説明

ベルト式無段変速機

【課題】固定シーブを中空構造にしてベルト式無段変速機の軽量化を図るとともに、プーリおよびベルトの冷却性能を確保することができるベルト式無段変速機を提供する。
【解決手段】ベルト4と、テーパ面6aとそのテーパ面6aに対して回転軸2の軸線方向で反対側の背面6cとが形成されかつそれらテーパ面6aと背面6cとの間に中空部6eが設けられた固定シーブ6と、テーパ面5aが形成されかつ回転軸2の軸線方向に摺動可能に装着された可動シーブ5と、固定シーブ6と可動シーブ5とにより構成されるプーリ3とを備えたベルト式無段変速機において、背面6cに、固定シーブ6の外部から中空部6eへ空気を供給するための吸気口9を設けるとともに、背面6cにおける回転軸2を支持する軸受7の内径側の位置に、中空部6eから背面6c側の軸受7に向けて空気を排出するための排気口10を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動側のプーリと従動側のプーリとの間で、それらの間に巻き掛けられたベルトを介して動力を伝達しかつ変速比を連続的に制御するベルト式無段変速機に関し、特に、そのベルト式無段変速機のプーリおよびベルトを冷却するための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速機は、ベルトを巻掛けたプーリの溝幅を変化させることにより、プーリの有効径すなわちベルトの巻き掛かり半径を変更して変速比を無段階に設定することのできる変速機である。したがって駆動側(もしくは入力側)および従動側(もしくは出力側)の各プーリが、それぞれ、固定シーブとその固定シーブに対して軸線方向に摺動して近接・離間する可動シーブとによって形成される。そして、可動シーブを例えば油圧などを利用して移動させることにより、各プーリの溝幅を変化させて、ベルトの巻き掛かり半径を連続的に変更することができるように構成されている。
【0003】
上記のようなベルト式無段変速機の一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたベルト式無段変速機は、コーン面が形成されて回転シャフトに一体になった固定シーブと、その固定シーブのコーン面に対向するコーン面が形成されて回転シャフトの軸方向に摺動自在に装着された可動シーブとを有するベルト式無段変速機であって、コーン面が形成された第1フランジ部と、コーン面に対して回転シャフトの軸方向で反対側の背面が形成された第2フランジ部とが環状接合面で摩擦溶接によって接合されている。したがって、固定シーブの内部が環状の中空構造となるように構成されている。
【0004】
なお、特許文献2には、外周に歯車部が形成されたプーリフェイスと、駆動軸と共に回転する円筒状のボス部により形成されるドライブ固定シーブと、駆動軸と共に回転しつつドライブ固定シーブに近接・離隔するドライブ可動シーブと、ベース板部および複数の羽根片が形成されたファン部材と、軸方向に突出して歯車部と噛み合うピニオンギヤが設けられたスタータモータとからなり、ファン部材が、ボス部に固定されるとともにドライブ固定シーブの背面側と相互に弾性を有しつつ装着されるように構成されたVベルト式自動変速装置に関する発明が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、駆動プーリの可動シーブに冷却風通路が形成されたVベルト式自動変速機であって、可動シーブの軸線方向へ延びるように形成された複数の軸方向通路と、放射状に形成された径方向通路とによって冷却風通路が形成され、軸方向通路の一端が可動シーブにおける伝動部とは反対側の端部に開口するとともに、他端が径方向通路の径方向の内側の端部に接続され、径方向通路の径方向の外側の端部が可動シーブの外周部に開口するように構成されたVベルト式自動変速機に関する発明が記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、無段変速用の一組のプーリとベルトとが無段変速ケース内に設置され、無段変速ケースの一方側に入力軸が支持され、他方側に出力軸が支持されるとともに、入力軸および出力軸上にそれぞれプーリが支持されるよう構成された無段変速装置であって、入力軸の軸内に冷却風が通る通風孔が形成された無段変速機の冷却機構に関する発明が記載されている。
【0007】
そして、特許文献5には、ケース本体内に形成されたベルト室内に、入力側プーリと出力側プーリとの間にベルトが巻き掛けられて構成される無段変速機が設置され、出力側プーリのプーリ軸の外周にベルト室冷却用のファンが設けられた乾式無段変速機であって、ケース本体の出力側プーリ軸を支持するボス部の外周に、ファンの中心部に外気を吸い込ませるための複数の連通口が貫通して形成された乾式無段変速機の冷却構造に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−106659号公報
【特許文献2】特開2008−196528号公報
【特許文献3】特開2002−206604号公報
【特許文献4】特開平9−280333号公報
