって:(a)一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定する工程;及び(b)胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較して増加レベルのVEGFA、及び/又は低下レベルのHER2及び/又はニューロピリンを有する患者に、化学療法レジメンと併用してベバシズマブを投与する工程を含んでなる前記方法を提供する。
【0008】
本発明は、胃腸癌、特にmCRCを患っている患者の化学療法レジメンの治療効果を、化学療法レジメンにベバシズマブを加えることによって改善する方法であって:(a)前記患者からサンプルを得る工程;(b)一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定する工程;及び(c)胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較して増加レベルのVEGFA、及び/又は低下レベルのHER2及び/又はニューロピリンを有する患者に、化学療法レジメンと併用してベバシズマブを投与する工程を含んでなる前記方法に関する。
【0009】
本発明は従って、胃腸癌、特にmCRCを患っている患者の無進行生存を、化学療法レジメンにベバシズマブを加えることによって改善する方法であって:(a)一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定する工程;及び(b)胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較して増加レベルのVEGFA、及び/又は低下レベルのHER2及び/又はニューロピリンを有する患者に、化学療法レジメンと併用してベバシズマブを投与する工程を含んでなる前記方法を提供する。
【0010】
本発明は従って、胃腸癌、特にmCRCを患っている患者の無進行生存を、化学療法レジメンにベバシズマブを加えることによって改善する方法であって:(a)前記患者からサンプルを得る工程;(b)一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定する工程;及び(c)胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較して増加レベルのVEGFA、及び/又は低下レベルのHER2及び/又はニューロピリンを有する患者に、化学療法レジメンと併用してベバシズマブを投与する工程を含んでなる前記方法を提供する。
【0011】
別の実施態様では、本発明は、化学療法レジメンへのベバシズマブの追加に応答性又は感受性である患者の識別のためのインビトロ法であって:(a)胃腸癌、特にmCRCを患っていると疑われる又は胃腸癌を患い易い患者からサンプルを得る工程;及び(b)一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定する工程を含んでなり、胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較して増加レベルのVEGFA、及び/又は低下レベルのHER2及び/又はニューロピリンが、前記レジメンへのベバシズマブの追加に対する患者の感受性の指標である前記方法に関する。
【0012】
ここに記載の方法による一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルの決定の代わりとして又は加えて、胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において確立されたコントロールレベル(一又は複数)と比較した腫瘍サンプルにおける血管数は、標準的化学療法への血管新生阻害剤、例えばベバシズマブの追加に対して感受性又は応答性である患者の指標としてバイオマーカーとして決定されることができる。従って、本発明の方法は、前記サンプルにおける血管数の決定を包含し、かかる血管数の決定は、例えば、生検組織及び/又は切除組織等の固形組織サンプルにおいて、当業者による識別により可能又は可能と予想される。血管数の決定は、ここに記載されている又はこのような方法の技術分野において知られている何れかの方法によって実施されうる。血管数の決定のための例示的な方法は、一又は複数の内皮細胞マーカーに特異的な一又は複数の抗体を使用することによる内皮細胞のマーカーの検出である。好ましい実施態様では、内皮細胞のバイオマーカーは腫瘍細胞によって発現されない。血管構造は内皮細胞から形成されるため、一又は複数の内皮細胞マーカーは、血管構造を腫瘍(細胞)から区別し、血管数を容易に決定させる。当業者、例えば病理学者は、(特に、腫瘍細胞に対する)内皮細胞の検出/区別に適切な抗体、並びにこのような抗体の検出及びサンプルのその後の分析の方法双方を容易に決定することができるだろう。本発明の方法によるサンプルの分析は、当技術分野で知られ、当業者、例えば病理学者によって実施れる手作業であり得、又は例えば生検又は切除組織における血管数の決定又は他の分析のために、病理画像の処理及び分析のために設計された市販のソフトウェアを使用して自動でなされうる(例えば、MIRAX SCAN, Carl Zeiss AG, Jena, Germany)。
【0013】
内皮細胞マーカーとして認識される、本発明の方法による血管数の決定における使用のための例示的抗原はCD31である。抗原CD31は、例えば、製品番号M0823の下、Dako A/S (Glostrup, Denmark)から入手可能な抗体クローンJC70Aによって認識され、その使用は本発明の方法により包含される。このように、本発明は、(1)前記患者における化学療法レジメンへのレジメンの追加に対する前記患者の感受性又は応答性の指標として、又は(2)前記患者の無進行生存を改善するための方法の一部として、患者サンプルにおけるCD31の腫瘍特異的発現レベル又は発現パターンを決定することを包含し、ここで患者は胃腸癌、特にmCRCを患っている又はmCRCを患うと予想されている。
CD31は内皮細胞を染色し、より多い血管数はより多い内皮細胞数に相関するため、サンプルにおける血管数はまた腫瘍特異的CD31発現レベルに直接相関する。このように、本発明は、胃腸癌を患っている患者の無進行生存を改善する方法であって、前記患者における腫瘍特異的血管数及び/又は腫瘍特異的CD31発現レベルの決定、及び胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較して増加した血管数(及び/又は増加したCD31発現)を有する患者への、化学療法レジメンを併用したベバシズマブの投与を含んでなる方法を包含する。同様に本発明は、化学療法レジメンへのベバシズマブの追加に対し応答性又は感受性である患者の識別のためのインビトロ法であって、前記患者における腫瘍特異的血管数及び/又は腫瘍特異的CD31発現レベルの決定を含んでなり、これにより胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較した前記患者からの腫瘍サンプルにおける増加した血管数(及び/又は増加したCD31発現)が、前記レジメンへのベバシズマブの追加に対する患者の感受性の指標である方法を包含する。
【0014】
このように本発明は、驚くべきことに、胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較した、任意の患者における一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの腫瘍特異的発現レベルが、化学療法レジメンを併用して血管新生阻害剤を投与されたそれらの患者における治療効果と相関することが示されたことにおいて、示された技術的問題を解決する。すなわち、VEGFA、HER2及び/又はニューロピリンの腫瘍特異的発現レベルにおける変動が驚くことに、オキサリプラチンベースの化学療法レジメンへのベバシズマブの追加への応答による胃腸癌患者の改善無進行生存に対するマーカー/予測因子として同定された。化学療法レジメンへのベバシズマブ(Avastin(登録商標))の追加に応答性又は感受性を示す患者が、転移性胃腸癌と診断された患者から得られたサンプルにおいて確立されたコントロールレベルと比較して、VEGFAの増加発現、ニューロピリンの低下発現、及びHER2の低下発現の一又は複数を有することが明らかにされた。更に、ここに記載される一又は複数のVEGFA、HER2及び/又はニューロピリンの変化した発現に加え、胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において確立されたコントロールレベルと比較して、任意の患者の腫瘍特異的血管数(一又は複数の内皮細胞マーカー、例えばCD31の腫瘍特異的発現レベルと相関する)の増加が驚くことに、(1)改善された無進行生存に対するマーカー/予測因子の一つとして、及び/又は(2)化学療法レジメンと併用して血管新生阻害剤を投与された胃腸癌患者における治療効果と相関するマーカー/予測因子の一つとして同定された。「マーカー」及び「予測因子」なる用語は互換的に使用可能であり、ここに記載の一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを指す。一又は複数のVEGFA、HER2及び/又はニューロピリンの発現レベルに加えて、本発明はまた、ここに記載の方法による、内皮細胞マーカー、例えばCD31の腫瘍特異的血管数及び/又は腫瘍特異的発現レベルを指すための、「マーカー」及び「予測因子」なる用語の使用を包含する。発明はまた、何れか2つ以上のVEGFA、HER2及びニューロピリンの腫瘍特異的発現レベル、及び腫瘍特異的血管数の組合せを意味するための、「マーカー」及び「予測因子」なる用語の使用を包含する。
