説明

ペレット及びその製造方法

【課題】凝集性の高いシリコーンパウダーであっても熱可塑性樹脂に正確な割合で配合可能であり、且つ、エネルギー効率の高い、熱可塑性樹脂へのシリコーンパウダーの混合手法を提供すること
【解決手段】熱可塑性樹脂に水系シリコーンパウダーサスペンジョンを混合して加熱することによって、シリコーンパウダーを含むペレットを得る。前記加熱を30〜300℃で行うことが好ましく、また、前記加熱を押出機、特に、ベント付2軸押出機で行うことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンパウダーを含むペレット及びその製造方法、並びに、当該ペレットから得られる樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンパウダー、特に硬化したシリコーンゴムパウダーは、樹脂改質剤として各種の熱可塑性樹脂に配合されている。
【0003】
例えば、特開平8−67817号公報には、ポリスチレンの耐衝撃性を改善するために、ポリスチレンにシリコーンゴムパウダーを混合することが記載されている。
【0004】
また、特開平8−302171号公報には、ポリエステルフィルムの滑り性と耐摩耗性を改善するために、ポリエステルにシリコーン樹脂パウダーを混合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−67817号公報
【特許文献2】特開平8−302171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、熱可塑性樹脂にシリコーンパウダーを混合する場合、熱可塑性樹脂を加熱して得られた溶融状態の熱可塑性樹脂にシリコーンパウダーを直接投入して混合しているが、シリコーンパウダーは凝集性が高く、凝集体を形成してしまうために、取扱いが困難であるのみならず、シリコーンパウダーの投入量の正確な制御が困難であった。
【0007】
また、特開平8−67187号公報及び特開平8−302171号公報に記載の先行技術では、押出機中で熱可塑性樹脂とシリコーンパウダーとを混合しているが、熱可塑性樹脂の溶融のための押出機の加熱に加えて、シリコーンパウダーを予め乾燥させるためのシリコーンパウダーの予備加熱が必要であり、全体として、多くのエネルギーを必要としていた。
【0008】
本発明は、凝集性の高いシリコーンパウダーであっても熱可塑性樹脂に正確な割合で配合可能であり、且つ、エネルギー効率の高い、熱可塑性樹脂へのシリコーンパウダーの混合手法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂及びシリコーンパウダーを含むペレットであって、
前記熱可塑性樹脂に水系シリコーンパウダーサスペンジョンを混合して加熱することにより得られるペレットによって達成される。
【0010】
前記熱可塑性樹脂はポリスチレン及び/又はポリカーボネートであることができる。
【0011】
前記シリコーンパウダーは、硬化したシリコーンゴムパウダーであることが好ましい。
【0012】
前記熱可塑性樹脂及び前記シリコーンパウダーの混合比は熱可塑性樹脂100質量部に対してシリコーンパウダー1〜300質量部であることが好ましい。
【0013】
前記シリコーンパウダーサスペンジョンはサスペンジョンの1〜50質量%の水を含むことが好ましい。
【0014】
前記加熱は30〜300℃で行われることが好ましく、また、前記加熱は押出機中で行われることが好ましい。前記押出機はベント付2軸押出機であることが好ましい。
【0015】
前記ペレットは、それ自体で又は他の樹脂材料と混合されて、樹脂成形品とすることができる。前記樹脂成形品は、フィルム又はシートであることが好ましい。
【0016】
前記シリコーンパウダーを含むペレットは、熱可塑性樹脂に水系シリコーンパウダーサスペンジョンを混合して加熱する工程を含む製造方法によって製造することができる。
【0017】
前記加熱は30〜300℃で行われることが好ましく、また、前記加熱は押出機中で行われることが好ましい。前記押出機はベント付2軸押出機であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
シリコーンパウダーを熱可塑性樹脂に直接配合する代わりに本発明のペレットを熱可塑性樹脂に配合することにより、凝集性の高いシリコーンパウダーであっても熱可塑性樹脂に正確な割合で配合することができる。したがって、熱可塑性樹脂へのシリコーンパウダーの定量配合を容易に実施することができる。
【0019】