【特許文献5】特開平9−329217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1に記載されたベルト式無段変速機のように、プーリの固定シーブを中空構造に形成することにより、従来一般的な回転軸と一体に成形された固定シーブ、すなわち中実構造の固定シーブによってプーリを構成した場合と比較して、プーリを軽量化することができる。その結果、そのプーリを使用するベルト式無段変速機を軽量化することができ、またコストダウンを図ることもできる。
【0010】
しかしながら、固定シーブを中空構造に形成した場合は、固定シーブを中実構造に形成した場合と比較してプーリおよびベルトの冷却性能が低下してしまうといった課題がある。すなわち、ベルト式無段変速機では、プーリとそのプーリに巻き掛けられるベルトとの間の摩擦力によって動力伝達が行われるので、それらプーリとベルトとの間に摩擦熱が発生する。そのため、それらプーリとベルトとの間の発熱部位を冷却する必要がある。その場合、固定シーブが中実構造であれば、固定シーブのベルトとの接触面(コーン面)で発生した熱を、その接触面とプーリの回転軸方向で反対側の背面へ比較的容易に伝達させることができる。そしてその熱を固定シーブの背面からプーリの外部へ放熱させることができる。これに対して、上記の特許文献1に記載されたベルト式無段変速機のように固定シーブを中空構造に形成した場合には、固定シーブの中空部分に介在する空気が断熱層となるので、固定シーブのベルトとの接触面で発生した熱は背面側へ伝達され難くなる。すなわちプーリの熱が外部へ放熱され難くなる。したがって、固定シーブを中空構造に形成した場合は、固定シーブを中実構造に形成した場合と比較して、プーリおよびベルトの冷却効率が低下してしまうことになる。このような中空構造の固定シーブと中実構造の固定シーブとの冷却性能の差は、プーリおよびベルトの冷却に潤滑油を用いない空冷方式(もしくは乾式)のベルト式無段変速機の場合に特に顕著になる。
【0011】
このように、プーリの固定シーブを中空構造にしてベルト式無段変速機の軽量化を図ることと、プーリおよびベルトの冷却性能、特に空冷方式のベルト式無段変速機における冷却性能を確保することとを両立させるためには、未だ改良の余地があった。
【0012】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、軽量化やコストダウンのためにプーリの固定シーブを中空構造に形成する場合であっても、プーリおよびベルトの冷却性能が良好なベルト式無段変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ベルトと、回転軸に嵌合して一体に固定されるとともに、前記ベルトが巻き掛けられるV形溝の一方のテーパ面とそのテーパ面に対して前記回転軸の軸線方向で反対側の背面とが形成されかつ前記テーパ面と前記背面との間に中空部が設けられた固定シーブと、前記V形溝の他方のテーパ面が形成されるとともに、前記回転軸と一体に回転しかつ前記回転軸の軸線方向に摺動可能に装着された可動シーブと、前記固定シーブと前記可動シーブとにより前記V形溝が形成されて前記ベルトが巻き掛けられるプーリとを備えたベルト式無段変速機において、前記背面に、前記固定シーブの外部から前記中空部へ空気を供給するための吸気口が設けられ、前記背面における前記回転軸を支持する軸受の内径側の位置に、前記中空部から前記背面側の前記軸受に向けて空気を排出するための排気口が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記排気口が、前記固定シーブと前記回転軸との嵌合部分に設けられて、前記中空部から前記背面側の前記軸受に向けて空気を排出するための背面側排気口を含み、前記嵌合部分に、前記中空部から前記テーパ面側の前記固定シーブの外部へ空気を排出するためのテーパ面側排気口が更に設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記背面側排気口が、前記固定シーブの前記中空部から前記背面にわたる前記嵌合部分に設けられた前記固定シーブと前記回転軸との間のクリアランスを含み、前記テーパ面側排気口が、前記固定シーブの前記中空部から前記テーパ面にわたる前記嵌合部分に設けられた前記固定シーブと前記回転軸との間のクリアランスを含むことを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記テーパ面側排気口の前記クリアランスが、前記背面側排気口の前記クリアランスよりも大きいことを特徴とするものである。
【0017】
そして、請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかの発明において、前記吸気口が、前記プーリの前進回転方向に向いて開口する開口部を有し、前記プーリが前記前進回転方向に回転する際に、前記開口部周辺の空気を前記中空部内に取り込むとともに、前記プーリが後進回転方向に回転する際に、前記開口部周辺に負圧が発生する形状に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、プーリの固定シーブが中空構造に形成されるため、その分、プーリを軽量化することができる。そして、固定シーブの背面に吸気口と排気口とが設けられることにより、吸気口から固定シーブの中空部に空気を送り込み、その中空部に送り込まれた空気を排気口から固定シーブの外部へ排出することができる。すなわち、固定シーブの中空部に冷却用の空気を流動させることができる。そのため、ベルトとの摩擦接触によって温度が上昇する固定シーブのテーパ面およびベルトを、固定シーブの中空部側から冷却することができる。さらに、固定シーブの排気口から排出される空気を、プーリおよびプーリの回転軸を支持する軸受に放射させることができる。したがって、プーリおよび回転軸の回転に伴って温度が上昇する軸受を冷却することもできる。そのため、固定シーブを中空構造にして軽量化を図る場合であっても、冷却性能が良好な乾式のベルト式無段変速機を提供することができる。
