説明

ベルト寄り防止装置、ベルト装置、及び画像形成装置

【課題】安定したベルト寄り補正が行なえるとともに、耐久性に優れたベルト寄り防止装置を提供する。
【解決手段】加熱ローラ軸103aに、定着ベルト101のローラ軸方向の移動と加熱ローラ軸103aを中心とした回転に追従するベルト移動追従部材111を設ける。そして、ローラ軸変位部材113は、ベルト移動追従部材111と一体的に構成するとともに、その一部に円筒を斜めにカットした形状部を有し、定着ベルト101のローラ軸方向の移動に追従し、加熱ローラ軸103aを中心とした回転に追従しない。また、ローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部に、スライド可能に当接する円筒を斜めにカットした形状部を有するガイド部材112を設け、加熱ローラ軸103aに対する、ローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角度と、ガイド部材112の円筒の円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角度とは等しく構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状のベルトを有したベルト搬送装置に用いられるベルト寄り防止装置、このベルト寄り防止装置を備えたベルト装置、及びこれらを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から画像形成装置では、潜像担持体、中間転写体、記録媒体搬送部材あるいは画像定着部材等として様々な無端状のベルト(以下、無端ベルトという)が用いられている。この種のベルトは、少なくとも2本のローラに張架された状態で一定方向に走行するように構成されている。
【0003】
しかし、無端ベルトや関係部品等の材質等の問題、加工精度、あるいは、関係部品の経年劣化等に起因して、無端ベルトの走行方向とは直行する方向へ寄っていってしまう、一般にベルト寄りといわれる問題があった。このベルト寄りが発生してしまうと、記録紙等の記録媒体への転写像に位置ズレが生じたり、あるいは、無端ベルトが張架ローラから外れることによるベルト破損たりする問題が生じてしまう。このため、ベルト寄りの発生を抑制するとともに、ベルト寄りが発生した際には補正する必要が生じる。
【0004】
従来から、ベルト寄りの発生の抑制、及びベルト寄りが発生した際の補正を行うために様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、次のような構成のベルト寄り補正機構の構成が記載されている。無端ベルトを張架する1つの張架ローラを傾倒可能にするため、この張架ローラを回転可能に支持する張架ローラ軸の一端側を、他端側を回動支点として傾倒可能に支持している。そして、この張架ローラ軸には、傾倒可能な一端側の端部と張架ローラとの間に、無端ベルトのベルト寄りによる軸方向移動に追従するベルト移動追従部材を設けている。また、この傾倒可能な一端側の端部とベルト移動追従部材との間には、ベルト移動追従部材と別体で構成され、ベルト移動追従部材の軸方向移動に応じて張架ローラ軸の一端側を傾倒させるローラ軸変位部材も設けている。ベルト移動追従部材は、無端ベルトの一端側に設けられたビートと係合するプーリ部材であり、設けられる張架ローラ軸に回転可能であって、無端ベルトのベルト寄りに追従して、軸方向に移動可能に設けられている。ローラ軸変位部材は、張架ローラ軸が差し込まれ、その傾倒方向の移動のみを規制するように長穴が形成された板部と、ベルト移動追従部材が摺動する凸部と、装置本体に固定的に設けられた回動軸に嵌め合わされる嵌合部とから構成されている。また、固定的に設けられた回動軸は、張架ローラ軸に対して所定角度を持って張架ローラ軸から離間して設けられており、ローラ軸変位部材がこの回動軸を中心軸として回動可能なように設けられている。
【0005】
そして、ローラ軸変位部材は、無端ベルトが張架ローラ軸の傾倒可能な一端側に寄った場合には、ベルト移動追従部材により凸部が押圧されて、長穴部により支持する張架ローラ軸の部分が、略上方に移動するように回転軸を中心に回動する。また、無端ベルトが張架ローラ軸の回動支点側に寄った場合には、張架ローラ等の自重により、長穴部により支持する張架ローラ軸の部分が、ベルト移動追従部材を押圧して、略下方に移動するように回転軸を中心に回動する。このように無端ベルトのベルト寄りに応じてローラ軸変位部材が回動することで、張架ローラ軸が無端ベルトのベルト寄りに応じた角度に他端側を回動支点として傾倒する。そして、無端ベルトが回転する際の無端ベルトと、張架ローラ及びベルト移動追従部材との摩擦により生じる力により、張架ローラ軸の角度がベルト寄りが生じていない状態の角度に収束するとともに、ベルトの寄りが戻る。このように収束することで、ベルトの寄りの発生を抑制するとともに、補正を行うというものである。
【0006】
また、特許文献2には、次のような構成のベルト寄り補正機構の構成が記載されている。無端ベルトを張架する1つの張架ローラの一端側を傾倒可能にするため、この張架ローラを回転可能に支持する張架ローラ軸の一端側を、他端側を回動支点として傾倒可能に支持している。そして、この張架ローラ軸には、傾倒可能な一端側の端部と張架ローラとの間に、無端ベルトのベルト寄りによる軸方向移動に追従するベルト移動追従部材を設けている。また、ベルト移動追従部材の張架ローラから離れた側には、このベルト移動追従部材と一体に構成され、ベルト移動追従部材の軸方向移動に応じて張架ローラ軸の一端側を傾倒させるローラ軸変位部材も設けている。ベルト移動追従部材は、無端ベルトの一端側が架けまわされる円筒部と無端ベルトの端部が当接するツバ部とを有した部材であり、無端ベルトの回転に連れ回りするとともに、無端ベルトのベルト寄りに追従して、軸方向に移動可能に設けられている。ローラ軸変位部材は、軸受けを介してベルト移動追従部材と一体に構成され、設けられる張架ローラ軸に対して軸方向に移動可能に支持されている。また、ローラ軸変位部材の一部は、ベルト移動追従部材側の径が小さくなるような円錐状に形成されるとともに、ベルト移動追従部材よりも無端ベルト端部から離れた側に配置され、押圧手段により、無端ベルト側に常時押圧されている。そして、ローラ軸変位部材の円錐状部には、中心軸が略水平かつ張架ローラ軸に対して略垂直な円柱状のガイド部材が、下方から当接している。
【0007】
