説明

ホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置

【課題】 例えば前輪のト−角測定および調整に好適で、車両のステアリング機構によるヒステリシス情報を基にアライメントを測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる、ホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置を提供すること。
【解決手段】 水平面と平行に回動可能なロ−ラフレ−ム32に設けた複数のロ−ラ33に車輪34を載置する。
前記車輪34のアライメントを測定するアライメント測定方法であること。
前記ロ−ラフレ−ム32を、被検車両のステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動する。
ロ−ラフレ−ム32の前記回動位置でアライメントを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば前輪のト−角測定および調整に好適で、車両のステアリング機構によるヒステリシス情報を基にアライメントを測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる、ホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のホイ−ルアライメント測定方法ないし測定装置として、作業床面に4台の架台を配置し、該架台に車輪を回転可能に支持する一対のロ−ラを設け、各架台の側方にアライメントテスタ−を設置し、各アライメントテスタ−にレ−ザ−ビ−ムまたは超音波を送出可能な3個の距離センサを等角度位置に配置し、前記ロ−ラに乗り込んだ車輪の側面に押圧ロ−ラを押圧し、車輪をアライメントテスタ−に正対させた後、各ロ−ラを回転して車輪を回転し、距離センサからレ−ザ−ビ−ムまたは超音波を車輪の側面に送出し、距離センサと車輪の側面との距離を測定し、その距離信号を基にホイ−ルのト−値やキャンバ値を演算するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この測定方法は、車輪をアライメントテスタ−に正対させた後、アライメントテスタ−によって直ちに距離測定しているため、測定値の再現性を得られない、という問題があった。
これは、車両のステアリング機構におけるヒステリシスやガタによる測定値への影響を考慮しないまま、アライメント測定したことに原因があると考えられる。
すなわち、車両のステアリング機構には、路面からのキックバックに対するステアリン
グの安定性向上のため、通常、車両のステアリング機構にヒステリシスを持たせており、このヒステリシスやガタがアライメント測定値へ影響することが考えられ、前記ヒステリシスやガタに対する配慮は、前記測定値の再現性に不可欠である。
【0004】
また、アライメント調整方法として、アライメントテスタ−によってト−調整量を測定するとともに、スポ−ク角測定装置によってステアリングホイ−ルのスポ−クのニュ−トラル位置に対する角度を測定し、次いで車種毎のスポ−ク角変位量とト−調整量との関係から、スポ−クのニュ−トラル位置に対する角度を0にするト−微調整量を割り出し、このト−微調整量を前記ト−調整量に補正し、この補正値に基づいてト−を調整するようにした方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、前記調整方法は、前述したステアリング機構のヒステリシスやガタの影響を除去しないで測定したト−調整量を基に調整しているため、ト−調整量に再現性がなく、ト−微調整量に精度を欠いて、ト−の調整に信頼性を得られないという問題があった。
【0006】
一方、ト−角調整の信頼性向上のため、ステアリングホイ−ルの中立位置と、車輪の直進走行向きとを合致させる調整を要するが、その調整手段として、ステアリングホイ−ルのスポ−クにスポ−ク角センサを取り付けるとともに、車輪にト−角センサを取り付け、これらのセンサ信号を記憶するとともに、ステアリングホイ−ルをその遊びの角度以上に右または左に切り、次にステアリングホイ−ルを前記と逆方向に切って、ステアリングホイ−ルの遊びの角度を計測し、この遊びの角度を使用してト−角の補正値を算出し、この補正値によってト−角を調整するようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかし、前記調整方法のト−角センサによるト−角の測定は、ステアリング機構のヒステリシスやガタの影響を配慮しないで、パッドを車輪の両側面に押し当て、その傾き角度を測定するため、ト−角にはステアリング機構のヒステリシスやガタの影響が含まれ、したがってト−角の測定値に再現性がなく、このト−角を基にした補正値やト−角の調整に信頼性を得られない、という問題があった。