【0019】
また、請求項2の発明によれば、固定シーブと回転軸との嵌合部分に、固定シーブの中空部から背面側の軸受に向けて空気を排出する背面側排気口と、固定シーブの中空部からテーパ面側の外部へ空気を排出するテーパ面側排気口とが設けられる。したがって、吸気口から固定シーブの中空部に供給されて固定シーブおよびベルトを冷却した空気を、背面側排気口とテーパ面側排気口とから排出させて、背面側の軸受と、プーリのテーパ面およびベルトの内周面ならびに回転軸の外周面で囲まれる空間とに放射させることができる。そのため、プーリおよびベルトならびに軸受等の発熱部分を効率良く冷却し、ベルト式無段変速機の冷却性能を向上させることができる
【0020】
また、請求項3の発明によれば、上記のような背面側排気口およびテーパ面側排気口が、固定シーブと回転軸との嵌合部分に設けられるクリアランスとして形成される。例えば、固定シーブと回転軸と嵌合部分に形成されるキー溝とそのキー溝に挿入されるキーとの間に設けられるクリアランスとして背面側排気口およびテーパ面側排気口が形成される。あるいは、固定シーブと回転軸と嵌合部分に形成されるスプラインとスプライン溝との間もしくはセレーションとセレーション溝との間に設けられるクリアランスとして背面側排気口およびテーパ面側排気口が形成される。したがって、従来固定シーブと回転軸とを固定するために設けられるキー溝構造やスプライン構造などを兼用して、背面側排気口およびテーパ面側排気口を形成することができる。すなわち、背面側排気口およびテーパ面側排気口を、それら背面側排気口およびテーパ面側排気口のための特別な加工を行うことなく容易に形成することができる。
【0021】
また、請求項4の発明によれば、上記のような背面側排気口およびテーパ面側排気口が、背面側排気口のクリアランスよりもテーパ面側排気口のクリアランスが大きくなるように形成される。すなわち、テーパ面側排気口を流れる空気量が、背面側排気口を流れる空気量よりも多くなるように、それら背面側排気口およびテーパ面側排気口が形成される。そのため、特に外部から冷却することが困難なプーリのテーパ面およびベルトの内周面ならびに回転軸の外周面で囲まれる空間に優先的に冷却用の空気を送ることができ、プーリおよびベルトならびに軸受等の発熱部分を効率良く冷却することができる。
【0022】
そして、請求項5の発明によれば、プーリが前進方向に回転することにより、吸気口から固定シーブの中空部へ空気が取り込まれる。そのため、使用頻度が高い前進方向の回転時に、固定シーブの中空部へ積極的に空気を供給し、プーリおよびベルトを効率良く冷却することができる。また、特に空冷用の送風装置などを別途設けることなく、簡易な構成で吸気口から固定シーブの中空部へ空気を供給することができる。さらに、プーリが後進方向に回転する場合は、吸気口の開口部付近で負圧が発生するように構成されているため、固定シーブの中空部内の空気がその負圧によって吸気口から外部へ吸い出される。したがって、プーリが後進方向に回転する場合にも、排気口から固定シーブの中空部へ空気を流入させ、その流入させた空気を吸気口から外部へ排出させることができ、プーリおよびベルトを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係るベルト式無段変速機の構成例を示す断面図および矢視図である。
【図2】この発明の吸気口の構成例の詳細を示すとともに、その吸気口における空気の流れを説明するための拡大断面図であって、(a)はプーリが前進回転方向に回転する場合の空気の流れを示し、(b)がプーリが後進回転方向に回転する場合の空気の流れを示す図である。
【図3】この発明の排気口の構成例の詳細を示すとともに、その排気口における空気の流れを説明するための拡大断面図である。
【図4】この発明の排気口の他の構成例を示す断面図である。
【図5】図4に示す排気口の他の構成例の詳細を示すとともに、その排気口における空気の流れを説明するための拡大断面図である。
【図6】図4に示す排気口の他の構成例の詳細を示す矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、この発明の構成を図面を参照して説明する。図1に、この発明におけるベルト式無段変速機1の構成例の主要部分を模式的に示してある。このベルト式無段変速機1は、基本的な構成や動作原理は従来のベルト式無段変速機と同様のものである。すなわち、このベルト式無段変速機1の主要部分は、平行に配置された駆動側(もしくは入力側)および従動側(もしくは出力側)の2本の回転軸2(図1では一方のみを図示している)と、その回転軸2に取り付けられた駆動側(もしくは入力側)および従動側(もしくは出力側)の2つのプーリ3と、それら2つのプーリ3のベルト巻き掛け溝3aに巻き掛けられて2つのプーリ3の間でトルクを伝達するベルト4とから構成されている。そして、駆動側および従動側の各プーリ3に対するベルト4の巻き掛かり半径を連続的に変化させることにより、変速比を連続的に変化させるように、すなわち変速比を無段階に変更するように構成されている。
