ホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置
【課題】 例えば前輪のト−角測定および調整に好適で、車両のステアリング機構によるヒステリシス情報を基にアライメント測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる、ホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置を提供すること。
【解決手段】 水平面と平行に回動可能な複数のロ−ラ20に車輪21を載置する。
前記車輪20のアライメントを測定するホイ−ルアライメント測定方法であること。
前記車輪20に連係するステアリングホイ−ル28を、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動する。
前記ステアリングホイ−ル28の所定角度回動位置でアライメント測定する。
【解決手段】 水平面と平行に回動可能な複数のロ−ラ20に車輪21を載置する。
前記車輪20のアライメントを測定するホイ−ルアライメント測定方法であること。
前記車輪20に連係するステアリングホイ−ル28を、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動する。
前記ステアリングホイ−ル28の所定角度回動位置でアライメント測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば前輪のト−角測定および調整に好適で、車両のステアリング機構によるヒステリシス情報を基にアライメント測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる、ホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のホイ−ルアライメント測定方法ないし測定装置として、作業床面に4台の架台を配置し、該架台に車輪を回転可能に支持する一対のロ−ラを設け、各架台の側方にアライメントテスタ−を設置し、各アライメントテスタ−にレ−ザ−ビ−ムまたは超音波を送出可能な3個の距離センサを等角度位置に配置し、前記ロ−ラに乗り込んだ車輪の側面に押圧ロ−ラを押圧し、車輪をアライメントテスタ−に正対させた後、各ロ−ラを回転して車輪を回転し、距離センサからレ−ザ−ビ−ムまたは超音波を車輪の側面に送出して、距離センサと車輪の側面との距離を測定し、その距離信号を基にホイ−ルのト−値やキャンバ値を演算するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この測定方法は、車輪をアライメントテスタ−に正対させた後、アライメントテスタ−によって直ちに距離測定しているため、測定値の再現性を得られない、という問題があった。
これは、車両のステアリング機構におけるヒステリシスやガタによる測定値への影響を考慮しないまま、アライメント測定したことに原因があると考えられる。
すなわち、車両のステアリング機構には、路面からのキックバックに対するステアリン
グの安定性向上のため、通常、ステアリング機構にヒステリシスを持たせており、このヒステリシスやガタがアライメント測定値へ影響すると考えられ、これらに対する配慮は、前記測定値の再現性に不可欠である、
【0004】
また、アライメント調整方法として、アライメントテスタ−によってト−調整量を測定するとともに、スポ−ク角測定装置によって、ステアリングホイ−ルのスポ−クのニュ−トラル位置に対する角度を測定し、次いで車種毎のスポ−ク角変位量とト−調整量との関係から、スポ−クのニュ−トラル位置に対する角度を零にするト−微調整量を割り出し、このト−微調整量を前記ト−調整量に補正し、この補正値に基いてト−を調整する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、前記調整方法は、前述したステアリング機構のヒステリシスやガタの影響を除去しないで測定したト−調整量を基に調整しているため、ト−調整量に再現性がなく、ト−微調整量に精度を欠いて、ト−の調整に信頼性を得られないという問題があった。
【0006】
一方、ト−角調整の信頼性向上のため、ステアリングホイ−ルの中立位置と、車輪の直進走行向きとを合致させる調整を要するが、その調整手段として、ステアリングホイ−ルのスポ−クにスポ−ク角センサを取り付けるとともに、車輪にト−角センサを取り付け、これらのセンサ信号を記憶するとともに、ステアリングホイ−ルをその遊びの角度以上に右または左に切り、次にステアリングホイ−ルを前記と逆方向に切って、ステアリングホイ−ルの遊びの角度を計測し、この遊びの角度を使用してト−角の補正値を算出し、この補正値によってト−角を調整するようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかし、前記調整方法のト−角センサによるト−角の測定は、ステアリング機構のヒステリシスやガタの影響を配慮しないで、パッドを車輪の両側面に押し当て、その傾き角度を測定するため、ト−角にはステアリング機構のヒステリシスやガタの影響が含まれ、したがってト−角の測定値に再現性がなく、このト−角を基にした補正値やト−角の調整に信頼性を得られない、という問題があった。
【0008】
また、前記調整方法では、ステアリングホイ−ルの遊びの角度を計測し、この遊びの角度を基にト−角の補正値を算出しているが、近時の自動車はステアリングホイ−ルの遊びが少なく、前記遊びによる調整方法は適用車両を制限するとともに、ト−角測定値の再現性は、一般に前記遊びよりもステアリング機構のヒステリシスによる影響の方が大きいため、前記調整方法の精度には限界があった。
【0009】
【特許文献1】特開2000−121504号公報
【特許文献2】特公平7−121708号公報
【特許文献1】特開平9−240506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような問題を解決し、例えば前輪のト−角測定および調整に好適で、車両のステアリング機構によるヒステリシス情報を基にアライメント測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる、ホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、水平面と平行に回動可能な複数のロ−ラに車輪を載置し、前記車輪のアライメントを測定するホイ−ルアライメント測定方法において、前記車輪に連係するステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動し、前記ステアリングホイ−ルの所定角度回動位置でアライメント測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れるようにしている。
請求項2の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に一方向に所定角度回動後、他方向に所定角度回動してアライメントを測定し、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図り、併せてアライメント調整の利便を図るようにしている。
【0012】
請求項3の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、ステアリング角度零位置に回動してアライメントを測定し、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図るとともに、ステアリングホイ−ルないし車輪を直進走行状態に設定し、アライメント測定とその後の調整を容易かつ合理的に行なえるようにしている。
請求項4の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、動力または人力で回動し、前記ロ−ラを水平面と平行に回動するアライメント測定方法に比べ、容易かつ速やかに行なえるようにしている。
【0013】
請求項5の発明は、車輪を載置可能な複数のロ−ラを水平面と平行に回動可能に設けたホイ−ルアライメント測定装置において、前記車輪に連係するステアリングホイ−ルを、動力または人力を介して、そのステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設け、該ステアリングホイ−ルの前記回動位置でアライメント測定可能にし、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れるとともに、前記ロ−ラを水平面と平行に回動するアライメント測定装置に比べ、小形軽量で容易かつ安価に製作できるようにしている。