そして、無端ベルトが張架ローラ軸の上下動する端部側に寄った場合には、ベルト移動追従部材と一体的に構成されたローラ軸変位部材の円錐状部が、張架ローラ等の自重により、ガイド部材からずれ落ちるように案内されて、上下動する端部側に移動する。このように円錐状部が移動することで、ガイド部材で支持する位置での張架ローラ軸の高さが低くなって張架ローラが下方に傾倒する。また、無端ベルトが張架ローラ軸の回動支点側に寄った場合には、ベルト移動追従部材と一体的に構成されたローラ軸変位部材の円錐状部が、押圧手段により押圧されながらガイド部材にずれ上がるように案内されて、回動支点側に移動する。このように円錐状部が移動することで、ガイド部材で支持する位置での張架ローラ軸の高さが高くなって張架ローラが上方に傾倒する。このように無端ベルトのベルト寄りに応じてローラ軸変位部材がガイド部材に案内されることで、張架ローラ軸が無端ベルトのベルト寄りに応じた角度に他端側を回動支点として傾倒する。そして、無端ベルトが回転する際の無端ベルトと、張架ローラ及びベルト移動追従部材との摩擦により生じる力により、張架ローラ軸の角度がベルト寄りが生じていない状態の角度に収束するとともに、ベルトの寄りが戻る。このように収束することで、ベルトの寄りの発生を抑制するとともに、補正を行うというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、ローラ軸変位部材の回転軸に嵌め合う内周面と回転軸、及び張架ローラ軸を支持する長穴部と長穴部に摺動する張架ローラ軸の軸部に偏磨耗によるガタが生じる可能性がある。これらのような部分にガタが生じると、張架ローラ軸がベルト寄りが生じていない状態に収束する際に段階的に収束するようになったり、張架ローラ軸がベルト寄りが生じていない状態に収束できなくなったりする。さらに、張架ローラ軸がベルト寄りが生じていない状態に収束できない状態が長く続くと、記録紙等の記録媒体への転写像に位置ズレが生じたり、無端ベルトが張架ローラから外れることによるベルト破損等の問題が生じたりしてしまう。また、各部の偏磨耗が進むと、正常なベルト寄り補正が行なえなくなる可能性が高く、ベルト寄り装置としての耐久性にも不安がある。このように、特許文献1に記載の構成では、安定したベルト寄り補正、及びその耐久性に不安がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の構成では、中心軸が略水平かつ張架ローラ軸に対して略垂直に配置された円柱状のガイド部材と、ローラ軸変位部材の円錐状部とが当接するので、当接箇所は点になり、偏磨耗によるガタが生じる可能性がある。したがって、特許文献2に記載の構成でも、特許文献1に記載の構成と同様に、安定したベルト寄り補正、及びその耐久性に不安がある。
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、安定したベルト寄り補正が行なえるとともに、耐久性に優れたベルト寄り防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のベルト寄り防止装置は、 複数のローラに張架されて回転駆動される無端ベルトのベルト寄りを補正するベルト寄り防止装置において、上記複数のローラのうち少なくとも一つを傾倒可能に構成し、傾倒可能なローラのローラ軸に、上記ローラに張架される無端ベルトのローラ軸方向の移動と、該ローラ軸を中心とした回転に追従するベルト移動追従部材と、上記ローラに張架される無端ベルトのローラ軸方向の移動に追従し、該ローラ軸を中心とした回転に追従しない、上記ベルト移動追従部材と一体的に構成されたローラ軸変位部材とを設け、上記ローラ軸変位部材の一部に円筒を斜めにカットした形状部を形成し、上記ローラ軸変位部材の円筒を斜めにカットした形状部に、スライド可能に当接する円筒を斜めにカットした形状部を有するガイド部材を設け、上記ローラ軸に対する、上記ローラ軸変位部材の円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角度と、上記ガイド部材の円筒の円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角度とは等しく構成し、上記ベルト移動追従部材の移動追従にともない、上記ローラ軸変位部材の円筒を斜めにカットした形状部が、上記ガイド部材の円筒を斜めにカットした形状部に案内されて、上記無端ベルトのローラ軸方向の移動量に応じた傾きを、上記ローラ軸に与えることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載のベルト寄り防止装置は、請求項1に記載のベルト寄り防止装置において、無端ベルトが張架されている各ローラの端部が、無端ベルトの作像領域よりも外側にあるように、ベルト移動追従部材と傾倒可能なローラとの間の隙間が設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載のベルト寄り防止装置は、請求項1又は2に記載のベルト寄り防止装置において、ローラ軸変位部材は、ガイド部材と当接する箇所に低摩擦係数の高分子樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)が塗布されていることを特徴とするものである。
また、請求項4に記載のベルト寄り防止装置は、請求項1乃至3のいずれか一に記載のベルト寄り防止装置において、ガイド部材は、ローラ軸変位部材と当接する箇所に低摩擦係数の高分子樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)が塗布されていることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載のベルト装置は、請求項1乃至4のいずれか一に記載のベルト寄り防止装置を備えたベルト装置において、無端ベルトが、画像形成装置に用いる定着ベルトであることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載のベルト装置は、請求項1乃至4のいずれか一に記載のベルト寄り防止装置を備えたベルト装置において、無端ベルトが、画像形成装置に用いる感光体ベルトであることを特徴とするものである。
また、請求項7に記載のベルト装置は、請求項1乃至4のいずれか一に記載のベルト寄り防止装置を備えたベルト装置において、無端ベルトが、画像形成装置に用いる中間転写ベルトであることを特徴とするものである。
また、請求項8に記載のベルト装置は、請求項1乃至4のいずれか一に記載のベルト寄り防止装置を備えたベルト装置において、無端ベルトが、画像形成装置に用いる転写材搬送ベルトであることを特徴とするものである。
また、請求項9に記載の画像形成装置は、請求項5乃至8のいずれか一に記載のベルト装置を備えたことを特徴とするものである。
本発明は、傾倒可能なローラのローラ軸に対して回転しないローラ軸変位部材の円筒を斜めにカットした形状部を、スライド可能に当接するガイドの円筒を斜めにカットした形状部で案内する。このように案内することで、無端ベルトのローラ軸方向の移動量に応じた傾きを、傾倒可能なローラのローラ軸に与えることができるので、安定したベルト寄りの補正ができる。
さらに、傾倒可能なローラのローラ軸に対する、ローラ軸変位部材の円筒を斜めにカットした形状部とガイドの円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角度は等しいので、スライドする際の接触面積を従来の構成よりも広くできる。接触面積を広くできるので、従来の構成よりもローラ軸変位部材とガイドの接触面に偏磨耗が生じにくく、各部材の寿命を向上させることができるとともに、偏磨耗によるガタの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、従来の構成よりも偏磨耗によるガタの発生を抑制できるので、安定したベルト寄り補正が行なえるとともに、耐久性に優れたベルト寄り防止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る、画像形成装置の全体概要図。
【図2】本実施形態に係る、画像形成部の説明図。
【図3】実施例1に係る定着装置の断面説明図。
【図4】実施例1に係る定着装置の主要部の斜視図。