【0008】
また、前記調整方法では、ステアリングホイ−ルの遊びの角度を計測し、この遊びの角度を基にト−角の補正値を算出しているが、近時の自動車はステアリングホイ−ルの遊びが少なく、前記遊びによる調整方法は適用車両を制限するとともに、ト−角測定値の再現性は、一般に前記遊びよりもステアリング機構のヒステリシスによる影響の方が大きいため、前記調整方法の精度には限界があった。
【0009】
【特許文献1】特開2000−121504号公報
【特許文献2】特公平7−121708号公報
【特許文献1】特開平9−240506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような問題を解決し、例えば前輪のト−角測定および調整に好適で、車両のステアリング機構によるヒステリシス情報を基に、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる、ホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、水平面と平行に回動可能なロ−ラフレ−ムに設けた複数のロ−ラに車輪を載置して、前記車輪のアライメントを測定するホイ−ルアライメント測定方法において、前記ロ−ラフレ−ムを、被検車両のステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動し、該ロ−ラフレ−ムの前記回動位置でアライメント測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れるようにしている。
【0012】
請求項2の発明は、前記ロ−ラフレ−ムを、前記ステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に一方向に所定角度回動後、他方向に一定角度回動してアライメント測定し、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図り、併せてアライメント調整の利便を図るようにしている。
請求項3の発明は、前記ロ−ラフレ−ムを、ステアリング角度零位置に回動してアライメント測定し、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図るとともに、ロ−ラフレ−ムないし車輪を直進走行状態に設定し、アライメント測定とその後の調整を容易かつ合理的に行なうようにしている。
【0013】
請求項4の発明は、車輪を載置可能な複数のロ−ラを備えたロ−ラフレ−ムを支持する調整テ−ブルを水平面と平行に回動可能に設け、前記調整テ−ブルに連結した回転軸を正逆転可能な回転駆動手段に連係したホイ−ルアライメント測定装置において、前記調整テ−ブルを、被検車両のステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設け、該調整テ−ブルに前記ロ−ラフレ−ムを同動可能に設け、該ロ−ラフレ−ムの前記回動位置でアライメント測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる具体的な機構を提案している。
請求項5の発明は、前記回転駆動手段と、前記調整テ−ブルの回転軸との間にクラッチを介挿し、該クラッチをアライメント測定時にOFFし、前記回転駆動手段と回転軸との連係を遮断可能にし、アライメント測定とその後のアライメント調整を安全かつ合理的に行なえるようにしている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明は、ロ−ラフレ−ムを、被検車両のステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動し、該ロ−ラフレ−ムの前記回動位置でアライメント測定するから、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる効果がある。
