説明

ペプチド、その誘導体並びに類似体、及びそれらを使用する方法

【課題】 ヒトREG3Aタンパク質である染色体2p12の配列由来の若しくはそれと相同性のあるヒト膵島ペプチド(Human proIslet Peptide:HIP)及びHIP類似体並びにその誘導体は、内因性膵臓前駆細胞からの膵島新生を誘発することができる。ヒト膵島ペプチドは、1型及び2型糖尿病、並びに異常なグルコース、炭水化物、及び/若しくは脂質代謝に関連した他の病状、インスリン耐性、太り過ぎ、肥満、多嚢胞性卵巣症候群、摂食障害、及びメタボリックシンドロームの治療の際に、単独で若しくは他の調合薬との組み合わせで使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1型糖尿病、2型糖尿病、及び他の疾患を治療するためのペプチド並びにその類似体、及びそれらを使用する方法を提供する。本発明は、分子生物学、生物学、化学、医薬品化学、及び薬理学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
1922年以降、インスリンは、1型糖尿病、及びインスリンの欠如、又はインスリンの効果若しくは産生の低下に関連する他の疾患の治療に唯一利用できる治療法である。しかし、インスリンは、欠損し且つ異常な膵臓機能の一部にすぎないため、インスリンを服用している糖尿病患者は正常な糖代謝を有していない。数十年にわたる研究、及び1974年の膵島移植の開発の到来、並びに膵島移植のためのエドモントン・プロトコルによってもたらされた成功による新たな主張にもかかわらず、これらの試みは米国においてあまり成功していなかった。例えば、移植4年後にインスリン非依存性のままである患者は、膵島移植を受けた患者の10%未満である。加えて、18%の割合で重篤な副作用が存在する。
【0003】
調査員らは、インスリンの体内産生が薬物療法によって刺激され得るかどうかも調査している。例えば、過去数十年にわたって、糖代謝に関連するいくつかの治療法が研究されており、そしてこれらのペプチドの類似体が同定されている。このような治療法には、グルカゴン様ペプチド−1(Glucagon Like Peptide−1:GLP−1)と類似する配列が含まれ、またGLP−1受容体類似体、エキセンディン−4(Exendin−4)、アメリカドクトカゲ由来のエクセナチド(Exenatide)/BYETTA(商標)、胃抑制ペプチド(Gastric Inhibitory Peptide)/グルコース依存性インスリンオプトロピックポリペプチド(Glucose−Dependent Insulinoptropic polypeptide:GIP)、及び例えばリラグルチド(Liraglutide)(NN2211)、GLP−1の分解を阻害するジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤、ガストリン、上皮成長因子並びに上皮成長因子類似体、及びハムスター由来の膵島新生関連ペプチド(Islet Neogenesis Associated Peptide:INGAP)等のGLP−1に類似した化合物などが含まれる。
【0004】
より具体的には、ハムスターINGAP断片が同定されている(Ronit,R,et al.Journal of Clinical Investigation May 1997,vol 99(9):2100−2109、米国特許第5,834,590号、及び米国特許出願第2004/0132644号を参照)。ハムスター由来INGAPは、膵島新生の促進に有効である可能性がある。しかし、INGAPはヒトペプチドではないため、一部の被験対象において有効ではない可能性があり、また有害な免疫反応を生み出し得る。
【0005】
膵島の死滅若しくはアポトーシスと共に、一生を通じた新しい膵島再生に関する膵臓の弾力性を証明することによって、インスリン産生膵島構造の数は出生時に確定するものであり、一生にわたって維持されるという長年支持された概念が置き換えられたが、現存する膵島の中で増殖するβ細胞の柔軟性及び能力は確立されていた。膵島新生は、膵臓の内分泌及び外分泌の画分に共通して見られる前駆細胞の分化によって既存の膵臓細胞から生じることが現在認められている。データによって、1型糖尿病の発症から数十年後でさえ、インスリン産生膵島が再生され得ることが証明される。例えば、妊娠中に、正常値のC−ペプチドを示す1型糖尿病患者である。いくつかの研究チームは、妊娠した1型患者全体の1/3もの患者で、第1の妊娠三半期(第一期)の間にC−ペプチド値が奇妙な上昇をして正常範囲に戻ることを発見した(Lewis et al.,1976, Rigg et al.,1980,Ilic et al.,2000,Jovanovic et al.,2001)。C−ペプチドのこの上昇には、第1の妊娠三半期の間に一時的に完全にインスリンの服用を中止することが可能な一部の患者において、インスリン要求性の著しい低下が附随して起こる。妊娠前には目立ったC−ペプチドがないにもかかわらず、患者内における、妊娠10週以内に起こる妊娠期間のC−ペプチドのこのような上昇は、機能的膵島構造の回復を意味する。妊娠中に起こる膵島新生は、内因性ステロイド産生の附随的な上昇と、膵島へのリンパ球攻撃の抑制においても役割を果たすと思われる、胎児への免疫攻撃を防止する免疫系のダウンレギュレーションとに起因すると仮定される。免疫抑制に加えて、妊娠中に妊婦の膵島発育促進物質のアップレギュレーションがあり、妊娠中における妊婦のグルコース定値の低下を補っているとも推測される。同様に、腎臓移植のために長期間免疫抑制を受けた患者は、インスリン産生膵島を再生することが認められる。
【0006】
過去10年にわたって、膵臓β細胞の破壊を抑える可能性のある多くの免疫調節因子の影響を評価するための臨床試験が行われてきた。抗CD−3抗体(免疫反応を対象とし、且つ1型糖尿病においてβ細胞死を引き起こすTリンパ球を特異的に阻害するhOKT3γ1(Ala−Ala及びChAglyCD3))が利用され、また同様にシロリムス(ラパマイシン)、タクロリムス(FK506)、ヒートショックタンパク質60(DIAPEP277(商標))、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(anti−Glutamic Acid Decarboxylase 65:GAD65)ワクチン、ミコフェノール酸モフェチル単独若しくはダクリズマブ(Daclizumab)との組み合わせ、抗CD20剤、リソフィリン(lysofylline)、リツキシマブ(Rituximab)、キャンパス−1H(Campath−1H)(抗CD52抗体)、及びビタミンD、膵臓β細胞の破壊を防止するように設計されたインスリンの、合成的、代謝的に不活性型であるIBC−VSOワクチンが利用され、CD4<SUP>+</SUP>CD25<SUP>+</SUP>抗原特異的制御性T細胞若しくは同様の物質を用いるインターフェロン−α予防接種は、直接若しくはインスリン産生細胞の破壊を抑える免疫療法を介して制御性T細胞を用いる併用療法の取り組みで用いられる。これらの試みの目的は、上述のような物質が膵島β細胞に更に免疫攻撃するのを防ぐことによって膵島機能を保護できるかを決定することである。
【0007】
更に、最近の研究では、ビタミンDが1型糖尿病の予防において重要な免疫調節の役割を果たす可能性があることが発見されている。緯度に関係なく、最大54.7%の米国住民が、低い25−ヒドロキシビタミンD値を有する(Holick,J Clin Endorinol Metab 2005;90−3215−3224)。ビタミンD欠乏症は、1型糖尿病の危険率の増加と関連し、且つ1型診断の発病において見られるだけでなく、1型糖尿病及び2型糖尿病患者に共通に見られることが実証されている。正常な免疫機能を持続するためには、濃度を40ng/ml以上に維持することが推奨される(Riachy Apoptosis.2006 Feb;11(2):151−9.Holick.Mayo Clin Proc.2006 Mar;81(3):353−73,Grant.Prog Biophys Mol Biol.2006 Feb 28;[Epub ahead of print].DiCesar.Diabetes Care.2006 Jan;29(1):174,Reis.Diabetes Metab.2005;31(4 Pt 1):318−25,Pozzilli.Horm Metab Res.2005;37(11):680−3)。投与量が10,000IU/日となっても、副作用は見られなかった(Heaney.Am J Clin Nutr,204−210,Vieth.Am J Clin Nutr.2001;73:288−294)。
【0008】
しかし現在まで、1型糖尿病、2型糖尿病、若しくは肥満、太り過ぎ、インスリン耐性症候群、及びメタボリックシンドロームを含む、インスリン産生の欠如若しくは減少、及び/若しくは糖代謝若しくはインスリン分泌の変動のある疾患の基礎疾患機構を治療するのにうまく利用される単一療法若しくは併用療法はなかった。1型糖尿病、2型糖尿病、及びインスリン分泌に変動がある疾患における変動の発症機構に対処する新規な治療方法及び薬学的組成物の必要性が残されている。特に、インスリン産生の欠如若しくは減少により、治療を必要とする患者の症状の原因となる若しくは一因となる、他の多くの疾患を治療することもできる方法及び組成物が必要とされる。現時点では、これらの疾病状態の全ての発症機構を対象とした1型糖尿病の症状を改善する治療はないように思われる。本発明は、1型糖尿病、2型糖尿病、及び他の疾患を治療する改良型治療の必要性に応えるものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、配列ID番号13のアミノ酸配列を有するヒト膵島ペプチド(Human proIslet Peptide:HIP)、又はその類似体若しくは誘導体を提供する。HIP、又はその類似体若しくは誘導体の1実施形態において、HIP、又はその類似体若しくは誘導体の長さは17アミノ酸未満である。本発明のこの実施形態の1つの観点において、HIP、又はその類似体若しくは誘導体は、配列ID番号2、3、4、5、6、7、18、及び19からなる群の一員から選択されるアミノ酸配列を有する。本発明はまた、薬学的に許容可能な賦形剤と共にHIP、又は類似体若しくは誘導体を有する医薬品を提供する。
【0010】
本発明はまた、このような治療を必要とする被験対象の膵臓機能障害と関連した病状を治療する方法を提供する。その方法は、治療量の1若しくはそれ以上のヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体を患者に投与する工程によって実施され、その結果、前記被験対象の1型若しくは2型糖尿病を治療する。1型若しくは2型糖尿病を治療する方法の1実施形態において、前記ヒト膵島ペプチドは、配列ID番号2、3、4、5、6、7、18、及び19からなる群の一員から選択されるアミノ酸配列を有する。この実施形態の1つの観点において、前記ヒト膵島ペプチドの長さは、17未満のアミノ酸である。
【0011】
このような治療を必要とする被験対象の膵臓機能障害と関連した病状を治療する方法の他の実施形態において、前記方法は、更に、膵島細胞再生を刺激する1若しくはそれ以上の薬剤を投与する工程を有する。この実施形態の1つの観点において、前記薬剤は、ヒト膵島ペプチド、アミリン/プラムリンチド(Pramlintide)(SYMLIN(商標))、エキセンディン−4(EXENATIDE(商標))、GIP、GLP−1、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1類似体、ハムスターINGAP、リラグルチド(Liraglutide)(NN2211)、若しくはGLP−1の分解を妨げるジペプチジルペプチダーゼ阻害剤からなる群の一員から選択される。
【0012】
このような治療を必要とする被験対象の膵臓機能障害と関連した病状を治療する方法の他の実施形態において、前記方法は、更に、1)血糖コントロールを強化する工程と、2)経口的にビタミンD3(コレカルシフェロール)を追加して40ng/mlを上回る25−ヒドロキシビタミン濃度を維持する、前記追加する工程と、3)新しい膵島細胞形成を保護するために1若しくはそれ以上の免疫療法を追加する工程と、4)インスリンを次第に減らすと同時に、膵島細胞再生を刺激するHIP若しくはHIP類似体を投与する工程と、5)選択された免疫療法に依存して、原則3〜24ヵ月間、膵島を保護する反復療法を行う工程と、6)経口的にビタミンD3(コレカルシフェロール)を追加して40ng/ml以上の25−ヒドロキシビタミンD濃度を持続させる工程とを有する。
【0013】
このような治療を必要とする被験対象の膵臓機能障害と関連した病状を治療する方法の他の実施形態において、前記方法は、更に、1)血糖コントロールを強化する工程と、2)ビタミン(コレカルシフェロール)を追加して40ng/mlを上回る25−ヒドロキシビタミン濃度を維持する、前記追加する工程と、3)HIP若しくはHIP類似体の投与を含む、膵島細胞形成を刺激する薬剤を投与する工程と、4)糖尿病治療を次第に減らすと同時に、アミリン/プラムリンチド(Pramlintide)(SYMLIN(商標))、エキセンディン−4(EXENATIDE(商標))、GIP、GLP−1、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1類似体、INGAP、リラグルチド(Liraglutide)(NN2211)、若しくはGLP−1の分解を阻害するジペプチジルペプチダーゼ阻害剤から成る群の一員を共に投与する工程と、5)経口的にビタミンD3(コレカルシフェロール)を追加して40ng/mlを上回る25−ヒドロキシビタミンD濃度を維持する工程とを含むものであっても良い。
【0014】
この実施形態の1つの観点において、膵島若しくはβ細胞再生を刺激する前記薬剤は、HIP及びHIP類似体、エキセンディン−4(エクセナチド(EXENATIDE)/BYETTA(商標))、ガストリン、上皮成長因子並びに上皮成長因子類似体、GIP、GLP−1、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1類似体、INGAP、リラグルチド(Liraglutide)(NN2211)、及び/若しくはジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤からなる群の一員から選択される。
【0015】
このような治療を必要とする被験対象の膵臓機能障害と関連した病状を治療する方法の他の実施形態において、前記方法は、更に、膵島を標的とする自己免疫細胞を阻害し、妨げ、若しくは破壊する1若しくはそれ以上の薬剤を投与する工程を有する。この実施形態の1つの観点において、膵島を標的とする自己免疫細胞を阻害し、妨げ、若しくは破壊する前記薬剤は、抗CD−3抗体(免疫反応を標的とし、且つ1型糖尿病においてβ細胞死を引き起こすTリンパ球を特異的に阻害するhOKT3γ1(Ala−Ala及びChAglyCD3))、また同様にシロリムス(ラパマイシン)、タクロリムス(FK506)、ヒートショックタンパク質60(DIAPEP277)、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(anti−Glutamic Acid Decarboxylase 65:GAD65)ワクチン、ミコフェノール酸モフェチル単独若しくはダクリズマブ(Daclizumab)との組み合わせ、抗CD20剤、リツキシマブ(Rituximab)、キャンパス−1H(Campath−1H)(抗CD52抗体)、リソフィリン(lysofylline)、ビタミンD、膵臓β細胞の破壊を防ぐように設計された、代謝的にインスリンの不活性形である合成したIBC−VSOワクチン、インターフェロンα、CD4<SUP>+</SUP>CD25<SUP>+</SUP>抗原特異的制御性T細胞若しくは同様の薬剤を用いる予防接種、直接若しくはインスリン産生細胞の破壊を抑える免疫療法を介して制御性T細胞を利用する併用療法の取り組みで用いられる類似の薬剤からなる群から選択される。
【0016】
このような治療を必要とする被験対象の膵臓機能障害と関連した病状を治療する方法の他の実施形態において、少なくとも1つのヒト膵島ペプチドの投与によって、膵臓機能障害と関連した病状の少なくとも1つの症状が治療若しくは軽減される。この実施形態の1つの観点において、前記症状は、低水準のインスリン若しくはインスリン活性、インスリン抵抗性、高血糖症、6.0%以上のヘモグロビンA1C濃度、頻尿、過剰な口渇、極度の空腹感、異常な体重減若しくは体重増、太り過ぎ、疲労感の増大、過敏性、視界不良、性器のかゆみ、異様なうずき及び痛み、口内乾燥症、乾燥肌若しくは敏感肌、インポテンス、膣内イースト菌感染症、傷口及び擦り傷の治癒不良、過度の若しくは異常な感染症、血糖コントロールの減少若しくは悪化、血糖値の変動、血液グルカゴン値の変動、及び血液トリグリセリド値の変動、最終的に微小血管合併症及び大血管合併症をもたらす高血糖症からなる群の一員から選択されるものであり、これらは失明をもたらす視覚症状、透析若しくは腎臓移植を必要とする腎不全をもたらし得る促進腎障害、及び足部潰瘍及び足切断をもたらす神経障害を含む。更に、最近の研究では、改善された血糖コントロールを有する1型糖尿病患者において、微小血管及び大血管/心血管の両方の危険率の減少が示された。
【0017】
このような治療を必要とする被験対象の膵臓機能障害と関連した病状を治療する方法の他の実施形態において、膵臓機能障害と関連した前記病状は、1型糖尿病、初発1型糖尿病、2型糖尿病、潜在的成人期自己免疫性糖尿病、糖尿病前症、空腹時血糖異常、耐糖能異常、インスリン抵抗性症候群、メタボリックシンドローム、太り過ぎ、肥満、脂質異常症、高トリグリセリド血症、摂食障害、及び多嚢胞性卵巣症候群のうちのいずれか1つである。
【0018】
本発明はまた、配列ID番号2、3、4、5、6、7、18、及び19からなる群の一員から選択されるアミノ酸配列を有するHIP、又はその類似体若しくは誘導体と選択的に結合する抗体を提供する。1実施形態において、前記抗体は、モノクローナル抗体である。他の実施形態において、前記抗体は、ポリクローナル抗体である。このような抗体は、本発明によって提供される診断方法において用いられることができ、その方法は、哺乳類の血清若しくは組織におけるHIP、又は類似体若しくは誘導体の濃度を検出する工程を含む。1実施形態において、このような方法は、異常なHIP濃度に関連した疾病若しくは疾患を診断するために用いられる。他の実施形態において、前記診断方法は、HIP、又は類似体若しくは誘導体による治療を観察するために用いられ、治療的に有効な濃度が、このような治療を受けている患者において達成されていることを確実にする。
【0019】
本発明はまた、1型若しくは2型糖尿病、又は異常なインスリン濃度、糖代謝の変動或いはインスリン抵抗性を有する他の疾患の患者を治療するキットを提供し、このキットは、治療的有効用量のヒト膵島ペプチドと、選択的に、GLP−1受容体を刺激する若しくはGLP−1濃度を高める少なくとも1つの薬剤と、その使用説明書とを有し、前記薬剤は、β細胞再生、満腹感の増加、摂食量の減少、及び体重減を促進し、同時に、一緒に若しくは別々に包装されたインスリンと、他の糖尿病薬剤の必要性とを減少させる。本発明はまた、試料中のHIP濃度を測定するキットを提供し、このキットは、HIP特異的抗体と、選択的にHIPと、選択的に標識化手段とを有する。
【0020】
本発明のこれらの並びに他の観点、及び実施形態を以下に更に詳細に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、ヒト膵島ペプチド(Human proIslet Peptides:HIP)、及びその類似体並びに誘導体を提供する。ヒト膵島ペプチドは、染色体2p12上に位置する、膵臓炎関連タンパク質前駆体(pancreatitis−associated protein precursor)(NP_002571)としても知られるヒトタンパク質再生膵島由来3αタンパク質(human protein regenerating islet−derived 3 alpha protein:REG3A)の活性断片である。HIPは、膵臓に存在する前駆細胞からの膵島新生を誘発若しくは刺激する。この新生物質は、低濃度の若しくは不十分な濃度のインスリン又はインスリン活性に関連した疾患を治療するために用いられ、結果として異常な炭水化物代謝物となり、この異常な炭水化物代謝物は、膵島機能不全若しくは免疫破壊(例えば、糖尿病(1型糖尿病)、2型糖尿病(幼年期および青春期の糖尿病であるインスリン非依存型糖尿病及びインスリン要求性成人発症型糖尿病)、若しくは潜在性成人期自己免疫性糖尿病(Latent Autoimmune Diabetes in Adults:LADA))によって生じるものである可能性がある。
【0022】
本発明はまた、薬学的組成物と、1型並びに2型糖尿病を含む膵臓機能障害の治療法とを提供する。1実施形態において、これらの組成物は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体を有する。他の実施形態において、これらの組成物は、糖代謝に作用するHIP及び他の組成物を含む。これらの他の組成物の中に含まれるものは、膵島新生に関与し、且つ膵島細胞を標的とする自己免疫細胞を阻害し、妨げ、若しくは破壊する薬剤である。1実施形態において、本発明の治療法は、このような治療を必要とする哺乳類に、治療的有効用量のHIP、又は類似体若しくは誘導体を投与する工程によって実施される。他の実施形態において、本発明の治療法は、GLP−1、GIP、GLP−1受容体類似体、GLP−1類似体、及びGLP−1の破壊を阻害するジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤等の、β細胞再生、満腹感、及び胃内容排出に関与するホルモンまたは化合物を含む(これらに限定されるものではないが)、糖代謝に作用する他のホルモン若しくは化合物と、膵臓細胞を標的とする自己免疫細胞を阻害し、妨げ、若しくは破壊する薬剤と組み合わせて、治療的有効用量のHIP、又は類似体若しくは誘導体を、このような治療を必要とする哺乳類に投与する工程によって実施される。この後者の実施形態において、前記HIP、又は類似体若しくは誘導体と、前記他のホルモン、又は薬剤とは、別々に投与されても良く、若しくはまず混合されて本発明の組み合わせ組成物が提供され、同時に投与されても良い。
【0023】
定義
読者を助けるために以下の定義を提供する。他に定められない限り、本明細書に用いられる技術、表記法、及び他の科学的若しくは医学的用語若しくは専門用語のすべての用語は、化学及び医学分野の当業者によって共通に理解される意味を有することが目的とされる。場合によっては、一般に理解される意味を有する用語は、明瞭さのため及び/若しくは容易に参照できるように本明細書において定義され、本明細書におけるこのような定義の包含は、一般に従来技術において理解されるような用語の定義との実質的な違いを表すように必ずしも解釈されなければならないというわけではない。
【0024】
