説明

ベルトラインモールの取付構造

【課題】加工工数を低減することができるとともに組み付けを簡単に行うことができ、しかも、結合部分を目立たなくすることができるベルトラインモールの取付構造を提供する。
【解決手段】ドアサッシュモールの端部内面に固定されたジョイント部材22は、ベルトラインモール12の端部内面に差し込まれて3箇所で接触している。ジョイント部材22は、その両幅端部がベルトラインモール12の端部内面に対して接触するとともに、その平坦な中央部が外側当接部21に対して面接触している。また、両幅端部の上端部に形成された平面部22aが、端部内面に対して面接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両におけるベルトラインモールの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば特許文献1に開示されたモール接続部の構造が知られている。図6に示すように、この技術は、ドアアウタパネル50の上縁部に形成した切欠き部50aと孔部50bに装着されるクリップ51により、ドアベルトラインモール52とドアサッシュモール53とを接続する構造である。クリップ51は各モール52,53と相似な断面形状を有し、各モール52,53の端部内面のほぼ内面全体に接触する。すなわち、各モール52,53の端部内面に対してクリップ51が嵌合されることにより、両モール52,53がドアアウタパネル50に対して位置決め固定されるとともに互いに連結される。
【特許文献1】実開昭58−1560010号公報(公報第2〜4頁、第3〜7図参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の構造では、クリップ51をドアアウタパネル50に対して固定するための切欠き部50a及び孔部50bを同ドアアウタパネル50に形成する必要があるので構成が複雑であり加工工数が多い。また、ドアベルトラインモール52及びドアサッシュモール53だけではなく、クリップ51をドアアウタパネル50に組み付けなければならないため組付作業が煩雑である。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、加工工数を低減することができるとともに組み付けを簡単に行うことができ、しかも、結合部分を目立たなくすることができるベルトラインモールの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、内面に緩衝材を有し、ベルトラインモールを構成する金属製の第1モール部材と第2モール部材とをそれらの端部間を接続した状態でドアアウタパネルの上縁部に取り付けるベルトラインモールの取付構造において、第1または第2モール部材の端部の内側に金属製のジョイント部材を固定するとともに、そのジョイント部材を第2または第1モール部材の端部内に差し込み、そのジョイント部材を少なくとも2箇所において相手側のモール部材の内面に接触させるとともに少なくとも1箇所の接触部を面接触させたことを特徴とする。なお、ここで面接触とは、ジョイント部材の屈曲部、端縁以外の部分が接触することをいう。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記ジョイント部材を、相手側のモール部材の本体内面に面接触させたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記ジョイント部材を、相手側のモール部材における前記緩衝材の内面に面接触させたことを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載の発明は、前記ジョイント部材の両幅端部を相手側のモール部材の内面に接触させるとともに、幅端部を相手側のモール部材の内面に面接触させたことを特徴とする。
【0008】
請求項5に記載の発明は、前記ジョイント部材の両幅端部間の中央部を前記緩衝材に接触させたことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、ドアアウタパネルに接合する緩衝材のリップ部を切除し、その切除部に前記ジョイント部材を位置させたことを特徴とする。
【0009】
(作用)
従って、第1または第2モール部材の端部に固定されたジョイント部材が、第2または第1モール部材の端部内面に対して少なくとも2箇所で接触するとともに、少なくとも1箇所の接触部が面接触する。このため、第1または第2モール部材の端部とジョイント部材との接触状態が安定し、両モール部材の端部同士が互いに精度良く位置決めされる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、加工工数を低減することができるとともに組み付けを簡単に行うことができ、しかも、結合部分を目立たなくすることができて高級感を出すことができるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、この発明を具体化した一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図2に示すように、車両におけるフロントドア10及びリヤドア11の上縁部には、それぞれ第1モール部材としてのベルトラインモール12が装着され、また、図示しないフロントドアサッシュ及びリヤドアサッシュには、第2モール部材としてのドアサッシュモール13がそれぞれ装着されている。図3に示すように、リヤドア11においては、ベルトラインモール12の後端部とドアサッシュモール13の下部前端部とが、リヤドア11のドアアウタパネル14の上縁部において結合されている。