【0014】
請求項6の発明は、前記ステアリングホイ−ルに正逆転可能な駆動ロ−ラを係合可能に配置し、前記ステアリングホイ−ルを、前記駆動ロ−ラを介し、ステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設け、人手を煩わせることなくステアリングホイ−ルを回動させ、アライメント測定の自動化を促せるようにしている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、車輪に連係するステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動し、前記ステアリングホイ−ルの所定角度回動位置でアライメント測定するから、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる効果がある。
請求項2の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に一方向に所定角度回動後、他方向に所定角度回動してアライメントを測定するから、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図り、併せてアライメント調整の利便を図ることができる。
【0016】
請求項3の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、ステアリング角度零位置に回動してアライメントを測定するから、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図れるとともに、ステアリングホイ−ルないし車輪を直進走行状態に設定し、アライメント測定とその後の調整を容易かつ合理的に行なうことができる。
請求項4の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、動力または人力で回動するから、前記ロ−ラを水平面と平行に回動するアライメント測定方法に比べ、容易かつ速やかに行なうことができる。
【0017】
請求項5の発明は、車輪に連係するステアリングホイ−ルを、動力または人力を介して、そのステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設け、該ステアリングホイ−ルの前記回動位置でアライメント測定可能にしたから、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れるとともに、前記ロ−ラを水平面と平行に回動するアライメント測定装置に比べ、小形軽量で容易かつ安価に製作することができる。
【0018】
請求項6の発明は、前記ステアリングホイ−ルに正逆転可能な駆動ロ−ラを係合可能に配置し、前記ステアリングホイ−ルを、前記駆動ロ−ラを介し、ステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設けたから、人手を煩わせることなくステアリングホイ−ルを回動でき、アライメント測定の自動化を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を車輪のト−測定方法およびその測定装置に適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図8において1は自動車整備工場の作業床面で、その所定位置にピット2が設けられ、該ピット2内に複数のアライメント測定装置3〜6が設置されている。
【0020】
前記アライメント測定装置3〜6は実質的に同一に構成され、該測定装置3〜6は図1の矢視で示す被検車両の進入方向に沿って前後かつ左右に配置され、これらはピット2の底部に立設した架台7と、該架台7上に設置した機枠8と、該機枠8の上端に架設した作業テ−ブル9と、該テ−ブル9上に図示を省略したボ−ル(鋼球)を介して、回転自在に支持された調整テ−ブル10とを備えている。
【0021】
前記調整テ−ブル10の下面に、作業テ−ブル9を貫通して支軸11が突設され、該支軸11は回転駆動手段に連係していて、該支軸11に装着した電磁クラッチ12の作動を介して、回転駆動力を断続可能にされ、かつ調整テ−ブル10の作動は、ロックシリンダ(図示略)のロック作動によって、作動を拘束可能にされている。
すなわち、前記ロックシリンダは、車両の入退場時と、各車輪のアライメント調整時にロック作動し、各調整テ−ブル10を定位置に拘束可能にし、一方、車両のセンタリング時、各車輪のアライメント測定時に前記ロックシリンダのロック作動を解除し、各調整テ−ブル10を揺動可能にしている。
【0022】
前記支軸11の上端部は前記調整テ−ブル10に連結され、該支軸11の上端部周面が前記ボ−ル(鋼球)を介して、回転自在に支持されている。
前記調整テ−ブル10にガイドレ−ル13が固定され、該ガイドレ−ル13にスライドガイド14が摺動可能に嵌合している。前記スライドガイド14は第1可動テ−ブル15の下面に固定され、その上面にガイドレ−ル16が固定されている。
前記ガイドレ−ル16はガイドレ−ル13と直交配置され、該ガイドレ−ル16にスライドガイド17が摺動可能に嵌合している。前記スライドガイド17は第2可動テ−ブル18の下面に固定され、該スライドガイド17に左右一対のロ−ラフレ−ム19が固定されている。
【0023】
前記ロ−ラフレ−ム19,19は、水平面と平行な平面を回動可能にされ、その回動中心を前記支軸11と同軸位置に配置していて、その上端部に一対のロ−ラ20が回転可能に支持されている。
前記ロ−ラ20,20上に車両の前後輪21,22が回転可能に支持され、このうち一方のロ−ラ20に駆動モ−タが内蔵されていて、該モ−タの作動を後述の制御装置で制御している。
【0024】
前記ロ−ラフレ−ム19の片側の上端部にロ−ラ23が回転自在に支持され、これが前後輪21,22の側面に係合可能に配置されており、24は前後輪21,22の他側面に近接かつ係合可能に配置した押圧ロ−ラで、前後輪21,22のセンタリング時に作動可能にされ、その作動を後述の制御装置で制御している。
【0025】
図中、25は前記ロ−ラ20の近接位置に配置した係合ロ−ラで、前後輪21,22の回転時における脱出を防止可能にされ、26は前記アライメント測定装置3〜6の外側に配置したアライメンテスタで、実施形態の場合、距離測定手段である超音波センサ27が等角度位置に配置され、該センサ27から前後輪21,22の側面に向けて超音波を発射し、その距離信号を後述の制御装置へ入力可能にしている。
【0026】
図中、28は被検車両のステアリングホイ−ルで、そのT字形状のスポ−ク29にアライメント測定時、固定具30,30を介してステアリング傾斜角度検出冶具31が取り付けられている。
このうち、一方の固定具30は伸縮杆32,32を介して外側へ移動可能に連結され、該杆32,32にセットスプリング33が介挿され、該スプリング33の弾性を介して外側へ付勢され、ステアリングホイ−ル28を押圧している。
図中、34は前記冶具31に設けたステアリング傾斜角度検出センサで、その検出信号を無線または有線によって、マイクロコンピュ−タ等の制御装置35へ入力可能にしている。
【0027】
一方、アライメント測定時、前席シ−ト36とステアリングホイ−ル28との間にステアリング自動操舵冶具37が取り付けられている。
前記ステアリング自動操舵冶具37は、前席シ−ト36の前端部に係合可能な略L字形断面の取付ステ−38を備え、該ステ−38に一対の支持杆39が斜め上向きに突設されている。
前記支持杆39に一対のバネ受40,41が設けられ、このうち一方のバネ受40が支持杆39の基部側に固定され、他方のバネ受41が支持杆39に摺動可能に取り付けられている。
【0028】
前記他方のバネ受41,41が連結板42で連結され、該連結板42の内側に駆動モ−タ43が設置され、連結板42の外側に支持枠44が固定されている。
前記支持枠44にブラケット45が前方に突設され、該ブラケット45に駆動ロ−ラ46が回転可能に支持されている。前記駆動ロ−ラ46は駆動モ−タ43に連係して回転駆動可能にされ、その外周部の周溝をステアリングホイ−ル28のリム28aの周面に係合可能に配置している。
【0029】
前記支持枠44の両端部に支持腕47が斜め内側に突設され、該支持腕47の先端部にブラケット48を介してガイドロ−ラ49が回転自在に支持され、その周溝をステアリングホイ−ル28のリム28aの周面に係合可能に配置している。