【0015】
本発明の内容において、「VEGFA」は血管内皮増殖因子タンパク質Aを指し、図6に示される配列番号:1によって例示される。「VEGFA」なる用語は、配列番号:1のアミノ酸配列を持つタンパク質並びにその相同体及びアイソフォームを包含する。「VEGFA」なる用語はまた、既知のアイソフォーム、例えばVEGFAのスプライスアイソフォーム、例えばVEGF121、VEGF145、VEGF165、VEGF189及びVEGF206、並びにその変異体、相同体及びアイソフォームを包含する。本発明の内容において、「VEGFA」なる用語はまた、配列番号:1のアミノ酸配列、又はその変異体及び/又は相同体のアミノ酸配列、並びに該配列の断片に少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の相同性を有するタンパク質を包含し、ただし、変異体タンパク質(アイソフォームを含む)、相同体タンパク質及び/又は断片は、一又は複数のVEGFA特異的抗体、Abcam, Inc (Cambridge, Massachusetts, U.S.A.)から入手可能な抗体クローンSP28等により認識される。
【0016】
本発明の内容において、「HER2」は、c-erbB2、ErbB2又はNeuとしても知られる、上皮増殖因子受容体のファミリーに属する、図7に示されるアミノ酸配列配列番号:2によって例示されるI型膜貫通タンパク質を意味する。本発明の内容において、「HER2」なる用語はまた、スプライスアイソフォームを含むHER2の相同体、変異体及びアイソフォームを包含する。「HER2」なる用語は、配列番号:2のアミノ酸配列、又は一又は複数のHER2相同体、変異体及びアイソフォームの配列、並びに該配列の断片に少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の相同性を有するタンパク質を包含し、ただし、変異体タンパク質(アイソフォームを含む)、相同体タンパク質及び/又は断片は、一又は複数のHER2特異的抗体、Dako A/S (Glostrup, Denmark)から入手可能なHerceptestTMとして提供されるものなどにより認識される。前記HerceptestTMにおけるHER2特異的抗体は、ヒトHER2タンパク質の合成C末端細胞質内断片(キーホールリンペットヘモシアニンにカップリングされた免疫原)に対して向けられたアフィニティー精製ウサギ抗体である。市販されており、本発明の方法による使用に適した更なる例示的抗HER2抗体は、限定するものではないが、Ventana Medical Systems S.A. (Illkirch, France)から入手可能なクローン4B5;Novocastra/Leica GmbH (Wetzler, Germany)から入手可能な一又は複数のクローンCB11、5A2、10A7、及びCBE1;Thermo Fisher Scientific (Fremont, CA, USA)から入手可能なクローンSP3及びInvitrogenTM (Carslbad, CA, USA)から入手可能なクローンTAB250を含む。
【0017】
本発明の内容において、「ニューロピリン」は、NRP-1としても知られ、図8に示されるアミノ酸配列配列番号:3により例示される、I型膜タンパク質である、ニューロピリン1タンパク質を意味する。ここで使用される場合、ニューロピリンはまたニューロピリン2/NRP-2を意味し、当技術分野で知られるように、NRP-1とおよそ44%の相同性を共有する。本発明の内容において、「ニューロピリン」なる用語はまた、NRP-1及び/又はNRP-2の相同体、変異体及びアイソフォームを包含する。「ニューロピリン」なる用語は、配列番号:1のアミノ酸配列、又は一又は複数のNRP-1及び/又はNRP-2相同体、変異体及びスプライスアイソフォームを含むアイソフォームの配列、並びに該配列の断片に少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%の相同性を有するタンパク質を包含し、ただし、変異体タンパク質(アイソフォームを含む)、相同体タンパク質及び/又は断片は、一又は複数のNRP-1及び/又はNRP-2特異的抗体、R&D Systems, Inc. (Minneapolis, Minnesota, U.S.A.)から入手可能なクローン446915として提供されるものなどにより認識される。
【0018】
一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの腫瘍特異的発現レベルの決定の代わりとして又は加えて、本発明はまた、ここに記載の方法における使用のためのバイオマーカーの一つとして血管数の決定を包含する。当技術分野で知られ、またここに記載されるように、患者のサンプル、例えば腫瘍組織を含んでなるサンプル内の血管数は、例えば、一又は複数の内皮細胞マーカー、例えばCD31を検出する免疫組織化学法によって評価されうる。CD31は、腫瘍サンプルにおける血管数の決定に適した内皮細胞マーカーとして認識されており、特異的抗体、製品番号M0823の下、クローンJC70AとしてDako A/S (Glostrup, Denmark)から入手可能な抗CD31抗体等を使用して一般的にプローブされる。一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの腫瘍特異的発現レベルの決定の代わりとして又は加えて、本発明は、ここに記載の方法による血管数の決定、内皮細胞の検出及び/又は内皮細胞マーカーの発現レベルの決定のための、Dako A/S抗体クローンJC70A(製品番号M0823)の使用を更に包含する。
【0019】
このように、本発明は、限定するものではないがここに記載されるアミノ酸配列を含む、タンパク質の発現レベルの決定を包含する。この内容において、本発明は、一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの相同体、変異体及びアイソフォームの検出を包含し、前記アイソフォーム又は変異体は、特に対立遺伝子変異体又はスプライスバリアントを含む。また想定されるのは、例えば、配列番号:1、配列番号:2又は配列番号:3又はその断片のアミノ酸配列に少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する、ここに記載されるVEGFA、HER2及びニューロピリンの一又は複数に相同なタンパク質、又はその断片の検出である。あるいは又は加えて、本発明は、配列番号:1、配列番号:2又は配列番号:3をコードする核酸配列又はその断片、変異体又はアイソフォームに少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である、核酸配列にコードされるタンパク質又はその断片の発現レベルの検出を包含する。この内容において、「変異体」なる用語は、VEGFA、HER2、及び/又はニューロピリンアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列をコードする核酸配列が、変異、例えば欠失、付加、置換、反転等により、配列番号:1、配列番号:2又は配列番号:3により識別される、及び/又は上記GenBank受入番号下で入手可能な固有の配列と異なることを意味する。更に、「相同体」なる用語は、配列番号:1、配列番号:2又は配列番号:3に示されるポリペプチドの一又は複数又はその断片(一又は複数)に、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する分子を指す。