【0012】
以下、ベルトラインモール12の取付構造について説明する。
図4に断面を示すように、ベルトラインモール12は、ドアアウタパネル14の上縁部に沿って装着される。ベルトラインモール12のステンレス製の本体120は、金属の押出成形により断面略逆樋状に形成され、その内側壁12aの下端の長さ方向における複数箇所には、ドアアウタパネル14の内側部に係止される係止片15が一体形成されている。そして、ベルトラインモール12は、各係止片15によりドアアウタパネル14に係止される。
【0013】
ベルトラインモール12の本体120の内側壁12a及び外側壁12bの外面には、その押出成形時に一体形成される合成樹脂製のガラス側リップ16、フェンダ側リップ17が設けられている。ガラス側リップ16は、ドアガラス18に当接してベルトラインモール12とドアガラス18との間を封止する。フェンダ側リップ17は、ドアアウタパネル14の外面に当接してその外面とベルトラインモール12との間を封止する。
【0014】
また、ベルトラインモール12の内側には、前記両リップ16,17と同様にして押出成形と同時に一体成形されるそれぞれ緩衝材としての合成樹脂製の内側当接部20及び外側当接部21が固着されている。内側当接部20は、内側壁12aの内面上に形成され、ドアアウタパネル14の上縁部の内側面に当接する。外側当接部21は、外側壁12bの内面上に形成され、上方に弾性変形した状態でドアアウタパネル14の上縁部の外側面に当接するリップ部21aを有している。そして、ベルトラインモール12は、前記係止片15によりドアアウタパネル14に係止された状態で、内側当接部20と外側当接部21とがドアアウタパネル14の上縁部を挟持することにより、ドアアウタパネル14の上縁部に固定される。
【0015】
前記ドアサッシュモール13の本体130は、ベルトラインモール12の本体120と同様にステンレス製である。そして、ドアサッシュモール13の結合側端部は、ベルトラインモール12と同様な構成と形状とを有している。すなわち、図4に示すように、ドアサッシュモール13は、合成樹脂製のガラス側リップ36、フェンダ側リップ37、内側当接部40、及び、リップ部41aを備えた外側当接部41を前記本体130に固着して構成されている。
【0016】
図3及び図5に示すように、ベルトラインモール12の端部は、ドアサッシュモール13の端部内面に固定されたジョイント部材22によってドアサッシュモール13の端部に結合される。
【0017】
図1に示すように、ドアサッシュモール13のジョイント部材22は、ベルトラインモール12の本体120内に差し込まれている。但し、ベルトラインモール12の端部内面においては、ジョイント部材22を差し込むために、前記リップ部21aの端部が切除されている。なお、このリップ部21aの端部は、内側壁12aと外側壁12bとの下端開口からナイフを差し込めば容易に切除することができる。そして、ジョイント部材22は、このリップ部21aの切除部21bに位置している。
【0018】
ジョイント部材22は、ベルトラインモール12の本体120の端部内面に対して3箇所で接触するように形成されている。すなわち、ジョイント部材22は、その両幅端部が本体120における内側壁12a及び外側壁12bの内面に接触し、その両幅端部間の平坦な中央部が、外側当接部21の上端部に接触している。ジョイント部材22の両幅端部における上端側には、屈曲された接触部としての平面部22aが形成され、この平面部22aは、内側壁12aの内面に対して面接触されている。また、ジョイント部材22の両幅端部間の平坦な中央部も、外側当接部21に対して面接触している。そして、ベルトラインモール12の端部は、前記内側当接部20のドアアウタパネル14に対する接触に加え、ドアサッシュモール13の端部内面に固定されたジョイント部材22との接触によって所定の位置に保持されている。
【0019】
なお、ジョイント部材22は、ベルトラインモール12に対する挿入と同様にしてドアサッシュモール13の本体130の端部に挿入されているが、平面部22aがドアサッシュモール13の内側壁13aにスポット溶接されること等により本体130に固定されている。
【0020】
また、図2に示すように、ベルトラインモール12とドアサッシュモール13との突き合わせ部Fは、目立たないようにクォータピラー19の縁部の延長線上に位置している。
さて、ベルトラインモール12をリヤドア11に組み付ける際には、まず、リヤドア11用のドアサッシュモール13をリヤドア11のサッシュに組み付ける。このとき、ドアサッシュモール13の端部には、ジョイント部材22が予め固定されている。次に、ベルトラインモール12の端部をジョイント部材22に嵌め込み、この状態でベルトラインモール12をドアアウタパネル14の上縁部に嵌め込む。すると、ドアアウタパネル14に固定されたベルトラインモール12の端部内面に対してジョイント部材22が3箇所で接触する。この結果、ベルトラインモール12の端部は、フェンダ側リップ17、内側当接部20及び外側当接部21(リップ部21a)のドアアウタパネル14への接触に加え、ジョイント部材22の3箇所での接触によって位置決めされる。このとき、ジョイント部材22の上端側の平面部22aがベルトラインモール12の本体120の端部内面に対して面接触するので、ベルトラインモール12及びジョイント部材22の寸法にばらつきがあっても、ベルトラインモール12の本体120の端部内面に対するジョイント部材22の接触状態が不安定とはなりにくい。この結果、ベルトラインモール12の端部の位置にばらつきが生じにくくなるため、ベルトラインモール12とドアサッシュモール13との結合部に本体120と本体130との間の段差等として現れるようなずれが生じにくい。