【0030】
図中、50はバネ受40,41の間に介挿したスプリングで、その弾性を介してバネ受41、支持枠44および支持腕47を前方へ付勢している。51は支持杆39の前部に挿入した管状のカラ−で、一端が連結板42に係合し、その他端の螺軸端部にナット52をねじ込んで、支持杆39上の連結板42の位置を調整可能にし、これに支持枠44ないし支持腕47を同動可能にしている。
【0031】
前記制御装置35には図1および図5に示すように、前記駆動モ−タ43に対する作動制御信号と、ステアリング傾斜角度検出センサ34よる検出角度信号と、ロ−ラ20の駆動用モ−タに対する作動制御信号とを入力または出力可能にされ、また被検車両の前後輪21,22、実施形態では前輪21に関するヒステリシス位置情報、つまりロ−ラフレ−ム19の設定回転角度情報と、ト−値等のアライメント演算情報等が記憶され、これらを基にアライメント測定を実行可能にしている。
【0032】
前記ヒステリシス位置情報は、各種被検車両の車輪のヒステリシス位置に関する実験デ−タを基に構成され、該実験デ−タは、各種車両の車輪のヒステリシス位置を、水平面上における回転方向と回転角度とで特定し、ロ−ラフレ−ム19に対する設定回転角度を、前記実験デ−タの回転角度と同等かそれ以上に設定している。
実施形態では設定回転角度を5°〜10°に設定していて、ロ−ラフレ−ム19ないし前輪21を前記設定角度回転させ、被検車両の車輪のヒステリシス位置を、前記情報のヒステリシス位置と同位置に形成可能にしている。
【0033】
この場合、前記ステアリングホイ−ル28の回転方向に優先順位は無く、何れかの方向へ回転後、反対方向へ復動回転すれば良く、その復動位置は必ずしもステアリング傾斜角度0°位置、つまりステアリングホイ−ル28の直進位置に拘束されない。
ただ、前輪21をステアリング傾斜角度0°位置に復帰すれば、アライメント測定後のアライメント調整を速やかに行なえる。
【0034】
なお、被検車両の車輪のヒステリシス位置を、ヒステリシス位置情報と同位置に形成する代わりに、ヒステリシスが小さい場合は、ヒステリシスの中間位置、例えば1/2相当の角度に形成することも可能であり、そのようにすることでヒステリシスの形成を合理的かつ速やかに行なえる。
【0035】
なお、ステアリングホイ−ル28はアライメント測定時、適宜手段によって固定され、車輪21,22の方向ないし立位姿勢を拘束するようにしている。この拘束手段として、例えば伸縮ロッド53の一端のステ−54を、ステアリングホイ−ル28のリム28aに掛け止め、その他端を車室の天井部55に係合している。
【0036】
本発明のホイ−ルアライメント測定方法は、被検車両を試験場に入場し、その前輪21を各ロ−ラフレ−ム19上のロ−ラ20上に乗り込ませ、前輪21をアライメントテスタ−3〜6に略正対させた後、図6に示す手順で行なわれる。
先ず、ステアリングホイ−ル28にステアリング傾斜角度検出冶具31を取り付け、その取り付け時のステアリング傾斜角度をステアリング傾斜角度検出センサ34で検出し、その検出信号を制御装置35へ無線または有線で入力する。
【0037】
次に、ステアリング自動操舵冶具31の駆動モ−タ43を駆動し、ヒステリシス位置情報の設定回転角度情報を基に、ステアリングホイ−ル28を設定角度回転し、ヒステリシス位置情報におけるヒステリシス位置と同位置に前輪21のヒステリシスを形成する。
実施形態では、ステアリングホイ−ル28を前記設定回転角度と同等かそれ以上の5°〜10°回動させている。
【0038】
そして、前輪21のヒステリシスを形成後、駆動モ−タ43を逆転駆動し、これに駆動ロ−ラ46を駆動してステアリングホイ−ル28を逆転させ、ステアリング傾斜角度を0°、つまり前輪21の直進方向、または設定傾斜角度に位置付けている。
【0039】
この後、ロ−ラ20の一方を駆動し、前輪21を回転するとともに、アライメントテスタ26を作動し、超音波センサ27から前輪21の側面に向けて超音波を発射し、その距離信号を制御装置35へ入力し、そのデ−タを演算して所定のアライメント値を得る。
【0040】
このように構成したホイ−ルアライメント測定装置は、大別すると、ステアリングホイ−ル28に取り付けるステアリング傾斜角度検出冶具31と、ステアリングホイ−ル28を所定角度回転するステアリング自動操舵冶具37とを要し、これらは構成が比較的簡単であるから、これを容易かつ安価に製作できる。
【0041】
次に、前記本発明装置を使用して、被検車両のホイ−ルアライメントを測定する場合は、予め被検車両の前輪21に関するヒステリシス位置情報、つまりステアリングホイ−ル28の設定回転角度情報を制御装置35に入力する。
前記ヒステリシス位置情報は、各種被検車両の車輪のヒステリシス位置に関する実験デ−タを基に作成され、該情報は前記車輪のヒステリシス位置を特定する、車輪の測定平面上における回転方向と、その回転角度とからなっている。
【0042】
前記設定回転角度は、前記実験デ−タの回転角度と同等かそれ以上に設定され、実施形態では5°〜10°に設定されていて、ステアリングホイ−ル28ないし前輪21を同角度回転し、被検車両の前輪21のヒステリシス位置を、前記情報と同位置に確実に形成可能にしている。
【0043】
この場合、ステアリングホイ−ル28ないし前輪21の回転方向は左または右方向の何れでも良く、その何れかの方向へステアリングホイ−ル28を設定回転角度分回動後、反対方向へ復動回動すれば良く、またその復動位置は必ずしもステアリング傾斜角度0°位置、つまりステアリングホイ−ル28の直進位置に拘束されない。
ただ、前後輪34,35をステアリング傾斜角度0°位置に復帰することによって、アライメント測定後にアライメント調整を速やかに行なえる。
【0044】
なお、被検車両の車輪のヒステリシス位置を、ヒステリシス位置情報と同位置に形成する代わりに、ヒステリシスが小さい場合は、ヒステリシスの中間位置、例えば1/2相当の角度に形成することも可能であり、そのようにすることでヒステリシスの形成を合理的かつ速やかに行なえる。
【0045】
そこで、実際にアライメントを測定する場合は、ロックシリンダ(図示略)をロック作動し、各調整テ−ブル10およびロ−ラフレ−ム19を定位置に拘束して、被検車両を試験場に入場し、その前後輪21,22を各ロ−ラ20上に乗り込ませ、これをアライメントテスタ−3〜6に略正対させた後、図6に示す手順で行なう。
【0046】
先ず、ステアリングホイ−ル28にステアリング傾斜角度検出冶具43を取り付ける。
前記冶具43の取り付けは、固定具30,30をステアリングホイ−ル28のリム28aに掛け止め、かつ一方の固定具30をスプリング33の弾性を介して外側へ付勢し、リム28aに押し付けて行なう。
【0047】
前記ステアリング傾斜角度検出冶具43の取り付け後、ステアリング傾斜角度をステアリング傾斜角度検出センサ34で検出し、その検出信号を制御装置35へ無線または有線で入力する。前記検出センサ34の検出信号によって、ロ−ラ20,20上の前後輪21,22の乗り込み姿勢の適否を確認し、不適切な場合は修正する。
【0048】
前記検出冶具43の取り付け後、ステアリング自動操舵装置37を取り付ける。
前記操舵装置37の取り付けは、取付ステ−38を前席シ−ト36の前端部に押し当て、支持枠44と支持椀47とを、スプリング50の弾性に抗して取付ステ−38側へ押し戻す。
そして、駆動ロ−ラ46とガイドロ−ラ49の周溝をステアリングホイ−ル28のリム28aの外面に係合し、前記周溝をスプリング50の弾性によってリム28aの外面に押し付けて行なう。
【0049】
この後、ロックシリンダ(図示略)のロック作動を解除し、各調整テ−ブル10およびロ−ラフレ−ム19を揺動可能に設定する。そして、前記自動操舵装置37の駆動モ−タ43を始動し、これに連係する駆動ロ−ラ46を駆動回転する。
このため、駆動ロ−ラ46とリム28aとの摩擦によって、ステアリングホイ−ル28が駆動ロ−ラ46と反対方向へ回動し、これにガイドロ−ラ49が従動して、ステアリングホイ−ル28が安定して回動する。
【0050】
こうして、ステアリングホイ−ル28が回動すると、その回動変位がステアリング機構に伝達され、ステアリング機構に連係する前車軸(図示略)が前記角度分変位し、これに前輪21が同動変位する。
この後、駆動モ−タ43を所定角度回動し、ステアリングホイ−ル28をヒステリシス情報の設定回転角度分回動すると、ステアリング機構を介して前輪21が前述のように所定角度変位する。実施形態ではステアリングホイ−ル28を5°〜10°回動し、前輪21のヒステリシスを前記情報と同位置に形成する。
