説明

ベーンポンプ

【課題】アンダーベーン圧力を付与してカムリングに対するベーンの保持力を増加させるベーンポンプを提供する。
【解決手段】ベーンポンプ20は、ロータ22を駆動するシャフト19を備える。ロータ22は、ベーン24をそれぞれ受ける複数のベーンスロット26と、ロータ22の半径方向外側にベーン24を付勢するようにスロット26内に加圧流体を送るアンダーベーン通路と、を備える。ベーン24間にチャンバ30が画定される。ロータ22の半径方向外側に設けられたカムリング28は、軸受により支持され、ベーン24との摩擦によりロータ22とともに回転する。軸受支持ハウジング32は、複数のピボット軸受40を囲む。入口は入口チャンバへと圧送される流体を供給し、出口はベーンポンプ20によって圧送された流体を受ける。流体用の出口は、スロット内の流体の圧力を増加させるバルブを備えた通路を介して主要出口と連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンポンプに関し、特に、カムリングがベーンとともに回転し、カムリングに対するベーンの保持力を増加させるように、アンダーベーン圧力(under vane pressure)を構造体に付与するベーンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のベーンポンプは、通常、回転駆動するロータを備える。ロータは、複数のベーンを含み、該ベーンは、ベーンの下方に位置するアンダーベーンスロットから外側に向けてカムリングの内周に対して付勢される。ロータが回転すると、ベーン間のチャンバ内の流体が入口から出口へと流れる。
【0003】
ある種のベーンポンプは、回転するカムリング(以下、回転カムリングという)を有する。カムリングは、通常、ベーンとカムリングとの間の摩擦接触によってベーンとともに回転する。しかし、この種のベーンポンプには、カムリングを十分な速度で回転させることが困難であるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンダーベーン圧力を付与することにより、ベーンを外方に向けてカムリングの内周に対して保持するベーンポンプが周知である。しかし、回転カムリングを有するベーンポンプにおいてカムリングを所望の速度で作動させることができることは証明されていない。
【0005】
回転カムリングではなく、固定されたカムリングを有する平衡形ベーンポンプでは、バックプレッシャーバルブによりアンダーベーンチャンバの圧力が高くなるアンダーベーン圧力を有することが周知である。しかし、この手法は、回転カムリングを有するベーンポンプには適用されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的なベーンポンプは、ロータを駆動するシャフトを備える。ロータは、ベーンをそれぞれ受ける複数のベーンスロットと、ロータの半径方向外側にベーンを付勢するようにスロット内に加圧流体を送るアンダーベーンチャンバ(under vane chamber)と、を備える。カムリングは、ロータの半径方向外側に設けられる。カムリングは、軸受により支持され、かつロータが回転するとベーンとの摩擦によりロータとともに自由に回転する。入口は、入口チャンバへと圧送される流体を供給し、出口は、ベーンポンプによって圧送された流体を受ける。流体用の出口は、スロット内の流体の圧力を増加させるバルブを備える通路を介して主要出口と連通する。
【0007】
本発明の上記および他の特徴は、以下の記載および添付の図面から理解することができる。図面について以下に簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ベーンポンプの正面図。
【図2】本発明のベーンポンプの断面図。
【図3】ポートの詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、ベーンポンプ20を示しており、このベーンポンプ20は、シャフト19によって回転駆動するロータ22を有する。ロータ22は、複数のベーン24を含み、該ベーン24は、ベーンスロットつまり溝26内を移動する。回転カムリング28は、ベーンとともに回転する。ベーン間に画定されるチャンバ30を通って入口から出口(図1では図示せず)へと流体が流れる。
【0010】
軸受支持ハウジング32は、複数のピボット軸受40を取り囲む。しかし、流体膜軸受や転動体軸受など他の種類の軸受を用いてカムリングを支持してもよい。
【0011】
支点36は、アクチュエータ34を受け、ピボットピン38を中心にハウジング32を回動させる。周知のように、これは、カムリング28とロータ22との間の偏心を変えることにより、ベーンポンプ20の押しのけ容積(displacement volume)を変える。この特徴は当分野で周知である。さらに、本発明は、ピボット軸受40およびピボット軸受支持体つまりハウジング32を有するベーンポンプを開示しているが、本発明は、回転カムリングを有する任意のベーンポンプにも適応可能である。
【0012】
図2に示すように、溝26は、吐出圧下の流体を受ける。この流体は、通路38,39を通り、通路41、通路42を経て通路46へと流れる。通路46は、ポンプおよびベーン24によって供給されるポート50からの通常の吐出を受ける吐出ライン48と連通する。
【0013】
バルブ43は、バイアスばね45を有して、アンダーベーン戻りライン41,42に位置する。アンダーベーン圧力(under vane pressure)により、ばねの付勢に対抗してバルブ43が図2の右方向に移動して、流体がライン41からライン42を通流して、最終的に、ライン46および出口(吐出ライン)48へと戻る。
【0014】
上記ライン上にバルブ43を配置することにより、吐出圧に対してアンダーベーン圧力が増加する。これにより、ベーン24を外側に向けてカムリング28の内周に対して保持する力が増加し、カムリング28がベーン24と同じ速度で回転するようにカムリングとベーンとの間の力および摩擦が増加する。
【0015】