【0025】
プーリ3に関して具体的説明すると、図1に示すように、回転軸2に、可動シーブ5が回転軸2と一体に回転しかつ回転軸2の回転軸線方向に移動が可能なように装着されている。また、回転軸2に、固定シーブ6が回転軸2と一体に回転しかつ回転軸2の回転軸線方向に移動が不可能なように取り付けられている。すなわち回転軸2に固定シーブ6が一体に固定されている。そして、それら可動シーブ5および固定シーブ6は、可動シーブ5のテーパ面5aと固定シーブ6のテーパ面6aとが回転軸2の回転軸線方向で互いに対向するように配置されていて、テーパ面5aとテーパ面6aとの間に、V字形状のベルト巻き掛け溝3aが形成されるようになっている。したがって、これら可動シーブ5と固定シーブ6とによってプーリ3が構成されている。
【0026】
なお、回転軸2は、軸受7によってケーシング(図示せず)に回転自在に支持されている。軸受7は、例えばラジアル玉軸受やラジアルころ軸受などのころがり軸受によって構成されていて、少なくとも、回転軸2の固定シーブ6が固定されている側の一方の端部2aを支持するように設置されている。図1には、回転軸2が端部2aにおいて片持ちで支持された構成例を示してある。これに加えて、端部2aに設置された軸受7と共に回転軸2の可動シーブ5が装着されている側の他方の端部2bにおいても軸受を設置し、回転軸2が両端で支持される構成であってもよい。
【0027】
可動シーブ5は、テーパ面5aが形成されて回転軸2上を摺動するシーブ基体部5bと、そのシーブ基体部5bの回転軸2上での端部2b側への移動限度を設定する規制部材5cとから構成されている。規制部材5cは、上記のようにシーブ基体部5bの回転軸2上での端部2b側への移動範囲を規制するためのものであって、回転軸2の端部2bに装着され、回転軸2の回転軸線方向に移動不可能なようにロックナット8などによって回転軸2に固定されている。また、可動シーブ5には、その可動シーブ5を回転軸2の回転軸線方向に摺動させて、固定シーブ6に対して接近・離隔させるためのアクチュエータ(図示せず)が設けられている。
【0028】
固定シーブ6は、テーパ面6aが形成された円盤形状もしくは円錐台形状のシーブ基体部6bと、テーパ面6aと回転軸2の回転軸方向で反対側の背面6cが形成された円盤形状もしくは円錐台形状の支持部材6dと、それらシーブ基体部6bと支持部材6dとの間すなわちテーパ面6aと背面6cとの間に形成された中空部6eとから構成されている。支持部材6dは、シーブ基体部6bがテーパ面6aにおいてベルト4からの荷重や反力を受ける際に、シーブ基体部6bの背面6c側への変形を防止するための補強部材である。したがって、シーブ基体部6bの形状、強度、およびシーブ基体部6bが受ける荷重などに応じて、支持部材6dの形状、強度が適宜設定されている。
【0029】
上記のシーブ基体部6bと支持部材6dとは、固定シーブ6を構成した際にテーパ面6aと背面6cとの間に中空部6eが形成されるように、互いに一体に固定されるとともに、共に回転軸2に一体に固定されている。したがって、中空部6eは、基体部6bと支持部材6dと回転軸2の外周面とで囲まれた空間として形成されている。
【0030】
なお、図1に示す例では、シーブ基体部6bと支持部材6dとをそれぞれ別体として成形し、それらシーブ基体部6bと支持部材6dとを接合して一体に固定することにより、それらシーブ基体部6bと支持部材6dとの間に中空部6eを形成した構成を示している。これに加えて、シーブ基体部6bと支持部材6dとを一体に成形し、例えば機械加工によってそれらシーブ基体部6bと支持部材6dとの間に中空部6eを削り出して形成することもできる。
【0031】
上記のようにして可動シーブ5と固定シーブ6とから構成されるプーリ3が、ベルト式無段変速機1の駆動側および従動側の2個所に平行に設置されていて、それら2つのプーリ3のベルト巻き掛け溝3aに、ベルト4が巻き掛けられている。この発明におけるベルト式無段変速機1は、プーリ3およびベルト4の冷却のために潤滑油を用いない空冷方式のものを対象としており、したがってこのベルト式無段変速機1で用いられるベルト4は、いわゆる乾式の伝動ベルトである。そして、ベルト4は、その幅方向(図1での左右方向)における左右の両側面が、断面を正面から見た状態でいわゆるV字状に傾斜した面として形成されていて、プーリ3のベルト巻き掛け溝3aに嵌り込むようになっている。すなわち、ベルト4は、V字形状のベルト巻き掛け溝3aが形成されたプーリ3に巻き掛けられるVベルトとして構成されている。
【0032】