【図5】加熱ローラに備えたベルト寄り防止装置の構成説明図。
【図6】加熱ローラに備えたベルト寄り防止装置の動作説明図。
【図7】無端ベルト上に形成される作像領域とベルト寄り防止装置との位置関係の説明図。
【図8】ベルト移動追従部材と一体的に構成されたローラ軸変位部材の説明図。
【図9】ベルト移動追従部材を押圧する手段の説明図。
【図10】ガイド部材とローラ軸変位部材の円筒を斜めにカットした形状部が当接する面の角度の説明図。
【図11】ベルト寄り補正動作時のベルト寄り装置の状態説明図。
【図12】実施例2のベルト寄り防止装置で、ローラ軸変位部材のガイド部材との当接部分に、低摩擦係数の高分子樹脂を塗布した場合の説明図。
【図13】実施例2のベルト寄り防止装置で、ガイド部材のローラ軸変位部材との当接部分に、低摩擦係数の高分子樹脂を塗布した場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を、電写真方式の画像形成装置であるカラー対応の複合機に適用した実施形態の一例について、図を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る、画像形成装置の全体概要図、図2は、本実施形態に係る、画像形成部の説明図である。
【0015】
まず、本実施形態の複合機の概要から説明する。この複合機は、複合機本体100と、この複合機本体を載置する給紙テーブル200と、その複合機本体上に取り付けるスキャナ300と、このスキャナの上部に取り付けられる原稿自動搬送装置(ADF)400とから構成されている。そして、本実施形態の複合機は、中間転写ベルトを備えたいわゆるタンデム型のカラー画像形成装置である。
【0016】
複合機本体100には、中間転写ベルト10が設けられている。この中間転写ベルト10は、3つの支持部材である支持ローラ14,15,16に張架された状態で、図1中時計回り方向に回転駆動される。支持ローラのうちの第1支持ローラ14と第2支持ローラ15との間のベルト張架部分には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成ユニット18Y,18C,18M,18BKが並んで配置されている。これらの画像形成ユニット18Y,18C,18M,18BKの上方には、露光装置21が設けられている。この露光装置21は、スキャナ300で読み取った原稿の画像情報や、パソコン等から送信された印刷情報に基づいて、各画像形成ユニットの感光体ドラム20Y,20C,20M,20BK上に静電潜像を形成するためのものである。
【0017】
また、支持ローラのうちの第3支持ローラ16に対向する位置には、2次転写装置22が設けられている。この2次転写装置22は、2つのローラ23a,23b間に表面移動部材としての転写部材である無端ベルト状の2次転写ベルト24が張架した構成を有する。そして、中間転写ベルト10上のトナー像を記録材としての転写紙上に2次転写する際には、2次転写ベルト24を第3支持ローラ16に巻き付いた中間転写ベルト10部分に押し当てて2次転写を行う。ここで、2次転写装置22は、2次転写ベルト24を用いた構成でなくても、例えば転写ローラを用い、その転写紙搬送方向下流側の転写材搬送ベルトを設け、定着装置27へ転写紙を搬送する構成としてもよい。また、中間転写ベルト10の支持ローラのうちの第2支持ローラ15に対向する位置には、クリーニングブレードを有したベルトクリーニング装置17が設けられている。このベルトクリーニング装置17は、転写紙に中間転写ベルト10上のトナー像を転写した後に中間転写ベルト10上に残留する残トナーを除去するためのものである。また、複合機本体100には、転写紙上に転写されたトナー像を転写紙に定着させる定着装置27も設けられている。
【0018】
次に、画像形成ユニット18Y,18C,18M,18BKの構成について説明する。ここで、各画像形成ユニット18Y,18C,18M,18BKは、用いるトナーの色が異なるのみで、その構成はいずれも同様であるので、以下の説明では、Y,C,M,BKの符号は適宜省略して説明する。また、各画像形成ユニット18は、少なくとも感光体ドラム20及び後述する潤滑剤塗布装置と、その他の構成部品や構成装置の全部又は一部とを備えた、複合機本体100に対して着脱可能なプロセスカートリッジとすることができる。
【0019】
図2に示すように、画像形成ユニット18には、感光体ドラム20の周囲に、帯電装置60、現像装置61、感光体クリーニング装置80等が設けられている。また、感光体ドラム20に対して中間転写ベルト10を介して対向する位置には、1次転写装置62が設けられている。
【0020】
帯電装置60は、帯電ローラを採用した接触帯電方式のものであり、感光体ドラム20に接触して電圧を印加することにより感光体ドラム20の表面を一様に帯電する。
【0021】
現像装置61は、一成分現像剤を使用してもよいが、本実施形態では、磁性キャリアと非磁性トナーからなる二成分現像剤(以下、単に「現像剤」という。)を使用している。本実施形態で使用する各色トナーは、それぞれの色に着色された樹脂材料からなる。この現像装置61では、現像剤を2本のスクリュ64で攪拌しながら搬送循環し、現像ローラ63に供給する。現像ローラ63に供給された現像剤は、マグネットにより汲み上げて保持される。現像ローラ63に汲み上げられた現像剤は、現像ローラ63の回転に伴って搬送され、ドクタブレード65により適正な量に規制される。そして、規制された現像剤は現像装置内に戻される。このようにして感光体ドラム20と対向する現像領域まで搬送された現像剤は、マグネットにより穂立ち状態となり、磁気ブラシを形成する。現像領域では、現像ローラ63に印加されている現像バイアスにより、現像剤中のトナーを感光体ドラム20上の静電潜像部分に移動させる現像電界が形成される。これにより、現像剤中のトナーは、感光体ドラム20上の静電潜像部分に転移し、感光体ドラム20上の静電潜像は可視像化され、トナー像が形成される。現像領域を通過した現像剤は、マグネットの磁力が弱い部分まで搬送されることで現像ローラ63から離れ、現像装置61内に戻される。このような動作の繰り返しにより、現像装置61内のトナー濃度が薄くなると、それをトナー濃度センサ(不図示)が検出し、その検出結果に基づいて、トナー補給部(不図示)から現像装置内にトナーが補給される。
【0022】
1次転写装置62は、1次転写ローラを採用しており、中間転写ベルト10を挟んで感光体ドラム20に押し当てるようにして設置されている。
【0023】
感光体クリーニング装置80は、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード81の先端を感光体ドラム20の表面に押し当てられるように配置される。クリーニングブレード81により感光体ドラム20から除去されたトナーは、感光体クリーニング装置80の内部に収容される。そして、収容されたトナーは、感光体クリーニング装置80の内部に配置された、トナー搬送コイル82により廃トナー収容容器(不図示)に搬送される。また、本実施形態の感光体クリーニング装置80は、潤滑剤塗布ブラシ84に固形潤滑剤85を押圧して感光体ドラム20の表面に塗布する潤滑剤塗布手段83を内蔵している。また、クリーニングブレード81は、潤滑剤塗布手段83で塗布した潤滑剤を感光体ドラム20表面に均して塗りこむ均し部材としても兼用されるため、感光体ドラム20表面に対してカウンター方式に当接している。