本明細書で使用される、疾患若しくは患者を「治療する」とは、臨床結果を含む有益若しくは望ましい結果を得るための工程を取ることを指す。本発明の目的において、有益な若しくは望ましい臨床結果には、これに限定されるものではないが、糖尿病の1若しくはそれ以上の症状の緩和若しくは改善、疾患の程度の軽減、疾患の進行の遅延若しくは減速、疾病状態の改善、一時的緩和、若しくは安定化、及び下記のような他の有益な結果が挙げられる。糖尿病の症状には、低濃度の若しくは不十分な濃度のインスリン若しくはインスリン活性、頻尿、過度の口渇、極度の空腹感、異常な体重減、疲労感の増加、過敏性、視界不良、性器のかゆみ、異様なうずき及び痛み、口内乾燥症、乾燥肌若しくは敏感肌、インポテンス、膣内イースト菌感染症、傷口及び擦り傷の治癒不良、過度の若しくは異常な感染症、高血糖症、血糖コントロールの減少、食後血糖値の変動、血液グルカゴンの変動、血液トリグリセリドの変動が挙げられる。糖尿病は、当業者に周知の方法によって診断され得る。例えば、糖尿病患者は一般に、126mg/dLを超える血漿血糖値を有する。100〜125mg/dLの血糖値を有する患者において、本発明の組成物及び方法によって治療され得る糖尿病前症が一般に診断される。他の症状は、糖尿病、関連した疾病並びに疾患、及び膵臓機能低下の影響を受ける疾病並びに疾患を診断するために用いられても良い。
【0025】
本明細書で使用される、1つ若しくは複数の症状の「軽減」(及びこの語句の文法上の同義語)は、その症状の重症度若しくは頻度の低下又はその症状の除去を意味する。
【0026】
本明細書で使用される「膵臓機能障害と関連する病状」とは、被験対象の膵臓によるホルモン及び/若しくはサイトカインの産生及び/若しくは分泌に関して、病状が被験対象の能力低下と関連するものである。好ましくは、このホルモン若しくはサイトカインは、インスリンである。膵臓機能障害と関連する病状には、1型糖尿病、初発1型糖尿病、2型糖尿病、潜在性成人期自己免疫性糖尿病、糖尿病前症、空腹時血糖異常、耐糖能異常、インスリン抵抗性症候群、メタボリックシンドローム、太り過ぎ、肥満、脂質異常症、高トリグリセリド血症、摂食障害、及び多嚢胞性卵巣症候群が挙げられる。
【0027】
本明細書で使用される「投与する」若しくは被験対象への薬剤「の投与」(及び、この語句の文法上の同義語)は、自己投与を含む直接投与と、薬剤を処方する行為を含む間接的投与とを含む。例えば、本明細書に用いられるように、患者に薬剤を自己投与するように命じる、及び/若しくは患者に薬剤の処方を提供する医師は、当該患者に当該薬剤を投与している。
【0028】
本明細書で使用される「被験対象」若しくは「患者」は哺乳類であり、一般的にヒトだが、選択的に、これに限定されるものではないが、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、及びネコを含む獣医学的に重要な哺乳動物である。
【0029】
本明細書で使用される、疾患の「徴候」とは、その疾患を有する被験対象に特有の症状、表れ、解剖学的状態(例えば膵島細胞の欠如)、生理的状態(例えばグルコース濃度)、若しくは報告書(例えばトリグリセリド濃度)を指す。
【0030】
本明細書で使用される、薬物若しくは薬剤の「治療有効量」とは、疾病若しくは疾患を有する被験対象に投与されるときに、意図された治療効果(例えば当該被験対象の疾病若しくは疾患の1若しくはそれ以上の徴候の緩和、改善、一時的緩和、若しくは除去)を有する薬物若しくは薬剤の量である。完全な治療効果は、1回の投薬によって必ずしも得られるわけではなく、一連の投薬の後にのみ得られることができる。このように、治療有効量は、1若しくはそれ以上の投与機会において投与され得る。
【0031】
本明細書で使用される、薬物の「予防的に有効量」は、被験対象に投与されるときに、例えば、疾患若しくは症状の発症(若しくは再発生)の防止若しくは遅延、又は疾患若しくは症状の発症(または再発生)の可能性の低下等の意図された予防効果を有する薬物の量である。最大の予防効果は、1回の投薬によって必ずしも得られるわけではなく、一連の投薬の後にのみ得られることができる。このように、予防的に有効量は、1若しくはそれ以上の投与機会において投与され得る。
【0032】
本明細書で使用される「TID」「QD」、及び「QHS」は、それぞれ「1日に3回(three times a day)」、「1日1回(once daily)」、及び「就寝時刻前に1回(once before bedtime)」というそれらの通常の意味を有する。
【0033】
「〜と組み合わせた」薬剤の投与には、平行投与(モノクローナル抗体と、例えば分泌ホルモン若しくは類似体等のペプチドホルモンとを1ヵ月間、隔日で投与するといった、ある期間にわたって2つの薬剤を患者に投与すること)、共投与(ほぼ同時刻に、例えば、数分から数時間以内に、当該薬剤が互いに投与される)、及び共製剤(当該薬剤が、経口、皮下、若しくは非経口的投与に適した単一の剤形に混合若しくは合成される)が含まれる。
【0034】
DPP−4阻害剤とは、ジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤(dipeptidyl peptidase−4 inhibitors)である。
【0035】
ハムスターINGAPとは、非ヒト膵島新生関連ペプチド(non−human islet neogenesis associated peptide)である。
【0036】
GIPとは、グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド(Glucose−Dependent Insulinotropic Polypeptide)としても知られる、胃抑制ペプチド(Gastric Inhibitory Peptide)である。
【0037】
GLP−1とは、グルカゴン様ペプチド1(Glucagon−like Peptide 1)である。
【0038】
HIPとは、精製、合成、若しくは組換え型の、又は薬学的組成物に組み込まれたヒト膵島ペプチド(Human proIslet Peptides)の1つである。
【0039】
誘導体及び類似体は、完全長でも良く、若しくは完全長以外でも良い。本発明の核酸若しくはタンパク質の誘導体若しくは類似体は、これに限定されるものではないが、本発明の核酸若しくはタンパク質と実質的に相同な領域を有する分子を含み、様々な実施形態において、同一の大きさの核酸若しくはアミノ酸配列に対して、又は公知技術のコンピュータ相同性プログラムによって整列される、整列配列と比較した場合に、少なくとも約70%、80%、若しくは95%の同一性(80〜95%の同一性が好ましい)を有するもの、又はそのコード核酸が、ストリンジェント、適度にストリンジェント、若しくは低ストリンジェントな条件下で当該タンパク質をコードする配列の相補鎖とハイブリダイズすることができるものである。例えば、Ausubel,et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,NY,1993、及び下記を参照。
【0040】
膵島構造
文献において、膵臓の再生過程に関して分かりにくい命名法がある。多くの場合、膵島「細胞」の用語は、β細胞と同義的に用いられており、また、糖尿病治療のための新しい治療が考慮されるときに、この違いは重要である。膵島は細胞ではなく構造であり、それぞれが、4つの異なる細胞型の約1000細胞から成る。4つの細胞型とは、1)インスリン及びアミリンを作り、当該膵島細胞の65〜80%を有するβ細胞、2)グルカゴンを放出し、前記細胞の15〜20%を組成するα細胞、3)ソマトスタチンを作るδ細胞、及び4)時に、γ細胞と呼ばれる膵臓ポリペプチド(Pancreatic polypeptide:PP)細胞である。δ及びPP細胞は、当該膵島構造の10%未満を有する。膵島構造は、膵臓腫瘤のわずか1〜2%しか有しないが、膵臓への血液供給の20%を利用し、身体において最も血管新生された細胞型のうちの1つと考えられる。
【0041】
前記膵島構造内において、4つ種類の細胞が高度に組織化されて配置されている。各膵島内の血流の送達は、最も中央に位置するβ細胞によって、遠心力を利用した手段で行われ、従って、低次の灌流においてα、δ、及び膵臓ポリペプチド細胞がβ細胞の外側に配置されていると同時に、この送達によって中心血液供給を受け取る。
【0042】
β細胞に影響を及ぼすグルコース濃度に加えて、β細胞は、他の膵島若しくは膵臓細胞にではなく、他のβ細胞に電気的に連結する。この膵島内コミュニケーションの精巧なシステムは、β細胞集団に顕著な減少があるときの、膵島内のα細胞の代償的な増加を説明できる可能性がある(Kun et al.,J Clin Endocrinol Metab 88:2300−2308,2003,Li et al.,Journal of Endocrinology(2000)165,93−99)。
【0043】
ヒト膵島ペプチド(Human proIslet Peptides:HIPs)
本発明のヒト膵島ペプチド(Human proIslet Peptides:HIPs)及びその類似体は、ヒトREG3Aの活性断片若しくは染色体2p12上の膵臓炎関連タンパク質前駆体である。本発明のHIPsに派生するREG3Aタンパク質を表1に示す。本発明のHIPsを提供する領域を太字で示す。
【0044】
【表1】

【0045】
本発明のHIP及びその類似体並びに誘導体には、以下の表2に示した精製、合成、若しくは組換え型のポリペプチド、又は薬学的組成物中に含有されたポリペプチドが含まれる。
【0046】
【表2】

【0047】
これらのペプチドは、米国特許第5,834,590号(この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるハムスターINGAPペプチドのヒトの相同体である。この特許は、ハムスター膵島新生関連タンパク質(islet neogenesis associated protein:INGAP)と、長さ少なくとも15アミノ酸の関連ペプチドとを開示する。NCBIウェブサイトで実行したヒトREG3AとハムスターINGAPとのBLAST2Pアライメントを以下の表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
上記表3の太字は、HIP(配列ID番号2)が由来するREG3Aの領域であり、INGAPの対応するハムスターの配列である。米国公開第2004/0132644号(この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において、上記表3の太字で示されるINGAPペプチドが開示される。このハムスターINGAPペプチドについては、膵島新生におけるその有効性について研究がなされている。
【0050】
本発明はまた、周知のハムスターINGAPに加えて動物由来の対応するHIP様ペプチドの同定を可能にするものであり、このように、1つの重要な観点において、本発明は、実質的に純粋且つ組換え型のこれらのペプチド及びそれらの類似体を提供し、また同様にこれらを含む医薬品と、インスリン産生を増加させるためのそれらを使用する治療方法とを提供する。ハムスター以外の動物由来のこれらの各HIP様ペプチドが、起源動物における本発明の方法の実施に特に適している一方で、当業者はこの開示から、これらのペプチドが、本発明の教示に従って起源動物以外の動物及びヒトにおいても使用可能であることが認識できる。
【0051】
下記の表4に、本発明によって提供される非ヒトHIP様ペプチドの実例を示す。比較のためにハムスターINGAP配列を示す。
【0052】
【表4】

上記表4において影を付けた突然変異を以下に要約する。
M=メチオニン/I=イソロイシン 両者共に非極性疎水性
ATG 対 ATA SNP
W=トリプトファン/G=グリシン 実質的に:非極性疎水性/極性非荷電
TGG 対 SNP
S=セリン/T=トレオニン 両者共に極性非荷電
TCX 対 ACX 同じ結果になる4つの可能性のあるSNP
L=ロイシン/Q=グルタミン 実質的に:非極性疎水性/極性非荷電
CTG 対 CAG 1つの可能性のあるSNP
E=グルタミン酸/Q=グルタミン 実質的に:酸性の極性非荷電
GAA/GAG 対 CAA/CAG 2つの可能性のあるSNP
N=アスパラギン/D=アスパラギン酸 実質的に:極性非荷電/酸性
AAT/AAC 対 GAT/GAC 2つの可能性のあるSNP
G=グリシン/A=アラニン 実質的に:極性非荷電/非極性疎水性
GGX 対 GCX 同じ結果になる4つの可能性のあるSNP
【0053】
本発明によって提供される新規なHIP及びHIP様ペプチド配列は、相同性が非常に高く、膵島新生を誘発するというペプチドの機能の重要性を反映している。ハムスターINGAPの配列と比較したときの、この配列の保存は、上記表4に示される非ハムスターHIP様ペプチドを含むHIP及びその類似体並びに誘導体が、本明細書に提供されるような膵島新生を刺激する際に有効であるという更なる証明を提供する。
【0054】
NODマウスにおける遺伝子発現のマイクロアレイ分析は、特に膵島新生においてReg遺伝子の上方調節を示している(Vukkadapu et al,Physiol Genomics.2005 Apr 14;21(2):201−11)。更に、Reg遺伝子については、発育中のヒト膵臓を占めるために胎児発育の後半において上方調節し、産後のそれ自身の糖代謝を維持することが公知である。Hao et al,2006,Nature Medicine 12(3):310−6では、非内分泌性膵臓上皮細胞(non−endocrine pancreatic epithelials cells:NEPECs)での胎児組織の同時移植がNEPEC集団由来の新しい膵島構造の刺激をもたらすことが示されている。Regの上方調節、更には共同移植された多量の胎児物質におけるHIPは、恐らくこの効果のための刺激であった。
【0055】
ハムスターINGAPを臨床試験の対象とした。ハムスターINGAPは第1相及び第2相試験において十分に許容性を示していたが、ハムスターINGAP注射部位における不快感及び損傷が原因で、第2相試験は糖尿病患者から脱落した。同様に第2相試験において、ハムスターINGAPの効果はほとんどわからなかった。ハムスター配列とは対照的に、HIPはヒトに由来するため、このHIPの発明には同様の脱落の問題があってはならない。更に、HIP及びその誘導体並びに類似体は、1日当たりに増加した投与回数で投与されても良い。1日の投与回数は、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10でも良い。前記投与は、一部の患者の効果を増加させるために、食前に与えられても良い。HIPは、膵臓内で前駆細胞の新しい膵島構造への分化を刺激し、軽度の高血糖症に応答して分泌されると仮定される。食事直前の、及び高血糖症の食事摂取後のHIPの投与は、野生型の分泌予定を模倣し、患者のより効果的な治療を生じさせる可能性がある。
【0056】
第2相ハムスターINGAP試験において示された副作用にもかかわらず、INGAPは、当該試験の効果の一部の徴候を示した。600mg/日のハムスターINGAPで治療された患者は、C−ペプチド分泌の増加を示した。
【0057】
また、第2相試験の300mg/日の投与群において、患者の22%は、GAD65抗体価において50%以上の増加を有した。GAD65抗体は、膵島内でβ細胞を攻撃するリンパ球と結合する。このように、GAD65抗体価の増加は、ハムスターINGAPによって刺激される膵島新生と関連した新しいβ細胞産生を反映する。
【0058】
また、ヘモグロビンA1Cは、2型糖尿病患者において減少した。これは血糖暴露における減少と相関し、従って血糖の低い平均値と相関する。これはまた、ハムスターINGAPの第2相試験に示されるその副作用にもかかわらず、ハムスターINGAPが患者の膵島機能にいくつかの好ましい効果を及ぼしていることを示唆する。
【0059】
本発明のHIP類似体には、上記の太字の配列(即ち配列ID番号2)由来の少なくとも6アミノ酸配列を有する任意のペプチドが含まれる。例えば、表5に示す6アミノ酸配列のいずれかを有する15以下のアミノ酸(即ち、6、7、8、9、10、11、12、13、若しくは14アミノ酸)のペプチド配列は、本発明のペプチドとして検討される。
【0060】
【表5】

【0061】
1実施形態において、精製型、合成型、若しくは組換え型で提供される本発明のHIPは、膵島新生を誘発し、且つ全体がヒト配列からなる。これらのペプチドは、いかなる非ヒトペプチド配列も含まないため、ハムスターINGAP等の非ヒトHIP相同体と比較して有利である。このように、ハムスターINGAPペプチドとは対照的に、これらのペプチドがヒトに投与されるときに免疫反応が生じる可能性はほとんどない。
【0062】
更に、本発明のHIPペプチドは、長期間安定して保存することが可能である。20℃の等張食塩水に保存する場合、本発明のHIPペプチドは、数ヶ月間安定である。
【0063】
特定の実施形態において、前記誘導体若しくは類似体は、機能的に活性であり、即ち、HIPと関連した1若しくはそれ以上の機能的な活性を示すことができる。HIPの誘導体若しくは類似体は、これらに限定されるものではないが、適当な細胞株、動物モデル、及び臨床試験を用いた、当該技術分野で公知の手順によって望ましい活性が試験され得る。例えば、Jamal,A.M.,et al.Cell Death Differ.2005 Jul;12(7):702−12(この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される分析を用いても良い。
【0064】
特に、HIP誘導体は、機能的に同等若しくは改良された分子を提供する置換、挿入、若しくは欠失によってHIP配列を改変させることを介して作られ得る。ヌクレオチドコード配列の縮重の理由から、HIP若しくはその類似体又は誘導体と同じ若しくは実質的に同様のアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を本発明の実施に用いても良い。これらには、これに限定されるものではないが、当該配列中で機能的に同等のアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって改変されるHIPの全体若しくは一部を有する核酸配列が挙げられる。このような改変はサイレント変化をもたらす。同様に、本発明のHIP誘導体には、これに限定されるものではないが、一次アミノ酸配列として、機能的に同等なアミノ酸残基が当該配列中でサイレント変化をもたらすような残基で置換された改変配列を含むHIPのアミノ酸配の全体若しくは一部が含まれる。例えば、当該配列中の1若しくはそれ以上のアミノ酸残基は、機能的に同等に作用する類似の極性の他のアミノ酸によって置換することができ、サイレント変化がもたらされる。当該配列中のアミノ酸置換体は、そのアミノ酸が属する分類の中の他のアミノ酸から選択され得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンが含まれる。極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが含まれる。正電荷(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシン、及びヒスチジンが含まれる。負電荷(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。本発明のHIP誘導体には、これに限定されるものではないが、一次アミノ酸配列として、アミノ酸残基が類似の化学的性質を有する残基と置換された改変配列を含むHIPのアミノ酸配列の全体若しくは一部も含まれる。特定の実施形態において、1、2、3、4、若しくは5アミノ酸が置換される。
【0065】
HIPの誘導体若しくは類似体には、これらに限定されるものではないが、実質的にHIPに相同である配列若しくはその断片配列、又はコード核酸がHIP核酸配列にハイブリダイズすることができる配列のタンパク質が含まれる。
【0066】
特定の実施形態において、キメラ若しくは融合タンパク質を本発明の方法で用いても良い。本明細書で使用する「キメラタンパク質」若しくは「融合タンパク」は、HIP若しくはその類似体又は誘導体ではないものと有効に繋がれたHIP若しくはその類似体又は誘導体を有する。このような融合タンパクにおいて、前記HIP若しくはその類似体又は誘導体は、HIPの全体若しくは一部に対応し得る。1実施形態において、HIP融合タンパクは、少なくとも1つの生物学的に活性的なHIPの部分を有する。前記融合タンパクにおいて、前記HIP若しくはその類似体又は誘導体及び前記HIPではないポリペプチドは、「有効に繋がれ」、即ち、それらは互いにインフレームで融合される。前記HIPではないポリペプチドは、前記HIP若しくはその類似体又は誘導体のN末端若しくはC末端に融合され得る。例えば、前記融合タンパクは、そのN末端に異種のシグナル配列を含むHIPタンパク質であっても良い。特定の宿主細胞(例えば哺乳類の宿主細胞)において、HIP若しくはその類似体又は誘導体の発現及び/若しくは分泌は、異種シグナル配列を用いることにより増加することができる。更に他の実施例において、前記融合タンパクは、HIP配列が免疫グロブリンタンパク質ファミリーに由来する配列に融合しているHIP免疫グロブリン融合タンパクである。このHIP免疫グロブリン融合タンパクは、薬学的組成物に組み込まれ、本発明による免疫反応を阻害するために、被験対象に投与され得る。
【0067】
本発明の方法に使用するHIP、その類似体又は誘導体、若しくはHIPキメラタンパク質又は融合タンパク質は、バイオアベイラビリティを改良するために、及び/若しくは有効性、溶解度、及び安定性を増加させるために、化学的に修正されても良い。例えば、前記タンパク質は、アルブミン、トランスフェリン、若しくはポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)に共有結合的に、若しくは非共有結合的に結合されても良い。
【0068】
本発明の方法に使用するHIP、その類似体又は誘導体、若しくはHIPキメラ又は融合タンパク質は、本発明の教示に従う標準的な組換えDNA技術によって産生され得る。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片は、従来技術に従って、例えば、ライゲーションのために平滑末端若しくはスタッガー末端の使用、適切な末端を提供するための制限酵素処理、適切に粘着末端を埋めること、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、及び酵素的ライゲーションによってインフレームで連結されても良い。また、当該融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来技術によって合成され得る。或いは、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続的な遺伝子断片の間に相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを用いて実行することができ、その遺伝子断片は、その後、アニーリングされ、また再増幅されてキメラ遺伝子配列を生成することができる(例えば、Ausubel,et al.(eds.)CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley &Sons,(1992)を参照)。更に、融合部分(例えばGSTポリペプチド)を既にコードしている多くの発現ベクターが市販されている。HIPをコードする核酸は、前記融合部分がHIPにインフレームで連結されるように、このような発現ベクターにクローン化され得る。前記融合タンパク質は、組換えHIPの精製及び検出を助けるため、若しくは被験対象の免疫反応を隠すためにヒスチジン標識若しくはエピトープ標識(例えばV5)に融合されたHIPタンパク質でも良い。HIP及びその類似体並びに誘導体の比較的短いアミノ酸配列はまた、これらの有益なペプチドの合成的産生を容易に実行可能にし、ペプチド合成のための様々な自動機器が市販されており、自動化を必要としないペプチド合成のための合成方法は古くから公知であり、本明細書の教示に従って用いることにより本発明のHIP若しくは類似体又は誘導体が調製される。
【0069】