上記のように、この発明のベルト式無段変速機1は、プーリ3の固定シーブ6を、シーブ基体部6bと支持部材6dとから形成することにより、その固定シーブ6が中空構造に形成されている。そのため、従来一般的であった固定シーブが中実構造のベルト式無段変速機と比較して軽量化することができる。しかしながら、前述したように、固定シーブ6を中空構造にした場合は、その中空部分に介在する空気の層が断熱層となるので、固定シーブが中実構造の場合と比較して、固定シーブ6のテーパ面6a側の熱が背面6c側へ伝達され難くなる。固定シーブ6のテーパ面6aでベルト4との摩擦によって生じた熱は、背面6c側へ伝達されることにより、その背面6cから固定シーブ6の外部へ放熱される。すなわち、固定シーブ6のテーパ面6a側から背面6c側へ伝わった熱が外部へ放熱されることにより、それらテーパ面6aおよびベルト4の発熱部位が冷却される。したがって、固定シーブ6を中空構造にすることにより、上記のように固定シーブ6のテーパ面6aの熱が背面6cから放熱され難くなり、テーパ面6aおよびベルト4の冷却性が低下してしまう可能性があった。
【0033】
そこで、この発明におけるベルト式無段変速機1では、中空構造の固定シーブ6を採用することにより固定シーブ6の熱伝達性が低くなる場合であっても、テーパ面6aおよびベルト4の良好な冷却性能を確保するために、固定シーブ6の背面6cを構成している支持部材6dに、冷却用の空気を固定シーブ6の中空部6e内へ供給するための吸気口9と、中空部6e内の空気を固定シーブ6の外部へ排出するための排気口10とが形成されている。
【0034】
吸気口9は、図1に示すように、支持部材6dの外縁部分に、すなわち支持部材6dの径方向における外周付近に、支持部材6dを貫通するとともに、プーリ3が前進方向に回転する前進回転方向を向いて開口するように形成されている。具体的には、図1,図2に示すように、吸気口9は、支持部材6dを貫通して支持部材6dの背面6c側の外部と中空部6e側との間で空気の流通を可能にする貫通穴9aと、支持部材6dの背面6cに、貫通穴9aを覆いプーリ3の前進回転方向に向いて開口するフード部材9bとから構成されている。
【0035】
フード部材9bは、上記のようにプーリ3の前進回転方向に向いて開口する開口部9cを有している。また、フード部材9bの開口部9cに対してプーリ3の回転方向で反対側の部分が、プーリ3が後進方向に回転する際に空気抵抗が低減するように傾いた傾斜面9dとして形成されている。そして、フード部材9bは、貫通穴9aを覆うとともに、貫通穴9aと開口部9cとが連通するように、支持部材6dすなわち背面6cに一体に固定されている。このフード部材9bは、後付けで支持部材6dに取り付けられて固定されてもよく、あるいは支持部材6dと一体に成形されてもよい。
【0036】
したがって、吸気口9は、図2の(a)に示すように、プーリ3が前進回転方向に回転する場合に、フード部材9bの開口部9c側が空気抵抗となり、開口部9c周辺の空気が開口部9cから貫通穴9aを通って中空部6eへ流入するように形成されている。それとともに、吸気口9は、図2の(b)に示すように、プーリ3が後進回転方向に回転する場合には、開口部9cの出口付近で負圧が発生するように形成されている。すなわち、フード部材9bに上記のような傾斜面9dが形成されていることから、プーリ3が後進回転方向に回転する場合には、その場合の吸気口9周辺の相対的な空気の流れは、吸気口9の前後で、比較的に流速が低下することなく、また比較的に流れが乱れることなく、プーリ3の後進回転方向の前方(図2の(b)の右側)から後方(図2の(b)の左側)へ進行する。そのため、プーリ3が後進回転方向に回転する場合には、吸気口9の開口部9cの出口付近で負圧が発生し、その負圧によって中空部6e内の空気が吸気口9を通って固定シーブ6の外部へ放出されることになる。
【0037】
なお、吸気口9および排気口10は、図1に示す例では、支持部材6dの円周方向に90度のピッチで4個所形成されているが、それら吸気口9および排気口10は、それぞれ、少なくとも1個所ずつに形成されればよい。吸気口9および排気口10を、例えば、支持部材6dの円周方向に120度のピッチで3個所形成することもできる。あるいは、支持部材6dの円周方向に60度のピッチで6個所形成することもできる。要は、吸気口9から供給されて排気口10から排出される空気が、所望する流れとなるように、あるいは効率良く流動するように、吸気口9および排気口10の形状・寸法、数、配置位置等をそれぞれ適宜に設定することができる。
【0038】
そして、排気口10は、支持部材6dの内縁部分に、すなわち支持部材6dの径方向における中心付近であって、吸気口9よりも支持部材6dの内径側に、支持部材6dを貫通する貫通穴として形成されている。具体的には、図1,図2,図3に示すように、排気口10は、支持部材6dの径方向における中心付近であって、固定シーブ6が軸受7と共に回転軸2上に配置された状態で軸受7の外形よりも内径側の位置に、支持部材6dを貫通して支持部材6dの背面6c側の外部と中空部6e側との間で空気の流通を可能にする貫通穴によって形成されている。また、排気口10の背面6c側の開口部10aは、回転軸2上で固定シーブ6の背面6c側に隣接して設置される軸受7に正対するように形成されている。したがって、中空部6e内から排気口10を通って固定シーブ6の外部へ排出される空気は、排気口10の開口部10aから軸受7に向けて放射されるようになっている。
【0039】
上記のように固定シーブ6の背面に吸気口9および排気口10を形成することにより、プーリ3が回転する際に、それら吸気口9と排気口10との間で空気を流動させることができる。すなわち、プーリ3が頻度の高い前進回転方向に回転する際に、吸気口9から外気を取り込んで固定シーブ6の中空部6eへ供給することができる。そして中空部6e内の空気を排気口10から固定シーブ6の外部へ排出させることができる。