【0020】
本発明は更に、患者サンプルにおける血管数の決定を包含し、その数は、当技術分野で知られる内皮細胞の一又は複数のマーカーの腫瘍特異的発現、例えばCD31の腫瘍特異的発現レベルと相関する。この内容において、本発明は、一又は複数の内皮細胞マーカーの相同体、変異体及びアイソフォームの検出を包含し、とりわけ内皮細胞マーカーの対立遺伝子変異体又はスプライスバリアントを含みうる。また想定されるのは、当技術分野で知られる一又は複数の内皮細胞マーカーに相同である、例えば、内皮細胞の既知のマーカー又はその断片、例えばCD31又はその断片のアミノ酸配列に少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するタンパク質の検出である。あるいは又は加えて、本発明はまた、内皮細胞マーカー、例えばCD31又はその断片、変異体又はアイソフォームをコードする核酸配列に少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である核酸配列にコードされるタンパク質又はその断片の発現レベルの検出を包含する。
【0021】
アミノ酸又は核酸配列が、ここに記載のアミノ酸又は核酸配列にある程度の同一性を有するかどうか決定するために、当業者は、当技術分野で良く知られる手段及び方法、例えば、手作業で、又は当技術分野で知られる又はここに記載されるコンピュータープログラムの使用どちらかによるアラインメントを使用することができる。
【0022】
本発明によると、2つ以上のアミノ酸又は核酸に関することにおいて、「同一」又は「パーセント同一性」なる用語は、当分野で知られる配列比較アルゴリズムを使用して又は手作業アラインメント及び目視調査により、比較のウィンドウにおける又は指定領域における最大一致に対して配列比較される場合、同じ、又は同じアミノ酸残基又はヌクレオチドの特定パーセンテージ(例えば配列番号:1、配列番号:2又は配列番号:3のアミノ酸配列、又は内皮細胞の既知のマーカー、例えばCD31のアミノ酸配列と例えば60%又は65%の同一性、好ましくは70−95%の同一性、よい好ましくは少なくとも95%の同一性)を有する2つ以上の配列又はサブ配列を指す。例えば60%〜95%又はそれ以上の配列同一性を有する配列は実質的に同一であると考えられる。このような定義はまた、試験配列の補体にも適用される。好ましくは、記載した同一性は、長さにして少なくとも約15〜25アミノ酸又はヌクレオチドの領域にわたって、より好ましくは長さにして約50〜100アミノ酸又はヌクレオチドの領域にわたって存在する。当技術分野の技術者は、例えば、当技術分野でしられる、CLUSTALWコンピュータープログラム(Thompson Nucl. Acids Res. 2 (1994), 4673-4680)又はFASTDB (Brutlag Comp. App. Biosci. 6 (1990), 237-245)に基づくもの等のアルゴリズムを使用してどのようにして配列間(between/among)のパーセント同一性を決定するか分かるだろう。
【0023】
FASTDBアルゴリズムは、典型的には、配列内の内部ノンマッチング欠失又は付加、すなわちギャップ、をその計算の際に考慮しないが、これを手作業で補正して%同一性の過剰推定を避けることができる。しかし、CLUSTALW、は、その同一性計算の際に配列ギャップを考慮に入れる。当業者は、BLAST (Basic Local Alignment Search Tool)及びBLAST 2.0アルゴリズム(Altschul, 1997, Nucl. Acids Res. 25:3389-3402; Altschul, 1993 J. Mol. Evol. 36:290-300; Altschul, 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410)も利用できる。核酸配列のためのBLASTINプログラムは、デフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=4、及び両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列のために、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3のワード長(W)、10の期待値(E)を使用する。BLOSUM62スコア行列(Henikoff (1989) PNAS 89:10915)は、50のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、及び両鎖の比較を用いる。
【0024】
上で論じたようなBLASTアルゴリズムは、配列類似性を判定するためにアミノ及びヌクレオチド配列のアラインメントを生成する。それらのアラインメントの局所性のため、BLASTは、正確なマッチの判定に又は類似配列の同定に特に有用である。BLASTアルゴリズムアウトプットの基本単位は、ハイスコアセグメント対(High-scoring Segment Pair)(HSP)である。HSPは、等しいが任意の長さの2つの配列フラグメントからなり、それらのアラインメントは、局所的に最大になり、そのアラインメントスコアは、使用者によって設定される閾値又はカット・オフ・スコアを満たす、又は超える。BLASTアプローチは、問い合わせ配列とデータベース配列の間のHSPを捜して、見つかった任意のマッチの統計的有意性を評価する、及び有意性の使用者選択閾値を満たすマッチだけを報告するアプローチである。パラメータEは、報告するデータベース配列マッチについての統計的に有意な閾値を確立する。Eは、全データベース検索のコンテキストの中でHSP(又はHSPのセット)が偶然起こる予想頻度の上限と解釈される。マッチがEを満たす任意のデータベース配列がプログラムアウトプットで報告される。
【0025】
BLASTを用いる類似のコンピュータ技術を用いて、GenBank又はEMBLなどのタンパク質又はヌクレオチドデータベースにおいて同一又は関連分子を検索することができる。この分析は、多層膜に基づくハイブリダイゼーションよりはるかに速い。加えて、コンピューター検索の感度を調節して、任意の特定のマッチが完全マッチとして類別されるか、又は類似マッチとして類別されるかを判定することができる。この検索の基礎は、
配列同一性(%)x 最大BLASTスコア(%)
100
として定義される生成スコアであり、2配列間の類似度と配列マッチ長の両方を考慮に入れる。例えば、40の生成スコアの場合、そのマッチは1〜2%の誤差の範囲内で完全マッチであるだろう;70で、そのマッチは、完全マッチであろう。類似分子は、通常、15と40の間の生成スコアを示すものを選択することによって同定されるが、より低いスコアによって関連分子が同定されることがある。配列アラインメントを生成することができるプログラムについてのもう1つの例は、当分野において公知であるような、CLUSTALWコンピュータプログラム(Thompson (1994) Nucl. Acids Res. 2:4673-4680)又はFASTDB(Brutlag (1990) Comp. App. Biosci. 6:237-245)である。
【0026】
VEGFA、HER2及び/又はニューロピリンの腫瘍特異的発現レベルは、化学療法レジメンへのベバシズマブの追加に対する患者の感受性の予測のために、個々のマーカーとして別個に、又は発現プロファイルとして2つ以上のグループにおいて考えられうる。従って、本発明の方法は、一又は複数のマーカーの発現レベルに基づく発現プロファイルの決定を包含する。ここに記載の方法による一又は複数のVEFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルの決定の代わりとして又は加えて、胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において確立されたコントロールレベル(一又は複数)と比較した、腫瘍サンプルにおける血管数はまた、標準的化学療法への血管新生阻害剤、例えばベバシズマブの追加に対して感受性又は応答性である患者の指標として一又は複数のバイオマーカーとして使用可能である。
【0027】
本発明によると、驚くべきことに、より高いベバシズマブ治療効果が、腫瘍細胞における高CD31発現(高血管数)、より高いVEGFA発現、より低いニューロピリン発現及びより低いHER2発現に関連することがNO1966集団において発見された。