【0051】
前記前輪21のヒステリシスを形成後、駆動モ−タ43を逆転駆動し、駆動ロ−ラ46を逆転駆動させて、ステアリングホイ−ル28を逆転し、ステアリング機構を介し前輪21を逆方向へ角度変位させる。
実施形態では、ステアリングホイ−ル28をステアリング傾斜角度0°、つまり前輪21の直進方向に回動して前記ヒステリシスを除去し、または反対方向へ設定傾斜角度位置に回動する。
【0052】
このように、ステアリングホイ−ル28を一側方向へ回動し、前記ヒステリシスを図8のヒステリシスル−プにおいて片側に寄せた後、他側方向へ回動して、ステアリング傾斜角度0°、つまり前輪21の直進方向位置に戻せば、この後のアライメント測定を容易に行えるとともに、この後のアライメント調整を安全かつ安定して行なえる。
【0053】
この後、伸縮ロッド49の一端をステアリングホイ−ル41に掛け止め、この他端を車室の天井部50に係合して、ステアリングホイ−ル41を固定し、前後輪34,35の変位を拘束する。
そして、ロ−ラ20の一方を駆動し、前輪21を回転するとともに、アライメントテスタ3,4を作動し、超音波センサ27から前輪21の側面に向けて超音波を発射し、その距離信号を制御装置35へ入力し、そのデ−タを演算して所定のアライメント値を得る。
【0054】
実施形態では、ステアリング自動操舵装置37によって、ステアリングホイ−ル28をヒステリシス情報の設定回転角度分、例えば左方向へ回動後、ステアリング傾斜角度0°へ戻して前輪21のト−角を測定し、この後、ステアリングホイ−ル28を右方向へ回動し、ステアリング傾斜角度0°へ戻して前輪21のト−角を測定した。
【0055】
この場合、前輪21をステアリング傾斜角度0°へ戻すことなく、ヒステリシスの形成状態、つまりステアリング傾斜角度最大位置で、アライメントを測定することも可能である。
その場合のト−値は図8のように、ステアリング傾斜角度最大位置の方が傾斜角度0°より若干大きいが、その差は僅少であるから、本発明の測定方法によるアライメント測定値のバラツキや再現性に支障を来たさない。
【0056】
発明者は、前記測定方法の効果を確認するため、次のような効果実験をした。すなわち、4種類の被検車両について、前輪21の左右輪をロ−ラ20,20上に載せ、ステアリング自動操舵装置37を介し、ステアリングホイ−ル28を左方向および/または右方向に約90°回動後、ステアリング傾斜角度0°の中央方向へ復動回動してト−値を測定した。
【0057】
一方、ヒステリシス等の影響を考慮しない、従来の測定法によってト−値を測定し、これらのト−値を比較したところ、本発明の測定方法によるト−値の標準偏差(3σ)は、従来の測定法によるト−値の標準偏差に比べ約1/3〜1/2で、左右輪の測定値のバラツキが非常に小さく、安定し、測定値の再現性が向上することが確認された。
【0058】
また、この実験では、ステアリングホイ−ル28を左方向に回動後、その傾斜角度0°に戻して測定したト−値と、ステアリングホイ−ル28を右方向に回動後、その傾斜角度0°に戻して測定したト−値とでは、若干のバラツキはあるが、それは0.1〜0.4の標準偏差で、許容範囲内にあると思われる。
更に、本発明の測定方法による前輪21の左右輪の測定値の傾向、つまり左右輪の測定値の大小関係は、従来の測定法の傾向と同様に同程度に現れることが確認された。
【0059】
このように本発明は、ステアリング自動操舵装置37によって、被検車両のステアリング機構のヒステリシス情報を基に、ステアリングホイ−ル28を左方向に回動し、該ホイ−ル操作者の技能や癖の影響を排除し、前記情報と同位置にヒステリシスを形成してアライメントを測定するため、ヒステリシスによるアライメント測定値への影響を捨象した従来のアライメント測定法に比べ、実際の車輪のアライメント状態に合致し、正確なアライメント情報を得られる。
しかも、車両の実態に合致したヒステリシスによって測定値のバラツキが低減し、その再現性が得られるから、測定値の信頼性が向上し、前記測定値に基づくアライメント調整の信頼性を得られる。
【0060】
また、本発明の測定方法に使用するステアリング自動操舵装置37は、可搬かつコンパクトで低廉であり、その測定法も容易であるから、実用的な利点がある。
【0061】
図9乃至図11は本発明の他の実施形態を示し、前述の構成と対応する部分に同一の符号を用いている。
この実施形態は、ステアリング自動操舵装置37によって、ステアリングホイ−ル28を回転操作する代わりに、作業者が車両に乗り込んで人力によって回転操作する。
この場合のアライメント測定手順は図11のようで、ステアリングホイ−ル28を左右へ所定角度、実施形態では5°回動し、その際の操舵角度と前輪21のト−値を測定して、それらをサンプリングし、図8のようなヒステリシスル−プを得る。
【0062】
次に、前記ヒステリシスル−プからヒステリシス幅Whを計算し、ステアリングホイ−ル28を一側(右側)から左傾斜角度幅Wh/2に設定し、ステアリング角度を0°にして、図7と同様にステアリングホイ−ル28を固定し、アライメント測定する。
このようにアライメント測定を、ステアリングホイ−ル28のヒステリシス幅Whの1/2位置で行なうことによって、ヒステリシスの影響を軽減し、アライメント測定値のバラツキを低減して、その再現性を向上するようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0063】
このように本発明のホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置は、車両のステアリング機構によるヒステリシス情報を基にアライメント測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れるから、例えば前輪のト−角測定および調整に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の要部を拡大して示す平面図で、ステアリングホイ−ルにステアリング傾斜角度検出治具を取り付け、前席シ−トとステアリングホイ−ルとの間に、ステアリング自動操舵治具を取り付けた状況を示している。
【図5】本発明によるアライメント測定方法の概要を示す説明図である。 適用したステアリング傾斜角度検出冶具と伸縮ロッドの取り付け状態を示す正面図である。
【0065】
【図6】本発明によるアライメント測定手順を示す流れ図である。
【図7】本発明のアライメント測定時におけるステアリングホイ−ルの固定状況を示す説明図である。
【図8】左右の前輪に関するステアリング機構のヒステリシス特性を示すヒステリシス特性曲線である。
【0066】
【図9】本発明の他の実施形態に適用したステアリング傾斜角度検出治具の取り付け状況を示す平面図である。
【図10】前記他の実施形態によるアライメント測定方法の概要を示す説明図である
【図11】前記他の実施形態によるアライメント測定手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0067】
20 ロ−ラ
21 車輪(前輪)
28 ステアリングホイ−ル
46 駆動ロ−ラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば前輪のト−角測定および調整に好適で、車両のステアリング機構によるヒステリシス情報を基にアライメント測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる、ホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のホイ−ルアライメント測定方法ないし測定装置として、作業床面に4台の架台を配置し、該架台に車輪を回転可能に支持する一対のロ−ラを設け、各架台の側方にアライメントテスタ−を設置し、各アライメントテスタ−にレ−ザ−ビ−ムまたは超音波を送出可能な3個の距離センサを等角度位置に配置し、前記ロ−ラに乗り込んだ車輪の側面に押圧ロ−ラを押圧し、車輪をアライメントテスタ−に正対させた後、各ロ−ラを回転して車輪を回転し、距離センサからレ−ザ−ビ−ムまたは超音波を車輪の側面に送出して、距離センサと車輪の側面との距離を測定し、その距離信号を基にホイ−ルのト−値やキャンバ値を演算するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この測定方法は、車輪をアライメントテスタ−に正対させた後、アライメントテスタ−によって直ちに距離測定しているため、測定値の再現性を得られない、という問題があった。