【0040】
吸気口9から中空部6e内に供給された空気は、固定シーブ6のテーパ面6aおよびベルト4の熱を奪って温度が上昇する。すなわち、テーパ面6aおよびベルト4の発熱部位が、中空部6e内に供給された空気によって冷却される。そして、中空部6e内の空気の圧力および体積はほぼ一定と考えられるので、中空部6e内で発熱部位の熱を奪った空気は、温度が上昇することにより、その質量が熱を奪う前の温度が低い空気よりも軽くなる。プーリ3が回転している際の中空部6e内の空気は、遠心力が作用することにより、相対的に温度が低く質量が重い空気が中空部6eの外周側に移動し、相対的に温度が高く質量が軽い空気が中空部6eの中心側に移動する。したがって、固定シーブ6の外周側に設けられた吸気口9から中空部6eに供給された空気は、中空部6e内で発熱部位の熱を奪い温度が高くなることにより質量が軽くなり、中空部6eの中心側に移動する。そのため、吸気口9よりも固定シーブ6の中心側に設けられた排気口10から排出され易くなる。
【0041】
このように、この発明におけるベルト式無段変速機1では、プーリ3の固定シーブ6を中空構造とし、その固定シーブ6の背面6cに、上記のような吸気口9と排気口10とを形成することにより、固定シーブ6の中空部6e内で効率良く冷却空気を流動させることができる。その結果、テーパ面6aおよびベルト4の発熱部位を効率良く冷却することができる。
【0042】
また、排気口10の開口部10aが軸受7に正対するように形成されていることにより、上記のようにして中空部6eから排出された空気を、再度、冷却風として軸受7に送風することができる。したがって、回転軸2の回転に伴って温度が上昇する軸受7を、積極的に冷却することができる。軸受7がグリース封入型であった場合、撹拌されて発熱したグリースを、排気口10の開口部10aから排出される空気によって効率良く冷却することができる。
【0043】
さらに、プーリ3が後進回転方向に回転する際に、吸気口9が、その開口部9cで負圧が発生するように形成されていることにより、プーリ3が後進回転方向に回転する場合であっても、吸気口9と排気口10との間で空気を流動させることができる。すなわち、排気口10から固定シーブ6の中空部6eへ外気を取り込むとともに、中空部6e内の空気を、開口部9cで発生する負圧によって吸気口9から固定シーブ6の外部へ吸い出して排出させることができる。したがって、プーリ3が後進回転方向に回転する場合であっても、固定シーブ6の中空部6e内で冷却空気を流動させて、テーパ面6aおよびベルト4の発熱部位を冷却することができる。
【0044】
図4,図5,図6に、この発明のベルト式無段変速機1における排気口の他の構成例を示してある。前述したように、この発明における固定シーブ6は、回転軸2と一体に回転しかつ回転軸2の回転軸線方向に移動が不可能なように、回転軸2に取り付けられて固定される。また固定シーブ6は、テーパ面6aと背面6cとの間の内部に中空部6eが設けられた中空構造に形成されている。そのため固定シーブ6には、その径方向の中心部に回転軸2と嵌合する嵌合穴が形成されている。そして、固定シーブ6を回転軸2に固定するために、例えばキーが用いられる。あるいはスプラインやセレーションを用いることもできる。そのようなキーやスプラインなどを用いて固定シーブ6を回転軸2に固定する場合、キーとキー溝との間、あるいはスプラインとスプライン溝との間に、不可避的にクリアランスが設けられる。もしくは、固定シーブ6と回転軸2との固定状態を損なわない範囲でクリアランスを設けることができる。この発明では、上記のような固定シーブ6と回転軸2との嵌合部分に設けられるクリアランスを利用して、この発明における排気口を構成することができる。
【0045】
すなわち、図4,図5,図6に示すこの発明における排気口は、固定シーブ6と回転軸2との嵌合部分のうち、支持部材6dと回転軸2との嵌合部分に設けられた背面側排気口11と、シーブ基体部6bと回転軸2との嵌合部分に設けられたテーパ面側排気口12とから構成されている。具体的には、図4,図5,図6に示すように、固定シーブ6は、回転軸2に嵌め込まれるとともに、キー13によって回転軸2に固定されている。キー13は、例えば平行キーや半月キーなどを採用することができる。図4,図5,図6では平行キーを用いた例を示してある。そして、キー13は、回転軸2に形成されたキー溝に嵌め込まれて固定されている。
【0046】
回転軸2に固定されるキー13に対応するキー溝が、固定シーブ6に形成されている。すなわち、固定シーブ6と回転軸2との嵌合部分のうち、支持部材6dと回転軸2との嵌合部分に、回転軸2に取り付けられたキー13に対応するキー溝14が形成されている。このキー溝14は、支持部材6dと回転軸2との嵌合部分に、中空部6eから支持部材6dの背面6c側の外部にわたって形成されている。また、固定シーブ6と回転軸2との嵌合部分のうち、シーブ基体部6bと回転軸2との嵌合部分に、回転軸2に取り付けられたキー13に対応するキー溝15が形成されている。このキー溝15は、シーブ基体部6bと回転軸2との嵌合部分に、中空部6eからシーブ基体部6bのテーパ面6a側の外部にわたって形成されている。そして、それらキー溝14,15が回転軸2に取り付けられたキー13と嵌り合うように、支持部材6dおよびシーブ基体部6bが回転軸2に嵌め込まれている。すなわち、固定シーブ6が回転軸2に嵌め込まれて一体に固定されている。