【0028】
一又は複数のマーカーVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルは、患者サンプルにおける特異的タンパク質レベルの決定に適した当技術分野で知られる何れかの方法によって評価され得、好ましくは、一又は複数のVEGFA、HER2、ニューロピリン及び/又はCD31に特異的な抗体を用いる免疫組織化学(「IHC」)によって決定される。このような方法は当技術分野においてよく知られ日常的に実施されており、対応する市販の抗体及び/又はキットは容易に入手される。例えば、VEGFA、HER2、ニューロピリン及びCD31のための市販されている抗体/試験キットは、Abcam, Inc (Cambridge, Massachusetts, U.S.A.)からクローンSP28として、Dako A/S (Glostrup, Denmark)からHerceptestTMとして、R&D Systems, Inc. (Minneapolis, Minnesota, U.S.A.)からクローン446915として、Dako A/S (Glostrup, Denmark)からクローンJC70Aとしてそれぞれ得られることができる。好ましくは、本発明のマーカー/指標タンパク質の発現レベルは、抗体又はキット製造者が推奨する試薬及び/又はプロトコルを使用して評価される。当業者はまた、IHC法による一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルの決定に関する更なる手段に気付くだろう。このように、本発明の一又は複数のマーカー/指標の発現レベルは、過度の負担なく当業者によって日常的に、また再現性よく決定できる。しかしながら、正確で再現性のある結果を確実にするために、本発明はまた、試験手順の妥当性を確実にすることができる専門研究所での患者サンプルの試験を包含する。
【0029】
好ましくは、一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルは、癌細胞を有する又は有すると疑われる生体サンプルにおいて評価される。サンプルは、胃腸癌、特にmCRCを患っている、患っていると疑われる又はと診断された患者から得られた胃腸癌組織切除片、胃腸癌組織生検又は転移性病変でありうる。好ましくは、サンプルは結腸直腸組織のサンプル、結腸直腸腫瘍の切除片又は生検片、分かっている又は疑われる転移性胃腸癌病変又は切片、又は循環癌細胞、例えば胃腸癌細胞を有すると分かっている又は疑われる血液サンプルである。サンプルは癌細胞、すなわち腫瘍細胞、及び非癌性細胞双方を有し得、好ましい実施態様では、癌性及び非癌性細胞双方を有する。サンプルにおける血管数の決定を含んでなる本発明の態様では、サンプルは、癌/腫瘍細胞及び内皮細胞である非癌性細胞双方を有する。当業者、例えば病理学者は容易に、癌細胞と非癌性、例えば内皮細胞を区別でき、並びに、例えば内皮細胞マーカー、例えばCD31の検出のためにサンプルを染色することによって、サンプル内の血管数を決定することができる。血管数の直接的な決定の代わりとして又は加えて、一又は複数の内皮細胞マーカー、例えばCD31の発現レベルがまた決定されてもよく、これは血管数に相関する。組織切除片、生検及び体液、例えば血液サンプルを含む生体サンプルを得る方法は、当技術分野でよく知られている。
【0030】
本発明の内容において、ベバシズマブは、当技術分野で知られている標準的化学療法レジメンの一部として投与される一又は複数の化学療法剤に加えて、又は併用療法又は併用治療として投与される。このような化学療法剤の例は、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、ゲムシタビン-エルロチニブ、カペシタビン及び白金ベースの化学療法剤、パクリタキセル、カルボプラチン及びオキサリプラチン等を含む。イリノテカン、5-フルオロウラシル及びロイコボリンの併用での標準的な化学療法レジメン治療の例はIFLとも称される。添付の実施例において示されるように、オキサリプラチンベースの化学療法レジメンへのベバシズマブの追加は、VEGFA、HER2、ニューロピリン、及びCD31の内一又は複数の発現レベルにより定められ選択された患者及び/又は患者集団における無進行生存の増加に作用した。
【0031】
このようにベバシズマブはオキサリプラチンベース化学療法レジメンと併用されうる。オキサリプラチンベースの化学療法レジメンの例は、FOLFOX4レジメンとして知られるオキサリプラチン、ロイコボリン、及び5-フルオロウラシルの組合せ(例えばde Gramont等, 2000, J. Clin. Oncol. 18:2938-2947を参照)、及びXELOXレジメンとして知られるオキサリプラチン及びカペシタビンの組合せ(例えばCassidy等, 2004, J. Clin. Oncol. 22:2084-2091を参照)を含む。このように、本発明のある態様では、ここでの方法によって識別された患者は、FOLFOX4又はXELOXレジメンを併用するベバシズマブで治療される。投与の一般的な方法は、ボーラス投与として、又は一定期間にわたる注入として、例えば10分、20分、30分、40分、50分、60分、75分、90分、105分、120分、3時間、4時間、5時間又は6時間にわたる一日総投与量の投与の非経口投与を含む。例えば、7.5mg/kgのベバシズマブ(Avastin(登録商標))が結腸直腸癌の患者にXELOXレジメンの一部として三週間毎に30〜90分にわたる静脈内注入として投与され得、又は5mg/kgの投与量がFOLFOX4レジメンの一部として二週間毎に2時間にわたる静脈内注入として投与されうる(例えばSaltz等, 2008, J. Clin. Oncol. 26:2013-2019を参照のこと)。当業者は、ベバシズマブの投与の更なる方法が、特定の患者及び化学療法レジメンによって決定され本発明により包含されること、投与の特定の方法及び治療用量が、当技術分野で知られる方法に従い臨床医によって最適に決定されることを理解するだろう。
【0032】
本発明の方法に従い選択された患者は、化学療法レジメンを併用するベバシズマブで治療され、一又は複数の付加的抗癌療法で更に治療されうる。ある態様では、一又は複数の付加的抗癌療法は放射線である。
【0033】
好ましい実施態様では、サンプルは、何れか他の化学療法レジメン又は療法、例えば癌の治療のための療法又はその症状の管理又は寛解のための療法の開始前に採取される。従って、好ましい実施態様では、化学療法剤の投与又は化学療法レジメンの開始前にサンプルが採取される。
【0034】
本発明はまた、一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルの決定に適したオリゴヌクレオチド又はポリペプチドを含んでなる診断用組成物又はキットに関する。ここに記載される一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルの決定に適したオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの代わりとして又は加えて、本発明のキット又は診断用組成物はまた、ここに記載する血管数を決定する手段として、内皮細胞マーカー、例えばCD31の決定及び/又は検出のためのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドを含みうる。ここで詳述されるように、DNA、RNA又はDNA及びRNAプローブの混合等のオリゴヌクレオチドは、マーカー/指標タンパク質のmRNAレベルを検出することにおいて有用であり得、ポリペプチドは、特異的なタンパク質-タンパク質相互作用により、マーカー/指標タンパク質のタンパク質レベルの直接的な検出に有用でありうる。本発明の好ましい態様では、一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリン(及び/又は一又は複数の内皮細胞マーカー、例えばCD31)の発現レベルのためのプローブとして包含され、またここに記載されるキット又は診断用組成物に含まれるポリペプチドは、これらのタンパク質に特異的な、又はその相同体及び/又は切断体に特異的な抗体である。
【0035】