【0024】
以上の構成をもつ画像形成ユニット18では、感光体ドラム20の回転とともに、まず帯電装置60で感光体ドラム20の表面を一様に帯電する。次いでスキャナ300により読み取った画像情報や、パソコン等から送信された印刷情報に基づいて露光装置21からレーザやLED等による書込光Lを照射し、感光体ドラム20上に静電潜像を形成する。その後、現像装置61により静電潜像が可視像化されてトナー像が形成される。このトナー像は、1次転写装置62により中間転写ベルト10上に1次転写される。1次転写後に感光体ドラム20の表面に残留した転写残トナーは、感光体クリーニング装置80により除去され、その後、感光体ドラム20の表面は、次の画像形成に供される。
【0025】
次に、本実施形態における複合機のコピー動作について説明する。上述したような構成をもつ複合機を用いて原稿のコピーをとる場合、まず、原稿自動搬送装置400の原稿台30に原稿をセットする。又は、原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じてそれで押さえる。その後、ユーザーがスタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときには、原稿がコンタクトガラス32上に搬送される。そして、スキャナ300が駆動して第1走行体33および第2走行体34が走行を開始する。これにより、第1走行体33からの光がコンタクトガラス32上の原稿で反射し、その反射光が第2走行体34のミラーで反射されて、結像レンズ35を通じて読取センサ36に案内される。このようにしいて原稿の画像情報を読み取る。
【0026】
また、ユーザーによりスタートスイッチが押されると、駆動モータ(不図示)が駆動し、支持ローラ14,15,16のうちの1つが回転駆動して中間転写ベルト10が回転駆動する。また、これと同時に、各画像形成ユニット18Y,18C,18M,18BKの感光体ドラム20Y,20C,20M,20BK及び2次転写装置22の2次転写ベルト24も回転駆動する。なお、これら中間転写ベルト10、感光体ドラム20Y,20C,20M,20BK及び2次転写ベルト24は、これらの間で一定の相対速度が維持されるように制御がなされている。その後、スキャナ300の読取センサ36で読み取った画像情報に基づき、露光装置21から、各画像形成ユニットの感光体ドラム20Y,20C,20M,20BK上に書込光Lがそれぞれ照射される。これにより、各感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKには、それぞれ静電潜像が形成され、現像装置61Y,61C,61M,61BKにより可視像化される。そして、各感光体ドラム20Y,20C,20M,20BK上には、それぞれ、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナー像が形成される。このようにして形成された各色トナー像は、各1次転写装置62Y,62C,62M,62BKにより、順次中間転写ベルト10上に重なり合うようにそれぞれ1次転写される。これにより、中間転写ベルト10上には、各色トナー像が重なり合った合成トナー像が形成される。なお、2次転写後の中間転写ベルト10上に残留した転写残トナーは、ベルトクリーニング装置17により除去される。
【0027】
また、ユーザーによりスタートスイッチが押されると、ユーザーが選択した転写紙に応じた給紙テーブル200の給紙ローラ42が回転し、給紙カセット44の1つから転写紙が送り出される。送り出された転写紙は、分離ローラ45で1枚に分離して給紙路46に入り込み、搬送ローラ47により複合機本体100内の給紙路48まで搬送される。このようにして搬送された転写紙は、レジストローラ49に突き当たったところで止められる。なお、給紙カセット44にセットされていない転写紙を使用する場合、手差しトレイ51にセットされた転写紙を給紙ローラ50により送り出し、分離ローラ52で1枚に分離した後、手差し給紙路53を通って搬送される。そして、同じくレジストローラ49に突き当たったところで止められる。
【0028】
レジストローラ49は、上述のようにして中間転写ベルト10上に形成された合成トナー像が2次転写装置22の2次転写ベルト24に対向する2次転写部に搬送されるタイミングに合わせて回転を開始する。ここで、レジストローラ49は、一般的には接地されて使用されることが多いが、転写紙の紙粉除去のためにバイアスを印加するようにしてもよい。その印加バイアスには、DC電圧が用いられるが、転写紙をより均一に帯電させるためにDCオフセット成分をもったAC電圧を用いてもよい。なお、このようにバイアスが印加されたレジストローラ49を通過した後の転写紙表面は、若干ながら負極性に帯電する。よって、この場合、中間転写ベルト10から転写紙への2次転写時にはレジストローラ49にバイアスが印加されなかった転写紙とは転写条件が変わるため、適宜転写条件を変更する必要が生じる。
【0029】
レジストローラ49により送り出された転写紙は、中間転写ベルト10と2次転写ベルト24との間に形成される2次転写ニップに送り込まれ、2次転写装置22により、中間転写ベルト10上の合成トナー像が転写紙上に2次転写される。そして、合成トナー像が転写された転写紙は定着装置27に送られ、その定着装置27により熱と圧力によって合成トナー像が転写紙に定着される。その後、転写紙は、排紙ローラ56まで搬送され、排紙トレイ57に排出されスタックされる。
【0030】
次に、本発明の特徴であるベルト寄り防止装置を、定着ベルト方式の定着装置27の加熱ローラに適用した例について、実施例を挙げ、図を用いて説明する。
【0031】
(実施例1)
まず、本実施形態に係る定着装置27の第1の実施例である実施例1について、図を用いて説明する。図3は、本実施例に係る定着装置27の断面説明図、図4は、本実施例に係る定着装置27の主要部の斜視図である。図5は、加熱ローラ103に備えたベルト寄り防止装置110の構成説明図であり、(a)が可動部の斜視図、(b)が可動部を支持する可動部支持部材も図示した斜視図である。図6は、加熱ローラ103に備えたベルト寄り防止装置110の動作説明図、図7は、定着ベルト101上に形成される作像領域とベルト寄り防止装置110との位置関係の説明図である。図8は、ベルト移動追従部材111と一体的に構成されたローラ軸変位部材113の説明図である。図9は、ベルト移動追従部材111を押圧する手段の説明図であり、(a)が加熱ローラ軸103aに平行な断面を示し、(b)が加熱ローラ軸103aに垂直なガイド保持部材114に設けられたガイドルーズ穴の平面を示す。そして、図10は、ガイド部材112とローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部が当接する面の角度の説明図、図11は、ベルト寄り補正動作時のベルト寄り装置の状態説明図である。
【0032】
図3に示すように、本実施例の定着装置27は、主に、定着ローラ102、加熱ローラ103、及びテンションローラ104に張架された幅広の無端ベルトである定着ベルト101と、加圧ローラ105を備えている。そして、加圧ローラ105は、定着ニップ部を形成するために、定着ベルト101を介して定着ローラ102に対して加圧されている。このような定着装置27においては、各部材の構成や構成部材の左右偏差によって、図4の斜視図に示すように、矢印方向、つまり各ローラの軸方向へのベルトの片寄りが生じる。