【0047】
上記のように、支持部材6dおよびシーブ基体部6bは、キー13が取り付けられた回転軸2に嵌め込まれて固定される。そのため、支持部材6dのキー溝14およびシーブ基体部6bのキー溝15には、それら支持部材6dのキー溝14およびシーブ基体部6bのキー溝15を回転軸2に固定されたキー13に対して摺動させながら嵌め込むために、所定のクリアランスが設けられる。このクリアランスは、例えば、各キー溝14,15にキー13を嵌め込むために不可避的に設けられるクリアランスである。また、固定シーブ6と回転軸2との固定状態を損なわない範囲で可及的に大きなクリアランスを設けることもできる。
【0048】
図5に示すように、支持部材6dのキー溝14に設けられるキー13との間のクリアランス、特にキー溝の深さ方向すなわち回転軸2および固定シーブ6の径方向に設けられるクリアランスは、中空部6eから支持部材6dの背面6c側の外部まで貫通する貫通穴となる。また、シーブ基体部6bのキー溝15に設けられるキー13との間のクリアランス、特にキー溝の深さ方向すなわち回転軸2および固定シーブ6の径方向に設けられるクリアランスは、中空部6eからシーブ基体部6bのテーパ面6a側の外部まで貫通する貫通穴となる。
【0049】
そのため、この発明では、上記のようにキー溝14およびキー溝15にそれぞれ設けられるクリアランスを、この発明における排気口として機能させるように構成している。すなわち、支持部材6dのキー溝14の深さ方向に設けられるキー13との間のクリアランスによって、この発明における背面側排気口11が構成されている。また、例えば図6に示すように、シーブ基体部6bのキー溝15の深さ方向に設けられるキー13との間のクリアランスによって、この発明におけるテーパ面側排気口12が構成されている。
【0050】
したがって、図5に示すように、プーリ3が前進回転方向に回転する際に、吸気口9から固定シーブ6の中空部6eに取り込まれた空気は、背面側排気口11およびテーパ面側排気口12を通って、それぞれ、固定シーブ6の外部へ排出される。背面側排気口11から排出される空気は、前述の排気口10から排出される空気と同様に、固定シーブ6の 背面6c側に設置された軸受7に放射されることになる。そのため、上記のように、支持部材6dのキー溝14とキー13との間のクリアランスを利用して背面側排気口11を構成することにより、前述の構成例と同様に、中空部6eから排出される空気を、再度、冷却風として軸受7に送風することができ、回転軸2の回転に伴って温度が上昇する軸受7を、積極的に冷却することができる。
【0051】
一方、テーパ面側排気口12から排出される空気は、プーリ3の両テーパ面5a,6aおよびベルト4の内周面ならびに回転軸2の外周面によって隔離された空間へ放出されることになる。そのため、上記のように、シーブ基体部6bのキー溝15とキー13との間のクリアランスを利用してテーパ面側排気口12を構成することにより、プーリ3の両テーパ面5a,6aおよびベルト4の内周面ならびに回転軸2の外周面によって隔離されて外部から冷却され難い空間に、中空部6eから排出される空気を送ることができ、プーリおよびベルトならびに軸受等の発熱部分を効率良く冷却することができる。
【0052】
また、図5に示すように、テーパ面側排気口12および背面側排気口11は、それぞれ、テーパ面側排気口12を流れる空気の流量が背面側排気口11を流れる空気の流量よりも多くなるように形成されている。すなわち、支持部材6dのキー溝14とキー13との間のクリアランスよりも、シーブ基体部6bのキー溝15とキー13との間のクリアランスの方が大きくなるように、それら支持部材6dのキー溝14とキー13との間のクリアランスおよびシーブ基体部6bのキー溝15とキー13との間のクリアランスが設定されている。そのため、上記のように外部から冷却され難いプーリ3の両テーパ面5a,6aおよびベルト4の内周面ならびに回転軸2の外周面によって隔離された空間に、冷却用の空気を優先的に送り込むことができる。
【0053】
以上のように、この発明に係るベルト式無段変速機1によれば、プーリ3の固定シーブ6が中空構造に形成されるため、その分、プーリを軽量化することができる。そして、固定シーブ6の背面6cに、固定シーブ6の中空部6eに対して空気の供給・排出が可能な吸気口9と排気口10とが設けられることにより、吸気口9から固定シーブ6の中空部6eに空気を送り込み、その中空部6eに送り込まれた空気を排気口10から固定シーブ6の外部へ排出することができる。すなわち、固定シーブ6の中空部6e内で冷却用の空気を流動させることができる。そのため、ベルト4との摩擦接触によって温度が上昇するプーリ3のテーパ面5a,6aおよびベルト4を、固定シーブ6の中空部6e側から冷却することができる。さらに、固定シーブ6の排気口10から排出される空気を、プーリ3および回転軸2を支持する軸受7に放射させることができる。したがって、プーリ3および回転軸2の回転に伴って温度が上昇する軸受を冷却することもできる。そのため、固定シーブ6を中空構造にして軽量化を図る場合であっても、冷却性能が良好な乾式のベルト式無段変速機1を提供することができる。