このように、本発明の更なる実施態様では、ここに記載される方法を実施するのに有用なキットであって、一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリン(及び/又は一又は複数の内皮細胞マーカー、例えばCD31)の発現レベルを決定可能なオリゴヌクレオチド又はポリペプチドを含んでなるキットを提供する。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、ここに記載される一又は複数のマーカー/指標をコードするmRNAに特異的なプライマー及び/又はプローブを有し、ポリペプチドは、マーカー/指標タンパク質と特異的相互作用が可能なタンパク質、例えばマーカー/指標特異的抗体又は抗体断片を有する。
【0036】
別の更なる実施態様では、本発明は、胃腸癌、特にmCRCを患っている患者の無進行生存を改善するためのベバシズマブの使用であって、以下の工程:(a)前記患者からサンプルを得る工程;(b)一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定する工程;及び(c)胃腸癌、特にmCRCを患っている患者において決定されたコントロールレベルと比較して増加レベルのVEGFA及び/又はCD31、及び/又は低下レベルのHER2及び/又はニューロピリンを有する患者に、化学療法レジメンと併用してベバシズマブを投与する工程を含んでなる使用を提供する。
【0037】
添付の実施例に記述されるように、本発明は、胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較した、任意の患者におけるVEGFA、HER2及びニューロピリンの内一又は複数の発現レベルが、オキサリプラチンベースの化学療法レジメンを併用してベバシズマブを投与された患者における治療効果と相関することを驚くべきことに示したことにより、示された技術的問題を解決する。本発明の内容において、より高い腫瘍特異的血管数がまた、胃腸癌、特にmCRCと診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較して、オキサリプラチンベースの化学療法レジメンを併用してベバシズマブを投与された患者における治療効果と相関することが更に確証された。
【0038】
本発明の内容において、「に応答性」なる表現は、胃腸癌、特にmCRCを患っている、患っていると疑われる又は患いやすい被験体/患者が、ベバシズマブの追加を含んでなる化学療法レジメンに応答を示すことを指す。当業者は、本発明の方法によりベバシズマブで治療された人間が応答を示すかどうか容易に決定できる立場にあるだろう。例えば、応答は、低下した及び/又は停止した腫瘍増殖、腫瘍のサイズの低減、及び/又は胃腸癌の一又は複数の症状、例えば胃腸出血、胃腸痛、胃腸貧血の寛解など、低減した胃腸癌からの害に反映されうる。好ましくは、応答は、胃腸癌の転移転換の低下又は減少の指数、又はmCRCの指数に反映され得、例えば、転移の形成の防止、又は転移の数又はサイズの低減に反映される。
【0039】
本発明の内容において、「に感受性」なる表現は、特にmCRCを患っている、患っていると疑われる又は患いやすい被験体/患者が、化学療法レジメンを併用するベバシズマブによる治療にある程度陽性反応を示すことを指す。患者の反応は、上記のような「応答性の」患者と比較してあまり明瞭でない場合がある。例えば、患者は疾病からあまり害を受けていないが、腫瘍増殖又は転移性指標の低減が測定されず、及び/又は化学療法レジメンを併用したベバシズマブに対する患者の反応が一過性であり得、すなわち腫瘍及び/又は転移(一又は複数)の増殖が一時的のみ低減又は停止されうる。
【0040】
本発明による、「を患っている患者」なる表現は、胃腸癌、特にmCRCの臨床徴候を示している患者を指す。胃腸癌に関連して、「に感受性である」又は「にかかり易い」なる表現は、例えば、ありうる遺伝的素因、有害及び/又は発癌性化合物への前-又は最終的な曝露、又は放射線などの発癌性物理的害に基づく患者における徴候疾患を指す。
【0041】
本発明の内容における、「無進行生存」なる表現は、治療医又は調査員の評価による、患者の疾患が悪化しない、すなわち進行しない、治療中及び治療後の期間を指す。当業者が理解するように、患者の無進行生存は、類似条件の患者のコントロール群の平均無進行生存時間と比較して、疾患が進行しない期間を患者がより長く経験する場合に、改善又は強化される。
【0042】
ここで使用される場合、「投与」又は「投与すること」なる用語は、このような治療又は医療介入を必要とする患者への、治療用抗体の投与に関する技術分野において知られる何れかの適切な手段による、血管新生阻害剤、例えばベバシズマブ(Avastin(登録商標))、及び/又は血管新生阻害剤、例えばベバシズマブ(Avastin(登録商標))を含んでなる薬学的組成物/治療レジメンの投与を意味する。投与の非限定経路は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、皮内、鼻腔内又は気管支内投与(例えば吸入より達成される)を含む。この発明の内容において特に好ましいのは、非経口投与、例えば静脈内投与である。結腸直腸癌の治療に対するベバシズマブ(Avastin(登録商標))に関し、EMEAによる好ましい用量は、2週間毎に一度、体重の5mg/kg〜10mg/kg、又は3週間毎に一度体重の7.5mg/kg〜15mg/kgである(詳細についてはhttp://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_-_Product_Information/human/000582/WC500029271.pdfを参照のこと(2頁下を参照;以前はhttp://www.emea.europa.eu/humandocs/PDFs/EPAR/avastin/emea-combined-h582en.pdfで入手可能)。
【0043】
「抗体」なる用語は、ここでは最も広い意味で使用され、限定するものではないが、モノクローナル及びポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、単鎖抗体及び抗体断片及び断片コンストラクト、例えばF(ab′)断片、Fab断片、Fv断片、単鎖Fv断片(scFvs)、二重特異性scFvs、ダイアボディ、単一ドメイン抗体(dAbs)及びミニボディを含み、所望される生物学的活性、特に一又は複数のVEGFA、HER2、ニューロピリン及びCD31に対する、又はその相同体、変異体、断片及び/又はアイソフォームに対する特異的結合を呈する。
【0044】
ここで使用される場合、「化学療法剤」は、抗癌療法効果をもたらすことが可能な何れかの活性薬剤を含み、特に癌又は腫瘍細胞を干渉することが可能な、化学的薬剤又は生物学的薬剤でありうる。好ましい活性薬剤は、悪性細胞の発生、成熟又は増殖を阻害又は防止する抗新生物(化学毒性(chemotoxic)又は化学安定性(chemostatic))剤として作用するものである。化学療法剤の非限定例は、ナイトロジェンマスタード等のアルキル化剤(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン及びクロラムブシル)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、及びセムスチン(メチル-CCNU))、エチレンイミン/メチルメラミン(例えば、トリエチレンメラミン(thriethylenemelamine)(TEM)、トリエチレン、チオホスホルアミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン))、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)、及びトリアジン(例えば、ダカルバジン(DTIC));葉酸アナログ等の代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、トリメトレキサート)、ピリミジンアナログ(例えば、5-フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5-アザシチジン、2,2′-ジフルオロデオキシシチジン)、及びプリンアナログ(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アザチオプリン、2′-デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン、及び2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2-CdA));天然物に由来する有糸分裂阻害剤(例えば、パクリタキセル、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、及びビノレルビン)、タキソテール、エストラムスチン、及びリン酸エストラムスチン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(例えばアクチノマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC、アクチノマイシン)、酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)、及び生体応答修飾物質(例えば、インターフェロン-α、IL-2、G-CSF、GM-CSF);白金錯体複合体を含む混合剤(miscellaneous