【0015】
請求項2の発明は、前記ロ−ラフレ−ムを、前記ステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に一方向に所定角度回動後、他方向に一定角度回動してアライメント測定するから、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図れ、併せてアライメント調整の利便を図ることができる。
請求項3の発明は、前記ロ−ラフレ−ムを、ステアリング角度零位置に回動してアライメント測定するから、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図るとともに、ロ−ラフレ−ムないし車輪を直進走行状態に設定し、アライメント測定とその後の調整を容易かつ合理的に行なうことができる。
【0016】
請求項4の発明は、調整テ−ブルを、被検車両のステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設け、該調整テ−ブルに前記ロ−ラフレ−ムを同動可能に設け、該ロ−ラフレ−ムの前記回動位置でアライメント測定したから、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる具体的な機構を提供することができる。
請求項5の発明は、前記回転駆動手段と、前記調整テ−ブルの回転軸との間にクラッチを介挿し、該クラッチをアライメント測定時にOFFし、前記回転駆動手段と回転軸との連係を遮断可能にしたから、アライメント測定とその後のアライメント調整を安全かつ合理的に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を車輪のト−測定方法およびその測定装置に適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図5において1は自動車整備工場の作業床面で、その所定位置にピット2が設けられ、該ピット2内に複数のアライメント測定装置3〜6が設置されている。
【0018】
前記アライメント測定装置3〜6は実質的に同一に構成され、該測定装置3〜6は図1の矢視で示す車両の進入方向に沿って前後かつ左右に配置され、これらはピット2の底部に立設した架台7と、該架台7上に設置した機枠8と、該機枠8の上端に架設した作業テ−ブル9と、該テ−ブル9上に図示を省略したボ−ル(鋼球)を介して、回転自在に支持された調整テ−ブル10とを備えている。
【0019】
前記機枠8の車両進入中心に臨む直下位置に、正逆転可能な回転駆動手段である駆動モ−タ11が設置され、該モ−タ11は後述の制御装置によって作動を制御され、その出力軸12にタイミングプ−リ13が固定されている。
前記タイミングプ−リ12と同高位置にタイミングプ−リ14が設けられ、該タイミングプ−リ14は機枠8に垂直に設置した回転軸15に固定され、前記タイミングプ−リ12,14間にタイミングベルト16が巻き掛けられている。
【0020】
前記タイミングプ−リ12の直上にクラッチ17を構成するギヤ18が設けられ、該ギヤ18はシフタ−(図示略)を介して、回転軸15と同軸に設けたスプライン部(図示略)を摺動し、隣接するギヤ19と切離可能に噛合され、前記シフタ−の作動は後述する制御装置に制御され、クラッチ17の作動を制御可能にしている。
【0021】
前記回転軸15の上方にリンク20が連結され、該リンク20の他端に回転軸21が設けられ、該回転軸21に前記ギヤ19が連結されている。前記回転軸21にリンク22が配置され、該リンク22の他端に回転軸23が立設され、該回転軸23に前記ギヤ19と噛合可能なギヤ24が固定されている。
図中、25は前記回転軸15の下端部に固定したエンコ−ダで、回転軸15の回動角度を検出し、その信号を後述する制御装置に入力可能にされている。
【0022】
前記回転軸23の上端部は前記調整テ−ブル10に連結され、該回転軸23の上端部周面が前記ボ−ル(鋼球)を介して、回転自在に支持されている。
前記調整テ−ブル10にガイドレ−ル26が固定され、該ガイドレ−ル26にスライドガイド27が摺動可能に嵌合している。前記スライドガイド27は第1可動テ−ブル28の下面に固定され、その上面にガイドレ−ル29が固定されている。