【0054】
また、この発明に係るベルト式無段変速機1では、図4,図5,図6に示す構成例のように、固定シーブ6と回転軸2との嵌合部分に、固定シーブ6の中空部6eから背面6c側の軸受7に向けて空気を排出する背面側排気口11と、固定シーブ6の中空部6eからテーパ面6a側の外部へ空気を排出するテーパ面側排気口12とを設けることができる。その場合、吸気口9から固定シーブ6の中空部6eに供給されてプーリ3およびベルト4を冷却した空気を、背面側排気口11とテーパ面側排気口12とから排出させて、背面6c側の軸受7と、プーリ3の各テーパ面5a,6aおよびベルト4の内周面ならびに回転軸2の外周面で囲まれる空間とに放射させることができる。そのため、プーリ3およびベルト4ならびに軸受7等の発熱部分を効率良く冷却し、ベルト式無段変速機の冷却性能を向上させることができる
【0055】
そして、上記のような背面側排気口11およびテーパ面側排気口12は、例えば、固定シーブ6と回転軸2と嵌合部分に形成されるキー溝14,15とそのキー溝14,15に挿入されるキー13との間に設けられるクリアランス、あるいは、固定シーブと回転軸と嵌合部分に形成されるスプラインとスプライン溝との間もしくはセレーションとセレーション溝との間に設けられるクリアランスなど、固定シーブと回転軸との嵌合部分に設けられるクリアランスとして形成することができる。すなわち、従来固定シーブ6と回転軸2とを固定するために設けられるキー溝構造やスプライン構造などを兼用して、背面側排気口11およびテーパ面側排気口12を形成することができる。そのため、背面側排気口11およびテーパ面側排気口12を、それら背面側排気口11およびテーパ面側排気口12のための特別な加工を行うことなく容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…ベルト式無段変速機、 2…回転軸、 3…プーリ、 3a…V形溝(ベルト巻き掛け溝)、 4…ベルト、 5…可動シーブ、 5a…テーパ面、 6…固定シーブ、 6a…テーパ面、 6c…背面、 6d…支持部材、 6e…中空部、 7…軸受、 9…吸気口、 9b…開口部、 10…排気口、 11…背面側排気口、 12…テーパ面側排気口、 13…キー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトと、回転軸に嵌合して一体に固定されるとともに、前記ベルトが巻き掛けられるV形溝の一方のテーパ面とそのテーパ面に対して前記回転軸の軸線方向で反対側の背面とが形成されかつ前記テーパ面と前記背面との間に中空部が設けられた固定シーブと、前記V形溝の他方のテーパ面が形成されるとともに、前記回転軸と一体に回転しかつ前記回転軸の軸線方向に摺動可能に装着された可動シーブと、前記固定シーブと前記可動シーブとにより前記V形溝が形成されて前記ベルトが巻き掛けられるプーリとを備えたベルト式無段変速機において、
前記背面に、前記固定シーブの外部から前記中空部へ空気を供給するための吸気口が設けられ、
前記背面における前記回転軸を支持する軸受の内径側の位置に、前記中空部から前記背面側の前記軸受に向けて空気を排出するための排気口が設けられている
ことを特徴とするベルト式無段変速機。
【請求項2】
前記排気口は、前記固定シーブと前記回転軸との嵌合部分に設けられて、前記中空部から前記背面側の前記軸受に向けて空気を排出するための背面側排気口を含み、
前記嵌合部分に、前記中空部から前記テーパ面側の前記固定シーブの外部へ空気を排出するためのテーパ面側排気口が更に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機。
【請求項3】
前記背面側排気口は、前記固定シーブの前記中空部から前記背面にわたる前記嵌合部分に設けられた前記固定シーブと前記回転軸との間のクリアランスを含み、
前記テーパ面側排気口は、前記固定シーブの前記中空部から前記テーパ面にわたる前記嵌合部分に設けられた前記固定シーブと前記回転軸との間のクリアランスを含む
ことを特徴とする請求項2に記載のベルト式無段変速機。
【請求項4】
前記テーパ面側排気口の前記クリアランスは、前記背面側排気口の前記クリアランスよりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のベルト式無段変速機。
【請求項5】
前記吸気口は、前記プーリの前進回転方向に向いて開口する開口部を有し、前記プーリが前記前進回転方向に回転する際に、前記開口部周辺の空気を前記中空部内に取り込むとともに、前記プーリが後進回転方向に回転する際に、前記開口部周辺に負圧が発生する形状に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のベルト式無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−64478(P2013−64478A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204582(P2011−204582)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】