agents)(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン)、置換尿素(すなわちヒドロキシウレア)、メチルヒドラジン誘導体(例えば、N-メチルヒドラジン(MIH)、プロカルバジン)、副腎皮質抑制剤(例えば、ミトタン(o,p′-DDD)、アミノグルテチミド);副腎皮質ステロイドアンタゴニストを含むホルモン及びアンタゴニスト(例えば、プレドニゾン及び等価物、デキサメタゾン、アミノグルテチミド)、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール)、エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール及びその等価物);抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン)、アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン及びその等価物)、抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ、リュープロリド)及び非ステロイド性抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド)を含む。
【0045】
本発明の内容において、アミノ酸配列に関連して「相同」とは、ここに提供される配列番号によって定義される配列の完全長に対して、少なくとも80%の配列同一性、特に、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、また更により好ましくは少なくとも95%の同一性を指すと理解される。本発明の内容において、当業者は、相同が、異なる集団及び民族におけるマーカー/指標タンパク質の対立遺伝子変異体を更に含むことを理解するだろう。
【0046】
ここで使用される場合、「ポリペプチド」なる用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を包含するペプチド、タンパク質、オリゴペプチド又はポリペプチドに関し、アミノ酸残基は共有結合性ペプチド結合によって結合される。しかしながら、このようなタンパク質/ポリペプチドのペプチド模倣物もまた本発明により包含され、アミノ酸(一又は複数)及び/又はペプチド結合(一又は複数)が機能的アナログ、例えば20の遺伝子コード化アミノ酸以外のアミノ酸残基、例えばセレノシステインによって置換されている。ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドと称されうる。ポリペプチド及びタンパク質なる用語は、ここでは互換的に使用される。ポリペプチドなる用語は、ポリペプチドの修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等も指し除外しない。このような修飾は基礎的なテキスト、より詳細なモノグラフ、並びに多量の研究文献によく記述されている。
【0047】
ここで使用される「治療する」及び「治療」なる用語は、疾患又はその何れかのパラメーター又は症状の治療、改善、重症度の緩和、経時における低減を意味する。好ましくは前記患者はヒト患者であり、治療される疾患は胃腸癌、特にmCRCである。このような患者について「評価する」又は「評価」なる用語は、VEGFA、HER2、ニューロピリン及びCD31を含むここに記載される一又は複数のマーカー/指標タンパク質の発現レベルを決定する方法、及び/又は転移性結腸直腸癌と診断された患者において確立されたコントロールレベルと比較したかかるマーカー/指標タンパク質の発現レベルに基づいてこのような患者を選択するための方法に関する。
【0048】
上記の方法に加えて、本発明はまた、ウェスタンブロッティング及びELISAベース検出等、VEGFA、HER2及びニューロピリンの内一又は複数の発現レベルを評価するための更なる免疫組織化学法を包含する。類似な方法が、血管数の決定の代わり又は追加の方法において使用され得、一又は複数の内皮細胞マーカー、例えばCD31の腫瘍特異的発現レベルの決定を含む。当技術分野において理解されるように、本発明のマーカー/指標タンパク質の発現レベルはまた、ノーザンブロッティング、リアルタイムPCR、及びRT PCRなど当技術分野で知られる何れかの適切な方法によってmRNAレベルで評価される。免疫組織化学-及びmRNA-ベース検出方法及びシステムは当技術分野でよく知られ、Lottspeich (Bioanalytik, Spektrum Akademisher Verlag, 1998)又はSambrook and Russell (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, U.S.A., 2001)等の標準的なテキストから推測できる。記載した方法は、転移性結腸直腸癌と診断された集団において確立されたコントロールレベルと比較した、患者又は患者のグループにおけるVEGFA、HER2、ニューロピリン及び/又はCD31の発現レベルを決定するために特に有用である。
【0049】
VEGFA、HER2及びニューロピリン(及び/又は一又は複数の内皮細胞マーカー、例えばCD31)の内一又は複数の発現レベルはまた、免疫凝集、免疫沈降(例えば免疫拡散、免疫電気泳動、免疫固定)、ウェスタンブロッティング法(例えば(インサイツ)免疫組織化学、(インサイツ)免疫細胞化学、アフィニティークロマトグラフィー、酵素免疫測定法)等を利用してタンパク質レベルに基づいて決定されてもよい。溶液中における精製されたポリペプチドの量はまた、物理的方法、例えば測光により決定されうる。混合物中における特定のポリペプチドを定量化する方法は通常、例えば抗体の特異的結合に頼る。抗体の特異性を利用する特異的検出及び定量化方法は、例えば免疫組織化学(インサイツ)を含む。例えば、細胞又は組織中における本発明のマーカー/指標タンパク質の濃度/量は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって決定されうる。あるいは、ウェスタンブロット法又は免疫組織化学染色が実施されてもよい。ウェスタンブロッティングは、電気泳動によるタンパク質の混合の分離、及び抗体を用いる特異的検出を組み合わせる。電気泳動は、二次元電気泳動など多次元でありうる。通常ポリペプチドは、一次元に沿ってそれらの見掛けの分子量によって、他方向に沿ってそれらの等電点によって、二次元電気泳動において分離される。
【0050】
上で述べたように、本発明によるマーカー/指標タンパク質の発現レベルはまた、VEGFA、HER2及び/又はニューロピリン(及び/又はここに記載の血管数の決定のための一又は複数の内皮細胞マーカー、例えばCD31)をコードする対応する遺伝子の低減された発現に反映されうる。従って、翻訳の前の遺伝子産物(例えば、スプライシングされた、非スプライシングの又は部分的にスプライシングされたmRNA)の定量評価が、対応する遺伝子の発現を評価するために実施されてもよい。当業者は、この関係において使用される標準的な方法を分かっているか、又は標準的なテキストからこれらの方法を推定しうる(例えばSambrook, 2001, loc. cit.)。例えば、VEGFA、HER2及び/又はニューロピリン(及び/又はここに記載の血管数の決定のための一又は複数の内皮細胞マーカー、例えばCD31)の内一又は複数をコードするmRNAのそれぞれの濃度/量に関する定量的データは、ノーザンブロット、リアルタイムPCR等によって得られることができる。
【0051】
本発明の更なる態様では、本発明のキットが本発明の方法を実施するために有利に使用され得、様々な応用において、例えば診断分野において、又は研究道具として特に使用されるだろう。本発明のキットの部品は、バイアル中に個々に、又は容器又はマルチ容器ユニット中に組み合わせてパッケージ化されていてもよい。キットの製造は好ましくは当業者に知られている標準的な手順に従う。キット又は診断用組成物は、例えばここに記載の免疫組織化学法を使用して、ここに記載した本発明の方法による、VEGFA、HER2及び/又はニューロピリン(及び/又はここに記載の血管数の決定のための一又は複数の内皮細胞マーカー、例えばCD31)の内一又は複数の発現レベルの決定のために使用されうる。