前記ガイドレ−ル29はガイドレ−ル26と直交配置され、該ガイドレ−ル29にスライドガイド30が摺動可能に嵌合している。前記スライドガイド30は第2可動テ−ブル31の下面に固定され、該スライドガイド30に左右一対のロ−ラフレ−ム32が固定されている。
【0023】
前記ロ−ラフレ−ム32,32は、水平面と平行な平面を回動可能にされ、その回動中心を前記回転軸23と同軸位置に配置していて、その上端部に一対のロ−ラ33が回転可能に支持されている。
前記ロ−ラ33,33上に車両の前後輪34,35が回転可能に支持され、このうち一方のロ−ラ33に駆動モ−タが内蔵されていて、該モ−タの作動を後述の制御装置で制御している。
【0024】
前記ロ−ラフレ−ム32の片側の上端部にロ−ラ36が回転自在に支持され、これが前後輪34,35の側面に係合可能に配置されており、37は前後輪34,35の他側面に近接かつ係合可能に配置した押圧ロ−ラで、前後輪34,35のセンタリング時に作動可能にされ、その作動を後述の制御装置で制御している。
【0025】
図中、38は前記ロ−ラ33の近接位置に配置した係合ロ−ラで、前後輪34,35の回転時における脱出を防止可能にされ、39は前記アライメント測定装置3〜6の外側に配置したアライメンテスタで、実施形態の場合、距離測定手段である超音波センサ40が等角度位置に配置され、該センサ40から前後輪34,35の側面に向けて超音波を発射し、その距離信号を後述の制御装置へ入力可能にしている。
【0026】
この他、図中41はステアリングホイ−ルで、アライメント測定時、T字形状のスポ−ク42に固定具44,44を介して、ステアリング傾斜角度検出冶具43が取り付けられる。
このうち、一方の固定具44は伸縮杆45,45を介して外側へ移動可能に連結され、該杆45,45にセットスプリング46が介挿され、該スプリング46の弾性を介して外側へ付勢され、ステアリングホイ−ル41に圧接されて取り付けられる。
【0027】
図中、47は前記冶具43に設けたステアリング傾斜角度検出センサで、その検出信号を無線または有線によって、マイクロコンピュ−タ等の制御装置48へ入力可能にしている。
なお、ステアリングホイ−ル41はアライメント測定時、適宜手段によって固定され、車輪33,34の方向ないし立位姿勢を拘束される。この拘束手段として、例えば伸縮ロッド49の一端をステアリングホイ−ル41に掛け止め、その他端を車室の天井部50に係合する方法が採られる。
【0028】
前記制御装置48には図1および7に示すように、前記駆動モ−タ11に対する作動制御信号と、クラッチ17に対する作動制御信号と、エンコ−ダ25による回転角検出信号と、ステアリング傾斜角度検出センサ47による検出角度信号と、ロ−ラ33の駆動用モ−タに対する作動制御信号とを入力または出力可能にされ、また被検車両の前後輪34,35に関するヒステリシス位置情報、つまりロ−ラフレ−ム32の設定回転角度情報と、ト−値等のアライメント演算情報等が記憶され、これらを基にアライメント測定を実行可能にしている。
【0029】
前記ヒステリシス位置情報は、被検車両の車輪のヒステリシス位置に関する実験デ−タを基に構成され、該実験デ−タは、各種車両の車輪のヒステリシス位置を、水平面上における回転方向と回転角度とで特定し、ロ−ラフレ−ム32に対する設定回転角度を、前記実験デ−タの回転角度と同等かそれ以上に設定している。
実施形態では設定回転角度を5°〜10°に設定していて、ロ−ラフレ−ム32ないし前後輪34,35を前記設定角度回転させ、被検車両の車輪のヒステリシス位置を、前記情報のヒステリシス位置と同位置に形成可能にしている。
【0030】
この場合、前記ロ−ラフレ−ム32ないし前後輪34,35の回転方向は左または右方
向で、その優先順位は特に無く、何れかの方向へ回転後、反対方向へ復動回転すれば良く、その復動位置は必ずしもステアリング傾斜角度0°位置、つまりステアリングホイ−ル41の直進位置に拘束されない。
ただ、前後輪34,35をステアリング傾斜角度0°位置に復帰すれば、アライメント測定後のアライメント調整を速やかに行なえる。
【0031】
なお、被検車両の車輪のヒステリシス位置を、ヒステリシス位置情報と同位置に形成する代わりに、ヒステリシスが小さい場合は、ヒステリシスの中間位置、例えば1/2相当の角度に形成することも可能であり、そのようにすることでヒステリシスの形成を合理的かつ速やかに行なえる。