一部の実施形態において、HIP、その類似体又は誘導体、若しくはHIPキメラ又は融合タンパク質は、それがインビボで延長された半減期を有するように、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて修飾され得る。例えば、ヒト免疫グロブリンGのFc断片、若しくは高分子量ポリエチレングリコール(polyethyleneglycol:PEG)等の不活性ポリマー分子は、N末端又はC末端へのPEGの部位特異的結合によって、若しくはリジン残基に存在するイプシロン−アミノ基を介して、多機能リンカーの有無にかかわらず、HIP若しくはその類似体又は誘導体に結合され得る。結果として生物活性の損失を最小に抑える直線若しくは分枝ポリマー誘導体化が用いられ得る。結合の程度は、SDS−PAGE及び質量分析法によって厳密に観察されることができ、HIP若しくはその類似体又は誘導体にPEG分子の適切な結合を確実にする。サイズ排除若しくはイオン交換クロマトグラフィーによって未反応のPEGをHIP−PEG結合体から分離することができる。当業者に公知の方法を用いてPEGで誘導体化された結合体のインビボでの効果を試験することができる。
【0070】
本発明の方法及び有用な薬剤
本発明の方法の概要
本発明は、HIP若しくはHIP誘導体又は類似体を基にした治療法及び被験対象のインスリン並びにその他の膵臓ホルモン産生又は活性を増加させる方法を提供する。1実施形態において、前記方法は、1型若しくは2型糖尿病、並びに異常な糖代謝をもたらす、患者におけるインスリン産生の欠如又は減少のある関連疾患を治療するために実施される。前記方法には、膵島再生及び/若しくは膵臓前駆細胞から膵島構造への分化を刺激する薬剤をその患者に投与する工程を有する。この薬剤は、HIP若しくはその類似体又は誘導体である。選択的に、HIP若しくはHIP類似体又は誘導体は、膵島β細胞を標的とする自己免疫細胞の活性を阻害する、若しくは自己免疫細胞を阻止する又は破壊する薬剤、また選択的に、膵臓β細胞再生を刺激し、及び/若しくはGLP−1又はGLP−1受容体刺激の上昇をもたらす可能性のある他の薬剤、又はGLP−1類似体或いはGLP−1の破壊を阻害するジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤である他の薬剤との共投与若しくは同時性の投与によって投与される。
【0071】
本発明によって提供される治療法は、欠如した、若しくは減少した又は不十分な量の、若しくは異常な量で産生されるインスリン及び他のホルモンをもたらす、いくつかの異なる発症機構に対処するものである。本発明によって提供される、HIPを基にした複合療法は、インスリン、アミリン、食後血糖値、トリグリセリド、及びグルカゴン濃度の適正濃度を達成し且つ維持することを含む、より正常な糖代謝を回復することができ、インスリン若しくは経口の糖尿病医薬を用いて、著しい体重増と、厳重な血糖コントロールに関連する深刻な低血糖症の危険性の増加とを改善することができる。
【0072】
本発明はまた、糖尿病及び関連疾患を含むインスリン欠乏を治療する単剤療法を提供する。これらの単剤療法は、成体膵臓内に存在する膵臓前駆細胞からの新規インスリン産生膵島細胞の膵島細胞再生及び/若しくは変化を刺激する、HIP若しくはHIP類似体又はその誘導体を投与する方法を含む。HIPのこのような投与からもたらされる膵島細胞新生は、異常なグルコース調節に関する糖尿病及び他の疾病並びに疾患を治療するために用いられ得る。様々な実施形態において、これらの方法には、単独で若しくは免疫遮断薬と組み合わせて、及び/若しくは1型糖尿病の場合、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1、GLP−1類似体、又はジペプチジルペプチダーゼ阻害剤との併用投与で、若しくは2型糖尿病の場合、免疫遮断薬を必要とせず、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1、GLP−1類似体、又はジペプチジルペプチダーゼ阻害剤と組み合わせたHIPとの併用投与によって、これらに限定されるものではないが、HIP、トリプトファン−HIP、グルタミン酸塩レスHIP、バリン−トリプトファンHIP類似体、ヘキサペプチドHIP、セプタペプチドHIP、第2セプタペプチドHIP、若しくはトリプトファン−グルタミン酸塩レスHIPを含む薬剤の投与が含まれる。この方法論での治療に適した病状は、これに限定されるものではないが、1型及び2型糖尿病を含み、これらの治療は、ヘモグロビンA1Cによって測定される血糖コントロールを改善し、且つ変動の縮小及び食後のグルコース、グルカゴン、及びトリグリセリドの減少と共に、食前のボーラスインスリンを10〜20%減らすために用いることができる。これらの方法は、糖尿病に対する耐糖能異常の進行を防ぎ、且つ耐糖能異常及び糖尿病への進行に対する空腹時血糖異常の進行を防ぐために用いることができ、更に、新たに診断された2型糖尿病に対抗するために用いることが可能である。これらの方法はまた、2型糖尿病を治療するためにも用いることが可能である。
【0073】
外因性のインスリン注射剤は、1型糖尿病患者用、及びインスリンがない、又はインスリンが血流中のグルコース量と比較して減少した若しくは不十分な量で存在する他の疾患の患者用の治療である。インスリン治療は、1型糖尿病及び内因性インスリン産生が減少したこのような他の疾患をもたらす疾病の発症機構を治療するものではない。本明細書に記載される治療、方法、様式、及び処理は、糖尿病の原因の多くの側面及び合併症への第1の対処である。本発明によって提供される独自の治療は、糖尿病学、代謝、及び免疫学の多様な態様を含む。1型糖尿病において減少している若しくは存在しないインスリンに加えて、これらの治療には、多くの種々のホルモンの正常値を回復させるものが含まれる。本発明の方法は、新しいインスリン産生細胞の新生と、選択的に、1型糖尿病患者並びに不十分なインスリン産生及び分泌に関連した他の疾患におけるインスリン必要性を改善、減少、若しくは取り除くのに共に役立つ免疫修飾とを提供する。
【0074】
1型糖尿病において、インスリン産生の顕著な減少をもたらす、いくつかの発症機構が存在する。これらにはβ細胞の自己免疫破壊が含まれ、β細胞内の再生能力の減少だけでなく、前駆細胞が新しい膵島に分化できないことは、変化したグルコース環境に起因するかもしれない。自己免疫反応がHIPまたはHIP類似体若しくは免疫抑制薬の誘導体の共投与によって妨げられる場合、膵島細胞を攻撃する自己免疫細胞が妨げられる場合、及び膵島細胞の新生を刺激するペプチド若しくは他の化合物が投与される場合に、患者のインスリン投与への依存が減少するようになるため、本発明はまた、特に有効である併用療法を提供する。
【0075】
本発明の方法によれば、一部の患者において、1型および2型糖尿病での投与インスリンへの依存を完全になくすことさえできる。他の研究(Levetan et al.,2002,Diabetes 51(supple 2):429,Levetan et al.Diabetes 2002.51(suppl.2):474,Levetan Diabetes 2001;50(supple 2):2105 PO.and Levetan et al.,2003,Diabetes Care 26:1−8を参照。両者ともにこの参照により本明細書に組み込まれるものである)によって、インスリン以外のホルモンの減少が元に戻る場合、1型患者におけるインスリン要求性は、改善されたグルコース制御によって著しく減少することが示されている。インスリン自体及びアミリン等の他の共分泌のホルモンの持続した内因性産生をもたらすため、新規なインスリン産生膵島構造の分化を刺激することによって、及び選択的に、それらの機能を無効にし得る免疫細胞を妨げることによって、本発明の方法にはさらに大きな期待が存在する。
【0076】
本発明によって提供される治療的利点に関しては、明らかな必要性が存在している。新規なインスリン製剤、及びその強力なインスリン治療が死を防ぎ、且つ失明、切断術、並びに透析を必要とする腎不全の割合を減少させるということを支持する証拠がある。しかし、ポンプ療法を介した複数のインスリン注射及び持続的なインスリンの移送の現代の様式を利用した強力なインスリン治療は、他人の援助を必要とする重症な低血糖症の2〜3倍増加した危険率と関係している。治験設定において、静脈インスリン及びグルコースによる1型糖尿病患者におけるグルコースの正常化にもかかわらず、血糖値(高血糖および低血糖)の標準偏差は、24時間にわたって同じ平均グルコースを有する糖尿病にかかっていない研究被験対象より著しく広い。本方法によって刺激されるインスリンの内因性産生が、強力なインスリン治療によって効果的に模倣されることができない正常なインスリン産生率を提供しなければならないため、本発明は、医原性リスクを減少させずに強力なインスリン治療の治療的利点を達成する代替の手段を提供する。
【0077】
このように、インスリンの有効性、及びヒトインスリンの新規な製剤、自己血糖監視システム、持続的グルコースセンサー、及びポンプ療法などを含む新技術にもかかわらず、正常なグルコース制御は、現在の治療によって近似されることはない。更に、1型糖尿病を引き起こす発症機構は、1型糖尿病患者、並びにインスリン若しくはアミリン産生がない又は減少した又は不十分な、又は他に異常な疾患及びグルカゴンの調節不全患者に利用できる現在の治療によって影響を受けることはない。
【0078】
本発明は、それを必要とする患者において、膵島新生を刺激し、インスリン若しくは他の膵臓ホルモン産生を増加させ、且つ1型糖尿病、2型糖尿病、及び欠如又は減少したインスリン産生が病徴の原因因子である、その他の疾患を治療する新規な方法および薬学的組成物を提供する。本発明の方法および組成物は、これらの疾患の病理学発症機構を食い止めることができる。このように、本発明の方法は、以前インスリンを必要としていた患者に対するインスリン投与の必要性を減少させ、場合によっては除去するものである。
【0079】
この方法の1実施形態において、膵島新生及び/若しくは膵臓前駆細胞からインスリン産生膵島構造への分化を刺激する薬剤は、HIP、又は類似体、又はグルタミン酸塩レスHIP、トリプトファン−HIP、バリン−トリプトファンHIP類似体、ヘキサペプチドHIP、セプタペプチドHIP、第2セプタペプチドHIP、若しくはトリプトファン−グルタミン酸塩レスHIPを含むその誘導体と共に投与される。膵島新生及び/若しくは膵臓前駆細胞からインスリン産生膵島構造への分化を刺激するこの薬剤は、第1の投与されたHIP、又はその類似体又は誘導体と異なりさえすれば、同様にHIP、又はその類似体若しくは誘導体であっても良い。薬剤は、HIPと共に投与されるか、又は、Pramlintide、GIP、GLP−1及び/若しくは同族化合物並びに類似体、エキセンディン−4、リラグルチド(NN2211)、ハムスターINGAP、又はそのHIP類似体を含むGLP−1受容体類似体、任意の生物学的に活性なHIPペプチド、及び/若しくはGLP−1の分解を遅延させるジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤などのアミリン及び/若しくは類似体を含む、1型及び2型糖尿病の治療のためのHIP使用量の段階的な方法の間に投与される。第1の投与されるHIP、又はその類似体若しくは誘導体と共に、第2の薬剤は、β細胞再生、胃内容排出、満腹、膵臓、側坐核、最後野、及び腸のGLP−1及びアミリン受容体部位に影響を与えることによるインスリン要求性に作用しても良く、また本方法のこのような実施形態において用いられても良い。
【0080】
膵臓機能の低下からもたらされる1型糖尿病および他の病状を治療する1つの方法は、以下の5つの工程を含む。この工程には、1)徹底的な血糖調節、2)経口のコレカルシフェロール(ビタミンD3)を介した40ng/dl以上の25−ヒドロキシビタミンD濃度の達成並びに維持、3)免疫療法、4)HIP投与及びインスリンを徐々に減らした後にHIP及びインスリンを中止すること、5)選択された免疫療法に依存した四半期若しくは年間基準上の免疫修飾の繰り返しの利用、が含まれる。
【0081】
他の方法には、2型糖尿病、肥満、太り過ぎ、インスリン抵抗性、高脂血症、過トリグリセリド血症、及び摂食障害の治療のための2つの工程が含まれる。この工程には、1)経口のコレカルシフェロール(ビタミンD3)を介した40ng/dl以上の25−ヒドロキシビタミンD濃度の達成並びに維持、2)GLP−1、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1類似体、又はジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤と組み合わせたHIPの投与が含まれる。
【0082】
1型糖尿病及び膵臓機能の低下からもたらされる他の病状を治療する5つの工程のうちの最初の2つの工程を、以下に更に詳細に記載する。第1の工程では、HIP、又はHIP類似体又は誘導体投与の3ヶ月前、及び膵島β細胞を標的とする自己免疫細胞の活性を阻害し、及び/若しくは妨げ、若しくは破壊する薬剤の投与前或いは同時若しくは同時性の投与において、厳重/徹底的なグルコース最適化の期間がある。厳重な/徹底的なグルコース最適化のこの期間は、皮下投与された、若しくはインスリンポンプによる持続的な皮下投与を介した、複数のインスリン1日投与量を含んでも良く、また1型糖尿病では欠如しており、2型糖尿病では異常に分泌される合成アミリン/Pramlintide(Symlin(商標))の投与を含んでも良い。合成アミリン/Pramlintide(Symlin(商標))は、1型患者の血糖偏位を減少させ、更に食前のインスリン要求性を減少させることが示されている(Levetan.Diabetes Care.2003;26(1):1−8)。
【0083】
更に、厳重な管理、免疫療法、及びHIP投与の期間全体にわたって、ビタミンD3(コレカルシフェロール)投与は、1000〜2000IU/日の適用量で投与されても良い。最近の研究において、緯度に関係なく、最高54.7%の米国住民の25−ヒドロキシビタミンD濃度が低いことが証明された(Holick,J Clin Endorinol Metab 2005;90−3215−3224)。ビタミンD欠乏症は、1型糖尿病のリスクの増加に関連し、1型糖尿病の発症の際に見られるだけでなく、1型及び2型糖尿病の両者において共通に見られること、及び40ng/ml以上の濃度を維持することが、糖尿病患者並びに健常者において正常な免疫機能を維持するために推奨されることが証明されている(Riachy Apoptosis.2006 Feb;11(2):151−9.Holick.Mayo Clin Proc.2006 Mar;81(3):353−73,Grant.Prog Biophys Mol Biol.2006 Feb 28;[Epub ahead of print].DiCesar.Diabetes Care.2006 Jan;29(1):174,Reis.Diabetes Metab.2005;31(4 Pt 1):318−25,Pozzilli.Horm Metab Res.2005;37(11):680−3)。投与量10,000IU/日まで副作用は見られなかった(Heaney.Am J Clin Nutr,204−210,Vieth.Am J Clin Nutr.2001;73:288−294)。投与量1000〜2000IU/日のビタミンDによって、1型及び2型糖尿病患者において40ng/dl以上の25−ヒドロキシビタミンD濃度が維持され続けた。
【0084】
工程2。HIP、又はHIP類似体若しくは誘導体の投与前に、免疫変調成分のうちの1つが所定の方法で投与される。このような免疫変調成分には、膵島細胞破壊を停止させる免疫調節性ペプチドが含まれる。例えば、そのような免疫変調成分のひとつは、膵島損失の進行を遅延させることができる、又は1型糖尿病の発症を遅らせ、若しくは止めることができるモノクローナル抗体である。抗CD3抗体は、本発明の方法で有用な薬剤の一般的な種類を構成する。例えば、本発明の目的を達成するための適切な抗CD3抗体には、Herold et al.,30 May 2002,NEJM 346(22):1692−1698(この参照により本明細書に組み込まれるものである)に記載されるTolerRx及びヒト化抗CD3抗体で研究開発中のTRX4(Ala−Ala及びChAglyCD3)抗体が含まれる。1実施形態において、1日目には1〜1.42μg/kg、2日目には5.67μg/kg、3日目には11.3μg/kg、4日目には22.6μg/kg、そして5〜14日目には45.4μg/kgの投与量で1年あたり14日間、ブルーストーンヒト化抗CD3抗体が静脈内に移送される。3〜6ヵ月間のHIPの使用後、これらの治療を毎年繰り返し続け、その一方で、新しい膵島細胞形成が起きるにつれてインスリンの使用量を徐々に減らす。HIP治療段階の間、ビタミンD若しくはpramlintide/Symlin(商標)の使用を続けても良い。HIPおよびインスリン治療の中止後、抗CD3抗体に対する免疫修飾は毎年繰り返されるが、最近の研究によってそれらの効力が24ヵ月間続くことがわかった(Herold.Diabetes.2005;54(6):1763−9)。
【0085】
他の実施形態において、この免疫調節性化合物は、膵島細胞破壊を抑える若しくは遅らせることができるリソフィリン(lysofylline)若しくは熱ショックタンパク質である。このようなタンパク質には、Develogen AGが開発中のヒートショックタンパク質であるDIAPEP277(商標)が含まれる(Raz et al.,2002,Lancet 358(9295):1749−53(この参照により本明細書に組み込まれるものである))。1実施形態において、DIAPEP277(商標)は、ベースラインで、1ヵ月に、その後3ヵ月の間隔を置いて、皮下に植物油中の40mgマンニトールに1mgを与えることによって、皮下に移送される。DIAPEP277(商標)は、HIP療法の間中続けられ、新しく生成された膵島をHIP療法から保護するために、四半期の間隔を置いてHIP療法を続けた。本発明の併用療法の1実施形態において、HIPは、以下のようにDIAPEP277(商標)と共に投与される。HIP療法開始の約30日前に、まず投与量約1mgでDIAPEP277(商標)を皮下に投与する。その後、HIP療法開始時(第1の投与から30日後)に、DIAPEP277(商標)の第2の投与を行う。HIP療法は必要に応じて繰り返しても良く、DIAPEP277(商標)は約3ヵ月毎の頻度で投与する。
【0086】
他の実施形態において、ハムスターINGAPは、24時間毎に患者体重1kgあたり約8〜18mgの投与量で、24時間の連続皮下注入で供給しても良い。HIP療法は必要に応じて繰り返しても良く、DIAPEP277(商標)は約3ヵ月毎の頻度で投与する。
【0087】
本発明によって提供される新規なHIP治療法は、存在しない、又は減少した若しくは不十分な量のインスリンおよび他のホルモン、又は異常な量で産生されるインスリンおよび他のホルモンをもたらすいくつかの異なる発症機構に対処する。本発明によって提供されるHIPベースの治療法、HIP類似体若しくは誘導体ベースの治療法、又は併用療法は、インスリン、アミリン、食後血糖量、トリグリセリド、及びグルカゴンの適正値を達成し、且つ維持することを含む、より正常な糖代謝を回復させることができ、また顕著な体重増加及び厳重な血糖コントロールを伴う深刻な低血糖症のリスクの増加を改善することができる。
【0088】
当業者は、本明細書の開示を考慮した上で、膵島新生及び/若しくは前駆細胞分化を刺激し、及び/若しくはこのような薬剤の分解を遅らせる1若しくはそれ以上の薬剤が、本発明の方法の組み合せにおいて用いられ得ることが理解できるであろう。
【0089】
選択的に、本発明の方法の実施において、HIP、又はその類似体若しくは誘導体は、体重を減らし、満腹感を改善し、糖の腸吸収を遅らせることができるSymlin(商標)/pramlintide GLP−1、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1アゴニスト、若しくはGLP−1の分解を阻害するジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤等のもう一方の選択薬剤との共投与の有無に拘わらず、膵臓β細胞を標的とする自己免疫細胞の活性を阻害し、妨げ、若しくはそれらを破壊する特定の薬剤と組み合わせて使用することができる。このような薬剤には、例えば、ペプチド、タンパク質、及び合成化合物が含まれる。
【0090】
1実施形態において、前記薬剤は、モノクローナル抗体、熱ショックタンパク質、又は膵島機能の自己免疫破壊を明確に遅延させ、防止し、若しくは停止させる他の化合物である。当業者は、本明細書の開示を考慮した上で、膵島機能の自己免疫破壊を妨げる1若しくはそれ以上の薬剤が本発明の方法の組み合せにおいて用いられ得ることを理解するであろう。膵島機能を標的とする自己免疫細胞の活性を阻害し、妨げ、若しくはそれらを破壊する薬剤には以下のものが含まれる。抗CD−3抗体(hOKT3 1 Ala−Ala及びChAglyCD3)、シロリムス(ラパマイシン)、タクロリムス(FK506)、ヒートショックタンパク質60(DiaPep277)、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)ワクチン、ミコフェノール酸モフェチル単独、若しくはダクリズマブと組み合わせ、抗CD20剤、リツキシマブ、Campath−1H(抗CD52抗体)、リソフィリン、及びビタミンD、膵臓β細胞破壊を防ぐように設計されたインスリンの代謝的に不活発な形態である合成されたIBC−VSOワクチン、CD4<SUP>+</SUP>CD25<SUP>+</SUP>抗原特異的制御性T細胞を用いたインターフェロンα予防接種、又は膵臓β細胞破壊を防ぐように設計された類似の薬剤。この後の実施形態において、CD4<SUP>+</SUP>CD25<SUP>+</SUP>抗原特異的制御性T細胞を用いたインターフェロンα予防接種若しくは類似の薬剤は、直接若しくは抗CD3免疫療法を用いることによって、調節性T細胞を利用した併用療法において使用される。この実施形態には、免疫薬剤が特に1型糖尿病患者において使用され、新しく産生された膵島細胞を免疫攻撃から保護することが含まれる。
【0091】
このように、本発明の併用療法及び関連した方法は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体の投与、或いはHIP、又はその類似体若しくは誘導体と、膵臓β細胞の自己免疫破壊を妨げる1若しくはそれ以上の薬剤を有する成体膵臓における、細胞から膵島への分化を刺激する1若しくはそれ以上の薬剤との共投与を含む。本明細書で使用されるように、治療の同一過程の一部として2若しくは3の薬剤が投与される場合、薬剤は、他の薬剤(本明細書において「化合物」若しくは「ホルモン」と呼ぶ)と共に「共投与」され若しくは「組み合わせて投与」される。1実施形態において、第1の薬剤は、最初に、第2の薬剤の投与前に投与され、両者による治療が治療過程を通して繰り返し行われる。他の実施形態において、前記第2の薬剤は、前記第1の薬剤に関する治療の開始後若しくは完了後に投与される。他の実施形態において、前記第1の薬剤は、前記第2の薬剤による治療の開始と共に同時に投与される。他の実施形態において、第3の薬剤は、前記第1若しくは前記第2の薬剤または両者の投与と同時に若しくはその前後に投与される。1実施形態において、インスリン及びアミリンを作る膵臓β細胞を標的とする自己免疫細胞を妨げ若しくは殺す1若しくはそれ以上の薬剤に関する治療は、最初に、成体膵臓における前駆細胞から膵島への分化を刺激する治療の投与前に投与される。他の実施形態において、特定の自己免疫遮断薬での治療は、膵島分化を刺激する薬剤での治療の停止後に繰り返し行われる。免疫調節剤の投与前若しくは投与と同時に、インスリンの複数の連日注射、インスリンポンプ療法、及びpramlintide/Symlin(商標)及び1000〜2000IU/日の用量のビタミンD療法の使用法を含む3ヵ月間の強化された/厳重な血糖コントロールがあり、40ng/ml以上の25−ヒドロキシビタミンD濃度を維持している。