【0052】
ベバシズマブの使用によって例示されたが、本発明は、標準的な化学療法レジメンとの組合せにおける使用に対し、当技術分野で知られる他の血管新生阻害剤の使用を包含する。ここで使用される「血管新生阻害剤」なる用語は、血管新生(例えば、血管を形成する過程)を変化させる全ての薬剤を指し、血管の形成を阻止する及び/又は成長を止める、遅くする薬剤を含む。血管新生阻害剤の非限定例は、ベバシズマブに加えて、ペガプタニブ、スニチニブ、ソラフェニブ及びバタラニブを含む。好ましくは、本発明の方法による使用のための血管新生阻害剤はベバシズマブである。ここで使用される場合、「ベバシズマブ」なる用語は、米国、欧州及び日本から成る国の群から選択される国又は地域において同一又はバイオシミラー製品として販売承認を得るのに必要な要求を満たしている、全ての対応抗VEGF抗体又は抗VEGF抗体断片を包含する。
【0053】
ここに記載される検出方法における使用に関し、当業者は本発明に包含されるポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを標識する能力を持つ。当技術分野において日常的に実施されるように、IHC法において使用されるmRNAレベル及び/又は抗体又は抗体断片の検出に使用されるハイブリダイゼーションプローブは、当技術分野で知られる標準的な方法によって標識及び可視化でき、一般的に使用されるシステムの例は、放射性標識、酵素標識、蛍光タグ、ビオチン-アビジン複合体、化学発光等を含む。
【0054】
当業者、例えば主治医は、ここで選択され定義されるような患者/患者群に化学療法レジメンとの組合せにおいてベバシズマブを容易に投与する立場にある。ある状況では、主治医は、彼/彼女の専門的な経験に従い、ベバシズマブ及び化学療法レジメンの投与スキームを変更、変化又は修正しうる。従って、本発明のある態様では、胃腸癌を患っている又は患っている疑われる患者の無進行生存を、化学療法レジメンを併用するベバシズマブにより治療又は改善する方法を提供し、ここで前記患者/患者群は生体サンプル(特に、胃組織切除片、胃組織生検又は転移性病変)の評価において特徴付けられ、前記サンプルは、転移性結腸直腸癌と診断された患者において確立されたコントロールレベルと比較して、増加発現レベルのVEGFA、低下発現レベルのニューロピリン及び低下発現レベルのHER2を呈する。本発明はまた、胃腸癌、特にmCRCを患っている又は患っている疑われる患者の治療のための薬学的組成物の調製における使用のために提供され、ここで、患者はここに開示されるタンパク質マーカー/指標ステータス(すなわち、転移性結腸直腸癌と診断された患者において確立されたコントロールレベルと比較した、VEGFAの増加発現レベル、ニューロピリンの低下発現レベル、及びHER2の低下発現レベルの一又は複数)によって選択又は特徴付けられる。本発明はまた、ここに記載されるマーカーとしてのVEGFA、ニューロピリン及び/又はHER2の使用の代わりに又は加えて、腫瘍特異的血管数(例えば、一又は複数の内皮細胞マーカー、例えばCD31の増加レベルによって特徴付けられうる)を包含し、ここで、前記血管数(及び/又は一又は複数の内皮細胞マーカーの発現レベル)における増加は、化学療法レジメンへのベバシズマブの追加に対し感受性又は応答性である患者を示すか、又はここに記載される方法が指向する患者の集団を選択する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】腫瘍細胞バイオマーカーサブグループによるベバシズマブ対コントロールに関する進行又は死までの時間のフォレストプロット。
【図2】ニューロピリン(図2A)、HER2(図B)及びVEGFA(図C)に関する進行又は死までの時間との内皮細胞バイオマーカーデータの相関(中央値カットオフ)。各図、黒色実線:プラセボ(F/F+P/X/X+P)及び中央値以上のバイオマーカー発現(BA);長破線(灰色):ベバシズマブ(BV)療法(F+BV/X+BV)及び中央値以上のバイオマーカー発現(BA);中破線:ベバシズマブ治療(F+BV/X+BV)及び中央値以下のバイオマーカー発現(BB);短破線、プラセボ(F/F+P/X/X+P)及び中央値以下のバイオマーカー発現(BB)。
【図3】内皮細胞バイオマーカーサブグループによる、ベバシズマブ対死についての進行又は死に対する時間のフォレストプロット。
【図4】CD31についての進行又は死までの時間との内皮細胞バイオマーカーデータの相関(中央値カットオフ);CD31>中央値(図4A)、CD31>第2三分位値(図4B)。各図、灰色実線(x軸上約610日目で終了;右上の長方形の中Fact=1):ベバシズマブ治療及びCD31の低発現;灰色破線(右上の長方形の中Fact=1):ベバシズマブ治療及びCD31の高発現;黒実線(x軸上約85日目で終了;右上の長方形の中Fact=0):プラセボ及びCD31の低発現、黒破線(y軸上約0.14の生存確率でレベルオフ;右上の長方形の中Fact=0):プラセボ及びCD31の高発現。
【図5】高及び低微小血管密度を有するそれぞれの患者における腫瘍及び内皮細胞のIHC染色。Nv、血管の数;W、血管の体積。
【図6】配列番号:1、VEGFAの例示的アミノ酸配列。
【図7】配列番号:2、HER2の例示的アミノ酸配列。
【図8】配列番号:3、NRP-1の例示的アミノ酸配列。
【0056】
本発明は以下の非限定実施例により更に説明される。
【0057】
実施例1
転移性結腸直腸癌の治療に関し第一選択オキサリプラチン化学療法レジメンXELOX及びFOLFOX4へのベバシズマブの追加の結果を比較するランダム化第III相試験に参加する患者から組織サンプルを採取した(NO16966試験、Saltz等, 2008, J. Clin. Oncol. 26:2013-2019 (“Saltz”)及びHurwitz等, 2004, N. Engl. J. Med. 350:2335-2342 (“Hurwitz”)を参照)。血管新生及び腫瘍形成に関連するバイオマーカーのステータスの調査は、全患者集団において決定されたコントロールレベルと比較した4つのバイオマーカーの発現レベルが改善した治療パラメーターと相関することを明らかにした。特に、全患者集団において決定されたコントロールレベルと比較して増加発現レベルのVEGFA、増加発現レベルのCD31、低下発現レベルのHER2及び低下発現レベルのニューロピリンの内一又は複数を示す患者は、XELOX又はFOLFOX4レジメンのどちらかに対するベバシズマブの追加に応答して無進行生存の延長を示した。
【0058】
患者及び免疫組織化学法
全部で1401の患者がNO169966試験に参加し、参加者の内247人からの腫瘍サンプルをバイオマーカー分析のために入手した。バイオマーカー分析における247人の患者のベースライン特徴を表1に示し、この特徴は試験集団全体の特徴に概して類似した(Saltz;上掲を参照)。

【0059】
免疫組織化学分析をホルマリン固定パラフィン包埋組織サンプルの5μm切片において実施した。脱パラフィン及び再水和の後、抗原賦活化を、Benchmark-XT (Ventana, Tucson, AZ, USA)のCC1バッファー又はPTモジュールにおいて、30分間95°Cでクエン酸pH6.0バッファーによって実施した。
【0060】
表2は、既知の腫瘍形成及び血管新生活性に基づく免疫組織化学分析のために選択された7つのマーカーを示す。

【0061】
切片をAutostainer又はBenchmark-XT(VEGFR-1のため)において染色し、一次抗体を1時間インキュベートした。一次抗体の結合をEnvision system(DAKO, Glostrup, Denmark)又はUltraview (Ventana, Tucson, AZ USA)を使用して可視化した。全切片をメイヤーズヘマトキシリンで対比染色した。
【0062】
正確性、特異性、直線性、及び精密性(再現性及び反復性)を示す検証レポートを各IHCアッセイに対して入手した。外因コントロールスライド及び内因コントロールエレメントの染色を記述した。
【0063】
統計解析
腫瘍マーカーに対するHスコアを使用してバイオマーカーの全体分布を示した。検査したマーカーの数は限られ、各々は生物学的合理性によって裏付けされた;複数試験について公式な補正はなかった。タンパク質発現レベルについて先験カットオフを使用した:中央値(下、上)及び三分位値(低、中、高)。