本発明では、シリコーンパウダーを乾燥状態で熱可塑性樹脂に投入せず、水系サスペンジョンの形態で投入するので、シリコーンパウダーの予備加熱工程が不要である。したがって、本発明は、高いエネルギー効率を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明において好適に使用可能な押出機の一例を示す断面概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明では、熱可塑性樹脂に水系シリコーンパウダーサスペンジョンを混合して加熱することにより、当該熱可塑性樹脂及びシリコーンパウダーを含むペレットを得る。
【0022】
熱可塑性樹脂は、加熱により可塑化可能であれば、その種類は特に限定されるものではない。また、熱可塑性樹脂は室温でエラストマー状のものであってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体もしくは共重合体からなるポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂;これらのα−オレフィンと酢酸ビニル、メチルメタクリレート、マレイン酸等のα−オレフィン以外の単量体との共重合体からなるエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂等のポリオレフィン樹脂;アクリル酸、メタアクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類等のアクリル単量体の単独重合体もしくは共重合体、これらのアクリル単量体とスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン単量体、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のエチレン単量体、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、無水マレイミド等のマレイミド単量体との共重合体等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、高衝撃性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等のポリエステル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、スチレン系、オレフィン系、エステル系、ウレタン系、アミド系、フッ素系、塩化ビニル系等の熱可塑性エラストマー樹脂、およびこれらの熱可塑性有機樹脂の二種以上の混合物や共重合体が例示されるが、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリスチレン樹脂及びポリカーボネート樹脂がより好ましい。
【0023】
水系シリコーンパウダーサスペンジョンは、シリコーンパウダーを含む水系サスペンジョンであり、シリコーンパウダーおよび水の他に、エタノール、界面活性剤等を含んでもよい。通常、このような水系シリコーンパウダーサスペンジョンを乾燥することにより、シリコーンパウダー得ることができる。
【0024】
水系シリコーンパウダーサスペンジョンは、シリコーンパウダーを効率的に得るために、水系サスペンジョン全体の1〜50質量%の水を含むことが好ましい。水系サスペンジョン中の水分量は少ない方が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、1〜30質量%が更により好ましい。
【0025】
前記シリコーンパウダーサスペンジョンは特に限定されず、一般に入手可能であり、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製のDY33−430M、DY33−440F、33ADDITIVEが挙げられる。
【0026】
水系シリコーンパウダーサスペンジョンを加熱することによってシリコーンパウダーを得ることができる。加熱温度は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂の種類に応じて30〜300℃の範囲とすることができる。例えば、熱可塑性樹脂としてポリスチレン樹脂を使用する場合は180℃〜220℃が好ましく、約200℃がより好ましい。一方、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂を使用する場合は230〜270℃が好ましく、約250℃がより好ましい。
【0027】