【0032】
本発明のホイ−ルアライメント測定方法は、被検車両を試験場に入場し、その前後輪34,35を各ロ−ラフレ−ム32上のロ−ラ33,33上に乗り込ませ、前後輪34,35をアライメントテスタ−3〜6に略正対させた後、図6に示す手順で行なわれる。
先ず、ステアリングホイ−ル41にステアリング傾斜角度検出冶具43を取り付け、その取り付け時におけるステアリング傾斜角度を、ステアリング傾斜角度検出センサ47で検出し、その検出信号を制御装置48へ無線または有線で入力する。
【0033】
次に、クラッチ17を接続し、そのギヤ18,19,24を噛合して駆動モ−タ11を駆動し、各ロ−ラフレ−ム32を所定方向へ設定回転角度を回動する。実施形態では、ロ
−ラフレ−ム32を5°〜10°回動させている。
前記ロ−ラフレ−ム32を右または左方向へ所定角度回動し、ヒステリシス位置情報におけるヒステリシス位置と同位置に前後輪34,35のヒステリシスを形成後、駆動モ−タ11を逆転駆動し、これにロ−ラフレ−ム32を同動させて、ステアリング傾斜角度を0°、つまり前後輪34,35の直進方向、または設定傾斜角度に位置付ける。
【0034】
この後、制御装置48の制御信号によってシフタ−(図示略)を移動し、これにギヤ18を追従させて、ギヤ18とギヤ19との噛合を解除し、クラッチ17を切離する。
そして、伸縮ロッド49の一端をステアリングホイ−ル41に掛け止め、この他端を車室の天井部50に係合して、ステアリングホイ−ル41を固定し、前後輪34,35の回転変位ないし立位姿勢を拘束する。
この後、ロ−ラ33の一方を駆動し、前後輪34,35を回転するとともに、アライメントテスタ39を作動し、超音波センサ40から前後輪34,35の側面に向けて超音波を発射し、その距離信号を制御装置48へ入力し、そのデ−タを演算して所定のアライメント値を得る。
【0035】
このように構成したホイ−ルアライメント測定装置は、大別するとロ−ラフレ−ム32の回転用の駆動モ−タ11と、アライメント測定および調整時に駆動モ−タ11の動力伝達経路を遮断して、ロ−ラフレ−ム32の回転を許容するクラッチ17と、ステアリング傾斜角度検出冶具43とを要し、これらは構成が比較的簡単であるから、これを容易かつ安価に製作できる。
【0036】
次に、本発明のホイ−ルアライメント測定方法の使用に際しては、予め被検車両の前後輪34,35に関するヒステリシス位置情報、つまりロ−ラフレ−ム32の設定回転角度情報を制御装置48に入力する。
前記ヒステリシス位置情報は、各種被検車両の車輪のヒステリシス位置に関する実験デ−タを基に作成され、該情報は前記車輪のヒステリシス位置を特定する、車輪の測定平面上における回転方向と、その回転角度とからなる。
【0037】
前記設定回転角度は、前記実験デ−タの回転角度と同等かそれ以上に設定され、実施形態では5°〜10°に設定されていて、ロ−ラフレ−ム32ないし前後輪34,35を同角度回転し、被検車両の車輪のヒステリシス位置を、前記情報と同位置に確実に形成可能にする。
【0038】
この場合、ロ−ラフレ−ム32ないし前後輪34,35の回転方向は左または右方向の
何れでも良く、その何れかの方向へロ−ラフレ−ム32を設定回転角度分回動後、反対方向へ復動回動すれば良く、またその復動位置は必ずしもステアリング傾斜角度0°位置、つまりステアリングホイ−ル41の直進位置に拘束されない。
ただ、前後輪34,35をステアリング傾斜角度0°位置に復帰することによって、アライメント測定後にアライメント調整を速やかに行なえる。
【0039】
なお、被検車両の車輪のヒステリシス位置を、ヒステリシス位置情報と同位置に形成する代わりに、ヒステリシスが小さい場合は、ヒステリシスの中間位置、例えば1/2相当の角度に形成することも可能であり、そのようにすることでヒステリシスの形成を合理的かつ速やかに行なえる。
【0040】
そこで、本発明のホイ−ルアライメント測定方法を基に、実際にアライメント測定する場合は、被検車両を試験場に入場し、その前後輪34,35を各ロ−ラフレ−ム32上のロ−ラ33,33上に乗り込ませ、前後輪34,35をアライメントテスタ−3〜6に略正対させた後、図6に示す手順で行なう。
【0041】
先ず、ステアリングホイ−ル41にステアリング傾斜角度検出冶具43を取り付け、その取り付け時におけるステアリング傾斜角度をステアリング傾斜角度検出センサ47で検出し、その検出信号を制御装置48へ無線または有線で入力する。