【0092】
本発明の方法の実施は、治療の複数の往診若しくは「サイクル」と関連し得る。例えば、膵臓β細胞を標的とする自己免疫細胞を妨げる薬剤の投与と共の、前駆細胞からの膵島分化を刺激する薬剤の投与は、双方の型の薬剤の共投与に関する本発明の方法の1サイクルとみなすことができる。或いは、膵島分化薬剤の各投与は、治療のサイクルとみなされることができ、自己免疫細胞遮断薬が投与される場合、それは、このようなサイクルの一部のみにおいて、若しくは当該膵島分化薬剤の最後の投与の後に投与され得る。例えば、アルミニウムの2つのDIAMYD(商標)注入だけが、自己免疫性糖尿病患者のβ細胞破壊を更に食い止めるため、皮下に4週間隔で供給されるヒト組換えGAD65を調製した(Agardh et al.,J Diabetes Complications.2005;19(4):238−46)。一方で、抗CD3モノクローナル抗体hOKT3gamma1(Ala−Ala)の単一の過程は、C−ペプチド反応と、1型糖尿病の発症の少なくとも2年後の臨床パラメータ、抗CD3抗体療法との改善をもたらす(Herold,et al,Diabetes.2005;54(6):1763−9)。このように、選択された免疫遮断薬に応じて、治療の循環性は変化しても良く、新しい膵島を免疫攻撃から保護している。上述の実施例は例示目的のためにあって、いかなる種類においても、本発明を限定する意図はないことが理解されるであろう。当業者は、多くの場合、共投与のスケジュールが患者の便宜のために、第1の若しくは後の治療的サイクルにおいて異っても良いことを認めるであろう。
【0093】
本発明の併用療法及び関連した方法は、新規な膵島構造を再生させる薬剤を有する1型糖尿病の病理学的発症機構を特異的に対象とし、及び/若しくは対象とされた免疫療法を提供する薬剤と組み合わせて、膵臓前駆細胞を分化させる。この併用療法は、完全に若しくは部分的に、抗自己抗体が膵臓を攻撃する自己免疫現象である、1型糖尿病の発症機構を食い止める。インスリンの投与に依存する1型糖尿病の現在の治療は、1型糖尿病の基礎をなす欠陥を克服することはない。更に、1型糖尿病が基礎となっている疾病の現在の免疫療法は、膵臓β細胞の除去に基づいており、各々の新しい膵島内の新規なα、β、δ、及びポリペプチド細胞を含む新規な完全に機能的な膵島構造の分化に影響を与えるものではない。2型糖尿病患者において、疾患の基盤が免疫破壊ではないため免疫遮断薬は必要ではないが、最近の研究によって、1型糖尿病のビタミンD欠乏症の潜在的な重要な役割が指摘され、更に最近の研究によって、診断時に、1型糖尿病患者より多くの2型糖尿病患者がビタミンD欠乏症であり、40ng/ml以上の濃度を維持することが正常な免疫機能を維持するために推奨されることが発見されている(Riachy Apoptosis.2006 Feb;11(2):151−9.Holick.Mayo Clin Proc.2006 Mar;81(3):353−73,Grant.Prog Biophys Mol Biol.2006 Feb 28;[Epub ahead of print].DiCesar.Diabetes Care.2006 Jan;29(1):174,Reis.Diabetes Metab.2005;31(4 Pt 1):318−25,Pozzilli.Horm Metab Res.2005;37(11):680−3)。投与量10,000IU/日まで副作用は見られなかった(Heaney.Am J Clin Nutr,204−210,Vieth.Am J Clin Nutr.2001;73:288−294)。
【0094】
本発明によって提供される新規な方法は、完全に機能的な新規なβ細胞を含む新規な膵島構造の分化を介した破壊、再生、及び栄養β細胞の間のアンバランスのため、インスリン産生の減少をもたらす2型糖尿病及び疾病並びに疾患の病理学的発症機構を食い止めるものである。本発明の方法および化合物は、2型糖尿病、又は他の疾病若しくは疾患を有することに起因する、現在薬剤を服用している患者のインスリン並びに糖尿病剤の必要性を減少させることができ、このような患者の糖コントロールを改善することができる。一部の患者において、本発明の方法の治療は、投与インスリンの必要性を改善若しくは不要にすることができる。以下の段落において、本発明の方法及び組成物を治療的利点を有する治療として使用することができる様々な疾病および疾患を記載する。
【0095】
治療に適したおよび疾患
本発明のHIP、又はHIP類似体若しくは誘導体の治療若しくは併用療法は、ヒトおよび動物を含むいかなる哺乳類の、β細胞機能の損失若しくは減少に起因したインスリン産生若しくは分泌の減少と関連した疾病、症状、若しくは疾患による苦痛を、又はHIP化合物および治療の方法を利用した前駆細胞から新規な膵島構造への分化を介して被験対象に提供されることができるより多いインスリン産生の必要性を治療するために用いることができる。このような疾病および疾患には、これらに限定されるものではないが、1a型糖尿病患者、又は抗体(抗GAD65抗体、抗膵島抗体、若しくは抗インスリン抗体)を明示することができる潜在性成人期自己免疫性糖尿病(Latent Autoimmune Diabetes of Adulthood)患者、又はβ細胞を標的とする自己免疫のないインスリン欠乏性1型糖尿病患者(1b型糖尿病)を含む、1型糖尿病、2型糖尿病、糖尿病前症、空腹時血糖障害、空腹時高インスリン血症が含まれる。更に、本発明は、1型糖尿病と新しく診断された患者、1型糖尿病患者の兄弟並びに一等親血縁者、及び抗体陽性並びに1型糖尿病への傾向を示す他の自己免疫性疾患の人々に治療的利点を与えるように実施され得る。1実施形態において、本発明の方法は、このような治療を必要とする患者の1型糖尿病を克服させるように実施される。
【0096】
本発明の併用療法並びに関連した方法、及び組成物はまた、糖尿病患者のグルコース変動を改善するため、児童並びに成人の1型糖尿病患者のインスリン治療に対する補助療法として使用されても良く、また管理不良の糖尿病、無認識の低血糖、及び1型糖尿病の再発性低血糖症患者におけるインスリン治療に対する補助療法として使用されても良い。
【0097】
本発明のHIP、又はHIP類似体若しくは誘導体の治療、及び関連した方法並びに組成物は、2型糖尿病と診断された患者、高血糖症を有する児童および成人の2型糖尿病患者、インスリン治療と並行した2型糖尿病患者、経口糖尿病若しくは他の皮下糖尿病治療、及び管理不良の2型糖尿病患者を治療するために用いられ得る。児童および成人を含む一部の患者において、本発明の方法および組成物は、1型および2型糖尿病を克服させることができる。児童および成人を含む一部の患者において、本発明の方法および組成物は、1型および2型糖尿病を克服させることができる。本発明の方法および組成物はまた、異形形態の糖尿病の児童並びに成人、及び食後高血糖の疾患を有する患者を治療するために用いることもできる。
【0098】
本発明のHIP、又はHIP類似体若しくは誘導体の治療、及び関連した方法並びに組成物はまた、これらに限定されるものではないが、体重減を達成するために、又は肥満、1型若しくは2型糖尿病患者ではない人と同様に糖尿病患者における肥満、太り過ぎを治療するために、体重減、トリグリセリド、LDLコレステロールの減少を必要とする児童患者及び成人患者を治療するために用いられ得る。1実施形態において、本発明の方法および組成物は、病的な肥満患者を治療するために用いられる。他の実施形態において、本発明の方法および組成物は、病的な肥満患者、又は食欲不振、過食症、若しくは他の摂食障害の患者を治療するために用いられる。
【0099】
本発明の単剤療法並びに関連した方法、及び組成物はまた、糖代謝の変化に伴う神経障害性疼痛症候群、及び糖尿病の有無に拘わらない高トリグリセリド血症、並びに食後高トリグリセリド血症の疾患を示す患者と同様に、異常代謝症候群またはメタボリックシンドロームの児童および成人を治療するために用いられ得る。1実施形態において、これらの方法は、このような治療を必要とする患者の多嚢胞性卵巣症候群を治療するために実施される。
【0100】
本発明のHIP、又はHIP類似体若しくは誘導体療法、及び関連した方法の利益を得ることができる他の患者には、空腹時高血糖症、糖尿病前症、空腹時血糖異常、耐糖能異常、及び全体的高血糖状態などの疾患であると診断された児童および成人患者が含まれる。
【0101】
本発明のHIP、又はHIP類似体若しくは誘導体治療、及び関連した方法並びに組成物はまた、患者が糖尿病患者と診断されるたかどうかに関係なく、神経障害性疼痛症候群及び神経障害の患者を治療するために使用され得る。本発明のHIP、又はHIP類似体若しくは誘導体治療、及び関連した方法並びに組成物はまた、再発性膵臓炎患者若しくは膵臓癌患者を治療するために用いることができ、また膵臓の前駆細胞に由来する新規な膵島構造を得ることを目的とするすべての様式において用いられ得る。
【0102】
本発明の方法で有用な薬剤を以下の段落に記載する。本明細書の開示を考慮した上で、当業者は、治療される疾病および疾患、並びに患者の健康状態と医学的状態とに基づいて、当業者が特定の薬剤を選択することができることを認めるであろう。
【0103】
膵島再生を刺激するための薬剤
本発明の方法の1実施形態において、膵臓前駆細胞からインスリン産生島構造への島分化を刺激する前記薬剤は、HIP、若しくはグルタミン酸レス(減少)HIP、トリプトファン−HIP、バリン−トリプトファンHIP、ヘキサペプチドHIP、セプタペプチドHIP、二級セプタペプチドHIP、或いはトリプトファン−グルタミン酸レス(減少)HIP、アミリンを含むそれらの類似体或いは誘導体、及び/若しくはこれに限定されるものではないが、Pramlintide(SYMLIN(商標))、GLP−1受容体類似体、エキセンディン−4(exendin−4)(EXENATIDE(商標))、リラグルチド(Liraglutide)(NN2211)、GLP−1、GLP−1類似体GIP、GLP−1、ハムスターINGAP、他のインクレチン−擬態ホルモン及び/若しくは同様な作用を示す化合物及び薬剤を含む類似体、及び例えばGLP−1の分解を遅らせるジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤などの、前述の化合物や薬剤の半減期を延長する或いはあらゆるレベルや活性を増加する薬剤から成る群から選択される。GLP−1受容体に対する直接的なアゴニスト活性を介して、若しくはGLP−1の分解を阻害することによって作用する数多くのGLP−1擬態が存在する。これらの薬剤は本発明の方法において有用である。GLP−1擬態は、HIPとの共役体及び/若しくは1型糖尿病を治療するための標的化免疫療法で使用することができ、本発明で提供されるように、それらは血糖調節を改善する、満腹度を増加する、胃腸グルコース吸収を遅らせ、1型糖尿病を生じる根本的なメカニズムの回復を導くために使用することができる。これらの薬剤及び方法は、糖尿病において障害性グルコース耐性の進行を阻止し、前糖尿病状態、障害性空腹時グルコースの障害性グルコース耐性及び糖尿病への進行を阻止し、新たに診断された2型糖尿病を回復させ、2型糖尿病を治療し、及び過体重、肥満、多嚢胞性卵巣症候群、及び神経因性疼痛症候群を治療する或いは予防することが可能である。
【0104】
前記方法、薬剤及び薬学的組成物は、成人膵臓において前駆細胞から膵島分化を達成するための本発明の実施に有用であり、以下の参考文献において記載されたものを含み、これらはこの参照によって本明細書に組み込まれるものである。Rosenberg et al.,1992,Adv.Exp.Med.Biol.321:95−104;Mar.1996,Diabetologia 39(3):256−62;Jul.1996,Pancreas 13(1):38−46;and Nov.2004,Ann.Surg.240(5):875−84;Vinik et al.,Jun.1997,Horm.Metab.Res.29(6):278−93。島再生、或いは膵臓前駆細胞の分化の刺激は、対象におけるインスリンの産生及び/若しくは分泌の増加を通じて示されるものである。
【0105】
本発明の1実施形態において、アミリン(amylin)或いはその類似体であるSymlin(商標)、pramlintideは、投与前に或いはHIPとの併用投与で使用され、アミリンは、以下の参考文献(Young et al.,1997,Curr.Opin.Endocrin.Diabetes 4:282−290(これはこの参照によって本明細書に組み込まれる))の教示に従って、島再生の前に及び島再生期間連続的に投与される。本発明の1実施形態において、アミリン及び/若しくはこれに限定されるものではないがPramlintideを含む類似体は、HIPの開始前に血糖調節を最適化するために皮下的に投与され、次に単独で、或いはHIP或いはHIP類似体或いは誘導体などの他の島刺激ペプチドとの共役型で使用され得る。1実施形態において、アミリン或いはPramlintideは、0.3〜0.8マイクログラム/キログラム患者体重、という用量で投与される。1実施形態において、この用量は、食事前に、例えばQHS及び3AMに皮下的に投与される。1実施形態において、治療上有効な用量は、皮下的に、或いは注入装置/ポンプ、及び/若しくは経皮的、鼻腔内、頬側的、マイクロニードル運搬システム、経口カプセル封入法を介して運搬される。別の実施形態において、前記治療上有効な用量は、1週間に1回、2週間に1回、或いは1ヶ月に1回の頻度のみの注射による投与或いは他の運搬方法を必要とする徐放性処方を用いて投与される。上述したように、いくつかの実施形態において、アミリン或いはPramlintideは、別の島刺激薬剤と同時投与される。
【0106】
本発明の1実施形態において、エキセンディン−4或いは類似体を含むGLP−1受容体類似体は、食事と共に5〜10mcgの用量でのHIPを用いた方法において使用される。エキセンディン−4は、以下の参考文献の教示に従って、本発明の目的に対して処方され投与される(Alcantara et al.,1998,CellBiochem.Funct.16(1):51−6;Dupre et al.,2004,J.Clin.Endocrin.Metab.89(7):3469−73;Edwards et al.,1999,Diabetes 48:86−93、及びXu et al.,1999,Diabetes 48:2270−76、これらはこの参照によって本明細書に組み込まれるものである)。1実施形態において、エキセンディン−4は、食前に5〜10マイクログラムの範囲で投与される。1実施形態において、エキセンディン−4は、単独で、或いはHIP及び/若しくは他の島刺激ペプチドとの組み合わせで、皮下的に投与される。1実施形態において、前記治療上有効な用量は皮下的に投与される。別の実施形態において、エキセンディン−4の運搬は、経皮的、頬側、経口カプセル封入法、鼻腔内或いはマイクロニードル運搬システムを介して行われる。別の実施形態において、前記治療上有効な用量は、1週間に1回、2週間に1回或いは1ヶ月に1回の頻度のみの注射を必要とする徐放性処方に含有される。1実施形態において、エキセンディン−4は、1型或いは2型糖尿病を患った患者、若しくは肥満、太りすぎ、インスリン耐性症候群、障害性空腹時グルコース、前糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群或いは摂食障害を患った患者に対して、HIP、若しくは他の島細胞新生或いは前駆細胞形質転換剤と同時投与される。
【0107】
GIP及びGLP−1は、成長ホルモンのインクレチンファミリーに属し(参考文献Creutzfeldt,1979,Diabetologia 16:75-85;Creutzfeldt and Ebert,1985,Diabetologia 28:565-573;Holst et al.,2001,Scand.J.Clin.Lab.Invest.Suppl.234:75−85;及びVilsboll et al.,Jun.2003,J.Clin.Endocrin.Metab.88(6):2706−13を参照のこと、これらはこの参照によって本明細書に組み込まれる)、本発明の1実施形態において、HIPの同時使用の有無でのインクレチンホルモン或いは類似体は本発明において使用され、成体膵臓において前駆細胞から島への分化を刺激する。
【0108】
本発明の1実施形態において、GIP或いは類似体は、HIPと共に若しくはHIP無しで使用される。GIPは、以下の参考文献の教示に従って本発明の目的に対して処方され投与される(Andersen et al.,1978,J.Clin.Invest.62:152-161;Creutzfeldt et al.,Feb.1980,Diabetes 29(2):140−5;Dupre et al.,1973,J.Clin.Endocrin.Metab.37:826-828;Ebert et al.,1980,Clinical Gastroenterology 9(3):679−98;Elahi et al.,1979,Am.J.Physiol.237:E185-E191,and 1994,Regulatory Peptide 51(1):63−74;Krarup et al.,Jun.1983,J.Clin.Endocrin.Metab.56(6):1306−12;Krarup et al.,1987,Metabolism 36(7):677−82;Krarup et al.,1988,Acta Med.Scand.223(5):437−41;Lynn et al.,2003,FASEB 17:19−93;Meir et al.,2002,Regulatory Peptides 107:1−3;及びNauk et al.,1993,J.Clin.Endocrin.Metab.76(4):912−7.、これらはこの参照によって本明細書に組み込まれるものである)。
【0109】
1実施形態において、GIPは、HIP、又はその類似体若しくは誘導体との組み合わせで静脈内に或いは皮下的に投与され、2〜10ナノグラム/キログラム患者の体重の用量で、食前3〜5分の開始、就寝前及び3AMでの開始時に、静脈内或いは皮下的運搬によって30分連続注入を提供される。1実施形態において、GIPは食前、QHS及び3AMに皮下的に投与され、GIPは経口的に、或いは注入装置を用いて、若しくは経皮的、頬側、鼻腔内或いはマイクロニードル運搬システムを用いて投与される。別の実施形態において、1週間に1回、2週間に1回或いは1ヶ月に1回の頻度のみでの注射を必要とする徐放性処方が使用される。本発明の方法に従ったGIPの投与に対して適切な組成物は、以下の参考文献に開示されている。Jones et al.,6 Nov.1989,Diabetes Res.Clin.Pract.7(4):263−9.。
【0110】
本発明の1実施形態において、GLP−1或いは類似体、若しくはGLP−1受容体アゴニスト或いはジペプチジルペプチダーゼ−4(Dipeptidyl Peptidase−4)阻害剤は、本方法において前駆細胞からの島分化を刺激するために、HIP、又はその類似体若しくは誘導体との組み合わせで使用され、GLP−1、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1類似体及びDPP−4阻害剤は、以下の参考文献の開示に従って本発明の目的のために処方され投与される。Elahi et al.,1994,Regulatory Peptides 51(1):63−74;Gutniak et al.,1994,Diabetes Care 17:1039−44;Kreymann et al.,1987,Lancet 2:1300-1304;Larsen et al.,1996,Diabetes 45(Suppl.2):233A(Abstract);Larsen et al.,2001,Diabetes Care 24(8):1416−21;List et al.,2004,Am.J.Physiol.Endocrin.Metab.286(6):E875−81;Lugari et al.,2000,Horm.Metab.Res.32:424-428;Marquez et al.,Mar.1998,Cell.Biochem.Funct.16(1):51−6;Meier et al.,March 2004,Critical Care Medicine 32(3):848−851;Meneilly et al.,2003,Diabetes Care 26:2835−41;Nauk et al.,1996,Diabetologia 39(12):1546−53;Thorens et al.,Dec.1995,Diabetes Metab.21(5):311−8;Vilsboll et al.,2003,J.Clin.Endocrin.Metab.88(6):2706−13;Wang et al.,1997,J.Clin.Invest.99:2883-2889;及びZander et al.,2002,Lancet 359:824−30、これらはこの参照によって本明細書に組み込まれるものである。
【0111】
1実施形態において、GLP−1、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1類似体は皮下的に投与され、DPP−4阻害剤はHIP、又はその類似体若しくは誘導体との組み合わせで経口的に投与され、8〜20mg/キログラム患者体重にて400〜800mg/1日の範囲の用量である。1実施形態において、GLP−1は、食前、QHSに経口的に或いは皮下的に投与される。1実施形態において、GLP−1は、1〜30ng/キログラム体重/分の割合で連続的皮下注入装置を用いて、若しくは経皮的、頬側或いはマイクロニードル装置システムを用いて投与され、食前3〜5分の開始、就寝前及び3AMでの開始時に、静脈内或いは皮下的運搬によって30分連続注入が提供される。別の実施形態において、1週間に1回、2週間に1回或いは1ヶ月に1回の頻度のみでの投与を必要とする徐放性処方が使用される。
【0112】
1実施形態において、非ヒト/ハムスターINGAPは、HIP、又はその類似体若しくは誘導体との組み合わせで皮下的に投与され、5.0〜20.0ミリグラム/キログラム患者体重/1日という用量である。別の実施形態において、前記ハムスターINGAPは、24時間以上の連続的皮下注入において投与される。別の実施形態において、前記ハムスターINGAPは、食前、QHSに分割用量/1日で投与される。別の実施形態において、前記ハムスターINGAPは、静脈内或いは皮下的運搬装置による連続注入、ポンプを介した連続注入、経皮的パッチ、経口カプセル封入法、マイクロニードル運搬システムを用いて投与され、ハムスターINGAPの一貫した基礎レベル運搬を提供する。別の実施形態において、前記ハムスターINGAPは、食前にボーラス運搬での静脈内或いは皮下的運搬によって連続注入において運搬される。別の実施形態において、1週間に1回、2週間に1回或いは1ヶ月に1回の注射の頻度のみを必要とする徐放性処方が使用される。
【0113】
1実施形態において、Liraglutide(NN2211)は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体との組み合わせで、10〜40マイクログラム/キログラム患者体重の用量で、皮下的に投与される。別の実施形態において、Liraglutideは食前、QHS、及び3AMに皮下的に投与される。別の実施形態において、Liraglutideは、注入装置を用いて、若しくは経皮的、頬側或いはマイクロニードル運搬システムを用いて投与され、食前3〜5分の開始、就寝前及び3AMでの開始時に、静脈内或いは皮下的運搬によって30分連続注入が提供される。別の実施形態において、1週間に1回、2週間に1回或いは1ヶ月に1回の注射のみの頻度を必要とする徐放性処方が使用される。