【0033】
そこで、本実施例の定着装置27では、従動ローラである加熱ローラ103の片側のみにベルト寄り防止装置110を設け、定着ベルト101のベルトの寄りを効果的に抑制することとした。そこで、図5(a)、(b)及び図6では、加熱ローラ103のベルト寄り防止装置110をもうけた片側のみを拡大して示している。図5(a)、(b)及び図6では、加熱ローラ103及びベルト移動追従部材111に定着ベルト101が掛け回されている。ここで、ベルト移動追従部材111は、その端部に設けられたツバ部111aに、定着ベルト101の定着ベルト端101aを当接させた状態で、定着ベルト101が掛け回されている。
【0034】
ベルト寄り防止装置110は、主に、ベルト移動追従部材111、ローラ軸変位部材113、ガイド部材112、ガイド保持部材114、ガイドフレーム115、及び可動部支持部材123から構成されている。そして、ベルト移動追従部材111とローラ軸変位部材113は一体的に構成されており、加熱ローラ103を回転自在に支持する加熱ローラ軸103aの軸方向に対して移動可能に配置されている。また、加熱ローラ軸103aは、ベルト寄り防止装置110側の端部が、図6に示すように略鉛直な方向の軌道に沿って傾倒可能であって、その軸心を中心に回転しないように他端側の回動支点(不図示)で支持されている。
【0035】
ベルト移動追従部材111は、上述したように加熱ローラ軸103aの軸方向に対して移動可能に配置されなければならないので、図7に示すように加熱ローラ103の端部との間に一定の距離をおいて離間されて配置される。そして、ベルト移動追従部材111と一体的に構成されるローラ軸変位部材113には、図8に示すように、円筒を斜めにカットした形状に加工された一部分を備えている。この円筒を斜めにカットした形状部は、ガイドフレーム115を介してガイド保持部材114に固定されているガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部に、加熱ローラ103の自重により当接する。
【0036】
また、ベルト移動追従部材111とローラ軸変位部材113とは、ベルト移動追従部材111に圧入された軸受119を介して、ローラ軸変位部材113を接続することで、一体的に構成されている。このように一体的に構成することで、ベルト移動追従部材111が定着ベルト101の回転にともなって回転しても、ローラ軸変位部材113はベルト移動追従部材111と連れ回って回転することがない。ローラ軸変位部材113が連れマ回らないことで、安定したローラ軸変位量を維持することができる。
【0037】
ローラ軸変位部材113は、図9(a)に示すように、加熱ローラ軸103aに固定されたスライドガイド板119aに一端を支持された位置決めスプリング等の軸方向弾性部材116により、図中左側(回動支点側)に押圧されている。この押圧の作用で、ローラ軸変位部材113と一体的に構成されたベルト移動追従部材111のツバ部111aは、定着ベルト端101aと常に当接する構成となっている。ここで、スライドガイド板119aの加熱ローラ軸103aへの固定は、図9(a)、(b)に示すように、加熱ローラ軸103aに圧入された軸ホルダ117に、ローラ軸変位部材113側からスライドガイド板119aをネジで固定することで行っている。なお、軸方向弾性部材116は、本実施例ではスプリングで構成しているが、その他の様々な通常公知の弾性体も適宜に使用可能である。また、定着ベルト101への負荷を小さくするために、軸方向弾性部材116のバネ定数は小さければ小さい程有利である。しかし、詳しくは後述が、定着ベルト101が左右に寄った際に、この寄りに起因してベルト移動追従部材111を定着ベルト101の移動に追従させなければならないので、最低限のバネ定数は必要である。
【0038】
ガイド部材112は、その円筒を斜めにカットされた形状部に、ローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部がスライド可能に当接し、回動する加熱ローラ軸103aと平行に傾倒するとともに略上下に動作するように構成されている。このように動作させるために、ガイド部材112には、略「コ」の字状に形成されたガイドフレーム115を介して、加熱ローラ軸103aに垂直に配置されたガイド保持部材114に固定されている。「コ」の字の自由端を有する加熱ローラ軸103aに垂直な一辺により形成される面に、ガイド部材112の円筒の軸心を垂直にして嵌め合わせて固定し、この面に平行な辺により形成される面を、ガイド保持部材114の面に当接させ固定している。そして、ガイド保持部材114には、その板厚よりも僅かに軸方向の厚さが長い軸ホルダ117を加熱ローラ軸103aの回動方向、つまりガイド保持部材114の上下方向にスライド可能に保持する矩形のガイド部長穴120が形成されている。また、軸ホルダ117のローラ軸変位部材113側には、上述したようにスライドガイド板119aが固定され、他方にはスライドガイド板119aをネジで固定してガイド保持部材114を両側から挟みこみスライド可能に構成している。上述したように構成することで、ローラ軸変位部材113の軸方向の移動にともなって、ガイド部材112とガイド保持部材114とは、回動する加熱ローラ軸103aと平行に傾倒するとともに略上下に移動するすることが可能となる。
【0039】
また、ガイド部材112とローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部とは、加熱ローラ103自身の自重で当接するようになっている。しかし、本実施例では、加熱ローラ103自身の自重を軽減させる目的で、加熱ローラ軸103aに固定された軸ホルダ117をガイド保持部材114の上方向に押圧するスプリング等の回動方向弾性部材118が設けられている。そして、軸ホルダ117を押圧する力を、加熱ローラ軸103aが傾倒する際の反力とするため、ガイド保持部材114の下部に2つのコロ121を回転可能に取り付け、装置本体に固定された可動部支持部材123の水平な面上に搭載している。可動部支持部材123の水平な面上に、コロ121を介してガイド保持部材114を搭載することで、回動方向弾性部材118の押圧力の一端側の反力を得ることができ、加熱ローラ103自身の自重を軽減させることができる。
【0040】
また、可動部支持部材123の略鉛直な面には、テンションローラ104により与えられる定着ベルト101の張力による加熱ローラ軸103aの水平方向の移動を規制するとともに、加熱ローラ軸103aを傾倒可能にするための規制用長穴124が形成されている。なお、この回動方向弾性部材118は、図中に示したようなスプリングに限定されるものではなく、加熱ローラ軸103aを直接又は間接的に押圧する板バネ等であってもよい。また、加熱ローラ103の自重によるガイド部材112とローラ軸変位部材113との接触圧を軽減することができれば、ローラ軸変位部材113に様々な種類の弾性体を用いることが可能である。しかし、ガイド部材112とローラ軸変位部材113とは常に加熱ローラ103の自重による作用を受けて当接していなければならないので、加熱ローラ103の重量により回動方向弾性部材118に用いる弾性体のバネ定数は決定される。
【0041】