前記検出センサ47の検出信号によって、ロ−ラ33,33上の前後輪34,35の乗り込み姿勢の適否を確認し、不適切な場合は修正する。
【0042】
次に、クラッチ17を接続し、そのギヤ18,19,24を噛合して、各駆動モ−タ11を駆動し、その動力を駆動モ−タ11からクラッチ17を経由して回転軸23に伝える
その際、回転軸15の回転角度がエンコ−ダ25によって検出され、その信号が制御装置48に入力されて、ロ−ラフレ−ム32の回転角度が制御される。
【0043】
こうして回転軸23が回動すると、調整テ−ブル10が前記回転軸23と同期回動し、該調整テ−ブル10上のロ−ラフレ−ム32,32が右または左方向へ設定回転角度、実施形態では5°〜10°回動し、前後輪34,35のヒステリシスが前記情報と同位置に確実に形成される。
【0044】
そして、前記ヒステリシスを前記情報と同位置に形成したところで、駆動モ−タ11を逆転駆動し、ロ−ラフレ−ム32を逆回動させて、ステアリング傾斜角度を0°、つまり前後輪34,35の直進方向、または設定傾斜角度位置に回動する。
【0045】
このように、ロ−ラフレ−ム32を一側方向へ回動し、前記ヒステリシスを片側に寄せ、つまり図8のヒステリシスル−プの端部に位置付けた後、他側方向へ設定回転角度分回動して、前後輪34,35の直進方向位置に戻すから、この後のアライメントテスタ39によるアライメント測定を正確かつ速やかに行なえるとともに、前記復動によって前記ヒステリシスが除去される。
【0046】
この後、制御装置48の制御信号によってシフタ−(図示略)を作動し、ギヤ18を軸方向へ移動して、ギヤ18とギヤ19との噛合を解除し、クラッチ17を切離してロ−ラフレ−ム32の回動を阻止する。
これによって、この後のロ−ラフレ−ム32上におけるアライメント測定やアライメント調整を安全かつ安定して行なえる。
【0047】
この後、伸縮ロッド49の一端をステアリングホイ−ル41に掛け止め、この他端を車室の天井部50に係合して、ステアリングホイ−ル41を固定し、前後輪34,35の変位を拘束する。
そして、ロ−ラ33の一方を駆動し、前後輪34,35を回転するとともに、アライメントテスタ39を作動し、超音波センサ40から前後輪34,35の側面に向けて超音波を発射し、その距離信号を制御装置48へ入力し、そのデ−タを演算して所定のアライメント値を得る。
【0048】
実施形態では、駆動モ−タ11によってロ−ラフレ−ム32をヒステリシス情報の設定回転角度分、例えば左方向へ回動後、ステアリング傾斜角度0°へ戻して前輪34のト−角を測定し、この後、ロ−ラフレ−ム32を右方向へ回動し、ステアリング傾斜角度0°へ戻して前輪34のト−角を測定した。
この場合、前輪34をステアリング傾斜角度0°へ戻すことなく、ヒステリシスを片側へ寄せた状態でアライメントを測定することも可能である。
【0049】
このように本発明は、被検車両のステアリング機構のヒステリシス情報を基に、ロ−ラフレ−ム32を介して、前記情報と同位置にヒステリシスを形成してアライメントを測定するため、ヒステリシスによるアライメント測定値への影響を捨象した従来のアライメント測定法に比べ、実際の車輪のアライメント状態に合致し正確なアライメント情報を得られ、しかも実際に合致したヒステリシスによって測定値のバラツキが低減し、その再現性が得られて、測定値の信頼性が向上し、前記測定値に基づくアライメント調整の信頼性を得られる。
【0050】
発明者は、前記本発明の測定方法の効果を確認するため、次のような効果実験をした。すなわち、4種類の被検車両について、前輪の左右輪をロ−ラフレ−ム32のロ−ラ33,33上に載せ、前記ロ−ラフレ−ム32を左方向およびまたは右方向に回動後、ステアリング傾斜角度0°の中央方向へ復動回動してト−値を測定した。
【0051】
一方、ヒステリシス等の影響を考慮しない従来の測定法によってト−値を測定し、これらのト−値を比較したところ、本発明の測定方法によるト−値の標準偏差は、従来の測定法によるト−値の標準偏差に比べ、約1/4〜1/2になり、バラツキが非常に小さく安定し、測定値の再現性が向上することが確認された。
【0052】