【0114】
本発明の併用療法において、Liraglutide或いはNN2211は、毎日約20マイクログラム/kg患者体重の用量で投与される。患者はこの用量によって、周期的変動が減り、食後グルコース、グルカゴン及びトリグリセリドが減少し、食前のボーラスインスリンを10〜20%減少することができる能力を得るであろう。本発明の方法に従ったLiraglutideの投与は、限定されるものではないが例えば1型糖尿病におけるヘモグロビンA1Cによって測定されるように、血糖調節を改善するために、糖尿病患者における障害性グルコース耐性の進行を阻害するために、障害性空腹時グルコースの障害性グルコース耐性及び糖尿病への進行を阻害するために、新たに診断された2型糖尿病を回復するために、及び2型糖尿病を治療するために使用され得る。
【0115】
本発明の併用療法の実施形態において、Liraglutide或いはNN2211は、連続した3週間、朝、食事を摂取する約4時間前、及び就寝時に、約20マイクログラム/kg患者体重の用量で、成人患者へ投与される。C−ペプチドレベルが約1.0ng/mL以下で治療を開始する患者に対しては、C−ペプチドレベルをモニタリングし、そのレベルが0.5ng/mL以上に上昇した場合、抗体hOKT3g1(ala−ala)を12日間連続で投与した。
【0116】
本発明の併用療法において、エキセンディン−4或いは合成エキセンディン−4、若しくは別のGLP−1類似体、GLP−1受容体アゴニスト、或いはジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤は、食事前に単独で若しくはHIP或いは別の島分化剤と共に投与され、HIP療法の開始前或いはその最中の血糖調節を改善する。そのような薬剤は、食前に運搬された場合、少なくとも20%のインスリンの必要性を減少し、インスリンの適切な軽減を導くものであり、HIP或いは他の島分化剤が投与されている間、糖尿病薬物療法は実施されているものである(Levetan et al.,Diabetes Care 2003 Jan;26(1):1−8)。HIP及び/若しくは他の薬剤が1型及び2型糖尿病患者に運搬されている最中、インスリンの慎重な軽減及び糖尿病薬物療法が行われ、新しい島細胞が前駆細胞から分化するときに低血糖を防ぐ。最終的に、インスリン及びHIPを含む糖尿病薬剤療法を、膵臓が新しい機能性島細胞と共に再増殖するにつれて減らしていく。C−ペプチドレベルが約1.0ng/mL以下で治療を開始する患者に対しては、C−ペプチドレベルをモニタリングし、そのレベルが0.5ng/mL以上に上昇した場合、注意深くモニタリングし、外因性インスリン用量の軽減を行う。
【0117】
1型糖尿病の患者において、HIP及び/若しくは他のペプチド化合物(SYMLIN(商標)、ハムスターINGAP、GLP−1、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1類似体、DPP−4阻害剤)の開始前に、これらと共に使用される(その前の、最中及びその後の)免疫療法は新たに形成された島を保護するために投与されるであろう。例えば、抗体hOKT3g1(ala−ala)は、最初の治療から24カ月後その有効性が示されてから12日間連続で投与される一方、同様のヒト化モノクローナル抗体ChAglyCD3は6日間連続で投与され、毎年繰りかえされる。Diamyd's GAD65化合物は、1ヶ月の間隔で2種類の皮下注射において運搬される。熱ショックタンパク質60であるDIAPEP277(商標)は、研究開始時、1ヶ月目、及び6ヶ月目に、ベジタブルオイル中に40mgマンニトールを含有する1mgの皮下的注射を用いて、新たに診断された糖尿病患者において成功したと示された。選択された免疫調節剤に基づいて、治療の周期性が決定されるであろう。別の実施形態において、DIAPEP277(商標)、熱ショックタンパク質60ワクチン、DIAPEP277(商標)、及び膵臓ベータ細胞破壊を阻止するように設計されたインスリンの、合成的、代謝的に不活性型であるIBC−VSOワクチン、インターフェロン−アルファ、或いはCD4<SUP>+</SUP>CD25<SUP>+</SUP>抗原特異的調節性T細胞を用いたワクチン投与、若しくは同様な薬剤は、前記併用療法に使用される。別の実施形態において、これに限定されるものではないが、抗CD3免疫療法の使用を含む免疫調節剤を用いたアプローチが使用され、これには、Sirolimus(ラパマイシン(Rapamycin))、Tacrolimus(FK506)、熱ショックタンパク質60(DIAPEP277(商標))、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)ワクチン、ミコフェノール酸モフェチル単独或いはDaclizumabとの組み合わせ、抗CD20剤Rituximub、Campath−1H(抗CD52抗体)及び/若しくは単独、若しくは直接的な或いは抗CD3免疫療法の使用を介した調節性T細胞の使用に対する療法アプローチとの組み合わせでのビタミンDが含まれる。
【0118】
膵島細胞構造内の細胞を標的とする自己免疫細胞を阻害、遮断、或いは破壊する薬剤
膵臓ベータ細胞を標的とし、本発明の本発明の方法に従って治療可能な少なくともいくつかの病気及び症状の原因的な役割を担う自己免疫細胞。以下の参考文献;Bach et al.,2001,Ann.Rev.Immun.19:131−161;Lernmark et al.,Endocrin.Metab.Clin.N.Am.20(3):589−617;及びMathis et al.,Dec.2001,Nature 414(6865):792−798を参照のこと、これらはこの参照によって本明細書に組み込まれる。
【0119】
1型糖尿病の患者における免疫剤の導入に関与する治療の以前の方法は、免疫攻撃によって破壊されたそれらの島細胞のみを保護し、完全な機能を有するベータ細胞での新しい島構造を有する膵臓を再増殖する必要性に対処していない。これらの方法は、ベータ細胞の破壊を減らすことを目的とした一般化され且つ特異的な免疫調節と、成人膵臓内での前駆細胞からの新たな島細胞の分化の方法論とを組み合わすものである。
【0120】
本発明の方法は、インスリン、アミリンあるいはグルカゴンを産生する膵臓ベータ細胞を標的にする自己免疫細胞の活性を特異的に阻害する、若しくはそれらの細胞を遮断或いは破壊する薬剤を使用する。そのような薬剤は、膵島細胞破壊を停止する免疫調節性ペプチドを含む。例えば、そのような薬剤の1つは、島細胞損出の進行を遅らせる或いは遅延することができる、若しくは1型糖尿病の発症を止めることができるモノクローナル抗体である。抗CD3抗体は、本発明の方法に有用な薬剤の一般的なクラスを構成している。例えば、本発明の目的に適切な抗CD3抗体は、TolerRxで開発中のTRX4(Ala−Ala及びChAglyCD3)抗体、及び参考文献Herold et al.,30 May 2002,NEJM 346(22):1692−1698(これはこの参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているヒト化抗CD3抗体を含む。1実施形態において、前記ヒト化抗CD3抗体は、1年間当たり14日間で1日目に1〜1.42μg/kg、2日目に5.67μg/kg、3日目に11.3μg/kg、4日目に22.6μg/kg、及び5〜14日目に45.4μg/kgの用量で静脈内に運搬される。これらの療法は、HIPの3〜6ヶ月の使用後、毎年繰り返され、一方インスリンは新しい島細胞形成が起こるにつれて減らされる。HIP治療期間、ビタミンD及びpramlintide/Symlin(商標)の使用は続けられる。HIP及びインスリン療法の中断後に、最近の研究(Herold.Diabetes.2005;54(6):1763−9)では24ヶ月以上続けることにそれらの有効性を見出しているが、免疫調節は抗CD3抗体に対して毎年繰り返される。
【0121】
別の実施形態において、前記免疫調節化合物は、島細胞破壊を停止する或いは遅延することができる熱ショックタンパク質である。そのようなタンパク質は、Develogen AG(参考文献Raz et al.,2002,Lancet 358(9295):1749−53を参照のこと、これはこの参照によって本明細書に組み込まれる)によって開発中の熱ショックタンパク質であるDIAPEP277(商標)が含まれる。1実施形態において、DIAPEP277(商標)は、基準日に、1ヶ月に、及び3か月間隔で2回、ベジタブルオイル中の40mgマンニトールにおける1mgを投与することによって皮下的に運搬される。本発明の併用療法の1実施形態において、HIP、又はHIP類似体若しくは誘導体は、以下のようにDIAPEP277(商標)と同時投与される。DIAPEP277(商標)は、HIP、又は類似体若しくは誘導体ベース療法の開始約30日前に約1mgの用量で皮下的に第一に投与される。DIAPEP277(商標)の第二の投与は、HIP、又は類似体若しくは誘導体ベース療法の開始時(第一の投与後90日)に行われる。
【0122】
HIP、又はその類似体若しくは誘導体は、皮下注射を介して、肝臓標的小胞或いは他のリポソーム剤を介して経口的に、若しくは24時間連続皮下注入を介して、5〜20mg/kg患者の体重/24時間の用量で、すなわち600〜800mg以下/患者の用量で運搬される。HIP、又は類似体若しくは誘導体ベース療法は、3〜6ヶ月期間続けられ、C−ペプチド産生によって厳密にモニタリングされる。前記免疫療法は、選択された免疫剤に基づいて周期的に運搬される。例えば、DIAPEP277(商標)は3か月間隔でトータル6ヶ月間投与され、初めにはHIP、又は類似体若しくは誘導体ベース療法以前に3か月運搬される(Raz et al.,Lancet.2001 Nov 24;358(9295):1749−53)。
【0123】
本発明の方法に有用な免疫調節剤は、本分野で既知であるように、若しくは本明細書に記載されたように処方され、投与され、用量で投薬される。本発明の方法の実施に対する薬学的な処方及び付加的投薬、及び投与プロトコールは以下に記載されている。
【0124】
加算性/相乗作用
HIP、又はその類似体若しくは誘導体の組成、すなわちグルタミン酸−レス(less)HIP、トリプトファン−HIP、バリン−トリプトファンHIP、ヘキサペプチドHIP、セプタペプチドHIP、第二セプタペプチドHIP或いはトリプトファン−グルタミン酸−レスHIP、及び薬学的に許容可能な塩類及びそれらのエステル類は、様々な他の化合物と組み合わせた場合、糖尿病或いは類似の疾患の治療において、新しい島細胞への前駆細胞の分化に対して相乗作用的に或いは加算性に有効である。これらの化合物は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体、アミリン及び/若しくは類似体を含み、これらはこれに限定されるものではないが、Symlin/Pramlintide、GLP−1、GLP−1受容体アゴニスト(例えばエキセンディン−4、Liraglutide(NN2211)、GLP−1類似体、ジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤、GIP、ハムスターINGAP、及び他のインビトロクレチン擬態ホルモンなど)、及び/若しくは同様な作用を有する化合物及び薬剤、及び前述の化合物及び薬剤の半減期を延長し、これらのあらゆるレベル或いは活性を増加する薬剤(例えばGLP−1の分解を遅らせるジペプチジルペプチダーゼ阻害剤など)、及びベータ細胞を標的とする自己免疫細胞を阻害、遮断或いは破壊する薬剤(これに限定されるものではないが:抗CD3抗体(hOKT3γ1 Ala−Ala及びChAglyCD3)、Sirolimus(ラパマイシン)、Tacrolimus(FK506)、熱ショックタンパク質60(DIAPEP277(商標))、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)ワクチン、ミコフェノール酸モフェチル単独或いはDaclizumabとの組み合わせ、抗CD20剤Rituximab、Campath−1H(抗CD52抗体)、lysofylline、及びビタミンD、膵臓ベータ細胞破壊を阻止するように設計されたインスリンの、合成的、代謝的に不活性型であるIBC−VSOワクチン、及びCD4<SUP>+</SUP>CD25<SUP>+</SUP>抗原特異的調節性T細胞或いは膵臓ベータ細胞破壊を阻止するように設計された同様な薬剤を用いたインターフェロン−αワクチン投与を含む)を含む。この最後の実施形態において、CD4<SUP>+</SUP>CD25<SUP>+</SUP>抗原特異的調節性T細胞或いは同様な薬剤を用いたインターフェロン−αワクチン投与は、直接的に或いは抗CD3免疫療法の使用を通じて、調節性T細胞を用いるための併用療法において使用される。
【0125】
Sirolimus(ラパマイシン)、Tacrolimus(FK506)、TRX4抗体、ヒト化抗CD3抗体、DYAMID(商標)抗GAD65抗体、及びDIAPEP277(商標)などの化合物も、糖尿病或いは同様な疾患を治療する際、HIP或いは新しい島細胞へ前駆細胞を分化させる薬剤の使用に添加した場合、相乗作用的に或いは加算性に有効である。
【0126】
相乗作用とは、2若しくはそれ以上の薬剤の相互作用であり、それらの組み合わせた効果がそれら個々の効果の合計以上のものであると定義される。例えば、疾患を治療する際の薬剤A単独の効果が25%であり、疾患を治療する際の薬剤B単独の効果が25%であるが、疾患を治療する際に2つの薬剤を組み合わせた効果が75%だったとした場合、A及びBの効果は相乗作用的であるという。
【0127】
加算性とは、2若しくはそれ以上の薬剤の相互作用であり、それらを組み合わせた効果がそれら個々の効果の平均値と同様なものであると定義される。例えば、疾患を治療する際の薬剤A単独の効果が25%であり、疾患を治療する際の薬剤B単独の効果が25%であるが、疾患を治療する際に2つの薬剤を組み合わせた効果が約50%或いは少なくとも25%以上であった場合、A及びBの効果は加算性であるという。
【0128】
2若しくはそれ以上の薬剤の相互作用は、それらの組み合わせた効果が同時療法で使用された一方或いは両方の薬剤の有害事象(AE)の発生率を減少するということである場合、薬剤療法投与計画における改善は治療上の効果を有する2つの薬剤の組み合わせ投与によって得られる。有害事象の発生率におけるこの減少は、例えば、同時療法で使用された一方或いは両方の薬剤の低用量での投与を導くことができる。例えば、薬剤A単独の効果が25%であり、表示された用量での使用時に45%の有害事象発生率を有している;そして薬剤B単独の効果が25%であり、表示された用量での使用時に30%の有害事象発生率を有している場合で、2つの薬剤は各薬剤の表示された用量以下で組み合わせた際、全体の効果が35%であり有害事象発生率は20%であった場合、前記薬剤治療投与計画における改善が見られたということになる。本発明によって提供される前記併用療法は、そのような改善を示すものを含む。
【0129】
薬学的組成物、用量及び投与
本明細書で記載されたような本発明の方法に有用な薬剤の用量及び投与は、成体前駆細胞からの島分化の促進を提供し、破壊から新しい島を保護する一方で最も低い毒性を有する免疫療法(複数の療法)との組み合わせを用いて、内因性の新たに形成された島構造からインスリンを分泌するための個々の能力を最適化する。本発明の薬学的組成物は、これらの薬剤の動的運搬、運搬の容易さ、及び増強された有効性を提供する。
【0130】
1実施形態において、HIPペプチドは、約20〜2000mg(0.02857〜285.7mg/kg)、毎日4回、前食事(pre−prandially)、各食事前及び就寝時の投薬で皮下的に用量される。別の実施形態において、HIPペプチドは、約200mg(2.857mg/kg)、1日4回、前食事、各食事前及び就寝時の投薬で投薬される。
【0131】
好ましくは、HIPペプチドは約800mg/日の総量に対して4回分配皮下注射において運搬される10〜15mg/kgで投薬される。
【0132】
HIPペプチドは、1日1回で数回及び1日20回で何度でも、若しくは連続的注入によって投与される。
【0133】
本発明の方法に有用な薬剤は、様々な経路によって投与される。本発明の方法に有用な既知の薬剤は、他の徴候に対して以前開発された経路によって、及び薬学的組成物を用いて投与される。そのような運搬経路は、少なくとも最も既知な薬剤に対して、経口運搬、経口或いは皮下運搬に体する標的化及び非標的化リポソーム薬剤運搬システムを含み、このリポソーム薬剤運搬システムは、本明細書で記載された方法論で使用されるHIP或いは化合物に接着した肝定方向性小胞(AMDG/SDG)、ミセル及びナノスフェア局所運搬システムを含む局所運搬、静脈内或いは皮下運搬によるポンプ補助性連続注入、及びディスポーザブルマイクロポンプ及びをマイクロニードル(これに限定されるものではないがAnimas Corp.から利用可能なものを含む)含む皮下運搬、及び頬側運搬を含む。
【0134】
本発明の方法の実行において使用される薬剤の投与の特定経路及び薬学的処方は、治療される患者の疾患或いは症状、及び使用される薬剤に基づいて医師によって選択されるものである。幅広い種類の薬学的組成物は、本発明の方法で使用される。いくつかの実施形態において、拡張された使用調合は、投与を容易にする及び有効性を増強するために使用され得る。
【0135】
1実施形態において、本方法で使用される1若しくはそれ以上の薬剤は、ミセルとして処方される。しばしば、経口運搬によって一番投与が容易になるものである。小分子薬剤はしばしば経口運搬用に容易に処方される一方、ペプチド及びタンパク質ベース薬剤は経口運搬用に処方することは難しい。しかしながら、適切な処方テクノロジーが存在し、1つの重要な観点において、本発明は経口運搬用に処方されたタンパク質及びペプチドの薬学的組成物を提供する。1実施形態において、経口運搬に適した本発明の方法に有用な薬学的組成物は、MannKind Corp.によって開発された既知のTECHNOSPHERE(商標)テクノロジー、Emisphereによって開発されたELIGEN(登録商標)テクノロジー、Nastechによって開発された鼻運搬システム、AMDG/SDGによって開発された肝臓に特異性を有する(HDV)経口リポソームに従って一般的に処方される。
【0136】
本発明の薬学的組成物を製造する際の使用に適している他の経口運搬及びカプセル封入テクノロジーは、肝運搬小胞(HDV)を含む。膵運搬小胞(PDV)テクノロジーは、CureDMによってSDG/AMDGに対して本明細書の方法に記載された化合物の運搬で有用に使用するために提案された。HDVテクノロジーは、本明細書の方法論においてHIP(Davis et al.,2001,J.Diabetes Comp.15(5):227−33)及びGLP−1を含む化合物を直接肝臓に運搬する為に使用され得る。PDVテクノロジーは、島細胞新生を刺激するペプチドなどの薬剤に配向するその表面上に共役タンパク質或いは他の分子を有するリポソームを膵臓へ直接的に提供する。
【0137】
経口運搬用に処方され本発明の方法に使用され得る薬剤は、HIP、若しくはグルタミン酸レス(減少)HIP、トリプトファン−HIP、バリン−トリプトファンHIP、ヘキサペプチドHIP、セプタペプチドHIP、二級セプタペプチドHIP、或いはトリプトファン−グルタミン酸レス(減少)HIPを含むその類似体或いは誘導体、SYMLIN(商標)/pramlintide、エキセンディン−4、Liraglutide(NN2211)、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1、GLP−1類似体、ハムスターINGAP及びその類似体、GIP、ジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤及びペプチド及びタンパク質、若しくはモノクローナル抗体及び他の特異性抗体を用いた先行の薬剤と同じ作用或いは相同である非ペプチド性擬態、及びベータ細胞損失の進行を遅らせる或いは小児及び成人の両者における1型糖尿病の発症を阻止するように設計された一般的な免疫剤を含み、この一般的な免疫剤はこれに限定されるものではないが、免疫反応を標的にし、1型糖尿病の島細胞死を引き起こすT−リンパ球を特異的に阻止する抗CD−3抗体(hOKT3γ1(Ala−Ala及びChAglyCD3))、さらにはSirolimus(ラパマイシン)、Tacrolimus(FK506)、熱ショックタンパク質60(DIAPEP277(商標))、抗グルタミン酸デカルボキラーゼ65(GAD65)ワクチン、ミコフェノール酸モフェチル単独或いはDaclizumabとの組み合わせ、抗CD20剤、Rituximub、Campath−1H(抗CD52抗体)、lysofylline(リソフィリン)、ビタミンD、膵臓ベータ細胞破壊を阻止するように設計されたインスリンの、合成的、代謝的に不活性型であるIBC−VSOワクチン、インターフェロン−アルファ、CD4<SUP>+</SUP>CD25<SUP>+</SUP>抗原特異的調節性T細胞を用いたワクチン投与、若しくは直接的或いはインスリン産生細胞の破壊を停止する免疫療法の使用を介した調節性T細胞の使用に対する併用療法プローチにおいて使用された同様の薬剤が含まれるものである。
【0138】
キット
本発明はさらに、1型或いは2型糖尿病を患った、若しくは前糖尿病状態、障害性空腹時グルコース、インスリン抵抗性症候群、メタボリック症候群、肥満、過体重、多嚢胞性卵巣症候群症候群、高脂血症、高トリグリセリド血症を含む小児及び成人における他のグルコース代謝疾患を患った患者を治療するためのキットに関するものであり、これは1若しくはそれ以上のHIP、又は類似体若しくは誘導体(例えば、トリプトファン−HIP、グルタミン酸レス(減少)HIP、バリン−トリプトファンHIP、ヘキサペプチドHIP、セプタペプチドHIP、二級セプタペプチドHIP、或いはトリプトファン−グルタミン酸レス(減少)HIP)の治療上有効な方法から成るものである。任意に、前記キットはさらに、他の薬剤(例えば、SYMLIN(商標)/pramlintide、エキセンディン−4、GIP、GLP−1受容体アゴニスト、Liraglutide(NN2211)、エキセンディン−4、GLP−1類似体、ハムスターINGAP或いはジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤)及び/若しくは膵島細胞を標的にする自己免疫細胞を阻害、阻止、或いは破壊する薬剤(これに限定されるものではないが、免疫反応を標的とし1型糖尿病における島細胞死を引き起こすTリンパ球を特異的に阻止する抗CD−3抗体(hOKT3γ1(Ala−Ala及びChAglyCD3))、さらにはSirolimus(ラパマイシン)、Tacrolimus(FK506)、熱ショックタンパク質60(DiaPep277)、抗グルタミン酸デカルボキラーゼ65(GAD65)ワクチン、ミコフェノール酸モフェチル単独或いはDaclizumabとの組み合わせ、抗CD20剤、Rituximub、Campath−1H(抗CD52抗体)、lysofylline(リソフィリン)、ビタミンD、膵臓ベータ細胞破壊を阻止するように設計されたインスリンの、合成的、代謝的に不活性型であるIBC−VSOワクチン、インターフェロン−アルファ、CD4<SUP>+</SUP>CD25<SUP>+</SUP>抗原特異的調節性T細胞を用いたワクチン投与、若しくは、同じ或いは分離したパッケージングにおいて、直接的に或いはインスリン産生細胞の破壊を停止するための免疫療法を介した調節性T細胞の使用に対する併用療法アプローチにおいて使用された同様な薬剤)、及びその使用に対する説明書も含む。