また、本実施例では、図10に示すようにガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部の加熱ローラ軸103aに対する傾斜角と、ローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角とを等しく構成している。つまり、図10図中のガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角θ1と、ローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角θ2とを等しく構成している。このように互いの傾斜角を構成することで、定着ベルト101の寄りに応じて、加熱ローラ軸103aが略上下方向に傾倒する。
【0042】
例えば、図6中で破線線で示すような図中右方へ定着ベルト101が寄ると、ガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角θ1に沿って、加熱ローラ軸103aは、加熱ローラ103の自重により図中破線で示される下方に傾く。このとき、図10に示すようにθ1=θ2とすると、ガイド部材112とローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部は面で当接し、ガイド部材112とローラ軸変位部材113の局所的な摩耗の発生を抑制できる。したがって、θ1、θ2の角度が経時で変化せず、偏磨耗によるガタの発生を抑制できるので、安定したローラ軸変位量を維持することができるだけでなく、ローラ軸変位部材113とガイド部材112の部品寿命に対しても効果的である。また、本実施例では、2つのコロ121を介して、ガイド保持部材114を可動部支持部材123に搭載しているので、ガイド保持部材114と可動部支持部材123との偏磨耗によるガタの発生を抑制できる。しかし、本発明のガイド保持部材114と可動部支持部材123との接触部分の構成は、このような構成に限定されるものではなく、偏磨耗を生じない構成であればよい。
【0043】
次に、本発明のベルト寄り防止装置110の動作について説明する。まず、定着ローラ102が駆動していない状態、つまり定着ベルト101が回転していない状態では、ベルト寄り防止装置110は図11(b)に示すように、ローラ軸変位部材113とガイド部材112の円筒の軸心が略同軸上になっている。このとき、ローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部は、加熱ローラ103の自重により、ガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部に当接した状態で保持されている。この状態でも、軸方向弾性部材116がローラ軸変位部材113を図中左方に押圧するので、ローラ軸変位部材113と一体的に構成されたベルト移動追従部材111のツバ部111aは、定着ベルト101のベルト端101aに当接する。
【0044】
定着ローラ102が回転を始めると、各部材間の平行度等の何らかの要因で図6中に破線で示すような図中右方へ向かう定着ベルト101の寄りが発生すると、定着ベルト101の寄りに応じてベルト移動追従部材111も図中右方へ押される。この際、ベルト移動追従部材111と一体的に構成されているローラ軸変位部材113も同様に図中右方へ押され、軸方向弾性部材116がローラ軸変位部材113を押えているバネ力よりも強いベルト寄り力が発生する。このベルト寄り力が発生すると、ローラ軸変位部材113も図中右方へ移動させられる。
【0045】
このとき、ローラ軸変位部材113が円筒を斜めにカットした形状に形成されているので、加熱ローラ軸103aは、加熱ローラ103の自重によりガイド部材112によって案内される。そして、図6中、一点鎖線で示されている加熱ローラ軸103aの初期位置から図中破線で示される下方に傾く。より具体的には、図10(c)に示すように、ローラ軸変位部材113は、その円筒を斜めにカットした形状部が、加熱ローラ軸103aに平行に移動可能なガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部に案内され下方へスライドするように移動する。そして、この移動に連動して加熱ローラ軸103aは、ガイド保持部材114に設けられた回動方向弾性部材118の弾性力に抗して、加熱ローラ軸103aが下方へ傾く。加熱ローラ軸103aが下方へ傾く際、ガイド保持部材114は、スライドガイド板119a、bにより鋏み込まれており、加熱ローラ軸103aに対して垂直にスライドするとともに、コロ121の回転軸122を中心に回動する。
【0046】
加熱ローラ軸103aが下方に傾くと、以下に説明するように、定着ベルト101は、加熱ローラ軸103aの傾斜角度に依存して図6図で中左方に寄っていくようになり、ベルト寄りを軽減し収束させることが可能となる。
【0047】
同様に、図6図中で二点鎖線で示されるような図中左方への定着ベルト101の寄りが発生すると、定着ベルト101が掛けまわされ、定着ベルト101と共に回転しているベルト移動追従部材111も図中左方へ移動する。これは、ベルト移動追従部材111と一体に構成されているローラ軸変位部材113が位置決め軸方向弾性部材116で付勢されているので、ツバ部111aをベルト端101aに当接させたまま図中左方へ移動するためである。当然ながら、ベルト移動追従部材111と一体的に構成されているローラ軸変位部材113も、ベルト移動追従部材111の移動にともない、図中左方に移動させられる。
【0048】
このとき、ローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部には、加熱ローラ軸103aに対して平行に移動するガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部がスライド可能に当接している。このように当接しているため、ローラ軸変位部材113の移動に伴い、加熱ローラ軸103aは、ガイド部材112によって案内され、一点鎖線で示されている加熱ローラ軸103aの初期位置から図6図中二点鎖線で示される上方に傾く。より具体的には、図10(a)に示すように、ローラ軸変位部材113は、その円筒を斜めにカットした形状部が、加熱ローラ軸103aに平行に移動可能なガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部に案内され上方へスライドするように移動する。そして、この移動に連動して加熱ローラ軸103aは、加熱ローラ軸103aが上方へ傾く。加熱ローラ軸103aが下方へ傾く際、ガイド保持部材114は、スライドガイド板119a、bにより鋏み込まれており、加熱ローラ軸103aに対して垂直にスライドするとともに、コロ121の回転軸122を中心に回動する。
【0049】
加熱ローラ軸103aが上方に傾くと、以下に説明するように、定着ベルト101は、加熱ローラ軸103aの傾斜角度に依存して図6図中右方に寄っていくようになり、ベルト寄りを軽減し収束させることが可能となる。
【0050】
次に、上述した加熱ローラ軸103aが傾くことによるベルト寄り補正の原理について以下に説明する。まず、定着ベルトを剛体であると仮定して、特定のローラに進入する前の定着ベルト上の任意の一地点に注目する。当該一地点は、複数のローラに掛けまわされた定着ベルトが完全に水平で平行な状態であれば、複数のローラの回転にともなってローラ軸方向に移動することなく各ローラ上を回転する。このように回転するため、定着ベルトのベルト寄りは発生しない。