これは、車両のステアリング機構におけるヒステリシスやガタによる測定値への影響を考慮しないまま、アライメント測定したことに原因があると考えられる。
すなわち、車両のステアリング機構には、路面からのキックバックに対するステアリン
グの安定性向上のため、通常、ステアリング機構にヒステリシスを持たせており、このヒステリシスやガタがアライメント測定値へ影響すると考えられ、これらに対する配慮は、前記測定値の再現性に不可欠である、
【0004】
また、アライメント調整方法として、アライメントテスタ−によってト−調整量を測定するとともに、スポ−ク角測定装置によって、ステアリングホイ−ルのスポ−クのニュ−トラル位置に対する角度を測定し、次いで車種毎のスポ−ク角変位量とト−調整量との関係から、スポ−クのニュ−トラル位置に対する角度を零にするト−微調整量を割り出し、このト−微調整量を前記ト−調整量に補正し、この補正値に基いてト−を調整する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、前記調整方法は、前述したステアリング機構のヒステリシスやガタの影響を除去しないで測定したト−調整量を基に調整しているため、ト−調整量に再現性がなく、ト−微調整量に精度を欠いて、ト−の調整に信頼性を得られないという問題があった。
【0006】
一方、ト−角調整の信頼性向上のため、ステアリングホイ−ルの中立位置と、車輪の直進走行向きとを合致させる調整を要するが、その調整手段として、ステアリングホイ−ルのスポ−クにスポ−ク角センサを取り付けるとともに、車輪にト−角センサを取り付け、これらのセンサ信号を記憶するとともに、ステアリングホイ−ルをその遊びの角度以上に右または左に切り、次にステアリングホイ−ルを前記と逆方向に切って、ステアリングホイ−ルの遊びの角度を計測し、この遊びの角度を使用してト−角の補正値を算出し、この補正値によってト−角を調整するようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかし、前記調整方法のト−角センサによるト−角の測定は、ステアリング機構のヒステリシスやガタの影響を配慮しないで、パッドを車輪の両側面に押し当て、その傾き角度を測定するため、ト−角にはステアリング機構のヒステリシスやガタの影響が含まれ、したがってト−角の測定値に再現性がなく、このト−角を基にした補正値やト−角の調整に信頼性を得られない、という問題があった。
【0008】
また、前記調整方法では、ステアリングホイ−ルの遊びの角度を計測し、この遊びの角度を基にト−角の補正値を算出しているが、近時の自動車はステアリングホイ−ルの遊びが少なく、前記遊びによる調整方法は適用車両を制限するとともに、ト−角測定値の再現性は、一般に前記遊びよりもステアリング機構のヒステリシスによる影響の方が大きいため、前記調整方法の精度には限界があった。
【0009】
【特許文献1】特開2000−121504号公報
【特許文献2】特公平7−121708号公報
【特許文献1】特開平9−240506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような問題を解決し、例えば前輪のト−角測定および調整に好適で、車両のステアリング機構によるヒステリシス情報を基にアライメント測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる、ホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、水平面と平行に回動可能な複数のロ−ラに車輪を載置し、前記車輪のアライメントを測定するホイ−ルアライメント測定方法において、前記車輪に連係するステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動し、前記ステアリングホイ−ルの所定角度回動位置でアライメント測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れるようにしている。
請求項2の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に一方向に所定角度回動後、他方向に所定角度回動してアライメントを測定し、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図り、併せてアライメント調整の利便を図るようにしている。
【0012】
請求項3の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、ステアリング角度零位置に回動してアライメントを測定し、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図るとともに、ステアリングホイ−ルないし車輪を直進走行状態に設定し、アライメント測定とその後の調整を容易かつ合理的に行なえるようにしている。
請求項4の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、動力または人力で回動し、前記ロ−ラを水平面と平行に回動するアライメント測定方法に比べ、容易かつ速やかに行なえるようにしている。
【0013】
請求項5の発明は、車輪を載置可能な複数のロ−ラを水平面と平行に回動可能に設けたホイ−ルアライメント測定装置において、前記車輪に連係するステアリングホイ−ルを、動力または人力を介して、そのステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設け、該ステアリングホイ−ルの前記回動位置でアライメント測定可能にし、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れるとともに、前記ロ−ラを水平面と平行に回動するアライメント測定装置に比べ、小形軽量で容易かつ安価に製作できるようにしている。
【0014】
請求項6の発明は、前記ステアリングホイ−ルに正逆転可能な駆動ロ−ラを係合可能に配置し、前記ステアリングホイ−ルを、前記駆動ロ−ラを介し、ステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設け、人手を煩わせることなくステアリングホイ−ルを回動させ、アライメント測定の自動化を促せるようにしている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、車輪に連係するステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動し、前記ステアリングホイ−ルの所定角度回動位置でアライメント測定するから、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れる効果がある。
請求項2の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に一方向に所定角度回動後、他方向に所定角度回動してアライメントを測定するから、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図り、併せてアライメント調整の利便を図ることができる。
【0016】
請求項3の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、ステアリング角度零位置に回動してアライメントを測定するから、測定値のバラツキの低減と、測定値の再現性の向上を図れるとともに、ステアリングホイ−ルないし車輪を直進走行状態に設定し、アライメント測定とその後の調整を容易かつ合理的に行なうことができる。
請求項4の発明は、前記ステアリングホイ−ルを、動力または人力で回動するから、前記ロ−ラを水平面と平行に回動するアライメント測定方法に比べ、容易かつ速やかに行なうことができる。
【0017】
請求項5の発明は、車輪に連係するステアリングホイ−ルを、動力または人力を介して、そのステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設け、該ステアリングホイ−ルの前記回動位置でアライメント測定可能にしたから、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れるとともに、前記ロ−ラを水平面と平行に回動するアライメント測定装置に比べ、小形軽量で容易かつ安価に製作することができる。
【0018】