【0139】
HIP及びその類似体或いは誘導体に対する抗体
様々な実施形態において、HIP、又はその類似体若しくは誘導体に特異的なモノクローナル或いはポリクローナル抗体は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体の量を測定するための免疫アッセイに使用され得る、若しくはHIP、又はその類似体若しくは誘導体の免疫親和性精製において使用され得る。Hopp&Woods親水性解析(Hopp&Woods,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:3824−3828(1981)を参照のこと)は、タンパク質の親水性領域を同定するために、及びHIP、又はその類似体若しくは誘導体の有望なエピトープを同定するために使用され得る。
【0140】
HIP、又はその類似体若しくは誘導体に免疫特異的に結合する抗体は、抗体の合成に対して本分野で既知であるあらゆる方法、特に化学合成、好ましくは組換え発現技術によって産生され得る(米国公開公報第2005/0084449号を参照のこと、これはこの参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0141】
HIP、又はその類似体若しくは誘導体に免疫特異的なポリクローナル抗体は、本分野でよく知られた様々な手順によって産生され得る。例えば、HIP、又はその類似体若しくは誘導体は、これに限定されるものではないが、ウサギ、マウス及びラットを含む様々な宿主動物に投与され、HIP、又はその類似体若しくは誘導体特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導され得る。これに限定されるものではないが、フロイント(Freund's;完全及び不完全)、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイル乳化剤、キーホールカサガイヘモシアニン、ジニトロフェノール、及びBCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パルバムなどの潜在的に有用なヒトアジュバンドを含む様々なアジュバンドは、宿主に依存して免疫学的反応を増加するために使用される。そのようなアジュバンドも本分野でよく知られている。
【0142】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え及びファージディスプレイ技術、或いはそれらの組み合わせを含む、本分野で既知である幅広い技術を用いて調合され得る。例えば、モノクローナル抗体は、本分野で既知の技術、及び例えばHarlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);and Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T Cell Hybridomas 563 681(Elsevier,N.Y.,1981)で教示された技術を含む、ハイブリドーマ技術を用いて産生され得る。本明細書で用いられたような「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を介して産生された抗体に限定されるものではない。「モノクローナル抗体」という用語は、あらゆる真核生物、原核生物或いはファージクローンを含む単一クローン由来である抗体を意味し、それが産生される方法ではない。
【0143】
ハイブリドーマ技術を用いて特異的な抗体を産生しスクリーニングするための方法は、習慣的なものであり、本分野ではよく知られている。簡潔には、マウスは非マウス抗原で免疫化され、例えば前記抗原に特異的な抗体はマウス血清において検出されるなど一度免疫反応を検出され、そのマウス脾臓は播種され脾細胞が単離される。前記脾細胞は次によく知られた技術によって、例えばATCCより利用可能な細胞株SP20からの細胞などの適切なミエローマ細胞と融合される。ハイブリドーマを選択し、限界希釈法によってクローン化させる。前記ハイブリドーマクローンは次に、本発明のポリペプチドと結合することができる抗体を分泌する細胞を、本分野では既知の方法によってアッセイされる。一般的に高レベルの抗体を含む腹水は、陽性ハイブリドーマクローンでマウスを免疫化することによって産生され得る。
【0144】
本発明は、モノクローナル抗体を産生する方法、さらには本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養する工程を有する方法によって産生された抗体を提供し、ここにおいて好ましくは、前記ハイブリドーマは非マウス抗原で免疫化されたマウスから単離された脾細胞とミエローマ細胞とを融合する工程と、次に前記融合物に由来するハイブリドーマを前記抗原に結合できる抗体を分泌するハイブリドーマクローンに対してスクリーニングする工程とによって産生される。
【0145】
特異的な特定エピトープを認識する抗体断片は、本分野の当業者に既知であるあらゆる技術によって産生される。例えば、本発明のFab及びF(ab')2断片は、パパイン(Fab断片を作成)或いはペプシン(F(ab')断片作成)などの酵素を用いた、免疫グロブリン分子のタンパク質分解性切断によって産生される。F(ab')断片は、様々な領域、軽鎖定常領域及び重鎖のCH1ドメインを含む。さらに、本発明の抗体は、本分野で既知である様々なファージディスプレイ法を用いて産生され得る。
【0146】
ファージディスプレイ法において、機能抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を運んでいるファージ粒子の表面上にディスプレイされる。特に、VH及びVLドメインをコードするDNA配列は、動物cDNAライブラリ(例えば、患部組織のヒト或いはマウスcDNAライブラリ)から増幅される。VH及びVLドメインをコードした前記DNAは、PCRによってscFvリンカーと共に組換えられ、ファージミドベクターへクローニングされる。前記ベクターは大腸菌内に電気穿孔され、前記大腸菌はヘルパーファージで感染される。これらの方法に使用されたファージは一般的にfd及びM13を含む糸状ファージであり、前記VH及びVLドメインは通常ファージ遺伝子III或いは遺伝子VIIIと組換え的に融合される。特定抗原と結合する抗原結合ドメインを発現しているファージは、例えば標識化抗原、若しくは固体表面或いはビーズと結合した或いは捕獲された抗原を用いて、抗原によって選択される或いは同定され得る。本発明の抗体を作るために使用され得るファージディスプレイ法の例としては、Brinkman et al.,1995,J.Immunol.Methods 182:41−50;Ames et al.,1995,J.Immunol.Methods 184:177−186;Kettleborough et al.,1994,Eur.J.Immunol.24:952−958;Persic et al.,1997,Gene 187:9−18;Burton et al.,1994,Advances in Immunology 57:191−280;国際出願第PCT/GB91/O1 134号;国際公開公報第WO90/02809号;第WO 91/10737号;第WO 92/01047号;第WO 92/18619号;第WO 93/11236号;第WO 95/15982号;第WO 95/20401号;及び第WO97/13844号;及び米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号;及び第5,969,108号に開示されたものを含む。
【0147】
上述の参考文献に記載されたように、ファージセレクション後、前記ファージからの前記抗体コード領域は単離され、完全抗体或いはあらゆる他の目的抗原結合断片を産生するために使用され、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及びバクテリアを含むあらゆる目的の宿主において例えば以下に記載されたように発現される。Fab、Fab'及びF(ab')2断片を組換え的に産生するための技術はさらに、国際公開公報第WO 92/22324号;Mullinax et al.,1992,BioTechniques 12(6):864−869;Sawai et al.,1995,AJRI 34:26−34;及びBetter et al.,1988,Science 240:1041−1043に開示された技術などの、本分野で既知の方法を用いて使用され得る。
【0148】
完全抗体を産生するために、VH或いはVLヌクレオチド配列、制限部位及び制限部位を保護するためのフランキング配列を含むPCRプライマーは、scFvクローンにおけるVH或いはVL配列を増幅するために使用され得る。本分野の当業者に既知であるクローニング技術を用いて、前記PCR増幅VHドメインは、例えばヒトガンマ4定常領域などのVH定常領域を発現しているベクターへクローニングされ、前記PCR増幅VLドメインは、例えばヒトカッパー或いはラムダ定常領域などのVL定常領域を発現しているベクターへクローニングされ得る。好ましくはVH或いはVLドメインを発現するためのベクターは、EF−1αプロモーター、分泌シグナル、可変ドメインに対するクローニングサイト、定常ドメイン及びネオマイシンなどの選択マーカーを有する。前記VH及びVLドメインはさらに、必要定常領域を発現している1ベクターへもクローニングされる。重鎖変換ベクター及び軽鎖変換ベクターは次に細胞株へと同時形質転換され、本分野の当業者には既知である技術を用いて、例えばIgGなどの完全長抗体を発現する安定性或いは一過性細胞株を産生する。
【0149】
ヒトにおける抗体のインビボ使用及びインビトロ検出アッセイを含む同様な使用に対して、ヒト化抗体或いはキメラ抗体を使用することは好ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリを用いた上記のファージディスプレイ法を含む、本分野で既知な様々な方法によって作成され得る。さらに米国特許第4,444,887号及び第4,716,111号;及び国際公開公報第WO 98/46645号、第WO 98/50433号、第WO 98/24893号、第WO 98/16654号、第WO 96/34096号、第WO 96/33735号及び第WO 91/10741号も参照のこと。
【0150】
キメラ抗体は、異なる免疫グロブリン分子由来の前記抗体の異なる部分における分子である。キメラ抗体を産生するための方法は、本分野において既知である。例えば、Morrison,1985,Science 229:1202;Oi et al.,1986,BioTechniques 4:214;Gillies et al.,1989,J.Immunol.Methods 125:191−202;及び米国特許第5,807,715号;第4,816,567号;第4,816,397号;及び第6,311,415号を参照のこと。
【0151】
ヒト化抗体は、予定抗原と結合することができ、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有し非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク領域から成る、抗体或いはその変異体若しくはそれらの断片である。ヒト化抗体は、少なくとも1つ及び一般的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab'、F(ab')2、Fabc、Fv)の全てを実質的に有するものであり、この可変ドメインにおいて、非ヒト免疫グロブリン(すなわちドナー抗体)領域に一致するCDR領域の全て或いは実質的に全て、及び前記フレームワーク領域の全て或いは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の領域である。好ましくは、ヒト化抗体はさらに、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も有するものである。通常、前記抗体は両軽鎖、さらには少なくとも重鎖の可変ドメインを含むであろう。前記抗体はさらに、前記重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3及びCH4領域も含む。前記ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgE、及びIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むあらゆるアイソタイプを含む免疫グロブリンのあらゆるクラスから選択され得る。通常、前記定常ドメインは、補体固定定常ドメインであり、ここにおいて前記ヒト化抗体は細胞毒性活性を有し、前記クラスとしては一般的にIgG1であることが望ましい。そのような細胞毒性活性が望ましくない場合、前記定常ドメインはIgG2クラスでもよい。前記ヒト化抗体は、1以上のクラス或いはアイソタイプからの配列を有し、望ましいエフェクター機能を最適化するための特定定常ドメインを選択することは本分野の通常技術範囲内である。ヒト化抗体の前記フレームワーク及びCDR領域は、例えばドナーCDRなどの親配列に正確に一致する必要はない、若しくは前記定常フレームワークは、その部位での前記CDR或いはフレームワーク残基が前記コンセンサス或いは重要な抗体に一致しないように、少なくとも1つの残基の置換、挿入或いは欠損によって変異誘発される。しかしながら、そのような変異は広範囲にはならないであろう。一般的に、前記ヒト化抗体残基の少なくとも75%、より多くは90%及び最も好ましくは95%以上は、親フレームワーク領域(FR)及びCDR配列の残基と一致するであろう。ヒト化抗体は、これに限定されるものではないが、CDRグラフティング(欧州特許第EP 239,400号;国際公開公報第WO 91/09967号;及び米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;及び第5,585,089号),ベニアリング或いは再表面化(resurfacing)(欧州特許第EP592,106号及び第EP519,596号;Padlan,1991,Molecular Immunology 28(4/5):489 498;Studnicka et al.,1994,Protein Engineering 7(6):805 814;及びRoguska et al.,1994,PNAS 91:969 973)、鎖混合(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号)及び例えば米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号;国際特許第WO 9317105号;Tan et al.,J.Immunol.169:1119−25(2002);Caldas et al.,Protein Eng.13(5):353−60(2000);Morea et al.,Methods 20(3):267−79(2000);Baca et al.,J.Biol.Chem.272(16):10678−84(1997);Roguska et al.,Protein Eng.9(10):895−904(1996);Couto et al.,Cancer Res.55(23 Supp):5973s−5977s(1995);Couto et al.,Cancer Res.55(8):1717−22(1995);Sandhu JS,Gene 150(2):409−10(1994);及びPedersen et al.,J.Mol.Biol.235(3):959−73(1994)などの技術を含む本分野で既知である様々な技術を用いて産生され得る。しばしば前記フレームワーク領域におけるフレームワーク残基は、前記CDRドナー抗体からの一致する残基と置換され、抗原結合を変換、好ましくは改善されるであろう。これらのフレームワーク置換は、例えば抗原結合に重要であるフレームワーク残基を同定するための前記CDRとフレームワーク残基との相互作用のモデリング、及び特定の位置での異常フレームワーク残基を同定するための配列比較によってなどの本分野ではよく知られた方法によって同定される(Queen et al.,米国特許第5,585,089号;及びRiechmann et al.,1988,Nature 332:323を参照のこと)。
【0152】
HIP、又はその類似体若しくは誘導体を調合する方法
本分野で既知のあらゆる技術は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体を精製するために使用され、これは限定されるものではないが、沈殿による分離、吸着による分離(例えばカラムクロマトグラフィー、メンブレン吸着、放射状フローカラム、バッチ吸着、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、無機吸着剤、疎水性吸着剤、固定金属親和性クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー)、或いは溶液中での分離(例えばゲル濾過、電気泳動法、液相分配法、界面活性剤分配法、有機溶媒抽出及び限外濾過)を含む。例えば、Scopes,PROTEIN PURIFICATION,PRINCIPLES AND PRACTICE,3rd ed.,Springer(1994)を参照のこと。精製の間、HIP、又はその類似体若しくは誘導体の生物活性は、1若しくはそれ以上のインビボ或いはインビトロアッセイによってモニタリングされる。HIP、又はその類似体若しくは誘導体の純度は、例えばこれに限定されるものではないがゲル電気泳動法などの本分野では既知であるあらゆる方法によってアッセイされ得る。Scopes,supraを参照のこと。いくつかの実施形態において、本発明の組成物で使用されるHIP、又はその類似体若しくは誘導体は、総mgタンパク質の80〜100パーセント、或いは総mgタンパク質の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、或いは少なくとも98%の範囲である。1実施形態において、本発明の組成物で使用されるHIP、又はその類似体若しくは誘導体は、少なくとも総タンパク質の99%である。別の実施形態において、HIP、又はその類似体若しくは誘導体は、例えばドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動によってアッセイされたように、明白な均一性を有するまで精製される。
【0153】
本分野で既知の方法は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体を組換え的に製造するために使用され得る。HIP、又はその類似体若しくは誘導体をコードする核酸配列は、宿主細胞における増幅及び発現のために発現ベクターへ挿入され得る。
【0154】
本明細書において用いられたように、発現コンストラクトとは、適切な宿主細胞においてHIP、又はその類似体若しくは誘導体の発現を可能にする1若しくはそれ以上の調節性領域と操作可能に結合するHIP、又はその類似体若しくは誘導体をコードする核酸配列を意味する。「操作可能に連結した」とは、前記調節性領域と発現されるHIP、又はその類似体若しくは誘導体とが、転写及び最終的に翻訳まで可能であるような方法で連結し配置されているような連結を意味している。
【0155】
HIP、又はその類似体若しくは誘導体の転写に必要な調節性領域は、前記発現ベクターによって提供され得る。翻訳開始コドン(ATG)はさらに、その同族開始コドンが欠如しているHIP、又はその類似体若しくは誘導体遺伝子配列が発現される場合にも提供され得る。適合性宿主コンストラクトシステムにおいて、RNAポリメラーゼなどの細胞性転写因子は前記発現コンストラクト上の前記調節性領域に結合され、前記宿主生物におけるHIP配列の転写に影響を及ぼすであろう。遺伝子発現に必要な前記調節性領域の正確な性質は、宿主細胞によって異なる。一般的に、RNAポリメラーゼの結合を可能にし、操作可能に連結した核酸配列の転写を促進するプロモーターが必要とされる。そのような調節性領域は、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列及びそれらの同等物などの転写及び翻訳の開始に関連するそれらの5'非コード配列を含む。前記非コード領域3'から前記コード配列までには、転写終結区(ターミネーター)及びポリデニル化部位などの転写終結調節性配列が含まれる。
【0156】
調節性機能(例えばプロモーターなど)を有するDNA配列をHIP、又はその類似体若しくは誘導体遺伝子配列に付属させるために、若しくはHIP、又はその類似体若しくは誘導体遺伝子配列をベクターのクローニングサイトに挿入するために、適切な適合制限部位を提供するリンカー或いはアダプターは、本分野でよく知られている技術(例えばWu et al.,1987,Methods in Enzymol,152:343−349を参照)によってcDNAsの末端に連結される。制限酵素での切断後、修飾され末端を消化する或いはライゲーション前に一本鎖DNA終端を充填することによって平滑末端を作成する。代わりに、望ましい制限酵素部位は、望ましい制限酵素部位を含むプライマーでのPCRを用いたDNAの増幅によってDNAの断片へ導入され得る。
【0157】
調節性領域と操作可能に連結されたHIP、又はその類似体若しくは誘導体配列を有する発現コンストラクトは、さらなるクローニングなしでHIP、又はその類似体若しくは誘導体の発現及び産生に適した宿主細胞へ直接導入され得る。例えば、米国特許第5,580,859号を参照のこと。前記発現コンストラクトはさらに、宿主細胞のゲノムへのHIP、又はその類似体若しくは誘導体配列の組み込み(例えば相同組換えを介した)を容易にするDNA配列も含むことができる。この場合には、適切な宿主細胞がその宿主細胞内においてHIP、又はその類似体若しくは誘導体を増幅し発現するのに適した複製開始点を有する発現ベクターを使用する必要はない。
【0158】
これに限定されるものではないが、プラスミド、コスミド、ファージ、ファージミド或いは修飾ウイルスを含む様々な発現ベクターが使用される。そのような宿主−発現システムは、HIP、又はその類似体若しくは誘導体遺伝子のコード配列が産生され実質的に精製される媒体に相当するだけでなく、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換する或いは形質移入した場合、in situでHIP、又はその類似体若しくは誘導体を発現する細胞に相当する。これらは、これに限定されるものではないが、HIP、又はその類似体若しくは誘導体コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA或いはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば大腸菌や枯草菌など);HIP、又はその類似体若しくは誘導体コード配列を含む組換え発現ベクターで形質転換された酵母(例えばサッカロマイセス、ピキア);HIP、又はその類似体若しくは誘導体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)で感染された昆虫細胞システム;組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染された、若しくはHIP、又はその類似体若しくは誘導体コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞システム;或いは哺乳類細胞のゲノム由来のプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)或いは哺乳類ウイルス由来のプロモーター(例えばアデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現コンストラクトを内部に含む哺乳類細胞システム(例えばCOS、CHO、BHK、293、NS0及び3T3細胞)などの微生物を含む。好ましくは、大腸菌や原核細胞などの細菌細胞は、組換えHIP、又はその類似体若しくは誘導体の発現用に使用される。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳類細胞は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体配列の効果的な発現のためのサイトメガロウイルスの主要中間初期遺伝子からのプロモーター因子を有するベクターと共に使用され得る(Foecking et al.,1986,Gene 45:101;及びCockett et al.,1990,Bio/Technology 8:2)。