【0051】
一方、一つのローラのローラ軸を他のローラのローラ軸に対して傾けた場合、その傾斜角をαと仮定すると、定着ベルト上の当該一地点は、傾けたローラの回転にともないtanα分だけベルトの進入方向に対して軸方向に移動した地点に移動することになる。すなわち、図5(a)において、加熱ローラ軸103aを、定着ベルト101の加熱ローラ103への進入方向で見て上流側に配置されるテンションローラ104に対して傾斜角αだけ下方に傾ける。すると、定着ベルト101を加熱ローラ103の回転にあわせて図5(a)中左方へtanα分だけ寄らせることが可能となる。この作用は、物理的な作用であるため、加熱ローラ軸103aを水平方向よりも上方に傾けた場合には、定着ベルト101を加熱ローラ103の回転にあわせて図5(a)中右方に寄らせることが可能となる。
【0052】
なお、ガイド部材112に対する加熱ローラ103の自重を軽減する目的で設置される回動方向弾性部材118は、本発明を実施する上で必ずしも必要ではない。しかしながら、回動方向弾性部材118を省略した場合には、ローラ軸変位部材113を上方へ移動させる際には、加熱ローラ103の自重全てに対する反力をベルトが寄る作用によって生じさせないとローラ軸変位部材113を移動させることができない。したがって、フレキシブルで確実なベルト寄り制御に対して不利益であるため、回動方向弾性部材118を設けることが好ましい。
【0053】
また、上述したように、図7に示すように、加熱ローラ103とベルト移動追従部材111との間には、ベルト移動追従部材111が図中左方へ移動する際に必要となる隙間が設けられている。同様に、ローラ軸変位部材113とガイド保持部材114との間にも、軸方向弾性部材116が嵌挿されるための、及び、ローラ軸変位部材113が図中右方へ移動するための隙間が設けられている。このように隙間を設けることで、安定したローラ軸変位量を維持することができるだけでなく、安定した画像形成を行うことができる。
【0054】
(実施例2)
次に、本実施形態に係る定着装置27の第2の実施例である実施例2について、図を用いて説明する。本実施例と上述した実施例1とは、次の点のみが異なる。本実施例のベルト寄り防止装置110では、ローラ軸変位部材113、又はガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部に低摩擦係数の高分子樹脂を塗布する点のみが異なる。したがって、他の共通する構成、作用・効果については、適宜省略して説明する。ここで、図12は、本実施例のベルト寄り防止装置110で、ローラ軸変位部材113のガイド部材112との当接部分に、低摩擦係数の高分子樹脂を塗布した場合の説明図である。また、図13は、本実施例のベルト寄り防止装置110で、ガイド部材112のローラ軸変位部材113との当接部分に、低摩擦係数の高分子樹脂を塗布した場合の説明図である。
【0055】
定着ベルト101の寄りが発生し、定着ベルト101が、図12図中の左右方向に移動すると、この移動にならってベルト移動追従部材111が同方向へ移動する。すると、ローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部が、ガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部に摺動し摩擦が生じる。摩擦が生じることでローラ軸変位部材113に摩耗が生じる可能性がある。そこで、ガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部と摺動する、ローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部(一点鎖線部)に低摩擦係数の高分子樹脂、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を塗布する。このように塗布することで、上記摩擦力を低下させ、ローラ軸変位部材113が、ガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部にならって移動する動きを減衰させることなく、安定したローラ軸変位量を維持することができる。
【0056】
また、同様に摩擦が生じることでガイド部材112に摩耗が生じる可能性もある。したがって、ローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部と摺動する、ガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部(一点鎖線部)に低摩擦係数の高分子樹脂、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等を塗布する。このように塗布することで、上記摩擦力を低下させ、ローラ軸変位部材113が、ガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部にならって移動する動きを減衰させることなく、安定したローラ軸変位量を維持することができる。
【0057】
また、本実施形態では、本発明を定着装置に適用した例について説明してきた。しかし、本発明のベルト寄り防止装置を適用可能なベルト装置は、定着装置に用いるベルト装置に限定されず、画像形成装置に用いられる多様なベルト装置に適用可能である。例えば、感光体ベルト、中間転写ベルト、及び転写材搬送ベルトに用いられるベルト装置にも適用可能である。
【0058】
以上、本実施形態の複合機のベルト寄り防止装置110では、次のような作用・効果を奏することができる。加熱ローラ軸103aに対して回転しないローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部を、スライド可能に当接するガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部で案内する。このように案内することで、定着ベルト101のローラ軸方向の移動量に応じた傾きを、加熱ローラ軸103aに与えることができるので、安定したベルト寄りの補正ができる。さらに、加熱ローラ軸103aに対する、ローラ軸変位部材113の円筒を斜めにカットした形状部とガイド部材112の円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角度は等しいので、スライドする際の接触面積を従来の構成よりも広くできる。接触面積を広くできるので、従来の構成よりもローラ軸変位部材113とガイド部材112の接触面に偏磨耗が生じにくく、各部材の寿命を向上させることができるとともに、偏磨耗によるガタの発生を抑制できる。よって、従来の構成よりも偏磨耗によるガタの発生を抑制でき、安定したベルト寄り補正が行なえるとともに、耐久性に優れたベルト寄り防止装置110を提供することができる。
また、本実施形態の複合機のベルト寄り防止装置110では、定着ベルト101が張架されている各ローラの端部がベルト作像領域よりも外側にあるように、ベルト移動追従部材111と加熱ローラ103との間の隙間が設定している。このように隙間を設定することで、安定したローラ軸変位量を維持することができるだけでなく、安定した画像形成を行うことができる。