請求項6の発明は、前記ステアリングホイ−ルに正逆転可能な駆動ロ−ラを係合可能に配置し、前記ステアリングホイ−ルを、前記駆動ロ−ラを介し、ステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設けたから、人手を煩わせることなくステアリングホイ−ルを回動でき、アライメント測定の自動化を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を車輪のト−測定方法およびその測定装置に適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図8において1は自動車整備工場の作業床面で、その所定位置にピット2が設けられ、該ピット2内に複数のアライメント測定装置3〜6が設置されている。
【0020】
前記アライメント測定装置3〜6は実質的に同一に構成され、該測定装置3〜6は図1の矢視で示す被検車両の進入方向に沿って前後かつ左右に配置され、これらはピット2の底部に立設した架台7と、該架台7上に設置した機枠8と、該機枠8の上端に架設した作業テ−ブル9と、該テ−ブル9上に図示を省略したボ−ル(鋼球)を介して、回転自在に支持された調整テ−ブル10とを備えている。
【0021】
前記調整テ−ブル10の下面に、作業テ−ブル9を貫通して支軸11が突設され、該支軸11は回転駆動手段に連係していて、該支軸11に装着した電磁クラッチ12の作動を介して、回転駆動力を断続可能にされ、かつ調整テ−ブル10の作動は、ロックシリンダ(図示略)のロック作動によって、作動を拘束可能にされている。
すなわち、前記ロックシリンダは、車両の入退場時と、各車輪のアライメント調整時にロック作動し、各調整テ−ブル10を定位置に拘束可能にし、一方、車両のセンタリング時、各車輪のアライメント測定時に前記ロックシリンダのロック作動を解除し、各調整テ−ブル10を揺動可能にしている。
【0022】
前記支軸11の上端部は前記調整テ−ブル10に連結され、該支軸11の上端部周面が前記ボ−ル(鋼球)を介して、回転自在に支持されている。
前記調整テ−ブル10にガイドレ−ル13が固定され、該ガイドレ−ル13にスライドガイド14が摺動可能に嵌合している。前記スライドガイド14は第1可動テ−ブル15の下面に固定され、その上面にガイドレ−ル16が固定されている。
前記ガイドレ−ル16はガイドレ−ル13と直交配置され、該ガイドレ−ル16にスライドガイド17が摺動可能に嵌合している。前記スライドガイド17は第2可動テ−ブル18の下面に固定され、該スライドガイド17に左右一対のロ−ラフレ−ム19が固定されている。
【0023】
前記ロ−ラフレ−ム19,19は、水平面と平行な平面を回動可能にされ、その回動中心を前記支軸11と同軸位置に配置していて、その上端部に一対のロ−ラ20が回転可能に支持されている。
前記ロ−ラ20,20上に車両の前後輪21,22が回転可能に支持され、このうち一方のロ−ラ20に駆動モ−タが内蔵されていて、該モ−タの作動を後述の制御装置で制御している。
【0024】
前記ロ−ラフレ−ム19の片側の上端部にロ−ラ23が回転自在に支持され、これが前後輪21,22の側面に係合可能に配置されており、24は前後輪21,22の他側面に近接かつ係合可能に配置した押圧ロ−ラで、前後輪21,22のセンタリング時に作動可能にされ、その作動を後述の制御装置で制御している。
【0025】
図中、25は前記ロ−ラ20の近接位置に配置した係合ロ−ラで、前後輪21,22の回転時における脱出を防止可能にされ、26は前記アライメント測定装置3〜6の外側に配置したアライメンテスタで、実施形態の場合、距離測定手段である超音波センサ27が等角度位置に配置され、該センサ27から前後輪21,22の側面に向けて超音波を発射し、その距離信号を後述の制御装置へ入力可能にしている。
【0026】
図中、28は被検車両のステアリングホイ−ルで、そのT字形状のスポ−ク29にアライメント測定時、固定具30,30を介してステアリング傾斜角度検出冶具31が取り付けられている。
このうち、一方の固定具30は伸縮杆32,32を介して外側へ移動可能に連結され、該杆32,32にセットスプリング33が介挿され、該スプリング33の弾性を介して外側へ付勢され、ステアリングホイ−ル28を押圧している。
図中、34は前記冶具31に設けたステアリング傾斜角度検出センサで、その検出信号を無線または有線によって、マイクロコンピュ−タ等の制御装置35へ入力可能にしている。
【0027】
一方、アライメント測定時、前席シ−ト36とステアリングホイ−ル28との間にステアリング自動操舵冶具37が取り付けられている。
前記ステアリング自動操舵冶具37は、前席シ−ト36の前端部に係合可能な略L字形断面の取付ステ−38を備え、該ステ−38に一対の支持杆39が斜め上向きに突設されている。
前記支持杆39に一対のバネ受40,41が設けられ、このうち一方のバネ受40が支持杆39の基部側に固定され、他方のバネ受41が支持杆39に摺動可能に取り付けられている。
【0028】
前記他方のバネ受41,41が連結板42で連結され、該連結板42の内側に駆動モ−タ43が設置され、連結板42の外側に支持枠44が固定されている。
前記支持枠44にブラケット45が前方に突設され、該ブラケット45に駆動ロ−ラ46が回転可能に支持されている。前記駆動ロ−ラ46は駆動モ−タ43に連係して回転駆動可能にされ、その外周部の周溝をステアリングホイ−ル28のリム28aの周面に係合可能に配置している。
【0029】
前記支持枠44の両端部に支持腕47が斜め内側に突設され、該支持腕47の先端部にブラケット48を介してガイドロ−ラ49が回転自在に支持され、その周溝をステアリングホイ−ル28のリム28aの周面に係合可能に配置している。
【0030】
図中、50はバネ受40,41の間に介挿したスプリングで、その弾性を介してバネ受41、支持枠44および支持腕47を前方へ付勢している。51は支持杆39の前部に挿入した管状のカラ−で、一端が連結板42に係合し、その他端の螺軸端部にナット52をねじ込んで、支持杆39上の連結板42の位置を調整可能にし、これに支持枠44ないし支持腕47を同動可能にしている。
【0031】
前記制御装置35には図1および図5に示すように、前記駆動モ−タ43に対する作動制御信号と、ステアリング傾斜角度検出センサ34よる検出角度信号と、ロ−ラ20の駆動用モ−タに対する作動制御信号とを入力または出力可能にされ、また被検車両の前後輪21,22、実施形態では前輪21に関するヒステリシス位置情報、つまりロ−ラフレ−ム19の設定回転角度情報と、ト−値等のアライメント演算情報等が記憶され、これらを基にアライメント測定を実行可能にしている。
【0032】
前記ヒステリシス位置情報は、各種被検車両の車輪のヒステリシス位置に関する実験デ−タを基に構成され、該実験デ−タは、各種車両の車輪のヒステリシス位置を、水平面上における回転方向と回転角度とで特定し、ロ−ラフレ−ム19に対する設定回転角度を、前記実験デ−タの回転角度と同等かそれ以上に設定している。
実施形態では設定回転角度を5°〜10°に設定していて、ロ−ラフレ−ム19ないし前輪21を前記設定角度回転させ、被検車両の車輪のヒステリシス位置を、前記情報のヒステリシス位置と同位置に形成可能にしている。
【0033】
この場合、前記ステアリングホイ−ル28の回転方向に優先順位は無く、何れかの方向へ回転後、反対方向へ復動回転すれば良く、その復動位置は必ずしもステアリング傾斜角度0°位置、つまりステアリングホイ−ル28の直進位置に拘束されない。
ただ、前輪21をステアリング傾斜角度0°位置に復帰すれば、アライメント測定後のアライメント調整を速やかに行なえる。
【0034】
なお、被検車両の車輪のヒステリシス位置を、ヒステリシス位置情報と同位置に形成する代わりに、ヒステリシスが小さい場合は、ヒステリシスの中間位置、例えば1/2相当の角度に形成することも可能であり、そのようにすることでヒステリシスの形成を合理的かつ速やかに行なえる。
【0035】
なお、ステアリングホイ−ル28はアライメント測定時、適宜手段によって固定され、車輪21,22の方向ないし立位姿勢を拘束するようにしている。この拘束手段として、例えば伸縮ロッド53の一端のステ−54を、ステアリングホイ−ル28のリム28aに掛け止め、その他端を車室の天井部55に係合している。
【0036】
本発明のホイ−ルアライメント測定方法は、被検車両を試験場に入場し、その前輪21を各ロ−ラフレ−ム19上のロ−ラ20上に乗り込ませ、前輪21をアライメントテスタ−3〜6に略正対させた後、図6に示す手順で行なわれる。