【0021】
この実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1) ドアサッシュモール13の端部内面に固定されたジョイント部材22をベルトラインモール12の端部内面に差し込んで3箇所で接触させることによりベルトラインモール12の端部を位置決めした。従って、特許文献1の構成とは異なり、ドアアウタパネル14にジョイント部材22を固定するための加工が不要となり加工工数を低減することができる。ゆえに、ドアサッシュモール13及びベルトラインモール12のみをドアアウタパネル14に組み付ければよいので取付作業が簡単となる。
【0022】
(2) ベルトラインモール12の本体120の端部内面にジョイント部材22の平面部22aが面接触するようにした。このため、ベルトラインモール12やジョイント部材22に寸法ばらつきがあっても、ベルトラインモール12の本体120の端部内面に対するジョイント部材22の接触状態が不安定となりにくく、ジョイント部材22はベルトラインモール12の本体120の内面によって位置規制される。従って、ベルトラインモール12とドアサッシュモール13との結合部の段差等のずれを解消して高級感を得ることができる。
【0023】
(3) ジョイント部材22が外側当接部21に面接触されているため、ジョイント部材22をベルトラインモール12に対してより確実に結合できるばかりでなく、ジョイント部材22等に寸法ばらつきがあっても、外側当接部21の変形によりそのばらつきを吸収することができる。
【0024】
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・フロントドア10におけるベルトラインモール12とドアサッシュモール13との結合部に具体化する。
【0025】
・前記実施形態とは逆に、ジョイント部材22をベルトラインモール12に固定するとともに、ベルトラインモール12及びドアサッシュモール13の組み付けに際して、ジョイント部材22をドアサッシュモール13の端部に差し込むこと。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一実施形態のベルトラインモールの結合構造を示す断面図。
【図2】車体に装着されたベルトラインモール及びドアサッシュモールを示す正面図。
【図3】ベルトラインモールとドアサッシュモールとの結合部を示す正面図。
【図4】ドアアウタパネルに対するベルトラインモール及びドアサッシュモールの組み付け状態を示す断面図。
【図5】ベルトラインモールとドアサッシュモールとの結合部を示す斜視図。
【図6】従来におけるベルトラインモールとドアサッシュモールとの接続構造を示す斜視図。
【符号の説明】
【0027】
12…第1モール部材としてのベルトラインモール、13…第2モール部材としてのドアサッシュモール、14…ドアアウタパネル、20…緩衝材としての内側当接部、21…緩衝材としての外側当接部、21a…リップ部、21b…切除部、22…ジョイント部材、22a…接触部としての平面部、120,130…(モール部材の)本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に緩衝材を有し、ベルトラインモールを構成する金属製の第1モール部材と第2モール部材とをそれらの端部間を接続した状態でドアアウタパネルの上縁部に取り付けるベルトラインモールの取付構造において、
前記第1または第2モール部材の端部の内側に金属製のジョイント部材を固定するとともに、そのジョイント部材を第2または第1モール部材の端部内に差し込み、そのジョイント部材を少なくとも2箇所において相手側のモール部材の内面に接触させるとともに少なくとも1箇所の接触部を面接触させたことを特徴とするベルトラインモールの取付構造。
【請求項2】
前記ジョイント部材を、相手側のモール部材の本体内面に面接触させたことを特徴とする請求項1に記載のベルトラインモールの取付構造。
【請求項3】
前記ジョイント部材を、相手側のモール部材における前記緩衝材の内面に面接触させたことを特徴とする請求項1に記載のベルトラインモールの取付構造。
【請求項4】
前記ジョイント部材の両幅端部を相手側のモール部材の内面に接触させるとともに、幅端部を相手側のモール部材の内面に面接触させたことを特徴とする請求項1に記載のベルトラインモールの取付構造。
【請求項5】
前記ジョイント部材の両幅端部間の中央部を前記緩衝材に接触させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のベルトラインモールの取付構造。
【請求項6】
ドアアウタパネルに接合する緩衝材のリップ部を切除し、その切除部に前記ジョイント部材を位置させたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のベルトラインモールの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−190621(P2009−190621A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34755(P2008−34755)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】