【0159】
細菌システムにおいて、多数の発現ベクターは、発現されるHIP、又はその類似体若しくは誘導体の目的とする使用に依存して有利に選択される。例えば、HIP、又はその類似体若しくは誘導体の薬学的組成物を製造するために大量のHIP、又はその類似体若しくは誘導体を産生する場合、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を行うベクターが望ましい。ベクターは、これに限定されるものではないが、大腸菌発現ベクターpCR2.1 TOPO(Invitrogen社);pINベクター(Inouye&Inouye,1985,Nucleic Acids Res.13:3101−3109;Van Heeke&Schuster,1989,J.Biol.Chem.24:5503−5509)及びこれらの同等物を含む。pFLAG(Sigma社)、pMAL(NEB社)及びpET(Novagen社)のような一連のベクターも、FLAGペプチド、malE−或いはCBD−タンパク質との融合タンパク質として外来タンパク質を発現するために使用される。これらの組換えタンパク質は、正しい保持及び成熟のために細胞膜周辺腔へ配向される。前記融合部分は、前記発現されたタンパク質の親和性精製のために使用され得る。エンテロキナーゼのような特異的プロテアーゼに対する切断部位の存在は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体を切り離すことを可能にする。pGEXベクターはさらに、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来タンパク質を発現するためにも使用され得る。一般的に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、吸着、マトリックスグルタチオンアガロースビーズへ結合させその後グルタチオン非存在下で溶出することによって溶解細胞から容易に精製され得る。pGEXベクターは、クローン化標的遺伝子産物がGST部位から放出され得るように、トロンビン或いは第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0160】
昆虫システムにおいて、外来遺伝子を発現するために多くのベクターが使用され、例えばオートグラファカリフォルニア多核体病ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus (AcNPV))は外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用され得る。ウイルスはヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のような細胞において成長する。HIP、又はその類似体若しくは誘導体コード配列は、前記ウイルスの非必須領域(例えばポリへドリン(polyhedrin)遺伝子)へ個々にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えばポリへドリンプロモーター)の支配下に置かれる。
【0161】
哺乳類宿主細胞において、多数のウイルスベース発現システムが使用される。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合において、目的のHIP、又はその類似体若しくは誘導体コード配列は、例えば後期プロモーター及び三者間リーダー配列などのアデノウイルス転写/翻訳調節複合体へ連結される。このキメラ遺伝子は次に、インビトロ或いはインビボ組換えによって前記アデノウイルスゲノムへ挿入される。前記ウイルスゲノムの非必須領域(例えば領域E1或いはE3)での挿入は、生存可能で、感染された宿主においてHIP、又はその類似体若しくは誘導体を発現可能な組換えウイルスを生じるものである(例えばLogan&Shenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8 1:355−359を参照のこと)。特異的な開始シグナルはさらに、挿入されたHIP、又はその類似体若しくは誘導体コード配列の効率的な翻訳にも必要とされる。これらのシグナルは、ATG開始コドン及び隣接配列を含む。さらに、前記開始コドンは、完全挿入の翻訳を確実にするために目的のコード配列のリーディングフレームと一致していなくてはならない。これらの外因性翻訳調節シグナル及び開始コドンは、様々な開始点(天然及び合成の両者)の一部となり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサー因子、転写ターミネーター及びそれらの同等物の封入によって増強される(Bittner et al.,1987,Methods in Enzymol.153:51−544)。
【0162】
加えて、宿主細胞株は挿入された配列の発現を調節する、若しくは望ましい特定の様式において遺伝子産物を修飾しプロセシング(加工)するものが選択される。タンパク質産物のそのような修飾(例えばグリコシル化)及びプロセシング(例えば切断)は、前記タンパク質の機能において重要である。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾に対する特徴的で特異的なメカニズムを有している。適切な細胞株或いは宿主システムは、発現された外来タンパク質の正確な修飾及びプロセシングを確実にするように選択され得る。この目的を達成するために、一次転写産物の適切なプロセシング、及び、例えば遺伝子産物のグリコシル化やリン酸化などの遺伝子産物の翻訳後修飾に対する細胞性機構を有する真核宿主細胞が使用される。そのような哺乳類宿主細胞は、これに限定されるものではないが、PC12、CHO、VERY、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O及びT47D、NS0(あらゆる免疫グロブリン鎖を内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O、及びHsS78Bst細胞を含む。HIP、又はその類似体若しくは誘導体の望ましい活性に対して翻訳後修飾が非必須であると判明した場合、細菌或いは酵母システムにおける発現が使用され得る。
【0163】
適切にプロセシング(加工)されたHIP、又はその類似体若しくは誘導体の長期で高収率な産生に対して、細胞における安定な発現が好ましい。HIP、又はその類似体若しくは誘導体を安定的に発現する細胞株は、選択可能なマーカーを含むベクターを用いることによって設計される。限定ではなく一例として、前記発現コンストラクトの導入後、設計された細胞は濃縮培地で1〜2日間成長させ、次に選択培地に切り替えられる。前記発現コンストラクトにおける前記選択可能なマーカーは、セレクション(選抜)に対して耐性を有しており、使用されたベクターコンストラクト及び宿主細胞に依存して、細胞が前記発現コンストラクトをそれらの染色体に安定に組み込み、培地中で増殖し、細胞株へと拡大することを可能にする。そのような細胞は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体が連続的に発現されている間、長期間培養可能である。
【0164】
多数のセレクションシステムが使用され、これらは、これに限定されるものではないが抗生物質耐性(ジェネテシン或いはG−418に対する耐性を有するNeo(Wu and Wu,1991,Biotherapy 3:87−95;Tolstoshev,1993,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596;Mulligan,1993,Science 260:926−932;及びMorgan and Anderson,1993,Ann.Rev.Biochem.62:191−217;May,1993,TIB TECH 11(5):l55−2 15);ゼオシンに対する耐性を有するZeo;及びブラストサイジンに対する耐性を有するBsdのようなマーカー);代謝拮抗薬耐性(メトトレキサートに対する耐性を有するDhfr(Wigler et al.,1980,Natl.Acad.Sci.USA 77:357;及びO'Hare et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527);ミコフェノール酸に対する抵抗を有するgpt(Mulligan&Berg,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072);及びハイグロマイシンに対する耐性を有するhygro(Santerre et al.,1984,Gene 30:147)のようなマーカー)を含むものである。加えて、これに限定されるものではないがtk−、hgprt−或いはaprt−細胞を含む変異細胞株は、チミジンキナーゼ、ヒポキサンチン、グアニン−或いはホスホリボシル−トランスフェラーゼと一致する遺伝子を有するベクターとの組み合わせで使用され得る。組換えDNA技術の分野において一般的に知られている方法は、望ましい組換えクローンを選択するために日常的に適用されており、そのような方法は、例えばAusubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NY(1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990);Chapters 12 and 13,Dracopoli et al.(eds),of Current Protocols in Human Genetics,John Wiley&Sons,NY(1994);及びColberre−Garapin et al.,1981,J.Mol.Biol.150:1に記載されている。
【0165】
前記組換え細胞は、温度、インキュベーション時間、光学密度及び培地組成の標準条件下で培養される。しかしながら、組換え細胞の増殖に対する条件は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体の発現に対する条件とは異なる。変法培養条件及び培地も、HIP、又はその類似体若しくは誘導体の産生を増強するために使用される。本分野で既知であるあらゆる技術は、HIP、又はその類似体若しくは誘導体を産生するための最適な条件を達成するために適用される。
【0166】
組換え技術による或いは天然源からの精製によるHIP或いはその断片の産生に対する代替案は、ペプチド合成である。例えば、完全HIP、又はその類似体若しくは誘導体、或いはHIP、又はその類似体若しくは誘導体の一部に一致するタンパク質は、ペプチドシンセサイザー(合成機)を使用することによって合成され得る。従来のペプチド合成或いは本分野でよく知られた他の合成プロトコールが使用される。
【0167】
HIP、又はその類似体若しくは誘導体のアミノ酸配列、或いはそれらの一部を有するタンパク質は、Merrifield,1963,J.Am.Chem.Soc.,85:2149に記載されたものと同様な手順を用いて固相ペプチド合成によって合成される。合成の間、保護性側鎖を有するN−α−保護性アミノ酸は、そのC末端に連結された伸長ポリペプチド鎖へ、及び不溶性重合体支持体(すなわちポリシチレンビーズ)へ段階的に付加される。前記タンパク質は、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの試薬とそれを反応させることによって活性化されたN−α−保護性アミノ酸のα−カルボキシル基にN−α−脱保護性アミノ酸のアミノ基を連結させることによって合成される。活性化カルボキシルへの遊離アミノ基の付加は、ペプチド結合形成を導く。最も一般的に使用されたN−α−保護性基は、酸に不安定なBoc、及び塩基に不安定なFmocを含む。適切な化学反応、樹脂、保護基、保護性アミノ酸及び試薬の詳細は、本分野ではよく知られており、本明細書では詳しく議論していない(Atherton et al.,1989,Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press,及びBodanszky,1993,Peptide Chemistry,A Practical Textbook,2nd Ed.,Springer−Verlagを参照のこと)。
【0168】
結果生じたHIP、又はその類似体若しくは誘導体の精製は、従来の手順、例えばゲル浸透、分配及び/若しくはイオン交換クロマトグラフィーを用いた調製用HPLCなどを用いて達成される。適切な充填剤及び緩衝液の選択は、本分野ではよく知られており、本明細書では詳しく記載しない。
【0169】
上述した本発明の試薬及び方法の詳細な説明と共に、以下の実施例は本発明の様々な観点を説明するために提供されるものである。
【0170】
実施例
【実施例1】
【0171】
HIPsはヒト膵管組織培養及びヒト島組織培養においてインビトロでインスリン産生の増加を引き起こす
ヒト膵島及び前駆体分画を標準プロトコールに従って10日以上培養した。簡潔には、成人屍体臓器ドナーからの膵臓は地方臓器獲得組織を介して入手した。島をBonner−Weir及びJamalによって記載された確立されたプロトコール(Bonner−Weir et al.,Pediatric Diabetes:2004;5(Suppl 2):16−22.Jamal et al.,Cell Death Differ.2005 Jul;12(7):702−12)に従って単離した。
【0172】
臓器の除去後、冷却虚血時間は島単離前で8時間以内であった。主要膵管をカニューレ処理し、Liberase HI(Roche Diagnostics)で灌流した。灌流した臓器は閉鎖システム(Ricordi Apparatus)に設置し、37℃で熱し酵素混合液を活性化させた。サンプル内の遊離島出現後、前記システムを冷却し、遊離組織を回収し洗浄した。組織は、細胞プロセッサー(COBE)においてFicoll(Biochrom KG)を用いて、作成された連続密度勾配に供した。直径が75〜400μmの範囲を有し、亜鉛キレートであるジチゾン(Sigma)での染色によって90%以上の純度であると決定された遊離島を回収し、洗浄した。アミラーゼ及びサイトケラチンの存在を検出するIHCはネガティブであり、これは前駆体及び外分泌組織の非存在と一致する。この分離からの前駆体分画も培養用に回収した。
【0173】
単離された島は、2000島当量/25cm<SUP>2</SUP>の密度で1型コラーゲンマトリックスに包埋し、10%FBS、1μMデキサメタゾン、10ng/ml EGF、24mU/mlインスリン及び100ng/mlコレラ毒素を含有するDMEM/F12において培養した。培地は一日おきに交換した。10日目に、コレラ毒素を含まず、新生薬剤及び阻害剤を以下に記載した最終濃度で含む上述の培地において培養を続けた。培地は一日おきに交換した。コラーゲン包埋培養を、30分間37℃で0.25g/LコラゲナーゼXI(Sigma)と共にインキュベーションすることによって回収した。
【0174】
培養後、前記ヒト膵島及び前駆体分画は次に、3つのHIP:配列ID番号:7、3或いは2の1つ、ポジティブコントロールとしてハムスターINGAP配列(IGLHDPSHGTLPNGS(配列ID番号:27))若しくはBachem BioScience(95%純度、研究グレード)によって合成されたスクランブル(混合)ペプチド配列(DGGTPQPGNWIELTH(配列ID番号:28))によって盲検研究において処理した。二つ組培養は10日目と12日目に処理し、次に14日目にインスリン含有量を検出するために溶解した。10日培養の間、インスリン産生は無視できる量に減少し、ペプチドでの処理後インスリンは再度産生された。
【0175】
インスリンレベルは、生理食塩水のみ、スクランブル(混合)ペプチド、配列ID番号:7、3或いは2、及びハムスターINGAPで処理した培養から放射性免疫測定法(RIA)によって検出した。ヒト管組織分画に対する結果は図1に記載されており、ヒト島組織に対する結果は図2に記載されている。両分画は、新しい島構造に対する病巣であり、HIPがその刺激効果を発揮する前駆細胞を含有していた。図3は、HIP処理後であり、溶解及びRIAによる測定の直前の管組織培養分画を示したものである。形態学的変化では島様構造を示した。一貫して本発明者らは、膵臓組織の管分画から培養された細胞からの新しい島の有意な誘導を観察した。この観察は、前駆細胞は単離工程後の島組織分画の間にほとんど存在しないという概念に一致した。
【実施例2】
【0176】
HIPはHud270細胞におけるインビトロインスリン産生を誘導する
ヒト膵臓組織は実施例1に記載したように処理し、インスリン産生はELISAアッセイによって測定した。図4及び5は、用量依存性を示しこの実験の結果、及びハムスターINGAP配列とスクランブル(混合)ネガティブペプチド配列とを比較して、組織の2つの異なる分画に対するHIPの効果を再度比較したこの実験の結果を示した物である。レーン1〜3は、それぞれ配列ID番号7、3及び2の配列をHIPで処理した、実施例1に記載されたように単離されたHud270細胞ヒト管細胞からの結果を示したものである。レーン4は、INGAP配列(配列ID番号:27)でペプチドを処理した細胞を示したものである。レーン5は、スクランブル(混合)ペプチド(配列ID番号:28)で処理した細胞を示したものである。図4の結果は、5μgの各ペプチドの使用に関するものであり、一方図5の結果は0.002μgの各ペプチドを用いて得られたものである。図7Aは、前記単離分画から培養し、3μM及び1mMの各ペプチドで処理した細胞の結果を示したものであり、一方図7Bは、前記管分画から培養し、3μM及び1mMの各ペプチドで処理した細胞の結果を示したものである。
【0177】
各HIPペプチド配列は、インスリン産生をINGAP或いはスクランブル(混合)ペプチドと比較してより効果的に誘導し、より高濃度のペプチドは、前駆細胞がより濃縮されている管培養においてより深い効果を産生した。前記島培養において、前記培養がより多くのインスリンを産生することができる程度に対する限定要因は、前記ペプチドの濃度ではなく、培養当たりの前駆細胞の数である。
【実施例3】
【0178】
HIPはヒト管組織培養における島産生を促進する
ヒト管組織分画は実施例1に記載されたように単離し培養した。培養の10日後、細胞は4日間HIPで処理し、倒立顕微鏡を用いて観察した。図3A、3B及び3CはHIP配列で処理した培養を示し、図3Dはペプチドで処理をしなかったネガティブコントロール管組織を示している。図6Aは、12日目(HIPでの処理の2日目)でのヒト膵臓前駆体組織培養を示したものである。島は、管上皮嚢胞として以前記載されたものを形成し、前駆細胞が存在する1末端に出芽し始めた。図7Bは、18日目(HIPでの処理の6日目)でのヒト膵臓前駆体組織培養を示したものである。このパネルにおいて、前記管上皮嚢胞の出芽部分の黒ずみは、ハムスターINGAPのインビトロ処理で生じた、以前に示された変化と一致する細胞の分化を指し示すものである。
【実施例4】
【0179】
HIPに対する臨床治験プロトコール
この実施例において、糖尿病に対して認定された動物モデルを用い、HIPの用量範囲を検討した。
【0180】
HIPでの処理
動物モデル
非肥満糖尿病(NOD)マウス株は、ヒトの症状と非常に類似した疾患を自発的に発症するため、1型糖尿病の優れた動物モデルとして長い間研究されてきた(Delovitch,T.L.,and Singh,B.1997.Immunity.7:727−738.)。NODマウスにおける糖尿病は、膵島抗原を認識し、中枢及び末梢耐性を回避する炎症性自己反応性T細胞によって仲介される。
【0181】
手順
NODマウスの親コロニーにおいて、メスNODマウスにおける糖尿病の出現率が30週で一般的に75〜90%であるのに、いくつかのコホートにおいては90%を超えていた。各マウスにはHIPの投薬量を投与し、HIPを投与しないNODマウスと比較した。HIPの用量は、1μg/kg/1日〜100μg/kg/1日の範囲である。
【0182】
処理
コホートは、動物サイズ、代謝及び循環に対する代償性用量で、若しくは約1/6mg/kg当量で、HIPの2〜4用量範囲及びプラセボを有する2アームにおいて処理された。アーム1:生理食塩水、アーム2:HIP。
【0183】
研究査定
血中グルコースレベルは、One Touch IIグルコースメーター(Lifescan)で毎週測定した。マウスは300mg/dl以上の2連続測定後、糖尿病であると見なされた。組織学的解析に対して、膵臓はスナップ凍結した。マルチプル5−μm切片をヘマトキシリン及びエオジンで染色し、本分野で既知である膵島炎(insulinitis)の重症度に対して盲検的にスコアリングした。
【0184】
結果
HIPを摂取しているNODマウスは、血中グルコースレベルにおける明白な減少、及びそれらの膵臓における膵島炎の出現の減少を示した。
【実施例5】
【0185】
HIPのヒト非内分泌膵臓上皮細胞に対する影響を検討するための臨床治験プロトコール
合計48匹の成体NOD−scidマウスをヒト膵臓ドナー臓器から単離された組織の移植用のレシピエントとして使用した。2つのコホートは、マウスへ移植されるヒト組織によって定義され、I)非内分泌管組織、及びII)コントロール非膵臓組織、である。
【0186】
HIPペプチドでの処理
各コホートからの合計24匹の動物は、1日に2回の腹腔内(IP)注射で39日間の総介入に対して4研究群の1つへランダム化した:
HIP誘導体(250μg/100μlを1日2回で総量500μg/1日)
盲検HIP Aペプチド配列ID番号:7(n=6)
盲検HIP Bペプチド配列ID番号:3(n=6)
盲検HIP Cペプチド配列ID番号:2(n=6)
等量(100μl)(n=6)での1日2回の生理食塩水注射。
【0187】
血中グルコースは、全研究動物において1日の同じ時間で3日毎に決定した。全動物は、大量失血によって48日目に屠殺し、前記移植片は形態学的解析のために切除した。
【0188】
ペプチド調合
各バイアルは1500μgの凍結乾燥HIP、又はその類似体若しくは誘導体を含む。無菌条件下、600μlの等張生理食塩水を各バイアルに加え、これにより各研究動物/1群に対して6本の100μl IP無菌注射/バイアルが提供され、それらは各処理時に動物当たり1本である。
【0189】
グルコース測定
血漿グルコース測定は、1日の同じ時間で3日毎に全研究群における各動物に対して行った。長期に亘るグルコースレベルは、全研究群に対して評価した。
【0190】
ヒトC−ペプチド及びインスリン測定
血漿及び膵臓インスリンは、固相放射性免疫測定法を介して測定した。回収された血液を遠心分離に供し、血漿はインスリンに対するアッセイまで−70℃で凍結させた。各切除移植片の一部の重量を計測し、次に4℃で1晩、酸−エタノール抽出に供した。無細胞抽出物を回収し、0.4M Tris塩基で中和し、ヒトC−ペプチド及びインスリンに対してアッセイするまで−70℃で貯蔵した。判定は3つ組で行った。