先ず、ステアリングホイ−ル28にステアリング傾斜角度検出冶具31を取り付け、その取り付け時のステアリング傾斜角度をステアリング傾斜角度検出センサ34で検出し、その検出信号を制御装置35へ無線または有線で入力する。
【0037】
次に、ステアリング自動操舵冶具31の駆動モ−タ43を駆動し、ヒステリシス位置情報の設定回転角度情報を基に、ステアリングホイ−ル28を設定角度回転し、ヒステリシス位置情報におけるヒステリシス位置と同位置に前輪21のヒステリシスを形成する。
実施形態では、ステアリングホイ−ル28を前記設定回転角度と同等かそれ以上の5°〜10°回動させている。
【0038】
そして、前輪21のヒステリシスを形成後、駆動モ−タ43を逆転駆動し、これに駆動ロ−ラ46を駆動してステアリングホイ−ル28を逆転させ、ステアリング傾斜角度を0°、つまり前輪21の直進方向、または設定傾斜角度に位置付けている。
【0039】
この後、ロ−ラ20の一方を駆動し、前輪21を回転するとともに、アライメントテスタ26を作動し、超音波センサ27から前輪21の側面に向けて超音波を発射し、その距離信号を制御装置35へ入力し、そのデ−タを演算して所定のアライメント値を得る。
【0040】
このように構成したホイ−ルアライメント測定装置は、大別すると、ステアリングホイ−ル28に取り付けるステアリング傾斜角度検出冶具31と、ステアリングホイ−ル28を所定角度回転するステアリング自動操舵冶具37とを要し、これらは構成が比較的簡単であるから、これを容易かつ安価に製作できる。
【0041】
次に、前記本発明装置を使用して、被検車両のホイ−ルアライメントを測定する場合は、予め被検車両の前輪21に関するヒステリシス位置情報、つまりステアリングホイ−ル28の設定回転角度情報を制御装置35に入力する。
前記ヒステリシス位置情報は、各種被検車両の車輪のヒステリシス位置に関する実験デ−タを基に作成され、該情報は前記車輪のヒステリシス位置を特定する、車輪の測定平面上における回転方向と、その回転角度とからなっている。
【0042】
前記設定回転角度は、前記実験デ−タの回転角度と同等かそれ以上に設定され、実施形態では5°〜10°に設定されていて、ステアリングホイ−ル28ないし前輪21を同角度回転し、被検車両の前輪21のヒステリシス位置を、前記情報と同位置に確実に形成可能にしている。
【0043】
この場合、ステアリングホイ−ル28ないし前輪21の回転方向は左または右方向の何れでも良く、その何れかの方向へステアリングホイ−ル28を設定回転角度分回動後、反対方向へ復動回動すれば良く、またその復動位置は必ずしもステアリング傾斜角度0°位置、つまりステアリングホイ−ル28の直進位置に拘束されない。
ただ、前後輪34,35をステアリング傾斜角度0°位置に復帰することによって、アライメント測定後にアライメント調整を速やかに行なえる。
【0044】
なお、被検車両の車輪のヒステリシス位置を、ヒステリシス位置情報と同位置に形成する代わりに、ヒステリシスが小さい場合は、ヒステリシスの中間位置、例えば1/2相当の角度に形成することも可能であり、そのようにすることでヒステリシスの形成を合理的かつ速やかに行なえる。
【0045】
そこで、実際にアライメントを測定する場合は、ロックシリンダ(図示略)をロック作動し、各調整テ−ブル10およびロ−ラフレ−ム19を定位置に拘束して、被検車両を試験場に入場し、その前後輪21,22を各ロ−ラ20上に乗り込ませ、これをアライメントテスタ−3〜6に略正対させた後、図6に示す手順で行なう。
【0046】
先ず、ステアリングホイ−ル28にステアリング傾斜角度検出冶具43を取り付ける。
前記冶具43の取り付けは、固定具30,30をステアリングホイ−ル28のリム28aに掛け止め、かつ一方の固定具30をスプリング33の弾性を介して外側へ付勢し、リム28aに押し付けて行なう。
【0047】
前記ステアリング傾斜角度検出冶具43の取り付け後、ステアリング傾斜角度をステアリング傾斜角度検出センサ34で検出し、その検出信号を制御装置35へ無線または有線で入力する。前記検出センサ34の検出信号によって、ロ−ラ20,20上の前後輪21,22の乗り込み姿勢の適否を確認し、不適切な場合は修正する。
【0048】
前記検出冶具43の取り付け後、ステアリング自動操舵装置37を取り付ける。
前記操舵装置37の取り付けは、取付ステ−38を前席シ−ト36の前端部に押し当て、支持枠44と支持椀47とを、スプリング50の弾性に抗して取付ステ−38側へ押し戻す。
そして、駆動ロ−ラ46とガイドロ−ラ49の周溝をステアリングホイ−ル28のリム28aの外面に係合し、前記周溝をスプリング50の弾性によってリム28aの外面に押し付けて行なう。
【0049】
この後、ロックシリンダ(図示略)のロック作動を解除し、各調整テ−ブル10およびロ−ラフレ−ム19を揺動可能に設定する。そして、前記自動操舵装置37の駆動モ−タ43を始動し、これに連係する駆動ロ−ラ46を駆動回転する。
このため、駆動ロ−ラ46とリム28aとの摩擦によって、ステアリングホイ−ル28が駆動ロ−ラ46と反対方向へ回動し、これにガイドロ−ラ49が従動して、ステアリングホイ−ル28が安定して回動する。
【0050】
こうして、ステアリングホイ−ル28が回動すると、その回動変位がステアリング機構に伝達され、ステアリング機構に連係する前車軸(図示略)が前記角度分変位し、これに前輪21が同動変位する。
この後、駆動モ−タ43を所定角度回動し、ステアリングホイ−ル28をヒステリシス情報の設定回転角度分回動すると、ステアリング機構を介して前輪21が前述のように所定角度変位する。実施形態ではステアリングホイ−ル28を5°〜10°回動し、前輪21のヒステリシスを前記情報と同位置に形成する。
【0051】
前記前輪21のヒステリシスを形成後、駆動モ−タ43を逆転駆動し、駆動ロ−ラ46を逆転駆動させて、ステアリングホイ−ル28を逆転し、ステアリング機構を介し前輪21を逆方向へ角度変位させる。
実施形態では、ステアリングホイ−ル28をステアリング傾斜角度0°、つまり前輪21の直進方向に回動して前記ヒステリシスを除去し、または反対方向へ設定傾斜角度位置に回動する。
【0052】
このように、ステアリングホイ−ル28を一側方向へ回動し、前記ヒステリシスを図8のヒステリシスル−プにおいて片側に寄せた後、他側方向へ回動して、ステアリング傾斜角度0°、つまり前輪21の直進方向位置に戻せば、この後のアライメント測定を容易に行えるとともに、この後のアライメント調整を安全かつ安定して行なえる。
【0053】
この後、伸縮ロッド49の一端をステアリングホイ−ル41に掛け止め、この他端を車室の天井部50に係合して、ステアリングホイ−ル41を固定し、前後輪34,35の変位を拘束する。
そして、ロ−ラ20の一方を駆動し、前輪21を回転するとともに、アライメントテスタ3,4を作動し、超音波センサ27から前輪21の側面に向けて超音波を発射し、その距離信号を制御装置35へ入力し、そのデ−タを演算して所定のアライメント値を得る。
【0054】
実施形態では、ステアリング自動操舵装置37によって、ステアリングホイ−ル28をヒステリシス情報の設定回転角度分、例えば左方向へ回動後、ステアリング傾斜角度0°へ戻して前輪21のト−角を測定し、この後、ステアリングホイ−ル28を右方向へ回動し、ステアリング傾斜角度0°へ戻して前輪21のト−角を測定した。
【0055】
この場合、前輪21をステアリング傾斜角度0°へ戻すことなく、ヒステリシスの形成状態、つまりステアリング傾斜角度最大位置で、アライメントを測定することも可能である。
その場合のト−値は図8のように、ステアリング傾斜角度最大位置の方が傾斜角度0°より若干大きいが、その差は僅少であるから、本発明の測定方法によるアライメント測定値のバラツキや再現性に支障を来たさない。
【0056】
発明者は、前記測定方法の効果を確認するため、次のような効果実験をした。すなわち、4種類の被検車両について、前輪21の左右輪をロ−ラ20,20上に載せ、ステアリング自動操舵装置37を介し、ステアリングホイ−ル28を左方向および/または右方向に約90°回動後、ステアリング傾斜角度0°の中央方向へ復動回動してト−値を測定した。
【0057】
一方、ヒステリシス等の影響を考慮しない、従来の測定法によってト−値を測定し、これらのト−値を比較したところ、本発明の測定方法によるト−値の標準偏差(3σ)は、従来の測定法によるト−値の標準偏差に比べ約1/3〜1/2で、左右輪の測定値のバラツキが非常に小さく、安定し、測定値の再現性が向上することが確認された。
【0058】