最高の効率性および耐久性を実現するように、選択されたベーンのスロットにより高いアンダーベーン圧力が付与される。ロータおよびベーンは、カムリングの回転中心からオフセットした中心を中心として回転する。これにより、ベーン先端部とカムリングとの間に相対的な運動が生じる。下方へのスライド運動状態にある選択されたベーンだけが増加したアンダーベーン圧力を受ける。この手法は、重いベーンを用いるなどベーン先端部の負荷を増加させる他の手法に比べてより高い効率をもたらす。
【0016】
図3に示すように、より高いアンダーベーン圧力は、入口アーチの終端付近から、カムリングが約180°回転する位置まで連続し吐出アーチを通るアーチに限定される。ハウジング32が回動すると、カムリング28に対するロータ22の偏心が変わる。これにより、ロータの外周にわたるベーンとカムリングとの間の力が変化する。また、ベーン先端部とカムリングとの間の相対的な速度が変化する。吐出アーチが始端をなす四分円では、ベーンは力が最も高く、アンダーベーン圧力は最も有用である。したがって、より高いアンダーベーン圧力は、いくつかのベーン下のスロットに限定される。さらに、入口アーチの始端部分など他の位置ではアンダーベーン圧力は望ましくない。設計者は、アンダーベーン圧力を付与するアーチの部分を制御するように選択してもよい。
【0017】
図3にポートプレート99を示す。図の平面の奥にベーン24が見てとれる。半径方向外側ポート100は、ロータの半径方向外側の領域と連通し、ポンプの入口アーチを画定する。同じ領域において、アンダーベーンポート106は、ポンプ作動液を溝26に供給する。シールアーチ104は、入口アーチと吐出アーチの間に位置する。吐出アーチでは、ロータの外側にあるチャンバは、ポート50と連通して、ポンプ作動液を移動させて吐出させる。アンダーベーンポート102は、アンダーベーンポンプ作動液を供給する。前述のように、より高い圧力を受けるアーチを限定することが望ましい場合は、1つのポートだけ(例えば、ポート39)がバルブ43を介して通常の吐出と連通する。ポート102は、別々の通路を介して主要吐出(出口)に至る。このように、より高い圧力は、単一のアンダーベーンポート39と整列するベーンに対してのみ存在する。
【0018】
静水ティルチング軸受(hydrostatic tilting bearings)を示しているが、転動体軸受に加えて、流体軸受や流体膜軸受などの支持体を付与する他の方法を用いてもよい。
【0019】
増加したアンダーベーン圧力がより低速のポンプ速度に限定されるように制御を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の実施例を開示したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく修正が加えられることを理解されるであろう。したがって、本発明の内容および範囲を決定するように以下の特許請求の範囲を検討されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを駆動するシャフトであって、該ロータは、ベーンをそれぞれ受ける複数のベーン溝と、ロータの半径方向外側にベーンを付勢するように前記溝内に加圧流体を送るアンダーベーン通路と、を備えるシャフトと、
ロータの半径方向外側に設けられたカムリングであって、ロータが回転すると、ベーンとの摩擦によりロータとともに自由に回転するカムリングと、
入口チャンバへと圧送される流体を供給する入口と、
ベーンポンプによって圧送された流体を受ける主要出口と、
前記溝内の流体用のアンダーベーン出口と、
を備え、
前記アンダーベーン出口は、溝内の流体の圧力を増加させるバルブを備える通路を介して主要出口と連通することを特徴とするベーンポンプ。
【請求項2】
ベーンポンプの押しのけ容積を変える回動ハウジング構造体を含むことを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項3】
前記バルブは、第1の通路と第2の通路とが交差する箇所に配設され、
前記溝から戻る流体は、ばねの付勢に対抗してバルブを開き、第1の通路から第2の通路へと流れることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項4】
ティルティングパッド軸受によりカムリングが支持されることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項5】
増加した圧力を有するためアンダーベーン出口に連通する前記溝は、前記複数のベーン溝の一部に限定されることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項6】
増加した圧力を受けるベーンは、吐出アーチの始点に対応するベーンであることを特徴とする請求項5に記載のベーンポンプ。
【請求項7】
ロータを駆動するシャフトであって、該ロータは、ベーンをそれぞれ受ける複数のベーン溝と、ロータの半径方向外側にベーンを付勢するように前記溝内に加圧流体を送るアンダーベーン通路と、を備えるシャフトと、
ロータの半径方向外側に設けられたカムリングであって、ロータが回転すると、ベーンとの摩擦によりロータとともに自由に回転するカムリングと、
入口チャンバへと圧送される流体を供給する入口と、
ベーンポンプによって圧送された流体を受ける主要出口と、
前記溝内の流体用のアンダーベーン出口と、
を備えるベーンポンプであって、
前記アンダーベーン出口は、溝内の流体の圧力を増加させるバルブを備える通路を介して主要出口と連通し、
ベーンポンプは、ベーンポンプの押しのけ容積を変える回動ハウジング構造体を含み、
前記バルブは、第1の通路と第2の通路とが交差する箇所に配設され、
前記溝から戻る流体は、ばねの付勢に対抗してバルブを開き、第1の通路から第2の通路へと流れ、
増加した圧力を有するようにアンダーベーン出口に連通する溝は、前記複数のベーン溝の一部に限定され、
増加した圧力を受けるベーンは、吐出アーチの始端に対応するベーンであることを特徴とするベーンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−156321(P2010−156321A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284629(P2009−284629)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】