また、本実施形態の複合機のベルト寄り防止装置110では、ローラ軸変位部材113のガイド部材112と当接する箇所に低摩擦係数の高分子樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)を塗布している。このように塗布することで、安定したローラ軸変位量を維持することができるだけでなく、ローラ軸変位部材113とガイド部材112の部品寿命を向上させることができる。
また、本実施形態の複合機のベルト寄り防止装置110では、ガイド部材112のローラ軸変位部材113と当接する箇所に低摩擦係数の高分子樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)を塗布している。このように塗布することで、安定したローラ軸変位量を維持することができるだけでなく、ローラ軸変位部材113とガイド部材112の部品寿命を向上させることができる。
また、本実施形態の複合機のベルト寄り防止装置110を備えたベルト装置では、無端ベルトが定着装置27に用いる定着ベルトであるので、上述したような作用・効果を定着ベルト装置で奏することができる。
また、本実施形態の複合機のベルト寄り防止装置110を備えたベルト装置では、無端ベルトが感光体ベルト装置に用いる感光体ベルトであるので、上述したような作用・効果を感光体ベルト装置で奏することができる。
また、本実施形態の複合機のベルト寄り防止装置110を備えたベルト装置では、無端ベルトが中間転写ベルト装置に用いる中間転写ベルト10であるので、上述したような作用・効果を中間転写ベルト装置で奏することができる。
また、本実施形態の複合機のベルト寄り防止装置110を備えたベルト装置では、無端ベルトが転写材搬送ベルト装置に用いる転写材搬送ベルトであるので、上述したような作用・効果をの転写材搬送ベルト装置で奏することができる。
また、本実施形態の画像形成装置である複合機では、ベルト装置として、上述したいずれかのベルト装置を備えているので、上述したいずれかのベルト装置と同様な作用・効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 中間転写ベルト
18 画像形成ユニット
20 感光体ドラム
21 露光装置
22 2次転写装置
27 定着装置
60 帯電装置
61 現像装置
62 1次転写装置
100 複合機本体
101 定着ベルト
101a 定着ベルト端
102 定着ローラ
103 加熱ローラ
103a 加熱ローラ軸
104 テンションローラ
105 加圧ローラ
110 ベルト寄り防止装置
111a ツバ部
111 ベルト移動追従部材
112 ガイド部材
113 ローラ軸変位部材
114 ガイド保持部材
115 ガイドフレーム
116 軸方向弾性部材
117 軸ホルダ
118 回動方向弾性部材
119a スライドガイド板
119 軸受
120 ガイド部長穴
121 コロ
122 回転軸
123 可動部支持部材
124 規制用長穴
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開2006−162659号公報
【特許文献2】特開2009−186910号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラに張架されて回転駆動される無端ベルトのベルト寄りを補正するベルト寄り防止装置において、
上記複数のローラのうち少なくとも一つを傾倒可能に構成し、
傾倒可能なローラのローラ軸に、
上記ローラに張架される無端ベルトのローラ軸方向の移動と、該ローラ軸を中心とした回転に追従するベルト移動追従部材と、
上記ローラに張架される無端ベルトのローラ軸方向の移動に追従し、該ローラ軸を中心とした回転に追従しない、上記ベルト移動追従部材と一体的に構成されたローラ軸変位部材とを設け、
上記ローラ軸変位部材の一部に円筒を斜めにカットした形状部を形成し、
上記ローラ軸変位部材の円筒を斜めにカットした形状部に、スライド可能に当接する円筒を斜めにカットした形状部を有するガイド部材を設け、
上記ローラ軸に対する、上記ローラ軸変位部材の円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角度と、上記ガイド部材の円筒の円筒を斜めにカットした形状部の傾斜角度とは等しく構成し、
上記ベルト移動追従部材の移動追従にともない、上記ローラ軸変位部材の円筒を斜めにカットした形状部が、上記ガイド部材の円筒を斜めにカットした形状部に案内されて、上記無端ベルトのローラ軸方向の移動量に応じた傾きを、上記ローラ軸に与えることを特徴とするベルト寄り防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト寄り防止装置において、
無端ベルトが張架されている各ローラの端部が、無端ベルトの作像領域よりも外側にあるように、ベルト移動追従部材と傾倒可能なローラとの間の隙間が設定されていることを特徴とするベルト寄り防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベルト寄り防止装置において、
ローラ軸変位部材は、ガイド部材と当接する箇所に低摩擦係数の高分子樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)が塗布されていることを特徴とするベルト寄り防止装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一に記載のベルト寄り防止装置において、
ガイド部材は、ローラ軸変位部材と当接する箇所に低摩擦係数の高分子樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)が塗布されていることを特徴とするベルト寄り防止装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一に記載のベルト寄り防止装置を備えたベルト装置において、
無端ベルトが、画像形成装置に用いる定着ベルトであることを特徴とするベルト装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一に記載のベルト寄り防止装置を備えたベルト装置において、
無端ベルトが、画像形成装置に用いる感光体ベルトであることを特徴とするベルト装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一に記載のベルト寄り防止装置を備えたベルト装置において、
無端ベルトが、画像形成装置に用いる中間転写ベルトであることを特徴とするベルト装置。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一に記載のベルト寄り防止装置を備えたベルト装置において、
無端ベルトが、画像形成装置に用いる転写材搬送ベルトであることを特徴とするベルト装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか一に記載のベルト装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−198293(P2012−198293A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60847(P2011−60847)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】