前記加熱は押出機で行われることが好ましく、ベント付2軸押出機で行われることがより好ましい。以下、図面を参照しつつ、本発明において好適に使用可能な押出機の一例を説明する。
【0028】
図1に示す押出機はシリンダー1中に駆動装置3に連結された回転可能な二軸スクリュー2を備えており、シリンダー1内に材料を供給する第1の供給口1a及び第2の供給口1bが開口している。第1の供給口1a及び/又は第2の供給口1bからシリンダー1内に投入された材料は二軸スクリュー2の回転駆動により図面の左から右の方向へ搬送される。以下、シリンダー1内の材料の搬送方向に沿って、図1の左側を上流側、右側を下流側ということがある。なお、必要に応じて、シリンダー1の供給口は1つでもよく、また、第1の供給口1a及び第2の供給口1bの他に、更に、供給口を設けてもよい。
【0029】
また、シリンダー1にはシリンダー1内のガスを排出するためのベント孔1cが開口している。なお、必要に応じて、更にベント孔を設けてもよい。
【0030】
そして、シリンダー1は図示を省略する加熱/冷却用のジャケット、並びに、温度センサーを備えており、所定の箇所を所定の温度に加熱/冷却制御可能とされている。
【0031】
図1に示す例では、二軸スクリュー2上に、第2の供給孔1bの上流側及び下流側に第1の混練ディスク2a及び第2の混練ディスク2bがそれぞれ配設されており、また、ベント孔1cの上流側に第3の混練ディスク2cが配設されている。これらの混練ディスクはシリンダー1内の材料を良好に混練するためのものであり、上流から搬送されてきた材料は各混練ディスクの上流側に滞留して当該混練ディスクによる高い混練作用を受けることができる。
【0032】
図1に示す例では、第1の供給口1aの上方に振動フィーダー4が配設されており、第1の供給口1aに熱可塑性樹脂を投入可能とされている。なお、熱可塑性樹脂の性状に応じて振動フィーダー以外の他の供給装置を使用してもよい。一方、第2の供給口1bには図示を省略する配管を介して水系シリコーンパウダーサスペンジョンを貯留するタンク5が接続されており、タンク5内の水系シリコーンパウダーサスペンジョンをポンプ6によって圧送して第2の供給口1bに投入可能とされている。
【0033】
また、図1に示す例では、ベント孔1cに、図示を省略する配管を介してポンプ7が接続されており、ベント孔1cからガスを強制排気可能とされている。
【0034】
そして、図1に示す例では、シリンダー1の下流側末端に排出口1dが設けられており、シリンダー1内の材料は排出口1dを通過して所定の横断面を有するストランドとされる。ストランドは図示を省略する造粒機によって切断されてペレットとされる。
【0035】
図1に示す押出機を用いて本発明のペレットを製造する場合は、まず、シリンダー1を所定温度とし、駆動装置3を駆動して二軸スクリュー2を回転させる。
【0036】
次に、振動フィーダー4から熱可塑性樹脂を第1の供給口1aに投入する。熱可塑性樹脂はシリンダー1の加熱、並びに、二軸スクリュー2の噛合作用及び第1の混練ディスク2aによる混練作用を受けて溶融して溶融体となる。
【0037】
次に、ポンプ6を駆動してタンク5から水系シリコーンパウダーサスペンジョンを第2の供給口1bに配管を介して投入する。第2の供給口1bに投入された水系シリコーンパウダーサスペンジョンは熱可塑性樹脂の溶融体と混合して、二軸スクリュー2の噛合作用及び第2の混練ディスク2bの混練作用により混練される。この際に、シリンダー1からの熱により水系シリコーンパウダーサスペンジョン中の水等の揮発性液体が気化するが、気化した揮発性液体は第1の混練ディスク2aのブロッキング作用により第1の供給口1aに逆流することなくベント孔1cから排出される。
【0038】
前記配管内の水系シリコーンパウダーサスペンジョンへのシリンダー1からの熱伝達を低減するために、第2の供給口1bの周辺のシリンダー1の温度は他の部位の温度よりも低い方が好ましい。この際、シリンダー1からの前記配管への熱伝達を更に低減するために、当該配管の先端に小口径のノズルを設置して第2の供給口1bとの直接接触を回避したり、また、前記配管及び/又は前記ノズルの周囲に冷却媒体が流通する冷却ジャケット等の冷却手段を設けて当該配管及び/又は当該ノズルを冷却することが好ましい。これらにより、前記配管内の水系シリコーンパウダーサスペンジョンへの熱伝達による当該シリコーンパウダーサスペンジョンの物理的・化学的特性の変化、並びに、前記ノズル内の水系シリコーンパウダーサスペンジョンの部分的な乾燥によるノズルの詰まりを防止することができる。
【0039】