【0191】
顕微鏡観察及び形態計測解析
ヒト組織の切除に対して、それぞれの重量を測定し、次にパラホルムアルデヒドにおいて固定した。包埋されたサンプルは染色し、以下の点を評価した。
【0192】
a)島の数/mm<SUP>2</SUP>、
b)ベータ細胞質量/mg組織重量、
c)管関連及び外−島腺房関連ベータ細胞質量、及び
d)PDX−1免疫ポジティブ管細胞のパーセンテージ。
【0193】
組織はヒトC−ペプチド、ヒトインスリン、ヒトグルカゴン、ヒトソマトスタチン及びヒト膵臓ペプチドに対する一次抗体で探索した。
【実施例6】
【0194】
HIP及びGLP−1若しくはGLP−1レセプターアゴニスト、GLP−1類似体に対する臨床治験プロトコール
この実施例において、糖尿病に対して認定された動物モデルを使用し、膵島細胞再生を刺激するためのHIP及び薬剤の相乗的相互作用の用量範囲を決定した。
【0195】
HIP及びGLP−1若しくはGLP−1受容体アゴニスト或いはGLP−1類似体での処理
動物モデル
非肥満糖尿病(NOD)マウス株は、ヒトの症状と非常に類似した疾患を自発的に発症するため、1型糖尿病の優れた動物モデルとして長い間研究されてきた(Delovitch,T.L.,and Singh,B.1997.Immunity.7:727−738.)。NODマウスにおける糖尿病は、膵島抗原を認識し、中枢及び末梢耐性を回避する炎症性自己反応性T細胞によって仲介される。
【0196】
手順
NODマウスの親コロニーにおいて、メスNODマウスにおける糖尿病の出現率が30週で一般的に75〜90%であるのに、いくつかのコホートにおいては90%を超えていた。各マウスにはHIP及び/若しくはアミリンの投薬量を投与し、何も投与しないNODマウスと比較した。HIPの用量は、1μg/kg/1日〜100μg/kg/1日の範囲である。アミリンの用量は、0.3〜0.8μg/kg/1日の範囲である。
【0197】
処理
コホートは、動物サイズ、代謝及び循環に対する代償性用量で、若しくは約1/6mg/kg当量で、各薬剤及びプラセボの2〜4用量範囲を有する4アームにおいて処理された。アーム1:生理食塩水、アーム2:HIP、アーム3:アミリン、アーム4:HIP+アミリン。
【0198】
研究査定
血中グルコースレベルは、One Touch IIグルコースメーター(Lifescan)で毎週測定した。マウスは300mg/dl以上の2連続測定後、糖尿病であると見なされた。組織学的解析に対して、膵臓はスナップ凍結した。マルチプル5−μm切片をヘマトキシリン及びエオジンで染色し、本分野で既知である膵島炎の重症度に対して盲検的にスコアリングした。
【0199】
結果
HIPを摂取していたNODマウスは、血中グルコースレベルにおける明白な減少、及びそれらの膵臓における膵島炎の出現の減少を示した。
【実施例7】
【0200】
既存1型糖尿病を患った患者におけるHIP、アミリン/SYMLIN(商標)及びDIAPEP277(商標)に対する臨床治験プロトコール
ヒト臨床治験に対するこの実施例において、1型糖尿病患者の間で利用された5ステップ法は、HIP、SYMLIN(商標)及びDIAPEP277(商標)を利用することで概説されるものである。HIP及び/若しくはHIP類似体での1型糖尿病の治療に対する前記5ステップ法は、以下の工程:1)集中的な血糖管理、2)経口コレカルシフェロール(ビタミンD3)を介した40ng/dl以下の25−ヒドロキシビタミンDレベルの達成及び維持、3)免疫療法、4)HIP投与、及びHIP及びインスリン両者の中断後のインスリン減少、及び5)2つのグルコース強化の月末での、及びHIPの使用時とHIPの開始後6ヶ月での(Raz et al.,Lancet.2001:24;358(9295):1749−53)、及びC−ペプチド及びGAD抗体力価に基づいて必要に応じた、DiaPep277での免疫調節プロトコール、を含む。
【0201】
研究のために1型糖尿病を患っていると認定された患者を選択し、全患者は複数回のインスリン注射、インスリンポンプ利用及び/若しくは食前インスリンを適切に軽減した食前におけるSYMLIN(商標)の添加で、3ヶ月の彼らの糖尿病の強化を受けた。集中的なグルコース管理のこの期間の間、全患者は25−ヒドロキシビタミンDを測定され、40ng/ml以下の値を有する患者は1000或いは2000IUビタミンD3(コレカルシフェロール)が彼らの治療投薬計画に加えられた。
【0202】
患者の半分は、介入群或いはプラセボ群へランダム化した。前記プラセボ群は、2つのグルコース強化の月末での1プラセボ/溶媒皮下注射を受け、これに対して介入治験における患者は、1mgの皮下的DIAPEP277(商標)(Raz et al.,Lancet.2001:24;358(9295):1749−53)の皮下注射を受けた。患者は毎週観察し、彼らの糖尿病投薬計画における調節を行った。
【0203】
3ヶ月の強化の最後で、両グループの患者において25−ヒドロキシビタミンDレベルを測定し続け、40ng/ml以上を確実にするのに必要なビタミンD3の維持を続けた。前記介入アームに属する患者は、DIAPEP277(商標)の別の皮下注射を受け、一方でプラセボアームの患者はプラセボ/溶媒注射を受けた。インスリン及びSYMLIN(商標)、或いはインスリン単独を受け、HIP療法へとランダム化された患者は、各食事前及び就寝時に皮下注射され、合計800〜900mg/1日(平均用量は10mg/kg/1日で4分割用量)を投与された。プラセボ群の患者は、食前及び就寝時に不活性溶媒の4回の注射を受けた。
【0204】
全患者において、グルコースレベル、C−ペプチド及び刺激性C−ペプチドレベルを厳密にモニタリングした。インスリン及びSYMLIN(商標)は、80〜110mg/dL空腹時及び110〜140mg/dL食後2時間の目標グルコースレベルを維持するのに必要なだけ用量設定した。3〜6ヶ月以内で、前記介入群は完全にインスリンを減らせると予想された。初期投与HIP或いはプラセボ療法後の6ヶ月の最後では、DIAPEP277(商標)或いはプラセボの最終注射は、前記介入群において新しい島を保護するために投与された。
【実施例8】
【0205】
新たに発症した1型糖尿病を患った患者におけるHIP、アミリン/SYMLIN(商標)及びDIAPEP277(商標)に対する臨床治験プロトコール
ヒト臨床治験に対するこの実施例において、1型患者の間で利用されている方法は、HIP、SYMLIN(商標)及びDIAPEP277(商標)を利用することで概説された。HIP及び/若しくはHIP類似体で1型糖尿病を治療する方法は、以下の工程:1)皮下的なDIAPEP277(商標)の投与及びこれに対するコントロール患者間のプラセボの投与後の、介入群或いはコントロール群への即時ランダム化、2)経口コレカルシフェロール(ビタミンD3)を介した40ng/dl以下の25−ヒドロキシビタミンDレベルの達成及び維持、3)インスリン及びSYMLIN(商標)での3ヶ月集中的管理、4)HIP投与、及びHIP及びインスリン両者の中断後のインスリン減少、及び5)初期注射後1ヶ月で、次に再度6ヶ月での(Raz et al.,Lancet.2001:24;358(9295):1749−53)、C−ペプチド及びGAD抗体力価に基づいて必要に応じた、DiaPep277での免疫調節プロトコール、を含む。
【0206】
研究のために、新たに発症した1型糖尿病を患っていると認定された患者を選択し、複数回のインスリン注射、インスリンポンプ利用及び/若しくは食前インスリンを適切に軽減した食前におけるSYMLIN(商標)の添加による1ヶ月の糖尿病の強化後、全患者にプラセボ或いはDIAPEP277(商標)を投与した。集中的グルコース管理のこの期間の間、全患者は25−ヒドロキシビタミンDを測定され、40ng/ml以下の値を有する患者は1000或いは2000IUビタミンD3(コレカルシフェロール)が彼らの治療投薬計画に加えられた。
【0207】
1ヶ月の強化の最後では、両群の患者において25ヒドロキシビタミンDレベルを測定し続け、40ng/ml以上のレベルを確実にするために必要なビタミンD3の維持が続けられた。前記介入アームの患者は、DIAPEP277(商標)の別の皮下注射を受け、一方プラセボアームの患者はプラセボ/溶媒注射を受けた。インスリン及びSYMLIN(商標)或いはインスリン単独を受け、HIP療法へとランダム化された患者は、各食事前及び就寝時に皮下注射され、合計800〜900mg/1日(平均用量は10mg/kg/1日で4分割用量)を投与された。プラセボ群の患者は、食前及び就寝時に不活性溶媒の4回の注射を受けた。
【0208】
全患者において、グルコースレベル、C−ペプチド及び刺激性C−ペプチドレベルを厳密にモニタリングした。インスリン及びSYMLIN(商標)は、80〜110mg/dL空腹時及び110〜140mg/dL食後2時間の目標グルコースレベルを維持するのに必要なだけ用量設定した。3〜6ヶ月以内で、前記介入群は完全にインスリンを減らせると予想された。初期投与HIP或いはプラセボ療法後の6ヶ月の最後では、DIAPEP277(商標)或いはプラセボの最終注射は、前記介入群において新しい島を保護するために投与された。
【0209】
動物モデル
非肥満糖尿病(NOD)は、ヒトの症状と非常に類似した疾患を自発的に発症するため、1型糖尿病の優れた動物モデルとして長い間研究されてきた(Delovitch,T.L.,and Singh,B.1997.Immunity.7:727−738.)。NODマウスにおける糖尿病は、膵島抗原を認識し、中枢及び末梢耐性を回避する炎症性自己反応性T細胞によって仲介される。
【0210】
手順
NODマウスの親コロニーにおいて、メスNODマウスにおける糖尿病の出現率が30週で一般的に75〜90%であるのに、いくつかのコホートにおいては90%を超えていた。各マウスにはHIP及び/若しくはアミリン及び/若しくはDIAPEP277(商標)の投薬量を投与し、それぞれと何も投与しないNODマウスとを比較した。HIPの用量は、1μg/kg/1日〜100μg/kg/1日の範囲である。アミリンの用量は、0.3〜0.8μg/kg/1日の範囲である。DIAPEP277(商標)の用量は、0.1〜0.2μg/kg/1日の範囲であり、HIP或いはアミリンの投与の1週間前になされた。
【0211】
処理
コホートは、動物サイズ、代謝及び循環に対する代償性用量で、若しくは約1/6mg/kg当量で、各薬剤及びプラセボの2〜4用量範囲を有する6アームにおいて処理された。アーム1:生理食塩水、アーム2:HIP、アーム3:アミリン、アーム4:HIP+アミリン、アーム5:HIP+DIAPEP277(商標)、アーム6:HIP+アミリン+DIAPEP277(商標)。
【0212】
研究査定
血中グルコースレベルは、One Touch IIグルコースメーター(Lifescan)で毎週測定した。マウスは300mg/dl以上の2連続測定後、糖尿病であると見なされた。組織学的解析に対して、膵臓はスナップ凍結した。マルチプル5−μm切片をヘマトキシリン及びエオジンで染色し、本分野で既知である膵島炎の重症度に対して盲検的にスコアリングした。
【0213】
結果
HIPを摂取したNODマウスは、血中グルコースレベルにおける明白な減少、及びそれらの膵臓における膵島炎の出現の減少を示した。
【0214】
本発明は特定の実施形態を参照することによって詳細に記載されたが、本分野の当業者は、以下の請求項において説明されたように、修飾及び改善が本発明の範囲及び観点内であることを理解するであろう。本明細書で引用された全ての刊行物及び特許文献(特許、公開特許出願、及び未公開特許出願)は、それぞれの公報或いは文献が参照によって本明細書に組み込まれると具体的に及び個々に指示されたものであるように、この参照によって本明細書に組み込まれるものである。公報及び特許文献の引用は、あらゆるそのような文献が関連ある先行技術であるという承認を意図したものではなく、同様な内容或いはデータについてのあらゆる承認を構成するものでもない。本発明は明細書及び実施例を介して記載されたが、本分野の当業者は、本発明が様々な実施形態において実行され、上述の記載及び実施例が説明を目的とするものであり、以下の請求項の限定ではないことを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】図1は、3.3μM(最終培養物濃度165nM)のHIP1(配列ID番号7)、HIP2(配列ID番号3)、及びHIP3(配列ID番号2)による治療後のヒト膵臓管組織培養におけるインスリン産生の増加と、INGAPペプチド及びスクランブル(混合)した負の対照による治療後の同様のものとの比較を示す棒グラフである。
【図2】図2は、最終培養物濃度500nMの1mM HIP1(配列ID番号7)、HIP2(配列ID番号3)、及びHIP3(配列ID番号2)による治療後のヒト膵島組織におけるインスリン産生の増加と、INGAPペプチド及びスクランブル(混合)した負の対照による治療後の同様のものとの比較を示す棒グラフである。
【図3】図3Aは、HIP(配列ID番号2)と共に6日間培養した後の膵臓管組織画分の培養物の顕微鏡写真である。新しい膵島構造が細胞培養中に形成された。 図3Bは、HIP(配列ID番号2)と共に培養した後の膵臓管組織画分の培養物の顕微鏡写真である。新しい膵島構造が細胞培養中に形成された。 図3Cは、HIP(配列ID番号2)と共に培養した後の膵臓管組織画分の培養物の顕微鏡写真である。新しい膵島構造が細胞培養中に形成された。 図3Dは、HIP(配列ID番号2)と共に培養していない膵臓管組織画分の培養物の顕微鏡写真である。 図3Eは、図3Aに示される顕微鏡写真の高拡大顕微鏡写真である。
【図4】図4は、ローゼンバーグ・プロトコルに従ってHIPペプチドで治療した10日後のヒト膵臓管組織培養におけるインスリン産生の増加を示す棒グラフである。ペプチド1、2、3は、HIP類似体である配列ID番号7、配列ID番号3、配列ID番号2であり、ペプチド4(ハムスターINGAP配列)及びペプチド5(スクランブル(混合)した負の対照)の同様の治療と比較した。試料は、5μgの総タンパク量を2組用意し、ELISA分析によって測定した。
【図5】図5は、ローゼンバーグ・プロトコルに従ってHIPペプチドで治療した10日後のヒト膵島組織培養におけるインスリン産生の増加を示す棒グラフである。HIP1、2、及び3は、HIP類似体である配列ID番号7、配列ID番号3、及び配列ID番号2であり、ペプチド4(ハムスターINGAP配列)及びペプチド5(スクランブル(混合)した負の対照)の同様の治療と比較した。試料は、0.002μgの総タンパク量を2組用意し、ELISA分析によって測定した。
【図6】図6Aは、HIPでの治療の2日後に新しいインスリン産生膵島の病巣を形成しているヒト膵臓前駆細胞を示す反転顕微鏡写真である。 図6Bは、HIPでの治療の6日後にインスリン産生膵島様の構造を形成しているヒト膵臓前駆細胞を示す反転顕微鏡写真である。
【図7】図7Aは、2つの濃度のHIPペプチドで治療したヒト膵臓管組織培養のインスリン産生の増加を示す棒グラフである。HIP1、2、3は、HIP類似体である配列ID番号7、配列ID番号3、配列ID番号2であり、ペプチド4(ハムスターINGAP配列)及びペプチド5(スクランブル(混合)した負の対照)の同様の治療と比較した。値は、ELISA分析で測定した(2組の試料の)平均インスリン単位である。 図7Bは、2つの濃度のHIPペプチドで治療したヒト膵島組織培養のインスリン産生の増加を示す棒グラフである。HIP1、2、3は、HIP類似体である配列ID番号7、配列ID番号3、配列ID番号2であり、ペプチド4(ハムスターINGAP配列)及びペプチド5(スクランブル(混合)した負の対照)の同様の治療と比較した。値は、ELISA分析で測定した(2組の試料の)平均インスリン単位である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列ID番号13のアミノ酸配列を有する、ヒト膵島ペプチド(human proislet peptid)、又はその類似体若しくは誘導体。
【請求項2】
請求項1記載のヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体において、前記膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体は、長さ17アミノ酸未満のものである。
【請求項3】
請求項2記載のヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体において、前記膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体は、配列ID番号2、3、4、7、及び19からなる群の一員から選択されるアミノ酸配列を有するものである。
【請求項4】
治療を必要とする被験対象において、膵臓機能障害に関連した病状を治療する方法であって、
治療的有効量の1若しくはそれ以上のヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体を前記被験対象に投与する工程によって、当該膵臓機能障害に関連した病状を治療する方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記ヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体は、配列ID番号2、3、4、5、6、7、18、及び19からなる群の一員から選択されるアミノ酸配列を有するものである。
【請求項6】
請求項4記載の方法において、前記ヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体は、長さ17アミノ酸未満のものである。
【請求項7】
請求項4記載の方法において、この方法は、更に、
膵島細胞再生を刺激する1若しくはそれ以上の薬剤を投与する工程を有するものである。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、膵島細胞再生を刺激する前記薬剤は、ヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体、アミリン、SYMLIN(商標)、プラムリンタイド(pramlintide)、エキセンディン−4(Exendin−4)、リラグルチド(Liraglutide)、GLP−1受容体アゴニスト、GLP−1、GLP−1類似体、ハムスターINGAP並びにその類似体、GIP、ジペプチジルペプチダーゼ−4阻害剤からなる群の一員から選択されるものである。
【請求項9】
請求項4記載の方法において、この方法は、更に、
膵島細胞を標的とする自己免疫細胞を阻害、阻止、若しくは破壊する1若しくはそれ以上の薬剤を投与する工程を有するものである。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、膵島細胞を標的とする自己免疫細胞を阻害、阻止、若しくは破壊する前記薬剤は、抗CD3抗体、ラパマイシン、FK506、熱ショックタンパク質60、抗GAD65ワクチン、ミコフェノール酸モフェチル、リソフィリン(lysofylline)、リツキシマブ(Rituximab)、キャンパス−1H、ビタミンD、IBC−VSOワクチン、及びCD4<SUP>+</SUP>CD25<SUP>+</SUP>抗原特異的制御性T細胞からなる群の一員から選択されるものである。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記ミコフェノール酸モフェチルは、ダクリズマブ(Daclizumab)と共に投与されるものである。
【請求項12】
請求項10記載の方法において、前記ビタミンDは、ビタミンD3である。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、前記ビタミンD3は、前記被験対象において、約40ng/mL以上の25−ヒドロキシビタミンDを維持するのに効果的な量で前記被験対象に投与されるものである。
【請求項14】
請求項4記載の方法において、前記膵臓機能障害に関連する病状の少なくとも1つの症状は、少なくとも1つのヒト膵島ペプチドの投与の結果、治療されるか若しくは緩和されるものである。
【請求項15】
請求項4記載の方法において、前記症状は、頻尿、過剰な口渇、極度の空腹感、異常な体重減、疲労感の増大、過敏性、視界不良、性器のかゆみ、異様なうずき及び痛み、口内乾燥症、乾燥肌若しくは敏感肌、インポテンス、膣内イースト菌感染症、傷口及び擦り傷の治癒不良、過度の若しくは異常な感染症、高血糖症、血糖コントロールの喪失、食後血糖値の変動、血液グルカゴンの変動、血液トリグリセリドの変動からなる群の一員から選択されるものである。
【請求項16】
請求項4記載の方法において、この方法は、更に、
治療量の1若しくはそれ以上のヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体の投与前の前記被験対象における血糖コントロールを強化する工程を有するものである。
【請求項17】
請求項4記載の方法において、前記被験対象は、治療量の1若しくはそれ以上のヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体の投与時に、インスリンを投与されているものである。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記インスリンは、治療量の1若しくはそれ以上のヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体の投与後に、用量が減少されるものである。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記インスリンの用量は、治療量の1若しくはそれ以上のヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体の投与後に、1若しくはそれ以上の回数で減少されるものである。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、前記インスリンの用量は、0まで減少されるものである。
【請求項21】
ヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体に選択的に結合する抗体であって、
配列ID番号2、3、4、5、6、7、18、及び19からなる群の一員から選択されるアミノ酸配列を有する、抗体。
【請求項22】
請求項21記載の抗体において、当該抗体は、モノクローナル抗体である。
【請求項23】
請求項21記載の抗体において、当該抗体は、ポリクローナル抗体である。
【請求項24】
1型糖尿病、糖尿病前症、2型糖尿病、若しくは潜在性成人期自己免疫性糖尿病の患者を治療するキットであって、
治療的有効用量のヒト膵島ペプチド、又はその類似体若しくは誘導体と、膵島細胞再生を刺激する少なくとも1つの薬剤と、その使用説明書とを有する、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−545712(P2008−545712A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513797(P2008−513797)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/020644
【国際公開番号】WO2006/128083
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(507296012)キュアーディーエム、インク. (2)
【Fターム(参考)】