また、この実験では、ロ−ラフレ−ム32を左方向に回動後、ステアリング傾斜角度0°に戻して測定したト−値と、ロ−ラフレ−ム32を右方向に回動後、ステアリング傾斜角度0°に戻して測定したト−値とは、若干のバラツキはあるが、それは0.1〜0.4の標準偏差で、許容範囲内にあると思われる。
更に、本発明の測定方法による前輪34の左右輪の測定値の傾向、つまり左右輪の測定値の大小関係は、従来の測定法の傾向と同様に同程度に現れることが確認された。
【0053】
このように本発明の測定方法は、駆動モ−タ11によってロ−ラフレ−ム32を回動しているから、その動力伝達系から車輪のステアリング機構や車輪の介在を排除し、それらの応力や変位、弾性、摩擦力による新たなヒステリシスの発生を阻止し、ロ−ラフレ−ム32を前記情報通りに正確に回動し、アライメント測定値の信頼性と再現性を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
このように本発明のホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置は、車両のステアリング機構によるヒステリシス情報を基に、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れるから、例えば前輪のト−角測定および調整に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】図3のB−B線に沿う横断面図である。
【図5】本発明に適用したステアリング傾斜角度検出冶具と伸縮ロッドの取り付け状態を示す正面図である。
【0056】
【図6】本発明によるアライメント測定手順を示す流れ図である。
【図7】本発明によるアライメント測定の概要を示す説明図である。
【図8】左右の前輪に関するステアリング機構によるヒステリシス特性を示すヒステリシス特性曲線である。
【符号の説明】
【0057】
10 調整テ−ブル
11 駆動手段(駆動モ−タ)
17 クラッチ
23 回転軸
32 ロ−ラフレ−ム
33 ロ−ラ
34 車輪(前輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面と平行に回動可能なロ−ラフレ−ムに設けた複数のロ−ラに車輪を載置して、前記車輪のアライメントを測定するホイ−ルアライメント測定方法において、前記ロ−ラフレ−ムを、被検車両のステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動し、該ロ−ラフレ−ムの前記回動位置でアライメント測定することを特徴とするホイ−ルアライメント測定方法。
【請求項2】
前記ロ−ラフレ−ムを、前記ステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に一方向に所定角度回動後、他方向に一定角度回動してアライメント測定する請求項1記載のホイ−ルアライメント測定方法。
【請求項3】
前記ロ−ラフレ−ムを、ステアリング角度零位置に回動してアライメント測定する請求項1記載のホイ−ルアライメント測定方法。
【請求項4】
車輪を載置可能な複数のロ−ラを備えたロ−ラフレ−ムを支持する調整テ−ブルを水平面と平行に回動可能に設け、前記調整テ−ブルに連結した回転軸を正逆転可能な回転駆動手段に連係したホイ−ルアライメント測定装置において、前記調整テ−ブルを、被検車両のステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設け、該調整テ−ブルに前記ロ−ラフレ−ムを同動可能に設け、該ロ−ラフレ−ムの前記回動位置でアライメント測定することを特徴とするホイ−ルアライメント測定装置。
【請求項5】
前記回転駆動手段と、前記調整テ−ブルの回転軸との間にクラッチを介挿し、該クラッチをアライメント測定時にOFFし、前記回転駆動手段と回転軸との連係を遮断可能にした請求項4記載のホイ−ルアライメント測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−78477(P2007−78477A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265682(P2005−265682)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000226600)株式会社アルティア橋本 (48)
【Fターム(参考)】