第2の供給口1bの近傍にて水系シリコーンパウダーサスペンジョン中の揮発性液体が除去されるので、第2の混練ディスク2bを通過してシリンダー1内を下流側に搬送される間に、熱可塑性樹脂と水系シリコーンパウダーサスペンジョンとの混合物は、主に、熱可塑性樹脂とシリコーンパウダーとの混合物に徐々に変化する。水系シリコーンパウダーサスペンジョンが硬化性シリコーン組成物のサスペンジョンであれば、シリンダー1からの加熱により硬化したシリコーンゴムパウダーを得ることができる。そして、熱可塑性樹脂とシリコーンパウダーとの混合物は二軸スクリュー2の搬送作用により第3の混練ディスク2cに到達し、シリンダー1の加熱下、更に、混練される。この際、水系シリコーンパウダーサスペンジョン中に残存する揮発性液体が気化して上流側に逆流するおそれがあるが、気化物は第2の混練ディスク2bの存在により逆流が妨げられるので、第2の供給口1bから大量に排気されることはない。
【0040】
第3の混練ディスク2cによって混練された熱可塑性樹脂とシリコーンパウダーの混合物は第3の混練ディスク2cとシリンダー1との間隙から下流側に搬送されるが、その際に当該混合物に含まれる微量の揮発性液体は急激に膨張して気化し、ベント孔1cからシリンダー1外に排出される。図1に示す例では、ベント孔1cはポンプ7によって吸引されているので、水系シリコーンパウダーサスペンジョン由来の残存気化物はほぼベント孔1cから排出され、第2の供給口1b又は第1の供給口1aから排出されることはない。
【0041】
なお、図1に示す例では、混練ディスクはシリンダー1内の3カ所に設けられているが、必要に応じて、更に混練ディスクを設けてもよい。特に、ベント孔1cの下流側に混練ディスクを設けて更に混練してもよい。
【0042】
このようにして得られた熱可塑性樹脂とシリコーンパウダーの混合物は排出口1dからストランドとして排出される。排出されたストランドは、例えば、冷却機構及び切断機構を備える汎用の造粒機によって切断されてペレットとされる。
【0043】
従来、押出機ではバックフロー(気化物の逆流現象)の発生を抑制するために、押出機内に水等の揮発性の液体を意図的に投入することは行っていないが、本発明では、そのような揮発性の液体を含む水系シリコーンパウダーサスペンジョンを押出機に敢えて投入することによって、水系シリコーンパウダーサスペンジョンを加熱乾燥してシリコーンパウダーを得る工程を省略することができるので、エネルギー効率に優れている。
【0044】
本発明のペレット中に含まれるシリコーンパウダーは比較的高硬度のゴム状もしくはレジン状であることが好ましく、ゴム状であることがより好ましい。また、シリコーンパウダーの形状としては、球状、偏平状、不定形状が例示され、好ましくは、球状である。また、この平均粒子径としては、0.1〜500μmであることが好ましく、特に、0.1〜200μmであることが好ましい。これは、この平均粒子径がこの範囲より大きくなると、熱可塑性樹脂への分散性が低下したり、熱可塑性樹脂用改質剤としての効果を十分に発揮しなくなる傾向があるためであり、一方、この範囲より小さくなると、取扱作業性が低下する傾向があるからである。
【0045】
本発明のペレットにおける熱可塑性樹脂及びシリコーンパウダーの混合比は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂100質量部に対してシリコーンパウダー1〜300質量部の範囲が好ましく、1〜100質量部の範囲がより好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳細に例証するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
図1に示す2軸押出機を使用して、平均粒子径2μmの球状シリコーンゴムパウダーからなる水系シリコーンパウダーサスペンジョン(東レ・ダウコーニング株式会社製の33ADDITIVEから水を一部除去して25質量%の水を含むようにしたもの)及びポリスチレンを混合・混練して押出し、図示を省略する造粒装置によって押し出されたストランドを切断して略円筒形状のペレットを製造した。ペレットのサイズは(直径:3mm、高さ5mm)であった。2軸押出機へのポリスチレンの供給量を3.75kg/時とし、水系シリコーンパウダーサスペンジョンの供給量を1.67kg/時とすることにより、ペレット中のシリコーンゴムパウダーの濃度を25質量%に調整した。
【0048】
[比較例1]