【0064】
治療効果を、バイオマーカーレベルによって定めた患者のサブグループにおいて推定した。PFSを主要評価項目として選択し、腫瘍記述分析をサブグループ分析を使用して実施した。バイオマーカー相互作用による治療の試験(中央値カットオフ)から二次分析を得た。
【0065】
結果
腫瘍マーカー
サンプル集団内の、選択したIHCマーカーの腫瘍細胞関連発現を表3に示す。

【0066】
サンプル内の腫瘍細胞のみに関すると、どのサンプルもVEGFR-2に対する染色を示さなかったが、VEGFR-2が内皮細胞上に発現された。腫瘍細胞膜上にVEGFR-1染色はほぼ観察されなかったが、このタンパク質に対する陽性染色が細胞質に観察された。幾つかのサンプルがまた、腫瘍細胞上のEGFR及びHER2の発現の欠如を示し、サンプルの37%はEGFRに対する染色を示さず、サンプルの67%はHER2に対する染色を示さなかった。
【0067】
腫瘍細胞バイオマーカーによる進行又は死に対する時間のフォレストプロットを図1に示す。ハザード比によると、全患者サブグループがベバシズマブ治療から利益を得たが、より高い相対レベルのVEGFA及び/又は低いニューロピリンレベルの腫瘍細胞を有する患者が増加利益を示し、HER2陽性腫瘍を有する患者は低下利益を示した。
【0068】
これらのサブグループについての進行又は死に対する時間のカプラン・マイヤー曲線を図2に示す。
【0069】
内皮マーカー
サンプル集団内の、選択したIHCマーカーの内皮細胞関連発現を表4に示す。

【0070】
内皮VEGFR-1染色は内皮VEGFR-2染色より低かった。
【0071】
内皮バイオバーカーサブグループによる進行又は死までの時間のフォレストプロットを図3に示す。CD31についての進行又は死までの時間のカプラン・マイヤー曲線を図4A−Bに示す。より多い血管数と相関するCD31の高い発現を示す腫瘍を有する患者は、ベバシズマブ治療からの増大利益を示した。
【0072】
図5は、高及び低微少血管密度を有するサンプルにおける腫瘍及び内皮細胞の染色のIHCサンプルの代表画像を提供する。
【0073】
上記のデータは、フロリダ州オーランドの2010 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium(2010年1月22〜24)でAbstract No. 374として提出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃腸癌を患っている患者の無進行生存を、化学療法レジメンにベバシズマブを加えることによって改善する方法であって:
(a)前記患者からサンプルを得る工程;
(b)一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定する工程;及び
(c)転移性結腸直腸癌と診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較して増加レベルのVEGFA、及び/又は低下レベルのHER2及び/又はニューロピリンを有する患者に、化学療法レジメンと併用してベバシズマブを投与する工程
を含んでなる前記方法。
【請求項2】
化学療法レジメンへのベバシズマブ治療の追加に応答性又は感受性である患者の識別のためのインビトロ法であって:
(a)胃腸癌を患っていると疑われる又は胃腸癌を患い易い患者からサンプルを得る工程;及び
(b)一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定する工程を含んでなり、
転移性結腸直腸癌を患っている患者において決定されたコントロールレベルと比較して増加レベルのVEGFA及び/又はCD31、及び/又は低下レベルのHER2及び/又はニューロピリンが、前記レジメンへのベバシズマブの追加に対する患者の感受性の指標である前記方法。
【請求項3】
VEGFAのタンパク質発現レベルが検出される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
HER2のタンパク質発現レベルが検出される請求項1−3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
ニューロピリンのタンパク質発現レベルが検出される請求項1−4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質発現レベルが免疫組織化学法(IHC)によって検出される請求項3−5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルが、胃組織切除片、胃組織生検又は転移性病変から成る群から選択される請求項1−6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記化学療法レジメンがオキサリプラチンベースの化学療法レジメンである請求項1−7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記オキサリプラチンベースの化学療法レジメンが、カペシタビンを併用したオキサリプラチンのレジメン、又はロイコボリン及び5-フルオロウラシルを併用したオキサリプラチンのレジメンである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
カペシタビンを併用したオキサリプラチンのレジメンがXELOXレジメンである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ロイコボリン及び5-フルオロウラシルを併用したオキサリプラチンのレジメンがFOLFOX4レジメンである請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が一又は複数の抗癌療法によって併用治療されている請求項1−11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗癌療法が放射線である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルが、ネオアジュバント又はアジュバント療法の前に得られる請求項1−13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定することが可能なオリゴヌクレオチド又はポリペプチドを含んでなる、請求項1−14の何れか一項に記載の方法を実施するのに有用なキット。
【請求項16】
請求項1−14の何れか一項における一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定するためのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの使用。
【請求項17】
一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定することが可能なポリペプチドを含んでなり、前記ポリペプチドが免疫組織化学法における使用に適している及び/又はVEGFA、HER2、又はニューロピリンに特異的な抗体である請求項15に記載のキット又は請求項16に記載の使用。
【請求項18】
以下の工程を含んでなる、胃腸癌を患っている患者の無進行生存を改善するためのベバシズマブの使用:
(a)前記患者からサンプルを得る工程;
(b)一又は複数のVEGFA、HER2及びニューロピリンの発現レベルを決定する工程;及び
(c)転移性結腸直腸癌と診断された患者において決定されたコントロールレベルと比較して増加レベルのVEGFA、及び/又は低下レベルのHER2及び/又はニューロピリンを有する患者に、化学療法レジメンと併用してベバシズマブを投与する工程。
【請求項19】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−517258(P2013−517258A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548458(P2012−548458)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050564
【国際公開番号】WO2011/089101
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(306021192)エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】