また、この実験では、ステアリングホイ−ル28を左方向に回動後、その傾斜角度0°に戻して測定したト−値と、ステアリングホイ−ル28を右方向に回動後、その傾斜角度0°に戻して測定したト−値とでは、若干のバラツキはあるが、それは0.1〜0.4の標準偏差で、許容範囲内にあると思われる。
更に、本発明の測定方法による前輪21の左右輪の測定値の傾向、つまり左右輪の測定値の大小関係は、従来の測定法の傾向と同様に同程度に現れることが確認された。
【0059】
このように本発明は、ステアリング自動操舵装置37によって、被検車両のステアリング機構のヒステリシス情報を基に、ステアリングホイ−ル28を左方向に回動し、該ホイ−ル操作者の技能や癖の影響を排除し、前記情報と同位置にヒステリシスを形成してアライメントを測定するため、ヒステリシスによるアライメント測定値への影響を捨象した従来のアライメント測定法に比べ、実際の車輪のアライメント状態に合致し、正確なアライメント情報を得られる。
しかも、車両の実態に合致したヒステリシスによって測定値のバラツキが低減し、その再現性が得られるから、測定値の信頼性が向上し、前記測定値に基づくアライメント調整の信頼性を得られる。
【0060】
また、本発明の測定方法に使用するステアリング自動操舵装置37は、可搬かつコンパクトで低廉であり、その測定法も容易であるから、実用的な利点がある。
【0061】
図9乃至図11は本発明の他の実施形態を示し、前述の構成と対応する部分に同一の符号を用いている。
この実施形態は、ステアリング自動操舵装置37によって、ステアリングホイ−ル28を回転操作する代わりに、作業者が車両に乗り込んで人力によって回転操作する。
この場合のアライメント測定手順は図11のようで、ステアリングホイ−ル28を左右へ所定角度、実施形態では5°回動し、その際の操舵角度と前輪21のト−値を測定して、それらをサンプリングし、図8のようなヒステリシスル−プを得る。
【0062】
次に、前記ヒステリシスル−プからヒステリシス幅Whを計算し、ステアリングホイ−ル28を一側(右側)から左傾斜角度幅Wh/2に設定し、ステアリング角度を0°にして、図7と同様にステアリングホイ−ル28を固定し、アライメント測定する。
このようにアライメント測定を、ステアリングホイ−ル28のヒステリシス幅Whの1/2位置で行なうことによって、ヒステリシスの影響を軽減し、アライメント測定値のバラツキを低減して、その再現性を向上するようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0063】
このように本発明のホイ−ルアライメント測定方法およびその測定装置は、車両のステアリング機構によるヒステリシス情報を基にアライメント測定し、実際のアライメント状態に合致した正確なアライメント情報を得られるとともに、簡単な構成によって測定値のバラツキを低減し、測定値の再現性の向上を図れるから、例えば前輪のト−角測定および調整に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の要部を拡大して示す平面図で、ステアリングホイ−ルにステアリング傾斜角度検出治具を取り付け、前席シ−トとステアリングホイ−ルとの間に、ステアリング自動操舵治具を取り付けた状況を示している。
【図5】本発明によるアライメント測定方法の概要を示す説明図である。 適用したステアリング傾斜角度検出冶具と伸縮ロッドの取り付け状態を示す正面図である。
【0065】
【図6】本発明によるアライメント測定手順を示す流れ図である。
【図7】本発明のアライメント測定時におけるステアリングホイ−ルの固定状況を示す説明図である。
【図8】左右の前輪に関するステアリング機構のヒステリシス特性を示すヒステリシス特性曲線である。
【0066】
【図9】本発明の他の実施形態に適用したステアリング傾斜角度検出治具の取り付け状況を示す平面図である。
【図10】前記他の実施形態によるアライメント測定方法の概要を示す説明図である
【図11】前記他の実施形態によるアライメント測定手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0067】
20 ロ−ラ
21 車輪(前輪)
28 ステアリングホイ−ル
46 駆動ロ−ラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面と平行に回動可能な複数のロ−ラに車輪を載置し、前記車輪のアライメントを測定するホイ−ルアライメント測定方法において、前記車輪に連係するステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動し、前記ステアリングホイ−ルの所定角度回動位置でアライメント測定することを特徴とするホイ−ルアライメント測定方法。
【請求項2】
前記ステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に一方向に所定角度回動後、他方向に所定角度回動してアライメントを測定する請求項1記載のホイ−ルアライメント測定方法。
【請求項3】
前記ステアリングホイ−ルを、ステアリング角度零位置に回動してアライメントを測定する請求項1記載のホイ−ルアライメント測定方法。
【請求項4】
前記ステアリングホイ−ルを、動力または人力で回動する請求項1記載のホイ−ルアライメント測定方法。
【請求項5】
車輪を載置可能な複数のロ−ラを水平面と平行に回動可能に設けたホイ−ルアライメント測定装置において、前記車輪に連係するステアリングホイ−ルを、動力または人力を介して、そのステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設け、該ステアリングホイ−ルの前記回動位置でアライメント測定可能にしたことを特徴とするホイ−ルアライメント測定装置。
【請求項6】
前記ステアリングホイ−ルに正逆転可能な駆動ロ−ラを係合可能に配置し、前記ステアリングホイ−ルを、前記駆動ロ−ラを介し、ステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設けた請求項5記載のホイ−ルアライメント測定装置。
【請求項1】
水平面と平行に回動可能な複数のロ−ラに車輪を載置し、前記車輪のアライメントを測定するホイ−ルアライメント測定方法において、前記車輪に連係するステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に所定角度回動し、前記ステアリングホイ−ルの所定角度回動位置でアライメント測定することを特徴とするホイ−ルアライメント測定方法。
【請求項2】
前記ステアリングホイ−ルを、そのステアリング機構のヒステリシス位置情報を基に一方向に所定角度回動後、他方向に所定角度回動してアライメントを測定する請求項1記載のホイ−ルアライメント測定方法。
【請求項3】
前記ステアリングホイ−ルを、ステアリング角度零位置に回動してアライメントを測定する請求項1記載のホイ−ルアライメント測定方法。
【請求項4】
前記ステアリングホイ−ルを、動力または人力で回動する請求項1記載のホイ−ルアライメント測定方法。
【請求項5】
車輪を載置可能な複数のロ−ラを水平面と平行に回動可能に設けたホイ−ルアライメント測定装置において、前記車輪に連係するステアリングホイ−ルを、動力または人力を介して、そのステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設け、該ステアリングホイ−ルの前記回動位置でアライメント測定可能にしたことを特徴とするホイ−ルアライメント測定装置。
【請求項6】
前記ステアリングホイ−ルに正逆転可能な駆動ロ−ラを係合可能に配置し、前記ステアリングホイ−ルを、前記駆動ロ−ラを介し、ステアリング機構のヒステリシス相当位置に回動可能に設けた請求項5記載のホイ−ルアライメント測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−78478(P2007−78478A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265683(P2005−265683)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000226600)株式会社アルティア橋本 (48)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000226600)株式会社アルティア橋本 (48)
【Fターム(参考)】
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