水系シリコーンゴムパウダーサスペンジョンに代えて平均粒子径2μmの球状シリコーンゴムパウダー(東レ・ダウコーニング株式会社製のDY33−719)を使用する以外は、実施例1と同様にしてペレットを製造した。2軸押出機へのポリスチレンの供給量を3.75kg/時とし、シリコーンゴムパウダーの供給量を1.25kg/時とすることにより、ペレット中のシリコーンゴムパウダーの濃度を25質量%に調整した。
【0049】
[評価1]
実施例1で得られたペレットと比較例1で得られたペレットを共に105℃で1時間加熱して質量変化を測定した。結果を表1に示す。
【表1】

【0050】
表1に示される質量減少は実施例1のペレット中及び比較例1のペレット中に残存していた水の蒸発によるものと考えられる。表1から明らかなように、実施例1のペレットと比較例1のペレットはほぼ同程度の含水率である。したがって、押出機を使用して熱可塑性樹脂にシリコーンパウダーを配合する場合に、シリコーンゴムパウダーを直接配合してもシリコーンゴムパウダーを水系サスペンジョンの形態で配合しても、驚くべきことに、残留水分の点で同等又は若干優れた性能を有するペレットを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のペレットは樹脂成形品の製造に使用することができる。例えば、本発明のペレットをそのまま成形して樹脂成形品を製造することが可能であり、また、本発明のペレットをマスターバッチとして、他の樹脂と混合して得られた混合物を成形して樹脂成形品を製造することも可能である。この場合、当該他の樹脂は本発明のペレットに使用された樹脂と同一種類であることが好ましいが、他の種類であってもよい。
【0052】
樹脂成形品の形状も特に限定されるものではないが、フィルム又はシートであることが好ましい。特に、熱可塑性樹脂としてポリスチレン樹脂又はポリカーボネート樹脂等の透明なものを使用する場合には、例えば、ディスプレイ等の光学用のフィルム又はシートとして使用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 シリンダー:2 二軸スクリュー:3 駆動装置:4 振動フィーダー:5 タンク:6 ポンプ:7 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂及びシリコーンパウダーを含むペレットであって、
前記熱可塑性樹脂に水系シリコーンパウダーサスペンジョンを混合して加熱することにより得られるペレット。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂がポリスチレン及び/又はポリカーボネートである、請求項1記載のペレット。
【請求項3】
前記シリコーンパウダーが硬化したシリコーンゴムパウダーである、請求項1又は2記載のペレット。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂及び前記シリコーンパウダーの混合比が熱可塑性樹脂100質量部に対してシリコーンパウダー1〜300質量部である、請求項1乃至3のいずれかに記載のペレット。
【請求項5】
前記シリコーンパウダーサスペンジョンがサスペンジョンの1〜50質量%の水を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載のペレット。
【請求項6】
前記加熱が30〜300℃で行われる、請求項1乃至5のいずれかに記載のペレット。
【請求項7】
前記加熱を押出機中で行う、請求項1乃至6のいずれかに記載のペレット。
【請求項8】
前記押出機がベント付2軸押出機である、請求項7記載のペレット。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のペレットから得られる樹脂成形品。
【請求項10】
フィルム又はシートである請求項9記載の樹脂成形品。
【請求項11】
熱可塑性樹脂に水系シリコーンパウダーサスペンジョンを混合して加熱する工程を含む、シリコーンパウダーを含むペレットの製造方法。
【請求項12】
前記加熱が30〜300℃で行われる、請求項11記載のペレットの製造方法。
【請求項13】
前記加熱を押出機中で行う、請求項11又は12記載のペレットの製造方法。
【請求項14】
前記押出機がベント付2軸押出機である、請求項13記載のペレットの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−178954(P2011−178954A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46769(P2010−46769)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】